JP5584337B2 - ポリマー - Google Patents

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Description

本発明は、ペンダント側基、例えば糖類、アルキル基、ポリアルキレングリコール基又はリン脂質基を有するポリマーを製造する方法を提供する。また、このような側基を含むポリマーは、ペンダント側基の結合に好適な中間体ポリマーと共に提供される。
「クリックケミストリ」とは、非常に穏やかな反応条件及び簡単な刺激によって、変換及び選択性の両方の観点において、非常に高い効率等の多くの重要な特性を共有する数種類の化学変換を説明するのに用いられる用語である1,2。高い効率及び立体選択性は優れ
た官能基適合性に関連するため、Cu(I)触媒型のフイスゲン(Huisgen)1,3−環化
付加反応3,4は近年最も注目を集めている。この化学プロセス(しばしば単に「クリック
」と称される)のこれらの重要な特徴は、複合材料、例えば、デンドリマー58、バイオコンジュゲート912、医療品(therapeutics)1315、機能化ポリマー1620、アフィ
ニティクロマトグラフィ担体21及び糖誘導体2228のテーラーメイド合成を可能にした。さらに、「クリック」手法は、合成シクロデキストリン29及びグリコシル化による環状ペプチドのデコレーション28に対するアプローチとして用いられている。合成糖化学物質は、炭水化物が多くの重要な生物学的プロセスにかかわることからますます関心を集めており、これらの重要な生物学的プロセスは、細胞間認識、細胞−タンパク質相互作用、並びにホルモン、抗体及びトキシンのターゲッティングにおける極めて特異的な事象を伴う22,3033。糖は、情報に富んだ分子であり、ますます多くの既知のレクチンが、オリゴ糖
構造のわずかな変更点を認識し且つこの炭水化物コード化(encoded)情報のためのデコ
ーダとして機能することができる34。これらの現象を制御する要因の実態を得ることによって、新たな抗感染、抗炎症及び抗癌に関する療法及び作用物質の開発への道が開き得る22,28,30,35,36
単糖がタンパク質受容体との弱い相互作用を有し、これにより炭水化物−タンパク質結合によって媒介されるin vivo事象に対する弱い応答がわずかに誘導されるに過ぎないことから、合成糖ポリマーはますます注目を集めている3740。実際に多くの場合、タンパク質結合炭水化物及びレクチンの両方が、「多座」供与体として機能する多重結合部位を提示する高次オリゴマー構造中に存在し、この「多座」供与体は、一価リガンドの使用に関するこの内因性の弱い結合制限を回避するのを助ける40,41。対応する一価リガ
ンドと比較して適切な合成多価ポリマーによって達成され得る活性の増強は、「グリコシドクラスタ効果」として既知である34,4244。明確な巨大分子アーキテクチャ(architectures)(鎖長、ブロック、星)を特徴付ける糖ポリマーの合成は、当該技術分野における興味深い対象であり、多くの合成技法はこれを成し遂げるために用いられている。炭水化物含有モノマーの制御ラジカル重合は、新たな糖ポリマーを得るための1つの見込みのある合成経路を示す。しかしながら、これまで文献では比較的少数の例しか報告されていない4552。一因とされる1つの理由は、不可欠な炭水化物モノマーの合成における特有の問題、例えば、リビングラジカル重合の条件とのこれらの高機能化モノマーの適合性、場合によっては炭水化物エピトープを現すような続く脱保護である。
銅(I)触媒によるフイスゲン1,3−双極子環化付加反応は、好適な「クリック可能」ポリマーが利用可能である限り反応条件が非保護糖アジドに適合するため、新たな合成糖ポリマーの合成に関する特に興味深い経路である53。本発明で開発した合成手法を図1に略述する。同一のアルキン含有「クリック可能」ポリマーから始めて、多種多様な炭水化物系材料を得ることができるため、この方法は、同じサイズ及び構造アーキテクチャのポリマー骨格を有するが、ペンダント糖部分の性質において異なることにより、ポリマー
骨格よりも複数の炭水化物に起因して特性が制御される材料を特徴付ける糖ポリマーのライブラリを作成するのに特に有用であると考えられる。アジド糖とアルキンモノマーの併用は興味深いと考えられ、逆に(over the reverse)、同一分子中のアジド基の数を低減させ且つ十分に裏付けされたアジド官能性糖を利用するという安全性の観点から、アルキン機能性糖とアジドポリマーの併用も興味深いと考えられる。本発明は他のペンダント側基、例えば、アルキル基、ポリアルキレングリコール基、及びリン脂質基にも適用可能である。
遷移金属媒介リビングラジカル重合(TMM−LRP、ATRPと称される場合が多い)54,55は十分に確立されており、多用途であり、ほとんどの官能基に対して良好な耐性
を有し、且つポリマーアーキテクチャに対して優れた制御を可能にする。多くの特許出願はTM−LRPに関する。これらとしては、ラジカルにより移動可能な原子又は基を有する開始剤、遷移金属化合物及びビピリジン等のリガンドを用いたATRPを開示する国際公開第WO96/30421号及び国際公開第WO97/18247号が挙げられる。代替的なオルガノジイミン系触媒は国際公開第WO97/47661号に開示されている。
TM−LRPを用いてポリペプチドと反応することができる官能基を含む、ポリエチレングリコール等の櫛形ポリマーの生成は、国際公開第WO2006/003352号に開示されている。
このため、TMM−LRPは、必要とされるアルキン官能性材料の合成用の重合技法として選択された。トリメチルシリルで保護されたアルキン開始剤から開始されるATRPによって得られるα−官能性アルキンポリマーの合成を最近報告したVan Hest及び共同研究者の研究17に従い、保護されたアルキンモノマーを使用した。これは、保護されていないプロパルギルメタクリレートのホモ重合が、比較的広範な分子量分布を有するポリマーをもたらすためである20,56
開発された合成手法は、レクチン結合研究のための多価リガンドとして使用されている糖ポリマーの小さい代表的なライブラリを作成するのに利用されていた。様々なレクチンと多くの合成糖ポリマーとの相互作用がこれまでに報告されている5760。これらの材料は、レクチンクラスタリング研究を網羅する広範な応用可能性のために57,6168、また
細胞表面相互作用の評価のために6975使用されている。多価リガンド特性による優れた制御は「クリック」方法及びTMM−LRP方法の両方の頑健性に関する利点(多くの官能基及び溶媒に対する耐性、水及び比較的安価な出発材料を含む工業グレードの溶媒の使用)に関係しているため、2つの多用途手法である「クリック」及びTMM−LRPの組合せを用いる可能性は興味深いものであった。
本発明者らの認識によれば、ペンダント糖基を有するポリマーの生成し易さとは、その生成がアルキル基、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)基及びリン脂質基等の他の側基を含有するポリマーの速い生成にも適用することができることを意味している。
本発明は、
(i)(a)保護基で保護されてもよいアジド基、又は(b)保護基で保護されてもよいアルキン基で官能化されるオレフィン性不飽和モノマーを、リビングラジカル重合、最も好ましくはRAFT(可逆的付加型開裂連鎖移動重合(Reverse Addition-Fragmentaion Chain Transfer Polymerisation))、遷移金属媒介リビングラジカル重合(TMM−
LRP)及び/又は原子移動ラジカル重合によって重合することにより、ポリマー中間体
を生成すること、
(ii)存在する場合には、ポリマー中間体から保護基の総数の少なくとも一部を除去すること、及び
(iii)ポリマー中間体を、(a)アルキン基又は(b)アジド基で各々官能化された少なくとも1つのペンダント側基部分と反応させて、アルキン基及びアジド基が反応しペンダント側基をポリマー中間体に結合させること、
を含む、ペンダント側基を有するポリマーを製造する方法を提供する。
遷移金属媒介リビングラジカル重合の使用は、場合によっては原子移動ラジカル重合としても知られており、これにより、厳密に制御された多分散度を有し、アジド基又はアルキン基を含有するポリマーが容易に生成される。RAFTもモノマーを重合するのに使用され得る。RAFTの使用は、アルキン基を重合反応の過程中に保護する必要がないことを意味する。
このためこの中間体は側基部分と容易に反応して、ペンダント側基をポリマー上に結合させることができる。重合プロセス時におけるモノマーからの側基の分離は、ポリマー中間体が大量に生成され、且つペンダント側基を有する最終ポリマーが生成される必要があるときまで保存され得ることを意味する。さらに、ポリマー中間体は、別の状況ではペンダント側基を損傷しかねない条件で生成され得る。様々な異なる側基を容易にポリマー中間体に結合させることができる。これにより、例えば、様々な側基を含有するポリマーのライブラリが比較的簡単に形成される。
アジドは、例えばナトリウムアジドによるハロゲン化物等の適切な基の求核置換を含む、当該技術分野で既知の技法によって容易に調製することができる。アルキン含有分子を製造する技法も当該技術分野で既知である。
好ましくは、オレフィン性不飽和モノマーは、保護基で保護されてもよいアルキン基で官能化される。このような状況では、ペンダント基部分がアジド基を含む。この配置の使用は、同一分子中のアジド基の数を減少させ且つアジド官能性糖等の既知のアジド官能化された側基を利用するため、安全性の観点から特に興味深い。このような官能化された化合物は大抵の場合市販されている。
ペンダント側基は生物学的実体(entity)を含み得る。好ましくは、ペンダント側基は生物学的活性を有する。即ち、ペンダント側基は、細胞内で起こるか若しくは細胞によって生成される部分、及び/又は受容体等の分子若しくは生物体内、例えば細胞又は細胞表面上の他の分子と相互作用する部分を含む。生物体又は細胞は、原核生物、真核生物、真菌、細菌、植物、又は哺乳類若しくは好ましくはヒト等の動物であり得る。細胞は、単離され得るか、又は組織の一部若しくは生物体全体であってもよい。好ましい側基としては、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド(nuclosides)、ビタミン、ホルモン、脂肪酸、リポ多糖類、グリセロール等から選択される部分が挙げられる。生物学的実体が受容体と結合していてもよい。このような化合物は当該技術分野で既知である。本発明の方法は、例えば、実体の様々な数又は組合せを含むコンビナトリアルライブラリを作成するために、このような化合物をポリマーに容易に組み入れることを可能にする。
好ましくは、ペンダント側基は、1つ又は複数の糖、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換ポリアルキレングリコール基、又はリン脂質基から選択される部分を含む。
糖は、通常、多価アルコールのアルデヒド又はケトン誘導体である炭水化物である。そ
れらは、モノマー(単糖類)(例えばフルクトース若しくはグルコース)又は二糖類、五糖類若しくは多糖類を形成するように互いに結合する2つ以上の糖から成るより複雑な糖であってもよい。種々の糖は、このような二糖類及び多糖類を形成するように共に形成され得る。二糖類としては、グルコース及びフルクトースから成るスクロース等の糖が挙げられる。多糖類としてはデンプン及びセルロースが挙げられる。糖という用語は、置換糖及び非置換糖の両方、並びに糖の誘導体を含む。好ましくは、糖は、グルコース、グルコサミン、ガラクトース、ガラクトサミン、マンノース、ラクトース、フコース、及びそれらの誘導体、例えばシアル酸、グルコサミンの誘導体から選択される。糖は好ましくはα又はβである。糖は特に、マンノースピラノシド又はガラクトースピラノシドであってもよい。また糖は、1つ若しくは複数のヌクレオシド、例えば3−アジド−3−デオキシチミジン(Aldrich Ltd(United Kingdom)から市販されている)、又は1つ若しくは複数
のヌクレオチドであってもよい。糖上のヒドロキシル基は、例えば1つ又は複数のアセチル基で保護されていてもよい。糖は好ましくはN−アセチル化されている。このような糖の好ましい例としては、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸、ノイラミン酸、N−アセチルガラクトース、及びN−アセチルグルコサミンが挙げられる。このようなN−アセチル化された糖は大抵の場合、細胞表面上に存在し、生物体における表面認識に関与している。例えば、それらは、タンパク質、ホルモン、ウイルス、微生物、寄生虫、又は生物体内の他の細胞に関する受容体によって認識される。
また糖はリポ多糖類(LPS)に存在する。LPSは、多糖と結合した脂質を含む。LPSとは、例えばグラム陰性細菌の細胞膜の成分である。これは、哺乳類等の動物における免疫応答を度々刺激するエンドトキシンである。
好ましくは、アルキル基は6〜30個、特に10〜25個、又は10〜20個の炭素原子を含む。これは、1つ又は複数のヒドロキシル基、カルボキシ基、ハロゲン、酸素、窒素、アミド基又はアリール基で置換されていてもよい。アルキル基は分枝、線状又は環状アルキルであってもよい。
好ましくは、ポリアルキレングリコールは、2〜10個、特に少なくとも3個の炭素原子を含有するアルキレングリコールのポリマー、最も好ましくはポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)又はポリ(ブチレングリコール)である。最も好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)を使用する。ポリアルキレングリコールを含むモノマーから櫛形ポリマーを製造する方法は当該技術分野で既知である(国際公開第WO2006/003352号(参照により本明細書中に援用される)に記載されている)。しかしながら、本明細書中に開示されるメカニズムによるペンダントアルキレングリコール基の結合は新規であり、例えば、比較的使用するのが容易なメカニズムによって、ポリアルキレン基に加えて使用される種々のペンダント基の混合物をもたらす。ポリアルキレングリコール基は、アルキル基について上記したものを含む1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
ポリアルキレングリコール誘導体は、例えば、PEGが結合する分子の抗原性及び免疫原性を低減するような使用可能性を有する。PEGはまた、ポリマーが糸球体濾過範囲を超えるまで分子の見かけサイズを大きくした結果としての腎クリアランスの回避に起因して、且つ/又は細胞クリアランス機構の回避によって、in vivoにおいて循環半減期を顕著に改善させる。その上、PEGは、PEGが結合するタンパク質及びポリペプチドの溶解性を顕著に改善させることができる。それゆえ、ポリマーを含むポリアルキレングリコールの使用によって、有益な特性を有するポリマーが生成される。PEG側基はまた、(上記のように)アジド基又はアルキン基で官能化されるオレフィン性不飽和モノマーを共重合することによって組み入れられてもよく、オレフィン性不飽和モノマーはPEG等のポリアルキレングリコールで官能化される。後のモノマーは国際公開第WO200
