JP2010114500A - 電力増幅装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】デジタル電力増幅器を用いて電力増幅する際、平滑フィルタの次数を低くすることができると共に高精度な駆動信号を得ることが可能な電力増幅装置を提供する。
【解決手段】複数の変調信号PWM1、PWM2の1つをレベルシフトし、それらの変調信号PWM1、PWM2を該当するブートストラップ回路32付きのデジタル電力増幅器27a、27bの夫々で電力増幅し、電力増幅された電力増幅変調信号APWM1、APWM2を平滑化して駆動信号COMを出力するにあたり、電力増幅変調信号APWMの到達電位のステップ間の電位差が小さくなり、変調信号の周波数成分を除去するための平滑フィルタ29の次数を低くすることができると共に、レベルシフト回路33やデジタル電力増幅器27a、27bで生じる信号伝播遅延時間Δt1、Δt2の差を遅延回路34a、34bで調整して駆動信号COMを高精度化することができる。
【選択図】図7
【解決手段】複数の変調信号PWM1、PWM2の1つをレベルシフトし、それらの変調信号PWM1、PWM2を該当するブートストラップ回路32付きのデジタル電力増幅器27a、27bの夫々で電力増幅し、電力増幅された電力増幅変調信号APWM1、APWM2を平滑化して駆動信号COMを出力するにあたり、電力増幅変調信号APWMの到達電位のステップ間の電位差が小さくなり、変調信号の周波数成分を除去するための平滑フィルタ29の次数を低くすることができると共に、レベルシフト回路33やデジタル電力増幅器27a、27bで生じる信号伝播遅延時間Δt1、Δt2の差を遅延回路34a、34bで調整して駆動信号COMを高精度化することができる。
【選択図】図7
Description
本発明は、アクチュエータを駆動するための基準となる駆動波形信号を電力増幅する電力増幅装置に関するものである。
例えば、液体噴射型印刷装置では、電力増幅装置で電力増幅された駆動信号を圧電素子などのノズルアクチュエータに印加してノズルから液体を噴射するが、例えばリニア駆動されるプッシュプル接続型トランジスタ等のアナログ電力増幅器で駆動信号を電力増幅すると、損失が大きく、放熱のための大きなヒートシンクが必要となる。そこで、下記特許文献1では、駆動信号をデジタル電力増幅器、所謂D級アンプで電力増幅することにより、損失を低減し、ヒートシンクを無用としている。
特開2005−329710号公報
ところで、前記特許文献1のように、デジタル電力増幅器を用いて駆動信号を電力増幅する場合、電力増幅する前の変調信号の周波数成分を平滑フィルタで除去する必要があり、変調信号周波数成分を十分に除去するためには駆動波形信号成分を安定して通過し且つ変調信号周波数成分を十分に除去するような急峻な周波数特性の平滑フィルタ、換言すれば高次な平滑フィルタが必要となり、その場合には、平滑フィルタに用いられるコイルに流れる電流量が大きくなり、ヒステリシスによる損失が大きくなってしまう。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、デジタル電力増幅器を用いて電力増幅する場合に、平滑フィルタの次数を低くすることができると共に高精度な駆動信号を得ることが可能な電力増幅装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、デジタル電力増幅器を用いて電力増幅する場合に、平滑フィルタの次数を低くすることができると共に高精度な駆動信号を得ることが可能な電力増幅装置を提供することを目的とするものである。
上記諸問題を解決するため、本発明の電力増幅装置は、アクチュエータを駆動するための基準となる駆動波形信号を複数の変調信号にパルス変調する変調回路と、前記変調回路でパルス変調された複数の変調信号の一部をレベルシフトするレベルシフト回路と、プッシュプル接続されたスイッチング素子対からなる複数段のデジタル電力増幅器、及び前記変調回路でパルス変調された変調信号及び前記レベルシフト回路でレベルシフトされた変調信号の夫々を該当するデジタル電力増幅器で電力増幅すると共に、2段目以降のデジタル電力増幅器にブートストラップ回路を備えて、前段のデジタル電力増幅器によってバイアスされるデジタル電力増幅回路と、前記デジタル電力増幅回路で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化し、前記アクチュエータに向けて出力する平滑フィルタと、前記デジタル電力増幅回路の各デジタル電力増幅器からの出力タイミングを調整するタイミング調整回路と、を備えたことを特徴とするものである。
この電力増幅装置によれば、2段目以降にブートストラップ回路を備えた複数段のデジタル電力増幅器の出力を組合せて電力増幅変調信号とするため、当該電力増幅変調信号の到達電位のステップ間の電位差が小さくなり、その電力増幅変調信号から変調信号の周波数成分を除去するための平滑フィルタの次数を低くすることができると共に、電力増幅変調信号を多値信号とすることにより高精度な駆動信号を得ることが可能となる。また、平滑フィルタの次数を低くすることによって回路の構成を簡素化、小型化することができる。また、電力増幅変調信号の到達電位のステップ間の電位差が小さいので、デジタル電力増幅器のスイッチング素子の耐圧を低くすることができ、これにより回路の小型化が可能となる。また、消費電流は同じでも電源電位を低くすることができ、回路の小型化、省電力化が可能となる。また、特に前段のデジタル電力増幅器がオン、後段のデジタル電力増幅器がオフのとき、電力回生となり、更なる省電力化が可能となる。そして、レベルシフト回路やデジタル電力増幅器で生じる信号伝播遅延時間の差をタイミング調整回路で調整して駆動信号を高精度化することができる。
また、本発明の電力増幅装置は、前記タイミング調整回路は、遅延回路であることを特徴とするものである。
この電力増幅装置によれば、信号伝播遅延時間の短い経路のデジタル電力増幅器の出力タイミングを遅くすることで、信号伝播遅延時間の差を調整し易くなる。
また、本発明の電力増幅装置は、前記遅延回路は、信号伝播遅延時間の長いレベルシフト回路及びデジタル電力増幅器の組合せに合わせて、信号伝播遅延時間の短いデジタル電力増幅器からの出力タイミングを遅延させることを特徴とするものである。
この電力増幅装置によれば、信号伝播遅延時間の差を調整し易い。
