JP5582288B2 - エッジシームを低減した熱延鋼帯の製造方法 - Google Patents

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本発明は、熱延鋼帯の幅方向端部に生じるエッジシームを低減した熱延鋼帯の製造方法に関する。
エッジシームは、熱延鋼帯のエッジから10数mmほど内側へ入ったところに長手方向に現れる線状欠陥であり、エッジシームが発生するとその熱延鋼帯は製品にできない。一方、熱延鋼帯は一般に幅方向端部を耳切りして製品化するため、製品幅に余幅を付与して製造される。
そこで、従来から、エッジシームの幅方向発生位置を考慮して、熱延鋼帯の幅を製品保証幅より広くして余幅を設けて、エッジシームを余幅の中に納めて切断除去しているが、製品歩留まりを向上する観点から、エッジシームを低減して、できるだけ余幅を低減したい。
エッジシームは、熱延鋼帯の素材であるスラブを熱間圧延すると、被圧延材側面にしわ状欠陥が発生して、そのしわ状欠陥が被圧延材表面に回り込んで、圧延により長手方向に伸ばされて生じた被圧延材の線状欠陥である。
そこで、従来は、特許文献1、特許文献2に例を示すように、熱間圧延中に被圧延材側面のしわ状欠陥が被圧延材表面に回り込むのを防止するため、熱間圧延に先立つスラブの幅プレスに使用する金型の形状やスラブの温度分布を工夫するなどの方法が提案され実施されていた。
特開平10−52701号公報 特開2005−34887号公報
しかし、従来のこれら方法を駆使しても、被圧延材側面のしわ状欠陥が被圧延材表面に回り込んで生じるエッジシームを完全に防止することはできなかった。
特に、類似規格あるいは同一規格の被圧延材であっても、製造タイミングごとにエッジシーム発生位置が異なる場合があり、エッジシーム回り込み量(鋼帯エッジから最も幅方向内部に発生したエッジシームまでの距離)が安定せず、従来は、余幅を大きく取って耳切りすることにより、エッジシームを除去した製品鋼帯を得るしかなかった。
本発明は、上記の類似規格の被圧延材におけるエッジシーム回り込み量を安定させることにより、余幅を少なくしつつエッジシームを低減することを目的としてなされたものであり、その要旨は次のとおりである。
(1)鋼のスラブを熱間で、金型厚み方向中央に凸形状を有する幅プレス金型を用いて幅プレスし、引き続き長さ方向に圧延する熱延鋼帯の製造方法において、幅プレスの途中または幅プレス後の圧延開始前に、スラブ側面をスラブ厚み方向に平行なスリット光で走査し、その反射光を捉えてスラブ側面上のスリット光映像を撮影した画像を用いて行う光学的手段によりスラブ側面形状を測定して、幅プレス金型によるスラブ叩き位置のスラブ厚み方向のずれを算出し、これに基づいて、当該スラブの後に幅プレスする類似規格の後行スラブを対象に、スラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせをして幅プレスを行うことを特徴とする、エッジシームを低減した熱延鋼帯の製造方法。
)前記スラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせは、幅プレス金型の上下方向位置は固定のまま、スラブの上下方向位置を微調整することにより行うものとしたことを特徴とする(1)に記載のエッジシームを低減した熱延鋼帯の製造方法。
)前記スラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせは、スラブの上下方向位置は固定のまま、幅プレス金型の上下方向位置を微調整することにより行うものとしたことを特徴とする(1)に記載のエッジシームを低減した熱延鋼帯の製造方法。
本発明によれば、幅プレス時の幅プレス金型によるスラブ厚み方向叩き位置を実測して、その結果に基づいて幅プレス金型中心とスラブ側面中心との上下方向相対位置を修正することにより、その後に幅プレスする類似規格の後行スラブについて、余幅を削減しつつ、エッジシームを防止することが可能となる。
スラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向相対位置のずれを示す概略断面図 スラブ側面の形状測定方法の一例を示す概略斜視図