6/003352号に記載されている。
リン脂質は、少なくとも1つの脂肪酸がリン酸基で置換され且つ通常エタノールアミン又はコリン等のいくつかの窒素含有分子のうちの1つを有する脂肪誘導体である。リン脂質としては、ホスファチジルコリン(レシチンとしても知られている)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン及びホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。リン脂質の極性は、細胞膜内のそれらの生物学的機能にとって必須である。脂溶性部分は他のリン脂質の脂溶性部分と結合するのに対し、水溶性領域は周囲の溶媒に曝されたままである。リン脂質はまた、乳化剤として作用するという重要な特性を有する。このため、ポリマーへの付加的なリン脂質は、ポリマーの溶解性及び/又は生物学的活性を変えるのに用いることができる。
最も好ましくは、ペンダント側基が糖を含む。
好ましくは、オレフィン性不飽和モノマーが1つ又は複数の異なるオレフィン性不飽和モノマーと共重合する。これはコポリマーを生成するのに用いられ得る。2つの異なるモノマーは、例えば、アルキン基又はアジド基で官能化されるメチルメタクリレートであってもよく、さらなるモノマーは、例えば、官能化されていないメチルメタクリレートであってもよい。これらは、反応に別々に添加されてブロックコポリマーを生成し得るか、又は代替的には所定比率で添加されて統計学的なコポリマーを生成し得る。官能化されていないモノマーを使用することによって、ポリマー中間体に組み入れられる官能化されたモノマーの数を制御することができる。このため、使用されるモノマーの少なくとも1つが、官能化されたアルキン基又はアジド基を有しないことが最も好ましい。このような共重合は、ブロック共重合、グラジエント共重合又は統計学的共重合であってもよい。
さらなるモノマーの少なくとも1つは、それ自体、官能化された基を含むものであってもよい。例えば、モノマーは、蛍光基又は他の標識基、例えばNMRによって検出可能なベンジル側基、又はクマリン若しくはホスタゾル等の蛍光基に結合している。しかしながら、他の官能化されたモノマーを使用し、最終的なポリマーに異なる特性を組み入むこともできる。例えば、官能化された基は、トキシン及び/又は抗生物質等の薬剤であってもよい。この抗生物質は、抗ウイルス剤、抗菌剤又は駆虫剤、例えば抗マラリア剤であってもよい。トキシン及び抗生物質は一般的に既知である。官能化された基はポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールであってもよい。
好ましくは、ポリマー中間体は2つ以上の異なるペンダント基と反応し、アルキン基又はアジド基で各々官能化される。これにより、例えば、最終的なポリマーと結合する種々の糖の混合物がもたらされる。このことは、種々の糖の様々な比率の効果を例えばレクチン又は細胞膜との結合に関して求めることができるという利点を有する。また種々のペンダント基の1つは、官能基、例えば標識基であってもよい。例えば、クマリン(蛍光基)を用いてポリマー蛍光をもたらすことができる。クマリン基は、必要に応じてアジド基又はアルキン基を介して結合し得る。
アルキン基を保護する保護基は好ましくは、トリアルキル、トリアリール又はR3Si
(ここで、R=置換又は非置換のアルキル又はアリールである)から選択され、各アルキル又はアリールが好ましくは1〜6個の炭素又は別のケイ素含有保護基を含有する。好ましくは保護基がトリメチルシリル基である。
アジド基の保護基は、好ましくは使用されず、また通常必要としない。
本発明者らは、アルキン基がトリメチルシリル基で保護され、且つ保護基が、酢酸等の
酸で緩衝処理を施したTBAF(テトラブチルアンモニウムフルオライド)を用いてアルキン基を処理することによってポリマー中間体から除去される場合、ポリマー中間体から除去される保護基の数が改良されることを予想外に見出した。
好ましくはこのオレフィン性不飽和モノマー(複数可)は、付加重合を受け得るオレフィン性不飽和部分を有し、且つ1つ又は複数の官能基を含んでもよい線状、分枝状又は星形の置換又は非置換モノマーである。
好ましくはモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全て異性体)、ブチルメタクリレート(全て異性体)、及び他のアルキルメタクリレート;対応するアクリレート;さらに官能化されたメタクリレート及びアクリレート、例えばグリシジルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート;フルオロアルキル(メタ)アクリレート;メタクリル酸、アクリル酸;フマル酸(及びエステル)、イタコン酸(及びエステル)、無水マレイン酸;スチレン、α−メチルスチレン;ビニルハロゲン化物、例えば塩化ビニル及びフッ化ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;式CH2=C(H
al)2(ここで、各ハロゲンは独立してCl又はFである)のビニリデンハロゲン化物
;式CH2=C(R15)C(R15)=CH2(ここで、R15は、独立してH、C1〜C10アルキル、Cl又はFである)の置換されてもよいブタジエン;式CH2=CHSO2OM(ここで、MはNa、K、Li、N(R164(ここで、R16は、各々独立して、H又は
Cl又はアルキルであり、DはCOZ、ON、N(R162又はSO2OZであり、ZはH、Li、Na、K又はN(R164である)である)のスルホン酸若しくはその誘導体;
式CH2=CHCON(R162のアクリルアミド若しくはその誘導体、及び式CH2=C
(CH3)CON(R162のメタクリルアミド若しくはその誘導体から選択され、このようなモノマーの混合物、又はポリオキシポリエーテルを使用してもよい。ポリオキシポリエーテルは好ましくは、ポリ(アルキレングリコール)又はポリテトラヒドロフランである。好ましくは、ポリアルキレングリコールが、2〜10個、特に少なくとも3個の炭素原子を含有するアルキレングリコールのポリマー、最も好ましくはポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)又はポリ(ブチレングリコール)である。例えば、ポリエチレングリコールを使用してもよい。
必要であれば、モノマーを保護されてもよいアジド基又はアルキン基で官能化して、ペンダント側基部分を結合させてもよい。
最も好ましくは、上記方法は、遷移金属媒介リビングフリーラジカル重合及び/又はATRP(原子移動ラジカル重合)を利用する。強い原子(atoms:アニオン)(求核試薬
)及びカチオン(求電子試薬)と反応し得る一連の官能基を含有する糖(単数又は複数)が特に好ましい。しかしながら、当該技術分野で既知の他のタイプのリビング重合を使用してもよい。これらとしては、リビングアニオン重合及びリビングカチオン重合、RAFT、及び窒素酸化物媒介重合が挙げられる。RAFTは、例えば、米国特許第6,153,705号、国際公開第WO98/01478号、国際公開第WO99/35177号、国際公開第WO99/31144号、国際公開第WO98/58974号に開示されている。
窒素酸化物媒介重合は、Harnker C. J他による論文(Chem Rev 2001)に概説されてい
る。
いずれかのリビングラジカル重合は、
(i)各開始剤は、α末端が開始剤に直接由来する1つのポリマー鎖かつ唯一のポリマ
ー鎖をもたらし、
(ii)停止反応がないことにより、停止反応の結果である二官能性生成物の存在がなくなり、
(iii)分子量分布が他の反応によるよりも厳密に制御され、
(iv)複雑な化学変換を実行する必要なく、重合プロセスにより、官能基の導入、例えば開始剤によってタンパク質を結合させることが可能となる
として、請求項に記載の発明と連動すると考えられる。
好ましくは、遷移金属媒介リビングフリーラジカル重合及び/又はATRPが、
(i)移動可能な原子又は基を含む開始剤、及び
(ii)重合反応を触媒することができる触媒、
の使用を含む。
開始剤は好ましくはホモリシス開裂可能な結合を含む。国際公開第WO96/30421号、国際公開第WO97/18247号、及び国際公開第WO97/47661号を含むこのような系について言及する多くの特許出願が存在する。櫛形ポリマー、例えばポリエチレングリコールの製造は国際公開第WO2006/003352号に開示されている。
窒素酸化物媒介リビングラジカル重合、原子移動ラジカル重合及び可逆的付加型開裂連鎖移動重合(RAFT)メカニズムを含む、ラジカル重合の種々の形態、並びに、リビングラジカル重合の他の形態は、テキストブック「ラジカル重合の手引き(Hand-book of Radical Polymerisation)」、EDT. Matyjaszewski K. and Davies T.P. (John Wiley and
Sons) (2002)(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
好ましくは、移動可能な原子又は基が、Cl、Br、I、OR20、SR21、SeR21、OP(=O)R21、OP(=O)R21、OP(=O)(OR212、OP(=O)O21
O−N(R212及びS−C(=S)N(R212(ここで、R20=C1〜C20アルキルで
あり、水素原子の1つ又は複数がハロゲン化物によって独立して置換されてもよく、R21がアリール又は線状若しくは分枝状C1〜C20アルキル基であり、且つ(NR212基が存在するときは、2つのR21基が結合して5員複素環又は6員複素環を形成し得る)から選択される。
好ましくは、開始剤は、検出可能な基、又は生体物質と結合し得る基を有する。この基は好ましくは、タンパク質若しくはポリペプチド、又は脂肪、即ち脂質、炭水化物若しくは核酸と結合することができる。ATRP又は遷移金属媒介リビングラジカル重合では、開始剤の少なくとも一部が最終的なポリマーに組み入れられる。これにより、いくらかの基が開始剤からポリマーに組み入れられる。
好ましくは、開始剤が、
A−S−C(O)−R、A−S−C(S)−O−R、R−S−C(O)−A、R−S−C(S)−O−A(ここで、Rは、C1〜C20置換又は非置換の直鎖、分枝鎖、環状、複素
環式又は芳香族のアルキル;
Figure 0005584337
Figure 0005584337
(式中、
X=Cl、Br、I、OR20、SR21、SeR21、OP(=O)R21、OP(=O)R21、OP(=O)(OR212、OP(=O)O21、O−N(R212及びS−C(=S)N(R212(ここで、R20=C1〜C20アルキルであり、水素原子の1つ又は複数がハロゲン化物によって独立して置換されてもよく、R21がアリール又は線状若しくは分枝状C1〜C20アルキル基であり、且つ(NR212基が存在するときは、2つのR21基が結合して5員複素環又は6員複素環を形成し得る)であり、
Aは、ポリマーに結合された場合、タンパク質又はポリペプチド等の生体分子と結合し
得る部分であり、
Bはリンカーであり、存在しても存在し得なくてもよい)
から選択される。
最も好ましくは、Aが、スクシンイミジルスクシネート、N−ヒドロキシスクシンイミド、スクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルブタノエート、トリアジン、ビニルスルホン、プロピオンアルデヒド、アセトアルデヒド、トレシレート、ベンゾトリアゾールカーボネート、マレイミド、ピリジルスルフィド、ヨードアセトアミド及びスクシンイミジルカーボネートから選択される。
好ましくは、リンカーが、存在する場合、C1〜C20の置換又は非置換の直鎖、分枝鎖
、環状、複素環式又は芳香族のアルキル基;−(CH2Z)aCH2−、−CH2ZCH2
、−(CH2CH2Z)n−R、−(CH2CH(CH3)Z)n−R、−(CH2b−C(O)−NH−(CH2c−、−(CH2a−NH−C(O)−(CH2y−、−N(R)2
−;−S−;−N−R;又は−O−R(ここで、R=C1〜C20の置換又は非置換の直鎖
、分枝鎖、環状、複素環式又は芳香族のアルキルであり、ZはO又はSであり、n、a、b及びcは独立して1〜10の選択可能な整数である)から選択される。
好ましくは、タンパク質又はポリペプチドと反応し得る部分が式:
Figure 0005584337
Figure 0005584337
Figure 0005584337
(式中、R’はH、メチル、エチル、プロピル又はブチルであり、X=ハロゲン化物、特にCl又はBrである)
を有する。
最も好ましくは、開始剤(ii)が、式:
Figure 0005584337
(式中、nは0〜10の整数であり、Xはハロゲン化物、特にCl又はBrである)
を有する。
開始剤が、式:
Figure 0005584337
Figure 0005584337
から選択される化合物を有する。
このような開始剤及び結合基は国際公開第2006/003352号に詳細に記載されている。
開始剤が、ベンジル側基又はクマリン蛍光基等の検出可能な基を含み得る。ベンジル側基はNMRによって検出可能である。
最も好ましくは、開始剤がO−ベンジルα−ブロモエステルである。
好ましくは、触媒が、遷移金属と成長中のポリマーラジカルとの間の直接結合が形成されないよう、δ−結合で遷移金属と配位し得る任意のN−、O−、P−又はS−含有化合物、又はπ−結合で遷移金属と配位し得る任意の炭素含有化合物であるリガンドから選択
される。
好ましくは、触媒が、
第一化合物MY(ここで、Mは、一形式酸化状態により酸化され得る遷移金属、特にCu+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Cr2+、Cr3+、Mo2+、Mo3+、W2+、W3+、Mn3+、Mn4+、Rh3+、Rh4+、Re2+、Re3+、Co+、Co2+、V2+、V3+、Zn+、Zn2+、Au+、Au2+、Ag+及びAg2+であり、Yは一価又は二価の対イ
オンである);及び
窒素の少なくとも1つが芳香族環の一部でないオルガノジイミン、
を含む。
最も好ましくは、上記方法が、重合反応を触媒し得る触媒の使用を含み、触媒が式:
[MLmn+n-
(式中、
M=一形式酸化状態により酸化され得る遷移金属、特にCu+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Cr2+、Cr3+、Mo2+、Mo3+、W2+、W3+、Mn3+、Mn4+
Rh3+、Rh4+、Re2+、Re3+、Co+、Co2+、V2+、V3+、Zn+、Zn2+、Au+
、Au2+、Ag+及びAg2+であり、
A=陰イオンであり、
n=1〜3の整数であり、
m=1〜2の整数であり、
L=窒素の少なくとも1つが芳香族環の一部でないオルガノジイミンである)
の化合物を含む。
好ましくは、オルガノジイミンが、
Figure 0005584337
Figure 0005584337
(式中、
