JP4471620B2 - セルロース繊維不織布及びそれを用いた不織布製品 - Google Patents

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Description

本発明は、電子材料用途、医療系用途、生活資材用途、農業資材用途、食品関連用途、化粧品関連用途、産業資材用途等で使用する不織布に関する。更に詳しくは、拭き取り性が良好で、液拡散性が良好で、漂白を行わないでも白色度が高く、又、黄色度が低く、湿潤時の形態保持性、寸法安定性に優れ、肌触りが良好で、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく各種加工において加工適性が良好な不織布及び不織布製品に関する。
例えば、従来から電子材料用途のワイパー、医療系用途のガーゼやワイパー、生活資材用途のウエットティッシュ、ワイパー、衛生材料例えば生理用品等の表面材、農業資材用途の保水材、種子保持材、食品関連用途のワイパー、フィルター、化粧品関連用途のパフ表面材、化粧液保持材、産業資材用途のテープ用基材等の各種用途にセルロース繊維不織布が利用されている。
セルロース繊維不織布では、例えば、コットンをカード等でウエブ化した後に高圧液体流で3次元的に交絡させて不織布化したコットン不織布やビスコースレーヨン短繊維と熱融着系の繊維を混合してカード等でウエブ化して高圧液体流で3次元的に交絡させ熱処理により熱融着させた不織布や銅アンモニアレーヨン原液を流下緊張紡糸法によりウエブ化し、ウエブ化時に繊維が自己接着し、その後、高圧水流処理で3次元交絡を行って不織布化した再生セルロース連続長繊維不織布や特許文献1に記載の方法で製造されるリヨセル長繊維不織布等が知られている。特に銅アンモニウムレーヨン法による再生セルロース連続長繊維不織布としては、例えば旭化成せんい株式会社製のベンリーゼ(登録商標)があり、繊維径は10〜13μmであることが知られており、工業用途、医療系用途、生活資材用途、化粧品用途、食品関連用途等幅広く使用されている。
セルロース長繊維不織布は先に挙げた用途に利用されているが、これはセルロース繊維が以下の特長を有しているためと考えられる。
1.吸液性、特に吸水性に優れること。
2.生分解性であること。
3.吸湿性が高いため制電性能に優れること。
上記以外にも、耐溶剤性に優れている、耐熱性に優れている等のセルロース固有の特性も使用用途によっては加味される。
また、セルロース長繊維不織布の場合、上記の特長に加えて以下の特長も有している。
4.不織布を構成する繊維が長繊維なので、短繊維と比べて不織布から脱落する繊維が少ないこと。
5.自己接着や高圧液体流による3次元交絡によりバインダー等を用いずにウエブ化することができるため、皮膚等への化学的な刺激性が少ないこと。
6.長繊維であるため不織布表面に繊維端が少なく(稀に摩擦等により切断端が生じることがあるが通常の状態ではほとんどない)、皮膚等への物理的な刺激性が少ないこと。
しかし、セルロースの細い繊維を用いた不織布としては、フィブリル化したセルロース繊維から構成される不織布は存在するが、繊度のバラツキが大きく、繊維全体に渡って均一に細い繊度を有するものではない。
また、従来の再生セルロース連続長繊維不織布においては、その製法上機械軸方向の伸度が大きく、例えば各種の加工を実施する場合、不織布の機械軸方向に張力がかかると伸びが大きく、かつ、張力をかけない状態に比べ機械軸と直角方向の幅が狭くなるいわゆる幅入り現象が起き易く、機械による不織布搬送時の加工適性が充分ではなかった。
また、再生セルロース繊維は一般的に湿潤状態では膨潤し易く、かつ、湿潤強力が低下し、伸度が増大するため、例えば商品であるワイパーとして使用する場合など、寸法安定性が悪くなりやすいという問題があった。更に、例えば衛生材料等の表面材として用いる場合などでは、同様の理由から摩擦により不織布の表面組織がずれる、いわゆるヨレ現象が発生するという問題があった。
例えば、ワイパー等の用途では、セルロースの吸液性を生かしながら、より拭き取り性を向上させたいという要望があり、拭き取り性能の高いセルロース繊維不織布が要望されている。
更に、例えば衛生材料、医療用途、一般家庭用途では、綿不織布のように漂白をかけない状態においては若干ではあるが白色度が低く、又、黄色度が高く、意匠性や外観の観点から白色度を向上させ、黄色度を低下させたいという要望があった。
更に、蒸気滅菌を行うと再生セルロース中に微量含有されている低分子量セルロースであるヘミセルロースの影響と考えられる黄変が生じることもあり、蒸気滅菌での白色度及び黄色度維持、白色度向上、黄色度低下という要望もあった。しかしながら、白色度を向上、黄色度を低下させるために漂白剤を用いると不織布にイオンベースでの漂白剤の残留が用途によっては懸念されたり、加水分解により強度が低下したりするため、不織布に漂白剤を用いないでも白色度を向上、黄色度を低下させる技術及び不織布に対しての非常に高い要望があった。
以上の問題点、要望点を改善する目的で、合成繊維による不織布が提案されている。しかしながら、合成繊維よる不織布は湿潤時の強度や伸度は使用目的に応じて調整することが可能であるが、吸水性に劣ったり、溶剤等を用いるとオリゴマー等の溶出物が出たりする等の欠点を有している。また、合成繊維として例えばポリエステルとポリアミドの複合糸を割繊して極細の不織布を得ることもできるが拭き取り性が向上したり、吸液性が毛細管現象で多少は改善できるものの、生分解特性が無かったり、制電性能が出なかったり、溶剤等を用いるとオリゴマー等の溶出物が出たりする等の欠点は改善できていないものであった。
それゆえ、上記問題点を克服したセルロース繊維不織布は非常に高い要望があった。
特表2002−521585号公報