また、本発明の電力増幅装置は、前記変調回路の出力から各デジタル電力増幅器の出力までの信号伝播遅延時間を検出し、検出された信号伝播遅延時間に応じて、遅延回路による遅延時間を制御する制御部を備えたことを特徴とするものである。
この電力増幅装置によれば、信号伝播遅延時間の個体差を調整することが可能となり、より一層、駆動信号の高精度化が可能となる。
この電力増幅装置によれば、信号伝播遅延時間の短い経路のデジタル電力増幅器の出力タイミングを遅くすることで、信号伝播遅延時間の差を調整し易くなる。
また、本発明の電力増幅装置は、前記遅延回路は、信号伝播遅延時間の長いレベルシフト回路及びデジタル電力増幅器の組合せに合わせて、信号伝播遅延時間の短いデジタル電力増幅器からの出力タイミングを遅延させることを特徴とするものである。
この電力増幅装置によれば、信号伝播遅延時間の差を調整し易い。
また、本発明の電力増幅装置は、前記変調回路の出力から各デジタル電力増幅器の出力までの信号伝播遅延時間を検出し、検出された信号伝播遅延時間に応じて、遅延回路による遅延時間を制御する制御部を備えたことを特徴とするものである。
この電力増幅装置によれば、信号伝播遅延時間の個体差を調整することが可能となり、より一層、駆動信号の高精度化が可能となる。
次に、本発明の電力増幅装置の一実施形態として、液体噴射型印刷装置に用いられたものについて説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成図であり、図において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
液体噴射型印刷装置のうち、液体噴射ノズルの形成された液体噴射ヘッドをキャリッジと呼ばれる移動体に載せて印刷媒体の搬送方向と交差する方向に移動させるものを一般に「マルチパス型印刷装置」と呼んでいる。これに対し、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に長尺な液体噴射ヘッドを配置して、所謂1パスでの印刷が可能なものを一般に「ラインヘッド型印刷装置」と呼んでいる。
図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成図であり、図において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
液体噴射型印刷装置のうち、液体噴射ノズルの形成された液体噴射ヘッドをキャリッジと呼ばれる移動体に載せて印刷媒体の搬送方向と交差する方向に移動させるものを一般に「マルチパス型印刷装置」と呼んでいる。これに対し、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に長尺な液体噴射ヘッドを配置して、所謂1パスでの印刷が可能なものを一般に「ラインヘッド型印刷装置」と呼んでいる。
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数の液体噴射ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。各液体噴射ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射する液体の色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全ての液体噴射ヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液体噴射ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液体が噴射され、印刷が行われる。
液体噴射ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない各色の液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。そして、各液体噴射ヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを出力する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、所謂1パスによる印刷を行うことができる。
液体噴射ヘッドの各ノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、ノズルアクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液滴がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液滴の噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
液体噴射ヘッドの各ノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、ノズルアクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液滴がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液滴の噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
液体噴射ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液体噴射ヘッド2から液体を噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられている。この印刷基準信号出力装置は、例えば搬送ベルト6とそれに吸着されて搬送される印刷媒体1とが同期して移動されることに着目し、印刷媒体1が搬送経路中の所定位置を通過した後は、搬送ベルト6の移動に伴って要求される印刷解像度相当のパルス信号を出力し、このパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をノズルアクチュエータに出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色の液体を噴射し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
