JP5497337B2 - 重合体及びその製造方法、熱可塑性樹脂組成物並びに成形体 - Google Patents

重合体及びその製造方法、熱可塑性樹脂組成物並びに成形体 Download PDF

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本発明は、重合体の製造方法、該製造方法により得られる重合体、該重合体を含む熱可塑性樹脂組成物、該熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体に関する。
熱可塑性樹脂は、機械特性、耐熱性、成形加工性等の性質に優れる材料として、各種用途において幅広く用いられているが、その原料のほとんどは、石油由来の成分である。しかしながら、近年、地球環境や資源の問題に対する社会的関心の高まりから、熱可塑性樹脂の原料として、従来のような石油由来成分の替わりに、再生可能な植物由来成分等の非石油由来成分を活用することが望まれている。このような非石油由来成分の一つであるとうもろこし等を原料として製造される乳酸を重合して得られる、ポリ乳酸系重合体の活用が試みられている。ポリ乳酸系重合体を、軟質のフィルム、シートに成形して、食品等の包装材料として使用するために、ポリ乳酸系重合体の柔軟性、耐久性、耐熱性を改善する試みがなされている。
ポリ乳酸系重合体に柔軟性を付与する方法としては、例えば、ポリ乳酸系重合体に対して可塑化効果のある可塑剤を添加する試みがなされている。しかしながら、このような可塑剤を添加して得られるポリ乳酸系重合体の成形体は、ポリ乳酸系重合体の結晶化や可塑剤のブリードアウトにより、成形外観や柔軟性が経時的に低下する、耐熱性に劣る等の課題を有する。また、更なる改良として非晶性のポリ乳酸系重合体を用いる試みがなされているが、ポリ乳酸系重合体の結晶化は抑制できるものの、可塑剤のブリードアウトは抑制できないため、同様に、成形外観や柔軟性が経時的に低下する課題を有する。
上記課題を解決するために、例えば、特許文献1に、ポリ乳酸系重合体と(メタ)アクリレート系重合体とを溶融押出して熱可塑性樹脂組成物を得る方法が提案されている。しかしながら、この方法では、熱可塑性樹脂組成物の成形性は充分とは言えない。
特開2003−286401号公報
本発明の目的とするところは、成形性の優れる熱可塑性樹脂組成物を得るための重合体を提供することにある。
本発明は、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)又はセルロース誘導体(A2)の存在下で、(メタ)アクリレート(b1)を含有し、重合体のガラス転移温度が−20〜60℃となる単量体成分(b)を重合して得られる重合体(C)に、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)を配合した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
た、本発明は、上記熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体である。
本発明の重合体(C)を用いることにより、熱可塑性樹脂組成物の成形性に優れ、得られる成形体の柔軟性、耐久性、耐熱性に優れることから、各種用途の樹脂材料として用いることができる。特に、フィルムやシートに成形することで、工業用や食品用の包装材料に好適に用いることができる。
本発明のヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)は、公知のヒドロキシカルボン酸系重合体を用いることができ、例えば、ポリ乳酸系重合体が挙げられる。
ポリ乳酸系重合体は、乳酸(a11)を主成分とする単量体成分(a1)を重合して得られる。乳酸としては、例えば、D−乳酸、L−乳酸が挙げられる。これらの乳酸(a11)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体成分(a1)は、ポリ乳酸系重合体としての性能を損なわない範囲で、乳酸(a11)以外に共重合可能な他の単量体(a12)を含んでもよい。他の単量体(a12)としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらの他の単量体(a12)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
共重合の形態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合が挙げられる。
単量体成分(a1)の組成としては、全単量体成分(a1)100質量%中、乳酸(a11)が50質量%以上、他の単量体(a12)が50質量%以下であることが好ましく、乳酸(a11)が70質量%以上、他の単量体(a12)が30質量%以下であることがより好ましく、乳酸(a11)が90質量%以上、他の単量体(a12)が10質量%以下であることが更に好ましい。
ポリ乳酸系重合体の結晶性としては、特に制限されるものではなく、結晶性であっても非晶性であってもよい。尚、結晶性は、偏光顕微鏡等で確認できる。
結晶性ポリ乳酸系重合体としては、例えば、L−乳酸の重合体であるポリL−乳酸(PLLA)が挙げられる。非晶性ポリ乳酸系重合体としては、例えば、D−乳酸及びL−乳酸の共重合体であるポリDL−乳酸(PDLLA)が挙げられる。
ポリ乳酸系重合体は、市販のポリ乳酸系重合体を用いてもよい。結晶性ポリ乳酸系重合体の市販品としては、例えば、「レイシアH−100」(商品名、三井化学(株)製)が挙げられる。非晶性ポリ乳酸系重合体の市販品としては、「レイシアH−280」(商品名、三井化学(株)製)、「4060D」(商品名、ネイチャーワークス社製)が挙げられる。これらのポリ乳酸系重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のセルロース誘導体(A2)は、公知のセルロース誘導体を用いることができ、例えば、セルロースの官能基を化学反応により置換した化合物が挙げられる。これらのセルロース誘導体(A2)の中でも、得られる成形体の耐熱性の観点から、セルロースの水酸基を全部又は部分的にエステル化したセルロースエステルが好ましい。
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。これらのセルロースエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
セルロースアセテートのアセチル化度としては、40〜62%であることが好ましく、50〜61%であることがより好ましい。
本発明の重合体(C)は、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)又はセルロース誘導体(A2)の存在下で、(メタ)アクリレート(b1)を主成分とし、重合体のガラス転移温度が60℃以下となる単量体成分(b)を重合して得られる。
単量体成分(b)の重合体(B)のガラス転移温度は、60℃以下であり、−40〜60℃であることが好ましく、−20〜40℃であることがより好ましい。