1、R2、R10、R11、R12及びR13は独立して変更可能であり、R1、R2、R10、R11、R12及びR13は、H、直鎖、分枝鎖もしくは環状の飽和アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アリール(例えば、フェニル又は置換フェニル(置換はR4
9について記載される通りである))、CH2Ar(ここで、Arはアリール又は置換ア
リールである)又はハロゲンであってもよい)から選択される式を有する。好ましくはR1、R2、R10、R11、R12及びR13は、C1〜C20のアルキル、ヒドロキシアルキル又は
カルボキシアルキル、特にC1〜C4アルキル、特にメチル又はエチル、n−プロピルイソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル又はラウリルであり得る。
1、R2、R10、R11、R12及びR13は特にメチルであり得る。
3〜R9は独立して、R1、R2、R10、R11、R12及びR13について記載される基、又はさらにOCH2n+1(ここで、nは1〜20の整数である)、NO2、CN、又はO=C
R(ここで、R=アルキル、ベンジルPhCH2又は置換ベンジル、好ましくはC1〜C20アルキル、特にC1〜C4アルキルである)から選択されてもよく、mは0〜4の整数である。
好ましくはキノリンカルバルデヒドにおいて、R9はHであり且つm=0である。
さらに、化合物は、窒素基の1つに対するキラル中心αを示し得る。これにより、異なる立体化学構造を有するポリマーが生成される可能性がもたらされる。
一般式25の化合物は、ピリジン基上に1つ又は複数の縮合環を含み得る。
1つ又は複数の隣接するR1及びR3、R3及びR4、R4及びR2、R10及びR9、R8及びR9、R8及びR7、R7及びR6、R6及びR5基は、C5〜C8シクロアルキル、シクロアル
ケニル、ポリシクロアルキル、ポリシクロアルケニル、又は環状アリール、例えばシクロヘキシル、シクロヘキセニル若しくはノルボルニルであってもよい。
好ましいリガンドとしては、以下のものが挙げられる:
Figure 0005584337
Figure 0005584337
Figure 0005584337
(式中、*はキラル中心を示し、
14=水素、C1〜C10分枝鎖アルキル、カルボキシ−又はヒドロキシC1〜C10アルキルである)。
好ましくは、触媒は以下のものである:
CuBrと組み合わせた
Figure 0005584337
最も好ましくは、オルガノジイミンが、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(NMPI)、N(n−エチル)−2−ピリジルメタンイミン又はN−エチル−2−ピリジルメタンイミンから選択される。
触媒はビピリジン基も含む。最も好ましくは、触媒が4,4−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジル(dNbpy)である。
好ましくはペンダント基は、上記で定義される通りであり、好ましくは、糖から選択される部分を含み、且つグルコース、グルコサミン、ガラクトース、ガラクトサミン、ラクトース、マンノース、フコース、及びそれらの誘導体、例えばシアル酸から選択される。糖は好ましくはN−アセチル化されている。このような糖の好ましい例としては、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸、ノイラミン酸、N−アセチルガラクトース、及びN−アセチルグルコサミンが挙げられる。このようなN−アセチル化された糖は大抵の場合、細胞表面上に存在し、生物体における表面認識に関与している。例えば、それらは、タンパク質、ホルモン、ウイルス、微生物、寄生虫、又は生物体内の他の細胞上の受容体によって認識される。
また糖はリポ多糖類(LPS)に存在する。LPSは、多糖と結合した脂質を含む。LPSとは、例えばグラム陰性細菌の細胞膜の成分である。これは、哺乳類等の動物における免疫応答を度々刺激するエンドトキシンである。
反応は、反応物に応じて任意の好適な溶媒中で実行され得る。このような溶媒としては、プロトン性及び非プロトン性溶媒、並びに非プロトン性(aprotic)溶媒が挙げられる
。例えば、水、DMSO、DMF、アルコール、及びアルコールと水との混合物である。
温度及び濃度等の最適な反応条件は、当業者によって容易に確定され得る。
本発明はまた、本発明の方法によって得られる、ペンダント側基を有するポリマーを提供する。
好ましくは、ポリマーは、1.5、1.4又は1.3未満、最も好ましくは1.25未満、1.2未満、特に1.15未満の多分散度指数(Mw/Mn)を有する。
好ましくは、ポリマーは5000Da〜100000Daの分子量を有する。
本発明のさらなる態様は、1.5、1.4、1.3未満、最も好ましくは1.25未満、1.2未満、特に1.15未満の多分散度を有する、複数のペンダント基を含むペンダ
ント側基を有するポリマーを提供する。好ましくはポリマーの分子量は5000Da〜100000Daである。
本発明の方法によって生成されるポリマーはさらなる反応に用いることができる。例えば、ペンダント基が糖である場合、糖は、例えばイソシアネート等のキラル化合物と反応させることによって誘導体化し得る。これにより、キラルクロマトグラフィに有用な化合物が生成される。
本発明のポリマーは好ましくは上記のペンダント側基を有し、この部分は、上記の1つ又は複数の糖、アルキル基、ポリアルキレングリコール基、又はリン脂質基から選択され得る。
最も好ましくは、ペンダント側基が糖側基である。
2つ以上の異なるペンダント側基をポリマー上に設けてもよい。これらは糖側基であることが好ましい。しかしながら、本発明の第1の態様について上記したもののような他の官能性側基を使用してもよい。
好ましくは、検出可能な側基又は末端基がもたらされる。最も好ましくは、検出可能な基がベンジル基又はクマリン基である。
本発明のポリマーは、上記のタンパク質又はポリペプチド、核酸、炭水化物又は脂肪から選択される生体分子と結合し得る基をさらに含んでいてもよい。
好ましくは、ポリマーが、
Figure 0005584337
Figure 0005584337
Figure 0005584337
(式中、R’はH、メチル、エチル、プロピル又はブチルであり、Xはハロゲン化物、特にCl又はBrである)
から選択される基を含む。
好ましくは、糖ポリマーが、ポリマーに結合した状態の、開始剤から得られる原子又は基と、ポリマー上の別の位置に存在する、開始剤の化合物の残渣とを含む。
生体分子と結合し得る基及び/又は開始剤は、本発明の第1の態様について上記で定められ通りであり得る。
遷移金属媒介リビングラジカル重合/ATRPに関して、開始剤は分離する。最終的に開始剤の一部がポリマー鎖の一端と結合する場合、他端の、開始剤の移動可能な部分(原子又基)がポリペプチド鎖の別の部分と結合する。例えば、結果及び考察のセクションに示すように、O−ベンジルα−ブロモエステル(2)を使用して、最終的にポリマー鎖の一端が臭素原子で終わり、開始剤部分の残渣の部分がポリマー鎖の他端に現れる。開始剤は好ましくは、本発明の第1の態様に記載される通りである。
糖又はLPS等の側基を有する化合物を生成する能力によって、研究されるタンパク質、ウイルス、寄生虫、細胞等の相互作用が可能になる。またこのような能力により、細胞受容体又は他の成分を標的とする分子がもたらされる。
それゆえ、例えば糖又はLPSを含む本発明の分子は、さらなる官能基とさらに結合し得る。官能基は、(例えば上記のような)トキシン及び/又は抗生物質等の薬剤であってもよい。さらなる官能基は、例えばクリックケミストリによって結合されてもよい。代替的には、官能基は、重合反応を開始するのに用いられる開始剤の一部として提供され得る。国際公開第WO2006/003352号は、官能化された開始剤の使用による、ペンダントポリエチレングリコール基が結合され、且つ生物学的な結合部分、例えばマレイミド、スクシンイミド又はN−ヒドロキシスクシンイミドが結合されたポリマーの製造を開示している。
さらなる官能基は、オレフィン性不飽和モノマーと結合し、例えば、グラジエントコポリマー、ブロックコポリマー又は統計学的なコポリマー等のコモノマーとして組み入れられ得る。例えば、本発明の方法で生成される、糖が結合したポリマーのブロックは、さら
なる官能基が結合した第2のブロックに結合して生成されてもよい。
本発明の分子は好ましくは、ポリマーと結合する場合、生体物質に結合し得る部分を含む。好ましくは、この部分はマレイミド、スクシンイミド又はN−ヒドロキシスクシンイミドである。好ましくは、本発明の方法はこのような部分を含む開始剤を使用する。このような開始剤は包括的に国際公開第WO2006/003352号に示されている。
本発明の方法によって生成される、糖又はPEG側基を含む分子は、例えば、このような部分によって薬学的に活性な化合物、例えば薬剤に結合され得る。国際公開第WO2006/003352号に記載されているように、PEGは、このような化合物の循環半減期を改善し且つ抗原性及び免疫原性を低減させることが知られている。PEGの代わりにポリマーに結合した糖を使用する場合にも、この効果を有すると考えられる。
薬剤を受容体に向けるように、例えば糖又はLPSによって、例えば細胞上の受容体にこの分子を向けることができる。
それゆえ、本発明はまた、タンパク質又はポリペプチド等の薬学的に活性な薬剤と結合する本発明の分子を提供する。好ましくはこの分子は、ペンダント側基として1つ又は複数の糖及び/又はPEG基を含む。好ましくはこの分子は、上記の部分のような、生物学的な部分と結合し得る部分を介して結合する。
本発明のさらなる態様は、本発明による複数のポリマーを含む、種々のポリマーのライブラリを提供し、これらのポリマーはそれぞれ様々なペンダント基、ペンダント側基の様々な量及び/又は異なるペンダント側基の様々な比率によって異なる。種々の化合物のライブラリを提供することにより、例えば、レクチン結合上の様々な比率の糖の効果を確認することが可能になる。
本発明によるポリマー又は本発明によるライブラリを含む、糖−レクチン結合用の、又は細胞表面結合検査のための検査キットも提供される。好ましくは、検査キットは1つ又は複数のペンダント糖側基を有するポリマーを含む。
本発明のさらなる態様は、本発明によるポリマー又はポリマーのライブラリに対するレクチン又は細胞表面の結合を検出することを含む、ポリマーに対するレクチン又は細胞表面の結合について、レクチン又は細胞表面を検査する方法を提供する。好ましくは、ポリマーが1つ又は複数のペンダント糖基を含む。
化合物へのレクチン結合又は細胞表面結合を検査する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、コンカナバリンA(conA)等のレクチンへの本発明のポリマーの結合は、ポリマーがレクチンを沈降させることから測定することができる。これは、材料及び方法のセクションでより詳細に記載されている。その上、比濁法等の他の技法も使用することができる。
本発明による方法における使用のためのポリマー中間体も提供される。かかるポリマーは好ましくは、複数の保護されてもよいアジド側基又は保護されてもよいアルキン側基を含み、且つ好ましくは、1.5、1.4又は1.3未満、より好ましくは1.25未満、1.2未満、特に1.5未満の多分散度指数を有する。
好ましくは、中間体ポリマーは検出可能な側基又は末端基を含む。中間体ポリマーは、生体分子と結合し得る基、並びに/又は開始剤から得られる原子若しくは基、及びポリマー中間体上の別の位置に存在する、開始剤の化合物の残渣をさらに含み得る。検出可能な
側基又は末端基、生体分子と結合し得る部分、及び開始剤化合物は好ましくは、本発明の先行するいくつかの態様について上記で定められた通りである。
好ましくは、本発明のポリマー又は本発明のポリマー中間体は、統計学的なコポリマー、ブロックコポリマー、グラジエントなポリマー、テレケリック(telechelic:両端二官能性)ポリマー、櫛形ポリマー、又はグラフトコポリマーである。
ポリマー又はポリマー中間体は、分枝、線状、櫛形、デンドリマー、分枝ポリマー又はグラフトポリマーであってもよい。
ポリマーは、それ自体が固体担体を形成してもよく、又は当該技術分野で一般的に既知の技法によって固体担体に結合されていてもよい。開始剤は、それ自体が重合前に担体と結合するものであってもよい。しかしながら、本発明者らは、クリックケミストリによってペンダント基を付加する原理がいずれの固体担体にも適応され得ることを理解している。
したがって、本発明のさらなる態様は、
(i)(a)保護基で保護されてもよいアジド基、又は(b)保護基で保護されてもよいアルキン基で官能化される有機担体又は無機担体を準備すること、
(ii)存在する場合には、官能化された担体から保護基の総数の少なくとも一部を除去すること、及び
(iii)官能化された担体を、(a)アルキン基又は(b)アジド基で各々官能化された少なくとも1つのペンダント側基部分と反応させて、アルキン基及びアジド基が反応しペンダント側基を担体に結合させること、を含む、ペンダント側基を含む担体を製造する方法を提供する。
固体担体は、ビーズの形態で、又は材料のシート等のより大きな表面積を有して提供され得る。担体は、シリカ等の無機物、又は架橋有機材料(例えばポリ(スチレン−w−ジビニルベンゼン))若しくはセルロース材料(例えば濾紙)等の有機物であってもよい。Wang樹脂が特に好ましい。固体担体は国際公開第WO2001/094424号(参照により本明細書中に援用される)でより詳細に記載されている。
好ましくは、固体担体はアルキン基で官能化される。
固体担体は本来、例えばヒドロキシル基又はアミン基を含む。その場合、この基はクリックケミストリにおける使用のためにアルキン基に変換されてもよい。例えば、ヒドロキシル基含有担体、例えばWang樹脂は、無水ピリジン及びジメチルアミノピリジンと反応し、その後アルキンエステルと反応して、アルキン官能化された担体を生成し得る。アルキンエステルは好ましくは、C3〜C10アルキンエステルである。
使用されるペンダント側基、アルキン基、アジド基、及び保護基は、上記で定められる通りであり得る。上記のような任意選択的な官能基又は検出可能な基も提供される。
また本発明者らは、ペンダント基が鏡像異性体である場合に、本発明のポリマー、ライブラリ及び固体担体がキラルクロマトグラフィにおいて使用され得ることを理解している。キラルクロマトグラフィは、固定相がアキラルの代わりにキラルである場合に当該技術分野で一般的に既知のカラムクロマトグラフィの変形である。その場合、同一化合物の鏡像異性体は固定相に対する親和性が異なるため、様々な時間でカラムから出る。鏡像異性による分離は、キラル相の慎重な使用によってキラルクロマトグラフィにおいて達成される。移動相は、キラルガスクロマトグラフィ及びキラル液体クロマトグラフィを利用して
気体又は液体であってもよい。キラル選択性は通常、キラル固定相を使用することによって得られる。
