JP5578800B2 - 磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

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本発明はハードディスクドライブ(以下、HDDと略記する)などの磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクの製造方法に関する。
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に磁気記録技術を用いたHDDの面記録密度は年率100%程度の割合で増加し続けている。最近では、HDD等に用いられる2.5インチ径磁気ディスクにして、1枚当り250Gバイトを超える情報記録容量が求められるようになってきており、このような所要に応えるためには1平方インチ当り400Gビットを超える情報記録密度を実現することが求められる。HDD等に用いられる磁気ディスクにおいて高記録密度を達成するためには、情報信号の記録を担う磁気記録層を構成する磁性結晶粒子を微細化すると共に、その層厚を低減していく必要があった。ところが、従来より商業化されている面内磁気記録方式(長手磁気記録方式、水平磁気記録方式とも呼称される)の磁気ディスクの場合、磁性結晶粒子の微細化が進展した結果、超常磁性現象により記録信号の熱的安定性が損なわれ、記録信号が消失してしまう、熱揺らぎ現象が発生するようになり、磁気ディスクの高記録密度化への阻害要因となっていた。
この阻害要因を解決するために、近年、垂直磁気記録方式用の磁気記録媒体が提案されている。垂直磁気記録方式の場合では、面内磁気記録方式の場合とは異なり、磁気記録層の磁化容易軸は基板面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式は面内記録方式に比べて、熱揺らぎ現象を抑制することができるので、高記録密度化に対して好適である。このような垂直磁気記録媒体としては、例えば特開2002-74648号公報に記載されたような、基板上に軟磁性体からなる軟磁性下地層と、硬磁性体からなる垂直磁気記録層を備える、いわゆる二層型垂直磁気記録ディスクが知られている。
ところで、従来の磁気ディスクは、磁気ヘッドが低浮上量化してきたことに伴い、外部衝撃や飛行の乱れによって磁気ヘッドが磁気記録媒体表面に接触する可能性が高まっている。このため、磁気ヘッドが磁気記録媒体に衝突した際、磁気ディスクの耐久性を確保するために、基板上に形成された磁気記録層の上に、保護層を設けている(例えば特許文献1等)。保護層は薄膜においても優れた耐磨耗性と耐腐食性を維持するための強度と化学的耐性が必要とされるため、低摩擦・高強度・高化学安定性を有するダイヤモンドライクカーボンが好ましく使用されている。従来の保護層は、磁気記録媒体上に、炭化水素ガスによるCVD法、またはスパッタリング法などを用いてダイヤモンドライクカーボン保護層を形成していた。膜厚は大凡10nm以下としていた。
さらに保護層の上には、磁気ヘッドが衝突した際に保護層及び磁気ヘッドを保護するため、潤滑層が設けられる。潤滑層としては一般的にパーフルオロポリエーテル系潤滑剤が使用されている。
また、上記保護層と潤滑層との密着性を向上させるため、上記のようにして形成された炭素系保護層に対して窒素等のプラズマを暴露する表面処理を行っていた。
特開2000−282238号公報
上述したように、最近のHDDでは400Gbit/inch以上の情報記録密度が要求されるようになってきたが、限られたディスク面積を有効に利用するために、HDDの起動停止機構が従来のCSS(ContactStart and Stop)方式に代えてLUL(Load Unload:ロードアンロード)方式のHDDが用いられるようになってきた。LUL方式では、HDDの停止時には、磁気ヘッドを磁気ディスクの外に位置するランプと呼ばれる傾斜台に退避させておき、起動動作時には磁気ディスクが回転開始した後に、磁気ヘッドをランプから磁気ディスク上に滑動させ、浮上飛行させて記録再生を行なう。停止動作時には磁気ヘッドを磁気ディスク外のランプに退避させたのち、磁気ディスクの回転を停止する。この一連の動作はLUL動作と呼ばれる。LUL方式のHDDに搭載される磁気ディスクでは、CSS方式のような磁気ヘッドとの接触摺動用領域(CSS領域)を設ける必要がなく、記録再生領域を拡大させることができ、高情報容量化にとって好ましいからである。
