次に、本発明のパルス幅変調回路の一実施形態として、液体噴射型印刷装置のデジタル電力増幅器の駆動に用いられたものについて説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成図であり、図において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
液体噴射型印刷装置のうち、液体噴射ノズルの形成された液体噴射ヘッドをキャリッジと呼ばれる移動体に載せて印刷媒体の搬送方向と交差する方向に移動させるものを一般に「マルチパス型印刷装置」と呼んでいる。これに対し、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に長尺な液体噴射ヘッドを配置して、所謂1パスでの印刷が可能なものを一般に「ラインヘッド型印刷装置」と呼んでいる。
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数の液体噴射ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。各液体噴射ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射する液体の色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全ての液体噴射ヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液体噴射ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液体が噴射され、印刷が行われる。
液体噴射ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない各色の液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。そして、各液体噴射ヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを出力する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、所謂1パスによる印刷を行うことができる。
液体噴射ヘッドの各ノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、ノズルアクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液滴がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液滴の噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
液体噴射ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液体噴射ヘッド2から液体を噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられている。この印刷基準信号出力装置は、例えば搬送ベルト6とそれに吸着されて搬送される印刷媒体1とが同期して移動されることに着目し、印刷媒体1が搬送経路中の所定位置を通過した後は、搬送ベルト6の移動に伴って要求される印刷解像度相当のパルス信号を出力し、このパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をノズルアクチュエータに出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色の液体を噴射し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
この印刷装置内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、例えば図3に示すように、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データ読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、各液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、各ドライバ63、65、66と外部の給紙ローラモータ17、液体噴射ヘッド2,3、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れの液体噴射ヘッド2の何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動信号選択データ)を算出し、この印刷データや駆動信号選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63、65、66に制御信号を出力する。各ドライバ63、65、66からはアクチュエータを駆動するための駆動信号が出力され、給紙ローラモータ17、電動モータ7、液体噴射ヘッド2内のノズルアクチュエータなどが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
