ブロックコポリマーは、異なるタイプの配列に共有結合している、同じモノマー単位の配列(「ブロック」)を含む。前記ブロックは、ジブロックでのA−B、及びA−B−Aトリブロック構造など、様々な様式で連結されていることがあり、この場合のAは、1つのブロックを表し、及びBは、異なるブロックを表す。マルチブロックコポリマーの場合、A及びBは、多数の異なる様式で連結されていることがあり、多重に繰り返されていることもある。異なるタイプの追加のブロックをさらに含むこともある。マルチブロックコポリマーは、線形マルチブロックである場合もあり、(すべてのブロックが同じ原子もしくは化学的部分に結合している)マルチブロック・スターポリマーである場合もあり、又はBブロックの一方の末端がA骨格に結合した櫛様ポリマーである場合もある。
ブロックコポリマーは、異なる化学組成の2つ又はそれ以上のポリマー分子が互いに共有結合すると作られる。多種多様なブロックコポリマー構成が可能であるが、多数のブロックコポリマーは、実質的に結晶質又はガラス質である硬質プラスチックブロックの弾性ブロックとの共有結合を含み、それによって熱可塑性エラストマーを形成する。他のブロックコポリマー、例えば、ゴム−ゴム(エラストマー−エラストマー)、ガラス−ガラス、及びガラス−結晶質ブロックコポリマーも可能であり、商業的重要性を有し得る。
ブロックコポリマーを作る1つの方法は、「リビングポリマー」の製造である。典型的なチーグラー・ナッタ重合プロセスとは異なり、リビング重合プロセスは、開始及び生長反応段階のみを必要とせず、連鎖停止副反応が本質的にない。これは、ブロックコポリマーに関して望まれる予め決められた及びよく制御された構造の合成を可能にする。「リビング」系で作られるポリマーは、狭い又は極めて狭い分子量分布を有することができ、本質的に単分散である(すなわち、分子量分布が本質的に1つである)。リビング触媒系は、ほぼ生長速度であるか又は生長速度を超える開始速度と、停止又は連鎖移動反応の不在とを特徴とする。加えて、これらの触媒系は、単一のタイプの活性部位の存在を特徴とする。重合プロセスにおいて高いブロックコポリマー収率を生じさせるには、そのような触媒が、リビング性を相当な程度に示さなければならない。
ブタジエン−イソプレン・ブロックコポリマーは、逐次的モノマー付加技術を用いるアニオン重合によって合成されている。逐次的付加の場合、モノマーのうちの一定量を触媒と接触させる。第一のそのようなモノマーが実質的な消去に至って第一ブロックを形成すると、第二モノマー又はモノマー種の一定量が導入され、反応が可能となって第二ブロックを形成する。このプロセスを、同じ又は他のアニオン重合性モノマーを使用して繰り返すことができる。しかし、プロピレン及び他のα−オレフィン、例えばプロピレン、ブテン、1−オクテンなどは、アニオン技術によって直接ブロック重合できない。
静止条件下(これは、ポリマーが外部の機械的応力も異常に急速の冷却も受けないことを意味する)で結晶化が起こる場合は常に、高結晶性モノマーで作られたホモポリマーが溶融物から結晶化し、「球晶」と呼ばれる球形構造を形成する。これらの球晶は、直径がマイクロメートルからミリメートルのサイズにわたる。この現象の説明は、Woodward, A. E., Atlas of Polymer Morphology, Hanser Publishers, New York, 1988において見つけることができる。球晶は、ラメラと呼ばれる層様晶子から成る。この説明は、Keller, A., Sawada, S. Makromol. Chem., 74, 190 (1964)及びBasset, D.C., Hodge, A.M., Olley, R.H., Proc. Roy. Soc. London, A377, p 25, 39, 61 (1981)において見つけることができる。球晶状構造は、平行ラメラのコアから始まり、続いてそれらが分岐し、そのコアから半径方向に外側へと成長する。Li, L., Chan, C, Yeung, K.L., Li, J., Ng, K., Lei, Y., Macromolecules, 34, 316 (2001)に記載されているように、無秩序ポリマー鎖がラメラ分枝間の物質を構成する。
ポリエチレン及びエチレンのランダムα−オレフィンコポリマーは、ある一定の場合、非球晶形態と強いて仮定することができる。1つの状況は、結晶化条件が静止条件でないときに、例えばインフレートフィルム又はキャストフィルム加工中に発生する。両方の場合、溶融物は、強い外力及び急速な冷却を受け、通常、これらが、A. Keller, M.J. Machin, J. Macromol. Sci. Phys., 1, 41 (1967)に記載されているような低有核又は「シシカバブ」構造を生じさせる。非球晶形態は、分子が、ラメラの形成を妨げるほど十分のα−オレフィン又は他のタイプのコモノマーを含有する場合にも、得られる。この結晶タイプの変化が発生するのは、通常はコモノマーがエチレン結晶内に充填されるには大きすぎるため、これによってコモノマー間内のエチレン単位の配列が、オール・トランス配座でのその配列の長さよりも厚い結晶を形成することができないためである。結局、ラメラは、ラメラ構造への鎖の折り畳みがもはや好適でないほど薄くならなければならないだろう。この場合、S. Bensason, J. Minick, A. Moet, S. Chum, A. Hiltner, E. Baer, J. Polym. Sci. B: Polym. Phys., 34, 1301 (1996)に記載されているように房状ミセル結晶又は束状結晶が観察される。低分子量ポリエチレン画分の研究によって、鎖が折り畳まれたラメラを形成するために必要とされる連続エチレン単位の数の知識がもたらされる。L. Mandelkern, A. Prasad, R. G. Alamo, G. M. Stack, Macromolecules, 23, 3696 (1990)に記載されているように、鎖の折り畳みには少なくとも100エチレン単位のポリマー鎖セグメントが必要とされる。このエチレン単位数未満では、低分子量画分は、伸長鎖結晶を形成し、一方、典型的な分子量のポリエチレンは、房状ミセルを形成して顆粒タイプの形態を生じさせる。
第四のタイプの固体状態ポリマー形態は、ブタジエンのバッチ式アニオン重合、その後の得られたポリマーの水素化によって作られた、α−オレフィンブロックコポリマーにおいて観察された。エチレンセグメントの結晶化温度で、非晶質ブロックは、ガラス状である場合もあり、又は弾性である場合もある。ガラス状マトリックス内での結晶化の研究には、Cohen, R.E., Cheng, P. L., Douzinas, K., Kofinas, P., Berney, C. V., Macromolecules, 23, 324 (1990)に記載されているようにスチレン−エチレン(S−E)ジブロック及びLoo, Y. L., Register, R.A., Ryan, A.J. , Dee G. T., Macromolecules 34, 8968 (2001)に記載されているようにエチレン−ビニルシクロヘキサン(E−VCH)ジブロックが用いられている。弾性マトリックス内での結晶化は、Quiram, D. J., Register, R.A., Marchand, G.R., Ryan, A. J., Macromolecules 30, 8338 (1997)に記載されているようにエチレン−(3−メチル−ブテン)ジブロックを使用して、及びLoo, Y. L., Register, R.A., Ryan, A.J. , Macromolecules 35, 2365 (2002) に記載されているようにエチレン−(スチレン−エチレン−ブテン)ジブロックを使用して研究されている。マトリックスが、ガラス状であるか、弾性であるがブロック間で高い分離度を有するとき、その固体構造は、異なるポリマーセグメントがおおよそ25nm径のミクロドメインに拘束される、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)などの非晶質ブロックコポリマーの古典的な形態を示した。これらの系のエチレンセグメントの結晶化は、結果として生ずるミクロドメインに主として拘束された。ミクロドメインは、球体の形をとる場合もあり、柱体の形をとる場合もあり、又はラメラの形をとる場合もある。ラメラ面に対して垂直のものなどのミクロドメインの最狭寸法は、これらの系では<60nmに拘束される。球体及び柱体の直径に対する拘束、ならびにラメラの厚みの<30nmへの拘束を見つけることのほうが一般的である。そのような材料をミクロフェーズ分離していると言うことができる。図1は、異なる全分子量値及び異なるΔエチレン モル%値での単分散プロピレン/エチレンジブロックコポリマーについての予測ラメラドメイン厚さを示す。この図は、ブロック中のエチレン含量に非常に大きな差があるときでさえ、50nmのドメインサイズを達成するために450,000g/molを超える分子量が必要であることを明示している。そのような高分子量では避けられない高粘度が、これらの材料の製造及び加工を非常に複雑にする。この計算には、140℃の温度、6.2の固有比及び0.78g/cm3の溶融密度でのMatsen, M.W.; Bates, F.S. Macromolecules (1996) 29, 1091の理論的結果を利用した。D.J. Lohse, W.W. Graessley, Polymer Blends Volume 1 : Formulation, ed. D. R. Paul, C.B. Bucknall, 2000の実験結果を用いて、エチレンモル%とχとの相関を決定した。
結晶質ブロックと非晶質ブロックの両方を含有するブロックコポリマーは、Rangarajan, P., Register, R.A., Fetters, L.J. Macromolecules, 26, 4640 (1993)に記載されているように、ミクロフェーズ分離型溶融物ではなく、無秩序溶融物から晶出することができ、結晶質ラメラの規則配列を生じ得る。これらの材料のラメラの厚みは、Dimarzio, E.A., Guttmann, C.M., Hoffman, J.D., Macromolecules, 13, 1194及びWhitmore, M. D., Noolandi, J., Macromolecules, 21, 1482 (1988)による理論で説明されるように両方のブロックの組成及び分子量によって制御される。エチレン系ブロックコポリマーについては、これらの形態の結晶質領域の最大厚みが、約22nmである高密度ポリエチレン結晶と同じである。
リビング重合触媒を使用して作製されるオレフィンモノマーからのブロックコポリマーは、最近、Domski, G. J.; Rose, J. M.; Coates, G. W.; Bolig, A. D.; Brookhart, M., in Prog. Polym. Sci. 32, 30-92, (2007)によって概説された。これらの単分散ブロックコポリマーの一部は、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)などの非晶質ブロックコポリマーの古典的形態も示した。これらのブロックコポリマーのうちの幾つかは、結晶質セグメント又はブロックを含有し、及びこれらの系のセグメントの結晶化は、主として得られるミクロドメインに拘束される。Ruokolainen, J., Mezzenga, R., Fredrickson, G. H., Kramer, E. J., Hustad, P. D., and Coates, G. W., in Macromolecules, 38(3); 851-86023 (2005)に記載されているように、シンジオタクチックポリプロピレン−ブロック−ポリ(エチレン−co−プロピレン)及びシンジオタクチックポリプロピレン−ブロック−ポリエチレンは、単分散ブロックコポリマーと一致するドメインサイズ(<60nm)を有するミクロフェーズ分離形態を形成する。類似して、Matsugi, T.; Matsui, S.; Kojoh, S.; Takagi, Y.; Inoue, Y.; Nakano, T.; Fujita, T.; Kashiwa, N. Macromolecules, 35(13); 4880-4887 (2002)に記載されているように、ポリエチレン−ブロック−ポリ(エチレン−co−プロピレン)は、ミクロフェーズ分離形態を有すると記載されている。Fukui Y, Murata M. Appl. Catal. A 237, 1-10 (2002)に記載されているように、狭い分子量分布(Mw/Mn=1.07−1.3)を有するアタクチックポリプロピレン−ブロック−ポリ(エチレン−co−プロピレン)は、アイソタクチックポリプロピレンとブレンドされたとき、50−100nmの間の非晶質ポリ(エチレン−co−プロピレン)のドメインを有するミクロフェーズ分離形態を形成すると主張される。嵩高いブロックコポリマーではミクロフェーズ分離は観察されない。
ミクロフェーズ分離型ジブロック及びトリブロックオレフィンブロックコポリマー(これらのブロックタイプは、両方とも非晶質である)も、リビングオレフィン重合技術を用いて作製されている。Jayaratne K. C, Keaton R. J., Henningsen D. A., Sita L.R., J. Am. Chem. Soc. 122, 10490-10491 (2000)によって記載されているような、Mn=30,900g/mol及びMw/Mn=1.10を有するトリブロックポリ(1−ヘキセン)−ブロック−ポリ(メチレン−1,3−シクロペンテン)−ブロック−ポリ(1−ヘキセン)コポリマーは、約8nm幅のサイズのポリ(メチレン−1,3−シクロペンタン)の柱体を有するミクロフェーズ分離形態を示した。Yoon, J.; Mathers, R. T.; Coates, G. W.; Thomas, E. L. Macromolecules, 39(5), 1913-1919 (2006)によって記載されているような、ポリ(メチレン−1,3−シクロペンタン−co−ビニルテトラメチレン)−ブロック−ポリ(エチレン−co−ノルボルネン)及びポリ(エチレン−co−プロピレン)−ブロック−ポリ(エチレン−co−ノルボルネン)も、ミクロフェーズ分離形態を示す。Mn=450,000g/mol及びMw/Mn=1.41を有するポリ(メチレン−1,3−シクロペンタン−co−ビニルテトラメチレン)−ブロック−ポリ(エチレン−co−ノルボルネン)は、68及び102nmの交互ドメインを有するが、Mn=576,000g/mol及びMw/Mn=1.13を有するポリ(エチレン−co−プロピレン)−ブロック−ポリ(エチレン−co−ノルボルネン)は、35−56nmのサイズのドメインを有する。これらのサンプルは、ドメインサイズ>60nmの達成が困難であることを明示する。そのような大きなドメインを達成するには非常に高い分子量が必要とされるからである。
バッチ式アニオン重合又はリビングオレフィン重合に基づくこれらの材料は、典型的にはMw/Mn<1.4、さらに典型的にはMw/Mn<1.2での非常に狭い分子量分布、及びそれらの個々のセグメントについての対応する狭い分子量分布を有するものとしてさらに特徴づけることができる。それらもジブロック及びトリブロックコポリマーの形態でしか調査されていない。ジブロック及びトリブロックコポリマーの形態のほうが、ブロック数が多い構造よりもリビングアニオン重合によって合成しやすいからである。
ミクロフェーズ分離型ブロックコポリマー形態を達成することは通常、Flory−Huggins χパラメータによって特徴づけられるような異なるブロックのセグメント間の好ましくない分散性相互作用と高い分子量とを必要とする。L. Leibler, Macromolecules 13, 1602 (1980)によって示されているように、平均ブロック分子量をNと表すと、体積で等しい量の2つのブロックを含有する典型的な狭い多分散性ジブロックは、秩序化ミクロフェーズ形態を示すためにその溶融物についての5.25より大きいχ×Nの値を必要とする。等体積の2ブロックタイプを有するトリブロックコポリマーについては、秩序を達成するためのχNのこの最小値が、約6に増加する。T. A. Kavassalis, M. D. Whitmore, Macromolecules 24, 5340 (1991)によって示されたように、分子あたりのブロック数がさらに増加すると、必要なχNも増加し、分子あたりの多数のブロックについての制限の中で漸次7.55に近づく。T.J. Hermel, S. F. Hahn, K. A. Chaffin, W.W. Gerberich, F.S. Bates, Macromolecules 36, 2190 (2003)に記載されているように、ペンタブロックなどのマルチブロックが機械的特性の実質的な改善をもたらすことは示されているが、秩序化溶融形態の必要条件を満たすにはこれらのマルチブロックの総分子量が大きくなければならない。ポリマーを加工するためのエネルギー要求量は分子量に伴って急増するので、そのようなマルチブロックの商業的機会は制限され得る。
しかしながら、S. W. Sides, G.H. Fredrickson, J. Chem. Phys. 121, 4974 (2004)及びD.M. Cooke, A. Shi, Macromolecules 39, 6661 (2006)の理論的研究により、一方又は両方のブロックタイプの多分散性を増加させるにつれて、秩序化形態についての最小χNが減少することが示されている。平均場限界のマルチブロックに関してはI.I. Potemkin, S. V. Panyukov, Phys. Rev. E. 57, 6902 (1998)に示されているように、両方のブロックタイプが、長さの最確分布を有する場合、すなわち重量平均ブロック分子量の数平均ブロック分子量に対する比率が2である場合、秩序化形態を達成するためのχN(この場合のNは数平均ブロック長である)の最小値は、等体積の2ブロックタイプについては2である。χNにおけるこの低いほうの値は、溶融秩序化マルチブロックについての総分子量の実質的な減少及び、これによる加工費用の低下へと繋がる。
Potemkin、Panyukov、またMatsen, M.W., Phys. Rev. Lett. 99, 148304 (2007)によってなされたもう1つの重要な予測は、無秩序から秩序への移行を含めて、形態のそれぞれの移行が、単分散ブロックコポリマーの場合のように唐突に起こらないということである。その代わり各境界線に沿って、共存する相の領域が存在する。秩序−秩序境界線に沿って、分子の全組成が、相間でのその分配方法を決め得る。例えば、柱状相とラメラ相の間の境界に沿って、より対称的なジブロックを有し得る多分散ジブロックはラメラを形成するが、非対照のものは柱体を形成する傾向がある。秩序−無秩序境界の付近では、より長いブロックを有する分子は秩序化形態を形成し得るが、より短いブロックを有するものは、無秩序のままである。場合によっては、これらの無秩序分子は、異なるマクロフェーズを形成することがある。あるいは、これらの分子の位置は、ホモポリマーをブロックコポリマーとブレンドすると発生するドメイン膨潤に類似した様式で秩序化ドメインの中央に向けられ得る(Matsen, M.W., Macromolecules 28, 5765 (1995))。
より低いχN値でミクロフェーズ分離を達成することに加えて、ブロック長多分散性は、秩序構造のドメインサイズに対して顕著な効果を有するという仮説も立てられた。単分散ブロックコポリマーにおけるミクロドメインのサイズは概ね、ブロックの平均分子量Nの関数であり、代表的にはお約20〜50nmである。しかし、多分散性は、等価の単分散ブロックコポリマーと比較して、より大きなドメインサイズをもたらすと予測さている(Cooke, D. M.; Shi, A. C. Macromolecules (2006), 39, 6661-6671; Matsen, M. W., Eur. Phys. J. E (2006), 21, 199-207)。相挙動に対する多分散性の効果も実験的に実証されている。Matsushita及び共同研究者は、一連の単分散ポリスチレン−b−ポリ(2−ビニルピリジン)をブレンドすることにより多分散性を概算した(Noro, A.; Cho, D.; Takano, A.; Matsushita, Y. Macromolecules (20050, 38, 4371-4376)。Register及び共同研究者は、制御されたラジカル重合技術を用いて合成した一連のポリスチレン−b−ポリ(アクリル酸)において秩序化形態を見つけた(Bendejacq, D.; Ponsinet, V.; Joanicot, M.; Loo, Y. L.; Register, R. A. Macromolecules 2002, 35, 6645-6649)。ごく最近では、Lynd及びHillmyer(Lynd, N. A.; Hillmyer, M. A. Macromolecules 2005, 38, 8803-8810)が、ポリ(DL−ラクチド)ブロックに多分散性を導入する合成技術を用いてポリ(DL−ラクチド)のブロックで伸長した鎖である、一連の単分散ポリ(エチレン−alt−プロピレン)を評価した。これらの例のすべてにおいて、多分散性は、ドメイン間隔増加をもたらした。これは、長いブロックのほうがドメインサイズの決定に大きな役割を有することを示唆する。場合によっては、多分散性は、秩序化形態のタイプの変化も生じさせた。多分散ブロックコポリマーの合成技術の範囲は極めて限られており、高いブロックコポリマー画分を維持しながら多数のブロックの多分散性を導入することは特に難しい。
一般定義
「ポリマー」は、同じタイプのモノマーであるにせよ、異なるタイプのモノマーであるにせよ、モノマーを重合することによって作製された高分子化合物を意味する。一般用語「ポリマー」は、用語「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」ならびに「共重合体」を包含する。より具体的には、用語「ポリエチレン」は、エチレンのホモポリマー及びエチレンと1つ又はそれ以上のC3-8α−オレフィンとのコポリマーを含む。
用語「結晶質」は、用いられている場合、示差走査熱分析(DSC)又は等価の技術によって測定したときに一次転移又は結晶融点(Tm)を有するポリマーを指す。この用語は、用語「半結晶質」と同義的に用いることができる。結晶は、最密充填ラメラ結晶、球晶のアームを構成するラメラの積層体として存在してもよいし、又は孤立したラメラもしくは房状ミセル結晶として存在してもよい。用語「非晶質」は、示差走査熱分析(DSC)又は等価の技術によって測定したときに結晶融点がないポリマーを指す。用語「エラストマー」は、0℃未満、さらに好ましくは−15℃未満、最も好ましくは−25℃未満のTgを有するポリマー又はポリマーセグメントを指す。
「共重合体」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって作製されたポリマーを意味する。一般用語「共重合体」は、用語「コポリマー」(これは、2つの異なるモノマーから作製されたポリマーを指すために通常は用いられる)ならびに用語「ターポリマー」(これは、3つの異なるタイプのモノマーから作製されたポリマーを指すために通常は用いられる)を含む。4つ又はそれ以上のタイプのモノマーを重合することによって作られたポリマーも包含する。
用語「プロピレン/α−オレフィン共重合体」は、プロピレンと2個又は4個又はそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンとを含むポリマーを一般に指す。好ましくは、プロピレンは、そのポリマー全体の大部分のモル分率を構成する、すなわち、プロピレンは、そのポリマー全体の少なくとも約50モルパーセントを構成する。さらに好ましくは、プロピレンは、少なくとも約60モルパーセント、少なくとも約70モルパーセント、又は少なくとも約80モルパーセントを構成し、そのポリマー全体の実質的な残部は、好ましくは3個又はそれ以上の炭素原子を有するα−オレフィンである少なくとも1つの他のコモノマーを含む。多くのプロピレン/オクテンコポリマーについて、好ましい組成は、そのポリマー全体の約75モルパーセントより大きいプロピレン含量と、そのポリマー全体の約5から約25、好ましくは約10から約20モルパーセント、及びさらに好ましくはそのポリマー全体の約15から約20モルパーセントのオクテン含量とを含む。多くのプロピレン/ブテンコポリマーについて、好ましい組成は、そのポリマー全体の約60モルパーセントより大きいプロピレン含量と、そのポリマー全体の約10から約40、好ましくは約20から約35モルパーセント、及びさらに好ましくはそのポリマー全体の約25から約30モルパーセントのブテン含量とを含む。多くのプロピレン/エチレンコポリマーについて、好ましい組成は、そのポリマー全体の約40モルパーセントより大きいプロピレン含量と、そのポリマー全体の約15から約60、好ましくは約25から約50モルパーセント、及びさらに好ましくはそのポリマー全体の約35から約45モルパーセントのエチレン含量とを含む。一部の実施形態において、プロピレン/α−オレフィン共重合体は、低収率で又は少量で製造されたものあるいは化学プロセスの副生成物として製造されたものは含まない。プロピレン/α−オレフィン共重合体を1つ又はそれ以上のポリマーとブレンドできるが、製造したままのプロピレン/α−オレフィン共重合体は、実質的に純粋であり、多くの場合、重合プロセスの反応生成物の主成分を含む。
用語「ブロックコポリマー」又は「セグメント化コポリマー」は、好ましくは線形に連結されている、2つ又はそれ以上の化学的に異なる領域又はセグメント(「ブロック」とも呼ばれる)を含むポリマー、すなわち重合されたエチレン官能基に関して、ペンダント状でもグラフト状でもなく末端対末端で連結されている化学的に区別される単位を含むポリマーを指す。
本発明の実施形態は、プロピレン/α−オレフィンブロック共重合体(本明細書では、以後、「本発明のポリマー」、「プロピレン/α−オレフィン共重合体」、又はそれらの変型)の新規クラスを提供する。前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、化学的又は物理的特性が異なる2つ又はそれ以上の重合したモノマー単位のブロック又はセグメントを特徴とする、プロピレン及び1つ又はそれ以上の共重合性α−オレフィンコモノマーとを重合形態にて含み、この場合のポリマーは、メソフェーズ分離している。すなわち、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、ブロック共重合体である。用語「共重合体」及び「コポリマー」は、本明細書では同義的に用いられる。
ランダムコポリマーと比較して、本発明のポリマーは、ブロック又はセグメント間の化学的特性(特に結晶化度)の十分な差、及び真のブロックコポリマーの望ましい特性の1つ又はそれ以上(例えば熱可塑性/弾性特性)を達成するためにそれぞれのブロックへの十分なブロック長を有しながら、同時に、従来のオレフィン重合プロセス(特に触媒量の重合触媒を用いる連続溶液重合プロセス)での作製に適用できる。好ましい実施形態において、前記ブロックは、それらに組み込まれるコモノマーの量もしくはタイプ、その密度、結晶化度の量、そのような組成のポリマーに寄与し得る晶子サイズ、タクチシティーのタイプもしくは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、レジオ規則性もしくはレジオ不規則性、長鎖分岐もしくは超分岐をはじめとする分岐の量、均質性、又は任意の他の化学的もしくは物理的特性が異なる。前記ブロックコポリマーは、それらのコポリマーの独特な製造プロセスに起因する、総多分散度指数(PDIもしくはMw/Mn)とそれぞれのブロックのPDIの両方の独特な分布、ブロック長分布、及び/又はブロック数分布を特徴とする。
逐次的モノマー付加、流動性触媒(fluxional catalysts)、又はアニオン重合技術によって製造されたコポリマーをはじめとする先行技術のブロックコポリマーと比較して、本発明のコポリマーは、2つ又は3つ、好ましくは2つの異なるブロック組成と共に、ポリマー多分散度(PDI又はMw/Mn)及びブロック長分布の独特の分布を特徴とする。好ましい実施形態において、これは、異なる重合条件下で作動する2つ又はそれ以上の重合反応装置又はゾーンにおける1つ又はそれ以上の可逆的移動剤と高活性金属錯体系重合触媒との併用の効果に起因する。より具体的には、連続プロセスで製造した場合にジブロックコポリマーは望ましくは、約1.4から約8、好ましくは約1.4から約3.5、さらに好ましくは約1.5から約2.5、及び最も好ましくは約1.6から約2.5又は約1.6から約2.1のPDIを有する。