この印刷装置内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、例えば図3に示すように、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データ読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、各液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、各ドライバ63、65、66と外部の給紙ローラモータ17、液体噴射ヘッド2、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れの液体噴射ヘッド2の何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動信号選択データ)を算出し、この印刷データや駆動信号選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63、65、66に制御信号を出力する。各ドライバ63、65、66からはアクチュエータを駆動するための駆動信号が出力され、給紙ローラモータ17、電動モータ7、液体噴射ヘッド2内のノズルアクチュエータなどが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
図4には、本実施形態の印刷装置の制御装置から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるノズルアクチュエータを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電位を中心に電位が変化する信号とした。この駆動信号COMは、ノズルアクチュエータを駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、各駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液滴がノズルから噴射される。
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液滴の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液滴を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液滴を噴射せずに、例えばノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
各液体噴射ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて噴射するノズルを選択すると共に圧電素子などのノズルアクチュエータの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動信号選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動信号選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動信号選択データSI&SPをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号CLKが入力されている。なお、これ以後、ノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をノズルアクチュエータ22に供給するために各液体噴射ヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液体を噴射させるべきノズルに対応した圧電素子などのノズルアクチュエータ22を指定するための駆動信号選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COMをピエゾ素子などのノズルアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213を備えて構成されている。
シフトレジスタ211には、駆動信号選択データ信号SI&SPが順次入力されると共に、クロック信号CLKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動信号選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる圧電素子などのノズルアクチュエータは駆動信号選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、シフトレジスタ211の駆動信号選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をシフトレジスタ211に入力し、液体の噴射タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのノズルアクチュエータのグランド端である。また、この選択スイッチ201によれば、圧電素子などのノズルアクチュエータを駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後も、当該ノズルアクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
図6には、前述したノズルアクチュエータ22を駆動する駆動信号出力回路の概略構成を、図7には、変調回路からノズルアクチュエータ22までの具体的な構成の一例を示す。ラインヘッド型印刷装置を構成する液体噴射ヘッド2には多数のノズルが形成されており、図7に示すように、その夫々に、前述したノズルアクチュエータ22が設けられており、それらのノズルアクチュエータ22の上流側に例えばトランスミッションゲートで構成される選択スイッチ201が配設され、選択スイッチ201がオンされているノズルアクチュエータ22にのみ駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が印加される。