図4には、本実施形態の印刷装置の制御装置から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるノズルアクチュエータを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電位を中心に電位が変化する信号とした。この駆動信号COMは、ノズルアクチュエータを駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、各駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液滴がノズルから噴射される。
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液滴の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液滴を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液滴を噴射せずに、例えばノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
各液体噴射ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて噴射するノズルを選択すると共に圧電素子などのノズルアクチュエータの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動信号選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動信号選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動信号選択データSI&SPをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号CLKが入力されている。なお、これ以後、ノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をノズルアクチュエータ22に供給するために各液体噴射ヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液体を噴射させるべきノズルに対応した圧電素子などのノズルアクチュエータ22を指定するための駆動信号選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COMをピエゾ素子などのノズルアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213を備えて構成されている。
シフトレジスタ211には、駆動信号選択データ信号SI&SPが順次入力されると共に、クロック信号CLKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動信号選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる圧電素子などのノズルアクチュエータは駆動信号選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、シフトレジスタ211の駆動信号選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をシフトレジスタ211に入力し、液体の噴射タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのノズルアクチュエータのグランド端である。また、この選択スイッチ201によれば、圧電素子などのノズルアクチュエータを駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後も、当該ノズルアクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
図6には、ノズルアクチュエータの駆動回路の具体的な構成を示す。本実施形態の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データに基づいて、駆動信号COMの元、つまりノズルアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路25と、駆動波形信号発生回路25で生成された駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器、所謂D級アンプ28と、デジタル電力増幅器28で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)として選択スイッチ201からノズルアクチュエータ22に供給する平滑フィルタ29とを備えて構成される。
