JP5585749B1 - 粉末冶金用混合粉およびその製造方法ならびに鉄基粉末製焼結体の製造方法 - Google Patents

粉末冶金用混合粉およびその製造方法ならびに鉄基粉末製焼結体の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明に従い、切削性改善用粉末を、400〜1100℃の範囲で加熱処理した結晶質層状珪酸アルカリとし、該切削性改善用粉末の配合量を、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、0.01〜1.0%の範囲とすることによって、焼結炉の炉内環境に悪影響を及ぼすことなく成形体の焼結ができるだけでなく、優れた旋盤切削性および優れたドリル切削性を兼備した焼結体を得ることが可能な、粉末冶金用混合粉を得ることができる。

Description

本発明は、自動車焼結部品用などに好適な、鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合した粉末冶金用混合粉とその製造方法、ならびに、この混合粉を成形、焼結して得られる鉄基粉末製焼結体の製造方法に関するものであって、特に、鉄基粉末製焼結体の切削性改善を図ろうとするものである。
粉末冶金技術の進歩によって、高寸法精度で複雑な形状の部品をニアネット形状に製造することができるようになったため、粉末冶金技術を利用した製品が各種分野で利用されている。粉末冶金技術は、粉末を所望形状の金型に充填、成形した後、焼結を行うことから、形状の自由度が高いことが特徴となっている。そのため、形状が複雑な歯車等の機械部品に適用する事例が多い。
また、鉄系粉末冶金の分野では、鉄基粉末(金属粉末)に、銅粉、黒鉛粉などの合金用粉末と、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の潤滑剤とを混合した鉄基混合粉を、所定形状の金型に充填したのち加圧成形して成形体とし、ついで、焼結処理を施して焼結部品を得ている。このようにして得られた焼結部品は、一般的に寸法精度が良いとされるが、極めて厳しい寸法精度が要求される焼結部品を製造する場合には、焼結した後に、さらに切削加工を施す必要があり、この切削加工においては、旋盤による旋削やドリルによる穴あけなどの加工が、種々の切削速度で行われる。
しかし、上記焼結部品は、空孔の含有比率が高く、溶解法による金属材料にくらべると、切削抵抗が高くなる。そのため、従来から、焼結体の切削性を向上させる目的で、鉄基混合粉に、Pb、Se、Te等を、粉末で添加、または鉄粉もしくは鉄基粉末に合金化して添加することが行なわれてきた。
ところが、Pbは融点が330℃と低いため、焼結過程で溶融するものの、鉄中には固溶しないので、基地中に均一分散させることが難しいという問題があった。また、Se、Teは、焼結体を脆化させるため、焼結体の機械的特性の劣化が著しいという問題があった。
さらに、上述した空孔は、熱伝導性が悪いために、焼結体を加工すると加工時の摩擦熱が蓄積されて、工具の表面温度が上がりやすくなる。そのため、切削工具が損耗し易くなって短寿命となる結果、切削加工費が増大して、焼結部品の製造コストの上昇を招くという問題が生じる。
これらの問題に対し、例えば、特許文献1には、鉄粉に、10μm以下の微細な硫化マンガン粉末を重量%で0.05〜5%混合した焼結物体製造用鉄粉混合物が記載されている。
特許文献1に記載された技術によれば、大きな寸法変化および強度劣化を伴うことなく、焼結材の被削性(切削性)を改善できるとされている。
特許文献2には、鉄基粉末に珪酸アルカリを添加する鉄基焼結体の製造方法が記載されている。
特許文献2に記載された技術によれば、珪酸アルカリを0.1〜1.0重量%添加することにより、大きな寸法変化および強度劣化を伴うことなく、快削性を改善できるとされている。
特許文献3には、鉄粉を主体とし、アノールサイト相および/またはゲーレナイト相を有する平均粒径50μm以下のCaO−Al2O3−SiO2系複合酸化物の粉末(セラミックス粉末)を0.02〜0.3重量%含有する粉末冶金用鉄系混合粉末が記載されている。
特許文献3に記載された技術によれば、切削時に加工面に露出したセラミックス粉末が工具表面に付着して工具保護膜(ベラーク層)を形成し、工具の材質劣化を防止して切削性を改善することができるとされている。
特許文献4には、鉄基粉末と、合金用粉末と、切削性改善用粉末として硫化マンガン粉とリン酸カルシウム粉および/またはヒドロキシアパタイト粉に加えて、潤滑剤を混合してなる鉄基混合粉が記載されている。ここで、硫化マンガンは切屑の微細化に有効に作用する一方、リン酸カルシウム粉およびヒドロキシアパタイト粉は、切削時に工具の表面に付着してベラーク層を形成し、工具表面の変質を防止または抑制する効果があると記載されている。
すなわち、特許文献4に記載された技術によれば、焼結体の機械的特性の劣化を伴うこともなく、切削性を向上できるとされている。
また、特許文献5によれば、鉄または鉄基合金に、硫酸バリウムあるいは硫化バリウムを、単独あるいは合計で0.3〜3.0重量%添加することによって切削性などの機械加工性を向上させることができると記載されている。
特開昭61−147801号公報 特開昭60−145353号公報 特開平9−279204号公報 特開2006−89829号公報 特公昭46−39564号公報 特開平04−157138号公報 特開2012−144801号公報 特開2001−114509号公報