鏡像異性化合物は、互いに重ね合わせることができない鏡像として存在する。鏡像異性体の混合物はラセミ混合物として知られる。多くの薬剤、糖(例えばD−マンノース、又はD−グルコース若しくはL−グルコース)及びアミノ酸を含む多種多様な鏡像異性化合物が存在する。それらは通常、偏光下で異なる活性を有する。光に対面して観た場合、時計方向に光面を回転させる鏡像異性体は右旋性(「+」又は「D」)であると称される。反時計方向に光を回転させるものは左旋性(「−」又は「L」)であると称される。種々の鏡像異性体はたいていの場合、異なる活性、又は様々な化合物若しくは受容体との異なる相互作用能を有する。
このため好ましくは、本発明の方法に用いられるか、又は本発明のポリマー、ライブラリ又は固体担体と結合するペンダント側基は、化合物の鏡像異性体、又は化合物のラセミ混合物である。ラセミ混合物は、所定比率の種々の鏡像異性体(enanatiomers)の事前に選択されるラセミ混合物であってもよい。例えば、+:−鏡像異性体の比率は、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、又は10:90であり得る。
したがって、本発明の方法はまた、ポリマーを含むクロマトグラフィカラムを準備する工程を提供する。
本発明の技法は特に、このようなポリマー、ライブラリ又は担体の製造に役立つ。
好ましくは鏡像異性化合物は糖である。この鏡像異性糖は、モノマー(単糖)(例えばフルクトース若しくはグルコース)又は二糖類若しくは多糖類を形成するように互いに結合する2つ以上の糖から成るより複雑な糖であってもよい。種々の糖は、このような二糖類及び多糖類を形成するように共に形成され得る。二糖類としては、グルコース及びフルクトースから成るスクロース等の糖が挙げられる。多糖類としてはデンプン及びセルロースが挙げられる。糖という用語は、置換糖及び非置換糖の両方、並びに糖の誘導体を含む。好ましくは、糖は、グルコース、グルコサミン、ガラクトース、ガラクトサミン、マンノース、フコース、及びそれらの誘導体、例えばシアル酸、グルコサミンの誘導体から選択される。糖は好ましくはα又はβである。糖は特に、マンノピラノシド又はガラクトースピラノシドであってもよい。また糖は、1つ若しくは複数のヌクレオシド、例えば3−アジド−3−デオキシチミジン(Aldrich Ltd(United Kingdom)から市販されている)
、又は1つ若しくは複数のヌクレオチドであってもよい。
ペンダント側基はさらに反応して他の有用な化合物を形成し得る。例えば、ペンダント基が糖である場合、糖を含むポリマーは、イソシアネート等のキラル化合物と反応し得る。これが糖上のヒドロキシル基と反応する。このため生成物は、上述のようにキラルクロマトグラフィにおいて用いられ得る。
本発明によるポリマー、ライブラリ又は固体担体を含むクロマトグラフィカラムが提供される。クロマトグラフィカラムは一般的に当該技術分野で既知である。このようなカラムは、例えばHPLCカラムであり得る。それらは好ましくはアフィニティクロマトグラフィ又はキラルクロマトグラフィにおける使用のためのものである。
本発明のポリマー、ライブラリ又は固体担体又はクロマトグラフィカラムの使用を含む、アフィニティクロマトグラフィ又はキラルクロマトグラフィを実施する方法も提供される。
ここで、添付の図面を参照し例証により本発明を説明する。
櫛形炭水化物官能性ポリマーへの逆合成アプローチを示す図である。 多価リガンド−conAクラスタリング反応の模式図である。 ポリマー濃度によって異なる多くのポリマーの吸光度を示す図である。 エピトープ密度と比した本発明によるポリマーに関するクラスタリング速度定数(3つの独立した実験値の平均)を示す図である。 可逆的な凝集検査結果を示す図である。クラスタリング比濁法実験中に形成されるクラスタを1M α−メチルマンノピラノシドで処理し、吸光度をt=0分及びt=10分で記録した。次に吸光度の変化(%)をエピトープ密度(%)に対してプロットし、α−メチルマンノピラノシド等の競合一価リガンドによって生じる破壊に対する複合体の安定性が、クラスタリングに用いられるポリマーのエピトープ密度に強く依存することを確認した。示したデータは、3つの独立した実験値から算出される平均値である。 70℃のトルエン溶液中で(2)を開始剤として用い、MMA又はmPEG300MAをコモノマーとして用いた(1)のホモ重合及び共重合を示す図である。反応条件:(3a):[(1)]0:[(2)]0:[CuBr]:[リガンド]=40:1:1:2。(6):[(1)]0:[MMA]0:[(2)]0:[CuBr]:[リガンド]=20:50:1:1:2。(9):[(1)]:[mPEG300MA]:[(2)]:[CuBr]:[リガンド]=5:25:1:1:2。a)一次動態プロット。b)モノマー換算におけるMn及びMw/Mnの依存性。 トリメチルシリル基(4a)の除去後、及びグルコースアジド誘導体(12)との反応後の保護されたポリマー(3a)のSEC分析を示す図である。 比濁法検査結果を示す図である。 ガラクトース含有多価ディスプレイを示す図である:非蛍光性ポリマー(27)及び蛍光性ポリマー(30)(DMSO中0.5mg/mL溶液)。 固定化RCA Iレクチンで充填されたカラムを用いたリガンド(30)のアフィニティHPLC分析を示す図である。条件:66.7M PBS(pH7.4)、150mM NaCl、環境温度。移動相中のD−ガラクトースの種々の濃度を各実行時に用いた。比較するために、クロマトグラムの総面積を濃度に対して正規化した。 TMM−LRP メチルメタクリレート及びホスタゾルモノマーのa)片対数動態曲線及びb)Mn、Mw/Mn 対 変換曲線を示す図である。反応条件:[MMA]0/[ホスタゾル]0/[I]0/[CuBr]0/[L]0=40:0.2:1:1:2、90℃。 Wang樹脂をマンノースで修飾した前後のFITC−ConA溶液のa)HPLC−UV及びb)HPLC−FLスペクトルである。 修飾Wang樹脂の共焦点画像である。a)ポリ(MMA−co−ホスタゾル)Wang樹脂及びb)D−マンノース修飾樹脂結合FITC−ConA。(図面代用写真) 担持された開始剤を用いた修飾Wang樹脂を製造する代替方法である。試薬及び条件:a)2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルブロミド、トリメチルアミン、DMAP、CH2Cl2、b)メタクリル酸3−トリメチルシラニル−プロプ−2−イニルエステル、Cu(I)Br、N−(n−プロピル)−2ピリジルメタンイミン、トルエン、60℃、c)TBAF・3H2O、酢酸、THF、−20℃〜25℃、d)(PPh33Cu(I)Br、α−(3−アジド−1−プロピル)−D−マンノース、DIPEA、60℃。 修飾Wang樹脂のIRスペクトルである。 修飾Wang樹脂への競合単座配位リガンドの付加。試薬及び条件:洗浄混合物:4mg/ml α−メチル−D−マンノピラノシド、1回当たり0.3ml。
材料
Keller及びWycoffの方法に従って臭化銅(I)(Aldrich、98%)を精製した(Keller R N, Wycoff H D (1946) 1-4)。2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸ベンジルエステル開始剤(2)(Hovestad N J, et al., Macromolecules (2000), 33 (11): 4048-4052)、メチル−[6−アジド−6−デオキシ−α−D−グルコピラノシド(8)(Wu X, et al., Bioorg. Med. Chem. (2002), 10 (7): 2303-2307)、[(PPh33CuBr]
(Gujadhur R, et al., Tetrahedron Lett. (2001), 42 (29): 4791- 4793)、3−アジ
ド−1−プロパノール(Mantovani G, et al., Chem. Commun. (2005), (16): 2089-2091)、過アセチル化したマンノース(Mukhopadhyay B, et al., J. Org. Chem. (2004), 69
(22): 7758-7760)、及びN−(エチル)−2−ピリジルメタンイミン(Haddleton D M,
et al., Macromolecules (1997), 30 (7): 2190-2193)を以前に記載されているように
調製し、0℃で保存した。トリメチルアミン(Fischer、99%)を水酸化ナトリウムペ
レット上に保存した。無水THF(Romil 製の「Hi−Dry」、99.99%)を乾燥窒素下で、活性化させた4Å分子篩上に保存した。Aldrichからのメタノール(0.20
M)中のテトラn−ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)をそのままの状態で(as
received)使用した。2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノ
シルアジド(12)を含む全ての他の試薬及び溶媒は、Aldrich Chemical Companyから入手可能な高純度で得られるため、記述がない限りさらなる精製せずに使用した。
分析
特に指定のない限り標準的なシュレンク技法を用いて、酸素を含有しない窒素の不活性雰囲気下で全ての反応を実行した。Rf値は、事前に被覆されたシリカゲル60 F25
4を用いて実施され且つ示される溶媒系中で展開される分析TLCを示す。初めに、TLCプレートをサンプルの適用前にチャンバ溶媒中で濯いだ。化合物をUV光(254nm)又はKMnO4の塩基性溶液(水中10%w/w K2CO3)を使用して視覚化した。
Merck 60(230〜400メッシュ)シリカゲルをカラムクロマトグラフィに用いた。2つのPLゲル5μmを混合させたD−カラム(300×7.5mm)及び1つのPLゲル5mmガードカラム(50×7.5mm)(Polymer Laboratories、分子量200g/mol〜400000g/molに好適)を備えたシステムにおいて、1.0mL/分で95:5(vol/vol)のTHF/トリエチルアミンを溶離液として用いて示差屈折率検出により、モル質量分布をサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いて測定した。ポリ(MMA)標準(1・106g/mol〜200g/mol)をSECを較
正するのに用いた。検体サンプルは、(0.2%vol)トルエンをフローマーカーとして含有していた。Mn 対 変換率(%)プロット中で記録されたMnは、PMMA標準で較正されたSECデータから得られ、補正はされていない。それらのプロットは、変換率に伴うMnの結果を示すために記録される。ガードカラム及び2つの混合Cカラム(20
0g/mol〜2000000g/mol)と直列に連結させた、低角レーザー光散乱検出器(LALLS;5°、2−mW HeNeレーザー、Polymer Laboratories)及び濃度検出器(DRI)を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(PL−LALS)によって、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)/0.1M LiBr 0.8mL/分を溶離液として用いて絶対重量平均分子量(Mw)を測定した。屈折率の増大(dn/dc)は濃
度検出値(detector)の積分によって導き出され、且つMwの計算に用いた。SEC−L
ALLSシステムの光散乱セルを狭い分子量PMMA標準(PL)で較正した。サンプルを12mg/mL濃度、100μL容積で注入した。Shodex AFpak ARC−894カラム及びHitachi L−7480蛍光検出器を備えたHPLCシステムを用いて、RCA I認識実験を実施した。Bruker DPX300スペクトロメータ及びBruker DPX400スペクトロメータを用いてNMRスペクトルを得た。残留溶媒共鳴の化学シフト(1H及び13C)を参照して、全ての化学シフトをテトラメチ
ルシランに対してppm(δ)で記録する。以下の省略は、多重度:s=一重項、d=二
重項、dd=二重項の二重項、bs=幅の広い一重項、m=多重項を説明するのに用いた。ポリマーの分子量Mn(NMR)は、鎖末端シグナル及びポリマー骨格に関する適切な
ピークの積分を比較することによって算出した。Varian Cary 50 Bio
UV−Visスペクトロメータを用い、2mL容ポリカーボネートキュベット(1cm経路長)を用いて比濁法検査を実施した。Perkin Elmer Lambda 25 UV−Visスペクトロメータ及び2mL容石英キュベット(1cm経路長)を定量沈降(QP)実験に用いた。Bruker VECTOR−22 FTIRスペクトロメータにおいて、Golden Gateダイアモンド減衰全反射セルを用いて赤外吸収スペクトルを記録した。Micromass Autospec装置を用いてマススペクトルを記録した。Kiessling及び共同研究者らによって記載されているように比濁法及び定
量沈降検査を実施した(Cairo C W, et al., J. Am. Chem. Soc. (2002), 124 (8): 1615-1619)。融点はBuchi 510装置においてオープンガラスキャピラリーを用いて
測定し、データは補正していない。収率は最適化していない。
モノマー及びアジド糖誘導体の合成
2−メチル−アクリル酸3−トリメチルシラニル−プロプ−2−イニルエステル(1):
トリメチルシリルプロピン−1−オール(10.0g、78.0mmol)及びEt3
N(14.2mL、101.3mmol)のEt2O(100mL)溶液を−20℃に冷
却し、メタクリロイルクロリド(8.8mL、93mmol)のEt2O(50mL)溶
液を約1時間かけて滴下した。この混合物をこの温度で30分間攪拌した後、環境温度で一晩攪拌し、アンモニウム塩を濾過によって除去し、揮発分を減圧下で除去した。黄色油性残渣の1H NMR分析によって、相当量の不純物の存在はいずれも明らかにならなか
ったが、2つのさらなる不鮮明な斑点がTLC(石油エーテル/Et2O 20:1)分
析により観測されたため、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(CC、SiO2、石
油エーテル/Et2O 50:1;石油エーテル/Et2O 20:1中Rf=0.67)
により精製した。得られた12.4g(63.2mmol、81%)(注記:大量調製(10g以上)について、最良の分離は、カラムを100%石油エーテルで溶離させ、その後、モノマー(1)の大部分がカラムから既に除去されている場合、石油エーテル/Et2O 50:1で溶離させることによって得られた。IR(neat):ν=2960,
1723,1638,1452,1366,1314,1292,1251,1147,1035,971,942,842,813,761cm-11H NMR(400.0
3MHz、CDCl3、298K)δ=0.16(s,9H,Si(CH33);1.9
3〜1.94(m,3H,CH3C=CH2);4.73(s,2H,OCH2);5.5
8〜5.59(m,1H,C=CHH);6.14(m,1H,C=CHH)。13C{1
H}NMR(100.59MHz、CDCl3、298K)δ=−0.2(3C,Si(
CH33);18.4(1C,CH3C=CH2);53.0(1C,OCH2);92.