駆動波形信号発生回路25は、CPU62aから出力された駆動波形データを基に、所定のサンプリング周期で標本化され、所定のビット数で量子化された駆動波形信号WCOMとして出力する。本実施形態では、この駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26にパルス幅変調(PWM)回路を用いた。パルス幅変調は、三角波信号やノコギリ波信号などの基準信号と駆動波形信号WCOMとを比較して、例えば基準信号より駆動波形信号WCOMが大きいときにオンデューティとなるパルス信号を変調信号として出力する。パルス幅変調回路の詳細は、後段に説明する。デジタル電力増幅器28は、実質的に電力を増幅するためのハイサイドのスイッチング素子Q1及びローサイドのスイッチング素子Q2からなるハーフブリッジD級出力段21と、変調回路26からの変調信号に基づいて、それらのスイッチング素子Q1、Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲート駆動回路30とを備えて構成されている。また、平滑フィルタ29は例えばコイルLとコンデンサCの組合せからなるローパスフィルタ(低域通過フィルタ)で構成され、このローパスフィルタによって電力増幅変調信号の変調周期成分、この場合は基準信号の周波数成分が除去される。
デジタル電力増幅器28では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジD級出力段21の出力は、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力は0となる。
このようにハイサイド及びローサイドのスイッチング素子がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器28の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができる。
図7には、前記変調回路26として用いられたパルス幅変調回路の概略構成を示す。このパルス幅変調回路では、クロック信号生成回路31で、例えば前記クロック信号CLKを分周したり位相をずらしたりして、互いに位相の異なる4つの第1〜第4クロック信号CLK1〜CLK4を生成し、第1〜第4カウンタ32a〜32dで、それらのクロック信号CLK1〜CLK4をカウントし、それを第1〜第4基準信号CNT1〜CNT4として出力する。カウントは、例えばクロック信号CLK1〜CLK4の立上がり毎に、予め設定された所定値ずつ増加又は減少する。例えば、クロック信号CLK1〜CLK4の立上がり毎に所定値ずつ増加し、所定時間が経過するか、カウント値が所定値以上になったら、カウント値をリセットするようにすれば、基準信号CNT1〜CNT4はノコギリ波信号となる。一方、クロック信号CLK1〜CLK4の立上がり毎に、予め設定された所定値ずつ増加し、所定時間が経過するか、カウント値が所定値以上になったら、今度は、クロック信号CLK1〜CLK4の立上がり毎に、増加時の所定値と同じ所定値ずつ減少し、所定時間が経過するか、カウント値が所定値以下になったら、再びカウント値を所定値ずつ増加するようにすれば、基準信号CNT1〜CNT4は三角波信号となる。なお、本実施形態では、第1〜第4クロック信号CLK1〜CLK4を、第1から第4の順に、90°ずつ位相をずらしている。また、各カウンタ32a〜32dでは、カウント値の増加開始又は減少開始の初期値offsetを互いに異なる値としてある。具体的には、最も位相の早い第1クロック信号CLK1をカウントする第1カウンタ32aのoffset値が最も小さく、次いで、第2カウンタ32b、第3カウンタ32c、第4カウンタ32dの順にoffset値が大きくなるようにしている。
そして、第1〜第4比較器33a〜33dは、この第1〜第4基準信号CNT1〜CNT4と入力信号IN、この場合は前記駆動波形信号WCOMとを比較し、例えば入力信号INが基準信号CNT1〜CNT4より大きければハイレベル、即ち論理値“1”とし、入力信号INが基準信号CNT1〜CNT4より小さければローレベル、即ち論理値“0”とする信号を第1〜第4比較信号(実質的にはパルス幅変調信号と同じである)PWM1〜PWM4として出力する。合成回路34は、第1〜第4比較信号PWM1〜PWM4の論理和或いは論理積を論理演算し、その論理演算結果を、最終的なパルス幅変調信号PWMとして出力する。
このパルス幅変調回路では、互いに位相の異なる4つのクロック信号CLK1〜CLK4の夫々から4つの基準信号CNT1〜CNT4を生成するので、それらの基準信号CNT1〜CNT4の位相も互いに異なっている。この互いに位相の異なる4つの基準信号CNT1〜CNT4と入力信号INとを夫々比較して、夫々の比較結果を4つの比較信号PWM1〜PWM4を出力するから、それらの比較信号PWM1〜PWM4の位相も異なるものとなる。しかしながら、これらの比較信号PWM1〜PWM4の論理和或いは論理積からなる最終的なパルス幅変調信号PWMは、クロック信号CLK1〜CLK4の位相差分だけ、オンデューティとなるタイミング或いはオフデューティとなるタイミングが早いか遅いかというものになり、結果的に、クロック信号がCLK1〜CLK4のうちの1つだけの場合に対して、クロック信号数倍、即ち4倍の高分解能となる。それでいて、クロック信号CLK1〜CLK4自体の周波数は、単独のクロック信号のままであるから、基準信号と入力信号との比較演算も容易であり、内部演算処理が安定する。また基準信号CNT1〜CNT4の周波数を低くすることなく、パルス幅変調信号PWMの分解能を高めているので、高速応答も可能となる。