本発明はセルロース繊維不織布において、拭き取り性が良好で、液拡散性が良好で、漂白を行わないでも白く、蒸気滅菌を実施しても黄変が少なく、湿潤時の形態保持性、寸法安定性に優れ、肌触りが良好で、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく、各種加工において加工適性が良好な不織布及びそれを用いた不織布製品を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記の課題を解決するため、セルロース繊維不織布を構成する単糸繊度を細くすると共に、不織布を構成する繊維の配列を制御することにより、加工適性を改善できること、湿潤時の形態保持性が良好なこと、不織布となってから漂白しないでも白色度を向上し、黄色度を低下させられること、拭き取り性を向上できること、滑らかな触感が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
(1)繊維径2.9〜6.5μm再生セルロース連続長繊維が少なくとも該不織布の片側表面の繊維本数の60%以上を占める不織布であって、繊維配列係数が0.65〜1.35であり、白色係数が7以上であることを特徴とするセルロース繊維不織布。
(2)該不織布の蒸気滅菌黄変係数が1.8以下であることを特徴とする(1)に記載のセルロース繊維不織布。
(3)(1)又は(2)に記載のセルロース繊維不織布を用いたことを特徴とする不織布製品
(4)前記不織布製品の用途が、電子材料用途、医療系用途、生活資材用途、農業資材用途、食品関連用途、化粧品関連用途、または産業資材用途であることを特徴とする(3)に記載の不織布製品。
本発明のセルロース繊維不織布は、拭き取り性が良好で、液拡散性が良好で、漂白を行わないでも白色度が高く、黄色度が低く、湿潤時の形態保持性、寸法安定性に優れ、肌触りが良好で、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく、各種加工において加工適性が良好な効果を有する。
本発明について以下具体的に説明する。
本発明でいうセルロース繊維とは、セルロースの短繊維、長繊維を意味するが、細くて均一である点を考慮すると、再生または精製セルロース繊維が好ましい。更に、リントフリー性の観点から再生セルロース連続長繊維が最も好ましい。
本発明の不織布とは、セルロース繊維からなるスパンレース不織布や湿式スパンボンド不織布が挙げられ、例えば銅アンモニア法レーヨン原液を流下緊張紡糸法によりネット上に連続で紡糸し、繊維自体の自己接着や必要に応じて水流交絡により繊維を交絡させて不織布化した再生セルロース連続長繊維不織布が好ましい一例として挙げられる。
セルロース繊維不織布が短繊維不織布の場合はソフト性が向上し、嵩高さが向上する特長が得られ、セルロース長繊維不織布の場合は、構成する繊維が長繊維であるため繊維の脱落が綿等のセルロース短繊維不織布に比べて少なく、例えば衛生材料の表面材や不織布ガーゼや化粧用のパフの表面材等に用いた場合、人体への繊維付着による汚染が少ない。
また、再生セルロース連続長繊維不織布の場合、前述したとおり自己接着や水流交絡により不織布が形成されるため、不織布形成時に接着用の樹脂等のバインダーを使用しないので、接着用樹脂などのバインダー成分が人体に接触する面に存在しないため化学的刺激の観点からみて安全性に優れたものであるので好ましい。
本発明のセルロース繊維不織布は、繊維径2.9〜7.1μm、好ましくは2.9〜6.5μm、更に好ましくは2.9〜5.8μmのセルロース繊維が少なくとも該不織布の片側表面の繊維本数の60%以上、好ましくは80%以上、最も好ましくは100%を占める不織布である。
ここでいう繊維径とは、不織布表面の電子顕微鏡写真で単繊維が約1cm程度になる倍率で観察した時に焦点があった繊維の直径のことをいう。本発明では、不織布表面の任意の200点で繊維の直径を測定して、その存在比率が60%以上である、すなわち120点以上が繊維径2.9〜7.1μmの繊維で構成されていることをいう。
セルロース繊維不織布の繊維径が2.9〜7.1μmであることにより、この範囲よりも繊維径が大きい従来のセルロース繊維不織布と比べて、自己接着点数や繊維自身が交絡する度合いが増加するため伸度が規制され、乾燥時及び湿潤時の形態保持性が向上する。また、乱反射によりこの範囲よりも繊維径が大きい従来のセルロース繊維不織布と比べて白色度が向上し、黄色度が低下する。しかし、繊維径がこの範囲よりも小さいと製造時に単繊維が切断して毛羽となったり、製品としての使用時に摩擦により容易に単繊維が切断したりして、脱落繊維が増加することがあり、耐摩耗性が低下する。
また、本発明のセルロース繊維不織布は少なくとも該不織布の片側表面の繊維本数の60%以上が繊維径2.9〜7.1μmである。ここでいう片側表面とは、繊維径2.9〜7.1μmの繊維を有効に活用できる面のことであり、使用目的により片側だけでなく両面ともにこの範囲の繊維径を有していてもよい。繊維径2.9〜7.1μmのセルロース繊維が少なくとも該不織布の片側表面の繊維本数の60%未満であると、形態保持性や白色度、黄色度、使用目的としての拭き取り性が満足の行くものが得られない。また、輸水性能、例えば拡散性において十分な性能を発揮することが出来ないことがある。
また、繊維径は各種の効果に作用するため、平均繊維径を用いることもあるが、本発明においては平均繊維径を以下のように規定した。
平均繊維径I:上記測定における繊維径2.9μm未満の繊維の繊維径の平均値
平均繊維径II:上記測定における繊維径2.9〜7.1μmの繊維の繊維径の平均値
平均繊維径III:上記測定における繊維径7.1μmを超える繊維の繊維径の平均値
本発明のセルロース繊維不織布は、繊維配列係数が0.65〜1.35、好ましくは0.75〜1.25である。ここでいう繊維配列係数とは、以下の方法で測定されたものをいう。
