JP5582331B2 - セルロース誘導体含有重合体及びその製造方法、熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Description
一方で、非石油系樹脂材料であるセルロース誘導体は、耐熱性及び機械的特性に優れるが、例えばセルロースアセテートは溶融温度と熱分解温度との差が小さいため、単独で溶融賦形することができず、成形性に劣るという問題を有する。
特許文献1には、ポリ乳酸とセルロースアセテートプロピオネートからなる非石油系樹脂材料が提案されている。しかしながら、特許文献1で提案されている樹脂材料では、得られる成形体の耐熱性は充分とはいえない。
また、本発明は、上記熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は成形性に優れ、耐熱性及び表面外観の優れた成形体を与える。
本発明の成形体は耐熱性及び表面外観に優れ、自動車、家電、OA機器の部品、包装等に用いる樹脂材料として有用である。このことから、従来の石油系樹脂材料の代替を促進することができる。
本発明で用いるセルロース誘導体(a)としては、セルロースの官能基を化学反応により置換したもの等が挙げられる。この中では、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性及び成形性が優れることから、セルロースの水酸基等を全部又は部分的にエステル化したセルロースエステルが好ましい。
これらの中では、得られる成形体の耐熱性が優れることから、セルロースアセテートが好ましい。セルロースアセテートのアセチル化度としては40〜62%が好ましく、50〜61%がより好ましい。
(メタ)アクリレート(b1)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート等のアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、シアノブチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート等のメタクリレートが挙げられる。
これらの(メタ)アクリレート(b1)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を示す。
他の単量体(b2)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体;無水マレイン酸等の酸無水物単量体;ブタジエン等のジエン系単量体;エチレン、プロピレン、1−ヘキセン等のオレフィン系単量体が挙げられる。
これらの他の単量体(b2)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
単量体成分(b)を100質量%としたとき、(メタ)アクリレート(b1)の質量比率は50質量%以上であり、75質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
単量体成分(b)中の(メタ)アクリレート(b1)の質量比率が50質量%以上であれば、得られる成形体の透明性が良好となる。
単量体成分(b)を重合したときのTgが60℃以下であれば得られる成形体の透明性が良好となる。
尚、重合体のTgは、単量体成分(b)が単独成分である場合には、ポリマーハンドブック(第4版、John Wiley&Sons Inc社発行)に記載の単独重合体のTgを用いる。単量体成分(b)が複数成分である場合には、ポリマーハンドブックに記載の単独重合体のTgと、FOXの式を用いて算出する。
セルロース誘導体(a)の質量比率は、10質量%を超える(但し、(a)と(b)の合計を100質量%とする)。石油由来成分を低減する目的から、セルロース誘導体(a)の質量比率は40〜99質量が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。
セルロース誘導体含有重合体の製造方法の一例として、水中に懸濁させたセルロース誘導体(a)の存在下で、単量体成分(b)及び重合開始剤を添加した後、加熱して重合させる方法が挙げられる。
セルロース誘導体含有重合体を製造する際には、重合開始剤の他に、必要に応じて連鎖移動剤、分散剤、分散助剤、乳化剤等の公知の添加剤を用いることができる。
これらの中では、t−ブチルヒドロパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス2,4−ジメチルバレロニトリルが好ましい。
また、上記の有機過酸化物及び過硫酸塩は還元剤と組み合わせてレドックス系として用いることもできる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイドが挙げられる。また、分散助剤として、例えば、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過酸化水素水及び硼酸が挙げられる。
乳化剤としては、公知のアニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を用いることができる。
結晶性ポリ乳酸としては、例えば、L体乳酸の重合体、D体乳酸の重合体が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
非結晶性ポリ乳酸としては、例えば、D体乳酸とL体乳酸の共重合体が挙げられる。
乳酸以外の成分としては、例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。共重合の形態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合が挙げられる。