しかしながら、特許文献1および4に記載された技術では、硫化マンガン(MnS)粉を含むため、焼結体外観の悪化の原因となるとともに、焼結体中に残留したSあるいはMnSは、焼結部品の発錆を促進し、その耐食性を低下させるという問題がある。
さらに、MnSは、切削速度が100m/min以下という低速域での切削性改善には優れているものの、200m/min程度の高速切削では、切削性改善効果が小さいという課題があった。
また、特許文献2に記載された技術では、珪酸アルカリが吸湿性であるため混合粉末に固着が生じて、成形不良を起こすという問題があった。
さらに、特許文献3に記載された技術では、粉体特性、焼結体特性の低下を防止するために、セラミックス粉末中の不純物を少なくし、かつその粒度を調整した粉末とする必要があって、材料コストが高騰するという問題があった。また、特許文献3に記載された技術では、高速での切削性改善には優れるものの、低速での切削では切削性改善効果が小さいという課題があった。
加えて、特許文献3、4に記載されたベラーク層形成による切削性改善は、旋削加工では切削動力低減に有効であるものの、切屑が微細化しないために、ドリル切削の場合は、切り屑の排除性が悪く、ドリルの切削性にはいまだ問題を残していた。
また、特許文献5に記載された技術では、MnSを用いた場合と同様に、200m/min程度の高速切削では、切削性改善効果が小さいという課題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題や課題を有利に解決し、優れた切削性、詳しくは、優れた旋盤切削性(以下、旋削性ともいう)および優れたドリル切削性を兼備した焼結体を得ることが可能な、粉末冶金用混合粉およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明では、優れた旋削性およびドリル加工性を兼備する切削性に優れた鉄基粉末製焼結体の製造方法を併せて提供することを目的とする。
発明者らは、上記した目的を達成するために、焼結体の切削性に及ぼす各種要因、とくに珪酸アルカリの影響について鋭意考究した。すなわち、珪酸アルカリの吸湿性を緩和するために、高温での熱処理を施す試験を実施したところ、この熱処理によって得られた層状に結晶化した珪酸アルカリは、格段に焼結体の切削性を改善することが分かった。
この改善機構について、現在までのところ明確になっているわけではないが、例えば特許文献6には、メタ珪酸マグネシウム系鉱物やオルト珪酸マグネシウム系鉱物は、劈開性があるために固体潤滑剤として作用し、その結果、合金の快削性、摺動特性、なじみ性および耐摩耗性が向上すると示されており、結晶質層状珪酸アルカリも同様の機構を有しているのではないかと考えている。
加えて、発明者らは、結晶質層状珪酸アルカリの切削性改善効果が、メタ珪酸マグネシウム系鉱物やオルト珪酸マグネシウムより優れていて、比較的低速まで切削性改善効果があり、低速から高速までの広範囲において切削性改善効果が認められることも併せて知得した。
この一層の改善機構について、現在までのところ明確になっているわけではないが、MnSなどでは、低ひずみせん断速度変形下におけるせん断域の延性破壊を助長する作用が報告されていることから、同様の機構がさらに有利に働いているものと推定される。
以上得られた知見から、発明者らは、結晶質層状珪酸アルカリは、旋盤での切削性(旋削性)とドリルによる切削性(ドリル切削性)という異なる要件が要求される切削性を同時に向上させることができることを究明した。
また、発明者らは、切削性改善用粉末(添加材)として、結晶質層状珪酸アルカリに加えてさらに、少なくともSiO2およびMgOのうちから選んだ1種を含む粉末を加えることにより、低速での旋削性を一層改善できることを見出した。
上記焼結体が相乗的に切削性を改善する機構について、現在までのところ明確になっているわけではないが、発明者らは次のように考えている。
特許文献7に開示の記載によれば、SiO2およびMgOのうちから選んだ1種を含む粉末を加えると、焼結処理の際、焼結体の基地相中に軟質相と硬質相とを同時に分散させることができる。そのため、本発明のように、結晶質層状珪酸アルカリにSiO2およびMgOのうちから選んだ1種を含む粉末を加えると、結晶質層状珪酸アルカリの固体潤滑材としての機能が一層顕在化して、軟質金属化合物相が工具に作用する抗力を低下させる。その結果、工具の摩耗、変形あるいは亀裂の発生を抑制する機能や、硬質金属化合物相による切屑内部における亀裂発生の促進を誘発し、ドリル穿孔の際の切屑排出性が一段と向上するものと考えられる。
すなわち、発明者らは特許文献7に記載の添加材に対し、結晶質層状珪酸アルカリを添加することで、ドリル加工における切削性改善の相乗効果が得られることを見出した。
さらに、発明者らは、切削性改善用粉末(添加材)として、結晶質層状珪酸アルカリに加えて、アルカリ金属の硫酸塩またはアルカリ土類金属の硫酸塩のうちから選んだ少なくとも1種を含む粉末を加えることによって、低速での旋削性を一層改善できることを見出した。
上記焼結体が相乗的に切削性を改善する機構について、現在までのところ明確になっているわけではないが、発明者らは次のように考えている。