このような状況の下で情報記録密度を向上させるためには、磁気ヘッドの浮上量を低減させることにより、スペーシングロスを限りなく低減する必要がある。1平方インチ当り400Gビット以上の情報記録密度を達成するためには、磁気ヘッドの浮上量は少なくとも5nm以下にする必要がある。LUL方式ではCSS方式と異なり、磁気ディスク面上にCSS用の凸凹形状を設ける必要が無く、磁気ディスク面上を極めて平滑化することが可能となる。よってLUL方式のHDDに搭載される磁気ディスクでは、CSS方式に比べて磁気ヘッド浮上量を一段と低下させることができるので、記録信号の高S/N比化を図ることができ、磁気ディスク装置の高記録容量化に資することができるという利点もある。
最近のLUL方式の導入に伴う、磁気ヘッド浮上量の一段の低下により、5nm以下の超低浮上量においても、磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきた。とりわけ上述したように、近年、磁気ディスクは面内磁気記録方式から垂直磁気記録方式に移行しており、磁気ディスクの大容量化、それに伴うフライングハイトの低下が強く要求されている。
また最近では、磁気ディスク装置は、従来のパーソナルコンピュータの記憶装置としてだけでなく、携帯電話、カーナビゲーションシステムなどのモバイル用途にも多用されるようになってきており、使用される用途の多様化により、磁気ディスクに求められる環境耐性は非常に厳しいものになってきている。したがって、これらの状況に鑑みると、従来にもまして、磁気ディスクの安定性、信頼性などの更なる向上が急務となっている。
ところで、従来のCVD法又はスパッタリング法を用いて、単に媒体保護層を薄膜化しても、保護層自体の摺動耐性や腐食耐性等の耐久性が劣化することになる。特に保護層と潤滑層の密着性を高めるために保護層に対して窒素等のプラズマによる表面処理を行うと、プラズマによってイオン化した高エネルギー原子を保護層に対して撃ち込むことになるため、その撃ち込みによる保護層の強度、密度、緻密性の低下、それに伴う耐磨耗性、耐腐食性の劣化が問題視されていた。近年、保護層の膜厚は薄膜化することが要求されてきており、そうなると保護層の厚みが上記表面処理による原子の撃ち込み深さに近づいてくるため、それに伴う耐磨耗性、耐腐食性はさらに悪化することになる。しかし、従来では保護層と潤滑層との密着性を確保するためには、窒素等のプラズマによる表面処理は必要不可欠であった。
近年、磁気ヘッドにおいては、素子内部に備えた薄膜抵抗体に通電して発熱させることで磁極先端部を熱膨張させるDynamic Flying Height(DFH)技術の導入でスペーシングの低減が急速に進んでおり、DFH素子のバックオフマージン2nm以下を満足させる媒体開発が必要となっている。このように、近年の高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量化、磁気スペーシングの低減のもとでの高耐久性、高信頼性を有する磁気ディスクの実現が求められている。
本発明は、以上説明したような従来の問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、薄膜化しても潤滑層との密着性、耐磨耗性及び耐腐食性に優れた保護層を備えた磁気ディスクの製造方法を提供することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の発明により、前記課題が解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板上に少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、前記保護層は化学的気相成長(CVD)法で形成され、まず炭化水素系ガスを用いて成膜を行い、途中から炭化水素系ガスに窒素族又は酸素族に属する元素の単体もしくは化合物ガスを添加して引き続き成膜を行うことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
(構成2)
前記保護層の膜厚が5nm以下であることを特徴とする構成1に記載の磁気ディスクの製造方法。
(構成3)
前記途中から炭化水素系ガスに窒素族又は酸素族に属する元素の単体もしくは化合物ガスを添加して成膜した表層の膜厚が1nm以下であることを特徴とする構成1又は2に記載の磁気ディスクの製造方法。
(構成4)
X線光電子分光(XPS)法によって測定した前記表層中の炭素原子(C)に対する窒素原子(N)の存在比(N/C)が原子比で0.16以上であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載の磁気ディスクの製造方法。
(構成5)
前記磁気ディスクは、起動停止機構がロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載され、5nm以下のヘッド浮上量の下で使用される磁気ディスクであることを特徴とする構成1乃至4のいずれか一項に記載の磁気ディスクの製造方法。