本発明のブロック共重合体のそれぞれのブロックは、望ましくは、Poisson分布ではなくSchulz−Flory分布に合うPDIを有する。本重合プロセスの使用は、結果として、そのプロセスにおいて用いられる反応装置又は別の反応ゾーンの数に等しいポリマーあたりの区別可能ブロック数と、ブロックサイズの多分散分布とを有する生成物を生じさせる。この結果、改善された及び区別可能な物理的特性を有するポリマー生成物が形成される。さらに、前述の新規生成物を、可逆的連鎖移動剤(CSA)へ連鎖移動を伴わない早期又は計画的連鎖停止に起因して、付随重合プロセスの1つ又はそれ以上において形成されるランダムコポリマー又はホモポリマーの存在下で形成することができる。この様式で、インサイチューで作製されたゴム系耐衝撃性改質剤又は相溶化剤を含有するポリマーブレンドを、連続して作動する2つ又はそれ以上の重合反応装置又はゾーンにおいて作製することができる。
本発明のプロセスの1つの実施形態において、CSAをそれぞれの重合反応装置又はゾーンに1回添加してもよいし、1回より多く(断続的に)添加してもよいし、連続的に添加してもよいこと(好ましくは、最初のもの)は、当業者には容易に理解することができる。第一反応装置もしくはゾーンから吐き出される直前の地点でも、又はそれぞれの反応装置もしくはゾーンを接続する介在導管もしくはコンダクターの中でもCSAを添加できるが、重合を開始する前に、重合を開始すると同時に、又は第一反応装置において重合を開始するときの少なくとも有意な時間部分の間に、反応混合物にCSAを添加するほうが好ましい。CSAと反応混合物の入念な混合は、動的もしくは静的混合装置によって又は反応混合物を混合もしくは移送する際に用いられる任意の攪拌もしくはポンプ装置の使用によって行うことができる。
ブロック長が長いもののほうが、ドメインを膨潤させることができることと併せて、ドメインサイズの決定に大きな役割を有するという傾向が、典型的な単分散ブロックコポリマーにおいて観察されるものよりはるかに大きいドメインサイズの可能性を生じさせる。一部の分子を秩序化し、他の分子を無秩序化することができることが、膨潤ドメインの形成の一因となる。
本明細書において用いる場合、「メソフェーズ分離」は、ポリマーブロックが局所的に分離して秩序ドメインを形成するプロセスを意味する。これらの系におけるプロピレンセグメントの結晶化は、結果として生ずるメソドメインに主として拘束され、そのような系を「メソフェーズ分離している」と呼ぶことができる。これらのメソドメインは、球形の形態、柱形の形態、ラメラの形態、又はブロックコポリマーについて公知である他の形態をとり得る。
本発明のプロピレン/α−オレフィンブロック共重合体は、χN(この場合のNは、数平均ブロック長である)の値を有することができ、ならびに好ましくは、約2から約20の範囲、好ましくは約2.5から約15の範囲、及びさらに好ましくは約3から約10の範囲である。
以下の説明において、本明細書に開示するすべての数字は、「約」又は「近似的」という語がそれらと共に用いられているかどうかに関係なく、近似的値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、又は時として10から20パーセント変動し得る。下限RL及び上限RUを有する数値範囲が開示されているときは必ず、この範囲内に入る任意の数値を具体的に開示する。詳細には、この範囲内の任意の数を具体的に開示する:R=RL+k*(RU−RL)(式中、kは、1パーセントから1パーセント刻みで100パーセントまでの変数である。すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、...、50パーセント、51パーセント、52パーセント、...、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、又は100パーセントである)。さらに、上で定義したような2つのR数によって定義される任意の数値範囲も具体的に開示する。
一部の実施形態において、前記ブロックコポリマーは、次の式:
A−B 又は A−B−A
によって表すことができ、これらの式中の「A」はハードブロック又はハードセグメントを表し、「B」はソフトブロック又はソフトセグメントを表す。好ましくは、AとBとは、分岐状でも星状でもなく、線状に連結されている。
本発明の他の実施形態は、次の式:
A−[(BA)n] 又は A−[(BA)nB]
によって表すことができ、これらの式中のnは、少なくとも1、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上であり、「A」はハードブロック又はハードセグメントを表し、「B」はソフトブロック又はソフトセグメントを表す。好ましくは、AとBとは、分岐状でも星状でもなく、線状に連結されている。
本発明のさらなる実施形態は、次の式:
A−(AB)n−A 又は A−(AB)n−B 又は B−(AB)n−B
によって表すことができ、これらの式中のnは、少なくとも1、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上であり、「A」はハードブロック又はハードセグメントを表し、「B」はソフトブロック又はソフトセグメントを表す。好ましくは、AとBとは、分岐状でも星状でもなく、線状に連結されている。
他の実施形態において、前記ブロックコポリマーは、通常、第三のタイプのブロックを有さない。さらに他の実施形態において、ブロックA及びブロックBのそれぞれは、そのブロック内にランダムに分布したモノマー又はコモノマーを有する。言い換えると、ブロックAも、ブロックBも、そのブロックの残部とは異なる組成を有する別組成の2つ又はそれ以上のセグメント(又はサブ・ブロック)、例えばチップセグメントを含まない。
他の実施形態において、前記ブロックコポリマーは、第三のタイプのブロック又はセグメントを有し、次の式:
A−B−C
によって表すことができ、この式中の「A」はハードブロック又はハードセグメントを表し、「B」はソフトブロック又はソフトセグメントを表し、「C」はハード又はソフトのブロック又はセグメントを表す。好ましくは、AとBとCとは、分岐状でも星状でもなく、線状に連結されている。
本発明の他の実施形態は、次の式:
A−(BC)n又はA−(BC)nB又はA−(CB)n又はA−(CB)n−C
によって表すことができ、これらの式中のnは、少なくとも1、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又はそれ以上であり、「A」はハードブロック又はハードセグメントを表し、「B」はソフトブロック又はソフトセグメントを表し、「C」はハード又はソフトブロック又はセグメントいずれかを表す。好ましくは、AとBとCとは、分岐状でも星状でもなく、線状に連結されている。
本発明のさらなる実施形態は、次の式:
A−(BC)n−A 又は A−(BC)n−B 又は A−(BC)n−C 又は
B−(AC)n−A 又は B−(AC)n−B 又は B−(AC)n−C 又は
C−(AB)n−A 又は C−(AB)n−B 又は C−(AB)n−C
によって表され、これらの式中のnは、少なくとも1、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上であり、「A」はハードブロック又はハードセグメントを表し、「B」はソフトブロック又はソフトセグメントを表す。好ましくは、AとBは、分岐状又は星状にではなく、線状に連結されている。
「ハード」ブロック又はセグメントは、プロピレンが約80モルパーセントより多い、及び好ましくは88モルパーセントより多い量で存在する、重合された単位の半結晶質ブロックを指す。言い換えると、ハードセグメント内のコモノマー含量は、20モルパーセント未満、及び好ましくは12重量パーセント未満である。一部の実施形態において、ハードセグメントは、すべて又は実質的にすべてのプロピレンから成る。一方、「ソフト」ブロック又はセグメントは、コモノマー含量が20モルパーセントより大きく、好ましくは25モルパーセントより大きく、且つ100モルパーセント以下である、重合された単位のブロックを指す。一部の実施形態において、前記ソフトセグメント内のコモノマー含量は、20モルパーセントより大きくてもよいし、25モルパーセントより大きくてもよいし、30モルパーセントより大きくてもよいし、35モルパーセントより大きくてもよいし、40モルパーセントより大きくてもよいし、45モルパーセントより大きくてもよいし、50モルパーセントより大きくてもよいし、60モルパーセントより大きくてもよい。
好ましい実施形態において、本発明のポリマーは、ブロック長の最確分布を有する。本発明の好ましいポリマーは、2又は3つのブロック又はセグメントを含有するブロック共重合体である。3つ又はそれ以上のセグメント(すなわち、区別可能なブロックによって隔てられたブロック)を含有するポリマーにおいて、それぞれのブロックは、同じであってもよいし、化学的に異なってもよいし、そして一般には特性分布を特徴としてもよい。
いずれの特定の理論による拘束も受けることを望まないが、結果として生ずるポリマーの下記の数学的処理は、本発明のポリマーにあてはまると考えられる理論上導き出されるパラメータに基づくものであり、特に成長ポリマーが曝露される異なる重合条件を有する直列接続された2つ又はそれ以上の定常状態連続反応装置又はゾーンにおいて、各反応装置又はゾーンにおいて形成されるポリマーのブロック長が、下記のやり方で導き出される最確分布に合致することを立証する。この場合、p
iは、触媒iからのブロック配列に関する反応装置内のポリマー生長反応の確率である。前記理論的処理は、当分野において公知の標準的な仮定及び方法に基づき、そして分子構築に対する重合動力学の影響の予測に用いられ、鎖又はブロック長による影響を受けない質量作用反応速度式の使用、及び平均反応装置滞留時間と比較してポリマー鎖生長が非常に短時間で完了されることの仮定を含む。そのような方法は、以前に、W. H. Ray, J. Macromol. Sci., Rev. Macromol. Chem., C8, 1 (1972)及びA. E. Hamielec and J. F. MacGregor, "Polymer Reaction Engineering", K.H. Reichert and W. Geisler, Eds., Hanser, Munich, 1983に開示されている。さらに、所与の反応装置における可逆的連鎖移動反応のそれぞれの発生は単一ポリマーブロックの形成をもたらす結果となるが、一方で末端に可逆的連鎖移動剤を有するポリマーを異なる反応装置又はゾーンへ移動させて異なる重合条件に曝すことは異なるブロックの形成をもたらす結果となると考えられる。触媒iについて、反応装置において製造される長さnの配列の画分は、X
i[n]によって与えられ、この場合のnは、そのブロックのモノマー単位の総数を表す1から無限大までの整数である。
1つより多くの触媒が、反応装置又はゾーン内に存在する場合、それぞれの触媒は、その反応装置又はゾーンにおいて作られるポリマーについて固有の平均ブロック長及び分布をもたらす生長反応の確率(p
i)を有する。最も好ましい実施形態において、生長反応の確率は、それぞれの触媒i={1、2...}について、
(式中、
Rp[i]=触媒iによる局所的モノマー消費速度(モル/L/時間)、
Rt[i]=触媒iについての連鎖移動及び停止の全速度(モル/L/時間)、及び
Rs[i]=休止ポリマーに関する局所的な可逆的連鎖移動速度(モル/L/時間))
と定義される。
所与の反応装置について、ポリマー生長反応速度Rp[i]は、次のように、全モノマー濃度[M]を乗じた、触媒iの局所濃度[Ci]を乗じた見かけの速度定数、
を用いて定義される:
連鎖移動、停止及び可逆的移動速度は、水素(H2)への連鎖移動、β水素除去、及び可逆的連鎖移動剤(CSA)への連鎖移動の関数として決定される。量[H2]及び[CSA]は、モル濃度であり、それぞれの下付きk値は、反応装置又はゾーンについての速度定数である:
Rt[i]=kH2i[H2][Ci]+kβi[Ci]+kai[CSA][Ci]
休止ポリマー鎖は、ポリマー部分がCSAに移動すると作られ、反応するすべてのCSA部分は、休止ポリマー鎖とそれぞれ対になると考えられる。触媒iでの休止ポリマーの可逆的連鎖移動速度を次のとおり与える(式中の[CSAf]は、CSAの供給濃度であり、及び量([CSAf]−[CSA])は、休止ポリマー鎖の濃度を表す):
Rs[i]=kai[Ci]([CSAf]−[CSA])
上述の理論的処理の結果として、得られるブロックコポリマーのそれぞれのブロックについての総ブロック長分布は、触媒iについての局所的ポリマー生産速度によって重み付けられるXi[n]によって先に示したブロック長分布の合計であると認めることができる。これは、少なくとも2つの異なるポリマー形成条件下で作られたポリマーが、理想的な場合、最確ブロック長分布に基づくブロック長をそれぞれが有する少なくとも2つの区別可能なブロック又はセグメントを有することを意味する。
前記ポリマーは、単一のポリマーを形成するように連結されている2つ又はそれ以上のブロック又はセグメントから構成され、それぞれのブロック又はセグメントは、隣接ブロック又はセグメントと化学的に又は物理的に(分子量又は分子量分布以外により)区別可能であるため、得られるブロックコポリマーは、同じ全体的な化学組成のランダムコポリマーと比較して固有の物理的及び化学的特性を有する。
本発明は、コポリマー、特に、プロピレン及び共重合性コモノマーを重合した形態で含むようなコポリマーを含む組成物も提供し、前記コポリマーは、異なる化学的又は物理的特性を含む2つ又はそれ以上の分子内領域、特に、区別されるコモノマー組み込み領域を含み、この場合のプロピレン/α−オレフィンブロック共重合体は、メソフェーズ分離している。非常に好ましくは、前記コポリマーは、2.8未満の、好ましくは約1.4から約2.8の範囲の分子量分布Mw/Mnを有する。
本発明は、異なる化学的又は物理的特性を含む2つ又はそれ以上の実質的に均質な分子内セグメント又はブロックを含む、少なくとも1つのプロピレン/α−オレフィンブロック共重合体を含む組成物も提供し、前記分子内セグメントは、最確分子量分布を有することを特徴とし、この場合のプロピレン/α−オレフィンブロック共重合体は、約1.4から約2.8の範囲の分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とし、かつ:
(a)少なくとも1つの融点Tm(摂氏度で)と密度d(グラム/立方センチメートルで)を有し、ここでのTm及びdの数値は、関係:
Tm>−6553.3+13735(d)−7051.7(d)2
に対応するか、又は
(b)プロピレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定される300パーセントひずみ及び1サイクルでの弾性回復率Re(パーセントで)を特徴とし、ならびに密度、d(グラム/立方センチメートルで)を有し、この場合のRe及びdの数値は、プロピレン/α−オレフィン共重合体に架橋相が実質的にないとき、次の関係:
Re>1481−1629(d)
を満たすか;又は
(c)TREFを用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、前記画分がこの同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムプロピレン共重合体画分のものより少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有することが前記画分の特徴であり、この場合、前記比較対象となるランダムプロピレン共重合体が、同じコモノマー(単数又は複数)を有し、かつそのプロピレン/α−オレフィン共重合体のものから10パーセント以内のメルトインデックス、密度及びモルコモノマー含量(ポリマー全体に基づく)を有するか;又は
(d)25℃での貯蔵弾性率、G’(25℃)、と100℃での貯蔵弾性率、G’(100℃)、とを有し、この場合、G’(25℃)対G’(100℃)の比は、約1:1から約9:1であるか;又は
(e)ゼロより大きく約1.0以下である平均ブロックインデックスを特徴とし;かつこの場合のプロピレン/α−オレフィンブロック共重合体は、メソフェーズ分離される。
さらに、本発明は、プロピレン/α−オレフィンブロックコポリマーであって、30,000g/molより大きい平均分子量と、約1.4〜約2.8の範囲の分子量分布Mw/Mnと、約20モルパーセントより大きい分子内ブロック間のα−オレフィン含量モルパーセントの差とを特徴とする前記コポリマーを提供する。
本発明は、上で説明したプロピレン/α−オレフィンブロックコポリマーから作られる物品も提供する。
非常に望ましくは、本明細書におけるポリマー生成物は、ブロックサイズの最確分布を特徴とする2つの区別可能なブロック又はセグメントを含有するポリマーを少なくともある程度含む。2反応装置又は2ゾーンプロセスの第二反応装置又はゾーンから回収されるポリマーを停止させてジブロックコポリマーを形成し、多官能性カップリング剤の使用によりカップリングさせて、デンドリマーを例とするトリブロックもしくはマルチブロックコポリマーを形成してもよいし、又は公知の技術に従って末端の可逆的連鎖移動剤をビニル−、ヒドロキシル−、アミン−、シラン−、カルボン酸−、カルボン酸エステル、アイオノマーもしくは他の官能基に転化させることにより官能化するしてもよい。
本発明のさらにもう1つの実施形態において、上述のプロセスにおいて用いられる可逆的移動剤は、ポリマー交換を受ける多数の部位を有し、すなわち多数の中心を有し、特に2つの中心を有し、それに起因して、直列に接続された2つの反応装置又はゾーンでの逐次的重合を受けると3つ又はそれ以上の別個のポリマーセグメントを含有する本発明のコポリマーを含むポリマー生成物を一意的に形成する。
本発明の尚さらなる実施形態において、(1)有機又は無機ポリマー、好ましくはエチレンのもしくはプロピレンのホモポリマー及び/又はエチレンもしくはプロピレンと1つもしくはそれ以上の共重合性コモノマーとのコポリマーと、(2)本発明による又は本発明のプロセスに従って作製したブロックコポリマーとを含むポリマー混合物を提供する。望ましい実施形態において、成分(1)は、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレンを含むマトリックスポリマーであり、及び成分(2)は、区別されるコモノマー組み込みの2つ又は3つの別領域を含有する本発明による弾性ブロックコポリマーである。好ましい実施形態において、成分(2)は、成分(1)と(2)を配合している間に形成されるマトリックスポリマーの吸蔵物を含む。
本発明のブロック共重合体は、低い分子量(Mw<200,000g/mol)を有するにもかかわらず、先行技術の単分散ブロックコポリマーからのものより大きいドメイン、すなわち最小寸法で60nmより大きいドメインを有するメソフェーズ分離構造を形成する。
ブロック共重合体の分子量を変えること又はコモノマー含量の差を変化させることによってドメインのサイズを制御することができることは、当業者には理解されるであろう。ドメインのサイズは、別の成分をそのバルクコポリマーとをブレンドすることによっても変更することができる。適するブレンド成分としては、それらのコポリマーのそれぞれのブロック又はセグメントの1つの類似組成を有するホモポリマー又はコポリマー、油(例えば鉱物油)、溶剤(例えばトルエンもしくはヘキサン)が挙げられる。
ジブロック生成物を好ましく形成するものとして上述のプロセスを説明したが、本発明の追加の目的は、二官能性又は多官能性カップリング剤を使用する、第二反応装置又はゾーン(又は任意の後続の反応装置もしくはゾーン)から出る可逆的連鎖移動剤を末端に有するポリマーのカップリングによる、超分岐型又はデンドリマー型コポリマーをはじめとする、マルチブロックコポリマーの作製である。加えて、2つより多くの反応装置を用いる場合、その生成物は、1つより多くの反応装置でのリビング重合によって作られたものに似ているが、本ポリマーのそれぞれのブロックが分子量及び組成の最確分布を有する点で異なる。詳細には、本ポリマーの多分散度は、一般に2.4未満であり、2基の反応装置で作られる生成物についてはほぼ1.5であり得る。
Mw/Mnの理論限界は、J. Appl. Poly. Sci., 92, 539-542 (2004)の計算に従って、一般に(1+1/n)の値に等しい(式中のnは、そのポリマーの生産に用いた反応装置の数である)。直列の2基の反応装置の場合、Mw/Mnの理論限界は、Macromolecules 40, 7061-7064 (2007)に記載されている計算に従って、2*(1−f1*f2)の値に等しい(式中、f1及びf2は、2つのブロックを含むポリマーの質量分率である)。
一般に、本発明のポリマーのカップリングの不在下でのブロックの平均数は、用いられる反応装置の数に等しいであろう。本発明の重合法の生成物が、通常、その重合の条件下で用いられる特定の可逆的移動剤の効率に依存する量の従来のポリマーを含むことは、当業者には理解されるであろう。
本発明のプロピレン/α−オレフィン共重合体は、メソフェーズ分離を特徴とし得る。ドメインサイズは、最小寸法によって測定して、概して約40nmから約300nmの範囲、好ましくは約50nmから約250nmの範囲、及びさらに好ましくは約60nmから約200nmの範囲である。加えて、ドメインは、約60nmより大きい、約100nmより大きい、及び約150nmより大きい最小寸法を有し得る。ドメインを柱形、球形、ラメラ、又はメソフェーズ分離型ポリマーについての他の公知の形態として特徴付けることができる。メソフェーズ分離型ポリマーは、オレフィンブロックコポリマーを含み、この場合、ソフトセグメント及びハードセグメントを含み得るその異なる分子内ブロック内のコモノマーの量は、そのブロックコポリマーが溶融状態でメソフェーズ分離を被るような量である。コモノマーの必要量は、モルパーセントで測定することができ、それぞれのコモノマーによって変わる。任意の所望のコモノマーについて計算を行って、メソフェーズ分離を達成するために必要な量を決定することができる。これらの多分散ブロックコポリマーにおいてメソフェーズ分離を達成するための、χNと表される最低不相溶性レベルは、χN=2.0であると予測される(I. I. Potemkin, S.V. Panyukov, Phys. Rev. E. 57, 6902 (1998))。通常はゆらぎが市販のブロックコポリマーにおける秩序−無秩序転移のχNをわずかに高くさせることを認識して、値χN=2.34を下記の計算における最低値として用いた。D. J. Lohse, W.W. Graessley, Polymer Blends Volume 1: Formulation, ed. D. R. Paul, C.B. Bucknall, 2000のアプローチに従って、χNをχ/νとMb/ρの積に変換することができる(この場合、νは、基準体積であり、Mbは、数平均ブロック分子量であり、及びρは、溶融密度である)。溶融密度は、0.78g/cm3であるとする。コモノマーがブテン又はエチレンである場合のχ/νは、温度として130Cを用い、その後、Lohse及びGraessleyによる参考文献の表8.1に提供されているデータの内挿又は外挿を行うことによって決定する。それぞれのコモノマータイプについて、コモノマーモルパーセントで線形回帰を行う。オクテンがコモノマーである場合には、Reichart, G. C. et al, Macromolecules (1998), 31, 7886のデータを用いて、同じ手順を行う。Mn(g/molの単位での全分子の数平均分子量)を用いて、下記の方程式により、メゾフェース分離を達成するためのブロック間の最小コモノマー差が説明される:
Δ(パーセント コモノマー)≧A/(Mn)0.5
オクテンがコモノマーであるとき、Aは、約8915に等しい又はそれより大きい、好ましくは、約9808に等しい又はそれより大きい、さらに好ましくは、約10250に等しい又はそれより大きい、ならびに約10690に等しい又はそれより大きいこともある、約 に等しい又はそれより大きいこともある、約11145に等しい又はそれより大きいこともある、及び11580に等しい又はそれより大きいこともある。ブテンがコモノマーであるとき、Aは、約28600に等しい又はそれより大きい、好ましくは、約31460に等しい又はそれより大きい、さらに好ましくは、約32895に等しい又はそれより大きい、ならびに約34300に等しい又はそれより大きいこともある、約 に等しい又はそれより大きいこともある、約35760に等しい又はそれより大きいこともある、及び約37180に等しい又はそれより大きいこともある。エチレンがコモノマーであるとき、Aは、約9187に等しい又はそれより大きい、好ましくは、約10100に等しい又はそれより大きい、さらに好ましくは、約10560に等しい又はそれより大きい、ならびに約11010に等しい又はそれより大きいこともある、約11480に等しい又はそれより大きいこともある及び約11935に等しい又はそれより大きいこともある。Mn=268000g/mol及びコモノマーが1−オクテンであるとき、ハードセグメントとソフトセグメントとのオクテンモルパーセントの差、Δオクテンは、約17.2モルパーセントに等しい又はそれより大きい、好ましくは、約18.9モルパーセントに等しい又はそれより大きい、さらに好ましくは、約19.7モルパーセントに等しい又はそれより大きい、ならびに約20.6モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある、約21.5モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある、及び約22.3モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある。加えて、前記Δオクテン値は、約17.2モルパーセントから約53.0モルパーセントの範囲、好ましくは、約20モルパーセントから約50.0モルパーセントの範囲、及びさらに好ましくは、約22モルパーセントから約45モルパーセントの範囲であり得る。Mn=268,000g/mol及びコモノマーが1−ブテンであるとき、ハードセグメントとソフトセグメントとのブテンモルパーセントの差、Δブテンは、約55.2モルパーセントに等しい又はそれより大きい、好ましくは、約60.7モルパーセントに等しい又はそれより大きい、さらに好ましくは、約63.5モルパーセントに等しい又はそれより大きい、ならびに約66.2モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある、約69.0モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある、及び約71.8モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある。加えて、前記Δブテン値は、約60.7モルパーセントから約90モルパーセントの範囲、好ましくは、約66モルパーセントから約85モルパーセント、及びさらに好ましくは、約70モルパーセントから約80モルパーセントの範囲であり得る。Mn=268,000g/mol及びコモノマーがエチレンであるとき、ハードセグメントとソフトセグメントとのエチレンモルパーセントの差、Δエチレンは、約17.7モルパーセントに等しい又はそれより大きい、好ましくは、約19.5モルパーセントに等しい又はそれより大きい、さらに好ましくは、約20.4モルパーセントに等しい又はそれより大きい、ならびに約21.2モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある、約22.1モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある、及び約23.0モルパーセントに等しい又はそれより大きいこともある。加えて、前記Δエチレン値は、約17.7モルパーセントから約50モルパーセントの範囲、好ましくは、約21モルパーセントから約40モルパーセント、及びさらに好ましくは、約23モルパーセントから約30モルパーセントの範囲であり得る。