この駆動信号出力回路は、予め記憶されている波形データに基づいて、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の元、つまりノズルアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路25、駆動波形信号発生回路25で生成された駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26、変調回路26でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅回路28、デジタル電力増幅回路28で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)として液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータ22に供給する平滑フィルタ29とを備えて構成される。
駆動波形信号発生回路25は、予め設定されたデジタル電位データを時系列に組合せて出力し、それをD/A変換器でアナログ変換して駆動波形信号WCOMとして出力する。本実施形態では、この駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26に、パルス幅変調(PWM)回路を用いた。パルス幅変調は、周知のように、所定周波数の三角波信号やノコギリ波信号などの基準信号を発生し、この基準信号と駆動波形信号WCOMとを比較して、例えば基準信号より駆動波形信号WCOMが大きいときにオンデューティとなるパルス信号を変調信号として出力する。但し、本実施形態では、図8に示すように、例えば図の駆動信号COMが駆動波形信号WCOMと同等であるとしたとき、駆動波形信号WCOMが電源電位VHVより大きいときにオンデューティとなるパルスを第1変調信号PWM1として出力し、この第1変調信号PWM1がオフデューティのときには前記三角波信号と駆動波形信号WCOMの比較パルスを第2変調信号PWM2として出力し、第1変調信号PWMがオンデューティのときには、三角波信号に電源電位VHVを加えた信号と駆動波形信号WCOMの比較パルスを第2変調信号PWM2として出力するようにしたものである。本実施形態では、デジタル電力増幅回路28内に2段のデジタル電力増幅器を備えているので、変調回路26は、デジタル電力増幅器の数分の変調信号を出力していることになる。
デジタル電力増幅回路28は、前述したように、第1変調信号PWM1を電力増幅する第1デジタル電力増幅器27aと、第2変調信号PWM2を電力増幅する第2デジタル電力増幅器27bを備えている。第2デジタル電力増幅器27bのハイサイドは電源VHVに接続され、ローサイドは接地されている。第1デジタル電力増幅器27aと第2デジタル電力増幅器27bの間にはブートストラップ回路32が介装され、当該第1デジタル電力増幅器27aのハイサイドはブートストラップ回路32の整流子Dを介して電源VHVに接続され、ローサイドは第2デジタル電力増幅器27bの出力端に接続されている。即ち、後段に相当する第1デジタル電力増幅器27aのローサイドは、前段に相当する第2デジタル電力増幅器27bの出力でバイアスされる。ブートストラップ回路32は、第1デジタル電力増幅器27aのハイサイドからの電流を規制する整流子Dと、電源VHVと第2デジタル電力増幅器27bの出力間の電位差で充電されるコンデンサCBを備えている。なお、このコンデンサCBの容量は、圧電素子からなる容量性負荷であるノズルアクチュエータ22を駆動するのに十分な容量とする。具体的には、前段の第2デジタル電力増幅器27bがオンの状態で、後段の第1デジタル電力増幅器27aをオンオフする場合に、ブートストラップ電位を確保する容量とする。
第1及び第2デジタル電力増幅器27a、27bは、実質的に電力を増幅するためのハイサイドのスイッチング素子Q1及びローサイドのスイッチング素子Q2からなるハーフブリッジD級出力段31と、変調回路26からの変調信号に基づいて、それらのスイッチング素子Q1、Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲートドライバ回路30とを備えて構成されている。2つのスイッチング素子Q1、Q2のゲート−ソース間信号GH、GLは反転信号になっている。デジタル電力増幅器27a、27bでは、変調信号がHiレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはHiレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはLoレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はON状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はOFF状態となり、その結果、ハーフブリッジD級出力段31の出力は、ハイサイド電位となる。一方、変調信号がLoレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはLoレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはHiレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はOFF状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はON状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段31の出力はローサイド電位となる。
このようにハイサイド及びローサイドのスイッチング素子がデジタル駆動される場合には、ON状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、OFF状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、これらのデジタル電力増幅器27a、27bの損失は極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができ、冷却用放熱板などの冷却手段も不要である。ちなみに、トランジスタをリニア駆動するときの効率が30%程度であるのに対し、デジタル電力増幅器の効率は90%以上である。また、トランジスタの冷却用放熱板は、トランジスタ一つに対して60mm角程度の大きさが必要になるので、こうした冷却用放熱板が不要になると、実際のレイアウト面で圧倒的に有利である。
また、平滑フィルタ29は、コイルLとコンデンサCの組合せからなるローパスフィルタ(低域通過フィルタ)で構成され、このローパスフィルタによって電力増幅変調信号APWMの変調周波数成分、この場合は三角波信号やノコギリ波信号などの基準信号の周波数成分が除去される。