従来から、主として幅プレスに工夫を加えることでエッジシーム回り込み量を低減する方法が多数提案されてきたが、従来は類似規格さらには同一規格の被圧延材であっても、製造タイミングごとにエッジシーム回り込み量が異なるため、エッジシームを確実に低減することが難しかった。
そこで、本発明者らは、エッジシーム回り込み量が製造タイミングごとに異なる理由を鋭意検討した結果、エッジシーム回り込み量は、幅プレスにおいてスラブと幅プレス金型とが接触したスラブ厚み方向位置と強い相関関係にあり、図1に例を示すように、スラブ1におけるスラブ側面中心の上下方向位置Aと幅プレス金型4における幅プレス金型中心の上下方向位置Bとのずれ(幅プレス金型4によるスラブ叩き位置のスラブ厚み方向のずれ)Cが大きくなると、エッジシーム回り込み量も大きくなることを把握した。
すなわち、エッジシーム低減のために金型厚み方向中央に凸形状を持たせた幅プレス金型を適用して幅プレスをしても、幅プレスにおける幅プレス金型の叩き位置がスラブ厚み方向の中心位置から上下いずれかにずれた場合、叩き位置がスラブ厚み方向中心位置であった場合に比べて、幅プレス後の熱間圧延において、被圧延材上下のいずれか一方ではエッジシーム回り込み量は減少するが、他方では増大し、結果としてエッジシーム回り込みの最大量が大きくなって、鋼帯全体でのエッジシーム回り込み量は増大し、余幅を除去しても、エッジシームが残留して問題となるわけである。
したがって、幅プレスにおいて、幅プレス金型中心をスラブ側面中心(スラブ厚み方向中央)に一致させることが重要であり、定期的に幅プレス後の熱間圧延を中断して、幅プレス後のスラブを冷却し、その厚み方向叩き位置を、人手により物差しや定規を用いて測定していたが、そのスラブにおいてはエッジシームを低減できたものの、後行スラブになるとエッジシーム回り込み量が再び増大する場合があって問題であり、すべてのスラブにおいてエッジシーム回り込み量を安定して低減することが求められていた。
そこで、本発明者らは、幅プレスの途中または幅プレス後の熱間圧延開始前に、スラブ側面の形状を光学的手段により自動的に測定する方法を採用した。
すなわち、図2に示すように、スリット光源3からスラブ厚み方向に平行なスリット光をスラブ側面に投射し、このスリット光でスラブ側面をスラブ長さ方向に走査し、その反射光をカメラ2で捉えてスラブ側面上のスリット光映像を撮影し、この撮影した画像を用いて、スラブ側面の形状を測定することにより、幅プレス時のスラブ厚み方向叩き位置を算出する方法である。なお、スリット光映像の撮影画像は、スラブ側面が幅プレス金型の凸形状で叩かれてなる凹形状を反映して、図2のような曲線形状となり、これと同一視野内のスラブ側面の上下端位置撮影画像とから、前記スラブ叩き位置の算出、および該スラブ叩き位置のスラブ厚み方向のずれが算出できるわけである。
そして、この測定結果を基に、幅プレス金型によるスラブ叩き位置のスラブ厚み方向のずれ(図1の符号Cに対応する)を算出し、これに基づいて、当該スラブの後に幅プレスする類似規格の後行スラブを対象に、スラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせをして幅プレスを行うこととした。これにより、全てのスラブにおいてエッジシーム回り込み量を安定させることができ、熱延鋼帯の耳切り代を安定して少なくできて、歩留まりを向上でき、耳切り後の製品鋼帯のエッジシームをなくすことができたわけである。
また、前記算出したスラブ叩き位置のスラブ厚み方向のずれは、前述のエッジシーム回り込み量と強い相関関係があるため、エッジシーム回り込み量を予測することができ、この予測を基に、熱間圧延時に設定する余幅について、耳切り後にエッジシームが残存しない最小限の値に設定することが可能となる。
なお、幅プレスにおける幅プレス金型中心とスラブ側面中心との上下方向位置合わせをする方法としては、スラブを上下動できる機構を幅プレス機内に設け、これを用いて、スラブの上下方向位置を微調整するとよい。例えば、スラブを搬送するローラテーブルに油圧式や機械式の昇降装置を設けるとよい。