0(1C,C≡Si(CH33);99.2(1C,≡CSi(CH33);126.5(1C,CH 3 C=CH2);135.8(1C,CH3C=CH2);166.6(1C,COエステル)。C10162Siに関する分析計算値(Anal. Calcd.):C,61
.18;H,8.21;N,0.00;実測値(Found):C,60.89;H,8.2
2;N,0.00;マススペクトロメトリ(+ESI−MS)m/z(%):219[M+Na](100),197[MH+](40)。
1−β−アジド−2,3,4,6−テトラアセチル−D−ガラクトース(12)
市販のペンタアセチルガラクトースから出発し、1−α−ブロモ−2,3,4,6−テトラアセチル−D−ガラクトースを介して先に記載されているように生成物を調製し、その報告されている不安定性から、対応するアジドの合成に直ちに用いた(Maier M A, et al., Bioconjugate Chem. (2003), 14 (1): 18-29)。1−α−ブロモ−2,3,4,6
−テトラアセチル−D−ガラクトース 1H NMR(400.03MHz,CDCl3,298K)δ=2.02(s,3H,CH3);2.07(s,3H,CH3);2.12
(s,3H,CH3);2.16(s,3H,CH3);4.10〜4.22(m,2H,CH2);4.48〜4.50(m,1H,CH);5.06(dd,J=10.6,3
.8Hz,1H,CH);5.41(dd,J=10.6,2.9Hz,1H,CH);5.53(bs,1H,CH);6.72(d,J=3.8Hz,1H,CH)。13C{1H}NMR(100.59MHz,CDCl3,298K)δ=20.58(1C,CH3);20.61(1C,CH3);20.65(1C,CH3);20.74(1C,C
3);60.8(1C,CH);66.9(1C,CH);67.7(1C,CH);
67.9(1C,CH);71.0(1C,CH);88.1(1C,CHBr);169.7(1C,CO);169.9(1C,CO);.170.0(1C,CO);170.3(1C,CO)。1−β−アジド−2,3,4,6−テトラアセチル−D−ガラクトース(12):(ペンタアセチルガラクトースからの全収率89%)m.p.93〜95℃(詳細には(lit.)94〜96℃9)。IR(neat):ν=2984,2124
,1736,1435,1373,1273,1210,1167,1167,1117,1082,1047,952,902,842,759,718cm-11H NMR
(400.03MHz,CDCl3,298K)δ=1.98(s,3H,CH3);2.05(s,3H,CH3);2.08(s,3H,CH3);2.16(s,3H,CH3
);4.00(m,1H,CHHO);4.14〜4.17(m,2H,CHHO+CH);4.59(d,J=8.8Hz,1H,CH);5.02(dd,J=10.4,3.3Hz,1H,CH);5.15(dd,J=10.4,8.7Hz,1H,CH);5.41(dd,J=3.3,3.8Hz,1H,CH)。13C{1H}NMR(100
.59MHz,CDCl3,298K)δ=20.65(1C,CH3);20.74(1C,CH3);20.78(1C,CH3);20.80(1C,CH3);61.3(1
C,CH2);66.9(1C,CH);68.1(1C,CH);70.8(1C,C
H);72.9(1C,CH);88.4(1C,CHN3);169.5(1C,CO
);170.1(1C,CO);.170.3(1C,CO);170.5(1C,CO)。C141939に関する分析計算値:C,45.04;H,5.13;N,11.26;実測値:C,45.05;H,5.07;N,10.63。
(14)(Wang P, et al., J. Org. Chem. (1993), 58 (15): 3985-3990)収率88%。IR(neat):ν=3356(幅広),2920,2095,1443,1279,1198,1130,1044,961,875,806cm-11H NMR(40
0.03MHz,CDCl3,298K)3.41(s,3H,OCH3);3.55〜3.56(m,2H,CH23,H’−及びH’’−6);3.69〜3.71(m,2H,H−3 + H−4),3.95(dd,J=3.3,1.5Hz,1H,H−2);4.74(d,J=1.5Hz,1H,H−1)13C{1H}NMR(100.59MH
z,CDCl3,298K)51.53(1C,CH23);55.35(1C,OCH3);68.37(1C,CH);70.85(1C,CH);71.43(1C,CH);71.80(1C,CH);101.14(1C,Canomeric)。C71435に関
するHRMS−ES計算値(HRMS-ES Calcd.)(M+):220.0933:実測値:220.0926。
(16)(Hayes W, et al., Tetrahedron (2003), 59 (40):7983-7996)49%収率。IR(neat):ν=2958,1743,1435,1368,1218,1136,1084,1046,979,910cm-11H NMR(400.03MHz,C
DCl3,298K)δ=1.88(s,3H,CH3);1.94(s,3H,CH3
;1.99(s,3H,CH3);2.05(s,3H,CH3);1.96〜2.12(m,2H,CH2CH2Br);3.41〜3.51(m,3H,OCHHCH2+CH2Br);3.77〜3.82(m,1H,OCHHCH2);3.89〜3.92(m,1
H,H−5);4.02(dd,J=12.3,2.3Hz,1H,H’’−6);4.16(dd,J=12.3,5.3Hz,1H,H’−6);4.73(d,J=1.5
Hz,1H,H−1);5.12−5.13(m,1H,H−2);5.16−5.19(m,2H,H−3,H−4)。13C{1H}NMR(100.59MHz,CDCl3,298K)δ=20.52(1C,CH3);20.55(1C,CH3);20.60(1C,CH3);20.71(1C,CH3);30.00(1C,CH2CH2Br);31.91(1C,CH2CH2Br);62.30(1C,CH2OAc);65.41(
1C,CH2CH2O);65.91(1C,CH);68.56(1C,CH);68.956(1C,CH);69.32(1C,CH);97.51(1C,Canomeric);169.53(1C,CH3C(O)O);169.71(1C,CH3C(O)O);169.82(1C,CH3C(O)O);170.40(1C,CH3C(O)O)。C1725310に関する分析計算値:C,47.33;H,5.84;N,9.74;実測
値:C,47.38;H,5.90;N,9.47;C1724BrO10に関するHRMS−ES計算値(M−H):467.0553:実測値467.0562。
(17)(Hayes W, et al., Tetrahedron (2003), 59 (40): 7983-7996)77%収率
。IR(neat):ν=2938,2097,1742,1679,1434,1368,1218,1136,1083,1046,979,938,911cm-11
NMR(400.03MHz,CDCl3,298K)δ=1.83〜1.90(m,2
H,CH2CH23);1.96(s,3H,CH3);2.01(s,3H,CH3);
2.07(s,3H,CH3);2.12(s,3H,CH3);3.40(t,J=6.5Hz,1H,CH23);3.47〜3.52(m,1H,OCHHCH2);3.7
5〜3.81(m,1H,OCHHCH2);3.90〜3.95(m,1H,H−5)
;4.08(dd,J=12.3,2.3Hz,1H,H’’−6);4.24(dd,J=12.3,5.4Hz,1H,H’−6);4.78(bs,1H,H−1);5.20(dd,J=3.0,1.8Hz,1H,H−2);5.23〜5.30(m,2H,H−3,H−4)。13C{1H}NMR(100.59MHz,CDCl3,298K)δ=20.75,20.77,20.94(4C,CH3);28.71(1C,CH2CH23);48.17(1C,CH2CH23);62.58(1C,CH2OAc);64.94(1C,CH2CH2O);67.22(1C,CH);68.74(1C,CH);69.11(1C,CH);69.57(1C,CH);97.71(1C,Canomeric);169.80(1C,CH3C(O)O);169.98(1C,CH3C(O)O);170.12(1C,CH3C(O)O);170.69(1C,CH3C(O)O)。C1724310に関するHRMS−ES計算値(M−H):430.1462:実
測値430.1458。
(18)(類似アジド(22)に関する調製)87%収率。IR(neat):ν=3358(bs),2927,2097,1644,1301,1262,1132,1056,976,913,881,812cm-11H NMR(400.03MHz,C
3OD,298K)δ=1.83〜1.89(m,2H,CH2CH23);3.41(td,J=6.8,2.8Hz,2H,CH23);3.48〜3.53(m,2H,OCHHCH2+H−5);3.62(apparent t,J=9.4Hz,1H,H
−4);3.69(dd,J=9.3,3.3Hz,1H,H−3);3.72(dd,J=11.9,5.6Hz,1H,H’−6);3.79〜3.85(m,3H,H−2,H−6’’,H−7’’);4.76(d,J=1.5Hz、1H,H−1)。13C{1H}NMR(100.59MHz,CD3OD,298K)δ=29.83(1C,CH2CH23);49.85(1C,CH2CH23);62.75(1C,CH2OH);
65.34(1C,CH2CH2O);68.44(1C,CH);72.05(1C,CH);72.56(1C,CH);74.58(1C,CH);101.53(1C,Canomeric);C91836に関するHRMS−ES計算値(M+H):264.119
6:実測値264.1199。
(20)(Joosten J A F, et al., J. Med. chem. (2004), 47 (26): 6499-6508)7
1%収率。IR(neat):ν=2962,1742,1433,1368,1213,1174,1044,955,900,736cm-11H NMR(400.03M
Hz,CDCl3,298K)δ=1.96(s,3H,CH3);2.01〜2.14(m,2H,CH2CH2Br);2.03(s,3H,CH3);2.06(s,3H,C
3);2.13(s,3H,CH3);3.44〜3.47(m,2H,CH2Br);
3.64〜3.70(m,1H,OCHHCH2);3.88〜3.92(m,1H,H
−5);3.92〜4.00(m,1H,OCHHCH2);4.08〜4.19(m,
2H,H’−6 + H’’−6);4.46(d,J=8.0Hz,H−1);5.00(dd,J=10.4,3.4Hz,1H,H−3);5.17(dd,J=10.4,8.0Hz,1H,H−2);5.37(dd,J=3.5,0.8Hz,1H,H−4)。13C{1H}NMR(100.59MHz,CDCl3,298K)δ=20.67(1C,CH3);20.74(1C,CH3);20.77(1C,CH3);20.9
0(1C,CH3);30.26(1C,CH2CH2Br);32.32(1C,CH2CH2Br);62.37(1C,CH2OAc);67.11(1C,CH);67.40(1C,CH2CH2O);68.93(1C,CH);70.76(1C,CH);70.92(1C,CH);101.64(1C,Canomeric);169.69(1C,CH3C(O)O);170.21(1C,CH3C(O)O);170.33(1C,CH3
C(O)O);170.48(1C,CH3C(O)O)。C1725BrO10に関する分
析計算値:C,43.51;H,5.37;N,0.00;実測値:C,43.95;H,5.37;N,0.00;C1724BrO10に関するHRMS−ES計算値(M−H):467.0553:実測値4678.0561。
(21)(Joosten J A F, et al., J. Med. chem. (2004), 47 (26): 6499-6508)8
4%収率。IR(neat):ν=2940,2097,1743,1431,1368,1244,1172,1133,1044,955,902,736cm-11H N
MR(400.03MHz,CDCl3,298K)δ=1.72〜1.93(m,2H
,CH2CH23);1.96(s,3H,CH3);2.02(s,3H,CH3);2
.04(s,3H,CH3);2.13(s,3H,CH3);3.32〜3.37(m,2H,CH2Br);3.54〜3.62(m,1H,OCHHCH2);3.87〜3.97(m,1H,H−5 + OCHHCH2);4.07〜4.19(m,2H,H’
−6 + H’’−6);4.44(d,J=7.9Hz,H−1);4.99(dd,J=10.5,3.4Hz,1H,H−3);5.17(dd,J=10.4,7.9Hz,1H,H−2);5.37(dd,J=3.4,0.9Hz,1H,H−4)。13C{1H}NMR(100.59MHz,CDCl3,298K)δ=20.66,20.74,20.84(4C,CH3);29.02(1C,CH2CH23);47.97(1C,CH2CH23);61.34(1C,CH2OAc);66.53(1C,CH2
2O);67.08(1C,CH);68.88(1C,CH);70.75(1C,
CH);70.94(1C,CH);101.39(1C,Canomeric);169.53(1C,CH3C(O)O);170.22(1C,CH3C(O)O);170.33(1C,CH3C(O)O);170.47(1C,CH3C(O)O)。C1725310
に関する分析計算値:C,47.33;H,5.84;N,9.74;実測値:C,47.38;H,5.90;N,9.47;C1724310に関するHRMS−ES計算値
(M−H):430.1462:実測値430.1458。
(22)(Vicente et al.に記載されている一般的な脱保護法による調製(Vicente V,
et al., Chem. -Eur. J. (2004), 10 (17): 4240-4251)91%収率。IR(neat):ν=3360(bs),2930,2886,2094,1643,1374,1299,1260,1143,1115,1041,949,915,893,783,757cm-11H NMR(400.03MHz,CDCl3,298K)δ=1.86(見
かけの五重線、J=6.4Hz,2H,CH2CH23);3.45(t,J=6.4H
z,2H,CH23);3.50−3.55(m,2H,H−2 + H−5);3.64(dt,J=10.0,6.2Hz,1H,OCHHCH2);3.73(d,J=6
.0Hz,2H,H’−6 + H’’−6);3.86(dd,J=2.9,1.0Hz,H−4);3.95(dt,J=10.0,6.2Hz,1H,OCHHCH2);
4.22(m,1H,H−1)。13C{1H}NMR(100.59MHz,CD3OD,298K)δ=30.19(1C,CH2CH23);49.32(1C,CH2CH23);62.32(1C,CH2OH);67.46(1C,CH2CH2O);70.13
(1C,CH);72.44(1C,CH);74.86(1C,CH);76.468(1C,CH);104.93(1C,Canomeric);C91836に関するHRMS
−ES計算値(M+H):264.1196:実測値264.1194。
クマリンプロピルアジド(28)
クマリン343(0.285g,1.00mmol)及び3−アジド−1−プロパノール(0.505g,5.00mmol)のCH2Cl2(20mL)溶液を0℃に冷却し、EDC・HCl(0.575g,3.00mmol)及びDMAP(0.006g,0.05mmol)を続けて添加した。この橙色の溶液を0℃で2時間攪拌した後、環境温度で一晩攪拌した。反応混合物を水(2×50mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた
。揮発分を減圧下で除去し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィ(CC、SiO2
1)100%CH2Cl2;2)CH2Cl2/Et2O10:1)によって精製した。単離
生成物は依然としていくらかの3−アジド−1−プロパノール出発材料を含有しており、次に減圧下でのトルエンによる同時蒸着によってこれを除去した。数日にわたって環境温度で静置することによって部分的に凝固する橙色の油として(28)が0.110g(0.299mmol、30%)で得られた。
IR(neat):ν=2920,2850,2095,1749,1693,1619,1590,1560,1518,1444,1367,1310,1242,1205,1173,1107,1034,793,750cm-11H NMR(400.0
3MHz,CDCl3,298K)δ=1.91〜1.97(m,4H,2CH2),2.01(見かけの五重項、J=6.4Hz,2H,CH2CH23),2.74(t,J=
6.3Hz,2H,CH2),2.84(t,J=6.4Hz,2H,CH2),3.30〜3.34(m,4H,CH2N);3.50(t,J=6.8Hz,2H,CH2CH2
3),4.36(t,J=6.2Hz,2H,CH2CH2O),6.91(s,1H,
CHヒ゛ニル),8.29(s,1H,CHアリール);13C{1H}NMR(100.
59MHz,CDCl3,298K)δ=20.13(1C,CH2),20.24(1C,CH2),21.22(1C,CH2),27.49(1C,CH2),28.38(1
C,CH2),29.78(1C,CH2),48.40(1C,CH2),49.98(
1C,CH2),50.37(1C,CH2),61.77(1C,CH2O),105.