本実施形態では、ハイサイドが電源VHVに接続された前段の第2デジタル電力増幅器27bの後段に第1デジタル電力増幅器27aが配設され、且つ第1デジタル電力増幅器27aのローサイドはブートストラップ回路32によって電源VHV電位までブートストラップされているので、第1デジタル電力増幅器27aがオフであるときには、第2デジタル電力増幅器27bの出力がそのまま第1デジタル電力増幅器27aから電力増幅変調信号APWMとして出力されるが、第1デジタル電力増幅器27aがオンであるときには第1デジタル電力増幅器27aの出力と第2デジタル電力増幅器27bの出力との加算値が当該第1デジタル電力増幅器27aから電力増幅変調信号APWMとして出力される。
本実施形態では、ハイサイドが電源VHVに接続された前段の第2デジタル電力増幅器27bの後段に第1デジタル電力増幅器27aが配設され、且つ第1デジタル電力増幅器27aのローサイドはブートストラップ回路32によって電源VHV電位までブートストラップされているので、第1デジタル電力増幅器27aがオフであるときには、第2デジタル電力増幅器27bの出力がそのまま第1デジタル電力増幅器27aから電力増幅変調信号APWMとして出力されるが、第1デジタル電力増幅器27aがオンであるときには第1デジタル電力増幅器27aの出力と第2デジタル電力増幅器27bの出力との加算値が当該第1デジタル電力増幅器27aから電力増幅変調信号APWMとして出力される。
図8には、本実施形態の第1及び第2変調信号PWM1、PWM2、電力増幅変調信号APWM、駆動信号COMの経時変化を示す。本実施形態では、駆動波形信号WCOMが電源電位VHVより大きいときにオンデューティとなるパルスを第1変調信号PWM1として出力し、この第1変調信号PWM1がオフデューティのときには前記三角波信号と駆動波形信号WCOMの比較パルスを第2変調信号PWM2として出力し、第1変調信号PWMがオンデューティのときには、三角波信号に電源電位VHVを加えた信号と駆動波形信号WCOMの比較パルスを第2変調信号PWM2として出力するので、図の駆動信号COMと駆動波形信号WCOMが同等であるとすると、電力増幅変調信号APWMは、第1変調信号PWM1と第2変調信号PWM2とを加算した値となり、第1変調信号PWM1がオフデューティのときには、第2変調信号PWM2を第2デジタル電力増幅器27aで電力増幅した電力増幅変調信号APWMは電源電位VHVと電位0間のパルスとなり、第1変調信号PWM1がオンデューティのときには、これに加算される第2変調信号PWM2を第2デジタル電力増幅器27bで電力増幅した電力増幅変調信号APWMは電源電位VHVとその2倍値VHV×2間のパルスとなる。従って、2つの電力増幅変調信号の加算値からなる電力増幅変調信号APWMは電位0、電源電位VHV、電源電位の2倍値VHV×2を到達電位とするから、到達電位のステップ数は“3”となり、デジタル電力増幅器27a、27bの段数“2”よりも多い。平滑フィルタ29で平滑化する前の電力増幅変調信号APWMの到達電位のステップ数が多いほど、平滑化された後の駆動信号COMの波形精度は向上する。ちなみに、本実施形態では、第1変調信号PWM1の動作周波数は、第2変調信号PWM2の動作周波数よりも遙かに低い。
また、電源電位VHVは、駆動信号COM、即ち電力増幅変調信号APWMの波高値の半分程度でよいので、平滑フィルタ29は比較的緩やかな周波数特性であっても、変調周波数を十分に除去することができる。換言すれば、平滑フィルタ29の次数を低くすることが可能となり、回路構成の簡素化、小型化を可能とすると共に、合わせてコイルLの端子間電位差が小さくなるため、ヒステリシスによる損失も小さい。また、2段のデジタル電力増幅器27a、27bに流れる総電流は同じでも、電源電位VHVを駆動信号COM、即ち電力増幅変調信号APWMの波高値の半分程度にすることができるので、省電力化が可能となると共に、特に前段の第2デジタル電力増幅器27bのスイッチング素子Q1、Q2の耐圧を低くすることができ、回路の小型化も可能となる。また、ブートストラップ回路32により、前段の第2デジタル電力増幅器27bがオン、後段の第1デジタル電力増幅器27aがオフの時、容量性負荷であるノズルアクチュエータ22及びブートストラップ回路32のコンデンサCBの電荷が電源VHV側に流れる回生が起きるため、更なる省電力化が可能となる。
一方、第2デジタル電力増幅器27bのゲートドライバ回路は、基準電位がグラウンド電位であるのに対し、後段の第1デジタル電力増幅器27aのゲートドライバ回路30の基準電位は第2デジタル電力増幅器27bの出力電位となるため、本実施形態では、第1デジタル電力増幅器27aの上流側に、第1変調信号PWM1をレベルシフトするレベルシフト回路33が介装され、第2デジタル電力増幅器27bの出力電位を基準電位として第1変調信号PWM1をゲートドライバに出力している。レベルシフト回路33には、一般的なフォトカプラなどを用いた。
また、本実施形態では、第1変調信号PWM1及び第2変調信号PWM2の出力端の夫々に、タイミング調整回路として遅延回路34a、34bを介装している。フォトカプラなどで構成されるレベルシフト回路33は、一般に信号伝播遅延時間が長い。また、前述したように、高い動作周波数で動作する前段の第2デジタル電力増幅器27bの上流側に、レベルシフト回路のような高い動作周波数で動作させることが難しい回路を入れると、第2デジタル電力増幅器27の動作が不安定になってしまうので、第2デジタル電力増幅器27bの上流側にレベルシフト回路のような信号伝播遅延要素の大きい回路を入れることはできない。合わせて、第1デジタル電力増幅器27aと第2デジタル電力増幅器27bとでは、動作周波数の違いからゲートドライバ回路30の構成が異なり、両経路の信号伝播遅延時間を同じにすることはできない。つまり、第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1は、第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2よりも長い。