特許文献5に開示の記載によれば、BaSO4はあらゆる金属と溶解あるいは固溶せず、また軟質であり、これが結晶粒界および粒内に散在しており、切削時の切欠効果を発現することで、切削抵抗を下げて被削性を改善することができる。
そのため、本発明のように、結晶質層状珪酸アルカリにアルカリ金属の硫酸塩またはアルカリ土類金属の硫酸塩のうちから選んだ少なくとも1種を含む粉末を加えると、結晶質層状珪酸アルカリの固体潤滑材としての機能が一層顕在化して、軟質化合物相が工具に作用する抗力を低下させるので、工具の摩耗、変形あるいは亀裂の発生を抑制する機能が一段と向上するものと考えられる。
すなわち、発明者らは、特許文献5に記載の添加材に対し、結晶質層状珪酸アルカリを添加することで、ドリル加工を含む、低速における切削性改善の相乗効果が得られることを新規に見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる粉末冶金用混合粉であって、
上記切削性改善用粉末が、400〜1100℃の範囲で加熱処理した結晶質層状珪酸アルカリであって、該切削性改善用粉末の配合量が、上記鉄基粉末、上記合金用粉末および該切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、0.01〜1.0%の範囲である粉末冶金用混合粉。
2.前記切削性改善用粉末がさらに、エンスタタイト粉末、タルク粉末、カオリン粉末、マイカ粉末、水砕スラグ粉末、すいひ粘土粉末、酸化マグネシウム(MgO)粉末、および、シリカ(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)との混合粉末、のうちから選んだ少なくとも1種を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む前記1に記載の粉末冶金用混合粉。
3.前記切削性改善用粉末がさらに、アルカリ金属塩粉末を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む前記2に記載の粉末冶金用混合粉。
4.前記アルカリ金属塩粉末が、アルカリ炭酸塩粉末およびアルカリ金属石鹸のうちから選んだ1種または2種である前記3に記載の粉末冶金用混合粉。
5.前記切削性改善用粉末がさらに、フッ化カルシウム粉末を含む前記1乃至4のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉。
6.前記切削性改善用粉末がさらに、金属硼化物粉末および金属窒化物粉末のうちから選んだ1種または2種を含む前記1乃至5のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉。
7.前記金属硼化物粉末が、TiB2、ZrB2およびNbB2のうちから選んだ少なくとも1種からなり、前記金属窒化物粉末が、TiN、AlNおよびSi3N4のうちから選んだ少なくとも1種からなる前記6に記載の粉末冶金用混合粉。
8.前記切削性改善用粉末がさらに、アルカリ金属の硫酸塩またはアルカリ土類金属の硫酸塩のうちから選んだ少なくとも1種を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む前記1乃至7のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉。
9.鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を配合したのち、混合して混合粉とする粉末冶金用混合粉の製造方法であって、
上記切削性改善用粉末を、400℃から1100℃で加熱処理された結晶質層状珪酸アルカリとし、該切削性改善用粉末の配合量を、上記鉄基粉末、上記合金用粉末および該切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で0.01〜1.0%とし、さらに、
上記混合を、鉄基粉末と合金用粉末とに対し、一次混合材として切削性改善用粉末の一部または全部と潤滑剤の一部とを添加して加熱し、該潤滑剤のうち少なくとも1種の潤滑剤を溶融させつつ混合し、ついで冷却して固化させる一次混合と、
上記切削性改善用粉末および潤滑剤の残り粉末を、二次混合材としてさらに添加して混合する二次混合とにより行う
粉末冶金用混合粉の製造方法。
10.前記切削性改善用粉末がさらに、エンスタタイト粉末、タルク粉末、カオリン粉末、マイカ粉末、水砕スラグ粉末、すいひ粘土粉末、酸化マグネシウム(MgO)粉末、および、シリカ(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)との混合粉末、のうちから選んだ少なくとも1種を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む前記9に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
11.前記切削性改善用粉末がさらに、アルカリ金属塩粉末を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む前記10に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
12.前記アルカリ金属塩粉末が、アルカリ炭酸塩粉末およびアルカリ金属石鹸のうちから選んだ1種または2種である前記11に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