80(1C,C),107.02(1C,C),107.60(1C,C),119.35(1C,C),127.17(1C,CH),148.77(1C,C),149.42(1C,CH),153.64(1C,C),158.65(1C,C),164.69(1C,C)。C202134に関するHRMS−ES計算値(M+):368.148:実測値368.147。
一般的な重合手順。(3a)の合成:
N−(エチル)−2−ピリジルメタンイミンリガンド(0.072mL、0.51mmol)、(1)(2.0g、10.2mmol)、開始剤(2)(0.065g、0.25mmol)及びメシチレン(内部NMR標準、0.5mL)を溶媒としてトルエン(4.0mL)と一緒に乾燥シュレンク管内に充填した。管をゴム隔膜で封止し、5回の凍結−吸引−解凍(freeze-pump-thaw)サイクルを行った。その後この溶液を、窒素下でカニ
ューレを介して第2のシュレンク管内へ移した。この第2のシュレンク管は、予め排気させ窒素で充填されており、Cu(I)Br(0.036g、0.25mmol)及び磁気フォロアー(magnetic follower)を含有したものであった。温度を一定攪拌により70
℃に調節した(t=0)。脱気したシリンジを用いてサンプルを周期的に取り出し、分子量及び変換率を分析した。重合終了時に、混合物を10mLのトルエンで希釈し、空気で4時間かけて泡立たせた。反応混合物を短い中性アルミナカラムに通過させ、続いてトルエンで洗浄した。揮発分を減圧下で除去し、残留物をTHF(約10mL)中に溶解させた後、10:2vol/volメタノール/水混合物(約200mL)中へ沈降させた。白色固体を濾過によって単離し、さらなるメタノール/水混合物で洗浄し、揮発分を減圧下で除去した。5.1ppmにおける開始剤ベンジルシグナルの積分を、4.4ppmにおけるアルキン分枝鎖と結合するC(O)OCH2基の積分と比較することによって、ポ
リマーの分子量を1H NMRにより算出した。4.4ppmの代わりに0.2ppmに
おけるSi(CH33の一重項を用いた場合、実質的に同じ分子量が得られた。メシチレン(6.9ppm)のピークを内標準として用い、モノマービニルシグナル(5.6ppm及び6.2ppm)の積分を下げることによって、変換率を1H NMRによって算出
した。代替的には、モノマーのC(O)OCH2プロトン(bs,4.6ppm、経時的
に低減)に対する積分と、ポリマーの類似C(O)OCH2プロトン(幅の広いシグナル
、4.4ppm、経時的に増大)に対する積分との比較によって変換率を算出した。DP(NMR)=75;Mn(NMR)14.7kDa;Mw/Mn(GPC)=1.16;開
始効率=41%;変換率82%。
ポリマー(6):[(1)]0:[MMA]0:[(2)]0:[CuBr]:[リガン
ド]=20:50:1:1:2;メシチレン0.5mL、トルエン12mL、(1):1.2g、MMA:3.0g、70℃。Mn(NMR)8.7kDa(DP(1)=13;
DP(MMA)=61);Mw/Mn(GPC)=1.09;変換率86%;開始効率=65%。石油エーテル中へ沈降させることによってポリマーを単離した。
ポリマー(9):[(1)]:[mPEG300MA]:[(2)]:[CuBr]:[
リガンド]=5:25:1:1:2;メシチレン0.2mL;トルエン9mL、(1):0.50g、mPEG300MA:4.0g、70℃。Mn(NMR)10.8kDa(DP(1)=6;DP(mPEG300MA)=32);Mw/Mn(GPC)=1.16;変換
率85%;開始効率=72%。石油エーテル中へ沈降させることによってポリマーを単離した。
ポリマー脱保護。一般手順:
トリメチルシリルで保護されたポリマー(300mg)及び酢酸(アルキン−トリメチルシリル基に対する1.5当量mol/mol)をTHF(20mL)中に溶解させた。窒素を泡立て(約10分)、無色の溶液を−20℃に冷却した。TBAF−3H2O(ア
ルキン−トリメチルシリル基に対する1.5当量mol/mol)の0.20M溶液をシリンジによって徐々に添加した(約2〜3分)。得られた混濁混合物をこの温度で30分間攪拌した後、環境温度に温めた。3時間未満で脱保護を完了させて、ホモポリマー(3a)及びMMAコポリマー(6)を得た。mPEG MAを含むコポリマー(9)では、おそらく、ポリマー骨格上のmPEG側の分枝によってもたらされるより大きい立体障害のために、より長い反応時間(16時間)が必要であった。過剰なTBAFを除去するために反応溶液を短いシリカパッドに通過させ、続いてパッドをさらなるTHFで洗浄した。その後得られた溶液を減圧下で濃縮し、ポリマーを石油エーテル中に沈降させた。
Figure 0005584337
手順1:(5a−12)の合成
ポリマー(4a)(50mg、「クリック可能」アルキン単位0.40mmol)、アジド糖(12)(225mg、0.604mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、26mg、35μL、0.20mmol)のTHF(5mL)溶液を、窒素を10分間泡立たせることによって脱気した。その後、[(PPh33CuBr](37.5mg、0.402mmol)を添加し、得られた溶液中にさらに5分間窒素を泡立たせた。この非常に淡い黄色の澄んだ溶液を環境温度で3日間攪拌した後、短い中性アルミナパッドに通過させてTHFで溶離した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、石油エーテル(200mL)中に沈降させた。懸濁液を遠心分離し、得られた固形分をTHF中に再溶解させた。イオン交換樹脂の存在下で溶液を1時間攪拌し、濾過し、1:1のEt2O/
石油エーテル混合物(150mL)中で再度沈降させた。遠心分離により固形分を分離し、ポリマー(5a−12)をオフホワイトの固形分として得た。
手順2:(24)の合成
ポリマー(4b)(100mg、「クリック可能」アルキン単位0.806mmol)、アジド糖(18)(223mg、0.847mmol)及び(22)(74.25mg、0.281mmol)、並びにトリエチルアミン(41mg、0.40mmol)のDMSO(7mL)溶液を、窒素を10分間泡立たせることによって脱気した。その後、[(PPh33CuBr](150mg、0.161mmol)を添加し、得られた溶液中にさらに5分間窒素を泡立たせた。この非常に淡い黄色の澄んだ溶液を環境温度で3日間攪拌した後、イオン交換樹脂(150mg)を添加し、懸濁液を4時間穏やかに攪拌した。濾過し、さらにイオン交換樹脂(150mg)を添加した後、懸濁液を環境温度で一晩攪拌した。濾過後、溶液を2:1 CH2Cl2/メタノール混合物に滴下し、遠心分離によりポリマーを分離した。依然として存在する微量のDMSOを除去するために、沈降したポリマーを水中に溶解し、THF中で再沈殿させた。粘着性生成物を遠心分離によって単離し、最少量の水中に溶解させ、凍結乾燥させて、ポリマー(23)を明るい白色粉末として得た。
(11−14)の合成
手順2を用い(反応時間=96時間)、以下の試案に従った:トリメチルアミンを減圧下で反応混合物から除去し、その得られた溶液をイオン交換樹脂の存在下で一晩攪拌させた。濾水(250mL)によって単離した樹脂を添加し、得られた溶液を遠心分離した。上澄み液を透析によって精製し、ポリマーを凍結乾燥によって単離した。
蛍光性リガンド(29)及び(30)の合成
(用いられるアジド試薬の合計量に対して)2.5%のクマリンアジド(28)を用いて、手順2を使用した。
GPC−LALS分析
各サンプルを3通りに分析した。
Figure 0005584337
定量沈降検査
検査は、0.10M Tris・HCl(pH7.2)、0.9M NaCl、1mM
CaCl2及び1mM MnCl2を沈降バッファとして用い(Khan M I, et al., Carbohydr. Res. (1991), 213: 69-77)且つポリマー−ConA凝集体を1mLの1M α−D−メチルマンノピラノシド中に再溶解させた以外、Kiessling及び共同研究者ら(Cairo
C W, et al., J. Am. Chem. Soc. (2002), 124 (8): 1615-1619)によって記載されているように実施した(図2参照)。
ConAレクチンを定量沈降させるのに必要な近似最高ポリマー濃度を評価するために、種々のリガンド濃度における予備スクリーニングを実施した。その後の測定では、定量レクチン沈降の最高ポリマー濃度が主な論文に報告されている値となるまで、さらなるポイント(適したポリマー濃度を有するサンプル)を追加した。適合する実験結果に用いられるS字曲線の最も傾斜の大きいポイントを、ConAを完全に沈降させるのに必要な最高ポリマー濃度の半分の濃度とみなす。
比濁法検査
Kiessling及び共同研究者ら(Cairo C W, et al., J. Am. Chem. Soc. (2002), 124 (8): 1615-1619)によって記載されているように、0.12秒毎にスペクトルをとって検査を実施した。示したデータは3つの独立した実験結果の平均である。結果を図3、図4及び図5に示す。
結果及び考察
「クリック可能」アルキンポリマーの合成
トリメチルシリルメタクリレートモノマー(1)は、市販の3−トリメチルシリルプロ
ピン−1−オール及びメタクリロイルクロリドから一工程で調製した。芳香族プロトン及びベンジルプロトンが両方とも、対応するポリマーの数平均分子量(Mn(NMR))を
確定するのに1H NMR内標準として用いられ得ることから、O−ベンジルα−ブロモ
エステル(2)76を開始剤として選択した(スキーム1)。Cu(I)Br/N−(n−エチル)−2−ピリジルメタンイミン触媒77の存在下におけるMMA及びmPEG300
Aによる(1)のホモ重合及び共重合は両方とも優れた一次動態プロットを与え、ポリマー分子量及び分子量分布に関する良好な制御を示す(図2及び表1)。(1)のホモ重合では、精製したポリマーの多分散度指数(Mw/Mn)が、比較的高いモノマー変換率(80%より大きい)であっても1.15と同程度に低いことに留意されたい。提案された合成手法の多用性を確認するために、有機溶媒及び水性溶媒中で全く異なる溶解性を有する何種類かのポリマーを調製した。疎水性及び親水性コポリマーをそれぞれ与えることから、メチルメタクリレート(MMA)及びメトキシ(ポリエチレングリコール)300メタク
リレート(mPEG300MA)をモデルコモノマーとして選択した。その上、ポリエチレ
ングリコールは、非特異的タンパク質結合を誘導しないことが示されており、この非特異的タンパク質結合は、後で報告するレクチン結合の解釈において重要である78
Figure 0005584337
スキーム1.試薬及び条件:a)N−(n−エチル)−2−ピリジルメタンイミン/CuBr、トルエン、70℃;b)N−(エチル)−2−ピリジルメタンイミン/CuBr、MMA又は(mPEG300)MA、トルエン、70℃;c)TBAF、酢酸、THF、−
20〜25℃;d)R13、(PPh33CuBr、DIPEA
興味深いことに、TBAFを媒介させたトリメチルシリル保護基の除去を用いた予備の試行では、予想よりも少ない末端アルキン含量を有するポリマーを得た。この挙動の背景にある理由はTBAFの塩基性に関連するのではないかと考えられ、緩衝剤としての酢酸
の添加は予想された末端アルキンポリマーを実質的に100%の収率でもたらすのに十分であることが見出された79。トリメチルシリル基の完全な除去は、2.5ppmにおけるC≡CHシグナルの出現に加えて0.2ppmにおけるSi(CH33シグナルの消滅を伴う1H NMR分析、及び3291cm-1におけるアルキンC−H伸縮振動数を伴うF
T IR分析の両方で確認された。またSEC分析により、予想通りに、ポリマーの水力学的体積が脱保護後に減少するのに対し、多分散度指数は変化しないままであることが明らかとなった。SEC分析用の低角レーザー光散乱(LALLS)検出器(5°)により、トリメチルシリル基の除去前後にポリマーの絶対Mw値を測定した。得られた結果であ
るMw(3b)=19.8kDa及びMw(4b)=13.0kDaは、これらのポリマーの相対多分散度指数と組み合わせて、数平均分子量であるMn(3b)=17.3kDa
及びMn(4b)=11.3kDaを示し、これは1H NMR分析によって得られたデータと十分一致していた(Mn(NMR)(3b)=17.7kDa及びMn(NMR)(4b)=11.2kDa)。
Figure 0005584337
2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルアジド(12)、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシルアジド(13)及びメチル−α−D−6−アジド−6−デオキシ−マンノピラノシド(14)を、クリック反応用ののモデル糖アジド試薬として用いて、確立された合成プロトコルに従って、保護された炭水化物及び保護されていない炭水化物に、C−6又はα若しくはβアノマーアジドのいずれかを介して結合するこのアプローチの多用性を調査した(チャート1)。
Figure 0005584337
チャート1.炭水化物櫛形ポリマーの合成に使用されるアジド糖誘導体
Figure 0005584337
アルキン含有ポリマーへの糖アジドのクリック反応について選択される条件を、DIPEAの存在下における[(PPh33CuBr]を触媒として用いた何種類かの樹状ライブラリの合成に関するHawker及び共同研究者らによって報告された条件から変えた6。ト
リメチルシリル保護基の除去には、ポリマー分子質量の減少が伴ったのに対して、アジド糖誘導体を結合させた後で、ポリマー水力学的体積の実質的な増大が観測された(図7)。1H NMR分析及びFT−IR分析により、脱保護及びクリック反応のいずれものポ
リマーの分子量分布を事実上変化させないまま、トリアゾールへのアルキン基の変換率が100%収率付近に達したことが確認された。
多価リガンドの合成、及びレクチン結合反応における予備実験
続いて、本発明者らは種々の種類の糖ポリマーの調製についてこの合成手法を履行し、特に、適切なレクチンと結合することができる材料に着目した。コンカバリンA(ConA)は、その化学的挙動及び生物学的挙動の両方に焦点を当てた大量の文献を踏まえ、多くの生物学的プロセスとの関係に起因してモデルα−マンノース−結合レクチンとして選択された8084。ConAは、高次オリゴマー構造中の26kDaモノマー単位の凝集体である。pH範囲5.0〜5.6では、ConAが排他的に二量体として存在するのに対し、これより高いpHでは二量体が結合して四量体となり、四量体はpH7.0で最も優勢な形態である44。各モノマー単位は、α−グルコピラノシド誘導及びα−マンノピラノシド誘導体を選択的に結合する能力があり、好ましくはC2にマンノ(manno-)構造を含む、1つの配位部位を有する57、85
アルキン官能性ホモポリマー(4b)を、ConA結合マンノースリガンドの量のみが異なるポリマーライブラリの並行合成用の出発材料として使用し、このアルキン官能性ホモポリマー(4b)はマンノース及びガラクトース系アジドの適切な混合物の「同時クリック」反応によって得られた(スキーム3)。この目的は、ConAレクチンとのこれらの新規な材料の結合能を研究することであった。特に、本発明者らは、ROMP重合によって製造される多価ディスプレイについてのKiessling及び共同研究者らによって記載さ
れているものと類似の研究において、マンノピラノシド部分の量がポリマー−タンパク質相互作用の性質に関わる影響をもたらすという点に関心を持った61
結合エピトープ密度のみが異なる同一巨大分子の特性(ポリマーアーキテクチャ、Mn
、Mw/Mn)を特徴付ける一連の材料の調製を可能にするため、「同時クリック」の手法は興味深い86。このアプローチの使用に関する付加的な利点は、ポリアルキン材料のこの官能化が、マルチグラムスケールで容易に入手可能な高価でない出発材料を使用した非常に穏やかな条件下で実行され得る点である。β−ガラクトピラノシド単位は、多価ポリマーリガンド上に存在するマンノピラノシドエピトープを希釈するために使用した。糖アジドは、アミノ糖誘導体の合成に通常用いられる有用な前駆体であり、スキーム2に示した合成プロトコルに従って調製された。簡潔に述べると、過アセチル化した六炭糖、例えばマンノピラノース又はガラクトピラノースのいずれかを、BF3・OEt2の存在下で3−ブロモ−1−プロパノールによって処理し、ブロミド(16)及び(20)をそれぞれ得
た。所望のアジド官能性モノマー(18)及び(22)を、ブロミド中間体を対応するアジド((17)及び(21))に変換し、その後酢酸保護基を除去することによって得た。
Figure 0005584337
スキーム2.試薬及び条件:a)3−ブロモ−1−プロパノール、BF3・OEt2、−20℃〜環境温度、b)NaN3、DMF、100℃、c)CH3ONa(触媒)、CH3
H、環境温度
Figure 0005584337
スキーム3.ConA結合の研究に使用されるポリマーの合成、DP(x+y)=90
同時クリック反応に用いられる実験条件は、DMSOを溶媒として用い、且つトリエチルアミンを基剤として用いた以外、ポリマー(5)、(8)及び(11)の合成に用いられるものと同様であった87。DMF溶離液中の生成物ポリマーのSEC分析88により、これらのポリマーの全てが、実質的に同一の分子量及び分子量分布を特徴付けることが示された。また、SEC分析のためのLALLS検出によって、多座リガンドの絶対重量平均分子量(Mw)を確定した(表3)89。また、得られた結果は、糖ポリマー生成物を除い
て理論値と十分一致していた。1H NMR分析によって、ポリマー中の2つの異なる糖
部分のモル比が、「同時クリック」反応で用いられる(18):(22)の初期比に実質的に類似していたことが確認された。