前記メソフェーズ分離型プロピレン/α−オレフィン共重合体は、光子結晶(光子の運動に影響を及ぼすように設計された周期的光学構造)の特徴を有し得る。これらのメソフェーズ分離型プロピレン/α−オレフィン共重合体の一定の組成物は、目では真珠光沢のように見える。場合によっては、前記メソフェーズ分離型プロピレン/α−オレフィン共重合体のフィルムは、200−1200nm間の範囲の波長の帯域全域の光を反射する。例えば、一定のフィルムは、反射光によって青色に見えるが、透過光によって黄色に見える。他の組成物は、200−400nmの紫外(UV)範囲の光を反射するが、他のものは、おおよそ750nm−1000nmの赤外(IR)範囲の光を反射する。
前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、ゼロより大きく且つ約1.0以下である平均ブロック指数ABIと約1.4より大きい分子量分布M
w/M
nとを特徴とする。前記平均ブロック指数ABIは、5℃刻みで(しかし、1℃、2℃、10℃などの他の温度増分も用いることができる)20℃から110℃までの分取TREF(すなわち、昇温溶出分別法によるポリマーの分画)において得られたポリマー画分のそれぞれについてのブロック指数(「BI」)の重量平均である:
(式中、BI
iは、分取TREFにおいて得られた本発明のプロピレン/α−オレフィン共重合体のi番目の画分についてのブロック指数であり、及びw
iは、そのi番目の画分の重量百分率である)。同様に、その平均値についての二次モーメントの平方根(本明細書では、以後、二次モーメント重量平均ブロック指数と呼ぶ)を次のように定義することができる:
(式中、Nは、ゼロより大きいBI
iを有する画分の数と定義する)。それぞれのポリマー画分について、BIは、次の2つの方程式のうちの一方によって定義される(これらの両方が同じBI値を与える):
(式中、Txは、i番目の画分のATREF(すなわち、分析的TREF)溶出温度(好ましくは、ケルビンで表される)であり、P
xは、下で説明するようにNMR又はIRによって測定することができる、i番目の画分についてのプロピレンモル分率である。P
ABは、同じくNMR又はIRによって測定することができる、(分画前の)プロピレン/α−オレフィン共重合体全体のプロピレンモル分率である。T
A及びP
Aは、純粋な「ハードセグメント」(本明細書では、これを共重合体の結晶質セグメントと呼ぶ)のATREF溶出温度及びプロピレンモル分率である。「ハードセグメント」組成が不明である場合の近似として又はポリマーについては、T
A及びP
A値を高密度ポリプロピレンホモポリマーについてのものに設定する。
TABは、本発明のコポリマーと同じ(PABのエチレンモル分率を有する)組成及び分子量のランダムコポリマーについてのATREF溶出温度である。TABは、次の方程式:
Ln PAB = α/TAB + β
を用いて(NMRによって測定された)エチレンのモル分率から計算することができる。
この式中のα及びβは、広い組成のランダムコポリマーの多数の十分に特性づけされた分取TREF画分及び/又は狭い組成を有する十分に特性づけされたランダムエチレンコポリマーを使用して較正することによって決定することができる2つの定数である。α及びβは計器によって変動し得ることに留意しなければならない。さらに、対象となるポリマー組成に関する適切な較正曲線を作成する必要がある。これには、その較正曲線を作成するために用いる分取TREF画分及び/又はランダムコポリマーについての適切な分子量範囲及びコモノマータイプを用いる。わずかな分子量効果がある。較正曲線が類似の分子量範囲から得られれば、そのような効果は本質的に無視できるであろう。一部の実施形態において、ランダムエチレンコポリマー及び/又はランダムコポリマーの分取TREF画分は、次の関係を満たす:
Ln P = −237.83/TATREF + 0.639
TABは、本発明のコポリマーと同じ組成の、ならびに好ましくは同じタクチシティー及びレジオ欠陥(regio defect)((PABのプロピレンモル分率を有する)そのブロックコポリマーの中のハードセグメントを生じさせるもの)及び分子量を有する、ランダムコポリマーについてのATREF溶出温度である。TABは、次の方程式:
Ln PAB = α/TAB + β
を用いて(NMRによって測定された)プロピレンのモル分率から計算することができる。
この式中のα及びβは、広い組成のランダムコポリマー及び/又は狭い組成を有する十分に特性づけされたランダムプロピレンコポリマーの多数の十分に特性づけされた分取TREF画分を使用して較正することによって決定することができる2つの定数である。理想的には、前記TREF画分は、そのブロックコポリマーの中の予想されるハードセグメントと実質的に同じ又は類似の触媒を用いて製造されたランダムプロピレンコポリマーから作製されたものである。これは、タクチシティーの欠陥及びレジオ挿入エラー(regio insertion error)のためにプロピレン結晶性をもたらす結果となるわずかな温度差の説明に重要である。そのようなランダムコポリマーを入手できない場合、高アイソタクチックポリプロピレンを生成することが知られているチーグラー・ナッタ触媒によって生成されたランダムコポリマーからのTREF画分を使用することができる。α及びβは計器によって変動し得ることに留意しなければならない。さらに、対象となるポリマー組成に関する適切な較正曲線を作成する必要がある。これには、その較正曲線を作成するために用いる分取TREF画分及び/又はランダムコポリマーについての適切な分子量範囲及びコモノマータイプを用いる。わずかな分子量効果がある。較正曲線が類似の分子量範囲から得られれば、そのような効果は本質的に無視できる。
TXOは、同じ組成(すなわち、同じコモノマータイプ及び含量)及び同じ分子量の、ならびにPXのプロピレンモル分率を有する、ランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、測定したPXモル分率からのLn PX = α/TXO + βから計算することができる。逆に言えば、PXOは、同じ組成(すなわち、同じコモノマータイプ及び含量)及び同じ分子量の、ならびにTXのATREF温度を有する、ランダムコポリマーについてのプロピレンモル分率であり、これは、TXの測定値を使用してLn PXO = α/TX + βから計算することができる。
ブロック指数方法論についてのさらなる説明は、Macromolecular Symposia, Vol 257, (2007), pp 80-93において参照され、これはその全体が参照により本明細書に援用されている。
それぞれの分取TREF画分についてのブロック指数(BI)が得られたら、ポリマー全体についての重量平均ブロック指数ABIを計算することができる。一部の実施形態において、ABIは、ゼロより大きいが、約0.4未満であり、又は約0.1から約0.3である。他の実施形態において、ABIは、約0.4より大きく且つ約1.0以下である。好ましくは、ABIは、約0.4から約0.7、約0.5から約0.7、又は約0.6から約0.9の範囲でなければならない。一部の実施形態において、ABIは、約0.3から約0.9、約0.3から約0.8、又は約0.3から約0.7、約0.3から約0.6、約0.3から約0.5、又は約0.3から約0.4の範囲である。他の実施形態において、ABIは、約0.4から約1.0、約0.5から約1.0、又は約0.6から約1.0、約0.7から約1.0、約0.8から約1.0、又は約0.9から約1.0の範囲である。
本発明のプロピレン/α−オレフィン共重合体のもう1つの特徴は、本発明のプロピレン/α−オレフィン共重合体が、分取TREFによって得ることができる少なくとも1つのポリマー画分を含むことであり、この場合の画分は、約0.1より大きく且つ約1.0以下であるブロック指数を有し、このポリマーは、約1.4より大きい分子量分布、Mw/Mnを有する。一部の実施形態において、前記ポリマー画分は、約0.6より大きく且つ約1.0以下の、約0.7より大きく且つ約1.0以下の、約0.8より大きく且つ約1.0以下の、又は約0.9より大きく且つ約1.0以下のブロック指数を有する。他の実施形態において、前記ポリマー画分は、約0.1より大きく且つ約1.0以下の、約0.2より大きく且つ約1.0以下の、約0.3より大きく且つ約1.0以下の、約0.4より大きく且つ約1.0以下の、又は約0.4より大きく且つ約1.0以下のブロック指数を有する。さらに他の実施形態において、前記ポリマー画分は、約0.1より大きく且つ約0.5以下の、約0.2より大きく且つ約0.5以下の、約0.3より大きく且つ約0.5以下の、又は約0.4より大きく且つ約0.5以下のブロック指数を有する。さらに他の実施形態において、前記ポリマー画分は、約0.2より大きく且つ約0.9以下の、約0.3より大きく且つ約0.8以下の、約0.4より大きく且つ約0.7以下の、又は約0.5より大きく且つ約0.6以下のブロック指数を有する。
平均ブロック指数及び個々の分画ブロック指数に加えて、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、以下のように説明される特性の1つ又はそれ以上を特徴とする。
1つの態様において、本発明の実施形態において用いる前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、約1.7から約3.5のMw/Mnと少なくとも1つの融点Tm(摂氏度で)と、α−オレフィン含量(重量%で)を有し、この場合、前記変数の数値は、以下の関係に対応する:
Tm>−2.909(重量% α−オレフィン)+150.57、及び好ましくは
Tm>−2.909(重量% α−オレフィン)+145.57、及びさらに好ましくは
Tm>−2.909(重量% α−オレフィン)+141.57。
密度が低下すると共に融点が低下するプロピレン/α−オレフィンの従来のランダムコポリマーとは異なり、本発明の共重合体は、特にα−オレフィン含量が約2から約15重量%の間であるとき、そのα−オレフィン含量とは実質的に無関係の融点を示す。
さらにもう1つの態様において、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、昇温溶出分別法(「TREF」)を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、前記画分がこの同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムプロピレン共重合体画分のものより高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、さらに好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマーモル含量を有することが前記画分の特徴であり、この場合、前記比較対象となるランダムプロピレン共重合体は、同じコモノマー(単数又は複数)を含有し、ならびにそのブロック共重合体のものから10パーセント以内のメルトインデックス、密度及びコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)とを有する。好ましくは、前記比較対象となる共重合体のMw/Mnは、前記ブロック共重合体のものから10パーセント以内でもあり、及び/又は前記比較対象となる共重合体は、前記ブロック共重合体のものから10重量パーセント以内の全コモノマー含量を有する。
他の実施形態において、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、(1)1から20、好ましくは1から10、さらに好ましくは1から5の貯蔵弾性率比、G’(25℃)/G’(100℃)を有し;及び/又は(2)80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、特に60パーセント未満、50パーセント未満、もしくは40パーセント未満、下は0パーセントの圧縮永久ひずみに至るまで、の70℃圧縮永久ひずみを有する。
さらに他の実施形態において、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、80パーセント未満、70パーセント未満、60パーセント未満、又は50パーセント未満の70℃圧縮永久ひずみを有する。好ましくは、前記共重合体の70℃圧縮永久ひずみは、40パーセント未満、30パーセント未満、20パーセント未満であり、及び約0パーセントまで低下することもある。
他の実施形態において、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、重合した形態で、少なくとも50モルパーセントのプロピレンを含み、ならびに80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満又は60パーセント未満、最も好ましくは40から50パーセント未満の及び下はゼロパーセント近くまでの70℃圧縮永久ひずみを有する。
一部の実施形態において、前記マルチブロックコポリマーは、Poisson分布よりもむしろSchulz−Flory分布に合うPDIを有する。前記コポリマーは、多分散ブロック分布とブロックサイズの多分散分布の両方を有する及びブロック長の最確分布を有するものとしてさらに特徴づけられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて4又はそれ以上のブロック又はセグメントを含有するものである。さらに好ましくは、前記コポリマーは、末端ブロックを含めて少なくとも5、10又は20のブロック又はセグメントを含む。
加えて、本発明のブロック共重合体は、追加の特徴又は特性を有する。1つの態様において、前記共重合体、好ましくは、プロピレンと1つ又はそれ以上の共重合性コモノマーとを重合した形態で含む前記共重合体は、化学的又は物理的特性が異なる2つ又はそれ以上の重合モノマー単位の多数のブロック又はセグメントを特徴とし(ブロック化共重合体)、最も好ましくはジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーであり、前記ブロック共重合体は、TREFを用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、前記画分が、この同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムプロピレン共重合体画分のものより高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、さらに好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマーモル含量を有することが前記画分の特徴であり、この場合、前記比較対象となるランダムプロピレン共重合体は、同じコモノマー(単数又は複数)を含み、ならびに前記ブロック化共重合体のものから10パーセント以内のメルトインデックス、密度、及びコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)を有する。好ましくは、前記比較対象となる共重合体のMw/Mnは、前記ブロック化共重合体のものから10パーセント以内でもあり、及び/又は前記比較対象となる共重合体は、前記ブロック化共重合体のものから10重量パーセント以内の全コモノマー含量を有する。
コモノマー含量は、任意の適する技術を用いて測定することができるが、核磁気共鳴(「NMR」)分光学に基づく技術が好ましい。さらに、相対的に広いTREF曲線を有するポリマー又はポリマーのブレンドの場合、TREFを用いて、10℃又はそれ以下の溶出温度範囲をそれぞれが有する画分にそのポリマーを先ず分画する。すなわち、それぞれの溶出画分は、10℃又はそれ以下の回収温度領域を有する。この技術を用いると、前記ブロック共重合体は、比較対象となる共重合体の対応する画分より高いコモノマーモル含量を有する少なくとも1つの前述の画分を有する。
好ましくは、プロピレンとエチレンの共重合体の場合、そのブロック共重合体は、量(−0.1236)T+13.337に等しい又はそれより大きい、さらに好ましくは量(−0.1236)T+14.837に等しい又はそれより大きい、40℃と130℃の間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有し、この場合のTは、比較されるTREF画分のピーク溶出温度の数値であり、℃で測定される。
本明細書に記載する上の態様及び特性に加えて、本発明のポリマーは、1つ又はそれ以上の追加の特徴を特徴とすることがある。1つの態様において、本発明のポリマーは、化学的又は物理的特性が異なる2つ又はそれ以上の重合したモノマー単位の多数のブロック又はセグメントを特徴とするオレフィン共重合体(ブロック化共重合体)、好ましくは、プロピレンと1つ又はそれ以上の共重合性コモノマーとを重合した形態で含むオレフィン共重合体であり、最も好ましくはマルチブロックコポリマーであり、前記ブロック共重合体は、TREFインクリメント(increments)を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、前記画分がこの同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムプロピレン共重合体画分のものより高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、さらに好ましくは少なくとも10、15、20又は25パーセント高いコモノマーモル含量を有することが前記画分の特徴であり、この場合、前記比較対象となるランダムプロピレン共重合体は、同じコモノマー(単数又は複数)を含み、好ましくはそれは同じコモノマー(単数又は複数)であり、ならびに前記ブロック化共重合体のものから10パーセント以内のメルトインデックス、密度、及びモルコモノマー含量(ポリマー全体に基づく)である。好ましくは、前記比較対象となる共重合体のMw/Mnは、前記ブロック化共重合体のものから10パーセント以内でもあり、及び/又は前記比較対象となる共重合体は、前記ブロック化共重合体のものから10重量パーセント以内の全コモノマー含量を有する。
コモノマー含量は、任意の適する技術を用いて測定することができるが、核磁気共鳴(「NMR」)分光学に基づく技術が好ましい。この技術を用いると、前記ブロック共重合体は、対応する比較対象となる共重合体より高いモルコモノマー含量を有する。
好ましくは、上の共重合体は、プロピレンと少なくとも1つのα−オレフィンの共重合体であり、特に、約0.855から約0.935g/cm3の全ポリマー密度を有する共重合体であり、及びさらに特に、約1モルパーセントを超えるコモノマーを有するポリマーの場合、そのブロック化共重合体は、量(−0.1236)T+13.337に等しい又はそれより大きい、さらに好ましくは量(−0.1236)T+14.337に等しい又はそれより大きい、及び最も好ましくは量(−0.1236)T+13.387に等しい又はそれより大きい、40℃と130℃の間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有し、この場合のTは、比較するTREF画分のピークATREF溶出温度の数値であり、℃で測定される。
本明細書に記載する上の態様及び特性に加えて、本発明のポリマーは、1つ又はそれ以上の追加の特徴を特徴とすることがある。1つの態様において、本発明のポリマーは、化学的又は物理的特性が異なる2つ又はそれ以上の重合したモノマー単位の多数のブロック又はセグメントを特徴とするオレフィン共重合体(ブロック化共重合体)、好ましくは、プロピレンと1つ又はそれ以上の共重合性コモノマーとを重合した形態で含むオレフィン共重合体であり、最も好ましくはジブロック又はトリブロックコポリマーであり、前記ブロック共重合体は、TREFインクリメント(increments)を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、前記画分がこの同じ温度間で溶出する比較対象となるランダムプロピレン共重合体画分のものより高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、さらに好ましくは少なくとも10、15、20又は25パーセント高いコモノマーモル含量を有することが前記画分の特徴であり、この場合、前記比較対象となるランダムプロピレン共重合体は、同じコモノマー(単数又は複数)を含み、好ましくはそれは同じコモノマー(単数又は複数)であり、ならびに前記ブロック化共重合体のものから10パーセント以内のメルトインデックス、密度、及びコモノマーモル含量(ポリマー全体に基づく)である。好ましくは、前記比較対象となる共重合体のMw/Mnは、前記ブロック化共重合体のものから10パーセント以内でもあり、及び/又は前記比較対象となる共重合体は、前記ブロック化共重合体のものから10重量パーセント以内の全コモノマー含量を有する。
さらにもう1つの態様において、本発明のポリマーは、化学的及び物理的特性が異なる2つ又はそれ以上の重合したモノマー単位の複数のブロック又はセグメントを特徴とするオレフィン共重合体(ブロック化共重合体)、好ましくは、プロピレンと1つ又はそれ以上の共重合性コモノマーを重合した形態で含むオレフィン共重合体、さらに好ましくはジブロック又はトリブロックコポリマーであり、前記ブロック共重合体は、TREFインクリメント(increments)を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含量を有するすべての画分が約100℃より高い融点を有することが前記分子画分の特徴である。約3モルパーセントから約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分の場合、すべての画分は、約110℃又はそれ以上のDSC融点を有する。さらに好ましくは、少なくとも1molパーセント コモノマーを有する前記ポリマー画分は、方程式:
Tm≧(−5.5926)(molパーセント その画分中のコモノマー)+135.90
に対応するDSC融点を有する。
さらにもう1つの態様において、本発明のポリマーは、化学的及び物理的特性が異なる2つ又はそれ以上の重合したモノマー単位の複数のブロック又はセグメントを特徴とするオレフィン共重合体(ブロック化共重合体)、好ましくは、プロピレンと1つ又はそれ以上の共重合性コモノマーを重合した形態で含むオレフィン共重合体、さらに好ましくはジブロック又はトリブロックコポリマーであり、前記ブロック共重合体は、TREFインクリメント(increments)を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、約76℃に等しい又はそれより高いATREF溶出温度を有するすべての画分が、DSCによって測定して、方程式:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(摂氏でのATREF溶出温度)−136.58
に対応する溶融エンタルピー(融解熱)を有することが前記分子画分の特徴である。
本発明のブロック共重合体は、TREFインクリメント(increments)を用いて分画したときに40℃と130℃の間で溶出する分子画分を有し、40℃と約76℃未満の間のATREF溶出温度を有するすべての画分が、DSCによって測定して、方程式:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(摂氏でのATREF溶出温度)+22.97
に対応する溶融エンタルピー(融解熱)を有することが前記分子画分の特徴である。
赤外検出器によるATREFピークコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成は、スペイン、バレンシアのPolymer Char(http://www.polymerchar.com/)から入手できるIR4赤外検出器を使用して測定することができる。
前記検出器の「組成モード」は、測定センサ(CH2)及び組成センサ(CH3)を装備しており、これらは2800−3000cm-1の領域における狭帯域固定型赤外線フィルタである。前記測定センサは、ポリマー上のメチレン(CH2)カーボン(これは、溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出するが、前記組成センサは、ポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)を測定シグナル(CH2)で割った算術比は、溶液中の測定されるポリマーのコモノマー含量の影響を受けやすく、その応答は、公知のプロピレンアルファ−オレフィンコポリマー標準物質を用いて較正される。
ATREF計器を用いる場合、その検出器によって、TREFプロセスの間に溶出したポリマーの濃度(CH2)と組成(CH3)両方のシグナル応答が得られる。ポリマー特異的較正は、(好ましくはNMRによって測定した)既知のコモノマー含量を有するポリマーについてCH3のCH2に対する面積比を測定することによって生じさせることができる。ポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、個々のCH3及びCH2応答についての面積比の対照較正を適用すること(すなわち、面積比CH3/CH2対 コモノマー含量)によって推定することができる。
ピークの面積は、適切なベースラインを適用してTREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分した後、半値全幅(FWHM)計算を用いて算出することができる。この半値全幅計算は、ATREF赤外検出器からのメチル応答面積のメチレン応答面積に対する比[CH3/CH2]に基づき、この場合、最も高い(最高の)ピークをベースラインから特定し、その後、FWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定される分布の場合、そのFWHM面積をT1とT2との間の曲線下面積と定義し、この場合のT1及びT2は、ピーク高さを2で割り、次にATREF曲線の左部分及び右部分を横切る、ベースラインに対して水平な線を引くことによって、ATREFピークの左右に対して、決定した点である。
このATREF赤外方法でポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外線分光法の適用は、原理的には、以下の引用文献:Markovich, Ronald P.; Hazlitt, Lonnie G.; Smith, Linley; "Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers", Polymeric Materials Science and Engineering (1991), 65, 98-100.;及びDeslauriers, P.J. ; Rohlfing, D.C.; Shieh, E.T.; "Quantifying short chain branching microstructures in ethylene- 1 -olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy (SEC-FTIR)", Polymer (2002), 43, 59-170に記載されるようなGPC/FTIRシステムのものに類似しており、前記引用文献の両方は、それらの全体が参照により本明細書に援用されている。
上の説明ではTREF画分を5℃刻みで得ているが、他の温度増分も可能であることに留意しなければならない。例えば、TREF画分は、4℃刻み、3℃刻み、2℃刻み又は1℃刻みでのものであり得る。
プロピレンとα−オレフィンのコポリマーの場合、本発明のポリマーは、好ましくは、(1)少なくとも1.3、さらに好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、もしくは少なくとも2.0、及び最も好ましくは少なくとも2.6、最大値5.0まで、さらに好ましくは最大3.5まで、及び特に最大2.7までのPDI;(2)80J/gもしくはそれ以下の融解熱;(3)少なくとも50重量パーセントのプロピレン含量;(4)−5℃未満、さらに好ましくは−15℃未満のガラス転移温度、Tg、及び/又は(5)1つ及び1つだけのTmを有する。
さらに、本発明のポリマーは、100℃の温度でlog(G’)が400kPaに等しい又はそれより大きい、好ましくは1.0MPaに等しい又はそれより大きいような貯蔵弾性率、G’を単独で又は本明細書に開示する任意の他の特性との組み合わせで有することができる。さらに、本発明のポリマーは、0から100℃の範囲では温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を有し、これは、ブロックコポリマーの特徴であるが、オレフィンコポリマー、特に、プロピレンと1つ又はそれ以上のC2又はC4-8脂肪族α−オレフィンのコポリマーについては今まで知られていない。(この文脈での「比較的平坦な」という用語は、50℃と100℃の間、好ましくは0℃と100℃の間でのlogG’(パスカルで)の減少が、1ケタ未満であることを意味する)。
