JP5584445B2 - セルロース極細繊維綿 - Google Patents
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Description
現在、単糸繊度1dtex程度のセルロース繊維綿としてモダール(登録商標)1dtex、リヨセル(登録商標)0.9dtexが既に提案されているが、従来から、セルロース繊維の単糸繊度が細く、繊維長が長いとネップ発生数が急増するという問題がある(特許文献1)。
しかしながら、単糸繊度0.8dtex以下のセルロース極細繊維綿は知られておらず、また、0.8dtexを下回るセルロース極細繊維綿であってネップの発生が少ない綿を、紡績工程においてを安定して生産することは困難である。また、単糸繊度の細い繊維からなる綿は、カーディング時にネップが多発するため、紡績糸や、繊維生地において、製品品位を大きく阻害することが問題であった。
ネップを減少する対策として、従来から、繊維長を短くする方策があるが、繊維同士の絡みの低下、紡績糸の糸物性の低下、紡績時の撚り回数の増加による生産効率の低下などが問題であった。
1.セルロース極細繊維を構成繊維として含む綿であって、該セルロース極細繊維の繊度が0.1〜0.8dtexであり、繊維長が20〜200mmであり、該綿のネップ発生数が100個/g以下であることを特徴とするセルロース極細繊維綿。
3.水分率が10〜14%であることを特徴とする上記1または2に記載のセルロース極細繊維綿。
4.白色度が70〜90%であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のセルロース極細繊維綿。
6.上記1〜5のいずれかに記載のセルロース極細繊維綿を用いてなることを特徴とする紡績糸。
7.セルロース極細繊維と他の繊維が混合されていることを特徴とするセルロース極細繊維混合綿。
8.上記7に記載の混合綿を用いてなることを特徴とする紡績糸。
本発明のセルロース極細繊維綿は、セルロース極細連続繊維を特定の長さにカットして得られた繊維を構成繊維として含み、単糸間の配列の平行度を高めることによって、カーディング時に発生するネップが低く抑えられたセルロース極細繊維綿である。
繊維の断面形状としては、特に限定されず、例えば、丸型、楕円型、まゆ型等が挙げられる。それらの中でも膠着性が改善されることによるネップ発生の抑制という観点から丸型が好ましい。
本発明のセルロース極細繊維綿は、水分率が10〜14%であることが好ましく、より好ましくは11〜13%の範囲である。水分率がこの範囲であると、綿の品質が長期に渡り安定する。
本発明のセルロース極細繊維綿は、嵩高性が45〜53mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは47〜51mmの範囲である。嵩高性がこの範囲にあると、綿の紡績性能に優れ、柔軟性に優れた紡績糸が得られる。
そのため、本発明においては、繊維表面での適度の自己接着性を得ることが肝要であり、生産工程において、程よく単糸間の自己接着性を制御することが重要である。
このような観点から、本発明者らは、好ましい態様として、銅アンモニアレーヨン法による紡糸方法を用いることにより、自己接着性を制御したセルロース極細連続繊維を安定して得ることができる条件を見出した。
セルロース極細繊維綿は非常に柔らかく、連続繊維をカットして得られた後の単糸は、その環境により容易に曲がり、巻き付き、絡みやすいという問題があるため、カット後の環境を制御することが必要である。特に、再生セルロース繊維の場合、単糸間の自己接着性を制御しただけでは、カーディング時に発生するネップ数を大きく低減することはできない。
具体的な手段としては、(1)カット後の綿の移送時間の短縮、(2)精練終了後のカット及び綿の移送時間の短縮、(3)精練・乾燥後のカットである。
これにより、カーディング時に単糸長方向を揃え単糸間の平行度を高く制御することが可能になり、カーディング時のネップ発生を大きく低減することを可能とした。
また、セルロース極細繊維綿の製造工程において、ネップの発生に大きく影響するのが精練工程である。たとえば銅アンモニアレーヨン法においては、紡糸されたセルロース極細繊維中の銅を除去し、残留するアルカリを中和するために硫酸浴が用いられる。このとき、おおむね1dtex以上の単糸繊度の綿は、充分な精練効率を得るために、乱流(糸の走行と対向する向流や渦巻き状態)の精練浴を通して再生を行う。しかし、単糸径が細い極細繊維綿においては、向流や乱流では毛羽が発生しやすくネップ発生につながることを見出し、また、単糸径が細いことによる精練酸の浸透が良いことから、糸の走行と同方向の整流状態の精練浴を用いることでネップの削減が可能となった。