本発明によれば、薄膜化しても潤滑層との密着性、耐磨耗性及び耐腐食性に優れた保護層を備えた磁気ディスクの製造方法を提供することができる。これによって、磁気スペーシングのより一層の低減を実現でき、しかも近年の急速な高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量のもとでも、また用途の多様化に伴う非常に厳しい環境耐性のもとでも高耐久性、高信頼性を有する磁気ディスクを得ることができる。
実施例と比較例の密着性テスト結果を示すグラフである。 実施例と比較例のピンオンテスト結果を示すグラフである。 実施例と比較例のCo溶出テスト結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
まず、本発明により製造される磁気ディスク、とりわけ高記録密度化に好適な垂直磁気記録媒体の概略を説明する。
本発明に係わる垂直磁気記録媒体の構成としては、具体的には、例えば、基板上に、密着層、軟磁性層、シード層、下地層、磁気記録層(垂直磁気記録層)、保護層、潤滑層などを積層したものである。
上記基板としてはガラス基板が好ましく、ガラスの種類としては、アルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ソーダタイムガラス等が挙げられるが、中でもアルミノシリケートガラスが好適である。また、アモルファスガラス、結晶化ガラスを用いることができる。軟磁性層をアモルファスとする場合にあっては、基板をアモルファスガラスとすると好ましい。なお、化学強化したガラスを用いると、剛性が高く好ましい。本発明において、基板主表面の表面粗さはRmaxで1nm以下、Raで0.3nm以下であることが好ましい。
また、上記磁気記録層は、コバルト(Co)を主体とする結晶粒子と、酸化物またはSi,Ti,,Cr,CoまたはSi,Ti,,Cr,Co酸化物を主体とする粒界部を有するグラニュラー構造の強磁性層を含むことが好適である。
具体的に上記強磁性層を構成するCo系磁性材料としては、非磁性物質である酸化チタン(TiO)を含有するCoCrPt(コバルト−クロム−白金)からなる硬磁性体のターゲットを用いて、hcp結晶構造を成型する材料が望ましい。また、この強磁性層の膜厚は、例えば20nm以下であることが好ましい。
また、補助記録層は、上記垂直磁気記録層の上部に、必要に応じて交換結合制御層を介して設けることにより、磁気記録層の高密度記録性と低ノイズ性に加えて高熱耐性を付け加えることができる。補助記録層としては、例えばCoCrPtBを好適に用いることができる。
また、前記垂直磁気記録層と前記補助記録層との間に、交換結合制御層を有することが好適である。交換結合制御層を設けることにより、前記垂直磁気記録層と前記補助記録層との間の交換結合の強さを好適に制御して記録再生特性を最適化することができる。交換結合制御層としては、例えば、Ruなどが好適に用いられる。
また、上記磁気記録層を複数層有する構成とし、各磁気記録層の間に磁気的な結合を調整するための非磁性層を設ける構成とすることができる。
上記強磁性層を含む垂直磁気記録層の形成方法としては、スパッタリング法で成膜することが好ましい。特にDCマグネトロンスパッタリング法で形成すると均一な成膜が可能となるので好ましい。本発明では、特に成膜圧力が磁気記録層などに比べて低い例えば上記補助記録層や、複数の磁気記録層を有する場合の各磁気記録層の間の非磁性層のスパッタリング成膜において、良好な基板面内の特性分布が得られる。
また、基板上に、垂直磁気記録層の磁気回路を好適に調整するための軟磁性層は、第一軟磁性層と第二軟磁性層の間に非磁性のスペーサ層を介在させることによって、AFC(Antiferro-magneticexchange coupling:反強磁性交換結合)を備えるように構成することが好適である。これにより第一軟磁性層と第二軟磁性層の磁化方向を高い精度で反並行に整列させることができ、軟磁性層から生じるノイズを低減することができる。具体的には、第一軟磁性層、第二軟磁性層の組成はCoTaZr(コバルト−タンタル−ジルコニウム)またはCoFeTaZr(コバルト−鉄−タンタル−ジルコニウム)またはCoFeTaZrAl(コバルト−鉄−タンタル−ジルコニウム−アルミニウム)とすることができる。スペーサ層の組成は例えばRu(ルテニウム)が好適に用いられる。
また、シード層は、下地層の配向ならびに結晶性を制御するために用いられる。全層を連続成膜する場合には特に必要のない場合もあるが、軟磁性層と下地層の相性如何によっては結晶成長性が劣化することがあるため、シード層を用いることにより、下地層の結晶成長性の劣化を防止することができる。シード層の膜厚は、下地層の結晶成長の制御を行うのに必要最小限の膜厚とすることが望ましい。厚すぎる場合には、信号の書き込み能力を低下させてしまう原因となる。