このように第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1と第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2が異なると、図9に示すように、第1デジタル電力増幅器27aで電力増幅された第1電力増幅変調信号APWM1の出力タイミングと、第2デジタル電力増幅器27bで電力増幅された第2電力増幅変調信号APWM2の出力タイミングが異なり、それらの合成信号からなる電力増幅変調信号APWMを平滑フィルタ29で平滑化しても、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の本来の波形精度が得られない。
そこで、本実施形態では、第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1から第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2を減じて、両者の信号伝播遅延時間差Δt2delayを算出し、これを第2遅延回路34bの遅延時間Δt2delayに設定する。すると、図10に示すように、第2遅延回路34bから出力される第2遅延変調信号DPWM2は、遅延時間Δ2delayだけ遅延しているので、本来の信号伝播遅延時間Δt2だけ、更に遅延して第2デジタル電力増幅器27bから出力される第2電力増幅変調信号APWM2の出力タイミングが、第1デジタル電力増幅器27aから出力される第1電力増幅変調信号APWM1の出力タイミングに一致する。従って、第1電力増幅変調信号APWM1と第2電力増幅変調信号APWM2の合成信号からなる電力増幅変調信号APWMを平滑フィルタ29で平滑化すれば、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の本来の波形精度が得られる。
このように本実施形態の電力増幅装置によれば、ノズルアクチュエータ22を駆動するための基準となる駆動波形信号WCOMを複数の変調信号PWM1、PWM2にパルス変調し、それらの変調信号PWM1、PWM2の1つ(一部)PWM1をレベルシフトし、それらの変調信号PWM1、PWM2の夫々を該当する複数のデジタル電力増幅器27a、27bの夫々で電力増幅し、電力増幅された電力増幅変調信号APWM1、APWM2を平滑化し、ノズルアクチュエータ22に向けて出力するにあたり、2段目以降にブートストラップ回路32を備えた複数段のデジタル電力増幅器27a、27bの出力APWM1、APWM2を組合せて電力増幅変調信号APWMとするため、当該電力増幅変調信号APWMの到達電位のステップ間の電位差が小さくなり、その電力増幅変調信号APWMから変調信号の周波数成分を除去するための平滑フィルタ29の次数を低くすることができると共に、電力増幅変調信号APWMを多値信号とすることにより高精度な駆動信号COMを得ることが可能となる。また、平滑フィルタ29の次数を低くすることによって回路の構成を簡素化、小型化することができる。また、電力増幅変調信号APWMの到達電位のステップ間の電位差が小さいので、デジタル電力増幅器27a、27bのスイッチング素子Q1、Q2の耐圧を低くすることができ、これにより回路の小型化が可能となる。また、消費電流は同じでも電源電位VHVを低くすることができ、回路の小型化、省電力化が可能となる。また、特に前段のデジタル電力増幅器27bがオン、後段のデジタル電力増幅器27aがオフのとき、電力回生となり、更なる省電力化が可能となる。そして、レベルシフト回路33やデジタル電力増幅器27a、27bで生じる信号伝播遅延時間Δt1、Δt2の差を遅延回路(タイミング調整回路)34a、34bで調整して駆動信号COMを高精度化することができる。
また、タイミング調整回路を、遅延回路34a、34bで構成することにより、信号伝播遅延時間の短い経路のデジタル電力増幅器27bの出力タイミングを遅くすることで、信号伝播遅延時間の差を調整し易くなる。
また、信号伝播遅延時間の長いレベルシフト回路33及びデジタル電力増幅器27aの組合せに合わせて、信号伝播遅延時間の短いデジタル電力増幅器27bからの出力タイミングを遅延させることにより、信号伝播遅延時間の差を調整し易い。
また、信号伝播遅延時間の長いレベルシフト回路33及びデジタル電力増幅器27aの組合せに合わせて、信号伝播遅延時間の短いデジタル電力増幅器27bからの出力タイミングを遅延させることにより、信号伝播遅延時間の差を調整し易い。
次に、本発明の電力増幅装置を液体噴射型印刷装置に適用した第2実施形態について説明する。本実施形態の液体噴射型印刷装置は、前記第1実施形態の液体噴射型印刷装置に類似しており、駆動信号出力回路の一部のみ異なる。図11には、駆動信号出力回路のうち、変調回路26から液体噴射ヘッド2までの具体的な構成を示す。この駆動信号出力回路も、前記第1実施形態の駆動信号出力回路に類似しており、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
本実施形態では、第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1及び第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2を検出して、タイミング調整回路である遅延回路34a、34bの遅延時間を制御する制御部35を設けた。この制御部35には、第1変調信号PWM1及び第2変調信号PWM2が入力されると共に、十分に大きい抵抗R1〜R4を介して、第1デジタル電力増幅器27aで電力増幅された第1電力増幅変調信号APWM1及び第2デジタル電力増幅器27bで電力増幅された第2電力増幅変調信号APWM2が検出される。遅延回路34a、34bの遅延時間は、デジタル的に変更可能とした。
制御部35は、マイクロコンピュータなどの演算処理装置で構成される。図12には、制御部35で行われる演算処理、具体的には、第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1の検出演算処理のフローチャートを示した。この演算処理は、遅延回路34a、34bの遅延時間を制御するために、第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1を検出するときに実行され、まずステップS1で、予め記憶されているデータから第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1検出用のテストパターンを読込む。
次にステップS2に移行して、テスト用の第1変調信号PWM1を出力する。
次にステップS3に移行して、第1カウンタCNT1をリセットする。