加えて、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、0.01から2000g/10分、好ましくは0.01から1000g/10分、さらに好ましくは0.01から500g/10分、及び特に0.01から100g/10分のメルトインデックス、I2を有し得る。一定の実施形態において、前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、0.01から10g/10分、0.5から50g/10分、1から30g/10分、1から6g/10分又は0.3から10g/10分のメルトインデックス、I2を有する。一定の実施形態において、前記プロピレン/α−オレフィンポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分又は5g/10分である。
前記ポリマーは、1,000g/モルから5,000,000g/モル、好ましくは1,000g/モルから1,000,000g/モル、さらに好ましくは10,000g/モルから500,000g/モル、ならびに特に10,000g/モルから300,000g/モル及び30,000g/モルから200,000g/モルの分子量、Mwを有し得る。本発明のポリマーの密度は、0.80から0.99g/cm3であり得、及び好ましくは、エチレン含有ポリマーについては0.85g/cm3から0.97g/cm3であり得る。特定の実施形態において、前記プロピレン/α−オレフィンポリマーの密度は、0.860から0.925g/cm3又は0.867から0.910g/cm3にわたる。
前記ポリマーを製造する一般プロセスは、以下の特許出願及び公報:2005年9月15日出願の米国仮出願第60/717,545号、及び2006年9月14日出願のPCT公開番号WO 2007/035485に開示されており、これらの両方は、それら全体が参照により本明細書に援用されている。例えば、1つのそのような方法は、区別されるポリマー組成又は特性の2つの領域又はセグメント、特に、異なるコモノマー組み込み指数を含む領域、を含むコポリマーを形成するための、1つもしくはそれ以上の付加重合性モノマー、好ましくは2つもしくはそれ以上の付加重合性モノマー、特にプロピレンと、少なくとも1つの共重合性コモノマーとの、プロピレンと、4から20個の炭素を有する少なくとも1つの共重合性コモノマーとの、又は4−メチル−1−ペンテンと、4から20個の炭素を有する少なくとも1つの異なる共重合性コモノマーとの重合プロセスを含み、前記プロセスは、
1)反応装置又は反応ゾーンにおいて、付加重合条件下、好ましくは均一又は均質重合条件下で、付加重合性モノマー又はモノマー混合物と、少なくとも1つのオレフィン重合触媒及び助触媒を含み、且つ前記モノマー(単数又は複数)からのポリマーセグメントの形成を特徴とする組成物とを接触させる工程;
2)その反応混合物を第2の反応装置又は反応ゾーンに移送する、及び場合によっては前記移送の前に、それと同時に、又は後に1つ又はそれ以上の追加の反応物、触媒、モノマー又は他の化合物を添加する工程;ならびに
3)前記第二反応装置又は反応ゾーンにおいて重合を起こさせて、工程1において形成されたポリマーセグメントとは区別されるポリマーセグメントを形成する工程
を含み、前記プロセスは、工程3からの結果として得られるポリマー分子の少なくとも一部が2つ又はそれ以上の化学的に又は物理的に区別可能なブロック又はセグメントを含むように、工程1の前、中、又は後にその反応混合物に可逆的連鎖移動剤を添加することを特徴とする。
本発明は、ポリマー鎖の実質的な画分が、可逆的連鎖移動剤を末端に有するポリマーの形態で、プラグフロー条件下で実質的に動作する多数の反応装置シリーズの少なくとも第一反応装置又は多数のゾーンを有する反応装置の少なくとも第一反応ゾーンを出て、そのポリマー鎖が、次の反応装置又は重合ゾーンにおいて異なる重合条件を経験するような、ポリマー鎖の寿命を延長する方法として可逆的連鎖移動を用いるという概念を含む。それぞれの反応装置又はゾーンにおける異なる重合条件としては、異なるモノマー、コモノマー、又はモノマー/コモノマー(単数もしくは複数)比、異なる重合温度、様々なモノマーの圧力もしくは分圧、異なる触媒、異なるモノマー勾配、又は識別可能なポリマーセグメントの形成につながる任意の他の相違が挙げられる。従って、本プロセスからの結果として生ずるポリマーの少なくとも一部分は、分子内配列された2つ、3つ又はそれ以上の、好ましくは2つ又は3つの、区別されるポリマーセグメントを含む。様々な反応装置又はゾーンが、単一の特異的なポリマー組成ではなくポリマーの分布を形成するため、結果として生ずる生成物は、ランダムコポリマー又は単分散ブロックコポリマーより改善された特性を有する。
可逆的連鎖移動剤を用いない以前に論じられた逐次重合技術とは対照的に、今や、本発明に従って、触媒によって作られたポリマーブロック又は領域が区別可能なポリマー特性を有するように、適する可逆的連鎖移動剤へのポリマーセグメントの迅速な移動も、適する可逆的連鎖移動剤からのポリマーセグメントの迅速な移動も可能にする高活性触媒組成物を選択することにより、ポリマー生成物を得ることができる。成長ポリマー鎖を迅速且つ効率的に交換することができる可逆的連鎖移動剤及び触媒の使用により、成長ポリマーは、そのポリマーの分子内領域が2つ又はそれ以上の異なる重合条件下で形成されるような不連続ポリマー成長を経験する。
代表的な触媒及び可逆的連鎖移動剤は、次のとおりである。
触媒(A1)は、WO 03/40195、2003US0204017、USSN 10/429,024(2003年5月2日出願)、及びWO 04/24740の教示に従って調製した、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである:
触媒(A2)は、WO 03/40195、2003US0204017、USSN 10/429,024(2003年5月2日出願)、及びWO 04/24740の教示に従って調製した、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである:
触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである:
触媒(A4)は、US−A−2004/0010103の教示に実質的に従って調製した、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである:
触媒(A5)は、2004年3月17日出願の米国特許仮出願第60/553906、及び2005年3月17日出願のPCT/US05/08917及び2005年9月29日発行のWO2005/090427の教示に実質的に従って調製した、(ビス−(1−メチルエチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルである:
触媒(A6)は、2004年3月17日出願の米国特許仮出願第60/553906、及び2005年3月17日出願のPCT/US05/08917及び2005年9月29日発行のWO2005/090427の教示に実質的に従って調製した、ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルである:
触媒(A7)は、米国特許第6,268,444号の教示に実質的に従って調製した、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタンジメチルである:
触媒(A8)は、US−A−2003/004286の教示に実質的に従って調製した、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタンジメチルである:
触媒(A9)は、US−A−2003/004286の教示に実質的に従って調製した、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタンジメチルである:
触媒(A10)は、Sigma−Aldrichから入手できるビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)ジルコニウムジクロリドである:
触媒(A11)は、2005年9月29日発行のWO2005/090426の教示に実質的に従って調製した、ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルである:
助触媒
それぞれの金属錯体(本明細書では同義的にプロ触媒(procatalyst)とも呼ばれる)を助触媒、好ましくはカチオン形成性助触媒、強ルイス酸又はこれらの組み合わせ、との併用により活性化して活性触媒組成物を形成することができる。好ましい実施形態では、可逆的移動剤を、連鎖移動のためにも、前記触媒組成物の任意の助触媒成分としても用いる。適する助触媒は、2005年9月15日出願の米国特許仮出願第60/717,545号及び2007年3月29日発行のWO2007/035485に記載されており、これらのそれぞれが参照により本明細書に援用されている。
助触媒1 実質的にはUSP 5,919,9883、実施例2に開示されているように、長鎖トリアルキルアミン(Akzo−Nobel,Inc.から入手できる、Armeen(商標)M2HT)とHClとLi[B(C6F5)4]との反応によって調製した、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートのメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩の混合物(本明細書では、以後、ホウ酸アルメーニウム(armeenium borate))。
触媒2 米国特許第6,395,671号、実施例16に従って調製した、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマネ)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14-18アルキルジメチルアンモニウム塩。
可逆的連鎖移動剤
用語「可逆的移動剤」又は「可逆的連鎖移動剤」は、重合条件下で様々な活性触媒部位間でのポリメチル移動を生じさせることができる化合物又は化合物の混合物を指す。すなわち、活性触媒部位へのポリマーフラグメントの移動も、活性触媒部位からのポリマーフラグメントの移動も、容易に発生する。可逆的移動剤とは対照的に、「連鎖移動剤」は、ポリマー鎖成長の停止を生じさせ、帰すところ、触媒からその移動剤への成長ポリマーの1回の移動となる。望ましくは可逆的連鎖移動剤とポリメリル鎖とで形成される中間体は、連鎖停止が比較的稀である十分に安定したものである。望ましくは、可逆的連鎖移動剤−ポリメチル生成物の10パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、さらに好ましくは75パーセント未満及び最も望ましくは90パーセント未満は、2つの区別可能な分子内ポリマーセグメント又はブロックを獲得する前に停止される。
成長ポリマー鎖に取り付けられるが、望ましくは、可逆的移動剤は、そのポリマー構造を改変せず、又は追加のモノマーを取り込まない。すなわち、連鎖移動剤は、対象となる重合にとって有意な触媒特性を有することもない。むしろ、連鎖移動剤は、後続の反応装置内で活性重合触媒部位へのポリマー部分の移動が発生することができるような期間にわたって、ポリマー部分との金属−アルキル又は他のタイプの相互作用を形成する。結果として、後に形成されるポリマー領域は、区別可能な物理的又は化学的特性、例えば、異なるモノマーもしくはコモノマー同一性、コモノマー組成分布の差、結晶化度、密度、タクチシティー、レジオ・エラー(regio - error)又は他の特性の鎖を有する。前述のプロセスのその後の反復により、ポリメチル交換の速度、反応装置又は反応装置内のゾーンの数、及び反応装置又はゾーン間の輸送に依存して、異なる特性を有するセグメントもしくはブロックの形成、又は前に形成されたポリマー組成の反復が生ずる結果となる。望ましくは、本発明のポリマーは、組成の相違及び最確ブロック長分布を有する少なくとも2つの個々のブロック又はセグメントを特徴とする。すなわち、隣接ブロックは、ポリマー内の改変組成、及び1.0より大きい、好ましくは1.2より大きいサイズ分布(Mw/Mn)を有する。
触媒と1つ又はそれ以上の助触媒と可逆的連鎖移動剤とを用いる本発明のプロセスは、定常状態重合条件下で動作する第一反応装置において又はプラグフロー式重合条件下で動作する第一重合ゾーンにおいてポリマー鎖、12を形成する活性触媒、10を図示する図2への参照により、さらに解明することができる。反応体の最初の充填と共に又はその重合プロセスにおいて後程(第二反応装置又はゾーンへの移送直前又は移送中を含む)添加される可逆的連鎖移動剤、14は、活性触媒部位によって生成されたポリマー鎖に付き、それによって第二反応装置又はゾーンに入る前のポリマー鎖の停止を防止する。変更された重合条件が存在する状態では、可逆的連鎖移動剤に付いているポリマーブロックは、触媒部位に戻され、好ましくはポリマーセグメント12と区別可能な新たなポリマーセグメント、16が生成される。結果として生ずるジブロックコポリマーも、利用可能な可逆的連鎖移動剤に付いて、第二反応装置又はゾーンを出る前に可逆的連鎖移動剤とジブロックコポリマーが組み合わさったもの、18を形成することができる。成長ポリマーの活性触媒部位への移動が何度も起こってポリマーセグメントは成長し続けることができる。均一重合条件下では、成長ポリマー鎖は実質的に均質であるが、個々の分子のサイズは異なることがある。前記プロセスで形成される第一及び第二ポリマーセグメントは、それぞれのブロック又はセグメントの形成時に存在する重合条件が異なるため、及び可逆的連鎖移動剤が、2つ又はそれ以上の異なる重合環境を経験するまでポリマー寿命(さらなるポリマー成長が発生し得る時間である)を延長することができるため、区別することができる。ジブロックコポリマー鎖、20は、停止によって、例えば、水もしくは他のプロトン源との反応によって、又は官能化されること、所望される場合には、それによってビニル、ヒドロキシル、シラン、カルボン酸、カルボン酸エステル、アイオノマーもしくは他の官能性末端基を形成して可逆的連鎖移動剤を置換することによって、回収することができる。あるいは、ジブロックポリマーセグメントを多官能性カップリング剤、特に、二官能性カップリング剤、例えばジクロロジメチルシラン又はエチレンジクロリド、とカップリングさせ、トリブロックコポリマー、22として回収することができる。第二反応装置又はゾーンにおけるものと異なる条件下で第三反応装置又はゾーンにおいて重合を継続して、結果として生ずるトリブロックコポリマー、21を回収することもできる。第三反応装置の条件が、最初の反応装置又はゾーンのものと実質的に同一である場合、その生成物は、従来のトリブロックコポリマーと実質的に同様であるが、最確分布であるブロック長を有する。
理想的には、可逆的連鎖移動速度は、ポリマー停止速度と同等又はそれより速く、ポリマー停止速度より10倍まで又は100倍速いことさえあり、重合速度に対して有意である。これは、第一反応装置又はゾーンにおける性質の異なるポリマーブロックの形成、及び可逆的連鎖移動剤を末端に有し且つ区別可能な重合条件下で連続的にモノマーを挿入することができるポリマー鎖の有意な量を含有する反応混合物の前記反応装置又はゾーンから後続の反応装置又はゾーンへの吐き出しを可能にする。
異なる可逆的連鎖移動剤又は可逆的連鎖移動剤と触媒の混合物を選択することにより、プラグフロー条件化で動作する別の反応装置又は反応ゾーンにおけるコモノマー組成、温度、圧力、任意の可逆的連鎖停止剤、例えばH2、又は他の反応条件を改変することによって、多様な密度もしくはコモノマー濃度のセグメント、モノマー含量、及び/又は他の識別特性を有するポリマー生成物を作製することができる。例えば、直列に接続された2つの連続溶液重合反応装置を用いる及び異なる重合条件下で動作する典型的なプロセスにおいて、結果として生ずるポリマーセグメントは、典型的なオレフィン配位重合触媒に特有の比較的広い分子量分布、好ましくは1.7から15、さらに好ましくは1.8から10のMw/Mnをそれぞれが有するであろうが、異なる重合条件下で形成されたポリマーを反映するであろう。加えて、従来のランダムコポリマーの一定量を本発明のブロックコポリマーの形成と同時に形成し、結果として樹脂ブレンドを生じさせることもできる。結果として生ずるポリマーの平均ブロック長は、CSAの可逆的連鎖移動速度、添加するCSAの量、及び他のプロセス変数、例えばポリマー生成速度、及び用いる任意の連鎖停止剤、例えば水素の量によって制御することができる。それぞれのブロックタイプの平均ブロック長は、それぞれの反応装置におけるプロセス変数を変えることによって個々に制御することができる。
非常に望ましいコポリマーは、非晶質ポリマーを含む1つ又はそれ以上の別のブロックと分子内接合された高結晶質ポリエチレン又はポリプロピレン、特に高アイソタクチックポリプロピレン、特に、プロピレンとエチレン及び/又はC4−8コモノマーとのコポリマーである、少なくとも1つのブロック又はセグメントを含む。望ましくは、前述のポリマーは、ジブロックコポリマーである。追加の望ましいコポリマーは、比較的結晶質なポリオレフィンポリマーブロック間に結合された中央の比較的非晶質なポリマーブロックを含むトリブロックコポリマーである。
ここでの使用に特に適合する触媒、助触媒及び可逆的連鎖移動剤を含む適する組成物は、次の多段階手順によって選択することができる:
I.可能性のある触媒と可能性のある可逆的連鎖移動剤を含む混合物を使用して、1つ又はそれ以上の付加重合性の、好ましくはオレフィンモノマーを重合する。この重合試験は、望ましくは、バッチ又は半バッチ反応装置(すなわち、触媒又は可逆的移動剤の再供給を伴わないもの)を使用して、好ましくは比較的一定したモノマー濃度で、溶液重合条件下で動作させて、典型的には1:5から1:500の触媒の可逆的連鎖移動剤に対するモル比を用いて行う。適する量のポリマーを形成したら、触媒毒の添加によって反応を停止させ、ポリマーの特性(Mw、Mn、及びMw/Mn又はPDI)を測定する。
II.上述の重合及びポリマー試験を幾つかの異なる反応回数反復して、ある範囲の収率及びPDI値を有する一連のポリマーを生じさせる。
III.可逆的連鎖移動剤への有意なポリマー移動も、可逆的連鎖移動剤からの有意なポリマー移動も明示する触媒/可逆的連鎖移動剤ペアは、最低PDIが2.0未満、さらに好ましくは1.5未満、及び最も好ましくは1.4未満であるポリマー系列を特徴とする。さらに、可逆的連鎖移動が起こっている場合、ポリマーのMnは、転化率が増加されるにつれて、好ましくはほぼ直線的に増加する。最も好ましい触媒/可逆的移動剤ペアは、0.95より大きい、好ましくは0.99より大きい統計精度(R2)で直線にフィットする転化率(又はポリマー収率)の関数としてポリマーMnをもたらすものである。
その後、段階I−IIIを、可能性のある触媒及び/又は推定可逆的移動剤の一つ又はそれ以上の追加の組み合わせについて行う。
加えて、可逆的連鎖移動剤は、(単位時間あたりの触媒重量あたりのポリマー重量で測定される)触媒活性を60パーセントより大きく低下させず、さらに好ましくは、そのような触媒活性は、20パーセントより大きく低下されず、及び最も好ましくは前記触媒の触媒活性は、可逆的連鎖移動剤が不在の状態でのその触媒活性と比較して増加される。プロセスの観点からのさらなる考慮事項は、均質反応混合物を生成する際又は該反応混合物を運ぶ際に消費されるエネルギーを減少させるために、反応混合物ができる限り低い粘度を有さなければならないということである。これに関しては、一官能性可逆的移動剤のほうが二官能性薬剤より好ましく、そしてまた、二官能性の薬剤のほうが三官能性の薬剤より好ましい。
上述の試験は、自動反応装置及び分析プローブを使用する高速スループットスクリーニング技術に、ならびに異なる識別特性を有するポリマーブロックの形成に容易に適応される。例えば、様々な有機金属化合物と様々なプロトン源とを組み合わせることによって多数の可能性のある可逆的連鎖移動剤候補を予め同定又はインサイチューで合成し、その化合物又は反応生成物を、オレフィン重合触媒組成物を利用する重合反応に添加することができる。可逆的移動剤の触媒に対する多様なモル比で幾つかの重合を行う。最低限の要求事項として、適する可逆的移動剤は、上で説明したように、上で説明したような多様な収率の実験において2.0未満のPDIを生じさせるが、触媒活性に有意な悪影響をもたらさない、好ましくは触媒活性を向上させるものである。
あるいは、標準的なバッチ反応条件下で一連の重合を行い、結果として生じた数平均分子量、PDI及びポリマー収率又は生成速度を測定することによって、望ましい触媒/可逆的移動剤ペアを検出することもできる。適する可逆的移動剤は、PDIの有意な広がり又は活性喪失(収率もしくは速度の低下)を伴わない、結果として生ずるMnの低下を特徴とする。
可逆的移動剤を、推測的に、同定する方法にかかわらず、この用語は、本明細書に開示する重合条件下でそのとき同定されたブロックコポリマーを作製することができる化合物を指すものとする。
ここでの使用に適する可逆的移動剤としては、少なくとも1つのC1−20ヒドロカルビル基を含有する1、2、12又は13族金属化合物又は錯体、好ましくは、それぞれのヒドロカルビル基が1から12個の炭素原子を含有するヒドロカルビル置換アルミニウム、ガリウム又は亜鉛化合物、及びそれらとプロトン源との反応生成物が挙げられる。好ましいヒドロカルビル基は、アルキル基、好ましくは、線状又は分岐C2−8アルキル基である。本発明において使用するための最も好ましい可逆的移動剤は、トリアルキルアルミニウム及びジアルキル亜鉛化合物、特に、トリエチルアルミニウム、トリ(i−プロピル)アルミニウム、トリ(i−ブチル)アルミニウム、トリ(n−ヘキシル)アルミニウム、トリ(n−オクチル)アルミニウム、トリエチルガリウム又はジエチル亜鉛である。追加の適する可逆的移動剤としては、前述の有機金属化合物、好ましくは、トリ(C1−8)アルキルアルミニウム又はジ(C1−8)アルキル亜鉛化合物、特に、トリエチルアルミニウム、トリ(i−プロピル)アルミニウム、トリ(i−ブチル)アルミニウム、トリ(n−ヘキシル)アルミニウム、トリ(n−オクチル)アルミニウム、又はジエチル亜鉛と(ヒドロカルビル基の数に対して)理論量未満の第二アミン又はヒドロキシル化合物、特に、ビス(トリメチルシリル)アミン、t−ブチル(ジメチル)シロキサン、2−ヒドロキシメチルピリジン、ジ(n−ペンチル)アミン、2,6−ジ(t−ブチル)フェノール、エチル(1−ナフチル)アミン、ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミン)又は2,6−ジフェニルフェノールとを併せることによって形成される反応生成物又は混合物が挙げられる。望ましくは、結局金属原子1個につき1つのヒドロカルビル基となるように、十分なアミン又はヒドロキシル試薬を用いる。可逆的移動剤として本発明において使用するために最も望ましい前述の併用の主たる反応生成物は、n−オクチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、i−プロピルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド)、及びn−オクチルアルミニウムジ(ピリジニル−2−メトキシド)、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)、及びエチル亜鉛(t−ブトキシド)である。
好ましい可逆的移動剤は、ポリマー移動の最高移動速度ならびに最高移動効率(連鎖停止の発生低減)を有する。そのような可逆的移動剤を低減濃度で使用し、尚、所望の移動度を達成することができる。反応装置内のポリマーの有効分子量を低下させ、それによってその反応混合物の粘度を低下させ、その結果として動作費用を減少させることから、非常に望ましくは、単一交換部位を有する可逆的連鎖移動剤を用いる。
重合中、任意の適する重合条件に従って反応混合物を活性化された触媒組成物と接触させる。このプロセスは、望ましくは、高温及び高圧の使用を特徴とする。所望される場合には、公知の技術に従って分子量制御のための連鎖移動剤として水素を利用してもよい。他の同様の重合の場合と同様に、用いるモノマー及び溶剤は、ブロックコポリマー変性ポリマー生成物を所望するのでなければ、触媒失活及び早期連鎖停止が発生しない十分に高い純度のものであることが非常に望ましい。モノマー精製のために任意の適する技術、例えば、減圧での脱揮、モレキュラーシーブもしくは高表面積アルミナとの接触、又は前述のプロセスの組み合わせを用いることができる。
望ましくは、前記重合は、触媒成分、モノマー及び場合によっては溶剤、アジュバント、スカベンジャー、ならびに重合助剤を1つ又はそれ以上の反応装置又はゾーンに連続的に供給し、ポリマー生成物をそこから連続的に除去する、連続重合、好ましくは連続溶液重合である。これに関連して用いる場合の用語「連続的な」及び「連続的に」の範囲内に、短い規則的又は不規則的間隔で反応物が断続的に添加され生成物が除去される、そのため、ある期間にわたって、全プロセスが実質的に連続的であるプロセスは、存在する。さらに、前に説明したように、可逆的連鎖移動剤(単数又は複数)は、第一反応装置もしくはゾーンにおいて、第一反応装置を出る時点もしくは出る直前に、第一反応装置もしくはゾーンと第二反応装置もしくは任意の後続の反応装置又はゾーンとの間で、又は第二もしくは任意の後続の反応装置もしくはゾーンのみにさえも含む、重合中の任意の時点で添加することができる。直列に接続された少なくとも2基の反応装置もしくはゾーン間での、モノマーの差、温度の差、圧力の差、又は他の重合条件の差のため、異なる反応装置又はゾーンにおいて、同じ分子内に異なる組成(例えば、コモノマー含量、結晶化度、密度、タクチシティー、レジオ規則性(regio - regularity)又は他の化学的もしくは物理的相違)のポリマーセグメントが形成される。それぞれのセグメント又はブロックのサイズは、連続ポリマー反応条件によって決定され、及び好ましくは、ポリマーサイズの最確分布である。
直列のそれぞれの反応装置を、高圧、溶液、スラリー又は気相重合条件下で動作させることができる。マルチゾーン型重合では、すべてのゾーンが、異なるプロセス条件でだが同じ重合タイプ、例えば溶液、スラリー又は気相、に従って動作する。溶液重合プロセスの場合、用いる重合条件下でポリマーが可溶性である液体希釈剤への触媒成分の均質分散を利用することが望ましい。極微細なシリカ又は類似の分散剤を利用して、通常は金属錯体又は助触媒のいずれかのみが貧溶解性であるそのような均質触媒分散液を生じさせる1つのそのようなプロセスは、US−A−5,783,512号に開示されている。高圧プロセスは、100℃から400℃の温度で及び500bar(50MPa)より上の圧力で通常は行われる。スラリープロセスは、概して、不活性炭化水素希釈剤と、0℃から結果として生ずるポリマーがその不活性重合媒質に実質的に可溶性になる温度の直前の温度までの温度とを用いる。スラリー重合において好ましい温度は、30℃から、好ましくは60℃から115℃まで、好ましくは100℃までである。圧力は、概して、大気圧(100kPa)から500psi(3.4MPa)にわたる。
上述のプロセスのすべてにおいて、好ましくは、連続又は実質的連続重合条件が用いられる。そのような重合条件、特に連続溶液重合プロセス、の使用は、
高い反応装置温度の使用を可能にし、これは、結果として、高い収率及び効率での本ブロックコポリマーの経済的な生産をもたらす。
前記触媒は、重合を行うこととなる溶剤への又は最終反応混合物と相溶性の希釈剤中への必要な金属錯体(単数又は多数)の添加によって、均質組成物として調製することができる。所望の助触媒又は活性化剤及び、場合によっては、可逆的移動剤と前記触媒組成物とを、その触媒と重合すべきモノマー及び任意の追加の反応希釈剤とを併せる前に、併せると同時に、又は併せた後に、併せることができる。
常に、個々の成分ならびに任意の活性触媒組成物は、酸素、湿分及び他の触媒毒から保護されなければならない。従って、前記触媒成分、可逆的移動剤及び活性化された触媒を酸素及び湿分のない雰囲気で、好ましくは乾燥した不活性ガス、例えば窒素下で、調製及び保管しなければならない。