また、基板上に、垂直磁気記録層の結晶配向を基板面に対して垂直方向に配向させるための非磁性下地層を設けることが好ましい。非磁性下地層の材料としては、例えばRuまたはその合金が好ましい。Ruの場合、hcp結晶構造を備えるCoPt系垂直磁気記録層の結晶軸(c軸)を垂直方向に配向するよう制御する作用が高く好適である。
また、基板と軟磁性層との間に、密着層を形成することも好ましい。密着層を形成することにより、基板と軟磁性層との間の付着性を向上させることができるので、軟磁性層の剥離を防止することができる。密着層の材料としては、例えばTi含有材料を用いることができる。
また、前記垂直磁気記録層の上には、保護層を設ける。保護層を設けることにより、磁気記録媒体上を浮上飛行する磁気ヘッドから磁気ディスク表面を保護することができる。保護層の材料としては、たとえばダイヤモンドライクカーボンからなる炭素系保護層が好適である。
また、前記保護層上に、更に潤滑層を設けることが好適である。潤滑層を設けることにより、磁気ヘッドと磁気ディスク間の磨耗を抑止でき、磁気ディスクの耐久性を向上させることができる。潤滑層の材料としては、たとえばPFPE(パーフロロポリエーテル)系化合物が好ましい。潤滑層は、例えばディップコート法で形成することができる。
本発明は、上記構成1の発明にあるように、基板上に少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、前記保護層は化学的気相成長(CVD)法で形成され、まず炭化水素系ガスを用いて成膜を行い、途中から炭化水素系ガスに窒素族又は酸素族に属する元素の単体もしくは化合物ガスを添加して引き続き成膜を行うことを特徴とする磁気ディスクの製造方法である。
CVD法による成膜に使用する炭化水素系ガスとしては、例えばエチレンガスに代表される低級炭化水素系ガス(炭素数が1〜5程度)が好適に用いられる。
また、成膜プロセスの途中から炭化水素系ガスに添加するガスとしては、窒素ガスが好ましく挙げられるが、保護層と潤滑層とは水素結合などの静電気的引力によって密着するため、炭化水素系ガスに添加するガス種は窒素ガスに限らず、たとえば窒素族又は酸素族に属する元素のような電気陰性度の高い元素の単体もしくは化合物ガスを用いることができる。特に、炭素と安定な結合を形成するものが最も好適である。
本発明の方法により形成される保護層の膜厚は、薄膜化の要請の観点から、5nm以下であることが好ましい。特に、2〜5nmの範囲であることが好ましい。2nm未満では、保護層としての性能が低下する場合がある。
また、潤滑層との密着性に寄与するのは、保護層と潤滑層の界面であるため、炭化水素系ガスに窒素等のガスを添加して成膜する層は、保護層のうちの潤滑層側となる薄膜の表層部分であることが望ましい。窒素を含有するダイヤモンドライクカーボンは、炭素と水素のみを含有するダイヤモンドライクカーボンよりも密度、強度が低下することが知られており、保護層の耐磨耗性を維持する観点からも、上記の表層部分とすることが望ましい。したがって、この表層の膜厚は1nm以下であることが好ましい。
本発明における炭素系保護層においては、たとえば保護層の潤滑層側に窒素を含有させ、磁性層側に水素を含有させた組成傾斜層とすることが好適であり、そのためには、最初に炭化水素系ガスのみを用いてCVD法により、保護層の成膜を開始し、プロセス後半の途中で、例えば、あと表層1nm程度が積層されるタイミングでチャンバー内に窒素等のガスを導入し、引き続き成膜を行うのが好ましい。
なお、窒素等のガスの導入により保護層の成膜レートが低下する場合があるため、窒素等のガス導入時の成膜レートを炭化水素ガスのみの成膜レートとは別個に算出しておき、それを用いて保護層の厚さを狙い厚さに対して合わせるようにしてもよい。また、CVD法によって保護層を成膜させつつ途中から窒素等のガスを導入してもよいが、真空を維持したまま、窒素ガスを導入したことによる圧力変動が収まりチャンバー内が安定するまで、基板の印加バイアスを0(零)Vにして成膜しない待機時間を設けるようにしてもよい。
本発明においては、X線光電子分光(XPS)法によって測定した前記表層中の炭素原子(C)に対する窒素原子(N)の存在比(N/C)が原子比で0.16以上であることが望ましい。これによって、保護層の潤滑層側の表層中に潤滑層との密着点(活性点)を十分に形成できることから、潤滑層との良好な密着性を確保することができる。上記表層中の炭素原子(C)に対する窒素原子(N)の存在比(N/C)が好適な値となるように、プロセスの途中から添加する窒素等のガスの導入量は、炭化水素系ガスの導入量に対して、例えば流量で1/2程度とすることができる。