13.前記切削性改善用粉末がさらに、フッ化カルシウム粉末を含む前記9乃至12のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
14.前記切削性改善用粉末がさらに、金属硼化物粉末および金属窒化物粉末のうちから選んだ1種または2種を含む前記9乃至13のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
15.前記金属硼化物粉末が、TiB2、ZrB2およびNbB2のうちから選んだ少なくとも1種からなり、前記金属窒化物粉末が、TiN、AlNおよびSi3N4のうちから選んだ少なくとも1種からなる前記14に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
16.前記切削性改善用粉末がさらに、アルカリ金属の硫酸塩またはアルカリ土類金属の硫酸塩のうちから選んだ少なくとも1種を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む前記9乃至15のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
17.前記9乃至16のいずれかに記載の製造方法で製造された粉末冶金用混合粉を、金型に充填したのち圧縮成形して成形体とし、該成形体に焼結処理を施して焼結体とする鉄基粉末製焼結体の製造方法。
本発明によれば、優れた旋削性と、優れたドリル切削性とを兼備する切削性に優れた焼結体を安価に製造できるので、金属焼結部品の製造コストを顕著に低減し、産業上格段の効果を有する。特に、低速から高速までの広範囲の切削条件で切削が可能なため、ドリルのように中心部と周端部で切削速度が変わる加工にその効果を顕著に発揮する。
また、本発明によれば、成形時には、圧粉密度の低下や、抜出力の増大を招くことなく成形できるという効果もある。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の粉末冶金用混合粉について説明する。
本発明の粉末冶金用混合粉は、鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる混合粉である。
本発明に用いる鉄基粉末としては、アトマイズ鉄粉および還元鉄粉などの純鉄粉、合金元素を予め合金化した予合金鋼粉(完全合金化鋼粉)、あるいは鉄粉に合金元素が部分拡散し合金化された部分拡散合金化鋼粉、あるいは予合金化鋼粉(完全合金化鋼粉)にさらに合金元素を部分拡散させたハイブリッド鋼粉など、の鉄基粉末がいずれも適用できる。また、鉄基粉末としては、上記した鉄基粉末に加えてさらに合金用粉末、および潤滑剤を混合した鉄基粉末混合粉を用いてもよい。
他方、本発明に用いる合金用粉末としては、黒鉛粉末、Cu(銅粉末)粉、Mo粉、Ni粉などの非鉄金属粉末、亜酸化銅粉末などが例示され、所望の焼結体特性に応じて選択して混合する。これらの合金用粉末を、鉄基粉末に混合させることによって焼結体の強度を上昇させることができ、所望の焼結部品強度を確保できる。なお、合金用粉末の配合量は、所望の焼結体強度に応じて、金属粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、0.1〜10%の範囲とする。合金用粉末の配合量が、0.1質量%未満では、所望の焼結体強度を確保できなくなる一方で、10質量%を超えて添加すると、焼結体の寸法精度が低下するからである。
また、本発明では、切削性改善用粉末として、400〜1100℃で加熱処理された結晶質層状珪酸アルカリを用いる。ここで珪酸アルカリとしては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムおよび珪酸リチウム等を用いることができる。これらは水溶性であるため、そのまま混合粉に添加すると、吸湿によって、混合粉末の粉末間に固着が生じ、粉末の流動性が悪化して、成形不良が生じてしまう。
そのため、本発明では、珪酸アルカリに加熱処理を行って、表面のシラノール基を減少させ、水との結合性を低下させる。この際の加熱温度としては、400〜1100℃とすることが肝要であるが、400℃未満の場合には吸湿性の低減効果が十分でなく、1100℃を上回る場合には処理費用の観点から合理的ではないからである。
また、この加熱処理の際に、珪酸アルカリは結晶化し、層状構造を持つようになるが、これらの構造はX線回折等の分析手段により確認することができる。なお、本発明で用いられる結晶質層状珪酸アルカリは、結晶質アルカリ金属層状珪酸塩の一種である。この結晶質アルカリ金属層状珪酸塩は、洗剤に配合されると洗浄力を著しく増強する物質である洗剤ビルダーとして公知であり、特許文献8に詳しく開示されている。
また、本発明では、混合粉を成形体としてから焼結する際に、結晶質層状珪酸アルカリとともに用いられる切削性改善用粉末として、焼結体の基地相中に基地相の平均硬さよりも低い硬さの軟質粒子(軟質相)であって、かつ低融点で非晶質相を形成できる軟質金属化合物粉末を添加することが好ましい。
具体的には、エンスタタイト粉末、タルク粉末、カオリン粉末、マイカ粉末、水砕スラグ粉末、すいひ粘土粉末、酸化マグネシウム(MgO)粉末および、シリカ(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)との混合粉末、のうちから選ばれた少なくとも1種である。