結晶性ポリ乳酸の市販品としては、例えば、商品名「レイシアH−100」(三井化学(株)製)が挙げられる。非結晶性ポリ乳酸の市販品としては、例えば、商品名「レイシアH−280」(三井化学(株)製)が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物(100質量%)中でのセルロース誘導体含有重合体の含有率が5質量%以上であれば、得られる成形体の耐熱性及び射出成形後の形態保持性が良好であり、70質量%以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性が良好である。
可塑剤(D)としては、例えば、多価アルコール系可塑剤、多塩基酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、スルホン酸系可塑剤が挙げられる。これらの中では多価アルコール系可塑剤、多塩基酸エステル系可塑剤が好ましく、多価アルコール系可塑剤がより好ましい。
多価アルコール系可塑剤の市販品としては、例えば、商品名「リケマールPL−019」、「同PL−710」(以上、理研ビタミン(株)製)が挙げられる。
多塩基酸エステル系可塑剤の市販品としては、例えば、商品名「MXA」、「BXA」、「DAIFATTY−101」(以上、大八化学工業(株)製)、商品名「PX−844」((株)ADEKA製)が挙げられる。
燐酸エステル系可塑剤としては、例えば、燐酸トリエチル、燐酸トリブチル、燐酸トリ−2−エチルヘキシル、燐酸トリオクチル、燐酸トリフェニル、燐酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、燐酸トリキシリル、燐酸トリクレシルが挙げられる。
脂肪酸系可塑剤としては、例えば、メチルオレート、ブチルオレート、メトキシエチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート、グリセリルトリ−(アセチルリシノレート)、アルキルアセチルリシノレート、n−ブチルステアレート、グリセリルモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレート、ジエチレングリコールモノラウレートが挙げられる。
これらの可塑剤(D)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
熱可塑性樹脂組成物(100質量部)に対して可塑剤(D)の使用量が5質量部以上であれば、得られる成形体の柔軟性が充分に発現し、40質量部以下であれば、得られる成形体から可塑剤がブリードアウトすることがない。
セルロース誘導体含有重合体、熱可塑性樹脂(C)、及び各種の添加剤のブレンド法としては、例えば、バッチ式のニーダー法及び単軸又は多軸の押出機等によるブレンド法が挙げられる。
本発明の成形体は自動車、家電、OA機器の部品、包装等の各種用途に用いることができる。
評価は以下の方法で実施した。
セルロース誘導体含有重合体又はセルロース誘導体(a)と熱可塑性樹脂(C)とを溶融ブレンドし、得られた熱可塑性樹脂組成物中に、原料形状のままのセルロース誘導体(a)が存在するか否かを、目視観察により判定した。
成形体の耐熱性を以下の2種の方法により測定した。
(a)ビカット軟化温度
ASTM−D1525に準拠し、荷重10N又は50Nで測定した。
(b)荷重たわみ温度
ASTM−D648に準拠し、荷重0.48MPaで測定した。
得られた成形体を再び金型に戻し、加熱プレス盤を用いて熱処理した。熱処理直後の成形体の形態保持性を以下の基準により評価した。
○:熱処理直後に金型から成形体を取り出しても成形体は変形しなかった。
×:熱処理直後に金型から成形体を取り出すと成形体が変形した。
(変形させずに成形体を取り出すには、金型を冷却する必要があった。)
熱可塑性樹脂組成物を、卓上小型混練成形機(機種名「CS−183」、Custom Scientific Instruments社製)を用いて、バレル温度200℃の条件で成形し、成形体(幅10mm×長さ20mm×厚さ2mm)を得た。得られた成形体の熱処理を60℃で2時間行ない、室温まで冷却した。
得られた成形体のデューロメータD硬さをJIS K7215に準拠して測定し、成形体の柔軟性を以下の指標により判定した。
○:成形体のデューロメータD硬さが80未満
×:成形体のデューロメータD硬さが80以上
熱可塑性樹脂組成物を、加熱プレス盤(王子機械(株)製、最大荷重37t、最高使用圧力210kg/cm2)を用いて、プレート温度180℃、ゲージ圧30kg/cm2の条件で成形し、フィルム(幅4mm×厚さ100μm)を得た。得られたフィルムの透明性を、JIS−K3261に準拠して測定し、フィルムの透明性を以下の指標により判定した。
○:全光線透過率90%以上、且つ、ヘーズ50%以下。
×:全光線透過率90%未満、又は、ヘーズ50%未満。
フィルム(幅4mm×厚さ100μm)を熱機械的分析装置(機種名「TMA/SS6100」、セイコーインスツル(株)製)を用い、引張りモード、チャック間距離10mm、引張り応力2mNの条件で、温度を25℃から5℃/分で昇温しながら、チャック間距離の変化率が4%に達する温度を測定し、成形体の耐熱性を以下の指標により判定した。
○:チャック間距離の変化率が4%に達する温度が、60℃以上。
×:チャック間距離の変化率が3%に達する温度が、60℃未満。
攪拌装置、冷却管、加熱装置、温度センサー及び定量供給装置を備えた反応容器に、脱イオン水500部、フレーク状のセルロースアセテート(ダイセル化学(株)製L−40(商品名)、アセチル化度55%)90部を投入した。