20cm四方の試料を準備し、直径12cmの円筒に試料表面にしわが入らない状態で輪ゴムやテープ等で固定する。蒸留水1lにシャチハタスタンプインキ水性染料系S−1(赤)を10ml入れ、評価液を作成する。評価液を先端口径0.7mmのビューレットに注入する。ビューレットとカメラを図2に示すようにセットする。カメラは固定式、ビューレットは高さ固定の横移動式で、カメラ位置は試料表面から10cm上方に、ビューレットは試料表面から5cm上方にセットする。
評価液を5滴(0.05ml)サンプル上に落とし、同時にビューレットを横に移動させ、10秒後の拡散状態の写真撮影を行う。この際、試料表面にJIS規格の金尺を置き、写真に写るようにして実際の拡散面積に換算できるようにする。写真から画像処理等で拡散面積を求めることもできる。
得られた写真を用いて繊維配列係数を測定する。通常、液は楕円形に拡散する。この楕円において、不織布の機械軸方向(MD方向)の径aと機械軸と垂直方向(CD方向)の径bを測定する。繊維配列係数cは以下の方法で算出される。
繊維配列係数c=b/a
繊維配列係数は液が滴下された時の拡散状態を示す係数ではあるが、液の拡散が繊維の配列方向と相関が高いことから繊維の配列方向を示すものである。機械軸方向の繊維の配列が大きいと繊維配列係数は1未満となり、機械軸と機械軸と垂直方向への繊維の配列が同じ状態であると液拡散状態は円状になり、この場合繊維配列係数は1となる。また、機械軸方向よりも機械軸と垂直方向の繊維の配列が多いと繊維配列係数は1を超えるものとなる。
繊維配列係数が0.65未満であると、機械軸方向に繊維が主体的に配列され、機械軸と垂直方向に存在する繊維との交絡、結合数が減少するため、機械軸と垂直方向に対する形態保持性が小さく、機械軸と垂直方向に伸びが大きくなったり、幅が入りやすくなったりすると共に、機械軸方向へは引裂きやすくなる。すなわち、通常の加工工程においては機械軸方向に張力がかかることが多く、工程中で不織布の幅が入ったりして加工性能が低下する。
尚、不織布の伸びについて更に詳細に説明すると、不織布の伸びは組織の伸びと繊維自体の伸びの2つの要因により構成されており、繊維自体の伸びよりは組織自体の伸びが支配的であるため、交絡や結合点数の違いにより伸びは大きく影響される。繊維配列係数が0.65未満であると破断伸度には繊維自体の伸びが主体的に影響を与えるようになる。逆に交絡や結合点数の低下から組織伸びは容易に発生することになるので機械軸と垂直方向では機械軸方向に張力がかかることにより幅が入るという現象が生じることになる。
また、繊維配列係数が1.35を超えると機械軸と垂直方向に繊維が主体的に配列され、不織布の伸びには組織伸びが大きく影響し、繊維自体の伸びの影響は小さくなる。しかし、組織伸びは発生するものの、交絡や結合点数が非常に多いため機械軸方向へ張力がかかっても幅方向への影響は大きくはならない。しかし、繊維配列係数が1.35を超えることにより非常に硬い不織布となるので実使用においては支障をきたすことがある。例えば、医療用途の不織布ガーゼ等で用いる場合、形態保持性は良好であるが、肌等を拭き取る場合には非常に硬い感触となり好ましくない。
上述のように、繊維配列係数は不織布を形成する繊維の単繊度と製造時の機械方向への繊維の配列方向をコントロールすることで得ることができる。単繊度を小さくすることにより単繊度の太いものに比べて同一目付の不織布では構成する繊維の本数が増加し、再生セルロース繊維の場合、自己接着点数が増加すると共に、繊維同士の交絡点数も大幅に増加する。拘束点が増加することで伸びにくい、すなわち破断伸度の低い不織布が形成される。また、連続長繊維不織布においては、ウエブ形成は紡糸後ネット等へ糸を分散させることによって行われるものもある。この時の糸の分散状態によって機械軸方向、機械軸と垂直方向の力学物性が決定されると言っても過言ではない。分散状態のコントロールは例えばウエブ形成させるネットに進行方向(機械軸方向)と垂直方向(幅方向)に振動を与え、紡糸した糸にSinカーブを描かせることなどで調整できる。幅方向への振動数、振動幅を大きくすると繊維の結合点の数が増加するので機械軸方向へは伸びにくい不織布を得ることができる。
本発明のセルロース繊維不織布は、白色係数が7以上が好ましく、更に好ましくは10以上である。本発明でいう白色係数とは以下の測定により求められたものをいう。
試料を12枚重ねの状態で測定する。尚、測定面は繊維径が規定された面とする。サカタインクス株式会社製標準色彩管理システムマクベスCE−3000で、C光源を用い、視野2°、鏡面光沢及び光源の紫外線領域を含めて、5回測定した平均値からX、Y、Zの3刺激値を求め、次式より白色度及び黄色度を算出する。
白色度=4(0.847Z)−3Y
黄色度=100(1.28X−1.06Z)/Y
尚、測定原理及び光源が同一であれば他の測定機器で測定してもよい。
白色係数は次式により算出される。
白色係数=白色度/黄色度
白色係数は布帛の白さをより顕著に示す係数値である。通常、白い布帛は白色度が大きく黄色度が小さいものである。従って白色係数を用いれば白さの程度をより明確に捉えることが可能となる。
本発明のセルロース繊維不織布の白色係数が向上するのは、例えば再生セルロース連続長繊維の場合は、単繊度が小さいので紡糸時に繊維内部まで精練できることと、単繊度が小さいために不織布表面において乱反射が発生するものと推定され、白色度が向上し、黄色度が低下するため白色係数が大幅に向上する。繊維径が前述の条件を満足しないと白色係数が7以上にならないことがある。従って本発明の不織布は漂白を行わないでも、また、蛍光増白処理を行わないでも極めて白色度が高く黄色度が低い不織布となるのである。白色係数が7未満であると例えば衛生材料等の表面材や医療用の不織布ガーゼとして用いた場合、清潔感が低下する。白色係数を向上させるには、前述のように繊維径のコントロールや紡糸時の精練条件等をコントロールすることによって向上させることが可能である。
