JP5585776B2 - アリル系重合体およびジアリルフタレート樹脂を含む光硬化性樹脂組成物とその用途 - Google Patents
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Description
今日、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)といった様々な種類のプラスチック製品が市販されており、ジアリルフタレート樹脂の欠点であるプラスチックとの接着性の向上が要求されている。
(CHR1=CR2−CH2−O−CO)n−A (I)
[R1およびR2は、それぞれ、HまたはCH3を表し、
Aはアルキル置換基を有する飽和または一部不飽和の4〜8員環の環状骨格を表し、
nは2または3を表す。]
を重合して得られるアリル系重合体と
ジアリルフタレート樹脂を光硬化性樹脂組成物に用いることにより、プラスチックとの接着性が向上した樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記式(I)で表される化合物を重合して得られるアリル系重合体と、ジアリルフタレート樹脂を含んでなる。
(CHR1=CR2−CH2−O−CO)n−A (I)
[R1およびR2は、それぞれ、HまたはCH3を表し、
Aはアルキル置換基を有する飽和または一部不飽和の4〜8員環の環状骨格を表し、
nは2または3を表す。]
上記式中、置換基R11は、それぞれ同一または異なって、アルキル基(炭素数1〜5、特にメチル基およびエチル基)である。
Aの環上におけるR11基の置換位置は何れであっても良く、それらの混合物でも良い。
pの下限値は1である。pの上限値は、[(環の炭素数)−(1、2または3)]である。pは一般に1〜4、例えば1〜3、特に1または2である。
nは、2または3、好ましくは2である。
本発明に用いる式(I)で表されるアリル系化合物の単量体は、空気中の酸素により重合し得るので、重合開始剤を用いることなく、重合することができる。また、必要に応じて、適宜重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤を用いることで、より高分子量の重合体を短時間に得ることができる。
アリル系重合体の重量平均分子量は30万以下、好ましくは20万以下、例えば2,000〜150,000の範囲がより好ましく、特に5,000〜120,000の範囲が特に好ましい。
光硬化性樹脂組成物中のアリル系化合物から誘導されるアリル系重合体は、アリル系重合体およびジアリルフタレート樹脂の合計100重量%に対して、5〜95重量%、例えば10〜90重量%、特に20〜90重量%が好ましい。
また、光硬化性樹脂組成物中のジアリルフタレート樹脂は、式(1)で表されるアリル系化合物から誘導される重合体およびジアリルフタレート樹脂の合計100重量%に対して、5〜95重量%、例えば10〜90重量%、特に10〜80重量%が好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アリル化合物およびビニル化合物が挙げられる。また、エチレン性不飽和化合物は2種以上の化合物の混合物を用いてもよい。
ビニル化合物の例は、スチレン、ジビニルベンゼン、N-ビニルピロリドン、酢酸ビニル等である。
光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤の量は、エチレン性不飽和化合物100重量部に対して、40重量部以下、0.1〜20重量部、例えば0.5〜15重量部であることが好ましい。
。
光硬化性樹脂組成物を硬化反応に用いる硬化装置、また、硬化条件は特に限定されず、通常の光硬化反応に用いられる方法であればよい。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
後述する製造例において、アリル系化合物、アリル系重合体の分析は下記に記載の方法を用いて行った。
転化率はHPLCを用いて算出した。
カラム:ダイソーパックSP−120−5ODS−P 4.6mmIDx150mmL
移動相:30mM KH2PO4水溶液/メタノール=80/20(pH2.5)
流速:1.0mL/min
温度:40℃
検出:UV,210nm
試料:試料(水層をサンプリング)を移動層で3倍希釈し測定用のサンプルとした。
転化率=100−(反応後area/反応前area) x 100
3)アリル系化合物の化学純度
化学純度はGCを用いて測定した。
カラム:TC−1701(0.25 mm × 30 m,
0.25μm)
Inj:250℃
Det:250℃
Column:50℃(5min)−10℃/min−250℃(20min)−250℃(10min)
Flow:1.0kg/cm2(N2)
試料:精留後サンプル(neat)
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用いて測定した。標準ポリスチレン換算の重量平均分子量の値である。
カラム:ShodexKF−806L、KF−804、KF−803、KF−802、KF−801を直列に接続
流速:1.0mL/min
温度:40℃
検出:RID−6A
試料:試料20mgをテトラヒドロフラン8mLに溶解させ測定用のサンプルとした。
3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物の製造