本発明のパルス幅変調回路による高分解能、高速応答の詳細について、異なる実施形態で説明する。図8は、本発明のパルス幅変調回路の第2実施形態を示すブロック図である。図は、ブロック化してあるが、実際には、プログラムによる演算処理で構築しても構わない。
この実施形態では、クロック信号のカウンタが1つだけである。前記図7と同等の機能を有するクロック信号生成回路31は、クロック信号CLKの整数倍のクロック信号を出力するPLL(Phase Locked Loop)回路311と、その整数倍のクロック信号から、位相が90°ずつずれた、即ち互いに位相の異なる4つの第1〜第4クロック信号CLK1〜CLK4を出力するマルチフェイズクロック回路312が備えられている。なお、PLL回路に代えて、DLL(Delay Locked Loop)回路を用いてもよい。
カウンタ回路35は、4つのクロック信号CLK1〜CLK4のうちの第1クロック信号CLK1のみをカウンタ351でカウントし、そのカウント値に応じた電圧信号を基準信号CNTとして出力する。なお、カウンタ回路35には、後述の第1〜第4加算・比較器36a〜36dに増加開始初期値offset1〜offset4を付与するパルス幅変調管理回路352が備えられている。また、カウンタ351は、後述するマスク回路からリセット信号が出力されると、カウント値をリセットする。
第1加算・比較器36a〜36dは、第1クロック信号CLK1の立上がりでカウンタ351の基準信号CNTを入力し、それをパルス幅変調管理回路352からの第1〜第4増加開始初期値offset1〜offset4に加算して第1〜第4基準信号CNT1〜CNT4を算出し、夫々の基準信号CNT1〜CNT4と入力信号IN、この場合は前記駆動波形信号WCOMとを比較し、例えば入力信号INが基準信号CNT1〜CNT4より大きければハイレベル、即ち論理値“1”とし、入力信号INが基準信号CNT1〜CNT4より小さければローレベル、即ち論理値0”とする信号を第1〜第4比較信号PWM1〜PWM4として出力する。但し、第2〜第4比較信号PWM2〜PWM4は、第2〜第4同期回路(第1同期回路は存在しないが、符号の整合と理解を容易にするために、第2〜第4同期回路とした)37b〜37dで、第2〜第4クロック信号CLK2〜CLK4の立上がりに同期して出力される。出力された第1〜第4クロック信号CLK1〜CLK4は、OR回路38で論理和が論理演算され、出力される。
マスク回路39は、カウンタ351のカウント値を、第4クロック信号CLK4の立上がりに合わせて読込み、このカウント値が所定値以上になったら、次の第4クロック信号CLK4の立上がりまで、ハイレベル、即ち論理値“1”のリセット信号RESETを出力する。リセット信号RESETは反転回路40で反転され、前記OR回路38の出力と共にAND回路41に入力される。AND回路41では、OR回路38の出力と反転回路40の出力の論理積を論理演算し、その論理演算結果を最終的なパルス幅変調信号PWMとして出力する。
図9には、図8のパルス幅変調回路のクロック信号CLK1〜CLK4、基準信号CNT1〜CNT4、比較信号PWM1〜PWM4、リセット信号RESET、最終的なパルス幅変調信号PWM(OR)の経時変化を示す。図中のパルス幅変調信号PWM(AND)は、OR回路38に代えて、AND回路を介装した場合の最終的なパルス幅変調信号である。また、前記増加開始初期値offset1〜offset4は、同図に示すように、一定値ずつ大きくなっており、これにより基準信号CNT1〜CNT4の初期値に電圧差を付与している。
その結果、最も電位の高い第4基準信号CNT4が最も遅いタイミングでオフデューティになる傾向があるが、入力信号INの状態によっては、そうならない場合もある。これらの基準信号CNT1〜CNT4の比較結果である比較信号PWM1〜PWM4の論理和からなるパルス幅変調信号PWM(OR)も、論理積からなるパルス幅変調信号PWM(AND)も、パルス幅変調PWM1〜PWM4の何れか1つだけと比較すると、入力信号INの特徴を正確に捉えており、高分解能であることが分かる。また、前述と同様に、各クロック信号CLK1〜CLK4は、さほど周波数が高くないので、内部演算処理が安定する。また基準信号CNT1〜CNT4の周波数を低くすることなく、パルス幅変調信号PWMの分解能を高めているので、高速応答も可能となる。
ちなみに、比較信号PWM1〜PWM4の論理和からなるパルス幅変調信号PWM(OR)と、論理積からなるパルス幅変調信号PWM(AND)とを比較すると分かるように、論理和からなるパルス幅変調信号PWM(OR)は、論理積からなるパルス幅変調信号PWM(AND)に対して、例えばオフデューティのタイミングが所定値だけ遅くなった状態で出力される。そのため、入力信号レベルに対応する出力デューティ比を高めに設定したい場合には論理和からなるパルス幅変調信号PWM(OR)を、デューティ比を低めに設定したい場合には論理積からなるパルス幅変調信号PWM(AND)を用いるようにすればよい。あるいは、PWM(OR)とPWM(AND)のパルス幅変調信号の両方を出力しておき、さらに後段で適宜使い分けるように構成してもよい。また、この傾向を逆に利用すれば、例えばオフデューティのタイミングを微調整することも可能である。即ち、例えば、論理積からなるパルス幅変調信号PWM(AND)の立下がりエッジを第1クロック信号CLK1の2/4(=1/2)だけ遅延させれば、オフデューティのタイミングを、論理和からなるパルス幅変調信号PWM(OR)と、論理積からなるパルス幅変調信号PWM(AND)の中間に設定することが可能となる。