本発明のセルロース繊維不織布は、蒸気滅菌黄変係数が1.8以下が好ましく、より好ましくは1.6以下である。蒸気滅菌黄変係数は、下記の測定手段によって測定されたものをいう。
試料について白色係数の測定と同様の方法で黄色度Y1を測定する。次に試料をアルミホイルで包んだ状態で120℃×30分の蒸気滅菌処理を行う。試料を20℃×65%RH条件下で24時間放置したのち白色係数と同様の方法で黄色度Y2を測定する。蒸気滅菌黄変係数は次式で算出される。
蒸気滅菌黄変係数=Y2/Y1
蒸気滅菌黄変係数は蒸気滅菌による黄色度変化の割合を示したものである。通常のセルロース繊維不織布は蒸気滅菌により黄色度が増加する。蒸気滅菌黄変係数が1.8を超えると、例えば蒸気滅菌を行ってから使用することが多い医療用途等では清潔感に欠けるという問題点を生じる。蒸気滅菌黄変係数が低下するのも単繊度が小さいので紡糸時に繊維内部まで精練できることと、乱反射によるものと推定される。また、蒸気滅菌の有無によらず黄色度が低下することは、衛生材料用途や化粧品用途、医療用途等で清潔感が向上するので好ましい。蒸気滅菌黄変係数を低下させるには、前述のように繊維径のコントロールや紡糸時の精練条件等をコントロールすることによって向上させることが可能である。
また、本発明のセルロース繊維不織布は不織布を構成する繊維がセルロース長繊維であることが好ましく、更に好ましくは再生セルロース連続長繊維である。セルロース長繊維不織布とは、例えば特表2002−521585号公報に記載された精製セルロースであるリヨセル等の長繊維不織布をいう。また、ここでいう再生セルロース連続長繊維不織布とは、例えば銅アンモニウムレーヨン法で製造されるキュプラ連続長繊維不織布等がこれに相当する。再生セルロース連続長繊維不織布であると単繊維の自己接着による結合点の形成と、製法上単繊維の配列方向のコントロールが比較的容易に設定できると共に、連続長繊維の特徴である例えば毛羽抜け等の現象を減少させることができる。また、キュプラ素材は日本薬局方で指定された医療用具用素材であるため医療用途での使用に適している点からも好ましい。
尚、繊維径2.9〜7.1μmのセルロース長繊維不織布を得るには、例えば銅アンモニア法レーヨン原液を用いて再生セルロース長繊維不織布を得る場合、原液を紡糸する紡口の直径を従来のものより小さくすると共に、原液の粘度や原液温度を調整したり、凝固速度をコントロールし、更に延伸倍率を従来よりも高く取ることで好適に得られる。
本発明のセルロース繊維不織布の目付は8〜150g/m2 が好ましく、より好ましくは10〜100g/m2 であり、厚みは0.05〜1mmが好ましい。目付及び厚みは用途により適宜選択が可能である。目付が8g/m2 未満であると不織布としての絶対強度が低く、製品とした場合に破れやすくなる。また、150g/m2 を超えると繊維充填密度が高いため非常に硬い不織布となる。
本発明のセルロース繊維不織布は、機械軸方向の破断伸度は20%以下が好ましく、より好ましくは1%〜15%、更に好ましくは2%〜10%である。
ここでいう機械軸方向の破断伸度とは、機械軸方向に縦長となるように試料幅5cm、試料長さ10cm、のサンプルを採取し、20℃×65%RH条件下で一昼夜調湿した試料を引張試験機で一軸伸長させた場合の破断伸度(%)のことをいう。各種加工を行う場合、通常不織布の機械軸方向に張力がかかる。この張力により不織布は機械軸方向には伸びを、機械軸と垂直な方向(幅方向)では収縮する。機械軸方向の破断伸度が20%を超えると加工時に機械軸方向の伸びが大きく、かつ、幅方向での幅入りも大きくなるので加工適性、加工時の効率が低下する。
また、本発明のセルロース繊維不織布は、機械軸方向の湿潤破断伸度が100%未満であることが好ましく、更に好ましくは80%未満である。乾燥時の機械軸方向の破断伸度も加工適性に関する大きな要因となるが、機械軸方向の湿潤破断伸度も大きな要因となる。例えば、機械軸方向の湿潤破断伸度が100%を超えると、製造面では、各種液状薬剤の含浸、付着の加工操作等において、機械軸と垂直な方向(幅方向)での収縮による寸法変化が起こりやすくなり、かつ乾燥時のそれと大きな差を生み出し、機械操作の煩雑性を増大させたり作業性を低下させるので好ましくない。また、製品としての適性面から考えると、例えば、ウエットティッシュの場合、取り出し時に伸びて形態変形を起こし、広げて使用するのに手間がかかったり、拭き取り時にヨレやすくなり好ましくない。尚、機械軸方向の湿潤破断伸度は、機械軸方向に縦長となるように試料幅5cm、試料長さ10cmの試料を採取し、引張試験機に装着した状態で試料に注射器で1mlの水を滴下し水を含浸させ、全体に水が行き渡った後1分間放置して、一軸伸長させた場合の破断伸度(%)のことをいう。
本発明のセルロース繊維不織布は、湿潤形態保持率が80%以上が好ましく、更に好ましくは90%以上である。ここでいう湿潤形態保持率とは以下の方法で測定される。
測定装置の模式図を図1に示す。不織布の機械軸方向に縦長となるように5cm×12cmにサンプルを準備し、上下1cmの部分の中央部に印をつけて測定部を作成する。サンプル重量W1の10倍量の純水をサンプルに均一に付与する。サンプルの上下1cmをサンプル保持板に挟み固定する。サンプル重量W1の30重量%の荷重(サンプル保持板はサンプル重量の10重量%とし、荷重はこれを加えたもとする)をかけて30秒間吊り下げた後除重し(下部のサンプル保持板も外す)、30秒後に測定部の長さLを測定する。初期サンプル長は10cm(サンプル保持板間の長さ)として湿潤形態保持率を次式で計算する。
湿潤形態保持率(%)=(L(cm)/10(cm))×100
湿潤形態保持率は湿潤状態においての不織布による拭き取り時の取扱い性と大きく相関する。湿潤形態保持率が80%未満では湿潤状態における拭き取り時に不織布がヨレて取扱い性が低下したり、不織布が破れたりして拭き取り面を再汚染することがある。
本発明のセルロース繊維不織布は液拡散面積が1000mm2 以上が好ましい。ここでいう液拡散面積とは以下の方法で測定したものをいう。