如何なる点でも本発明の範囲を制限するものではないが、そのような重合プロセスを行うための1つの手段は、次のとおりである。溶液重合条件下で動作する1つ又はそれ以上の攪拌タンク又はループ反応装置において、重合すべきモノマーを任意の溶剤又は希釈剤と共にその反応装置の一部分に連続的に導入する。この反応装置は、モノマーと共に任意の溶剤又は希釈剤及び溶解したポリマーから実質的に成る比較的均質な液相を収容する。好ましい溶剤は、C4−10炭化水素又はそれらの混合物、特に、アルカン、例えばヘキサン又はアルカン混合物、ならびにその重合に用いられるモノマーの1つ又はそれ以上を含む。適するループ反応装置及びそれらと共に用いるための様々な適する動作条件(直列で動作する多数のループ反応装置の使用を含む)の例は、米国特許第5,977,251号、同第6,319,989号及び同第6,683,149号において見つけられ、これらの特許は、参照により本明細書に援用されている。
触媒を助触媒及び任意の可逆的連鎖移動剤と共に反応装置の液相又はその任意のリサイクル部分の最低1箇所に連続的に又は間欠的に導入する。反応装置温度及び圧力は、溶剤/モノマー比、触媒添加速度を調節することによって、ならびに冷却もしくは加熱コイル、ジャケット又は両方の使用によって制御することができる。重合速度は、触媒添加速度によって制御する。ポリマー生成物中の所与のモノマーの含量は、反応装置内のモノマーの比率による影響を受け、その反応装置へのこれらの成分のそれぞれの供給速度を操作することによってこの比率を制御する。当分野において周知であるように、場合によっては、他の重合変数、例えば温度、モノマー濃度を制御することによって、又は前に述べた可逆的連鎖移動剤、もしくは連鎖停止剤、例えば水素によって、ポリマー生成物の分子量を制御する。場合によっては導管又は他の移送手段によって、その反応装置の吐き出しに第二反応装置を、第一反応装置において作製された反応混合物がポリマー成長を実質的に停止させることなく第二反応装置に吐き出されるように接続する。第一反応装置と第二反応装置の間で、少なくとも1つのプロセス条件の差が確立される。好ましくは、2つ又はそれ以上のモノマーのコポリマーの形成に用いるために、この差は、1つもしくはそれ以上のコモノマーの存在もしくは不在又はコモノマー濃度の差である。直列に第二反応装置と同様にそれぞれ配列された追加の反応装置も備えつけることができる。その一連の最後の反応装置を出たら、その排出物を触媒キル剤(catalyst kill agent)、例えば水、蒸気もしくはアルコールと、又はカップリング剤と接触させる。
反応混合物の揮発成分、例えば残留モノマー又は希釈剤を減圧でフラッシュし、必要な場合には、脱揮押出機などの装置において脱揮をさらに行うことによって、結果として生ずるポリマー生成物を回収する。連続プロセスの場合、反応装置内での触媒及びポリマーの平均停留時間は、一般に、5分から8時間、及び好ましくは10分から6時間である。
あるいは、異なるゾーン又はその領域間で確立されるモノマー、触媒、可逆的移動剤、温度又は他の勾配を有する、場合によっては、触媒及び/又は可逆的連鎖移動剤の別々の添加を伴う、及び断熱又は非断熱重合条件下で動作するプラグフロー型反応装置において、上述の重合を行うことができる。
好ましくは、上述のプロセスは、相互交換することができない多数の触媒を使用する、2つ又はそれ以上のモノマーの、さらに特にプロピレンとエチレン又はC4−10オレフィンもしくはシクロオレフィンとの、及び最も特にプロピレンとC4−20α−オレフィンとのブロック共重合体、特にジブロック又はトリブロックコポリマー、好ましくは線状ジブロック又はトリブロックコポリマーを形成するための連続溶液プロセスの形態をとる。すなわち、前記触媒は、化学的に異なる。連続溶液重合条件下で、前記プロセスは、高いモノマー転化率でのモノマー混合物の重合に理想的に適する。これらの重合条件下では、可逆的連鎖移動剤から触媒へのの可逆的移動が、連鎖成長と比べて優位になり、ブロック共重合体、特に線状ジブロック又はトリブロックコポリマーが高効率で形成される。
ポリマーの特徴及び特性
本発明の共重合体は、従来の、ランダムコポリマー、ポリマーの物理的ブレンド、及び逐次的モノマー付加、流動性触媒、アニオン又はカチオンリビング重合技術によって作製されたブロックコポリマーと区別することができる。詳細には、同じモノマー及びモノマー含量のランダムコポリマーと比較して、本発明の共重合体は、融点によって測定した場合のより良好な(高い)耐熱性、特に高温でのより低い圧縮永久ひずみ、より低い応力緩和、より高いクリープ抵抗、より高い結晶化(凝固)温度に起因するより速い硬化、ならびにより良好な油及び充填剤受容を有する。
本発明の共重合体は、独特な結晶化度と分岐分布の関係も示す。すなわち、本発明の共重合体は、特に、同じモノマー及び同じモノマーレベルを含有するランダムコポリマー又は等価の総合密度でのポリマーの物理的ブレンド、例えば高密度ポリマーと低密度コポリマーのブレンド、と比較して、CRYSTAF用いて測定される最高ピーク温度とDSCを用いて融解熱の関数として測定される最高ピーク温度の間に比較的大きな差を有する。本発明の共重合体のこの独特の特徴は、ポリマー骨格内のブロック中のコモノマーの独特な分布に起因すると考えられる。詳細には、本発明の共重合体は、異なるコモノマー含量の交互ブロック(ホモポリマーブロックを含む)を含むことができる。本発明の共重合体は、Schultz−Flory型の分布である、異なる密度又はコモノマー含量のポリマーブロックの数及び/又はブロックサイズの分布も含むことができる。加えて、本発明の共重合体は、ポリマー密度、弾性率及び形態とは実質的に無関係である独特なピーク融点及び結晶化温度プロフィールも有する。
本発明の実施形態において使用するプロピレン/α−オレフィン共重合体は、好ましくは、エチレン又はC4−C20α−オレフィンの少なくとも一方とプロピレンの共重合体である。プロピレンとC4−C20α−オレフィンのコポリマーが特に好ましい。前記共重合体は、C4−C18ジオレフィン及び/又はアルケニルベンゼンをさらに含むことがある。プロピレンとの重合に有用な適する不飽和コモノマーとしては、例えば、エチレン不飽和モノマー、共役又は非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。そのようなコモノマーの例としては、C4−C20α−オレフィン、例えば、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。1−ブテン及び1−オクテンが特に好ましい。他の適するモノマーとしては、スチレン、ハロ置換又はアルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブテン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、及びナフテン系のもの(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン及びシクロオクテン)が挙げられる。
プロピレン/α−オレフィン共重合体は、好ましいポリマーであるが、他のプロピレン/オレフィンポリマーも使用することができる。本明細書において用いる場合のオレフィンは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素系化合物の一科を指す。触媒の選択に依存して、任意のオレフィンを本発明の実施形態において使用することができる。好ましくは、適するオレフィンは、ビニル性不飽和を含有するエチレン又はC4−C20脂肪族及び芳香族化合物、ならびに環式化合物、例えばシクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン及びノルボルネン(その5及び6位がC1−C20ヒドロカルビル又はシクロヒドロカルビル基で置換されているノルボルネンを含むが、これに限定されない)である。そのようなオレフィンの混合物、ならびにそのようなオレフィンとC4−C40ジオレフィン化合物との混合物も含まれる。
オレフィンモノマーの例としては、エチレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C4−C40ジエン類(1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンを含むが、これらに限定されない)、他のC4−C40α−オレフィン類、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。一定の実施形態において、前記α−オレフィンは、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、又はこれらの組み合わせである。ビニル基を含有するいずれの炭化水素も本発明の実施形態において使用することができる可能性があるが、モノマーの分子量が高くなりすぎると、実施の問題点、例えば、モノマー入手可能性、費用、及び結果として生ずるポリマーから未反応モノマーを適便に除去する能力は、より解決し難いものとなり得る。
本明細書に記載する重合プロセスは、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどをはじめとするモノビニリデン芳香族モノマーを含むオレフィンポリマーの生産によく適する。詳細には、プロピレンとスチレンを含む共重合体を、本明細書における教示に従って作製することができる。場合によっては、改善された特性を有するプロピレンとスチレンとC4−C20アルファオレフィンとを含む、場合によってはC4−C20ジエンを含む、コポリマーを作製することができる。
適する非共役ジエンモノマーは、6から15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖又は環式炭化水素ジエンであり得る。適する非共役ジエンの例としては、直鎖非環式ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分岐鎖非環式ジエン、例えば5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン及びジヒドロミリセンとジヒドロオシネンの混合異性体、単環脂環式ジエン、例えば1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン及び1,5−シクロドデカジエン、ならびに多環脂環式縮合及び架橋環ジエン、例えばテトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン、アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル及びシクロアルキリデンノルボルネン、例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン及びノルボルナジエンが挙げられるが、これらに限定されない。EPDMを作製するために概して使用されるジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、及びジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)及び1,4−ヘキサジエン(HD)である。
本発明の実施形態に従って作ることができる望ましいポリマーの一類は、プロピレン、エチレン、C4−C20α−オレフィン、及び場合によっては1つ又はそれ以上のジエンモノマーの弾性共重合体である。本発明のこの実施形態での使用に好ましいα−オレフィンは、式CH2=CHR*によって表され、この式中のR*は、1から12個の炭素原子の線状又は分岐アルキル基である。適するα−オレフィンの例としては、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンが挙げられるが、これらに限定されない。前記プロピレン系ポリマーは、当分野では一般に、EP又はEPDMポリマーと呼ばれる。そのようなポリマー、特にマルチブロックEPDM型ポリマー、を作製する際に使用するために適するジエンとしては、4から20個の炭素原子を含む共役又は非共役、直鎖又は分岐鎖、環式又は多環式ジエンが挙げられる。好ましいジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、及び5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
ジエン含有ポリマーは、より多い又はより少ない量のジエン(無しを含む)及びα−オレフィン(無しを含む)を含有する交互セグメント又はブロックを含むため、ジエンとα−オレフィンの総量を、後のポリマー特性の喪失を伴わずに減少させることができる。すなわち、ジエン及びα−オレフィンモノマーは、ポリマー全体にわたって均一に又はランダムにではなくポリマーの1つのタイプのブロックに優先的に組み込まれるため、より効率的に利用され、その後、そのポリマーの架橋密度は、より良好に制御され得る。そのような架橋性エラストマー及び硬化生成物は、より高い引張強度及びより良好な弾性回復率をはじめとする進んだ特性を有する。
前記プロピレン/α−オレフィン共重合体は、そのポリマー構造に少なくとも1つの官能基を組み込むことによって官能化することができる。例示的官能基としては、例えば、エチレン性不飽和一及び二官能性カルボン酸、エチレン性不飽和一及び二官能性カルボン酸無水物、それらの塩及びそれらのエステルを挙げることができる。そのような官能基をプロピレン/α−オレフィン共重合体にグラフトさせることができ、又はプロピレン及び任意の追加のコモノマーと共重合させてプロピレンと官能性コモノマーと場合によっては他のコモノマー(単数もしくは複数)の共重合体を形成することができる。ポリプロピレンに官能基をグラフトさせるための手段は、例えば、米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号及び同第4,950,541号に記載されており、これらの特許の開示は、それら全体が参照により本明細書に援用されている。1つの特に有用な官能基は、無水マレイン酸である。
前記官能性共重合体中に存在する官能基の量は、様々であり得る。前記官能基は、概して、コポリマー型官能化共重合体中に、少なくとも約1.0重量パーセント、好ましくは少なくとも約5重量パーセント、及びさらに好ましくは少なくとも約7重量パーセントの量で存在し得る。前記官能基は、概して、コポリマー型官能化共重合体中に、約40重量パーセント未満、好ましくは約30重量パーセント未満、及び最も好ましくは約25重量パーセント未満の量で存在するであろう。
ブロック指数に関する追記
ランダムコポリマーは、次の関係を満たす。P. J. Flory, Trans. Faraday Soc., 51, 848 (1955)参照(これはその全体が参照により本明細書に援用されている)。
方程式1では、結晶性モノマーのモル分率、Pを、そのコポリマーの融解温度Tm、及び純粋な結晶性ホモポリマーの融解温度Tm 0、と関係付けている。前記方程式は、ATREF溶出温度(°K)の逆数の関数としてのプロピレンのモル分率の自然対数についての関係に類似している。
類似したタクチシティー及び領域欠陥(region defects)の様々な均質に分岐したコポリマーについてのプロピレンモル分率とATREFピーク溶出温度及びDSC融解温度との関係は、Floryの式に類似している。類似して、類似したタクチシティー及び領域欠陥のほぼすべてのプロピレンランダムコポリマー及びランダムコポリマーブレンドの分取TREF画分は、小さな分子量効果を除いて、このラインに乗る。
Floryによると、P(プロピレンのモル分率)が、1つのプロピレン単位がもう1つのプロピレン単位の前にある又は後に続くであろう条件付き確率に等しい場合には、そのポリマーはランダムである。一方、任意の2つのプロピレン単位が連続的に存在する条件付き確率が、Pより大きい場合には、そのコポリマーは、ブロックコポリマーである。条件付き確率がPより小さい残りのケースは、交互コポリマーを生じさせる。
ランダムコポリマーではアイソタクチックプロピレンのモル分率が、プロピレンセグメントの特異的分布を主として決め、そしてまたその結晶化挙動は、所与の温度での最小平衡結晶厚によって支配される。従って、本発明のブロックコポリマーのコポリマー融解及びTREF結晶化温度は、ランダムな関係からの偏差の大きさに関係付けられ、そのような偏差は、そのランダム等価コポリマー(又はランダム等価TREF画分)に比べて所与のTREF画分がどれ程「ブロッキー」であるかを定量する有用な方法である。用語「ブロッキー」は、特定のポリマー画分又はポリマーが、重合したモノマー又はコモノマーのブロックを含む程度を指す。2つのランダム等価物、一定温度に対応するものとプロピレンの一定モル分率に対応するもの、がある。これらは、直角三角形の辺を構成する。
点(T
X、P
X)は、分取TREF画分を表し、この場合のATREF溶出温度T
X、及びNMRプロピレンモル分率、P
Xは、測定値である。全ポリマーのプロピレンモル分率、P
ABもNMRによって測定する。用語「ハードセグメント」溶出温度及びモル分率、(T
A、P
A)は、概算することができ、でなければプロピレンコポリマーについては(立体特異的チーグラー・ナッタ触媒によって作製された)アイソタクチックプロピレンホモポリマーのものに設定することができる。T
AB値は、測定したP
ABに基づく算出ランダムコポリマー相当ATREF溶出温度に対応する。測定したATREF溶出温度、T
Xから、対応するランダムプロピレンモル分率、P
X0も算出することができる。ブロック指数の二乗を(P
X、T
X)三角形と(T
A、P
AB)三角形の面積比であると定義する。これらの直角三角形は相似であるので、この面積比は、(T
A、P
AB)からランダムラインまでの距離と(T
X、P
X)からランダムラインまでの距離の乗算比でもある。加えて、これらの直角三角形の相似は、対応する辺のいずれかの長さの比を面積の代わりに用いることができることを意味する。
最も完璧なブロック分布は、点(TA、PAB)で単一溶出画分を有する全ポリマーに対応することに留意しなければならない。そのようなポリマーは、「ハードセグメント」におけるプロピレンセグメント分布を保つが、(おそらく、ソフトセグメント触媒によって生ずるものとほぼ同一であるランで)利用可能なすべてのオクテンを含有するからである。殆どの場合、「ソフトセグメント」は、ATREF(又は分取TREF)において晶出しないであろう。
利用及び最終用途
本発明のメソフェーズ分離プロピレン/α−オレフィンブロック共重合体は、キャスト、吹き付け、カレンダー加工又は押出しコーティングプロセスによって作製された少なくとも1つのフィルム層、例えば、単一層フィルム、又は多層フィルム中の少なくとも1つの層を含む物;成形品、例えば、ブロー成形、射出成形、又は回転成形品;押出物;繊維;及び織布又は不織布をはじめとする有用な物品を製造するための様々な熱可塑性樹脂二次加工プロセスに用いることができる。前記ポリマーは、ダブル・バブル又はテンター・フレーム・プロセスで製造される延伸フィルムにおいても使用することができる。本発明のポリマーを含む熱可塑性組成物としては、他の天然又は合成ポリマー、添加剤、補強剤、発火防止剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、増量剤、架橋剤、発泡剤、及び可塑剤とのブレンドが挙げられる。本発明の実施形態による1つ又はそれ以上のポリマーを少なくとも一部は含む、外面層を有する、多成分繊維、例えば芯鞘繊維は、特に有用である。前記ポリマーは、玩具;宝石、例えば合成オパール;及び装飾用品、例えばフィルムなどの物品において使用することもできる。
加えて、それらを使用して、フォトニック結晶、フォトニック・バンド・ギャップ材料、又は弾性光干渉フィルムを形成することができる。そのような材料は、屈折率が交替する周期的相分離メソドメインであって、UV−可視スペクトルにおいてのフォトニック・バンド・ギャップを生じさせるサイズの該ドメイン、例えば、米国特許第6,433,931号(これは、参照により本明細書に援用されている)に開示されているものを含む。
フォトニック・バンド・ギャップ材料は、一定の方向の規定周波数範囲(バンド)内の電磁放射線の伝搬を妨げるものである。すなわち、バンドギャップ材料は、規定エネルギーで一定方向の光の伝播を防止する。この現象は、その材料の別のドメインの特定の構造的配置及びそれらのドメインの屈折率のための、少なくとも一方向のその材料に対する特定周波数の電磁放射線の完全な反射と考えることができる。これらの材料を構成する別のドメインの構造的配置及び屈折率が、特定周波数付近に集中する光の伝播を抑制するフォトニック・バンド・ギャップを形成する。(Joannopoulos, et al., "Photonic Crystals, Molding the Flow of Light", Princeton University Press, Princeton, NJ. , 1995)。一次元フォトニック・バンド・ギャップ材料は、一方向の構造及び屈折周期性を含み、二次元フォトニック・バンド・ギャップ材料は、二方向の周期性を含み、ならびに三次元フォトニック・バンド・ギャップ材料は、三方向の周期性を含む。
フォトニック結晶又は光干渉フィルムの反射率及び透過率特性は、ドメイン又は領域の光学的厚さを特徴とする。前記光学的厚さは、実際の厚さ掛けるその屈折率の積と定義される。ドメインの光学的厚さに依存して、赤外、可視又は光の紫外波長を反射するようにフィルムを設計することができる。
フォロニック用途に有用な材料は、そのセグメント又はブロックを含む材料の屈折率の差を特徴とするブロック又はセグメントを含有する。隣接ドメインの屈折率プロフィールを調整するように適切な選択を行って、その構造によって生ずる光電界強度を選択的に濃縮又は拡散させることができる。これは、ブロックの組成を調整することによって遂行することができる。1つのタイプのドメインに対して優先的な親和性を有する成分をブレンドすることによって、屈折率の対比をさらに強化することができる。1つのアプローチは、界面活性剤層でコーティングされており、ドメインのうちの1つに選択的に組み込まれる高指数ナノ粒子添加剤、例えばCdSe粒子を利用するものである。好ましくは、前記材料は、0.01、さらに好ましくは0.02、さらに好ましくは0.03又はそれ以上のセグメント又はブロックの屈折率の差を有する。
構造的配置の周期性は、その構造によって望ましくもたらされる又はブロック化される電磁放射線の(真空(自由空間)におけるものとは対照的にそのドメインを含む材料における)波長に類似したサイズの別のドメイン、好ましくは対象となる波長以下のサイズのドメイン、を生成することによって対処することができる。隣接ドメイン間の屈折率の比は、その材料におていバンドギャップを確立する十分な大きさでなければならない。バンドギャップは、屈折率比(n1/n2)に関連して論じることができ、この場合のn1は、第一ドメインの有効屈折率であり、及びn2は、第二ドメインの有効屈折率である。一般に、屈折率比(屈折の対比)が大きいほど、バンドギャップは大きく、本発明において、バンドギャップは、所定の閾値より上になるように調整され、一次元系でについては一方向に、二次元系については二方向に、及び三次元系については三方向に拡大する。隣接ドメインの屈折率プロフィールを調整するために適切な選択を行って、その構造によって生ずる光電界強度を選択的に濃縮又は拡散させることができる。これは、本発明では、ハード及びソフトブロックの組成を調整することによって遂行することができる。1つのタイプのドメインに対して優先的な親和性を有する成分をブレンドすることによって、屈折率の対比をさらに強化することができる。1つのアプローチは、界面活性剤層でコーティングされており、ドメインのうちの1つに選択的に組み込まれる高指数ナノ粒子添加剤、例えばCdSe粒子を利用するものである。好ましくは、隣接する異なるドメインは、約100nmから約10μmの波長範囲内に存する連続波長セットについての屈折率に、一方の他方に対する屈折率の比が、1より大きく、好ましくは少なくとも約1.01より大きく、及びさらに好ましくは少なくとも約1.02より大きくなるような差がある。一部の実施形態において、約100nmから約10μmの波長範囲内に存する連続波長セットについての前記屈折率比は、1.00から1.10、好ましくは1.01から1.06及びさらに好ましくは1.02から1.05である。実施形態の別のセットによると、これらの好ましい屈折率比は、約300nmから約700nmの波長範囲内に存する連続波長セットについて存在し、ならびに実施形態の別のセットによると、約400nmから約50μmの波長範囲内に存する連続波長セットについての一方の他方に対する屈折率比は、少なくとも1.0であり、又は1.00から1.10、好ましくは1.01から1.06及びさらに好ましくは1.02から1.05である。これらの誘電構造は、それらの分散関係でバンドギャップを示すものであり、一定の周波数の電磁波を支持せず、従って、それらの波長のその材料の伝播は抑制される。
前記ポリマー構造は、(フォトニック・バンド・ギャップ特性に必要な周期構造で配列されていない)非配列状態では、対象となる電磁放射線に対して少なくとも部分的に透過性である材料で作られているはずである。前記材料が、対象となる電磁放射線に対して少なくとも部分的に透過性であるとき、そのフォトニック・バンド・ギャップ材料の秩序ドメイン構造の欠陥が、その電磁放射線が通過できる経路を規定する。その放射線を遮断するための基準が壊されるからである。
一定の組成物において、ブロック又はセグメントの1つ又はそれ以上は、結晶質又は半結晶質である。この結晶化度が、フォトニック材料として使用されている先行技術の材料と比較される本発明の共重合体の1つの識別特徴である。この結晶化度は、特に、1つのブロック又はセグメントが結晶質であり、他のブロックタイプが非晶質であるとき、フォトニック挙動を可逆的にONにしたりOFFにしたりすることができるメカニズムを生じさせる。例えば、溶融半結晶質ポリエチレンの屈折率は、非晶質エチレン/1−オクテン共重合体のものと同じである。そのような材料をそれらの融解温度より上に加熱することができ、この場合、それらは、フォトニック結晶の特徴を示すために必要な屈折率の対比を失う。しかし、冷却すると、その半結晶質材料は、結晶化し、屈折率の対比及び結果として生ずるフォトニック特性を回復する。
ドメインのサイズは、その材料のフォトニック特性に影響を及ぼすもう1つの重要なパラメータである。ドメインサイズは、様々なブロックの相対分子量及び組成を選択することによって変えることができる。加えて、希釈剤(相溶性溶剤、ホモポリマーなど)を使用して、個々のタイプのドメインを選択的に膨潤させることができる。
一部の実施形態において、ドメインの長距離秩序及び配向は、加工技術による影響を受け得る。1つのそのような加工技術は、均質混合スパンキャストフィルムを、それを所望の秩序相分離形態を生じさせるために十分な時間、その成分の最高ガラス転移温度(Tg)又は融解温度(Tm)より上にすることによって、処理することを含む。結果として生ずる形態は、例えば柱形もしくは棒様、球形、二連続立方晶系、ラメラ又は別様であり得る形状を有するメソドメインに分離する成分の形をとるであろう。前記フィルムは、加熱により、又は例えば、前記成分の転移温度を動作環境の室温又は周囲温度より下に下げる溶剤の使用により、前記成分のTg又はTmより上にすることができる。処理する前、そのコポリマーは、その成分のTg又はTmより上にするとメソドメインに分離するであろう熱力学的に不安定な単相の状態であろう。一定の例では、ABブロックコポリマーにおける相分離は、異なる屈折率を有する交互A−Bスラブ又は層から成る積層ラメラを生じさせるであろう。加えて、そのようなコポリマーが溶液からロールキャストされる場合には、十分に秩序化された全体にわたって配向したメソドメインが形成され得る。ラメラフィルムを全体にわたって配向させる他の公知の方法は、表面誘導秩序化、機械的、例えば剪断、整合、二軸配向、及び電場もしくは磁場整合の使用である。
本発明の他の実施形態は、所望の秩序構造を獲得するためにスピン又はロールキャスティングを必要としない。例えば、本発明のポリマーの単純圧縮成形は、フォトニック特性を示すフィルムを生じさせることができ、従って、加工費用の点でとてつもない利益をもたらすことができる。他の典型的な溶融加工技術、例えば射出成形、インフレートフィルム又はキャストフィルム加工、異形材押出、延伸繊維又はブロー成形繊維形成、カレンダー成形及び他の従来のポリマー溶融加工技術を用いて類似の効果(affects)を達成することができる。