切削性改善用粉末として混合粉に添加する、エンスタタイト粉末、タルク粉末、カオリン粉末、マイカ粉末等の軟質鉱物はいずれも、少なくともSi、Mg、O(SiO2、MgO)を含有する金属化合物であり、または水砕スラグ粉末は、CaO−SiO2−Al2O3、MgO−Al2O3−SiO2等の成分系で代表される脱酸生成物である。Si、Mg、Oを含有する化合物であるこれら粉末は、いずれも、混合粉を成形した圧粉体を焼結する際に、低融点の非晶質相を形成して、焼結体の基地相中に軟質金属化合物相として分散することができる。なお、焼結時に形成される低融点の非晶質相は、SiO2−MgO系非晶質相である。
また、切削性改善用粉末として、すいひ粘土粉末や、酸化マグネシウム(MgO)粉末、さらには、エンスタタイト粉末等と同様にSi、Mg、Oを含む、シリカ(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)との混合粉末のうちから選んだ1種以上を用いてもよい。シリカ(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)との混合粉末は、混合粉を成形した圧粉体を焼結する際に、同様に低融点の非晶質相(非晶質粒子)を形成することができる。なお、混合比は、質量比でSiO2:MgOが、1:2〜3:1の範囲とすることが好ましい。
本発明では、切削性改善用粉末として、さらにアルカリ金属塩粉末を加えることが好ましい。SiO2、MgOからなるエンスタタイト粉末等の粉末に、さらにアルカリ金属塩粉末を加えることによって、圧粉体焼結時の低融点非晶質相の形成がより促進されるからである。
アルカリ金属塩は、焼結時に単独で、あるいは鉄基粉末表面の酸化鉄と反応して、低融点のフラックスを形成するだけでなく、そのフラックス中に、混合粉中に含まれるSiO2、MgO等の他の酸化物が溶融し、SiO2−MgO−アルカリ金属酸化物系非晶質相を形成して、軟質相として焼結体の基地相中に分散する。
なお、アルカリ金属塩としては、アルカリ炭酸塩、アルカリ金属石鹸が例示でき、それら粉末のいずれか、あるいはそれらを複合して含有してもよい。なお、アルカリ金属石鹸を用いた場合には、金属石鹸による潤滑効果により粉末成形時に圧粉体の密度が向上するという利点もある。
以上述べた、SiO2および/またはMgOを含む粉末、またはアルカリ金属塩粉末の配合量は、切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、10〜80%の範囲とすることが好ましい。配合量が10質量%未満では、上記した相乗効果が期待できない一方で、80質量%を超える配合では低速での切削性改善効果が低下するからである。
本発明では、さらにフッ化カルシウム粉末を含んでもよい。なお、フッ化カルシウム粉末の配合量は、切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、20〜80%の範囲とすることが好ましい。配合量が20質量%未満では、所望の切削性改善効果が期待できない一方で、80質量%を超える配合は焼結体の機械的強度が低下するからである。
また、硬質粒子となる粉末としては、金属硼化物粉末および/または金属窒化物粉末が挙げられる。そして、金属硼化物粉末としては、TiB2粉末、ZrB2粉末、NbB2粉末が例示でき、なかでもNbB2粉末が好ましい。また、金属窒化物粉末としては、TiN粉末、AlN粉末、Si3N4粉末が例示でき、とりわけSi3N4粉末が好ましい。
なお、金属硼化物粉末および/または金属窒化物粉末の配合量は、切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、10〜80%の範囲とすることが好ましい。配合量が10質量%未満では、所望の切削性改善効果が期待できない一方で、80質量%を超える配合は粉末の圧縮性や焼結体強度が低下するからである。
さらに、本発明では、混合粉を成形体としてから焼結する際に、結晶質層状珪酸アルカリとともに用いられる切削性改善用粉末として、アルカリ金属の硫酸塩またはアルカリ土類金属の硫酸塩のうちから選んだ少なくとも1種を添加することができる。
具体的には、硫酸ナトリウムや硫酸リチウムなど、アルカリ金属硫酸塩や硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムや硫酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属硫酸塩のうちから選んだ少なくとも1種である。
これらはいずれも軟質物質であり、あらゆる金属と溶解あるいは固溶せずに、結晶粒界および粒内に散在しており、切削時の切欠効果を発現し、切削抵抗を下げて被削性を改善する際、結晶質層状珪酸アルカリの固体潤滑材としての機能が一層顕在化して、軟質化合物相が工具に作用する抗力を低下させるので、工具の摩耗、変形あるいは亀裂の発生を抑制する機能が一段と向上する。
なお、アルカリ金属の硫酸塩またはアルカリ土類金属の硫酸塩の配合量は、切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、10〜80%の範囲とすることが好ましい。配合量が10質量%未満では、所望の切削性改善効果が期待できない一方で、80質量%を超える配合は粉末の圧縮性や焼結体強度が低下するからである。