本発明では、CVD法によって保護層の成膜中に途中から窒素等のガスを添加し、添加した窒素等のガス由来の例えば窒素原子が保護層中に取り込まれて潤滑層形成側の表層中に潤滑層との密着点(活性点)を十分に形成できることから、潤滑層との良好な密着性を確保できる。そして、なお且つ従来のような窒素プラズマ暴露処理により保護層の損傷が起こらないので、保護層をより薄膜にしても優れた耐磨耗性及び耐腐食性を確保することができる。
以上説明したように、本発明によれば、薄膜化しても潤滑層との密着性、耐磨耗性及び耐腐食性に優れた保護層を形成することができるので、磁気スペーシングのより一層の低減を実現でき、しかも近年の急速な高記録密度化に伴う磁気ヘッドの超低浮上量(5nmあるいはそれ以下)のもとで、また用途の多様化に伴う非常に厳しい環境耐性のもとでも高耐久性、高信頼性を有する磁気ディスクが得られる。
また、本発明の磁気ディスクは、特にLUL方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクとして好適である。LUL方式の導入に伴う磁気ヘッド浮上量の一段の低下により、例えば5nm以下の超低浮上量においても磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきており、低浮上量のもとで高い耐久性及び信頼性を有する本発明の磁気ディスクは好適である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円盤状に成型し、ガラスディスクを作成した。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性ガラス基板を得た。ディスク直径は65mmである。このガラス基板の主表面の表面粗さをAFM(原子間力顕微鏡)で測定したところ、Rmaxが2.18nm、Raが0.18nmという平滑な表面形状であった。なお、Rmax及びRaは、日本工業規格(JIS)に従う。
次に、枚葉式静止対向スパッタ装置を用いて、上記ガラス基板上に、DCマグネトロンスパッタリング法にて、順次、密着層、軟磁性層、シード層、下地第一層、下地第二層、垂直磁気記録層、交換結合制御層、補助記録層の各成膜を行った。
以下の各材料の記述における数値は組成を示すものとする。
まず、密着層として、10nmのCr-50Ti層を成膜した。
次に、軟磁性層として、非磁性層を挟んで反強磁性交換結合する2層の軟磁性層の積層膜を成膜した。すなわち、最初に1層目の軟磁性層として、25nmの(50Fe-50Co)-3Ta4Zr層を成膜し、次に非磁性層として、0.7nmのRu層を成膜し、さらに2層目の軟磁性層として、1層目の軟磁性層と同じ、(50Fe-50Co)-3Ta4Zr層を25nmに成膜した。
次に、上記軟磁性層上に、シード層として、5nmのNiW層を成膜した。
次に,下地層として2層のRu層を成膜した。すなわち、下地第一層として、Arガス圧0.7PaにてRuを12nm成膜し、下地第二層として、Arガス圧4.5PaにてRuを12nm成膜した。
次に、下地層の上に、磁気記録層を成膜した。まず、垂直磁気記録層として、10nmの90(Co-10Cr-16Pt)-5SiO2-5TiO2を成膜した。次に、交換結合制御層として、0.3nmのRu層を成膜し、更にその上に補助記録層として、7nmのCo-15Cr-15Pt-5Bを成膜した。
そして次に、上記補助記録層の上に、エチレンガスを用いてCVD法により、保護層を形成した。このとき、エチレンガスをチャンバー内に2Paとなるように導入し、基板には−400Vのバイアスを印加した。この状態で保護層の成膜を開始し、プロセス後半の表層0.5nmが積層されるタイミングでチャンバー内に窒素ガスを導入した。窒素ガス導入量はエチレンガスの導入量に対して、流量で1/2である。窒素ガスの導入により保護層の成膜レートが低下するため、窒素ガス導入時の成膜レートをエチレンガスのみの成膜レートとは別個に算出しておき、それを用いて保護層の厚さを狙い厚さに対して合わせた。保護層の膜厚は5nmとした。
なお、本実施例では、CVD法によって保護層を成膜させつつ途中から窒素ガスを導入したが、真空を維持したまま、窒素ガスを導入したことによる圧力変動が収まりチャンバー内が安定するまで、基板の印加バイアスを0(零)Vにして積層させない待機時間を設けてもよい。
このようにして保護層を形成した磁気記録媒体を洗浄した後、次に、上記保護層の上に、パーフルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤をディップ法で塗布することにより潤滑層を形成した。成膜後に、磁気ディスクを真空焼成炉内で100℃、60分間で加熱処理した。