Figure 0005584337
生物学的なプロセスにおいて、細胞表面で起こるクラスタリング現象の速度は、数秒から数時間の範囲のタイムスケールに対する重大なパラメータである61。リガンド−レクチン凝集体の速度に対するエピトープ密度の影響は、比濁法(turbidrimetric)検査によって評価し61、9092、その結果を図8に示す。過剰な種々の多価リガンドの存在下におけるConAのクラスタリング速度を、レクチン及び官能性ポリマーの適切なHEPESバッファ溶液(pH7.4)のλ=420nmにおける吸光度変化を測定することによってモニタリングした。完全にマンノースで官能化したポリマー(23)の場合、吸光度はプラトーに達し、測定の終了まで略一定のままであった。これは、この多価リガンドが溶液中に存在する実質的に全てのConAを迅速に沈降することができたことを示す。
低エピトープ密度を特徴とするポリマーを使用した場合、観測される吸光度は時間に伴って連続的に増大した。これは、ROMPによって得られる巨大分子リガンドについてKiesslingによって先に記載されているものと一致しており、測定の早い段階に形成される
部分的に可溶な複合体の高次凝集に起因するものであった61。1分当たりの任意単位(AU/分)として表される凝集速度定数を決定するのに初期クラスタリング速度を使用した。得られた値は、これらの実験条件下において、クラスタリングプロセスの速度が、エピトープ密度の低減に伴い遅くなることを示す。多価リガンド(27)を使用した対照実験は、完全にガラクトピラノースを官能化したリガンドがConAレクチンを沈降させることができなかったことを明らかにした。次にこれらの実験で形成された凝集体を、極めて過剰量のα−メチルマンノピラノシド、即ち競合単座配位リガンドで処理し、経時的な吸光度の低減をモニタリングした。ポリマー−レクチン複合体は、ポリマーエピトープ密度に正比例した(補足情報を参照)。
ポリマー−ConA複合体の化学量論比を測定するために、定量沈降(QP)実験を行った。既知の濃度のConAを用いた溶液からレクチンを定量沈降させるのに必要なポリマー濃度の測定は、各ポリマー鎖のConA四量体結合の平均数の測定を可能にした93。これは、0%から75%へとリガンドマンノース含量が増大するにつれて大きくなることが見出された(表4)94。この値を超えると、結合レクチン四量体の数は一定のままであるようであり、このことはおそらく、高エピトープ密度の立体効果がさらなるレクチンの配位を邪魔することを示す61
Figure 0005584337
蛍光性多価ディスプレイの合成
開発した手法の多用性は、原理上、所望の機能を実行する誘導体が必要なアジド基を含有する限り、多くのさらなる異なる官能基をポリマー骨格へ付加することを可能にする。高分子骨格における視認可能な蛍光性のタグを「同時クリック」する可能性は興味深いものであると考えられるが、その理由は、結合要素及びリポーター単位(reporter unit)
の両方を示す得られる多価リガンドが、タンパク質−炭水化物結合相互作用の研究において極めて有用であるとして知られているからである95、96。蛍光性糖ポリマーは、細胞表面相互作用97、98、抗癌療法99、レクチン認識分析100、101、PEG化化学作用102、L
−セレクチン結合95及び精子安定性研究103を含む一連の用途で使用されていた。リビン
グラジカル重合は、蛍光性開始剤又はモノマーのいずれかを用いることによって視認可能な蛍光性のポリマーを調製するのに使用することができる104
Figure 0005584337
スキーム4:蛍光性多価リガンド(29)及び(30)の合成
本発明者らは、対応するポリマーの分子質量Mn(NMR)を測定することを可能にし
、且つ保護されていないアジド糖(18)及び(22)と伴に、(クマリン343及び3−アジド−1−プロパノールから一工程で得られる)アジド(28)を介して視認可能な蛍光性タグが反応供給量で導入されることから、ベンジルブロモエステル(2)を開始剤として使用し続けることを選択した。染料(28)を使用する際の重大な利点は、高い蛍光性を多価リガンドに与えるのに比較的小さいパーセンテージしか必要とされなかったことである。
ポリマー(29)及び(30)(スキーム4)は、λ=436nmにおける最大吸光度を示し、λ=485nmにおける最大発光は49nmのストークスシフトを示す。ポリマー骨格上へのアジド(28)のグラフト化は、実質的に糖ポリマー巨大分子特徴が変化しないことによって生じ、(29)及び(30)は、それぞれポリマー(23)及び(27
)と蛍光挙動で異なる類似体である(表5及び図5)。
Figure 0005584337
その後、多価リガンドとしてのこれらの蛍光性糖ポリマーの性能を定性的に評価した。蛍光性ディスプレイの溶液は、固定したヒマ凝集素(Ricinus Communis Agglutinin I(
RCA I))、トウゴマ(Ricinus communis)から単離される120kDaの二量体レクチンを固定相として105充填したカラムを用いたHPLCによって蛍光HPLC検出器
を用いて分析した。RCA Iはβ−D−ガラクトース単位と選択的に相互作用するため、α−D−マンノース−結合ConAを用いることによって事前に得られた結果を補足し得る結合基質として選択した。
0.067M PBS(pH7.4)及び0.15M NaClを移動相として用いた事前の試みは、マンノシド系ポリマー(29)がカラムによって保持されなかったのに対し、リガンド(30)がRCA I固定相とかなり強力に相互作用したこと、即ち、全く溶離しなかったことを示した。このため、D−ガラクトースを種々の濃度で含有するさらに何種類かの移動相を利用した。その正所性(monotopic)に起因して、D−ガラクトー
スはRCA I受容体と弱くしか相互作用することができない。しかしながら、極めて過剰な量で存在する場合、それはRCA I配位について多価ディスプレイ(30)に対抗し、移動相中のガラクトース濃度を減少させるような使用によって、テイリングを有する典型的な幅の広い形状を特徴とするピークを伴って(図6)、保持時間が増大する。これらの結果は、ガラクトース含有ディスプレイ(30)がRCA Iと強力に相互作用し、多座リガンドとしての類似の合成グリコールポリマー(glycolopolymers)の使用はさら
なる研究の対象となるであろう。
結論
要約すれば、新規な一連の櫛形糖ポリマーは、適切な糖アジドのフイスゲン1,3双極子環化付加反応によって調製されている。これらの「クリック可能」材料は、ポリマー特性に対して優れた制御を伴うトリメチルシリル−プロパルギルメタクリレートのTMM−LRPによって調製されており、この精製された生成物のMw/Mnは1.09〜1.16である。TMS保護基の除去は、末端アルキン基の十分な保持によって穏やかな条件下で行った。ポリマー骨格上のC−6又はα若しくはβアノマーアジドのいずれかを介した、保護された炭水化物及び保護されていない炭水化物のグラフト化は、Cu(I)触媒されたクリック反応によって首尾良く実施された。レクチン結合研究用ディスプレイのための、多くのマンノース含有多座リガンド及びガラクトース含有多座リガンドを、ポリアルキンメタクリレート骨格上に種々の糖アジドを同時に反応させることによって調製した。この「同時クリック」手法は、高効率官能化後プロセスによる制御されたラジカル共重合の利点と上手く結びついており、これにより、それらのエピトープ密度のみが異なる多価ディスプレイのライブラリがもたらされる。また、蛍光性リガンドは、視認可能な蛍光性アジドタグ、即ちクマリン343誘導体を反応混合物に単に添加するだけで調製された。このためそれらの挙動は、マンノース(ConA)単位及びガラクトース(RCA I)単位と選択的に結合し得るモデルレクチンの存在下で試験した。ConAの場合にはこの研
究によって、ポリマー−タンパク質複合体のクラスタリング速度及び化学量論比は両方とも、使用されるディスプレイのエピトープ密度に応じて決まることが示された。
糖ポリマーの合成に上手く使用されているプロトコルは原理上、広範な官能性分子に適用し得るため、提示される合成手法は極めて包括的なものであり、条件に適合しない官能基を含有するものであってもTMM−LRPに使用し、広範な厳密な材料を合成する方法を開示する。さらに、本研究に記載のものに対する炭水化物ポリマー類似体の生物学的応用の観点から、この手法は、十分に規定されたポリマー骨格上に存在する糖部分の性質のみが異なる材料のライブラリの合成について極めて強力なツールであると考えられる。
[2+3]フイスゲン環化付加反応プロセスによるWANG樹脂表面官能化
実験
概括
窒素の不活性雰囲気下における標準シュレンク技法を用いて重合を行った。FirstMateベンチトップ合成機(benchtop synthesizer)(Argonaut Technologies Limited, New Road, Hengoed, Mid Glamorgan, UK)を用いて、同様に窒素下で行う樹脂修飾を
行った。
特性決定
分子量及び多分散度を、Polymer Laboratoriesからのサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を用いて測定した。NMRスペクトルをBruker DPX300及びBruker DPX400スペクトロメータで得た。赤外吸収スペクトルをBruker VECTOR−22 FTIRスペクトロメータでGolden Gateダイアモンド減衰全反射セルを用いて記録した。電界放出走査電子顕微鏡法(FE−SEM)及び共焦点顕微鏡法を用いて、樹脂の表面を画像化した。FE−SEMは、Oxford JSIS分析システムを備える、10kVの加速電圧を有するJoel JSM6100によるものである。HPLC−SECスペクトル及びHPLC−FLスペクトルは、HP 1050
UV検出器、及びHitachi L7480 FL検出器によって求めた。共焦点顕微鏡法実験はZeiss LSM 510システムによって行った。488nmバンドのアルゴンイオンレーザーを用いて、蛍光材料を励起させた。実験機構のフィルタは、505nmを超えて発光する蛍光を測定することができるように選択した。
MMA及びホスタゾルモノマーのTMM−LRP
開始剤2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸3−アジド−プロピルエステル(Mantovani et al 2005, Chem Commun, 2089)、メチルメタクリレート(MMA)、ホスタゾル
メタクリレート、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン、及び内部1H N
MR標準としてトルエン中に溶解されるメシチレンを含有する密閉乾燥シュレンクフラスコを、4回の凍結−吸引−解凍サイクルによって脱気した。その後この溶液を、CuBrを含有し、事前に排気した後N2で充填させたカニューレを介して別のシュレンク管内へ
移した。重合は90℃で行った。
Wang樹脂−アルキン合成
FirstMateベンチトップ合成機を用いて、Wang樹脂を無水ピリジン及び4−ジメチルアミノピリジンで1時間湿潤させた後、アルキン−エステルを添加した。その後反応混合物を60℃に加熱し、この温度で20時間維持した。
Wang樹脂に対するクリック反応
トルエン溶液中のWang樹脂、(PPh3)CuBr及びアジド末端材料を含有する
反応管を窒素下で70℃に加熱し、一晩反応させた。ビーズを取り出し、濾過した後、十分に水洗した。
結果及び考察
Figure 0005584337
スキーム:試薬及び条件:a)無水ピリジン、DMAP、b)PPh3/Cu(I)Br
、R−N3、60℃、(R=ポリ(MMA−co−ホスタゾル)、D−マンノース)
アジドポリマー/糖とアルキン修飾樹脂との「クリック」反応の模式図をこのスキームに示す。アルキン−エステルは、還流ジクロメタン溶液中のDMAPによるグルタル酸無水物及びプロパルギルアルコールの処理、続く二塩化オキサリルによる生成物のハロゲン化よって得られた。その後、天然Wang樹脂をアルキン−エステルで処理し、アルキンで官能化したWang樹脂を得た。その後これをアジド末端ポリ(MMA−co−ホスタゾル)及びD−マンノースで「クリック」するのに用いる。
ポリ(MMA−co−ホスタゾル)は、2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸3−アジド−プロピルエステルを開始剤として用いたMMA及びホスタゾルメタクリレートのTMM−LRPによって合成されて、優れた一次動態プロットをもたらす。これは、伝播ラジカルの一定濃度を示し、ポリマー重量及び分子量分布に対する良好な制御も観察される(図11)。ホスタゾルメタクリレート(Tronc et al, J. Polym. Sci, Part A, Polym Chem. 2003, 41, 766)を視認可能な蛍光性コモノマーとして使用して、蛍光標識された
PMMAを得る。この蛍光標識されたPMMAは、蛍光分析法を用いた対応するWang樹脂−ポリマーハイブリッド材料の特性決定を容易にした。D−マンノースアジドは、過アセチル化したマンノースをBF3・OEt2の存在下において3−ブロモ−1−プロパノールで処理して臭化物中間対を得た後、アジドに変換し、続いて酢酸保護基を除去して所望のアジド官能性マンノースを得るという2つの工程によって得られている(Ladmiral et al J. Am. Chem. Soc 1006, 128, 4823)。次にこれらのアジド官能性材料を、事前に
形成したWang樹脂表面に対して(PPh3)CuBrの存在下で「クリック」した。
トリアゾールへの樹脂アルキン単位及び糖アジドの完全な変換はIRによって確認され、これにより、天然樹脂と、樹脂−アルキン及び樹脂−ポリマー/糖との相違が示される。SEM分析によっても、天然Wang樹脂と修飾樹脂との相違が示された。ポリ(MMA−co−ホスタゾル)修飾樹脂についても共焦点顕微鏡法を使用して、反応が首尾良く行われたことを確認した(図13a)。
マンノース修飾Wang樹脂を使用して、或る特定のレクチンの結合能を試験した。多くの生物学的プロセスと関与することに起因して、コンカバリンA(ConA)をモデル
D−マンノース結合レクチンとして選択した。モニタリングを容易にするために、フルオレセインイソチオシアネート結合ConA(FITC−ConA)を使用した。マンノース修飾Wang樹脂をスモールピペット内への充填剤として用いてフラッシュ・フロー(flush and flow)カラムシステムを使用し、1M FITC−ConA溶液を溶離液とて使用し、カラム後の溶液を分析のために回収した。図12に示した結果は、FITC−ConAに対するその結合能が、強度な減少として、カラム前後の同量のサンプルを用いたHPLC及び蛍光検出器の両方により観測されたことを示す。これは共焦点顕微鏡法によっても確認され(図13b)、マンノース修飾Wang樹脂によってFITC−ConAが首尾良く吸収されることが示される。
表面上でより接近可能なマンノースは、ConAのような或る特定のレクチンについてマンノース修飾Wang樹脂の結合能を増大させることが予想される。これを考慮すると、櫛形アルキンモノマーは樹脂表面から重合され、D−マンノースとクリックし、その結合能はさらに研究が行われている。またラットの血清を用いた試験を行って、これらのマンノース修飾Wang樹脂の考えられるタンパク質認識/分離用途を確認する。
ガラクトース官能化及びラクトース官能化されたポリマーの生成を示すさらなるデータ
(A)ガラクトース官能性ポリマーの合成のための手順
1.ガラクトースアジドの合成
Figure 0005584337
(1)1 25mL無水酢酸を9.01g(0.049mol)D−ガラクトースと混
合し、5分間攪拌した。固体ヨウ素(0.08712g、0.34mmol)を混合物中に添加した。溶液を環境温度に冷却した後、100mLのCH2Cl2を添加し、得られた溶液を10分間攪拌した。次に、飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×100cm3)を添加
することによって反応混合物を中和し、得られた溶液を脱イオン水(2×200cm3
で洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、揮発分を減圧下で除去した。得られた収量=18.01g(92%)。
(2)2 三フッ化ホウ素エーテレート(25.99cm3、205.10mmol)及び(1)(17.25g、44.11mmol)及び2−ブロモエタノール(7.42cm3、102.40mmol)の乾燥CH2Cl2(250cm3)溶液を、窒素雰囲気下の暗所で一晩攪拌した。酢酸エチル/石油エーテル(1:2、v/v)を用いたTLC分析により、反応が完全に行われたことが示された(出発材料Rf0.53、生成物Rf0.63)。200cm3のCH2Cl2を添加した後、飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×100
cm3)を添加することによって反応混合物を中和し、得られた溶液を脱イオン水(2×
200cm3)で洗浄した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過して
、揮発分を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィ(CC、SiO2、酢酸エチ
ル/石油エーテル(1:4、v/v))によって粗生成物を精製した。関係のある分画を回収し、併せてから、揮発分を減圧下で除去した。得られた収量=10.05g(50.13%)無色粉末。
(3):(2)(10.028g、20.03mmol)の無水DMF(100cm3