前記フィルムの一部の例は、そのフィルム上への入射光の角度を変えると虹色及び変化する色を示す。
本発明のブロック共重合体を二次加工してメカノクロミックフィルムを形成することもできる。メカノクロミックフィルムは、色を変えることによる変形に応答する材料である。これらの材料は、反射する波長を、かけるひずみに伴って光学的厚さの変化により可逆的に変化させる。フィルムを伸長すると、層の厚さの変化に起因してフィルムは異なる波長の光を反射する。そのフィルムを緩和すると、層がそれらのもとの厚さに戻り、もとの波長を反射する。場合により、その反射率を応力をかけて可視から近赤外領域に調整することができる。
本発明のブロック共重合体は、米国特許第3,711,176号(これは、参照により本明細書に援用されている)に記載されているような赤外、可視、又は紫外線についてのポリマー反射体を形成するために使用することもできる。この特許には、50−1000nm規模の層を有する秩序積層構造を生成するための、多数のポリマー材料の押出により形成される材料が記載されている。本発明の共重合体は、反射体を形成するために費用がかかる及び時間がかかる加工技術、すなわちミクロ層押出を必要としないので、これらの材料より有利である。
本発明のブロック共重合体の光干渉フィルムは、様々な光学用途、例えば、フレネルレンズ、ライトパイプ、ディフューザ、偏光子、サーマルミラー、回折格子、帯域通過フィルタ、光学スイッチ、光フィルタ、フォトニック・バンド・ギャップ繊維、光導波路、全方向反射板、輝度強化フィルタなどにおいても有用であり得る。
本発明の透明弾性光干渉フィルムは、多数の用途を有する。そのような材料は、窓用フィルム、照明用途、圧力センサ、プライバシーフィルタ、目の保護、有色表示、UV保護テープ、温室フィルム、包装、玩具及びノベルティー商品、装飾及びセキュリティー用途において使用することができる。例えば、前記フィルムは、変化する色のパターンを示す包装のために使用することができる。変則形状の品目のラッピングは、様々な方向にフィルムを伸張させ、独特な色のパターンを示させるであろう。伸張させると色を変化させる玩具又はノベルティー商品、例えば風船又はエンボスパターンも可能である。膨張/収縮メカニズムによるフィルムの部分の選択的伸張が拍動変色効果を生じさせる脈動サイン又は広告を作製することができる。
本発明の光干渉フィルムは、赤外線を反射するソーラースクリーンとして使用される場合もある。様々な厚さのドメインを有するフィルムの場合、フィルムを、広域幅の光を反射するようにさせることができる。フィルムの弾性のため、フィルムを伸張することによってフィルムの赤外を反射する特徴を変えることができる。従って、所望の特徴に依存して、フィルムを一日の一定の時間の間、赤外を反射するようにさせ、その後、伸張させて可視光に対して透明に見えるようにすることができる。伸張しているときでさえ、このフィルムは紫外波長を反射し続けるであろう。
本発明の弾性フィルムは、光の異なる波長を反射させるようにフィルムを伸張することによって、写真技術において調節可能な光フィルタとして使用することもできる。本発明のフィルムは、農業において使用される場合もある。植物成長が、その植物が受ける光の波長による影響を受けることは公知であるので、所望される光の透過波長を変える温室フィルムを形成することができる。さらに、日中、太陽光の入射角が変化するにつれて光の特定の波長の透過が望まれる場合、フィルムを、伸張又は緩和することによって調節して、一定の透過波長を維持することができる。
本発明のフィルムは、圧力変化を検出し、それに応じて変色を示す圧力センサとして、使用することもできる。例えば、本発明のフィルムは、圧力又は膨張センサとしての機能を果たすように、ダイヤフラムに二次加工する又はタイヤのものなどの別のゴム状表面に取り付けることができる。従って、例えば、膨張不足状態に遭遇すると赤色、正しい圧力があると緑色、及び過膨張状態が存在すると青色を反射する、弾性フィルムセンサを生じさせることができる。
本発明の弾性フィルムは、ひずみゲージ又は応力塗料として使用される場合もある。本発明のフィルムを構造の表面にラミネートし、その後、荷重に曝露する。その後、そのフィルムから反射される光の波長の変化を測定する分光光度計を使用して、その表面の変形を正確に測定することができる。極めて大きい表面積を本発明のフィルムで被覆することができる。
本発明の弾性フィルムは、米国特許第7,138,173号(これは、その全体が参照により本明細書に援用されている)に記載されているものなどの有色表示において有用である。そのような表示は、人目を引き付ける方法で情報を表示するための、又は表示されている特定の物品に注意を引き付けるための、又は販売のための手段として使用されることが多い。これらの表示は、ビジュアルサイン伝達(例えば、屋外広告掲示板及び街路標識)において、キオスクにおいて、及び多種多様な包装材料上に用いられることが多い。視角の関数として表示の色を変化させることができれば特に有利である。「カラー・シフト・ディスプレー」として公知のそのような表示は、末梢的に見たときでさえ人目をひき、表示している対象に観察者の注意を向けるのに役立つ。
本発明のフィルムを使用して、様々な光学的配置を有するバックライト付きの表示を作ることができる。実際の装置は、必ずしも表示である必要は無く、フィルムスペクトル−角度特性とランプからの波長放出を併用して所望の配光パターンを作る照明器具又は光源である場合もある。フィルムの高い反射率と対でのこのリサイクルは、従来の表示で見られるものよりはるかに明るい色彩表示を生じさせる。
本発明のフィルムは、ちょうど従来のバックライトが広告標識又はコンピュータバックライトのために現在使用されているように、分散光源又は幾つかの点放射源と併用することができる。バックライトの開放面を覆う、光干渉によって均一に着色されたフラット反射フィルムは、観察者がその標識を通り過ぎるにつれて色を変えるであろう。染色又は着色された選択色の不透明又は半透明レタリングを、レーザー又はスクリーン印刷技術により、反射カバーフィルムに適用することができる。あるいは、カバーフィルムとは異なる有色反射フィルムから成る干渉反射レタリングを、そのカバーフィルムの中に作られた切抜き部に適用することもでき、このレタリングは、そのカバーフィルムからの色の反対の変化を表示し、例えば、カバーフィルムは、角度に伴って緑色からマゼンタへの変化を表示するが、そのレタリングは、同じ角度によってマゼンタから緑色への変化を示す。多くの他の色の組み合わせも可能である。
前記カバーフィルムの変色を用いて、レタリング、メッセージ、又は大きな入射角ではフィルムを通して見えないが正常な入射方向で見るとよく見えるようになる、又はその逆の、物体でさえ「見せる」こともできる。この「見せる」効果は、バックライトにおいて特定の色の放射光を使用して、又は反射カバーフィルムの下の染色された有色レタリングもしくは物体によって、達成することができる。
この表示の輝度は、バックライトキャビティの内側に高反射干渉フィルムを内張りすることによって強化することができる。この同じ方法で、一定の色だけを優先的に反射する反射フィルムを低反射率キャビティに内張りすることによって、その表示の総合的なカラーバランスを制御することができる。選択された色の輝度は、そのライナを通しての一定の角度での透過のため、この場合、損なわれる。これが望ましくない場合、適切な色及び吸光度の染料で広帯域ライナーフィルムをコーティングすることによって、所望のカラーバランスを果たすことができる。
前記有色反射フィルムを染色又は着色された有色フィルムと併用し、後者を観察者側にして、例えば、色がシフトするバックグラウンドを生じさせながらレタリングに関する色のシフトを無くすといった望ましい色彩管理を達成することができる。
前記バックライト標識は、平面である必要は無く、前記有色フィルムは、照光式立方又は両面広告表示などの標識の1つより多くの面に適用されることがある。
本発明のフィルムを使用して、様々な非バックライト付き表示を作製することもできる。これらの表示は、太陽光、環境照明又は専用光源であり得る外部光源からの光の少なくとも1つの偏光が、その透過スペクトルを観察者が見る前に、干渉フィルムを2回通過するようされている。大部分の用途において、これは、その干渉フィルムを反射又は偏光面と併用することによって達成される。そのような表面は、例えば、金属の堆積によって形成されるタイプの従来の鏡、研磨金属もしくは誘電物質、又はポリマーミラーもしくは偏光フィルムであり得る。
本発明の干渉フィルムを、鏡面反射面又は拡散反射面のいずれとも有利に併用することができるが、拡散反射基板のほうが好ましい。そのような基板は、フィルムによって透過される(及びその後、その基板によって反射される)色を、そのフィルムによる鏡面反射である有色光より、入射面の外に又は異なる反射角で入射面の中に向けさせ、それによって、観察者は透過される色と反射される色とを識別することができる。拡散反射型白色ペイントで処理したカードストック又は表面などの白色拡散面は、それらが角度によって色を変える表示を作るであろうという点で特に有利である。
他の実施形態において、拡散面、又はその部分、それら自体を着色することができる。例えば、インク文字を含む拡散面を、そのインクが吸収する同じスペクトル領域にわたる反射光に向けた少なくとも1つの光学積層体を有する干渉フィルムをラミネートすることができる。結果として生ずる物品における文字は、一定の目視角度では見えないが、他の角度でははっきりと見えるだろう(同様の技術を、干渉フィルムの反射帯域幅とインクの吸収バンドとを合わせることによってバックライト付き表示に使用することができる)。さらに他の実施形態において、前記干渉フィルムそれ自体に、不透明である場合もあり、又は半透明である場合もある、拡散白色又は着色インクで印刷することができる。この文脈での半透明とは、実質的な拡散効果で実質的に透過可能であることを意味すると定義する。あるいは、それ自体にも印刷することができる白色又は着色面に前記干渉フィルムをラミネートすることができる。
さらに他の実施形態では、本発明のフィルムを、そのフィルムによって透過される波長を吸収する基板と併用することができ、それによって、単にそのフィルムの反射スペクトルにより表示の色を制御することができる。そのような効果は、例えば、そのスペクトルの可視領域内の一定の波長を透過し、可視領域内の他の波長を反射する本発明の有色ミラーフィルムを黒色の基板と併用すると、観察される。
本発明の光学フィルム及び装置は、天窓又はプライバシー・ウインドーなどの明かり採り窓での使用に適する。そのような用途では、本発明の光学フィルムを、プラスチック又はガラスなどの従来のグレージング材と併用することができ、又は前記材料の成分として使用することができる。このように準備したグレージング材は、偏光特異的になるようにすることができるので、その明かり採り窓は、第一の偏光に対して本質的に透明であるが、第二の偏光を実質的に反射し、それによってまぶしさを無くす又は減少させる。前記光学フィルムの物理的特性を本明細書において教示するように修飾して、グレージング材が、一定のスペクトル領域(例えば、UV領域)内の一方又は両方の偏光の光は反射するが、別の領域(例えば、可視領域)の一方又は両方の偏光の光は透過することとなるようにすることができる。これは、特定波長の反射及び透過を利用して植物成長、開花及び他の生物学的プロセスを制御することができる温室用途において、特に重要である。
本発明の光学フィルムは、特定波長の光を透過する装飾的明かり採り窓を設けるために使用することもできる。そのような明かり採り窓は、例えば、特定の色(単数もしくは複数)(例えば、青色もしくは金色)を部屋に付与するために使用することができ、又は例えば波長特異的照明パネルの使用により、その装飾にアクセントをつけるために使用することができる。
本発明の光学フィルムは、当分野に公知であるような様々な手法で、例えばコーティング又は押出により、グレージング材に組み込むことができる。従って、1つの実施形態では、例えば光学接着剤の使用を伴うラミネーションにより、前記光学フィルムをグレージング材の外面のすべて又は一部に接着する。もう1つの実施形態において、では、本発明の光学フィルムを、ガラス又はプラスチックの2枚の窓ガラスの間に挟み、結果として生じた複合材を明かり採り窓に組み込む。勿論、前記光学フィルムに任意の追加の層又はコーティング(例えば、UV吸収層、曇り止め層、又は反射防止層)を施して、それが望まれる特定の用途により適するようにすることができる。
明かり採り窓における本発明の有色フィルムの1つの特に有利な使用は、日の当たる窓へのそれらの適用であり、この場合、夜に対して昼について可逆的な着色が観察される。日中、そのような窓の色は、主として太陽光側のフィルムの透過特性によって決まる。しかし、夜は、フィルムを通した透過が観察される光は殆ど無く、従って、フィルムの色は、その部屋を照明するために使用される光源側のフィルムの反射率によって決まる。日光を模擬する光源の場合、その結果は、日中のフィルム外観の補色(complimentary color)である。
本発明のフィルムは、前に説明したバックライト付き及び非バックライト付き表示をはじめとする様々な照明器具において使用することができる。所望の用途に依存して、前記フィルムは、外観が、一様に着色されている場合があり又は虹色である場合があり、そのスペクトル選択性を及び所望の波長範囲にわたって透過するように又は反射するように変えることができる。さらに、前記フィルムは、明るさが増すように光のリサイクルを取り入れている偏光照明用途、例えば偏光式オフィス業務用ライトもしくは偏光表示、のために一方向だけの偏光の光を反射又は透過するようにさせることができ、又は有色ミラーもしくはフィルタが望ましい用途において使用されるときには両方の偏光を透過もしくは反射させるようにすることができる。
最も単純なケースでは、本発明のフィルムをバックライト照明器具におけるフィルタとして使用する。典型的な器具は、ハウジングと光源を有し、及び光源の後ろの又は光共振器の内面の少なくとも一部を覆う拡散又は鏡面反射要素を含むことがある。前記照明器具の出力は、光源を直接見ないように隠すフィルタ又は拡散要素を概して含む。照明器具が望まれる特定の用途に依存して、光源は、蛍光灯、白熱電球、固体又はエレクトロルミネッセンス(EL)光源、ハロゲン化金属ランプ、又は太陽光照明である場合さえあり、最後のものは、自由区間伝播、レンズ系、ライトパイプ、偏光保存光ガイドによって、又は当分野に公知であるような他の手段によって光共振器に伝達され得る。前記光源は、拡散型である場合もあり、又は鏡面型である場合もあり、及び点光源と併用されるランダム化、偏光解消面を含む場合がある。前記照明器具の要素は、様々な配置に配置することができ、ならびに審美的及び/又は機能的考察によって決定されるとおりハウジングの中に配置することができる。そのような器具は、一般に、建築照明、舞台照明、屋外照明、バックライト付き表示及び標識、ならびに自動車ダッシュボードの中にある。本発明のフィルムは、照明器具の出力の外観が角度と共に変わるという利点を提供する。
本発明のカラー・シフト・フィルムは、指向性の照明において用いられるとき、特に有利である。高性能ランプ、例えば一般に道路や庭の照明用途で使用されるナトリウム灯は、概して、ただ1つの主要な波長における分光放射を有する。狭帯域にわたって放射するそのような光源を本発明のフィルムと併用すると、放射光線の高指向性制御を達成することができる。例えば、本発明のフィルムを、そのランプの放射ピークと一致する狭い通過帯域で作ると、そのランプの放射は、設計角度付近の角度でのみそのフィルムを通過することができ、他の角度においては、光源から放射される光は、ランプ又はランプのハウジングに戻る。典型的な単色及び多色スパイキー(spikey)光源としては、低圧ナトリウムランプ、水銀ランプ、蛍光灯、コンパクト蛍光灯、及び冷陰極蛍光灯が挙げられる。加えて、前記反射フィルムは、単色光源で、特定の入射角での単一波長放射を遮断又は通過させることのみが必要であり得るので、必ずしも隘路タイプのものである必要は無い。これは、例えばランプ放射のものに近い波長でオン又はオフを切り替える方形波反射スペクトル、を有する反射フィルムも使用することができることを意味する。光源と本発明のフィルムを併用することができる一部の特定の幾何形状としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない:
(a)蛍光管などの柱状電球をその電球のピーク放射線の通常の入射透過率のために設計されたフィルムでラップする。すなわち、前記フィルムを、ランプ放射波長を中心とする通過帯域で設計する。この幾何形状では、ピーク波長の光がその電球の長軸から半径方向に主として放射される。
(b)反射ランプハウジング内の任意の電球幾何形状を、その電球のピーク放射線で透過するように選択されたフィルムでその開口部を覆うことによって、ハウジングの開口面に対して垂直な方向に放射するようにさせることができる。前記開口部は、下に向いている場合もあり、又は任意の他の方向に向いていることもあり、及びその光は、その開口面に垂直な方向の角度で見ることができるが、垂直から実質的に離れている入射角では見ることができない。
(c)あるいは、(b)において説明した組み合わせは、そのランプの放射波長より大きい波長で、垂直入射で測定される、1つ又はそれ以上の適切な通過帯域を設けることによって、垂直な角度から離れている1つ又はそれ以上の入射角でランプ放射を透過するように設計されているフィルムを用いることができる。このようにして、ランプ放射は、その通過帯域と放射ピークの位置を合わせるために通過帯域の青色シフトが十分である角度で伝達される。
(d)(a)において説明した幾何形状と(c)において説明した角分布フィルムを組み合わせることにより、その電球の長軸に平行は面での放射光の方向制御を有することができる柱状電球を得られるであろう。
(e)多色スパイキー光源、例えば3つの異なる波長での放射スパイクを有するものを、1つだけの透過バンドを有する本発明のフィルムと、及びそのフィルムが所与の入射角でそれら3色スパイクのうちの1つだけを透過し、且つそれぞれの放射ピークが異なる角度で透過されるように、組み合わせることができる。そのようなフィルムは、それぞれが異なる波長領域で反射する多数の群の層を使用して作ることができ、又は1群の層とそれらのより高次の高波長とを用いて作ることができる。一次帯域幅領域の幅及び従って高波長帯域幅の幅を制御して、一次反射帯域と高波長反射帯域との望ましい透過率ギャップを得ることができる。このフィルムと多色スパイキー光源の組み合わせは、明らかに「白色の」光源からその別の色に光を分割するように見えよう。
角度に伴うスペクトルシフトの速度は、少々垂直入射に近いので、光の角度制御は、本発明のフィルムに対する高い入射角と比較して垂直入射ではあまり有効でない。例えば、ランプの輝線の幅及び通過帯域の帯域幅に依存して、最小角度制御は、垂線を中心にして+/−10度ほども小さい場合もあり、又は+/−20度もしくは+/−30度ほども大きい場合もある。勿論、単線放射ランプの場合、最大角度制御限界はない。審美的又はエネルギー保存どちらの理由でも、水平面と垂直面の一方又は両方で概して+/−90度である、ランプが利用できる自由空間より小さい角度に角分布を限定することが望ましいことがある。例えば、顧客の要求に依存して、この角度範囲を+/−45、+/−60又は単に+/−75度に減少させることが望まれることがある。フィルムの垂線に対して45度又は60度などの高い入射角では、角度制御がさらにずっと有効である。言い換えると、これらの角度では、通過帯域は、垂直入射でシフトするより高いnm/度の速度で青色にシフトする。従って、これらの角度では、狭い放射ピークの角度制御を+/−5度のような数度以内に、又は非常に狭い通過帯域及び狭い輝線については、+/−2度ほどもの小ささに維持することができる。
本発明のフィルムは、所望のパターンでランプの角出力を制御する予め設計された様式に成形することもできる。例えば、光源付近に配置されるフィルムのすべて又は一部を、その波形の軸がランプ管の軸に平行又は垂直になるように、コルゲート又は三角波形に成形することができる。このような構造では直交面での異なる角度の指向性制御が可能である。
狭帯域光源と本発明のフィルムの組み合わせは、光を放射又は検出する角度を制御するために十分に役立つが、狭い放射スペクトルを有する光源は限られた数しか無く、従って、利用できる色の選択肢も限られる。あるいは、広帯域光源を、狭帯域光源のように動作するようにさせて、放射光の同様の指向性制御を達成することができる。一定の狭帯域波長領域では透過する色選択フィルムによって広帯域光源を覆うことができ、その後、その改良された光源を、同じ透過スペクトルを有する第二のフィルムと併用して、その光源/色選択フィルムの組み合わせから放射される光が、本発明のフィルムを設計角度でのみ再び通過できるようにすることができる。この配置は、一色より多い色に、例えば、3色赤色−緑色−青色系で、役立つであろう。フィルムの正しい選択によって、放射される色が所望の角度で透過されるであろう。他の角度では、放射波長がすべての及び一切の透過帯域と整合しないであろうし、光源は、暗色又は異なる色に見えるであろう。前記カラー・シフト・フィルムを広い範囲の波長にわたって透過するようにさせることができるので、事実上任意の色を得ることができ、及び放射光が観察される角方向を制御することができる。
方向依存性光源は、多くの用途で有用である。例えば、本発明の光源を、自動車の計器板を照明するために使用して、垂直な角度で計器を見ている運転手は透過光を見ることができるが、その光がフロントガラスで反射されない又は同乗者がその光を見ることができないようにすることができる。類似して、本発明の方向依存性光源を使用して、電飾標識又はターゲットを、一定角度、例えばそのターゲット又は標識に垂直な角度、でのみ知覚でき、他の角度ではできないように、作成することができる。あるいは、1つの色の光を1つの角度で透過するが、異なる色は別の角度で検出できるように前記フィルムを設計することができる。これは、例えば、車両のための、例えば洗車又は排気ガス点検ステーションのための進入路及び停止点の指示に有用であろう。本発明のフィルムと光源の組み合わせは、車両が電飾表示に近づき、運転手がその標識に対して垂直でない角度で本フィルムを見ていると緑色の光しか見えないが、その車両が停止すべき場所での角度、例えばその標識に垂直な角度、では知覚される透過光が赤色にシフトするように、選択することができる。本発明のフィルムと狭帯域光源の組み合わせは、セキュリティー装置にも有用であり、この場合は、本フィルムをセキュリティーラミネートとして使用し、同じフィルムでラップした光源を単純照合装置として使用する。本発明の方向依存性光源の他の例は、後続の実施例においてより詳細に説明する。
園芸などの用途に理想的に適するスペクトル選択フィルム及び他の光学体を本発明の教示に従って作ることができる。温室環境及び農業用途での植物の成長についての主な関心事は、植物成長に適する光の妥当なレベル及び波長についてのことである。不十分な又はむらのある照明は、むらのある成長又は未成熟な植物を生じさせる結果となる。高すぎる光レベルは、土壌を過度に加熱し、植物を損傷させ得る。環境太陽光線によって生ずる熱の管理は、特に南部の気候では、一般的な問題である。
本発明のスペクトル選択的カラーフィルム及び光学体は、管理植物成長に最適である特定波長の光を濾過して取り除くこと又は透過させることが望まれる多くの園芸用途において使用することができる。例えば、光合成に用いられる最も効率的な波長を送達して植物成長を促進するためにならびに土壌及び周囲温度を管理するために、熱生産性赤外及び非効率的可視太陽波長を濾過して除去するようにフィルムを最適化することができる。
図35に示すように、植物が、それらの成長周期の異なる部分の間、異なる波長に応答することは公知である。成長周期全体を通して、500−580nm範囲の波長は主として役に立たず、一方、400−500nm及び580−800nm範囲の波長は、成長反応は不正である。類似して、植物は、太陽放射の有意な部分を構成する約800nmを超えるIR波長に対して反応せず、そのため、太陽スペクトルからのこれらの波長の除去は、加熱を有意に低下させることができ、及び植物成長に有用な波長の追加の光線の濃縮に備えることができる。
温室において使用されている市販のランプは、光合成及び植物の他の光応答の促進に有効である。そのようなランプは、自然の、濾過されていない太陽光線へのサプリメントとして最も一般的に使用されている。青色(約400−500nm)、赤色(約600−700nm)、又はIR(約700−800nm)でエネルギーを放出するランプが成長促進に使用されている。1つの一般的な市販のグロウランプは、450及び660nmでのその放射最大量を有し、700nmを超える波長の放射は殆ど無い。もう1つの一般的な光源は、青色及び赤色での高い放射、ならびに近IR波長での高い放射を有する。599−580nmの範囲の波長を放射するランプは、「安全光」と呼ばれる。それらの放射は低応答領域に存し、有益にも有害にも植物成長に有意に影響しないからである。
全般照明に使用される光源は、「グロウライト」と類似した結果を達成するためにペアにされることが多い。一部の光源からの出力波長は、実際には成長を遅らせるが、これは、他の光源とペアにすることによって補償することができる。例えば、単独で使用される低圧ナトリウムは、クロロフィルの合成を抑制し得るが、低圧ナトリウムを蛍光灯又は白熱ランプと併用すると、正常な光合成が発生する。温室において使用される市販のライトの一般的なペアリングの例としては、(i)高圧ナトリウムランプとハライドランプ;(ii)高圧ナトリウムランプと水銀ランプ;(iii)低圧ナトリウムランプと蛍光灯と白熱ランプ;及び(iv)ハロゲン化金属ランプと白熱ランプが挙げられる。
温室環境において、カラーフィルタとして単独で使用されるとき、又は反射する裏材料と併用されるとき、本発明の色選択フィルム及び光学体は、最適な植物成長に望ましい波長の光の濃縮に有用である。前記フィルム及び光学体は、通常の濾過されていない太陽光線と共に使用することができ、又はそれらを人工広帯域光源と併用して、その光源から放出される光の波長を制御することができる。そのような光源としては、前記色選択フィルムに光学的に結合される、白熱ランプ、蛍光灯、例えば熱もしくは冷陰極放電ランプ、ハロゲン化金属ランプ、水銀灯、高及び低圧ナトリウムランプ、固体もしくはエレクトロルミネッセンス(EL)ライト、又は自然のもしくは濾過した太陽光線が挙げられるが、これらに限定されない。温室環境において熱を管理するために使用することができる上に、光合成及び他の植物光応答について最適化された波長の光の増加量を送達する、幾つかの濾過/濃縮システムをより詳細に説明しよう。
本発明の干渉フィルム及び光学体は、これらのフィルムによってもたらされるスペクトルをさらにいっそう最適化するために1つ又はそれ以上の直接又は事前濾過人工光源と共に使用することができる。場合によっては、前記干渉フィルムを前記人工光源に直接ラップする又は別様に連結させて、事実上、その光源が、管理植物成長に望ましい波長を主として放射するようにすることができる。典型的な温室の屋根及び/又は壁を構成する透明パネルに前記フィルムを直接ラミネートして、その建築物に入る光の多くが所望のスペクトル組成のものであるようにすることができ、そうでなければそのようなパネルを、そのパネル自体の中に1つ又はそれ以上の色選択フィルムを含めるように押出すことができる。その建築物に入る光のすべてが、まさにその波長範囲のものであるためには、日中を通して太陽光線の角度を補正するように移動するヘリオスタット又は他のメカニズムに取り付けたフィルムを有することが望ましいであろう。水平又は垂直から角度が週1回又は月1回しか変化しない南向きパネルなどの、より単純なメカニズムも、かなりよく機能し得る。
1つ又はそれ以上の反射材を使用して、濾過光を所望の位置に向けることもでき、ならびに様々な形状のデフレクタ及び/又は干渉フィルムを使用して部屋の所望の部分全域に光を向ける又は行き渡らせることができることは理解される。説明したこれらの使用の仕方に加えて、前記フィルムを、個々の植物のための濾過ラッピングとして、フィルム形状で又はスリットもしくはチョップト・マルチとして植物と土壌の間に配置する反射材として、あるいは水生植物のための水槽照明に使用するための反射材及びフィルタとして使用することができる。