20cm四方の試料を準備し、直径12cmの円筒に試料表面にしわが入らない状態で輪ゴムやテープ等で固定する。
蒸留水1lにシャチハタスタンプインキ水性染料系S−1(赤)を10ml入れ、評価液を作成する。評価液を先端口径0.7mmのビューレットに注入する。ビューレットとカメラを図2に示すようにセットする。カメラは固定式、ビューレットは高さ固定の横移動式で、カメラ位置は試料表面から10cm上方に、ビューレットは試料表面から5cm上方にセットする。
評価液を5滴(0.05ml)サンプル上に落とし、同時にビューレットを横に移動させ、10秒後の拡散状態の写真撮影を行う。この際、試料表面にJIS規格の金尺を置き、写真に写るようにして実際の拡散面積に換算できるようにする。写真から画像処理等で拡散面積を求めることもできる。
拡散面積は繊維径と繊維間の空隙とに関連する。繊維径が本発明の範囲にあることにより、この範囲を超えるものより毛管現象により拡散面積が向上する。拡散面積が向上すると、例えば化粧用のパフの表面材として使用する場合、少量の化粧液を使用しても表面材に大きく広がるため化粧液の効率が向上し化粧液が少量でも十分な効果を得ることも可能となる。繊維径がこの範囲を下回ると拡散面積は向上するものの、単繊維の強度が低下し拭き取り時に繊維が切断し、拭き取り面へ残留する繊維量が増加するので実使用に耐えないものとなる。尚、拡散面積については空隙との関係もあり、例えば開口部や凹部、メッシュパターンが不織布に形成されている場合には不織布内に密度分布が違う部分が生じるため一概にこの傾向とならない場合がある。
また、本発明のセルロース繊維不織布には開口部や凹部、メッシュパターンが存在していてもよい。開口部や凹部、メッシュパターンの形状は用法等で適宜選択すればよい。開口部や凹部、メッシュパターンの有無により拭き取り性や通液性等の機能性をコントロールしたり、意匠性を向上させたりすることができる。 本発明のセルロース繊維不織布は、前述の規定範囲内であれば、例えば単繊度が違う糸が混合されていてもよいし、他素材や他の不織布と複合されていてもよい。この場合、より高度な機能性を付与することが可能となる。
本発明のセルロース繊維不織布の製造方法について一例を紹介する。
本発明の好ましい態様はセルロース連続長繊維不織布であるが、例えば旭化成せんい株式会社製のベンリーゼ(登録商標)がこれに相当する。キュプラ不織布の製造方法は、異物を除去し、重合度を調整したコットンリンターを銅アンモニウム溶液に溶解させた原液を細孔(原液吐出孔)を有した紡糸口金(紡口)から押し出し、水と共に漏斗内を落下させ、脱アンモニアさせることにより原液を凝固させつつ、延伸を行い、ネット上へ振り落としウエブ形成させる。この際、ネットを進行させながら進行方向と垂直方向へ振動させることにより、ネットへ振り落とされる繊維はSinカーブを描くことになる。紡糸時の延伸は100〜500倍が可能であり、紡糸漏斗の形状と、その中を流下させる紡糸水量を変えることにより、延伸倍率の調整が任意になし得ることが可能である。延伸倍率を変えることにより、単繊度や不織布の強度を変えることが可能である。また、紡糸水量や温度を変化させることにより原液内に微量残留する低分子量セルロース、いわゆるヘミセルロースをコントロールすることも可能である。また、ネットの進行速度、振動幅を制御することにより、繊維配列方向を制御し、不織布としての強度や伸度等をコントロールすることが可能である。
紡糸漏斗の形状としては、矩形型が好ましく、流下させる紡糸漏斗の長さは100〜400mm、流下出口のスリット幅は2〜5mmが好ましい。本発明に用いる紡口の原液吐出孔の直径は0.1〜0.5mmが好ましく、形状は丸型が好ましい。また、不織布の均一性を確保する意味から、ウエブを積層して不織布化することが好ましく、その積層枚数は3〜10枚が好ましい。またウエブを積層することにより、ウエブを構成する繊維の交点部分で自己接着現象が生じることがある。積層後のウエブを例えば特許第787914号公報、特許第877579号公報に記載の方法により、ウエブ状態でセルロースを再生させたり、精練したりした後、高圧水流により繊維交絡させ不織布を製造する。この際に意匠性を付与するために不織布に穴や凹凸をつけたりすることが高圧水流の条件や不織布の下及び/又は上に配置されるネットの柄によって可能となる。得られた不織布は乾燥、巻き取り品として得ることができる。紡糸から巻き取りまでが一連の工程で成されるため繊維が切断されずに連続的に繋がっているので連続長繊維不織布という。
また、本発明のセルロース繊維不織布は各種用途に使用される不織布製品として最適なものである。例えばIC等の電子材料製造工程の清掃等に用いる工業用のワイパーとして使用される場合には、セルロース自体が持つ吸液性や耐溶剤性に加えて、特にセルロース繊維不織布がセルロース長繊維不織布の場合、脱落繊維が抑制されると共に拭き取り性が向上したものが得られる。これらの性能については医療用の不織布ガーゼでも同様であり、かつ、黄色度が低下することにより清潔感が増したものが得られる。また、例えば衛生材料の表面材として使用される場合には黄色度が低下して清潔感が高く、かつ、体液吸収時にもヨレにくく、また、セルロースなので肌への安全性が高いものが得られる。更に、化粧用のパフやクレンジング用の基材、フェイスマスクの基材として用いた場合には化粧液等の拡散が大きく化粧液が少量で済んだり、化粧落としの効果が良好で、湿潤時の形態安定性が良好で取り扱い性やさばき性が良好あるものが得られる。
更にメッシュ形状のないフラットなものを用いれば、その繊維充填密度の高さからコーヒーの粉洩れをおこすことなく、親水性で濡れやすく、また、俗にいう紙臭なる異臭がないコーヒーフィルターとしても有効である。また、ウエットティッシュの基材として用いると湿潤時の形態保持性が良好でさばきやすく、かつ、拭き取り性が良好なものが得られる。更にまた、母乳パッドの表面材として用いた場合、吸液性が良好であり液拡散性が良好であるのでべたつき感が少なく、また、乳だれによる洩れの少ないものが得られる。