重合体のガラス転移温度が−40℃以上であると、得られる成形体の耐久性や耐熱性に優れる。また、重合体のガラス転移温度が60℃以下であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。
尚、重合体のガラス転移温度は、単独重合体の場合、ポリマーハンドブック(第4版、John Wiley&Sons Inc社発行)に記載の数値に基づく。共重合体の場合、ポリマーハンドブック(第4版、John Wiley&Sons Inc社発行)に記載の数値とFOXの式を用いて算出される。
本発明の単量体成分(b)は、(メタ)アクリレート(b1)を主成分とする。
(メタ)アクリレート(b1)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート等のアクリレート;n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、シアノブチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタアクリレート等のメタクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(b1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの(メタ)アクリレート(b1)の中でも、得られる成形体の柔軟性の観点から、アクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートがより好ましく、メチルアクリレートが更に好ましい。
単量体成分(b)は、重合体のガラス転移温度が60℃以下となる範囲で、(メタ)アクリレート(b1)以外に共重合可能な他の単量体(b2)を含んでもよい。他の単量体(b2)としては、メチルメタクリレート等の単独重合体のガラス転移温度が60℃を超える(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体;無水マレイン酸等の酸無水物基含有単量体;ブタジエン等のジエン系単量体;エチレン、プロピレン、1−ヘキセン等のオレフィン系単量体が挙げられる。これらの他の単量体(b2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を示す。
本発明の重合体(C)は、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)又はセルロース誘導体(A2)の存在下で、単量体成分(b)を重合して得られる。
単量体成分(b)の重合は、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)又はセルロース誘導体(A2)のいずれかの存在下で、単量体成分(b)を重合してもよく、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)及びセルロース誘導体(A2)の共存下で、単量体成分(b)を重合してもよい。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合における組成としては、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)の存在下で行う場合、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)と単量体成分(b)の合計100質量%中、ヒドロキシカルボン酸(A1)が5〜95質量%、単量体成分(b)が5〜95質量%であることが好ましく、ヒドロキシカルボン酸(A1)が15〜85質量%、単量体成分(b)が15〜85質量%であることがより好ましく、ヒドロキシカルボン酸(A1)が40〜60質量%、単量体成分(b)が40〜60質量%であることが更に好ましい。
ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が5質量%以上であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性に優れる。また、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が95質量%以下であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。
単量体成分(b)が5質量%以上であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。また、単量体成分(b)が95質量%以下であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性に優れる。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合における組成としては、セルロース誘導体(A2)の存在下で行う場合、セルロース誘導体(A2)と単量体成分(b)の合計100質量%中、セルロース誘導体(A2)が1〜40質量%、単量体成分(b)が60〜99質量%であることが好ましく、セルロース誘導体(A2)が5〜20質量%、単量体成分(b)が80〜95質量%であることがより好ましい。
セルロース誘導体(A2)が1質量%以上であると、得られる成形体の耐熱性に優れる。また、セルロース誘導体(A2)が40質量%以下であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。
単量体成分(b)が60質量%以上であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。また、単量体成分(b)が99質量%以下であると、得られる成形体の耐熱性に優れる。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合における組成としては、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)及びセルロース誘導体(A2)の共存下で行う場合、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)、セルロース誘導体(A2)、単量体成分(b)の合計100質量%中、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が1〜40質量%、セルロース誘導体(A2)が1〜40質量%、単量体成分(b)が20〜98質量%であることが好ましく、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が5〜20質量%、セルロース誘導体(A2)が5〜20質量%、単量体成分(b)が60〜90質量%であることがより好ましい。
ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が1質量%以上であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性に優れる。また、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が40質量%以下であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。