pH測定計を備え付けた4Lのセパラブルフラスコに日立化成工業株式会社製のHN−2000(3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジカルボン酸無水物と4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジカルボン酸無水物の混合物)665g(4mol)を加え、19%NaOHaq1684g(NaOH,8mol)を滴下した。pHが7〜8となり滴下した水酸化ナトリウムが消費され、ジカルボン酸ナトリウム塩となったため反応を終了した。反応終了後、バス温40℃で塩化銅(I)を7.9g(80mmol)加え、次いで、アリルクロライド1224g(16mol)を滴下した。pHが低下(pH6.5)してきたところで19%NaOHaqの滴下を開始した。アルカリ量はpHが7〜9となるよう調節した。アリルクロライド滴下終了後、液温を徐々に55〜60℃まで昇温した。その温度で1時間熟成後、反応を終了させ冷却した(転化率97%)。冷却後反応液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。分液した有機層を2%HClaq、2%NaOHaq、水の順で洗浄した。得られた有機層からエバポレーター(バス温40℃/〜40mmHg)を用いて低沸点成分を除去後、精留することで化学純度98%の3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物(混合モル比は仕込みの比と同じであった。)889g(収率:87%)を得た(b.p.:141〜146℃/2.2〜2.4mmHg)。
3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物の製造
pH測定計を備え付けた4Lのセパラブルフラスコに日立化成工業株式会社製のHN−5500(3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジカルボン酸無水物と4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジカルボン酸無水物の混合物)673g(4mol)を加え、19%NaOHaq1684g(NaOH,8mol)を滴下した。pHが7〜8となり滴下した水酸化ナトリウムが消費され、ジカルボン酸ナトリウム塩となったため反応を終了した。反応終了後、バス温40℃で塩化銅(I)を7.9g(80mmol)加え、次いで、アリルクロライド1224g(16mol)を滴下した。pHが低下(pH6.5)してきたところで19%NaOHaqの滴下を開始した。アルカリ量はpHが7〜9となるよう調節した。アリルクロライド滴下終了後、液温を徐々に60℃まで昇温した。液温60℃で1時間熟成後、反応を終了させ冷却した(転化率97%)。冷却後反応液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。分液した有機層を2%HClaq、2%NaOHaq、水の順で洗浄した。得られた有機層からエバポレーター(バス温40℃/〜40mmHg)を用いて低沸点成分を除去後、精留することで化学純度93%の3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物(混合モル比は仕込みの比と同じであった。)935g(収率:89%)を得た(b.p.:108〜115℃/0.24〜0.43mmHg)。
ヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジアリルフタレートの製造
pH測定計を備え付けた4Lのセパラブルフラスコにヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジカルボン酸689g(4mol)を加え、19%NaOHaq1684g(NaOH,8mol)を滴下した。pHが7〜8となり滴下した水酸化ナトリウムが消費され、ジカルボン酸ナトリウム塩となったため反応を終了した。反応終了後、バス温40℃で塩化銅(I)を7.9g(80mmol)加え、次いで、アリルクロライド1224g(16mol)を滴下した。pHが低下(pH6.5)してきたところで19%NaOHaqの滴下を開始した。アルカリ量はpHが7〜9となるよう調節した。アリルクロライド滴下終了後、液温を徐々に60℃まで昇温した。液温60℃で1時間熟成後、反応を終了させ冷却した(転化率96%)。冷却後反応液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。分液した有機層を2%HClaq、2%NaOHaq、水の順で洗浄した。得られた有機層からエバポレーター(バス温40℃/〜40mmHg)を用いて低沸点成分を除去後、精留することで化学純度99%のヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジアリルフタレート828g(収率:82%)を得た(b.p.:139〜145℃/1.0〜1.8mmHgの留出分)。
3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物の重合体の製造
1Lのセパラブルフラスコに製造例1で得た3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物200gを加え、180℃で加熱攪拌した。反応前の初期の屈折率は1.4792であった。屈折率が1.4982となった時点で反応を終了させ(反応時間:16時間)、氷浴にて60℃まで冷却した(冷却後屈折率1.4983)。冷却後、フラスコにメタノール0.6kgを加えポリマーを沈殿させた。バス温度70℃で1時間還流させ、得られたポリマーからモノマーの抽出を実施した。モノマー抽出後に得られたポリマーを60℃で8時間減圧乾燥した。(収量:56g,収率:28%,Mw=4.3万,Mw/Mn=3.8)。
3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物の重合体の製造