)溶液をアジ化ナトリウム(8.59g、130.22mmol)で処理し、反応混合物を50℃で一晩攪拌した。酢酸エチル/石油エーテル(1:1、v/v)を用いたTLC分析により、反応が完全に行われたことが示された(出発材料Rf0.69、生成物Rf0.60)。反応混合物を減圧下で乾燥濃縮し、CH2Cl2(50cm3)中に溶解した後
、脱イオン水(4×50cm3)で洗浄した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾
燥させ、濾過して、揮発分を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィ(CC、SiO2、酢酸エチル/石油エーテル(1:1、v/v))によって粗生成物を精製した。
関係のある分画を回収し、併せてから、減圧下で乾燥濃縮した。得られた収量=8.08g(96.73%)無色結晶。
(4):(3)(8.01g、19.2mmol)を100cm3メタノール中に溶解
させた。ナトリウムメトキシド(メタノール中25重量%)(21.9cm3、96.0
1mmol)を添加し、混合物を環境温度で3時間攪拌した。Amberlite IR−120(PLUS)イオン交換樹脂を添加し、反応混合物と一緒に30分間攪拌した。この樹脂を濾過により除去し、得られた溶液を減圧下で乾燥濃縮した。得られた収量=4.62g(81.56%)無色結晶。
2.糖コポリマーの合成
Figure 0005584337
試薬及び条件:a)N−(n−エチル)−2−ピリジルメタンイミン/CuBr、トルエン、70℃;b)TBAF、酢酸、THF、−20〜25℃;c)2’−アジドエチル−O−a−D−ガラクトピラノシド(4)、(PPh33CuBr、Et3
2−メチル−アクリル酸3−トリメチルシラニル−プロプ−2−イニルエステル(6)3

トリメチルシリルプロピン−1−オール(10.0g、78.0mmol)及びEt3
N(14.2mL、101.3mmol)のEt2O(100mL)溶液を−20℃に冷
却し、メタクリロイルクロリド(8.8mL、93mmol)のEt2O(50mL)溶
液を約1時間かけて滴下した。この混合物をこの温度で30分間攪拌した後、環境温度で一晩攪拌した。濾過によりアンモニウム塩を除去し、揮発分を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィ(CC、SiO2、石油エーテル/Et2O 50:1;石油エーテル/Et2O 50:1中Rf=0.67)によって粗生成物精製した。得られた収量=12.4g(63.2mmol、81%)。
(a)一般的な重合手順。(7)の合成:
N−(エチル)−2−ピリジルメタンイミンリガンド(0.072mL、0.51mmol)、(6)(2.0g、10.2mmol)、開始剤(5)(0.065g、0.25mmol)及びメシチレン(内部NMR標準、0.5mL)を溶媒としてトルエン(4.0mL)と一緒に乾燥シュレンク管内に充填した。管をゴム隔膜で封止し、5回の凍結−吸引−解凍サイクルを行った。その後この溶液を、窒素下でカニューレを介して第2のシュレンク管内へ移した。この第2のシュレンク管は、予め排気させ窒素で充填されており、Cu(I)Br(0.036g、0.25mmol)及び磁気フォロアーを含有したものであった。温度を一定攪拌により70℃に調節した(t=0)。脱気したシリンジを用いてサンプルを周期的に取り出し、分子量及び変換率を分析した。重合終了時に、混合物を10mLのトルエンで希釈し、空気で4時間かけて泡立たせた。反応混合物を短い中性アルミナカラムに通過させ、続いてトルエンで洗浄した。揮発分を減圧下で除去し、残留物をTHF(約10mL)中に溶解させた後、10:2vol/volメタノール/水混合物(約200mL)中へ沈降させた。白色固体を濾過によって単離し、さらなるメタノール/水混合物で洗浄し、揮発分を減圧下で除去した。5.1ppmにおける開始剤ベンジルシグナルの積分を、4.4ppmにおけるアルキン分枝鎖と結合するC(O)OCH2基の積分と比較することによって、ポリマーの分子量を1H NMRにより算出した。4.4ppmの代わりに0.2ppmにおけるSi(CH33の一重項を用いた場合、実質的に同じ分子量が得られた。メシチレン(6.9ppm)のピークを内標準として用い、モノマービニルシグナル(5.6ppm及び6.2ppm)の積分を下げることによって、変換率を1H NMRによって算出した。代替的には、モノマーのC(O)OCH2プロトン(bs,4.6ppm、経時的に低減)に対する積分と、ポリマーの類似C(O)OCH2プロトン(幅の広いシグナル、4.4ppm、経時的に増大)に対する積分との
比較によって変換率を算出した。DP(NMR)=75;Mn(NMR)14.7kDa
;Mw/Mn(GPC)=1.15;開始効率=41%;変換率82%。
(b)ポリマー脱保護。一般的な手順:
トリメチルシリルで保護されたポリマー(1.5g、7.653mmolアルキン−トリメチルシリル基)及び酢酸(2.19mL、0.0382mol、アルキン−トリメチルシリル基に対して5当量)をTHF(100mL)中に溶解させた。窒素を泡立て(約10分)、溶液を−20℃に冷却した。TBAF・3H2O(0.0114mol、アル
キン−トリメチルシリル基に対して1.5当量)の0.20M溶液を約20分かけて滴下した。得られた混濁混合物をこの温度で30分間攪拌した後、環境温度に温めた。Amberlite IR−120(PLUS)イオン交換樹脂を添加し、反応混合物と一緒に30分間攪拌した。その後この樹脂を動下で濾過により除去し、得られた溶液を減圧下で乾燥濃縮し、ポリマーを石油エーテル中に沈降させた。得られた収量=0.46g(48%)無色粉末。
(c)(9)の合成:
ポリマー(8)(50mg、「クリック可能」アルキン単位0.40mmol)、アジド糖(4)(225mg、0.604mmol)及びトリエチルアミン(26mg、35μL、0.20mmol)のTHF(5mL)溶液を、窒素を10分間泡立たせることによって脱気した。その後、[(PPh33CuBr](37.5mg、0.402mmol)を添加し、得られた溶液中にさらに窒素を5分間泡立たせた。この非常に淡い黄色の
澄んだ溶液を環境温度で3日間攪拌した後、短い中性アルミナパッドに通過させてTHFで溶離した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、石油エーテル(200mL)中に沈降させた。懸濁液を遠心分離し、得られた固形分をTHF中に再溶解させた。イオン交換樹脂の存在下で溶液を1時間攪拌し、濾過し、1:1のEt2O/石油エーテル混合物(150
mL)中で再度沈降させた。遠心分離により固形分を分離し、ポリマーを得た。
Figure 0005584337
(B)ラクトース官能性ポリマーに関する手順
1.ラクトースアジドの合成
Figure 0005584337
スキーム1.試薬及び条件:a)H2SO4、無水酢酸;b)トリメチルシリルアジド、塩
化スズ(IV)、DCM;c)CH3ONa(触媒)、CH3OH、環境温度
(a).無水酢酸(28.50mL、0.513mol)を(18g、0.052mol)D−ラクトースと混合し、5分間攪拌した。濃硫酸を3滴この混合物中に添加した。溶液を環境温度にまで冷却した後、100mLのCH2Cl2を添加し、得られた溶液を10分間攪拌した。次に、飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×100cm3)を添加すること
によって反応混合物を中和し、得られた溶液をブライン(2×200cm3)で洗浄した
。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、揮発分を減圧下で除去した。得られた収量=32.01g(89%)。
(b).(1)(4.14g、6.106mmol)の乾燥DCM(50mL)溶液中に、初めにトリメチルシリルアジド(1.606mL、12.211mmol)を導入し、塩化スズ(IV)(0.428ml、3.657mmol)を窒素下で添加した。この混合物を環境温度で12時間攪拌した。混合物を減圧下で濃縮させた後、フラッシュクロマトグラフィ(CC、SiO2、酢酸エチル/石油エーテル(1:1、v/v))によっ
て粗生成物を精製した。関係のある分画を回収し、併せてから、減圧下で乾燥濃縮した。得られた収量=3.67g(91%)無色粉末。
(c).(2)(3.66g、5.532mmol)の150cm3メタノール溶液中
に、ナトリウムメトキシド(メタノール中25重量%)(21.9cm3、96.01m
mol)を添加した。この混合物を環境温度で3時間攪拌した。Amberlite IR−120(PLUS)イオン交換樹脂を添加し、反応混合物と一緒に30分間攪拌した。その後この樹脂を濾過により除去し、得られた溶液を減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(CC、SiO2、エチルメタノール/DCM(1:2、v/v))によ
って粗生成物を精製した。関係のある分画を回収し、併せてから、減圧下で乾燥濃縮した。得られた収量=1.52g(75%)白色粉末。
2.糖ポリマーの合成
Figure 0005584337
スキーム2.ラクトース糖ポリマーの合成
ポリマー(4)(0.012g、「クリック可能」アルキン単位0.092mmol)及びアジド−ラクトース(3)(0.030g、0.097mmol、アルキン単位に対する1.05当量)を10mLのDMSO中に溶解させ、トリス−(1−ブチル−1H−[1,2,3]トリアゾル−4−イルメチル)−アミン(0.035g、0.0816mmol)を、窒素を20分間泡立たせることによって脱気した。次にCu(I)(0.030g、0.081mmol)を窒素下で添加した。得られた溶液を環境温度で3日間攪拌した後、イオン交換樹脂を添加し、懸濁液を環境温度で穏やかに攪拌した。濾過後、溶液をH2Oに滴下し、ポリマーを遠心分離により分離した。その後、上澄み液を回収し、
溶液を透析管(NMWCOカットオフ=8000Da)内に入れ、水を3回交換しながら水に対して20時間超透析した。その後、水溶液を凍結乾燥させて、糖ポリマー(5)を白色固体として得た。
Figure 0005584337
Figure 0005584337
Figure 0005584337
Figure 0005584337

Claims (24)

  1. 1つ又は複数の糖であるペンダント側基を有するポリマーであって、
    (i)(a)保護基で保護されてもよいアジド基、又は(b)保護基で保護されてもよいアルキン基で官能化されたオレフィン性不飽和モノマーを、RAFT、遷移金属媒介リビングラジカル重合(TMM−LRP)及び/又は原子移動ラジカル重合によって重合して、ポリマー中間体を生成すること、
    (ii)存在する場合には、前記ポリマー中間体から保護基の総数の少なくとも一部を除去すること、及び
    (iii)前記ポリマー中間体を、(a)アルキン基又は(b)アジド基で各々官能化された少なくとも1つの糖側基部分と反応させて、該アルキン基及び該アジド基が反応し該糖側基をペンダント側基として該ポリマー中間体に結合させること、
    を含み、
    前記モノマーが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全ての異性体)、ブチルメタクリレート(全ての異性体)、及び他のアルキルメタクリレート;対応するアクリレート;グリシジルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアルキルアミノアルキルメタクリレートを含む官能化されたメタクリレート及びアクリレート;フルオロアルキル(メタ)アクリレート;メタクリル酸、アクリル酸;フマル酸(及びエステル)、イタコン酸(及びエステル)、無水マレイン酸;塩化ビニル及びフッ化ビニルを含むビニルハロゲン化物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;式CH=C(Hal)(ここで、各ハロゲンは独立してCl又はFである)のビニリデンハロゲン化物;式CH=C(R15)C(R15)=CH(ここで、R15は、独立してH、C1〜C10アルキル、Cl又はFである)の置換されてもよいブタジエン;式CH=CHSOOM(ここで、MはNa、K、Li、N(R16(ここで、R16は、各々独立して、H又はCl又はアルキルである)である)のスルホン酸;式CH=CHCON(R16のアクリルアミド、及び式CH=C(CH)CON(R16のメタクリルアミド、又はオレフィン性不飽和アルコキシポリエーテル、又はそれらの混合物から選択されるモノマーが前記アジド基又は前記アルキン基で官能化されたものであり、
    前記糖が、グルコース、グルコサミン、ガラクトース、ガラクトサミン、マンノース、ラクトース、フコース及びシアル酸から選択される、方法により得られるポリマー。
  2. 前記モノマーが、保護基で保護されてもよいアルキン基を含み、且つ前記糖側基がアジド基を含む、請求項1に記載のポリマー。
  3. 少なくとも1つの糖がN−アセチル化されている、請求項1又は2に記載のポリマー。
  4. 前記オレフィン性不飽和モノマーが、1つ又は複数の官能基で官能化されてもよい1つ又は複数の異なるオレフィン性不飽和モノマーと共重合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー。
  5. 前記官能基が、標識基、ポリアルキレングリコール及び薬剤から選択される、請求項4に記載のポリマー。
  6. 工程(iii)中の前記ポリマー中間体が、(a)アルキン基又は(b)アジド基で各々官能化された2つ以上の異なるペンダント側基部分と反応する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー。
  7. 工程(iii)中の前記ポリマー中間体が、前記糖側基、及び(a)アルキン基又は(b)アジド基を各々含む1つ又は複数のさらなる化合物と反応する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー。
  8. 前記ペンダント側基又は前記化合物が、標識基、ポリアルキレングリコール基又は薬剤を含む、請求項6又は7に記載のポリマー。
  9. 生体分子と結合し得る基を有する開始剤の使用を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー。
  10. (iv)前記ポリマーと結合する前記ペンダント側基が、さらに反応して誘導体化された前記ペンダント側基となる、請求項1〜のいずれか一項に記載のポリマー。
  11. 前記ペンダント側基が糖であり、該糖が、キラル化合物と反応することによって誘導体化される、請求項1に記載のポリマー。
  12. 1.5未満の多分散度指数(Mw/Mn)を有する、請求項1〜1のいずれか一項に記載のポリマー。
  13. 1.5未満の多分散度指数(Mw/Mn)を有する、一つ又は複数の糖である基を含む複数のペンダント側基を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリマー。
  14. 2つ以上の異なるペンダント側基を含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載のポリマー。
  15. タンパク質、ポリペプチド、核酸、炭水化物又は脂肪から選択される生体分子と結合し得る基をさらに含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載のポリマー。
  16. ポリアルキレングリコール及び薬剤から選択される官能基を含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載のポリマー。
  17. 前記ポリマーの第1の位置に結合した、開始剤から得られる原子又は基と、
    該ポリマーの別の第2の位置に結合する、該開始剤の化合物の残渣と、
    を含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載のポリマー。
  18. キラル基で誘導体化されるペンダント糖部分を含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載のポリマー。
  19. 前記ポリマーが有機担体又は無機担体と結合している、請求項1〜18のいずれか一項に記載のポリマー
  20. 前記ペンダント側基部分が、糖の鏡像異性体、又はの鏡像異性体のラセミ混合物である、請求項1〜19のいずれか一項に記載のポリマー
  21. 複数のペンダント側基を含み、該複数のペンダント側基が糖の鏡像異性体又は糖の鏡像異性体のラセミ混合物である、請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリマー。
  22. 請求項1〜2のいずれか一項に記載の複数のポリマーを含む種々のポリマーのライブラリであって、各種ポリマーが、ペンダント側基、ペンダント側基の様々な量及び/又は種々のペンダント側基の様々な比率によって異なる、種々のポリマーのライブラリ。
  23. 請求項1〜21のいずれか一項に記載のポリマー、又は請求項22に記載のライブラリを含み、前記ポリマーが1又は複数のペンダント糖側基を有する、糖−レクチン結合又は細胞表面結合用の検査キット。
  24. アフィニティクロマトグラフィ又はキラルクロマトグラフィ用である、請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリマー、又は請求項22に記載のライブラリを含むクロマトグラフィカラム。
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