セルロース誘導体(A2)が1質量%以上であると、得られる成形体の耐熱性に優れる。また、セルロース誘導体(A2)が40質量%以下であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。
単量体成分(b)が20質量%以上であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。また、単量体成分(b)が98質量%以下であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性や得られる成形体の耐熱性に優れる。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合方法としては、公知の重合方法を用いればよい。重合方法としては、例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、遷移金属触媒重合法が挙げられる。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合系としては、公知の重合系を用いればよい。重合系としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合形態としては、バッチ式、セミバッチ式、連続式のいずれであってもよい。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合温度としては、単量体成分(b)や重合開始剤の種類、重合系にもよるが、0〜150℃であることが好ましく、50〜90℃であることが好ましい。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合時間としては、単量体成分(b)や重合開始剤の種類、重合系にもよるが、通常1〜10時間である。
本発明の重合体(C)を得るための重合雰囲気としては、特に制限されるものではないが、重合効率の観点から、窒素雰囲気であることが好ましい。
本発明の重合体(C)を得るための単量体成分(b)の重合において、必要に応じて、重合開始剤、分散剤、分散助剤、乳化剤、連鎖移動剤等の重合助剤を添加してもよい。
重合開始剤としては、例えば、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−アミルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物;上記有機過酸化物又は上記過硫酸塩と還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの重合開始剤の中でも、重合効率の観点から、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルが好ましい。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシドが挙げられる。これらの分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分散助剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過酸化水素、硼酸が挙げられる。これらの分散助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
乳化剤としては、公知の乳化剤を用いることができ、例えば、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤が挙げられる。これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の重合体(C)の具体的な製造方法としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)又はセルロース誘導体(A2)、単量体(b)、重合開始剤からなる混合物を、反応容器内に仕込み、加熱して重合する方法が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の重合体(C)を含む。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、重合体(C)以外に、更にヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)を配合してもよい。
重合体(C)以外に更にヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)を配合する場合の熱可塑性樹脂組成物の組成としては、重合体(C)とヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)の合計100質量%中、重合体(C)が1〜99質量%、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が1〜99質量%であることが好ましく、重合体(C)が20〜95質量%、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が5〜80質量%であることがより好ましい。
重合体(C)が1質量%以上であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。また、重合体(C)が99質量%以下であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性に優れる。
ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が1質量%以上であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性に優れる。また、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)が99質量%以下であると、得られる成形体の柔軟性に優れる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、柔軟性付与剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤等の添加剤;ガラス繊維、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、ケナフ、バクテリアセルロース等の充填剤;顔料を含んでもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−アクリレート共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、高耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、環状オレフィン含有重合体等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレングリコールテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリカーボネート;セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステルが挙げられる。これらの他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の熱可塑性樹脂の含有率は、全熱可塑性樹脂組成物100質量%中、50質量%以下であることが好ましい。