(1)紡糸工程、カット工程、精練工程、水洗工程、油脂分付与工程、乾燥工程、梱包工程;
(2)紡糸工程、精練工程、水洗工程、カット工程、油脂分付与工程、乾燥工程、梱包工程;
(3)紡糸工程、精練工程、水洗工程、油脂分付与工程、乾燥工程、カット工程、梱包工程。
試料を20℃、65%RHにて24時間調湿した後、東洋測定器社製のテンシロンUTM−4Lを用い、試料長10mm、ヘッドスピード300mm/分にて、n=5を測定し、その平均値を求め物性値とした。
試料を20℃、65%RHにて24時間調湿した後、MESDAN製NATIネップ測定器を用い、試料重量1gにて、n=5を測定し、その平均値を求めネップ発生数(個/g)とした。
カット前の繊維を1.5m程度の長さに切り取った試料を、精練、給油、乾燥し、20℃、65%RHにて24時間調湿した後、繊維の片方を固定し、もう片方に50gの重りを取り付けて張った状態で0.6mに切断し、小数点第4位まで標示できる重量計で試料の重量を測定した。得られた測定値を総単糸数で割り、10000mに換算した値を単糸の繊度(dtex)とした。
カラーコンピューターにて測定した値を白色度とした。
(5)水分率
乾燥後の試料を適量採取して、その綿重量を測定し、その後、予め105℃に昇温した恒温乾燥機中に8時間以上入れて乾燥し、その重量差から計算した値を水分率とした。
カット工程直後の綿を採取し、物差しを用い、長さを測定して得られた値を繊維長とした。
(7)嵩高性
カーディングした綿を1g採取し、その綿を、内径35mm、長さ10cmのアクリル管に入れ、綿高を8cmに合わせ、続いて100gの重りを入れ、重りが底部から何mmの高さで止まるかを測定し、この値を嵩高性とした。底部からの高さが高いほど嵩高性が大きい。
Zellweger USTER社のUSTER TESTER3を用いて、NEP(糸太さに対して200%以上の太さの欠点)を、長さ1000mあたりの個数として、n=10で測定し、その平均値を求めてNEP個数(個/km)とした。
公知の方法によって得られた銅アンモニアレーヨン原液(質量比で、セルロース10.0%、アンモニア7.0%、銅3.6%)を用いて、流下緊張紡糸を行った。
紡糸ノズルとして、穴径0.6mm、穴数2430の吐出孔を有する紡口より、34℃〜39℃の温水中に該原液を吐出した。流下緊張紡糸法により、延伸並びに脱アンモニアして凝固せしめて青糸とし、この青糸を変向させ、硫酸(70℃、1.5wt%)にて前洗練処理し、その後、ロータリーカッターを用い、繊維長38mmにカットした。
なお、硫酸(70℃、1.5wt%)による再生は、硫酸液を、糸流れ方向と同一の方向で流し、整流状態で再生を行った。実施例1の工程を図2に示す。
下記の条件以外は、実施例1と同様にして、流下緊張紡糸を行った。
延伸並びに脱アンモニアして凝固せしめて青糸とし、この青糸を変向させ、硫酸(70℃、1.5wt%)にて前精練処理及び再生を行い、50℃の温水で水洗を行い、ロータリーカッターを用いて繊維長38mmにカットした。その後、油剤付与・乾燥を行なった後、梱包した。更に、この綿を用いて紡績糸を製造し、評価に供した。実施例2の工程を図2に示す。
下記の条件以外は、実施例1と同様にして、流下緊張紡糸を行った。
延伸並びに脱アンモニアして凝固せしめて青糸とし、この青糸を変向させ、硫酸(70℃、1.5wt%)にて前精練処理及び再生を行い、50℃の温水で水洗を行い、油剤付与・乾燥を行なった後、ロータリーカッターを用い、繊維長38mmにカットし、その後、梱包した。更に、この綿を用いて紡績糸を製造し、評価に供した。実施例3の工程を図2に示す。
下記の条件以外は、実施例1と同様に行った。
ロータリーカッターを用い、繊維長38mmにカットし、その後、硫酸(70℃、1.5wt%)にて、硫酸液を、糸流れ方向に対し、向流方式で流し、乱流状態で再生を行った。
公知の方法によって得られた銅アンモニアレーヨン原液(質量比で、セルロース10.0%、アンモニア7.0%、銅3.6%)を用いて、流下緊張紡糸を行った。