以上の記載は本発明のセルロース繊維不織布を用いた不織布製品の一例に過ぎないが、本発明のセルロース繊維不織布を用いた不織布製品は非常に優れた特徴を持つものである。
本発明を実施例などを用いて更に具体的に説明する。
尚、実施例中の評価は以下の方法で行った。
(1)拭き取り性
鏡の上に口紅を塗り、更にティッシュ等で塗り広げて出来る限り均一な油膜を作成する。標準品としてカネボウ合繊株式会社製クリーンルーム用ワイピングクロス、ザヴィーナミニマックス(登録商標)と日本薬局方綿ガーゼを用意する。基材1枚を取り、親指と人差し指と中指で保持し、人差し指の腹で油膜を1回拭き取る。同程度の力で各基材を用いて拭き取りを実施し、拭き取り性を官能評価し下記のように級判定を行う。各基材について5回の評価を行い、平均値を結果とした。
10級:油膜がほぼ完全に拭き取れる(ザヴィーナミニマックスで拭き取った状態)
5級:油膜はそこそこ拭き取れているが筋状の拭き残しがある
1級:油膜は殆ど拭き取れず、伸ばされた感じである(日本薬局方ガーゼで拭き取った状態)
尚、1〜10級の間は相対的に見て中間の級を補間する。
(2)繊維配列状態係数
前述の方法で測定、算出した。
(3)白色係数
前述の方法で測定した。
(4)蒸気滅菌黄変係数
前述の方法で測定した。
(5)一定荷重引張時の幅入り
機械軸方向に縦長となるように幅1000mm(初期幅)のサンプルを用意し、上下の幅方向に均等に荷重がかかるように、サンプルの上下をクランプし、かつ下側クランプに荷重をかける。上側クランプの下面と下側クランプの上面の長さ(測定サンプル長)は2.5mとなるように調整し、サンプルは機械軸方向に縦長となるように上側クランプを固定し吊り下げるものする。荷重は下側クランプと、下側クランプにかける荷重の重量の和が、7kgとなるように調整する。このときの上側クランプの下面と下側クランプの上面のちょうど中間の幅を測定し、一定荷重引張時の幅(mm)とする。初期幅(1000mm)から一定荷重引張時の幅(mm)を引いた値をmm単位で表したものを「一定荷重引張時の幅入り」の値とする。
一定荷重引張時の幅入りの数値が50mmを越えた場合には、前述の如く、加工時に機械軸方向の張力がかかる場合に、機械軸と垂直な方向の収縮による寸法変化が大きいために加工適性、加工時の効率は低いものとなる。
(6)湿潤形態保持率
前述の方法で測定した。
(7)化学的刺激性
不織布には、その製造方法によって界面活性剤などの水に溶出しやすい成分が含まれている場合がある。下記の泡立ち試験により定性的に不織布の化学的刺激性を比較評価した。
泡立ち試験評価方法
準備:サンプルを一晩恒温室で調湿する。(温度20℃、湿度65%RH) イ)純水150ccをビーカーに入れる。
ロ)調湿後のサンプル5gを純水150ccの中に入れ5分間漬け込む。 ハ)5分後ビーカーを1分間振りながら攪拌する。
ニ)100ccシリンダーに60ccサンプルをとる。
ホ)手にて蓋をし、上下に20回振る。
ヘ)シリンダーを立てて1分間放置しあわ立ちの状態を見て泡立ち性を判定する。
判定水準
○:泡が無い状態か、ほとんど泡が目立たず液面に薄い筋状の泡が残る程度で 壁面には泡は付着しない。
×:液面上に明らかに泡と分かる層が形成されており、シリンダーの壁面にも 泡が付着している。
(8)肌触りの官能評価
被験者20人で肌触りの官能評価を行った。評価方法および判定水準は以下のとおりであり、20人の平均値をそのサンプルの肌触りの官能評価の値とした。 評価方法:左手上腕部内側を10cm×10cmのサンプルで軽くこすり、以下の判定水準に従って各サンプルを評価する。
判定水準
1:ちくちくした刺激を感じる。
2:ざらざらした刺激を感じる。
3:弱くざらざら感を感じる
4:サラサラした刺激を感じる。
5:ソフトで肌への刺激が感じられない
(9)物理的刺激指数
特開2003−52752号公報に記載された擦過刺激指数に準拠して測定した。
a)不織布の任意の場所より5cm×5cmの資料を3点準備する。
b)カトウテック(株)製摩擦感テスター(KES−SE)の摩擦端子に試料を装着する。
c)試料と特開2003−52752号公報に記載された初期圧縮応力98N・m/cm2 の弾性体とを接圧4.9×103 Pa、接触面積1cm2 、摩擦距離2cmの条件で上記摩擦感テスターを用いて1回摩擦する。
d)弾性体表面の摩擦によって生じた幅1cm、摩擦方向2cmの摩擦後の中央部分、摩擦方向に対して直交する方向1cm幅の最大傷深さを求める。
e)試料の機械軸方向と機械軸と垂直方向での摩擦試験をそれぞれ10回実施し、得られた最大傷深さの平均値を物理的刺激指数とした。
(10)拡散面積
前述の方法で測定した。
(11)繊維径の存在比率
前述の方法で測定した。
(12)平均繊維径
前述のように3つのレンジに分けて測定した。
(13)清潔感の官能評価
外観の清潔感がどのように見えるのか、被験者20人での官能評価を行った。評価方法および判定水準は以下のとおりであり、20人の平均値をそのサンプルの清潔感官能評価の値とした。
評価方法:局方脱脂綿シートを比較対象例として以下の判定水準に従って各サンプルを評価する。
判定水準
5:清潔感を感じる
4:局方脱脂綿シートと変わらない
3:やや落ちる
2:かなり落ちる
1:清潔感を感じない
(14)擦過状態
不織布に一定荷重をかけ、左右に擦った時の擦り面の表面毛羽立ち状態の評価を行った。評価方法および判定水準は以下のとおりである。
評価方法:サンプル10cm×10cmを準備し、1kgの荷重をかけ綿布(金巾3号)の上で50回擦る。
判定水準
○:ほとんど毛羽が立たない。
△:毛羽が目立つ。
×:毛羽がひどい。
(15)脱落繊維の定性測定評価