柔軟性付与剤としては、例えば、多価アルコール系可塑剤、多塩基酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、スルホン酸系可塑剤が挙げられる。これらの柔軟性付与剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多価アルコール系可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ブロック共重合体又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トリメチレンプロパノール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール;トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビス−チオグリコレート、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、グリセリントリブチレート、グリセリントリプロピオネート、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノリシノレートトリアセテート、グリセリンモノアセトモノモンタネート、ジグリセリンテトラアセテート、ポリグリセリンモノラウレートアセテート等の多価アルコール誘導体;エチレンオキシド付加重合体、プロピレンオキシド付加重合体等のアルキレンオキシド付加重合体が挙げられる。
多価アルコール系可塑剤は、市販の多価アルコール系可塑剤を用いてもよい。多価アルコール系可塑剤の市販品としては、例えば、「リケマールPL−019」(商品名、理研ビタミン(株)製)、「リケマールPL−710」(商品名、理研ビタミン(株)製)が挙げられる。
多塩基酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジ−n−ブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジカプリルアジペート等のアジピン酸エステル;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジアミルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ブチルイソデシルフタレート、ブチルラウリルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−オクチルフタレート、ジラウリルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、オクチルデシルフタレート、n−オクチル−n−デシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、エチルヘキシルデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のフタル酸エステル;ジ−n−ブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)マレート、ジノニルマレート等のマレイン酸エステル;ジブチルフマレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート等のフマル酸エステル;トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、n−オクチル,n−デシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、ジイソオクチルモノイソデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステルが挙げられる。
多塩基酸エステル系可塑剤は、市販の多塩基酸エステル系可塑剤を用いてもよい。多塩基酸エステル系可塑剤としては、例えば、「MXA」(商品名、大八化学工業(株)製)、「BXA」(商品名、大八化学工業(株)製)、「DAIFATTY−101」(商品名、大八化学工業(株)製)、「PX−844」(商品名、(株)アデカ製)が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等のジカルボン酸類とプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール類との反応性生物であるポリエステル;ポリカプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の反応生成物であるポリエステルが挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸トリキシリル、リン酸トリクレシルが挙げられる。
エポキシ系可塑剤としては、例えば、ブチルエポキシステアレート、エポキシモノエステル、オクチルエポキシステアレート、エポキシ化ブチルオレート、ジ−(2−エチルヘキシル)−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−カーボキシレート、エポキシ化半乾性油、エポキシ化トリグリセライド、エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート、エポキシデシルステアレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、メチルエポキシヒドロステアレート、グリセリルトリ(エポキシアセトキシステアレート)、イソオクチルエポキシステアレートが挙げられる。
脂肪酸系可塑剤としては、例えば、メチルオレート、ブチルオレート、メトキシエチルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレート、グリセリルトリ(アセチルリシノレート)、アルキルアセチルリシノレート、n−ブチルステアレート、グリセリルモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレート、ジエチレングリコールモノラウレートが挙げられる。