次にステップS4に移行して、第1デジタル電力増幅器27aの出力である第1電力増幅変調信号APWM1の電位が0Vであるか否かを判定し、第1電力増幅変調信号APWM1の電位が0Vである場合にはステップS6に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
ステップS6では、第1カウンタCNT1をインクリメントしてからステップS4に移行する。
ステップS5では、第1カウンタCNT1に相当する時間を第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1として記憶してからメインプログラムに復帰する。
次にステップS3に移行して、第1カウンタCNT1をリセットする。
次にステップS4に移行して、第1デジタル電力増幅器27aの出力である第1電力増幅変調信号APWM1の電位が0Vであるか否かを判定し、第1電力増幅変調信号APWM1の電位が0Vである場合にはステップS6に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
ステップS6では、第1カウンタCNT1をインクリメントしてからステップS4に移行する。
ステップS5では、第1カウンタCNT1に相当する時間を第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1として記憶してからメインプログラムに復帰する。
この演算処理によれば、図13に示すように、テスト用の第1変調信号PWM1が出力されてから、クロック信号CLK毎に、第1カウンタCNT1がインクリメントされる。そして、例えば第1カウンタCNT1が7のときに、第1デジタル電力増幅器27aの出力である第1電力増幅変調信号APWM1の電位が立ち上がると、その第1カウンタCNT1に相当する時間が第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1として記憶される。
図14には、制御部35で行われる第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2の検出及び第2遅延回路34bの遅延時間Δt2delay算出のための演算処理のフローチャートを示す。この演算処理は、遅延回路34a、34bの遅延時間を制御するために、第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt2を検出し、遅延回路34bの遅延時間Δt2delayを制御するときに実行され、まずステップS11で、予め記憶されているデータから第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2検出用のテストパターンを読込む。
図14には、制御部35で行われる第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2の検出及び第2遅延回路34bの遅延時間Δt2delay算出のための演算処理のフローチャートを示す。この演算処理は、遅延回路34a、34bの遅延時間を制御するために、第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt2を検出し、遅延回路34bの遅延時間Δt2delayを制御するときに実行され、まずステップS11で、予め記憶されているデータから第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2検出用のテストパターンを読込む。
次にステップS12に移行して、テスト用の第2変調信号PWM2を出力する。
次にステップS13に移行して、第2カウンタCNT2をリセットする。
次にステップS14に移行して、第2デジタル電力増幅器27bの出力である第2電力増幅変調信号APWM2の電位が0Vであるか否かを判定し、第2電力増幅変調信号APWM2の電位が0Vである場合にはステップS16に移行し、そうでない場合にはステップS15に移行する。
ステップS16では、第2カウンタCNT2をインクリメントしてからステップS14に移行する。
ステップS15では、第2カウンタCNT2に相当する時間を第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2として記憶する。
次にステップS17に移行して、記憶されている第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1を読込む。
次にステップS13に移行して、第2カウンタCNT2をリセットする。
次にステップS14に移行して、第2デジタル電力増幅器27bの出力である第2電力増幅変調信号APWM2の電位が0Vであるか否かを判定し、第2電力増幅変調信号APWM2の電位が0Vである場合にはステップS16に移行し、そうでない場合にはステップS15に移行する。
ステップS16では、第2カウンタCNT2をインクリメントしてからステップS14に移行する。
ステップS15では、第2カウンタCNT2に相当する時間を第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2として記憶する。
次にステップS17に移行して、記憶されている第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1を読込む。
次にステップS18に移行して、第1変調信号PWM1の経路の信号伝播遅延時間Δt1から第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間ΔT2を減じた値を第2遅延回路34aの遅延時間Δt2delayに設定してからメインプログラムに復帰する。
この演算処理によれば、前記図13と同様に、テスト用の第2変調信号PWM2が出力されてから、クロック信号CLK毎に、第2カウンタCNT2がインクリメントされる。そして、例えば第2カウンタCNT2が3のときに、第2デジタル電力増幅器27bの出力である第2電力増幅変調信号APWM2の電位が立ち上がると、その第2カウンタCNT2に相当する時間が第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2として記憶される。そして、前記信号伝播遅延時間Δt1から当該信号伝播遅延時間Δt1を減じた値を第2遅延回路34bの遅延時間Δt2delayに設定すると、前記第1実施形態の図10と同様に、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の本来の波形精度が得られる。