また、幅プレス金型を幅プレス機内で上下動できる機構を設け、これを用いて、幅プレス金型の上下方向位置を微調整してもよい。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
(比較例)
スラブを熱間で、金型厚み方向中央に凸形状を有する幅プレス金型を用いて幅プレスし、従来通り、スラブ側面形状の測定を行わず、長さ方向に圧延して熱延鋼帯を製造した。このときの余幅は従来通り片側あたり+15mmとしており、得られた鋼帯の余幅を耳切りしたが、鋼帯表面にエッジシームが一部残留し、所望する幅の製品鋼帯を得ることができなかったため、エッジシームがなくなるまで、耳切り代を増加させた結果、狭幅の製品鋼帯へ振り替えざるを得ず、著しく歩留りが低下し、生産工程を阻害し生産能率を低下させた。
(本発明例1)
スラブを熱間で、金型厚み方向中央に凸形状を有する幅プレス金型を用いて幅プレスし、本発明方法に従って、幅プレスの途中に図2に示した形態で光学的手段によりスラブ側面形状を測定した結果、スラブ側面中心位置が幅プレス金型中心位置から2mm下方にずれていた。そこで、当該スラブの幅プレス完了後に、類似規格の後行スラブを対象に、幅プレス機内のローラテーブルを2mm上方に移動させることでスラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせをして幅プレスを行い、引き続き長さ方向に圧延して熱延鋼帯を製造した。このときの余幅は前述の予測に基づき片側あたり+5mmとしており、得られた鋼帯の余幅を耳切りした結果、鋼帯表面にエッジシームの無い所望する幅の製品鋼帯を得た。
(本発明例2)
スラブを熱間で、金型厚み方向中央に凸形状を有する幅プレス金型を用いて幅プレスし、本発明方法に従って、幅プレスの途中に図2に示した形態で光学的手段によりスラブ側面形状を測定した結果、スラブ側面中心位置が幅プレス金型中心位置から1mm上方にずれていた。そこで、当該スラブ幅プレス完了後、類似規格の後行スラブを対象に、幅プレス機内の幅プレス金型位置を1mm上方に移動させることでスラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせをして幅プレスを行い、引き続き長さ方向に圧延して熱延鋼帯を製造した。このときの余幅は前述の予測に基づき片側あたり+5mmとしており、得られた鋼帯の余幅を耳切りした結果、鋼帯表面にエッジシームの無い所望する幅の製品鋼帯を得た。
1 スラブ
2 カメラ
3 スリット光源
4 幅プレス金型
5 スラブ厚み方向(上下方向)
A スラブ側面中心の上下方向位置
B 幅プレス金型中心の上下方向位置
C 幅プレス金型によるスラブ叩き位置のスラブ厚み方向のずれ

Claims (3)

  1. 鋼のスラブを熱間で、金型厚み方向中央に凸形状を有する幅プレス金型を用いて幅プレスし、引き続き長さ方向に圧延する熱延鋼帯の製造方法において、幅プレスの途中または幅プレス後の圧延開始前に、スラブ側面をスラブ厚み方向に平行なスリット光で走査し、その反射光を捉えてスラブ側面上のスリット光映像を撮影した画像を用いて行う光学的手段によりスラブ側面形状を測定して、幅プレス金型によるスラブ叩き位置のスラブ厚み方向のずれを算出し、これに基づいて、当該スラブの後に幅プレスする類似規格の後行スラブを対象に、スラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせをして幅プレスを行うことを特徴とする、エッジシームを低減した熱延鋼帯の製造方法。
  2. 前記スラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせは、幅プレス金型の上下方向位置は固定のまま、スラブの上下方向位置を微調整することにより行うものとしたことを特徴とする請求項1に記載のエッジシームを低減した熱延鋼帯の製造方法。
  3. 前記スラブ側面中心と幅プレス金型中心との上下方向位置合わせは、スラブの上下方向位置は固定のまま、幅プレス金型の上下方向位置を微調整することにより行うものとしたことを特徴とする請求項1に記載のエッジシームを低減した熱延鋼帯の製造方法。
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