植物成長に有用でない赤外及び/又は緑色光を透過又は反射するように調整することができる、前に説明したスペクトル選択フィルムに加えて、概して約660−680nmの赤色光の量、及び概して700−740nmの遠赤外線の量を制御するように設計されたフィルムは、植物成長の管理に特に有用である。生長を減少させ及び植物を枝分かれさせ又は繁殖させ、その結果、より太い、より濃厚な植物を生じさせるために赤色光の遠赤外線に対する比率を1.1又はそれ以上のレベルで維持すべきであることは証明されている。加えて、赤色/赤外比及び波長曝露のシーケンシングを正しく制御することにより、多くの植物を開花状態に至らせ、生長状態で維持することができる。一部の植物品種は、1分ほどもわずかな赤色又は遠赤外ドーピングで管理することができる。赤色光及び遠赤外線に対する植物応答は、J. W. Braun, et al., "Distribution of Foliage and Fruit in Association with Light Microclimate in the Red Raspberry Canopy, 64(5) Journal of Horticultural Science 565-72 (1989)に及び Theo J. Blow, "New Developments in Easter Lilly Height Control" (Hort. Re. Instit. Of Ontario, Vineland Station, Ont. LOR 2EOに記載されている。
赤/遠赤外比を制御する以前の試みは、温室二枚壁構造の窓ガラスの間の空洞にポンピングされる光遮断液を利用した。これは、その液体の添加及び除去が困難であるため、満足のいくものではなかった。他の試みは、屋根のグレージングに着色フィルムを使用するものであったが、温室内の植物品種が頻繁に変わると、又は屋外の天候条件が変わると、制御が難しい。本発明のフィルムは、この用途に理想的に適する。フィルムの厚さの勾配を変更することによって又はフィルムの角度を変えることによって赤色/赤外比を制御して、所望の波長が植物に届くようにすることができる。変動する屋外条件又は異なる植物品種の可変的要求を補償するために、好ましくは、前記フィルムは、例えば、引き下ろすもしくは巻き上げることができる屋根の輪郭に沿ったローリング・ブラインドによって、又は植物の高さより上で水平に引かれるブラインド・クラスによって、それを使用する又は保管することができように温室の中に位置する。
本発明のフィルムを従来の鏡と併用して、植物に届く太陽光線スペクトルの任意の所望の部分の強度を制御することもできる。一般に、日中全体を通して植物にとって有用な光の波長及び強度の一定したレベルに植物を曝露することが望ましい。しかし、典型的な晴天日において、光のレベルは、ほぼ正午にピークとなり、この光のレベルは、多くの植物によって過剰であり得;多くの場合、葉の温度が上昇し、それが生育効率を低下させる。真昼の間に植物に届く光のレベルを低下させて、一日を通してより均一なレベルをもたらすほうが好ましい。例えば、バラは、600μmol/秒・m2の最大光レベルに暴露されたとき最も効率的に開花し、このレベルは、45度の緯度では冬の月の間、午前11:00までに達成されることが多い。11:00と1:00の間の光レベルの低下は、植物収穫量を向上させる。従来の鏡と本発明者らの波長選択フィルムの併用を用いて、一日の異なる時間の間に植物の向けられる光の強度を変化させることができる。例えば、最高太陽光線入射時間の間、可視鏡の使用を、太陽からの光のその部分を反射するようにその反射角を向け直すことによって、中止することができる。バッフル及びカーテンという他の組み合わせを、本発明者らの波長選択フィルムと共に使用して、光の強度を制御することができる。
文献及び成分の模造及び捏造、ならびに爆発物などの規制材料の不法流用は、深刻な、且つ蔓延している問題である。例えば、商業航空機保守要員は、怪しい模造部品に定期的に遭遇するが、高級部品と仕様書を満たすものとして市販されている模造部品とを区別する確かな手段が無い。類似して、新品として販売されているすべてのレーザー・プリンター・カートリッジの10パーセントまでは、再包装されて新品と表現された実際には再供給カートリッジであることが報告されている。爆発物中の不安定なバラ物、例えば硝酸アンモニウム肥料、の同定及び追跡も非常に望ましいが、現行の同定手段は、ひどく高価である。
品目が本物であること、包装の完全性を証明するための、又は部品、成分及び原料の起源を追跡するための幾つかの手段が存在する。これらの装置の幾つかは、アンビエント証明可能であるが、別のライト、計器などを用いて証明できるものもあり、及び両方の態様を併用するものもある。書類及び包装完全性の証明に使用される装置の例としては、虹色インク及び顔料、特別な繊維及びすかし模様、磁気インク及びコーティング、細字印刷、ホログラム、ならびに3Mから入手できる画像形成再帰反射シートConfirm(登録商標)が挙げられる。主としてサイズ、費用及び耐久性の制約のため、成分の認証に利用できる選択肢は殆ど無い。推奨システムとしては、磁気フィルム及び集積回路チップが挙げられる。
マイクロタガント(Microtaggant)は、爆発物などの規制材料を追跡するために使用されている。該して、これらの材料は、粉砕されて製品中に分散される多層ポリマーである。光学顕微鏡を使用してマイクロタガントにおける個々の層を解読して、製造業者の日付及び場所に関する情報を得ることができる。アンビエント証明可能でもあり、機械可読でもある、製造可能であるが容易に複製できない、柔軟であり、ほぼ微視的なシートから大きなシートにわたる様々なパートサイズで使用することができる、及び機械で読取ることができる特定の情報をコードすることができる、セキュリティーフィルム製品に対する長きにわたって満たされていない要求がある。
本発明のフィルム及び光学体は、これらの要求のすべてを満たす裏材、ラベル又はオーバーラミネートとして有用なセキュリティーフィルム又はデバイスを生じさせるように調整することができる。カラーシフティング特徴ならびに斜角での高い反射率及び彩度は、書類又は包装を一意的に認証するために活用することができる特性であり、ならびにスペクトルの詳細をフィルムに設計して、一意的なスペクトルフィンガープリントを生じさせることができ、これらのスペクトルフィンガープリントを使用して、個々のアプリケーションをコードするセキュリティーフィルムの特定のロットを認証することができる。前記セキュリティーフィルム及び光学体は、可視、赤外又は紫外を含めてスペクトルの任意の所望の部分に対して反射するように調整することができる。変換認証のみが望まれる場合、変換スペクトルフィンガープリントを付与するために赤外領域内の様々な透過及び反射帯域を有するがスペクトルの可視領域では透明に見えるフィルムを作ることができる。
単独での、又は透過及び反射帯域の強度及び位置を変える上で説明した方法と併用での、幾つかの他の方法により、本発明のセキュリティーフィルム及び光学体に情報をコードすることもできる。例えば、個々の層をスペクトルの赤外部分に変え、可視領域のオーバートーンを制御して単一スペクトルを生じさせることができる。
本発明のスペクトル選択セキュリティーフィルム及び光学体は、光学積層体内の又は光学積層体に隣接する比較的厚い層を含むことがあり、これらの層は、そのフィルムの断面の光学的検査によって解読することができる情報を付与するために使用することもできる。前記フィルムを、そのフィルムの下の基板に印刷された有色印刷又は図形と併用して、観察角度に依存して隠されることもあり、見えることもある表示を生じさせることもできる。光学層を局所的に薄くすることによって、色の対比を達成することができる。この変質領域内の、同じく色がシフトする新色は、未変性領域に対してはっきりとわかる。層の局所薄化を果たすために好ましい方法は、そのフィルム中のすべてのポリマーのガラス転移温度より上の温度での、及び/又は適する圧力を用いる、エンボス加工である。層の局所薄化は、高エネルギー粒子での衝撃、超音波、熱成形、レーザーパルス及び延伸によって達成することもできる。既に説明した他の色選択フィルムと同様に、前記セキュリティーフィルムにハードコート、反射防止面、又は吸収コーティングを組み込んで、耐久性及び対比を向上させることができる。ラベル又はダイカットとして機能するように、前記セキュリティーフィルムに熱活性化又は感圧接着剤を組み込むこともできる。
殆どの用途について、本発明のセキュリティーフィルム又は他の光学体は、適切なサイズであり得、書類又は包装材料に直接ラミネートすることができる。これらのフィルムの分光特性は、最小量の光を反射する概して非常に狭いものである。前記フィルムの分光特性は、書類又は包装品を見えなくしないように概して赤外に限定されるであろうが、このフィルムの性質及び色を、その物品の外観を向上させるために用いることもできる。
一部の用途については、前記セキュリティーフィルムをばら材料において、そのフィルムを粉末に粉砕し、その粉末をその材料に分散させることによって、用いることができる。本発明のフィルムを利用して、粉砕した小板からペイント、塗料及びインクを調合することができる。ばら材料が爆発物である場合、爆発中に実質的な緩和が発生するようなら、延伸材料を使用して回避することが望ましいであろう。場合によっては、前記粉末をアクリラートなどの融蝕性材料でコーティングして、爆発事象中のエネルギーを吸収することができる。
本発明のセキュリティーフィルム又は光学体は、アンビエント証明(例えば、ことによると非垂直角で認証可能な性能と併せて、物品上の有色の反射フィルムの存在)と計器証明の組み合わせによって読取ることができる。分光光度計を使用して、単純な読み取り機を構築することができる。本発明の要求を満たす、CCD検出器に基づく低コスト分光光度計を利用することができ;好ましくは、これらは、光ファイバーケーブルでその分光光度計に接続されたセンサーヘッドを含む。この分光光度計を使用して、物品に入射する光をそのフィルムに対して垂直であり得る所定の角度(単数又は複数)で、斜角で、又は両方の組み合わせで測定することにより、フィルムのスペクトルコードを決定することができる。
セキュリティー用途のための本発明のフィルムの光学特性の活用に加えて、これらのフィルムの機械的特性も利用することができる。従って、例えば、本発明のフィルムを、低い耐中間層剥離性を有するように計画的に設計し、それのよって耐タンパ能力をもたらすことができる。
本明細書において他の箇所で述べるように、本発明のフィルムのカラーシフト特性は、非常に多く装飾用途で有利に使用することができる。従って、例えば、本発明のフィルムを単独で使用して、又は他の材料、フィルム、物質、コーティングもしくは処理と併用して、ラッピングペーパー、ギフトペーパー、ギフトバッグ、リボン、蝶形リボン、花及び他の装飾品を作ることができる。これらの用途では、前記フィルムをそのまま使用することができ、又は、しわを寄せて、切断して、エンボス加工して、光沢材に変換して、又は別様に処理して、所望の光学効果を生じさせることもしくはフィルムにボリュームをもたせることができる。
本発明の光学干渉フィルムは、そのフィルムの一方又は両方の主表面上に外皮層を場合によっては含むこともある。前記外皮層は、実質的に透明な弾性ポリマー材料と、該弾性ポリマーと実質的に同じ屈折率を有する実質的に透明な非弾性ポリマー材料とのブレンドを含む。場合によっては、前記外皮層中の弾性ポリマー材料は、光学干渉フィルムの交互層を構成するエラストマーの1つであり得る。好ましい例では、前記外皮層は、弾性特性と透明性を保持する上に、非ブロッキング性である保護表面を前記フィルムに備えさせる。前記外皮層は、前記フィルムの他の表面へのラミネーションも依然として受容し、ならびにインクもしくは他の印刷形態も依然として許容する。
本発明のブロック共重合体を使用して、改善されたバリヤ特性を有するフィルムを形成することもできる。そのような材料を使用して、例えば、運動靴のブラッダーを形成することができる。これらの材料は、バリアフィルムのための特別な利点を有し、この場合、浸透剤の平衡飽和までの時間をそれらの層が物理的に増加させるためバリヤが改善される。長距離秩序で半結晶質ドメイン又は層を含む一部の実施形態は、類似のポリマー材料に比べて酸素及び水などの小分子の透過性の増加を示すことができる。そのような特性は、食品ならびに他の湿分及び空気感受性材料の保護包装において本発明のこれらのコポリマーを価値あるものにし得る。本発明のブロック共重合体は、多層フィルムと比較して増大された耐屈曲亀裂性も示すことができる。
微細孔フィルム
本発明のコポリマーは、US 20080269366(これは、米国特許慣行のため、参照により本明細書に援用されている)に記載されているような、衣類、靴、フィルタ及び電池セパレータなどの多くの用途において使用される微孔質ポリマーフィルムを形成することもできる。
詳細には、そのようなフィルムは、薄膜フィルタにおいて有用であり得る。これらのフィルタは、一般に、多数の微視的細孔を有する薄いポリマーフィルムである。薄膜フィルタは、液体もしくはガスからの懸濁物質の濾過において又は定量的分離のために使用することができる。薄膜フィルタの種々のタイプの例としては、ガス分離膜、透析/血液透析膜、逆浸透膜、限外濾過膜、及び細孔膜が挙げられる。これらのタイプの膜が適用可能であり得る分野としては、分析用途、飲料、化学薬品、エレクトロニクス、環境用途、及び医薬品が挙げられる。
加えて、微細孔ポリマーフィルムは、製造の容易さ、化学的不活性及び熱特性のため、電子セパレータとして使用することができる。セパレータの主な役割は、イオンに電極間を通行させるが、イオンが電極と接触しないようにすることである。従って、前記フィルムは、穴が空かないように強くなければならない。また、リチウムイオン電池において、前記フィルムは、その電池の熱暴走を防止するために一定の温度で閉鎖(イオン電動を停止)しなければならない。理想的には、前記セパレータに使用される樹脂は、より薄いセパレータ又はより多孔性のセパレータを可能にするために大きな温度領域にわたって高い強度を有さなければならない。また、リチウムイオン電池については、より低い閉鎖温度が望ましいが、そのフィルムは、閉鎖後も機械的強度を維持していなければならない。加えて、前記フィルムは、高温で寸法安定性を維持することが望ましい。
本発明の微細孔フィルムは、以下の特許及び特許公報(これらのすべては、米国特許慣行のため、参照により本明細書に援用されている)に記載されているようなプロセス又は用途のいずれかにおいて使用することができる:WO2005/001956A2;WO2003/100954A2;米国特許第6,586,138号;米国特許第6,524,742号;US 2006/0188786;US 2006/0177643;米国特許第6,749,k961号;米国特許第6,372,379号及びWO 2000/34384A1。
本発明のコポリマーによってもたらされるメソフェーズ分離構造は、微細孔ポリマーフィルムを形成するための先行技術を超える幾つかの改善を提供する。それらの秩序化形態は、孔サイズ及びチャネル構造に対するより大きな制御度をもたらす結果となる。前記相分離溶融形態は、その溶融物におけるフィルム収縮も制限し、従って、非相分離材料より大きな溶融寸法安定性を付与する。
フォトニックペーパー、有機センサ、ポリマー複合材など
本発明の材料と一定の小分子の相互作用は、一方又は両方のドメインの膨潤させる結果となる。この膨潤は、化学センサなどの用途において有用であり得る可視の色彩変化を生じさせる。
低い蒸気圧では、前記膨潤は、蒸発に基づき可逆的である。この特徴は、Advanced Materical 2003, 15,892-896にコロイド状フォロニック系について記載されているような色彩表示のために顔料を必要としない再使用可能な紙又は記録媒体を可能にする、フォロニックペーパーとしての機能を果たすフィルムを作るために用いることができる。
他の場合、前記膨潤は、膨潤させて安定な複合材料を作った後、固定させることができる材料を用いて達成することができる。適する膨潤剤としては、ポリマー複合材を生成することができる重合性モノマー(コロイド状複合系の例については、Advanced Materials 2005, 17, 179-184を参照のこと)、又はハイブリッド有機/無機材料を生成するための金属前駆体を挙げることができる。
本発明の実施形態において、ソフトセグメントの非晶質の性質は、それらを一般に半結晶質ハードセグメントより膨潤しやすくする。この選択的膨潤特性は、区別される特性を付与することができる、ソフトセグメントの選択的化学的修飾の手段をもたらす。
分布帰還型レーザー
本発明は、分布帰還型レーザーにおける成分として使用することもできる。分布帰還型レーザーは、装置の活動域が回折ゲーティングとして構成されているタイプのレーザーダイオード、量子カスケードレーザー又は光ファイバーレーザーである。分布ブラッグ反射鏡(distributed Bragg reflector)として公知の前記ゲーティングは、分布ブラッグ散乱中にレーザーに対してその構造からの光学的帰還をもたらす。本発明のポリマーは、分布ブラッグ反射鏡としての役割を果たすことができる。本発明の材料は、WO2008054363(これは、米国特許慣行のため、参照により本明細書に援用されている)に記載されているような動的チューナブル薄膜レーザーに組み込むこともできる。
本発明の上述の説明は、フィルムに限定されると解釈されず、他の物品又は物体に関して存在する場合もある。
本発明のポリマー又はブレンドから作製することができる繊維としては、ステープルファイバー、トウ、多成分繊維、鞘/芯繊維、撚り繊維、及びモノフィラメントが挙げられるが、これらに限定されない。適する繊維形成プロセスとしては、米国特許第4,430,563号、同第4,663,220号、同第4,668,566号及び同第4,322,027号に開示されているようなスパンボンド(spinbonded)、メルトブロー技術、米国特許第4,413,110号に開示されているようなゲルスパン繊維、米国特許第4,458,706号に開示されているような織布もしくは不織布、又はそのような繊維(他の繊維、例えばポリエステル、ナイロンもしくは綿、とのブレンドを含む)から作られる構造、熱成形品、押出形材(異形押出品及び共押出品を含む)、カレンダー成形品、ならびに延伸、撚り又はけん縮糸又は繊維が挙げられる。本明細書に記載する新規ポリマーは、電線及びケーブル被覆操作のためにも、ならびに真空成形操作のためのシート押し出し、及び成形品の形成(射出成形、ブロー成形プロセス又は回転成形プロセスの使用を含む)の際にも有用である。ポリオレフィン加工の技術分野の技術者に周知である従来のポリオレフィン加工技術を用いて、オレフィンポリマーを含む組成物を二次加工品、例えば前に述べたもの、にすることもできる。前記コポリマーから作られる繊維は、布地及び織物において魅力的な光学特性、例えば、反射特性又は変色特性も示すことができる。
本発明のポリマー又はそれらを含む調合物を使用して、水性及と非水性の両方の分散液を形成することもできる。2004年8月25日に出願され、WO2005/021622として発行された、PCT出願番号PCT/US2004/027593に開示されているように、本発明のポリマーを含む発泡フォームを形成することもできる。任意の公知の手段、例えば、過酸化物、電子ビーム、シラン、アジド又は他の架橋技術の使用により、前記ポリマーを架橋させることもできる。グラフト形成(例えば、無水マレイン酸(MAH)、シランもしくは他のグラフト形成剤の使用による)、ハロゲン化、アミノ化、スルホン化、又は他の化学的修飾などによって、前記ポリマーを化学的に修飾することもできる。
本発明のポリマーを含む任意の調合に添加剤及びアジュバントを、含めることができる。適する添加剤としては、充填剤、例えば、有機又は無機粒子(クレー、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末金属を含む)、有機又は無機繊維(炭素繊維、窒化ケイ素繊維、鋼線又は網を含む)、及びナイロン又はポリエステル・コーディング、ナノサイズ粒子、クレーなど;粘着付与剤、エキステンダー油(パラフィン又はナフテン(napthenic)油を含む);ならびに他の天然及び合成ポリマー(本発明の実施形態による他のポリマーを含む)が挙げられる。
本発明の実施形態によるポリマーとブレンドするために適するポリマーとしては、天然及び合成ポリマーを含む、熱可塑性及び非熱可塑性ポリマーが挙げられる。ブレンドのための例示的ポリマーとしては、ポリプロピレン(耐衝撃性改良用ポリプロピレン、アイソタイチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、及びランダムエチレン/プロピレンコポリマー両方)、様々なタイプのポリエチレン[高圧、フリーラジカルLDPE、チーグラー・ナッタLLDPE、メタロセンPE(多反応器PE(チーグラー・ナッタPEとメタロセンPEの「反応器内」ブレンド、例えば、米国特許第6,545,088号、同第6,538,070号、同第6,566,466号、同第5,844,045号、同第5,869,575号及び同第6,448,341号に開示されている生成物)を含む)を含む]、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、耐衝撃性改良ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジン・スチレン(ABS)、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー及びそれらの水素化誘導体(SBS及びSEBS)、ポリイソブチレン(PIB)ホモポリマー、PIB−イソプレンコポリマー、EPDMならびに熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。均質ポリマー、例えばオレフィンプラストマー及びエラストマー、エチレンとプロピレンに基づくコポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手できる商品呼称VERSIFY(商標)で入手できるポリマー、及びExxonMobil Chemical Companyから入手できるVISTAMAXX(商標))も、本発明を含むブレンド中の成分として有用であり得る。
追加の最終用途としては、弾性フィルム及び繊維;ソフトタッチ品、例えば歯ブラシの取っ手及び家庭電化製品の取っ手;ガスケット及び異形材;接着剤(ホットメルト接着剤及び感圧接着剤を含む);履物(靴底及び靴のライナ);車内部品及び異形材;発泡品(連続気泡と独立気泡の両方);他の熱可塑性ポリマー、例えば高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン又は他のオレフィンポリマー、のための耐衝撃性改良剤;コーティング布;ホース;チューブ;目詰め材;キャップライナ;フローリング;ならびに潤滑剤のための、流動点向上剤としても公知の、粘度指数向上剤が挙げられる。
一部の実施形態において、熱可塑性マトリックスポリマー、特にアイソタクチックポリプロピレン、と本発明の弾性ブロック共重合体とを含む熱可塑性組成物は、硬質ポリマーの封入されたドメインの周りに「鞘」を形成する軟質又は弾性ブロックによって包囲された芯の形の硬質結晶質又は半結晶質ブロックを有する芯鞘型粒子をユニークに形成することができる。これらの粒子は、溶融配合又はブレンド中に被る力によってマトリックスポリマーの中に形成されて分散される。この非常に望ましい形態は、熱力学的力に起因して相溶性ポリマー領域、例えばマトリックスとそのブロックコポリマーのより高いコモノマー含量の弾性領域、の自己集合を可能にするブロック共重合体の独特な物理的特性による結果として生ずると考えられる。配合中の剪断力が、エラストマーによって取り囲まれたマトリックスポリマーの分離領域を生じさせると考えられる。凝固すると、これらの領域は、ポリマーマトリックスにすっぽり包まれた封入エラストマー粒子になる。
特に望ましいブレンドは、熱可塑性ポリオレフィンブレンド(TPO)、熱可塑性エラストマーブレンド(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)及びスチレンポリマーブレンドである。TPE及びTPVブレンドは、本発明のマルチブロックポリマー(その官能化又は不飽和誘導体を含む)を任意のゴム(従来のブロックコポリマー、特にSBSブロックコポリマーを含む)及び場合によっては架橋剤又は加硫剤と併せることによって作製することができる。TPOブレンドは、一般に、本発明のブロック共重合体をポリオレフィン及び場合によっては架橋剤又は加硫剤と併せることによって作製することができる。前述のブレンドは、成形物を形成する際に、及び場合によっては、結果として生じた成形品を架橋する際に使用することができる。異なる成分を使用する類似の手順が以前に米国特許第6,797,779号に開示されている。
この用途のための適する従来のブロックコポリマーは、望ましくは、10から135、さらに好ましくは25から100、及び最も好ましくは30から80の範囲のムーニー粘度(100℃でML 1+4)を有する。適するポリオレフィンとしては、特に、線状又は低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(そのアタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチック及び耐衝撃性改良バージョンを含む)が挙げられる。適するスチレン系ポリマーとしては、スチレン、ゴム改質ポリスチレン(HIPS)、スチレン/アクリロニトリルコポリマー(SAN)、ゴム改質SAN(ABS又はAES)及びスチレン・無水マレイン酸コポリマーが挙げられる。
前記ブレンドは、それぞれの成分をそれらの成分の一方又は両方の融点温度の付近の又はそれより上の温度で混合又は混練することによって作製することができる。大部分のマルチブロックコポリマーの場合、この温度は、130℃より上、最も一般的には145℃より上、及び最も好ましくは150℃より上であり得る。所望の温度を達成すること及びその混合物を溶融可塑化することができる一般的的なポリマー混合又は混練装置を利用することができる。これらとしては、ミル、ニーダー、押出機(一軸スクリューと二軸スクリューの両方)、バンバリーミキサー、カレンダーなどが挙げられる。混合及び方法の順序は、所望の最終組成物に依存し得る。バンバリー・バッチ・ミキサー及び連続ミキサーの組み合わせ、例えば、バンバリーミキサー、続いてミルミキサー、続いて押出機を用いることもできる。概して、TPE又はTPV組成物は、TPO組成物と比較して架橋性ポリマー(該して、不飽和を含有する従来のブロックコポリマー)の高い負荷量を有するであろう。一般に、TPE及びTPV組成物の場合、従来のブロックコポリマーのブロック共重合体に対する重量比は、約90:10から10:90、さらに好ましくは80:20から20:80、及び最も好ましくは75:25から25:75であり得る。TPO用途の場合、ブロック共重合体のポリオレフィンに対する重量比は、約49:51から5:95、さらに好ましくは36:65から約10:90であり得る。改良スチレンポリマー用途の場合、ブロック共重合体のポリオレフィンに対する重量比は、同じく、約49:51から約5:95、さらに好ましくは35:65から約10:90であり得る。前記比率は、様々な成分の粘度比を変えることによって変えることができる。この技術分野の技術者が必要な場合に調べることができる、ブレンドの成分の粘度比を変えることによって相連続性を変えるための技術を説明する沢山の文献がある。
本発明のブロックコポリマーの一定の組成物は、可塑剤としての機能も果たす。可塑剤は、一般に、高分子量ポリマー、例えば熱可塑性物質など、に添合して、そのポリマーの加工を助長する、その作業性、融通性及び/又は伸長性を増加させる有機化合物である。例えばポリプロピレンは、特に高立体規則性ポリプロピレンの場合、室温より下では一般に硬い及び脆性でさえあるエンジニアリング熱可塑性物質である。
本発明の一部の実施形態は、ポリプロピレンとの混和性ブレンドを提供する。そのような共重合体可塑剤とポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレン)をブレンドすることによって、そのブレンドポリプロピレンのガラス転移温度、貯蔵弾性率及び粘度を低下させる。転移温度、貯蔵弾性率及び粘度を低下させることによって、ポリプロピレンの作業性、融通性及び伸長性が向上する。それ故、フィルム、繊維及び成形製品においてこれらの新規ポリプロピレンブレンドを幅広く商業的に利用できることは、明らかである。さらに、これらの新規ブレンドを利用する製品設計の融通性は、メタロセン及び他の均一系触媒(これらは、両方とも、本発明のブロックコポリマーとブレンドする前のアイソタクチックポリプロピレン結晶化度を低下させることができる)で可能な向上したコモノマー組み込み及びタクチシティー制御を利用することによって、さらに拡大することができる。