紡糸ノズルとして、穴径0.6mm、穴数2430の吐出孔を有する紡口より、32℃〜37℃の温水中に該原液を吐出した。流下緊張紡糸法により、延伸並びに脱アンモニアして凝固せしめて青糸とし、この青糸を変向させ、硫酸(70℃、1.5wt%)にて前洗練処理し、その後、ロータリーカッターを用い、繊維長38mmにカットした。
なお、硫酸(70℃、1.5wt%)による再生は、硫酸液を、糸流れ方向と同一の方向で流し、整流状態で再生を行った。
下記の条件以外は、実施例4と同様にして、流下緊張紡糸を行った。
延伸並びに脱アンモニアして凝固せしめて青糸とし、この青糸を変向させ、硫酸(70℃、1.5wt%)にて前精練処理及び再生を行い、50℃の温水で水洗を行い、ロータリーカッターを用いて繊維長38mmにカットした。その後、油剤付与・乾燥を行なった後、梱包した。更に、この綿を用いて紡績糸を製造し、評価に供した。
下記の条件以外は、実施例4と同様にして、流下緊張紡糸を行った。
延伸並びに脱アンモニアして凝固せしめて青糸とし、この青糸を変向させ、硫酸(70℃、1.5wt%)にて前精練処理及び再生を行い、50℃の温水で水洗を行い、油剤付与・乾燥を行なった後、ロータリーカッターを用い、繊維長38mmにカットし、その後、梱包した。更に、この綿を用いて紡績糸を製造し、評価に供した。
下記の条件以外は、実施例4と同様に行った。
ロータリーカッターを用い、繊維長38mmにカットし、その後、硫酸(70℃、1.5wt%)にて、硫酸液を、糸流れ方向に対し、向流方式で流し、乱流状態で再生を行った。
公知の方法によって得られた銅アンモニアレーヨン原液(質量比で、セルロース10.0%、アンモニア7.0%、銅3.6%)を用いて、流下緊張紡糸を行った。
紡糸ノズルとして、穴径0.6mm、穴数2430の吐出孔を有する紡口より、15℃〜20℃の温水中に該原液を吐出した。流下緊張紡糸法により、延伸並びに脱アンモニアして凝固せしめて青糸とし、この青糸を変向させ、硫酸(70℃、1.5wt%)にて前洗練処理し、その後、硫酸(70℃、1.5wt%)にて再生を行い、50℃の温水で水洗を行い、ロータリーカッターを用いて繊維長38mmにカットした。
なお、硫酸(70℃、1.5wt%)による再生は、硫酸液を、糸流れ方向と同一の方向で流し、整流状態で再生を行った。
下記の条件以外は、実施例4と同様にして、流下緊張紡糸を行った。
延伸並びに脱アンモニアして凝固せしめて青糸とし、この青糸を変向させ、硫酸(70℃、1.5wt%)にて前精練処理及び再生を行い、50℃の温水で水洗を行い、油剤付与・乾燥を行なった後、ロータリーカッターを用い、繊維長38mmにカットし、その後、梱包した。更に、この綿を用いて紡績糸を製造し、評価に供した。
下記の条件以外は、実施例7と同様に行った。
ロータリーカッターを用い、繊維長38mmにカットし、その後、硫酸(70℃、1.5wt%)にて、硫酸液を、糸流れ方向に対し、向流方式で流し、乱流状態で再生を行った。
繊度を1.7dtexとした以外は、比較例3と同様に行った。
上記の実施例及び比較例で得られたセルロース極細繊維綿の物性及び評価結果を表1〜3に示す。また、本発明のセルロース極細繊維綿の断面の顕微鏡写真を図1に示す。
表1〜3に示した通り、実施例1〜3では、ネップの発生個数が100個/g以下であり、嵩高性、吸水性に優れた、セルロース極細繊維が得られた。
表1〜3から明らかなように、本発明のセルロース極細繊維綿は、ネップ発生数が低く抑えられていることが分かる。
Claims (5)
- 構成繊維として、繊度が0.1〜0.8dtexであり、繊維長が20〜200mmであり、そしてネップ発生数が100個/g以下である、銅アンモニア法によって得られた再生セルロース極細繊維綿を用いてなることを特徴とする紡績糸。
- 前記セルロース極細繊維綿の水分率が10〜14%である、請求項1に記載の紡績糸。
- 前記セルロース極細繊維綿の白色度が70〜90%である、請求項1又は2に記載の紡績糸。
- 前記セルロース極細繊維綿の嵩高性が45〜53mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の紡績糸。
- 前記セルロース極細繊維以外の繊維が混合されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紡績糸。
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