反応容器内を室温で攪拌しながら、メチルアクリレート10部、n−オクチルメルカプタン0.02部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2部の混合物を30分かけて添加した。更に30分間攪拌した後に、反応容器内を80℃に昇温し、4時間攪拌して重合を終了した。
内容物を冷却した後、固形物を取り出して乾燥し、セルロース誘導体含有重合体(1)を得た。単量体成分(b)を重合して得られる重合体のTgは10℃であった。
表1に示す原料組成とする以外は、実施例1と同様にして、セルロース誘導体含有重合体(2)〜(4)を得た。
比較例1の単量体成分(b)を重合して得られる重合体のTgは105℃であった。
実施例1〜3で得られたセルロース誘導体含有重合体(1)〜(3)、及びポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−100(商品名))を、表2に示す組成で、ニーダー(ブラベンダー社製プラスチコーダー(商品名)、内容積50cm3)を用いて、バレル温度220℃で溶融ブレンドし、熱可塑性樹脂組成物(イ)〜(ニ)を得た。このときの熱可塑性樹脂組成物(イ)〜(ニ)中のセルロースアセテートのブレンド状態を評価した。評価結果を表2に示す。
次いで、得られた熱可塑性樹脂組成物(イ)〜(ニ)を、卓上射出成形機(Custom Scientific Instruments社製CS−183(商品名))を用いて、シリンダー温度220℃で溶融させて、金型内に射出した。金型を室温まで冷却した後、金型から成形体(長さ2cm×幅1cm×厚み0.2cm)を取り出した。
後工程での熱処理:
得られた成形体を再び金型に戻し、加熱プレス盤(王子機械(株)製油圧プレス機、最大荷重37トン、最高使用圧力210kg/cm2)を用いて、105℃で5分間熱処理した。尚、熱処理は加熱プレス盤のゲージ圧10kg/cm2で実施した。
上記の熱処理直後に成形体を金型から取り出し、このときの成形性を評価した。また、熱処理後の成形体を用いて耐熱性を評価した。評価結果を表2に示す。
熱可塑性樹脂組成物の原料組成としてポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−100(商品名))のみを使用し、それ以外は実施例4と同様にして溶融ブレンドした。次いで、実施例4と同様にして、得られた成形体について耐熱性及び成形性を評価した。評価結果を表2に示す。
尚、評価には、後工程での熱処理無しの成形体と、有りの成形体を用いた。
ポリ乳酸単独の樹脂組成では、得られた成形体の耐熱性が劣っていた。また、後工程での熱処理直後の成形体は成形性が劣っており、金型から取り出す際に変形した。このため、熱処理後の成形体は、耐熱性を測定していない。
セルロース誘導体含有重合体(1)の代わりにセルロースアセテート(ダイセル化学(株)製L−40(商品名)、アセチル化度55%)25部を配合し、ポリ乳酸の配合量を75部とした。それ以外は実施例4と同様にして熱可塑性樹脂組成物(ホ)を得た。熱可塑性樹脂組成物(ホ)には、セルロースアセテートが原料形状のまま含有されることが目視により確認された。評価結果を表2に示す。
セルロース誘導体含有重合体の代わりにセルロースアセテートを用いてポリ乳酸と溶融ブレンドした場合には、ブレンド状態が良好な熱可塑性樹脂組成物を得ることはできなかった。
セルロース誘導体含有重合体(1)の代わりにセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製CAP−504−0.2(商品名))25部を配合し、ポリ乳酸の配合量を75部とした。それ以外は実施例4と同様にして熱可塑性樹脂組成物(ヘ)を得た。熱可塑性樹脂組成物(ヘ)には、セルロースアセテートプロピオネートが原料形状のまま含有されることはなかった。評価結果を表2に示す。
セルロース誘導体含有重合体の代わりにセルロースアセテートプロピオネートを用いてポリ乳酸と溶融ブレンドした場合には、成形性が劣っていた。
実施例1で得られたセルロース誘導体含有重合体(1)及びポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−100(商品名))を、表3に示す組成で、二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製BT30(商品名))を用いて、バレル温度220℃で溶融ブレンドし、熱可塑性樹脂組成物(ト)を得た。このときの熱可塑性樹脂組成物(ト)中のセルロースアセテートのブレンド状態を評価した。評価結果を表3に示す。
セルロース誘導体含有重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を射出成形に用いた場合、得られる成形体は耐熱性及び成形性に優れていた。
熱可塑性樹脂組成物の原料組成としてポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−100(商品名))のみを使用し、それ以外は実施例8と同様にして射出成形した。評価結果を表3に示す。得られた成形体は形態保持性不良のため、金型から取り出すことができなかった。
射出成形条件を金型表面温度30℃及び保持時間2分に変更した。それ以外は比較例6と同様にして射出成形した。評価結果を表3に示す。
セルロース誘導体含有重合体を用いずにポリ乳酸を単独で射出成形した場合、得られる成形体は耐熱性が劣っていた。