この演算処理によれば、前記図13と同様に、テスト用の第2変調信号PWM2が出力されてから、クロック信号CLK毎に、第2カウンタCNT2がインクリメントされる。そして、例えば第2カウンタCNT2が3のときに、第2デジタル電力増幅器27bの出力である第2電力増幅変調信号APWM2の電位が立ち上がると、その第2カウンタCNT2に相当する時間が第2変調信号PWM2の経路の信号伝播遅延時間Δt2として記憶される。そして、前記信号伝播遅延時間Δt1から当該信号伝播遅延時間Δt1を減じた値を第2遅延回路34bの遅延時間Δt2delayに設定すると、前記第1実施形態の図10と同様に、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の本来の波形精度が得られる。
このように、本実施形態の電力増幅装置によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、変調回路26の出力から各デジタル電力増幅器27a、27bの出力までの信号伝播遅延時間Δt1、Δt2を検出し、検出された信号伝播遅延時間に応じて、遅延回路34a、34bによる遅延時間を制御する構成としたため、信号伝播遅延時間の個体差を調整することが可能となり、より一層、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の高精度化が可能となる。
なお、前記実施形態では、2つの変調信号PWM1、PWM2の出力端の夫々に、タイミング調整回路として遅延回路34a、34bを介装したが、タイミング調整回路が、信号伝播遅延時間の長い経路に合わせて、信号伝播遅延時間の短い経路の出力タイミングを遅らせるものである場合には、信号伝播遅延時間の長い経路には遅延回路を省略することが可能である。
なお、前記実施形態では、2つの変調信号PWM1、PWM2の出力端の夫々に、タイミング調整回路として遅延回路34a、34bを介装したが、タイミング調整回路が、信号伝播遅延時間の長い経路に合わせて、信号伝播遅延時間の短い経路の出力タイミングを遅らせるものである場合には、信号伝播遅延時間の長い経路には遅延回路を省略することが可能である。
また、前記実施形態では、デジタル電力増幅器27a、27bを2段だけ設けているが、デジタル電力増幅器の数は3段以上であってもよく、夫々、後段のデジタル電力増幅器にブートストラップ回路を設けて、前段のデジタル電力増幅器によって電圧がバイアスされるようにすれば、小さな電源電圧で大きな出力電圧を得ることが可能となる。この場合も、タイミング調整回路が、信号伝播遅延時間の長い経路に合わせて、信号伝播遅延時間の短い経路の出力タイミングを遅らせるものである場合には、最も信号伝播遅延時間の長い経路には遅延回路を省略することが可能である。
また、前記実施形態では、タイミング調整回路として遅延回路を用いたが、各デジタル電力増幅器の出力タイミングを調整可能なものであれば、遅延回路以外のタイミング調整回路を使用することができる。
また、前記実施形態では、本発明の電力増幅装置をラインヘッド型の液体噴射型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の電力増幅装置は、マルチパス型の液体噴射型印刷装置にも同様に適用可能である。
また、前記実施形態では、タイミング調整回路として遅延回路を用いたが、各デジタル電力増幅器の出力タイミングを調整可能なものであれば、遅延回路以外のタイミング調整回路を使用することができる。
また、前記実施形態では、本発明の電力増幅装置をラインヘッド型の液体噴射型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の電力増幅装置は、マルチパス型の液体噴射型印刷装置にも同様に適用可能である。
また、前記実施形態では、本発明のパルス幅変調回路を液体噴射型印刷装置のデジタル電力増幅器の駆動回路に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
1は印刷媒体、2は液体噴射ヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラ、6は搬送ベルト、7は電動モータ、8は駆動ローラ、9は従動ローラ、10は排紙部、11は固定プレート、22はノズルアクチュエータ、25は駆動波形信号発生回路、26は変調回路、28はデジタル電力増幅回路、29は平滑フィルタ、30はゲートドライバ回路、31はハーフブリッジD級出力段、32はブートストラップ回路、33はレベルシフト回路、34a、34bは遅延回路、35は制御部
Claims (4)
- アクチュエータを駆動するための基準となる駆動波形信号を複数の変調信号にパルス変調する変調回路と、前記変調回路でパルス変調された複数の変調信号の一部をレベルシフトするレベルシフト回路と、プッシュプル接続されたスイッチング素子対からなる複数段のデジタル電力増幅器、及び前記変調回路でパルス変調された変調信号及び前記レベルシフト回路でレベルシフトされた変調信号の夫々を該当するデジタル電力増幅器で電力増幅すると共に、2段目以降のデジタル電力増幅器にブートストラップ回路を備えて、前段のデジタル電力増幅器によってバイアスされるデジタル電力増幅回路と、前記デジタル電力増幅回路で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化し、前記アクチュエータに向けて出力する平滑フィルタと、前記デジタル電力増幅回路の各デジタル電力増幅器からの出力タイミングを調整するタイミング調整回路と、を備えたことを特徴とする電力増幅装置。
- 前記タイミング調整回路は、遅延回路であることを特徴とする請求項1に記載の電力増幅装置。
- 前記遅延回路は、信号伝播遅延時間の長いレベルシフト回路及びデジタル電力増幅器の組合せに合わせて、信号伝播遅延時間の短いデジタル電力増幅器からの出力タイミングを遅延させることを特徴とする請求項2に記載の電力増幅装置。
- 前記変調回路の出力から各デジタル電力増幅器の出力までの信号伝播遅延時間を検出し、検出された信号伝播遅延時間に応じて、遅延回路による遅延時間を制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の電力増幅装置。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20120110 |