以上述べてきた本発明に従う混合粉の切削性改善用粉末の配合量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、0.01〜1.0%の範囲とする必要がある。配合量が、0.01質量%未満では、切削性改善効果が不十分となる一方で、1.0質量%を超えて配合すると、圧粉体密度が低下し、その成形体を焼結して得た焼結体の機械的強度が低下するからである。このため、混合粉における切削性改善用粉末の配合量は、鉄基粉末、合金用粉末および切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、0.01〜1.0%の範囲に限定する。
本発明に従う混合粉には、上記した鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末に加えて、適正量の潤滑剤を配合する。配合される潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸、あるいはオレイン酸などのカルボン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸ビスアミド、エチレンビスステアロアミドなどの、アミドワックスが好ましい。潤滑剤の配合量は、本発明ではとくに限定されないが、いわゆる外添加量として、金属粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末の合計量100質量%に対し、0.1〜1.0質量%−外割とすることが好ましい。潤滑剤の配合量が、0.1質量%−外割に満たないと、金型との摩擦が増加して抜き出し力が増大して金型寿命が低下する一方で、1.0質量%−外割を超えて多量となると、成形密度が低下して焼結体密度が低くなってしまうからである。
つぎに、本発明に従う混合粉を得るのに好ましい製造方法について説明する。
鉄基粉末に対して、合金用粉末、および上記した種類や配合量の粉末からなる切削性改善用粉末、さらには潤滑剤を、それぞれ所定量配合し、通常公知の混合機を用いて、一回に、あるいは二回以上に分けて混合し、混合粉(鉄基混合粉)とすることが望ましい。上記した切削性改善用粉末は、必ずしも全量を一度に混合する必要はなく、一部のみを配合して混合(一次混合)を行ったのち、残部(二次混合材)を配合して混合(二次混合)することもできる。なお、潤滑剤は、二回に分けて配合することが好ましい。
なお、鉄基粉末の一部または全部に対し、合金用粉末および/または切削性改善用粉末の一部または全部を結合材によって表面に固着させる偏析防止処理を施した鉄基粉末を用いても良い。ここで、偏析防止処理としては、特許第3004800号公報に記載の偏析防止処理を用いることができる。
本発明では、混合粉に配合した種々の潤滑剤の融点の最低温度以上に加熱することで、前記潤滑剤のうち少なくとも1種類の潤滑剤を溶融させて一次混合したのち、冷却して固化させ、ついで、切削性改善用粉末と潤滑剤の残り粉末からなる二次混合材を添加して二次混合をすることができる。
また、混合手段としては、とくに制限はなく、従来公知の混合機のいずれもが使用できる。なお、加熱が容易な、高速底部撹拌式混合機、傾斜回転パン型混合機、回転クワ型混合機および円錐遊星スクリュー形混合機などは特に有利に適合する。
つぎに、上記した製造方法で得られる粉末冶金用混合粉を用いた焼結体の好ましい製造方法について説明する。
まず、上記した方法で製造された本発明に従う粉末冶金用混合粉を、金型に充填して圧縮成形し、成形体とする。成形方法は、プレス等の公知の成形方法がいずれも好適に使用できる。本発明に従う粉末冶金用混合粉を用いることによって、成形圧力を294MPa以上と高圧にすることができ、さらに常温でも成形することができる。なお、安定した成形性を確保するためには、混合粉や金型を適正な温度に加熱したり、金型に潤滑剤を塗布したりすることが好ましい。
また、圧縮成形を、加熱雰囲気中で行う場合には、混合粉や金型の温度は150℃未満とすることが好ましい。というのは、本発明の粉末冶金用混合粉は、圧縮性に富むため、150℃未満の温度でも優れた成形性を示すうえ、150℃以上になると酸化による劣化が懸念されるためである。
上記成形加工により得られた成形体は、ついで焼結処理を施されて、焼結体となる。焼結処理の温度は、金属粉末の融点の約70%の温度で行うことが望ましい。
鉄基粉末の場合は、1000℃以上であって、好ましくは1300℃以下とする。焼結処理の温度が1000℃未満では、所望の密度の焼結体とすることが難しくなるからである。一方、焼結処理の温度が1300℃を超えて高温になると、焼結中に異常粒成長が起こって、焼結体強度が低下しやすくなるので好ましくない。
上記焼結処理の雰囲気は、窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、あるいは、これに水素を混合した不活性ガス−水素ガス混合雰囲気、あるいは、アンモニア分解ガス、RXガス、天然ガスなどの還元雰囲気とすることが好ましい。
焼結処理後、さらに、必要に応じて、ガス浸炭熱処理や浸炭窒化処理等の熱処理を施し、所望の特性を具備された製品(焼結部品等)とする。なお、切削加工等の加工を随時施し、所定寸法の製品とすることは言うまでもない。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の例に何ら限定されるものではない。