サンプルの入った純水の容器を超音波洗浄機で洗浄後、純水を濾過し濾紙に残 った繊維の多い、少ないを官能判定する。評価方法及び判定水準は下記のとおりである。
評価方法:サンプル25cm×25cmを準備し、純水300mlの入った500mlビーカーに入れる。BRANSON社製B2210の超音波洗浄機にオペレーティングレベルまで水を入れ、サンプルの入った500mlビーカーを入れる。15分間超音波洗浄機で洗浄後、黒色濾紙(アドバンテック東洋(株)製 ADVANTEC 131)で濾過する。恒温室(温度20℃、湿度65%RH)に12時間入れて乾燥させ官能判定する。
判定水準
○:黒色濾紙にほとんど糸屑がない
△:黒色濾紙に残った糸屑が目立つ
×:黒色濾紙の色が消えるほどの糸屑が残る
[実施例1]
コットンリンターを銅アンモニア溶液で溶解し、セルロース濃度10重量%の紡糸原液を準備した。原液吐出孔の直径が0.3mm、180個/cm2 で存在する長方形の紡糸口金から紡糸口金の単位面積当たり3.4cc/cm2 ・minの原液を押し出した。押し出された原液は、紡糸水と共に矩形一段漏斗内に入り脱アンモニアによる凝固と同時に延伸させた。この時の紡糸水の温度は35℃、紡糸口金単位面積当たりの流量が540cc/cm2 ・minであり、凝固した糸の速度は110m/minであった。凝固した繊維は通液可能なメッシュ構造のネット上に振り落としつつ、ネットをネット進行方向と垂直方向に振動させた。この時のネットのスピードは25m/minであり、振動幅は紡糸口金の幅に対して22%、振動回数は320回/minであった。得られた1層のウエブの上に同様の条件で紡糸したウエブを更に4層重ね、最終的に5層重ねのセルロース連続長繊維ウエブを得た。得られたセルロース連続長繊維ウエブを希硫酸で再生し、水洗後、得られた再生セルロース連続長繊維ウエブを20メッシュのシート上で3MPaの高圧水流で繊維を交絡させた後、100℃の熱風乾燥を行い貫通孔及び凹部が表面に形成された再生セルロース連続長繊維不織布を得た。
得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、目付29.0g/m2 、厚み0.22mmであり、繊維径2.9〜7.1μmの繊維が不織布表面を構成する本数割合は100%であり、繊維配列係数は0.81であった。特性及び機能性の評価結果を表1及び表2に示す。
表からもわかるとおり、得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、拭き取り性が良好で、液拡散性が良好で、漂白を行わないでも白く、蒸気滅菌を実施しても黄変が少なく、湿潤時の形態保持性に優れ、肌触りが良好で、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく、各種の用途に使用する不織布として極めて良好な不織布であった。
[実施例2]
特表2002−521585号公報に記載された方法において、原液吐出孔の直径を40μmにし、その他の条件は適正な条件を用いて不織布を得た。得られた再生セルロース長繊維不織布の目付は、22.5g/m2 、厚み0.18mmであり、繊維径2.9〜7.1μmの繊維が不織布表面を構成する本数割合は100%であり、繊維配列係数は0.90であった。特性及び機能性の評価結果を表1及び表2に示す。
表からもわかるとおり、得られたセルロース長繊維不織布は、拭き取り性は良好で、液拡散性が良好で、漂白を行わないでも白く、蒸気滅菌を実施しても黄変が少なく、湿潤時の形態保持性に優れ、肌触りが良好で、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく、各種の用途に使用する不織布として極めて良好な不織布であった。
[実施例3]
ネットスピードを50m/min、ウエブの積層数を4層、高圧水流による繊維交絡を行わない以外は実施例1と同様の条件にて表面がフラットな再生セルロース連続長繊維不織布を得た。
得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、目付9.2g/m2 、厚み0.05mmであり、繊維径2.9〜7.1μmの繊維が不織布表面を構成する本数割合は100%であり、繊維配列係数は0.85であった。特性及び機能性の評価結果を表1及び表2に示す。
表からもわかるとおり、得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、拭き取り性が良好で、液拡散性が良好で、漂白を行わないでも白く、蒸気滅菌での黄変性は若干劣るものの、湿潤時の形態保持性に優れ、肌触りが良好で、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく、各種の用途に使用する不織布として極めて良好な不織布であった。
[実施例4]
原液吐出孔の直径が0.6mm、45個/cm2 の長方形の紡糸口金から紡糸口金の単位面積当たり3.4cc/cm2 ・minの原液を押し出し、3層に積層させたウエブを形成し、得られた3層のウエブ上に、直径0.3mm、45個/cm2 の長方形の紡糸口金から紡糸口金の単位面積当たり0.85cc/cm2 ・minの原液を押し出して更に2層のウエブを積層して、最終的に5層重ねのセルロース連続長繊維ウエブにした以外は実施例1と同様の条件にて貫通孔及び凹部が表面に形成された再生セルロース連続長繊維不織布を得た。
得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、目付20.2g/m2 、厚み0.22mmであり、繊維径2.9〜7.1μmの繊維が不織布表面を構成する本数割合は66%であり、繊維配列係数は0.76であった。特性及び機能性の評価結果を表1及び表2に示す。