また、加算・比較回路36a〜36dで、基準信号CNT1〜CNT4と入力信号INとを比較する際、例えばノイズ対策としてヒステリシスを与えることも可能である。即ち、例えば比較信号PWM1〜PWM4がオンデューティからオフデューティに切り替わるときの基準信号CNT1〜CNT4を少し高めに設定し、比較信号PWM1〜PWM4がオフデューティからオンデューティに切り替わるときの基準信号CNT1〜CNT4を少し低めに設定すればよい。
図10は、本発明のパルス幅変調回路の第3実施形態を示すブロック図である。この実施形態も、ブロック化されているが、実際にはプログラムによる演算処理で構築しても構わない。
同図において、クロック信号生成回路31は、前記第1実施形態及び第2実施形態と同様の機能を有し、前記クロック信号CLKから互いに位相の異なる、具体的には位相が90°ずつずれた第1〜第4クロック信号CLK1〜CLK4を生成する。入力信号IN、この場合は駆動波形信号WCOMを読込む第1〜第4レジスタ42a〜42dのうち、第1レジスタ42aは第4クロック信号CLK4の立上がりで入力信号INを読込み、第2レジスタ42bは第1クロック信号CLK1の立上がりで入力信号INを読込み、第3レジスタ42cは第2クロック信号CLK2の立上がりで入力信号INを読込み、第4レジスタ42dは第3クロック信号CLK3の立上がりで入力信号INを読込む。これは、後述する変調器43a〜43d内での基準信号CNT1〜CNT4と入力信号INとの比較のタイミングに先んじて、入力信号INを読込んでいるのである。
入力信号INと後述する基準信号との比較を行って第1〜第4比較信号PWM1〜PWM4を出力する第1〜第4変調器43a〜43dには、パルス幅変調自体を許可するイネーブル信号Enableが入力され、このイネーブル信号Enableがハイレベル、即ち論理値“1”のときに、第1変調器43aは、第1クロック信号CLK1の立上がりで第1レジスタ42aに記憶されている入力信号INの値と基準信号とを比較して第1比較信号PWM1を出力し、第2変調器43bは、第2クロック信号CLK2の立上がりで第2レジスタ42bに記憶されている入力信号INの値と基準信号とを比較して第2比較信号PWM2を出力し、第3変調器43cは、第3クロック信号CLK3の立上がりで第3レジスタ42cに記憶されている入力信号INの値と基準信号とを比較して第3比較信号PWM3を出力し、第4変調器43dは、第4クロック信号CLK4の立上がりで第4レジスタ42dに記憶されている入力信号INの値と基準信号とを比較して第4比較信号PWM4を出力する。なお、第1変調器43aは、後述する選択スイッチ46を切換える切換え信号Switchを出力する。
第1〜第4パルス変調信号PWM1〜PWM4は、全てAND回路44及びOR回路45に並列に入力され、それらの出力は、切換え信号Switchにより選択スイッチ46で切換えられる。
図11には、第1〜第4変調器43a〜43dの詳細を示す。各変調器43a〜43dは、所定周期毎に、クロック信号CLK1〜CLK4に応じたカウント値の増加と減少を切換えることにより、基準信号として三角波信号を生成し、その三角波信号と入力信号INとを比較して比較信号PWM1〜PWM4を出力する。そのため、各変調器43a〜43dは、カウント制御器47、分周器(カウンタ)48、アップダウンカウンタ49、比較器50、AND回路51を備える。カウント制御器47は、イネーブル信号Enableがハイレベルにあるとき、各クロック信号CLK1〜CLK4の立上がりで当該イネーブル信号Enableを後段に出力する。分周器(カウンタ)48は、カウント制御器47からのイネーブル信号Enableと三角波信号の一周期に相当する分周比を読込み、各クロック信号CLK1〜CLK4をカウントして、三角波信号の半周期毎にハイレベル、即ち論理値“1”とローレベル、即ち論理値“0”が切換わる切換え信号Switchを出力する。アップダウンカウンタ49は、後述する増減値DEF、減少開始初期値UTOD、増加開始初期値DTOUを読込み、各クロック信号CLK1〜CLK4の立上がりで、当該増減値DEF分ずつ、増加又は減少を繰り返して基準信号CNT1〜CNT4として出力し、且つ前記三角波信号の半周期に相当する切換え信号Switchの切換わり毎に増加と減少を切換える。比較器50は、アップダウンカウンタ49から出力される基準信号CNT1〜CNT4と入力信号INとを比較して、入力信号INが基準信号CNT1〜CNT4より大きいときにハイレベル、即ち論理値“1”、小さいときにローレベル、即ち論理値“0”の比較信号PWM1〜PWM4を出力する。AND回路51は、イネーブル信号Enableがハイレベルにあるときにのみ、比較信号PWM1〜PWM4を通過させて出力する。