実施例1で得られたセルロース誘導体含有重合体(1)、ポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−100(商品名))及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(UMG−ABS(株)製サイコラック3001(商品名))を、表4に示す組成で、ニーダー(ブラベンダー社製プラスチコーダー(商品名)、内容積50cm3)を用いて、バレル温度220℃で溶融ブレンドし、熱可塑性樹脂組成物(チ)を得た。このときの熱可塑性樹脂組成物(チ)中のセルロースアセテートのブレンド状態を評価した。評価結果を表4に示す。
得られた成形体を直接(熱処理無しで)用いて耐熱性を評価した。評価結果を表4に示す。
セルロース誘導体含有重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物は、非石油系樹脂を含有しているにもかかわらず、耐熱性に優れており、後述する参考例1の従来のABS樹脂を使用した場合と同等のレベルであった。
熱可塑性樹脂組成物の原料組成としてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(UMG−ABS(株)製サイコラック3001(商品名))のみを使用し、それ以外は実施例9と同様にして得られた成形体を直接(熱処理無しで)用いて耐熱性を評価した。評価結果を表4に示す。
熱可塑性樹脂組成物の原料組成としてポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−100(商品名))及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(UMG−ABS(株)製サイコラック3001(商品名))のみを使用し、それ以外は実施例9と同様にして熱可塑性樹脂組成物(リ)を得た。
得られた成形体を直接(熱処理無しで)用いて耐熱性を評価した。評価結果を表4に示す。
セルロース誘導体含有重合体を用いない場合、ポリ乳酸及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物は耐熱性に劣っていた。
実施例1で得られたセルロース誘導体含有重合体(1)、ポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−280(商品名))、可塑剤(理研ビタミン(株)製リケマールPL−019、PL−710(商品名))を、表5に示す組成で、ニーダー(ブラベンダー社製プラスチコーダー(商品名)、内容積50cm3)を用いて、バレル温度220℃で溶融ブレンドし、熱可塑性樹脂組成物(ヌ)及び(ル)を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物の評価結果を表5に示す。
セルロース誘導体含有重合体、ポリ乳酸、可塑剤からなる熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムは、柔軟性、透明性及び耐熱性に優れていた。
ポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−100、H−280(商品名))、可塑剤(理研ビタミン(株)製リケマールPL−710(商品名))を、表5に示す組成で、ニーダー(ブラベンダー社製プラスチコーダー(商品名)、内容積50cm3)を用いて、バレル温度180℃で溶融ブレンドし、熱可塑性樹脂組成物(ヲ)及び(ワ)を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物の評価結果を表5に示す。
セルロース誘導体含有重合体を用いず、ポリ乳酸及び可塑剤からなる熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムは、耐熱性が劣っていた。比較例10のフィルムでは、更に、柔軟性及び耐熱性も劣っていた。
比較例1で得られたセルロース誘導体含有重合体(4)、ポリ乳酸(三井化学(株)製レイシアH−280(商品名))、可塑剤(理研ビタミン(株)製リケマールPL−710(商品名))を、表5に示す組成で、ニーダー(ブラベンダー社製プラスチコーダー(商品名)、内容積50cm3)を用いて、バレル温度180℃で溶融ブレンドし、熱可塑性樹脂組成物(カ)を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物の評価結果を表5に示す。
本発明の範囲外のセルロース誘導体含有重合体を用いた熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムは、透明性が劣っていた。
また、本発明のセルロース誘導体含有重合体を用いた熱可塑性樹脂組成物に可塑剤を併用した場合、得られる成形体(フィルム)は、柔軟性、透明性及び耐熱性に優れることが確認された。
Claims (2)
- セルロースエステル(a)の存在下で、(メタ)アクリレート(b1)を主成分とし、重合体のガラス転移温度が60℃以下となる単量体成分(b)を重合して得られるセルロースエステル含有重合体5〜70質量%及び熱可塑性樹脂(C)30〜95質量%を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
熱可塑性樹脂(C)が、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂及びポリ乳酸から選ばれる一種又は二種以上の熱可塑性樹脂であり、
セルロースエステル(a)の質量比率が10質量%を超える(但し、(a)と(b)の合計を100質量%とする)、熱可塑性樹脂組成物。 - 請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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