3Lのセパラブルフラスコに製造例2で得た3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートと4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレートの混合物600gを加え、180℃で加熱攪拌した。反応前の初期の屈折率は1.4690であった。屈折率が1.4839となった時点で反応を終了させ(反応時間:1.8時間)、氷浴にて60℃まで冷却した(冷却後屈折率1.4847)。冷却後、フラスコにメタノール1.8kgを加えポリマーを沈殿させた。バス温度70℃で1時間還流させ、得られたポリマーからモノマーの抽出を実施した。モノマー抽出後に得られたポリマーを60℃で8時間減圧乾燥した。(収量:150g,収率:25%,Mw=4.9万,Mw/Mn=3.6)。
ヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジアリルフタレート重合体の製造
3Lのセパラブルフラスコに製造例3で得たヘキサヒドロ−1,4−トランス−ジアリルフタレート600gを加え、180℃で加熱攪拌した。反応前の初期の屈折率は1.4702であった。屈折率が1.4805となった時点で反応を終了させ(反応時間:0.7時間)、氷浴にて60℃まで冷却した(冷却後屈折率 1.4813)。冷却後、フラスコにメタノール1.8kgを加えポリマーを沈殿させた。バス温度60℃で1時間還流させ、得られたポリマーからモノマーの抽出を実施した。モノマー抽出後に得られたポリマーを60℃で8時間減圧乾燥した。(収量:127g,収率:21%,Mw=5.8万,Mw/Mn=3.1)。
後述する実施例3〜8、比較例2〜5において、接着性評価は実施例1〜2、比較例1で得た重合体を用い、下記に記載の方法を用いて行った。
下記表1〜3の配合により樹脂組成物を作成した。
PET基材:東洋紡績株式会社製 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(BOPETフィルム) エステル(登録商標)フィルム 品名はE5102 片面コロナ処理 厚み25μm
PP基材:東洋紡績株式会社製 二軸延伸ポリプロピレンフィルム(BOPPフィルム) パイレン(登録商標)フィルム−OT 品名はP2161 片面コロナ処理 厚み50μm
表1〜3のように調製したビヒクルをプラスチックフィルムにコートし出力60W/cmのランプより10cmの所をコンベアに乗せ通過させ、塗膜の硬化に要したコンベアスピードをもって硬化速度とした。その硬化速度を50〜60m/minに調整した。
UV硬化装置:アイグラフィックス株式会社製コンベア型紫外線硬化装置
UV硬化条件:ランプ出力=60W/cm、ランプ距離=10cm
プラスチックフィルムにコートした塗膜に、ニチバン製18mm幅のセロテープ(登録商標)(品番:LP−18、粘着力:4.01N/10mm)を貼り付け、親指で5回強く擦った後、セロハンテープを引き離した。評価基準は下記の通りとした。
5:急激に引き離しても剥離しないもの
4:徐々に引き離しても全く剥離しないが、急激に引き離すとわずかに剥離するもの
3:急激に引き離せば剥離するが、徐々に引き離しても全く剥離しないもの
2:徐々に引き離しても、50%程度剥離するもの
1:徐々に引き離しても剥離するもの
Claims (7)
- 一般式(I)で表されるアリル系化合物
(CHR1=CR2−CH2−O−CO)n−A (I)
[R1およびR2は、それぞれ、HまたはCH3を表し、
Aはアルキル置換基を有する飽和または一部不飽和の4〜8員環の環状骨格を表し、
nは2または3を表す。]
を重合して得られるアリル系重合体と
ジアリルフタレート樹脂を含んでなる光照射により硬化可能なプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物。 - 一般式(I)で表されるアリル系化合物を重合して得られるアリル系重合体が、3−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、4−メチル−ヘキサヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3,6−エンドメチレン−3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレート、3,6−エンドメチレン−4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−1,2−ジアリルフタレートからなる群より選択される少なくとも1種以上を、重合することで得られるアリル系重合体である請求項1に記載のプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物。
- 更に、エチレン性不飽和化合物をも含有する請求項1又は2に記載のプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物。
- 光重合開始剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載に記載のプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物を含んでなるインキ。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチック基材用光硬化性樹脂組成物を含んでなる塗料。
- オーバープリントワニスである請求項6に記載の塗料。
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