図12には、本実施形態のクロック信号CLK1〜CLK4、基準信号CNT1〜CNT4、比較信号PWM1〜PWM4、最終的なパルス幅変調信号PWMの経時変化を示す。図12aは、アップダウンカウンタ49のカウント値、即ち基準信号CNT1〜CNT4の増加時、図12bは、基準信号CNT1〜CNT4の減少時を示す。この説明では、アップダウンカウンタ49の増減値DEFを4とし、第1基準信号CNT1の増加開始初期値DTOUを0、減少開始初期値UTODを16とした。同様に、第2基準信号CNT2の増加開始初期値DTOUを1、減少開始初期値UTODを15、第3基準信号CNT3の増加開始初期値DTOUを2、減少開始初期値UTODを14、第4基準信号CNT4の増加開始初期値DTOUを3、減少開始初期値UTODを13とした。また、切換え信号Switchにより、基準信号CNT1〜CNT4の増加時にはAND回路44からの出力が最終的なパルス幅変調信号PWMとして選択され、基準信号CNT1〜CNT4の減少時にはOR回路45からの出力が最終的なパルス幅変調信号PWMとして選択されるようにした。
このようにして互いに異なる増加開始初期値DTOUや減少開始初期値UTODが設定され、且つ各基準信号CNT1〜CNT4が互いに位相の異なるクロック信号CLK1〜CLK4の立上がりで増加又は減少すると、基準信号CNT1〜CNT4の電位と位相が少しずつずれる。図13には、基準信号CNT1〜CNT4を重ね合わせたイメージを示した。このような基準信号CNT1〜CNT4と、値が“8”の入力信号INとを比較すると、各基準信号CNT1〜CNT4に対応する比較信号PWM1〜PWM4もオフデューティになるタイミングやオンデューティになるタイミングが少しずれている。図12aや図13aに示す基準信号CNT1〜CNT4の増加時にはAND回路44からの出力が選択されるので、全ての比較信号PWM1〜PWM4がオンデューティにあるときにだけ、最終的なパルス幅変調信号PWMもオンデューティ、即ちハイレベルになる。また、図12bや図13bに示す基準信号CNT1〜CNT4の減少時にはOR回路45からの出力が選択されるので、何れかの比較信号PWM1〜PWM4がオンデューティにあるときに、最終的なパルス幅変調信号PWMがオンデューティ、即ちハイレベルになる。
図12には、入力信号INの値が“8”であるときと、“9”であるときの最終的なパルス幅変調信号PWMを示した。同図から明らかなように、基準信号CNT1〜CNT4の増加時でも減少時でも、入力信号INの値が“8”であるときと、“9”であるときの最終的なパルス幅変調信号PWMのオフデューティのタイミング或いはオンデューティのタイミングは、クロック信号CLK1〜CLK4の位相差分、即ち90°であり、極めて高い分解能を示す。また、基準信号CNT1〜CNT4の増加時にはAND回路44からの出力、即ち論理積を選択し、基準信号CNT1〜CNT4の減少時にはOR回路45からの出力、即ち論理和を選択するようにしたことで、前述した両者のデューティ比の僅差が相殺される。なお、周知のように、基準信号に三角波信号を用いた方が、ノコギリ波信号を用いた場合に比して、若干、波形歪みを低減することができる。
下記表1には、アップダウンカウンタ49でカウントされる基準信号CNT1〜CNT4の具体的な増減値DEF、減少開始初期値UTOD、増加開始初期値DTOUの値の一例を示す。つまり、例えば基準信号CNT1は、増加開始初期値0から増加を開始し、クロック信号CLK1の立上がり毎に128ずつ増加し、カウント値が減少開始初期値1024になったら減少に転じ、クロック信号CLK1の立上がり毎に128ずつ減少する。また、基準信号CNT4は、増加開始初期値96から増加を開始し、クロック信号CLK4の立上がり毎に128ずつ増加し、カウント値が減少開始初期値928になったら減少に転じ、クロック信号CLK4の立上がり毎に128ずつ減少する。
図14aには、これら基準信号CNT1〜CNT4のカウント値を重ね合わせて三角波信号を擬似的に表した。図14bは、サンプル番号8に表れる三角波信号の最大値付近を、図14cは、サンプル番号16に表れる三角波信号の最小値付近を示す。図14に示した例では、三角波信号の振幅が1024となるため、入力信号INのレベルが最大10ビットまで対応することができる。なお、図14に示す重ね合わされた形の三角波信号は、実際に入力信号との比較に用いられる基準信号ではなく、擬似的なものであり、実際の入力信号との比較に用いられる基準信号は、あくまでも個々の基準信号CNT1〜CNT4なのであるが、表1のように増減値DEF、減少開始初期値UTOD、増加開始初期値DTOUを設定することにより、精度の高い三角波信号を得ることができ、これによりより一層正確なパルス幅変調信号を得ることが可能となる。