以上のようにして、本実施例の磁気ディスクを得た。
(比較例)
保護層の以下のようにして形成した。
エチレンガスのみを用いてCVD法により、保護層を形成した。保護層の膜厚は実施例と同じ5nmとした。次に、形成した保護層に対して窒素プラズマを暴露する表面処理を行った。このとき窒素ガスをチャンバー内が5Paとなるように導入し、100Wの電力量でプラズマを発生させ、2.5秒間曝露させて、保護膜表面を改質した。
保護層を以上のようにして形成したこと以外は実施例と同様にして、本比較例の磁気ディスクを得た。
次に、以下の試験方法により、実施例および比較例の磁気ディスクの評価を行った。
[密着性評価]
保護層と潤滑層の密着性評価は以下の試験により行った。
予め、磁気ディスクの潤滑層膜厚をFTIR(フーリエ変換型赤外分光光度計)法で測定する。次に、磁気ディスクを溶媒(ディップ法に用いた溶媒)に1分間浸漬させる。溶媒に浸漬させることで、付着力の弱い潤滑層部分は溶媒に分散溶解してしまうが、付着力の強い部分は保護層上に残留することができる。磁気ディスクを溶媒から引き上げ、再び、FTIR法で潤滑層膜厚を測定する。溶媒浸漬前の潤滑層膜厚に対する、溶媒浸漬後の潤滑層膜厚の比率を潤滑層密着率(ボンデッド率)と呼ぶ。ボンデッド率が高ければ高いほど、保護層に対する潤滑層の付着性能(密着性)が高いと言える。
結果を図1に示した。なお、図1のグラフの縦軸は、ボンデッド率を「BR」と表記した。
[耐磨耗性評価]
保護層の耐磨耗性を評価するためにピンオンテストを行った。ピンオンテストは、線速度0.25m/秒で回転させた磁気ディスクの半径26mmの位置に30gの荷重を点端子にかけて摺動させ、保護層が破断するまでの点端子のパスカウントを測定することにより行った。パスカウントが高いほど保護層の耐磨耗性が優れていると言える。結果を図2に示した。
[耐腐食性評価]
保護層の耐腐食性を評価するため、磁気ディスクの表面に約3%の硝酸を約100μL滴下し、約1時間室温で放置した後、当該硝酸をICP(誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)質量分析装置で分析することにより、磁気ディスク表面より溶出したCo量を検出した。溶出したCo量が少ないほど、保護層の耐腐食性が優れていると言える。結果を図3に示した。
図1〜図3の結果から明らかなように、実施例の磁気ディスクは、密着性においては比較例と同等であり、耐磨耗性、耐腐食性のいずれにおいても比較例よりも大幅に優れていることが確認できた。
つまり、保護層と潤滑層の密着性を確保するため、従来の窒素プラズマ暴露による表面処理では、窒素イオンの撃ち込みによって保護層が損傷されて耐磨耗性、耐腐食性が劣化するので、この劣化分を補うためには保護層膜厚をより厚くしなければならず、保護層の薄膜化を実現できない。
これに対し、本発明では、CVD法によって保護層の成膜中に途中から窒素等のガスを添加し、潤滑層形成側の表層中に潤滑層との密着点(活性点)を形成できることから、潤滑層との良好な密着性を確保でき、従来のような窒素プラズマ暴露処理により保護層の損傷が起こらないので、保護層をより薄膜にしても優れた耐磨耗性及び耐腐食性を確保することができる。

Claims (3)

  1. 基板上に少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、
    前記保護層は化学的気相成長(CVD)法で形成され、まず炭化水素系ガスを用いて成膜を行い、途中から炭化水素系ガスに窒素族又は酸素族に属する元素の単体もしくは化合物ガスを添加して引き続き成膜を行い、
    前記途中から炭化水素系ガスに窒素族又は酸素族に属する元素の単体もしくは化合物ガスを添加して成膜した表層の膜厚が1nm以下であり、
    X線光電子分光(XPS)法によって測定した前記表層中の炭素原子(C)に対する窒素原子(N)の存在比(N/C)が原子比で0.16以上であることを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  2. 前記保護層の膜厚が5nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスクの製造方法。
  3. 前記磁気ディスクは、起動停止機構がロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載され、5nm以下のヘッド浮上量の下で使用される磁気ディスクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク。
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