鉄基粉末として、表1に示す鉄基粉末(いずれも平均粒径:約80μm)を使用した。なお、以下記載の平均粒径は、レーザ回折法を利用して求めたものである。
ここに、使用した鉄基粉末は、表1に示したとおり、アトマイズ純鉄粉(A)、還元純鉄粉(B)、鉄粉表面に合金元素としてCuを部分拡散させ合金化した部分拡散合金化鋼粉(C)、鉄粉表面に合金元素としてNi、Cu、Moを部分拡散させ合金化した部分拡散合金化鋼粉(D)、合金元素としてNi、Moを予合金化した予合金化鋼粉(完全合金化鋼粉)(E)、合金元素としてMoを予合金化した予合金化鋼粉(完全合金化鋼粉)(F)および(G)と、合金元素として、Moを予合金化した完全合金化鋼粉にさらにMoを部分拡散合金化した鋼粉(ハイブリッド型合金鋼粉)(H)である。
Figure 0005585749
上記した鉄基粉末に、表2に示す種類、配合量の合金用粉末と、表2に示した種類、配合量の切削性改善用粉末と、さらに、表2に示した種類、配合量の潤滑剤とを、配合し、高速底部撹拌式混合機を利用して、一次混合を行った。なお、一次混合では、混合しながら140℃に加熱した後、60℃以下に冷却した。また、合金用粉末として配合した天然黒鉛粉は平均粒径:5μmの粉末とし、銅粉は平均粒径:20μmの粉末とした。
Figure 0005585749
一次混合したのち、さらに表2に示した種類、配合量の切削性改善用粉末、潤滑剤からなる二次混合材を配合し、混合機の回転数を1000rpmとし、1分間撹拌する二次混合を行なった。二次混合後、混合機から混合粉を排出した。なお、切削性改善用粉末は、一次混合と二次混合時の二回に分けて配合した。切削性改善用粉末の配合量は、鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で表示し、潤滑剤の配合量は、外添加とし、鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末の合計量100質量%に対する質量%−外割で表示した。
以上の工程を経て、鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末が、偏析を生じることなく、均一に混合された混合粉が得られた。
なお、比較例として、表2に示した種類、配合量で、鉄基粉末、合金用粉末、潤滑剤を配合し、V型容器回転式混合機を用いて、常温で混合し、混合粉を得た。
引続き、得られた混合粉を、金型(旋盤切削試験用およびドリル切削試験用の2種)に充填し、加圧力:590MPaで圧縮成形し、成形体を得た。その得られた成形体に、RXガス雰囲気中で、1130℃×20minの焼結処理を施して、焼結体を得た。
得られた焼結体について、旋盤切削試験、ドリル切削試験を実施した。試験方法は次のとおりとした。
(1)旋盤切削試験
得られた焼結体(リング状:外径60mm×内径20mm×長さ20mm)を3個重ねて、その側面を、旋盤を利用して切削した。切削条件は、サーメット製旋盤用切削工具を用いて、切削速度:100m/minおよび200m/min、送り量:0.1mm/回、切込み深さ:0.5mm、切削距離:1000mとし、試験後、切削工具の逃げ面の摩耗幅を測定した。ここで工具寿命を概ね0.25mmの磨耗量と規定し、切削距離1000m未満でこの工具寿命に達した場合は、1000m未達と記載した。従って、切削工具の逃げ面の摩耗幅が小さいほど、焼結体の切削性が優れていると評価される。
(2)ドリル切削試験
得られた焼結体(円盤状:外径60mm×厚さ10mm)に、高速度鋼製ドリル(直径:2.6mm)で、回転数:5,000rpm、送り速度:750mm/minの条件で貫通穴を穿孔し、その際、切削動力計を用い、ドリル切削時の切削抵抗としてスラスト成分を測定した。スラスト成分が小さいほど、焼結体の切削性が優れていると評価される。
得られた結果を、表3にそれぞれ示す。
Figure 0005585749
表3に示したとおり、本発明に従う発明例はいずれも、切削工具逃げ面の摩耗幅が小さい結果を示しているので、旋盤切削性に優れていることが分かる。加えて、ドリル穿孔時のスラスト成分が低い値を示しているので、ドリル切削性にも優れた焼結体となっていることが分かる。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、特に、ドリル切削性に劣った結果となっていた。

Claims (17)

  1. 鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を混合してなる粉末冶金用混合粉であって、
    上記切削性改善用粉末が、400〜1100℃の範囲で加熱処理した結晶質層状珪酸アルカリであって、該切削性改善用粉末の配合量が、上記鉄基粉末、上記合金用粉末および該切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で、0.01〜1.0%の範囲である粉末冶金用混合粉。