スルホン酸系可塑剤としては、例えば、ベンゼンスルホンブチルアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンエチルスルホンアミド、p−トルエンエチルスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミドが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の混合方法としては、公知の混合方法を用いることができ、例えば、卓上小型混練成形機、バッチ式のニーダー、単軸又は多軸の押出成形機等による溶融ブレンド方法が挙げられる。
本発明の成形体は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる。成形方法としては、公知の成形方法を用いることができ、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、インフレーション成形、カレンダ成形が挙げられる。
本発明の成形体は、柔軟性、耐久性、耐熱性に優れることから、各種用途の樹脂材料として用いることができる。特に、フィルムやシートに成形することで、工業用や食品用の包装材料に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
(1)成形性
熱可塑性樹脂組成物を、加熱プレス盤(王子機械(株)製、最大荷重37t、最高使用圧力210kg/cm)を用いて、プレート温度180℃、ゲージ圧30kg/cmの条件で成形を行い、フィルム成形体(厚さ50〜100μm)を得た。得られたフィルムを目視により観察し、熱可塑性樹脂組成物の成形性を以下の指標により判定した。
○:フィルムは透明であり、欠陥は確認されなかった。
△:フィルムは透明であり、波打ちが確認されたが、使用上問題ない程度であった。
×:フィルムは不透明であり、波打ち、縮み、折れ、曲がり、ひび、割れ等の欠陥が確認された。
(2)柔軟性
熱可塑性樹脂組成物を、卓上小型混練成形機(機種名「CS−183」、Custom Scientific Instruments社製)を用いて、バレル温度200℃の条件で成形を行い、成形体(短辺10mm、長辺20mm、厚さ2mm)を得た。得られた成形体のデューロメータD硬さをJIS K7215に準拠して測定し、成形体の柔軟性を以下の指標により判定した。
○:成形体のデューロメータD硬さが、80未満であった。
×:成形体のデューロメータD硬さが、80以上であった。
(3)耐久性
熱可塑性樹脂組成物を、加熱プレス盤(王子機械(株)製、最大荷重37t、最高使用圧力210kg/cm)を用いて、プレート温度180℃、ゲージ圧30kg/cmの条件で成形を行い、フィルム成形体(一辺3cm、厚さ50μm)を得た。得られたフィルムをオーブン内で80℃で10日間保持した後、フィルムを目視により観察し、成形体の耐久性を以下の指標により判定した。
○:白化は見られず透明であり、析出物は確認されなかった。
△:白化は見られたが、析出物は確認されなかった。
×:白化が見られ、析出物が確認された。
(4)耐熱性
熱可塑性樹脂組成物を、加熱プレス盤(王子機械(株)製、最大荷重37t、最高使用圧力210kg/cm)を用いて、プレート温度180℃、ゲージ圧30kg/cmの条件で成形を行い、フィルム成形体(幅4mm、厚さ100μm)を得た。得られたフィルムを熱機械的分析装置(機種名「TMA/SS6100」、セイコーインスツル(株)製)を用い、引っ張りモード、チャック間距離10mm、引張り応力2mNの条件で、温度を25℃から5℃/分で昇温しながら、チャック間距離の変化率が3%に達する温度を測定し、成形体の耐熱性を以下の指標により判定した。
○:チャック間距離の変化率が3%に達する温度が、70℃を超えていた。
△:チャック間距離の変化率が3%に達する温度が、50℃以上、70℃以下であった。
×:チャック間距離の変化率が3%に達する温度が、50℃未満であった。
[実施例1]
ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)としてPDLLA「レイシアH−280」(商品名、三井化学(株)製、質量平均分子量17万)30部、メチルアクリレート70部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部からなる混合物を、反応容器内に仕込み、60℃で4時間加熱し、その後80℃で2時間加熱し、重合体(C1)を得た。
尚、ポリメチルアクリレートのガラス転移温度は、ポリマーハンドブック(第4版、John Wiley&Sons Inc社発行)によると、10℃である。
[実施例2〜6、比較例1]
ヒドロキシカルボン酸(A1)、セルロース誘導体(A2)、単量体成分(b)の組成を表1とした以外は、実施例1と同様に行った。
尚、セルロース誘導体(A2)としてセルロースアセテート「L−40」(商品名、ダイセル化学(株)製、重合度170)を用いた。
[実施例7〜15、比較例2〜4]
実施例1〜6、比較例1で得られた重合体(C1)〜(C7)を用い、表2に示す組成で配合し、卓上小型混練機(機種名「CS−183」、Custom Scientific Instruments社製)を用いて、バレル温度200℃の条件で溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を用い、熱可塑性樹脂組成物及び成形体の各評価を行った。
尚、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)としてPDLLA「レイシアH−280」(商品名、三井化学(株)製)及びPLLA「レイシアH−100」(商品名、三井化学(株)製)、可塑剤として「リケマールPL−019」(商品名、理研ビタミン(株)製)を用いた。
実施例7〜15、比較例2〜4で得られた熱可塑性樹脂組成物を用いた各評価の結果を、表2に示す。
本発明の重合体(C1)〜(C6)を用いた実施例7〜15において、熱可塑性樹脂組成物の成形性に優れ、成形体の柔軟性、耐久性、耐熱性に優れた。一方、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)又はセルロース誘導体(A2)の非存在下で単量体成分(b)を重合して得られた重合体(C7)を用いた比較例2〜4において、熱可塑性樹脂組成物の成形性に劣った。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形性に優れ、得られる成形体の柔軟性、耐久性、耐熱性に優れることから、各種用途の樹脂材料として用いることができる。特に、フィルムやシートに成形することで、工業用や食品用の包装材料に好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)又はセルロース誘導体(A2)の存在下で、(メタ)アクリレート(b1)を含有し、重合体のガラス転移温度が−20〜60℃となる単量体成分(b)を重合して得られる重合体(C)に、ヒドロキシカルボン酸系重合体(A1)を配合した熱可塑性樹脂組成物
  2. 請求項記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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