表からもわかるとおり、得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、拭き取り性が良好で、液拡散性と白さは若干劣るものの、蒸気滅菌での黄変性は良好で、湿潤時の形態保持性に優れ、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく、各種の用途に使用する不織布として極めて良好な不織布であった。
[実施例5]
原液吐出孔の直径が0.2mmの紡糸口金を用い、紡糸水の温度は25℃、紡糸口金単位面積当たりの流量が600cc/cm2 ・minであり、凝固した糸の速度は120m/min、ネットのスピードを15m/minにした以外は実施例1と同様の条件にて貫通孔及び凹部が表面に形成された再生セルロース連続長繊維不織布を得た。
得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、目付38.7g/m2 、厚み0.24mmであり、繊維径2.9〜7.1μmの繊維が不織布表面を構成する本数割合は89%であり、繊維配列係数は0.79であった。特性及び機能性の評価結果を表1及び表2に示す。
表からもわかるとおり、得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、拭き取り性が極めて良好で、液拡散性が良好で、漂白を行わないでも白く、蒸気滅菌での黄変性は良好で、湿潤時の形態保持性に優れ、肌触りが良好で、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく、摩擦により表面に若干の単繊維の切断は認められるものの、各種の用途に使用する不織布として極めて良好な不織布であった。
[比較例1]
実施例1において、ウエブを振り落とすネットのスピードは5.3m/min、振動回数は500回/minにした以外は実施例1と同様の方法で再生セルロース連続長繊維不織布を得た。得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、目付153.2g/m2 、厚み0.88mm、繊維径2.9〜7.1μmの繊維が不織布表面を構成する本数割合は100%であり、繊維配列係数は1.40であった。特性及び機能性の評価結果を表1及び表2に示す。
表からもわかるとおり、得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、表面に単繊維が部分的に密集したものが見られ外観に劣り、肌触りは非常に硬く、白さに劣り、本発明の不織布に比べ、各種の用途に使用するには問題があるものであった。
[比較例2]
実施例1において、ウエブを振り落とすネットのスピードは45.7m/min、ウエブの積層数を3層、振動回数は100回/minにした以外は実施例1と同様の方法で再生セルロース連続長繊維不織布を得た。得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、目付7.5g/m2 、厚み0.04mm、繊維径2.9〜7.1μmの繊維が不織布表面を構成する本数割合は92%であり、繊維配列係数は0.60であった。特性及び機能性の評価結果を表1及び表2に示す。
表からもわかるとおり、得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、強度が低く、機械軸方向に裂けやすく、各種の加工時に形態変化が発生しやすく、蒸気滅菌で黄変しやすく、本発明の不織布に比べ、各種の用途に使用するには問題があるものであった。
[比較例3]
原液吐出孔の直径が0.6mmのウエブを4層、原液吐出孔の直径0.3mmのウエブを1層にした以外は実施例4と同様の条件にて貫通孔及び凹部が表面に形成された再生セルロース連続長繊維不織布を得た。得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、目付27.5g/m2 、厚み0.33mm、繊維径2.9〜7.1μmの繊維が不織布表面を構成する本数割合は56%であり、繊維配列係数は0.94であった。特性及び機能性の評価結果を表1及び表2に示す。
表からもわかるとおり、得られた再生セルロース連続長繊維不織布は、本発明の不織布と比べて、各種加工時に形態変化し加工適性に問題があり、拭き取り性、白さ、湿潤時の形態保持性、肌触りに劣り、各種の用途に使用するには問題があるものであった。
Figure 0004471620
Figure 0004471620
表からもわかるとおり、本発明のセルロース繊維不織布は各種の用途において極めて優れた特徴を有するものである。
本発明のセルロース繊維不織布は、拭き取り性が良好で、液拡散性が良好で、漂白を行わないでも白色度が高く、黄色度が低く、湿潤時の形態保持性に優れ、肌触りが良好で、物理的刺激性、化学的刺激性が少なく、各種加工において加工適性に優れるので、電子材料用途、医療系用途、生活資材用途、農業資材用途、食品関連用途、化粧品関連用途、産業資材用途等で好適に利用できる。
湿潤形態保持率測定装置の模式図である。 繊維配列係数及び拡散面積測定装置の模式図である。

Claims (4)

  1. 繊維径2.9〜6.5μm再生セルロース連続長繊維が少なくとも該不織布の片側表面の繊維本数の60%以上を占める不織布であって、繊維配列係数が0.65〜1.35であり、白色係数が7以上であることを特徴とするセルロース繊維不織布。
  2. 該不織布の蒸気滅菌黄変係数が1.8以下であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース繊維不織布。
  3. 請求項1又は2に記載のセルロース繊維不織布を用いたことを特徴とする不織布製品。
  4. 前記不織布製品の用途が、電子材料用途、医療系用途、生活資材用途、農業資材用途、食品関連用途、化粧品関連用途、または産業資材用途であることを特徴とする請求項3に記載の不織布製品
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