  2. 前記切削性改善用粉末がさらに、エンスタタイト粉末、タルク粉末、カオリン粉末、マイカ粉末、水砕スラグ粉末、すいひ粘土粉末、酸化マグネシウム(MgO)粉末、および、シリカ(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)との混合粉末、のうちから選んだ少なくとも1種を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む請求項1に記載の粉末冶金用混合粉。
  3. 前記切削性改善用粉末がさらに、アルカリ金属塩粉末を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む請求項2に記載の粉末冶金用混合粉。
  4. 前記アルカリ金属塩粉末が、アルカリ炭酸塩粉末およびアルカリ金属石鹸のうちから選んだ1種または2種である請求項3に記載の粉末冶金用混合粉。
  5. 前記切削性改善用粉末がさらに、フッ化カルシウム粉末を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉。
  6. 前記切削性改善用粉末がさらに、金属硼化物粉末および金属窒化物粉末のうちから選んだ1種または2種を含む請求項1乃至5のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉。
  7. 前記金属硼化物粉末が、TiB2、ZrB2およびNbB2のうちから選んだ少なくとも1種からなり、前記金属窒化物粉末が、TiN、AlNおよびSi3N4のうちから選んだ少なくとも1種からなる請求項6に記載の粉末冶金用混合粉。
  8. 前記切削性改善用粉末がさらに、アルカリ金属の硫酸塩またはアルカリ土類金属の硫酸塩のうちから選んだ少なくとも1種を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む請求項1乃至7のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉。
  9. 鉄基粉末、合金用粉末、切削性改善用粉末および潤滑剤を配合したのち、混合して混合粉とする粉末冶金用混合粉の製造方法であって、
    上記切削性改善用粉末を、400℃から1100℃で加熱処理された結晶質層状珪酸アルカリとし、該切削性改善用粉末の配合量を、上記鉄基粉末、上記合金用粉末および該切削性改善用粉末の合計量に対する質量%で0.01〜1.0%とし、さらに、
    上記混合を、鉄基粉末と合金用粉末とに対し、一次混合材として切削性改善用粉末の一部または全部と潤滑剤の一部とを添加して加熱し、該潤滑剤のうち少なくとも1種の潤滑剤を溶融させつつ混合し、ついで冷却して固化させる一次混合と、
    上記切削性改善用粉末および潤滑剤の残り粉末を、二次混合材としてさらに添加して混合する二次混合とにより行う
    粉末冶金用混合粉の製造方法。
  10. 前記切削性改善用粉末がさらに、エンスタタイト粉末、タルク粉末、カオリン粉末、マイカ粉末、水砕スラグ粉末、すいひ粘土粉末、酸化マグネシウム(MgO)粉末、および、シリカ(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)との混合粉末、のうちから選んだ少なくとも1種を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む請求項9に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
  11. 前記切削性改善用粉末がさらに、アルカリ金属塩粉末を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む請求項10に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
  12. 前記アルカリ金属塩粉末が、アルカリ炭酸塩粉末およびアルカリ金属石鹸のうちから選んだ1種または2種である請求項11に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
  13. 前記切削性改善用粉末がさらに、フッ化カルシウム粉末を含む請求項9乃至12のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
  14. 前記切削性改善用粉末がさらに、金属硼化物粉末および金属窒化物粉末のうちから選んだ1種または2種を含む請求項9乃至13のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
  15. 前記金属硼化物粉末が、TiB2、ZrB2およびNbB2のうちから選んだ少なくとも1種からなり、前記金属窒化物粉末が、TiN、AlNおよびSi3N4のうちから選んだ少なくとも1種からなる請求項14に記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
  16. 前記切削性改善用粉末がさらに、アルカリ金属の硫酸塩またはアルカリ土類金属の硫酸塩のうちから選んだ少なくとも1種を、該切削性改善用粉末の配合量に対し、10〜80質量%の範囲で含む請求項9乃至15のいずれかに記載の粉末冶金用混合粉の製造方法。
  17. 請求項9乃至16のいずれかに記載の製造方法で製造された粉末冶金用混合粉を、金型に充填したのち圧縮成形して成形体とし、該成形体に焼結処理を施して焼結体とする鉄基粉末製焼結体の製造方法。
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