このように前記各実施形態のパルス幅変調回路によれば、互いに位相の異なる複数のクロック信号CLK1〜CLK4の夫々から、各クロック信号CLK1〜CLK4毎に増加(又は減少する)複数の基準信号CNT1〜CNT4を生成し、各基準信号CNT1〜CNT4と入力信号INとの大小関係を夫々比較した結果を比較信号PWM1〜PWM4として夫々出力し、出力される複数の比較信号PWM1〜PWM4を、論理演算により一つの2値信号からなるパルス幅変調信号PWMとして出力する構成としたため、出力されるパルス幅変調信号PWMは2値信号であることから、抵抗やスイッチング素子は1つでよく、これにより回路規模を抑制することができると共に、位相の異なる複数のクロック信号CLK1〜CLK4の夫々から生成した基準信号CNT1〜CNT4と入力信号INとの大小関係を比較し、その比較信号PWM1〜PWM4の論理演算から1つの2値信号をパルス幅変調信号PWMとして出力することから、時間軸方向への高分解能化が可能になる。また、基準信号の元となるクロック信号の数(位相数)を増やすことで、基準信号CNT1〜CNT4の周波数は高い状態に保ったまま、パルス幅変調信号PWMの分解能を高めているので、高速応答も可能となる。それでいながら、各クロック信号CLK1〜CLK4の周波数は高くしなくてもよいので、単純な回路で安定的に動作させることが可能になる。
また、位相の異なる複数のクロック信号CLK1〜CLK4の夫々に対応して、各クロック信号CLK1〜CLk4毎に増加又は減少し且つ増加開始又は減少開始の初期値offset、DTOU、UTODが夫々異なる複数のカウンタ32a〜32d、49を備え、各カウンタ32a〜32d、49の出力を複数の基準信号CNT1〜CNT4とすることにより、時間軸方向への高分解能化が可能になる。また、基準信号の元となるクロック信号の数(位相数)を増やすことで、基準信号CNT1〜CNT4の周波数は高い状態に保ったまま、パルス幅変調信号PWMの分解能を高めているので、高速応答も可能となる。それでいながら、各クロック信号CLK1〜CLK4の周波数は高くしなくてもよいので、単純な回路で安定的に動作させることが可能になる。
また、位相の異なる複数のクロック信号CLK1〜CLK4のうちの第1クロック信号CLK1に対応して、当該クロック信号CLK1毎に増加(又は減少)するカウンタ351と、カウンタ351の出力を位相の異なる複数のクロック信号CLK1〜CLK4の夫々毎に、互いに異なる増加開始(又は減少開始)の初期値offset1〜offset4に加算(又は減算)して複数の基準信号CNT1〜CNT4を生成する加算・比較器(加減算部)36a〜36dとを備えることにより、上記の効果に加え、更にカウンタの数を低減することができ、回路規模を抑制することができる。
また、アップダウンカウンタ49が、所定の周期で、増加と減少を切り替えることにより、基準信号CNT1〜CNT4として三角波信号を得ることができ、これにより上記の効果に加え、更にパルス幅変調信号の出力歪みを抑制することができる。
また、複数の比較信号PWM1〜PWM4の論理和を出力すると共に、複数の比較信号PWM1〜PWM4の論理積を出力し、論理和又は論理積の何れかを選択してパルス幅変調信号PWMとして出力することにより、時間軸方向に高分解能なパルス幅変調信号を出力することが可能になると共に、必要に応じてパルス幅変調信号PWMのデューティ比を調整することが可能となる。
また、アップダウンカウンタ49の増加時には、論理和及び論理積の何れか一方を選択し、アップダウンカウンタ49の減少時には、論理和及び論理積の何れか他方を選択することにより、基準信号CNT1〜CNT4の波形が三角波であるような場合に、基準信号CNT1〜CNT4の増加時の比較結果に含まれる比較誤差と減少時の比較結果に含まれる比較誤差とがキャンセルされるように合成されるので、高分解能で高精度なパルス幅変調信号を出力することが可能となる。
また、カウンタ351のリセット時に、パルス幅変調信号PWMが変化しないようにマスクすることにより、カウンタ351のリセット時のパルス幅変調信号PWMを安定させることができ、これによりパルス幅変調信号PWMの分解能を確保することができる。
なお、前記実施形態では、4つのクロック信号CLK1〜CLK4が互いに90°ずつ位相ズレしている場合について説明したが、クロック信号の数は、これに限定されない。また、カウンタの増加又は減少の単位dを、互いに位相の異なるクロック信号の数Nの整数倍とし、最も位相の早いクロック信号CLK1に対するi番目のクロック信号CLKiの位相差がpi°である場合には、当該i番目のクロック信号CLKiに対応した増減開始又は減少開始の初期値offsetiを、aを定数とする、offseti=d×pi/360+aとすれば、あらゆる位相差に対応することができる。ちなみに、定数aは、カウンタの値、即ち基準信号CNTi全体をドリフト的にずらすためのものである。
また、前記実施形態では、クロック信号生成回路を構成の一部としたが、互いに異なる位相の複数のクロック信号を外部から入手することができれば、クロック信号生成回路は構成要件に含まれない。
また、前記実施形態では、本発明のパルス幅変調回路をラインヘッド型の液体噴射型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明のパルス幅変調回路は、マルチパス型の液体噴射型印刷装置にも同様に適用可能である。
また、前記実施形態では、本発明のパルス幅変調回路を液体噴射型印刷装置のデジタル電力増幅器の駆動回路に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
更には、本発明のパルス幅変調回路は、噴射装置に限らず、通信などのインタフェースやモータ駆動など、パルス幅変調を利用するあらゆるアプリケーションに適用可能であり、種々の駆動回路として有効に利用することができる。