これらの可塑化ポリプロピレン熱可塑性物質は、ポリプロピレン組成物についての公知の用途に使用することができる。これらの用途としては、ホットメルト接着剤;感圧接着剤(特にポリプロピレンが低い結晶化レベルを有するとき、例えば非晶質ポリプロピレンのとき、接着剤成分として);フィルム(押出コーティング、キャストフィルム又はインフレートフィルムのうちのいずれか;このようなものは、改善された熱シール特性を示すであろう);シート(例えば、少なくとも1つの層が本発明の可塑化ポリプロピレン熱可塑性組成物である単一又は多層シートでの押出しによるもの);溶融ブロー成形又はスパンボンド繊維;及び、ポリプロピレンが有効であることが伝統的に実証されてきた熱成形可能な熱可塑性オレフィン(「TPO」)と熱可塑性エラストマー(「TPE」)のブレンドにおける熱可塑性成分としての用途が挙げられるが、これらに限定されない。これらの多くの用途にかんがみて、改選された低温特性及び向上した操作性を有する前記可塑化ポリプロピレン熱可塑性物質は、選択された用途では可塑化ポリビニルクロライド(PVC)の適する代替品になる。
前記ブレンド組成物は、プロセス油、可塑剤及びプロセス助剤を含有することがある。ゴムプロセス油及びパラフィン、ナフテン又は芳香族プロセス油は、すべて使用に適する。一般に、100部の全ポリマーにつき約0から約150部、さらに好ましくは約0から約100部、及び最も好ましくは約0から約50部の油を用いる。より多い油量は、一部の物理的特性を犠牲にして結果として生ずる製品の加工を向上させる傾向があり得る。追加のプロセス助剤としては、従来のワックス、脂肪酸塩、例えばステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛、グリコールをはじめとする(多価)アルコール、グリコールエーテルをはじめとする(多価)アルコールエーテル、(ポリ)グリコールエステルをはじめとする(ポリ)エステル、及びそれらの金属塩−、特に1又は2族金属又は亜鉛−、塩誘導体が挙げられる。
非水素化ゴム、例えば、ブロックコポリマーを含めて重合形態のブタジエン又はイソプレンを含むもの(本明細書では、以後、ジエンゴム)が、ほぼ飽和した又は高飽和ゴムと比較して、UV線、オゾン及び酸化に対する低い耐性を有することは、公知である。高濃度のジエン系ゴムを含有する組成物から作られるタイヤなどの用途では、抗オゾン添加剤及び酸化防止剤と共に、ゴムの安定性を向上させるためにカーボンブラックを添合することは公知である。極めて低い飽和レベルを有する本発明のブロック共重合体は、従来のジエンエラストマー改良ポリマー組成物から形成された物品に付着される保護表面層(コーティング、共押出しもしくはラミネートされたもの)又は耐候性フィルムとして特に利用される。
従来のTPO、TPV及びTPE用途の場合、カーボンブラックが、UV吸収及び安定化特性のために選ばれる添加剤である。カーボンブラックの代表的な例としては、ASTM N110、N121、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、M332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990及びN991が挙げられる。これらのカーボンブラックは、9から145g/kgにわたるヨウ素吸着量及び10から150cm3/100gにわたる平均細孔容量を有する。一般に、より小さい粒径のカーボンブラックを、費用の問題が許す程度に、利用する。多くのそのような用途について、本ブロック共重合体及びそれらのブレンドは、カーボンブラックを殆ど又は全く必要とせず、その結果、代替の顔料を含む又は顔料をまったく含まない相当な設計の自由が可能となる。多色タイヤ又は車両の色に合うタイヤは、1つの可能性である。
本発明の実施形態による熱可塑性ブレンドをはじめとする組成物は、通常技術のゴム化学者に公知である抗オゾン剤又は酸化防止剤も含有することがある。抗オゾン剤は、表面に出てきてその部分を酸素もしくはオゾンから保護する物理的保護剤、例えば蝋様材料、である場合もあり、又は酸素もしくはオトンと反応する化学的保護剤である場合もある。適する化学的保護剤としては、スチレン化フェノール、ブチル化オクチル化フェノール、ブチル化ジ(ジメチルベンジル)フェノール、p−フェニレンジアミン、p−クレゾールとジシクロペンタジエンとのブチル化反応生成物(DCPD)、ポリフェノール系酸化防止剤、ヒドロキノン誘導体、キノリン、ジフェニレン酸化防止剤、チオエステル酸化防止剤、及びそれらのブレンドが挙げられる。そのような製品の一部の代表的な商品名は、Wingstay(商標)S酸化防止剤、Polystay(商標)100酸化防止剤、Polystay(商標)100 AZ酸化防止剤、Polystay(商標)200酸化防止剤、Wingstay(商標)L酸化防止剤、Wingstay(商標)LHLS酸化防止剤、Wingstay(商標)K酸化防止剤、Wingstay(商標)29酸化防止剤、Wingstay(商標)SN−1酸化防止剤、及びIrganox(商標)酸化防止剤である。一部の用途において、使用される酸化防止剤及び抗オゾン剤は、好ましくは、非汚染性及び非移行性であるだろう。
UV線に対するさらなる安定性をもたらすために、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)及びUV吸収剤も使用することができる。適する例としては、Ciba Specialty Chemicalsから入手できるTinuvin(商標)123、Tinuvin(商標)144、Tinuvin(商標)622、Tinuvin(商標)765、Tinuvin(商標)770、及びTinuvin(商標)780、ならびに米国、テキサス州、ヒューストンのCytex Plasticsから入手できるChemisorb(商標)T944が挙げられる。米国特許第6,051,681号に開示されているように、HALS化合物と共にルイス酸をさらに含めて、優れた表面特性を獲得することができる。
一部の組成物の場合、追加の混合プロセスを用いて、酸化防止剤、抗オゾン剤、カーボンブラック、UV吸収剤及び/又は光安定剤を事前に分散させてマスターバッチを形成し、その後、それらからポリマーブレンドを形成することができる。
ここでの使用に適する適する架橋剤(硬化剤又は加硫剤とも呼ばれる)としては、硫黄系、過酸化物系、又はフェノール系化合物が挙げられる。前述の材料の例は、米国特許第3,758,643号;同第3,806,558号;同第5,051,478号;同第4,104,210号;同第4,130,535号;同第4,202,801号;同第4,271,049号;同第4,340,684号;同第4,250,273号;同第4,927,882号;同第4,311,628号及び同第5,248,729号を含めて、当分野において見つけられる。
硫黄系硬化剤を利用するとき、促進剤及び硬化活性化剤も使用することができる。促進剤は、動的加硫に必要な時間及び/又は温度を制御するために、及び結果として生ずる架橋された物品の特性を向上させるために使用される。1つの実施形態では、単一の促進剤又は一次促進剤を使用する。一次促進剤(単数又は複数)は、全組成物重量に基づき、約0.5から約4、好ましくは約0.8から約1.5.phrにわたる総量で用いることができる。別の実施形態では、一次促進剤と二次促進剤の組み合わせを使用してもよく、この二次促進剤は、硬化された物品の特性を活性化するため及び向上させるために、約0.05から約3phrなどの、より少ない量で使用する。促進剤の組み合わせは、一般に、単一の促進剤の使用により生ずるものより幾分良好である特性を有する。加えて、標準的な加工温度による影響を受けないが通常の加硫温度では申し分なく硬化する時効性促進剤を使用することができる。加硫遅延剤も使用することができる。本発明において使用することができる促進剤の適するタイプは、アミン類、ジスルフィド類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、チウラム類、スルフェンアミド類、ジチオカルバマート類及びキサンタート類である。好ましくは、前記一次促進剤は、スルフェンアミドである。時に促進剤を使用する場合、その二次促進剤は、好ましくは、グアニジン、ジチオカルバマート又はチウラム化合物である。一定の加工助剤及び硬化活性化剤、例えば、ステアリン酸及びZnOも使用することができる。過酸化物系硬化剤を使用するとき、補助活性化剤又は助剤をそれらを併用することができる。適する助剤としては、数ある中でもトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)、トリアリルシアヌラート(TAC)、トリアリルイソシアヌラート(TAIC)が挙げられる。部分又は完全動的加硫のために使用される過酸化物架橋剤及び任意の助剤は、当分野において公知であり、例えば、出版物、"Peroxide Vulcanization of Elastomer", Vol. 74, No 3, July- August 2001に開示されている。
ブロック共重合体含有組成物を少なくとも部分的に架橋するとき、その架橋度は、指定された期間にわたってその組成物を溶剤に溶解し、そのゲル又は抽出不能成分パーセントを計算することによって測ることができる。前記ゲルパーセントは、通常、架橋剤レベルの増加に伴って増加する。本発明の実施形態による硬化品の場合、そのパーセント ゲル含量は、望ましくは5から100パーセントである。
本発明の実施形態によるブロック共重合体ならびにそれらのブレンドは、先行技術組成物と比較して改善された加工性を有し、これは、本発明のブロック共重合体の多分散性から生ずる、より低い粘度に起因すると考えられる。従って、前記組成物又はブレンドは、特に成形又は押出品にされたとき、改善された表面外観を明示する。同時に、本組成物及びそれらのブレンドは、改善された溶融強度特性を独特に有し、その結果、本ブロック共重合体及びそれらのブレンド、特にTPOブレンドを、溶融強度が現在不適当である発泡体及び熱成形用途に有用に利用することができる。
本発明の実施形態による熱可塑性組成物は、無機充填剤又は他の添加剤、例えばデンプン、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ポリマー繊維(ナイロン、レーヨン、綿、ポリエステル、及びポリアラミドを含む)、金属繊維、フレーク又は粒子、発泡性層状ケイ酸塩、例えばクレー、マイカ、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩又はアルミノリン酸塩、カーボンホイスカー、炭素繊維、ナノ粒子(ナノチューブを含む)、ケイ灰石、グラファイト、ゼオライト、及びセラミック、例えば炭化ケイ素、窒化ケイ素又はチアニアも含有することがある。より良好な繊維接着のために、シラン系の又は他のカップリング剤を利用することもできる。
本発明の実施形態による熱可塑性組成物(前述のもののブレンドを含む)は、従来の成形技術、例えば、射出成形、押出成形、熱成形、スラッシュ成形、オーバーモールド成形、インサートモールド成形、ブロー成形、及びたの技術によって加工することができる。多層フィルムを含めて、フィルムは、キャスト又はテンダリングプロセス(インフレートフィルムプロセスを含む)によって製造することができる。
上で述べたことに加えて、前記ブロックプロピレン/α−オレフィン共重合体は、以下の米国特許仮出願、その開示、及びそれらの係属出願、分割出願及び一部係属出願(それら全体が参照により本明細書に援用されている)に記載されている手法で使用することもできる:2005年9月16日出願の米国特許仮出願第60/717,863号「Fibers Made from Copolymers of Propylene/α-Olefins」ならびに2006年3月15日出願の米国特許仮出願第60/782,746号「Propylene/α-olefin Block Interpolymers」。
試験方法
ATREF
分析的昇温溶離分別(analytical temperature rising elution fractionation)(ATREF)分析は、米国特許第4,798,081号及びWilde,L.;Ryle,T.R.;Knobeloch,D.C.;Peat,I.R.;Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymer,J.Polym.Sci.,20,441-455(1982)(これらは、それら全体が参照により本明細書に援用されている)に記載されている方法に従って行う。分析すべき組成物を、トリクロロベンゼンに溶解し、0.1℃/分の冷却速度で温度を20℃にゆっくりと下げることによって、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を収容しているカラム内で結晶化させる。このカラムには、赤外線検出器が装備されている。次に、1.5℃/分の速度で20から120℃へ溶出溶媒(トリクロロベンゼン)の温度をゆっくり上昇させることによりそのカラムから結晶化ポリマーサンプルを溶出することによって、ATREFのクロマトグラム曲線を作成する。
TREFによるポリマー分画
160℃で4時間撹拌することによって2リットルの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)に15−20gのポリマーを溶解することによって、大規模なTREF分画を行う。30−40メッシュ(600−425μm)球形、技術的品質ガラスビーズ(Potters Industries,HC30 Box20,Brownwood,TX,76801から入手可能)及びステンレス鋼、0.028’’(0.7mm)の直径のカット・ワイヤ・ショット(Pellets,Inc.63 Industrial Drive,North Tonawanda,NY,14120から入手可能)の60:40(v:v)混合物を充填した3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)のスチール・カラムに、15psig(100kPa)の窒素によって、前記ポリマー溶液を圧入する。160℃に初期設定した温度制御オイルジャケットに、そのカラムを浸漬する。そのカラムを、先ず、125℃に弾道的に冷却し、その後、1分あたり0.04℃で20℃までゆっくり冷却して、1時間保持する。温度を1分あたり0.167℃で上昇させながら、新たなTCBを約65mL/分で導入する。
前記分取TREFカラムからのおおよそ2000mL分の溶出液を、16ステーションの加熱した画分回収器に回収する。そのポリマーを、約50から100mLのポリマー溶液が残るまで、ロータリーエバポレーターを使用してそれぞれの画分中のポリマーを濃縮する。この濃縮溶液を、一晩静置しておき、その後、過剰のメタノールを添加し、濾過し、洗浄する(最終洗液を含めておおよそ300−500mLのメタノール)。この濾過段階は、5.0μmのポリテトラフルオロエチレン被覆濾紙(Osmonics Inc.から入手可能、カタログ番号Z50WP04750)を使用して、3点真空利用濾過ステーションで行う。濾過された画分を、60℃で真空オーブン中で一晩乾燥させ、さらなる試験の前に化学天秤で秤量する。この技術に関する追加の情報は、Wilde, L.; RyIe, T.R.; Knobeloch, D.C.; Peat, I.R.; Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers, J. Polym. Sci., 20, 441-455 (1982)によって教示されている。
DSC標準法
示差走査熱量測定法の結果は、RCS冷却補助装置及びオートサンプラーを装備したTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。50mL/分の窒素パージガス流を用いる。サンプルを薄膜にプレスし、約190℃のそのプレス内で溶融し、その後、室温(25℃)に空冷する。その後、3−10mgの材料を直径6mmのディスクに切断し、正確に秤量し、軽量アルミ皿(約50mg)に入れ、その後、端を曲げて閉じる。そのサンプルの熱挙動を、以下の温度プロフィールで調査する。サンプルを急速に230℃に加熱し、3分間等温保持して、一切の以前の熱履歴を除去する。その後、そのサンプルを10℃/分の冷却速度で−90℃に冷却し、−90℃で3分間保持する。その後、そのサンプルを10℃/分の加熱速度で230℃に加熱する。この冷却及び第二の加熱曲線を記録する。
融解の始点と終点の間にひいた直線ベースラインを基準にして熱流量(W/g)の最大値としてDSC融解ピークを測定する。融解熱は、直線ベースラインを用いて融解の始点と終点の間の融解曲線下面積として測定する。ポリプロピレンホモポリマー及びコポリマーの場合、融解の始点は、概して0℃と−40℃の間で観察される。結果として得られるエンタルピー曲線を、ピーク融解温度、開始、及びピーク結晶化温度、融解熱及び結晶化熱、ならびに関心のある任意の他のDSC分析について分析する。
DSCの較正は、次のように行う。先ず、アルミニウムDSC皿の中にいずれのサンプルも入れずにDSCを−90℃から実行することによって、ベースラインを得る。その後、7ミリグラムの新しいインジウムサンプルを、そのサンプルを180℃に加熱し、そのサンプルを10℃/分の冷却速度で140℃に冷却し、その後、そのサンプルを1分間、140℃で等温保持し、その後、1分あたり10℃の加熱速度で140℃から180℃にそのサンプルを加熱することによって分析する。このインジウムサンプルの融解熱及び融解開始を判定し、融解開始については156.6℃から0.5℃以内、及び融解熱については28.71J/g→0.5J/g以内であることを確認する。その後、脱イオン水を、DSC皿の中の数滴の新たなサンプルを1分あたり10℃の冷却速度で25℃から−30℃に冷却することによって分析する。そのサンプルを2分間、−30℃で等温保持し、1分あたり10℃の加熱速度で30℃に加熱する。溶融開始を判定し、0℃から0.5℃以内であることを確認する。
GPC法
ゲル浸透クロマトグラフィーシステムは、Polymer Laboratories Model PL−210又はPolymer Laboratories Model PL−220のいずれかの計器から成る。そのカラム及びカルーセル区画を140℃で動作させる。3本のPolymer Laboratories 10マイクロメートル Mixed−Bカラムを使用する。溶剤は、1,2,4トリクロロベンゼンである。200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する50ミリリットルの溶剤中の0.1グラムのポリマーという濃度でサンプルを調製する。160℃で2時間、軽度に撹拌することによってサンプルを調製する。用いる注入容量は、100マイクロリットルであり、流量は1.0mL/分である。
10の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質(Polymer Laboratoriesからの、580−7,500,000g/molにわたるEasiCal PS1)を使用することによって、分子量決定を演繹する。Mark−Houwinkの式:
(式中、K
pp=1.90E−0.4、a
pp=0.725及びK
ps=1.26E−0.4、a
ps=0.702)
において(参照により本明細書に援用されている、Th. G. Scholte, N.L.J. Meijerink, H.M. Schoffeleers, and A.M.G. Brands, J. Appl. Polym. Sci., 29, 3763 - 3782 (1984)に記載されているような)ポリプロピレン及び(参照により本明細書に援用されている、E. P. Otocka, R. J. Roe, N. Y. Hellman, P. M. Muglia, Macromolecules, 4, 507 (1971)に記載されているような)ポリスチレンについての適切なMark−Huwink係数を用いることにより、等価ポリプロピレン分子量を決定する。
ポリプロピレン等価分子量計算は、Visotek TriSECソフトウェアVersion 3.0を使用してを行う。
13C NMR
本発明のコポリマーは、該して、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有する。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」及び類似の用語は、それらの配列が、13C NMRによって測定して、約0.85より大きい、好ましくは約9.0より大きい、さらに好ましくは約0.92より大きい及び最も好ましくは約0.93より大きいアイソタクチックトライアッド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックトライアッドは、当分野において周知であり、例えば、USP 5,504,172及びWO 00/01745に記載されており、これらは、13C NMRスペクトルによって決定されるコポリマー分子鎖内のトライアッド単位の点からアイソタクチック配列に言及している。NMRスペクトルは、次のように判定する。
13C NMR分光分析法は、ポリマーへのコモノマー組み込みを測定するための当分野において公知の多数の技術のうちの1つである。この技術の一例は、Randall(Journal of Macromolecular Science, Reviews in Macromolecular Chemistry and Physics, C29 (2 & 3), 201 - 317 (1989))においてエチレン/α−オレフィンコポリマーについてのコモノマー含量の決定について説明されている。オレフィン共重合体のコモノマー含量を決定するための基本手順は、サンプル中の異なる炭素に対応するピークの強度がそのサンプル中の寄与核の総数に正比例する条件下で13C NMRスペクトルを得ることを含む。この比例関係を保証する方法は、当分野において公知であり、パルス後の緩和に十分な時間の考慮、ゲートデカップリング技術、緩和剤などを含む。ピーク又はピーク群の相対強度は、実際にはそのコンピュータ生成積分から得られる。スペクトルを得てそれらのピークを積分した後、コモノマーに関連したピークを指定する。この指定は、公知のスペクトルもしくは文献への参照によって、又はモデル化合物の合成及び分析によって、又は同位元素標識コモノマーの使用によって、行うことができる。モル% コモノマーは、例えばRandallに記載されているように、その共重合体中のすべてのモノマーのモル数に対応する積分値に対する、コモノマーのモル数に対応する積分値の比によって決定することができる。
100.4又は100.5MHzの13C共鳴振動数にそれぞれ対応する、Varian UNITY Plus 400MHz NMR分光光度計又はJEOL Eclipse 400 NMR Spectrometerを使用して、データを収集した。緩和剤が存在する状態で定量的な13Cデータ獲得が確保されるような獲得パラメータを選択する。1Hゲートデカップリング、1データファイルあたり4000の減衰シグナル、6秒のパルス繰返し時間遅れ、24,200Hzのスペクトル幅、及び32Kデータ点のファイルサイズと、130℃に加熱したプローブヘッドを用いてデータを獲得する。サンプルは、10mm NMR管の中の0.4g サンプルに、クロムアセチルアセトナート(緩和剤)中0.025Mであるテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物(おおよそ3L)を添加することによって調製する。その管の上部空き高の酸素を純粋な窒素での置換によってパージする。その管及び内容物を周期的に還流させながら(これはヒートガンによって開始させる)及び周期的にボルテックスしながらその管及びその内容物を150℃に加熱することによって、サンプルを溶解し、均質化する。
データ収集後、それらの化学シフトを内部的に21.90ppmでのmmmmペンタッドに関係付ける。mmトライアッド(22.5から21.28ppm)、mrトライアッド(21.28−20.40ppm)及びrrトライアッド(20.67−19.4ppm)を表すメチル積分値からトライアッドレベル(mm)でのアイトタクチシティーを決定する。mmトライアッドの強度をmmトライアッドとmrトライアッドとrrトライアッドの合計で割ることによって、mmタクチシティーの百分率を決定する。(上で説明した)金属が中心にありヘテロアリールが配位している非メタロセン触媒などの触媒系を用いて作ったプロピレン−エチレンコポリマーのについてのmr領域は、PPQ及びPPEからの寄与を減算することにより、エチレン及びレジオ・エラーについて補正する。これらのプロピレン−エチレンコポリマーについてのrr領域は、PQE及びEPEからの寄与を減算することにより、エチレン及びレジオ・エラーについて補正する。mm、mr及びrr領域にピークを生じさせる他のモノマーを有するコポリマーについては、これらの領域の積分値を、それらのピークが同定されたら、標準的なNMR技術を用いて干渉ピークを減算することによって同様に補正する。これは、例えば、様々なモノマー組み込みレベルの一連のコポリマーを分析することにより、文献指定により、同位元素標識により、又は当分野において公知である他の手段により、遂行することができる。
米国特許公開第2003/0204017号に記載されているものなどの、金属が中心にありヘテロアリールが配位している非メタロセン触媒を使用して作られるコポリマーの場合、約14.6及び約15.7ppmでのレジオ・エラーに対応する13C NMRピークは、成長ポリマー鎖へのプロピレン単位の立体選択的2,1−挿入エラーの結果であると考えられる。一般に、所与のコモノマー含量について、より高いレジオ・エラー・レベルは、そのポリマーの融点及び弾性率の低下につながり、一方、より低いレベルは、そのポリマーのより高い融点及びより高い弾性率につながる。
行列法計算
プロピレン/エチレンコポリマーについては、以下の手順を用いてコモノマー組成及び配列分布を決定することができる。13C NMRスペクトルから積分面積を決定し、行列計算にインプットしてそれぞれのトライアッド配列のモル分率を決定する。その後、その後、それらの積分値での行列代入を用いてそれぞれのトライアッドのモル分率を得る。この行列計算は、2,1レジオ・エラーについての追加のピーク及び配列を含むように修正したRandallの(Journal of Macromolecular Chemistry and Physics, Reviews in Macromolecular Chemistry and Physics, C29 (2&3), 201-317, 1989)方法の線形最小二乗の具現である。表Bは、指定行列において用いた積分領域及びトライアッド名を示すものである。それぞれの炭素に付随する数は、そのスペクトル領域の中でそれが共鳴することを示している。
数学的には、行列法は、ベクトル方程式 s=fMであり、この式中のMは、指定行列であり、sは、スペクトルの行ベクトルであり、及びfは、モル分率 組成ベクトルである。行列法の具現の成功には、結果として得られる方程式が、決定される又は過剰決定される(変数以上に独立した方程式)ように、及びその方程式に対する解が、所望の構造情報の計算に必要な分子情報を含むように、M、f及びsを定義することが必要である。行列法における第一段階は、組成ベクトルfにおける要素を決定する段階である。このベクトルの要素は、研究する系についての構造情報をもたらすように選択された分子パラメータでなければならない。コポリマーの場合、パラメータの妥当なセットは、任意の奇数nアッド分布であろう。通常、個々のトライアッドからのピークは、かなりよく分解され、指定するのが容易であり、従って、トライアッド分布は、この組成ベクトルfにおいて最もよく用いられる。E/Pポリマーについてのトライアッドは、EEE、EEP、PEE、PEP、PPP、PPE、EPP及びEPEである。かなり高い分子量(>=10,000g/mol)のポリマー鎖の場合、その13C NMR実験は、EEPとPPEとを、又はPEEとEPPとを区別できない。すべてのマルコフE/Pコポリマーは、互いに等しいPEE及びEPPのモル分率を有するので、この具現には等式制約も用いた。同じ処理をPPE及びEPPについも行った。上の2つの等式制約により、8つのトライアッドは、6つの独立した変数に減少する。等式制約は、行列を解くときの内部制約として実行される。前記行列法の第二段階は、スペクトルベクトルを定義する段階である。通常、このベクトルの要素は、そのスペクトル内の十分に定義された積分領域であろう。系を決定するために、独立変数の数と同じだけの多さの積分値の数が必要である。第三段階は、指定行列Mを決定する段階である。この行列は、それぞれの積分領域(行)へのそれぞれのトライアッドにおける中心のモノマーユニットの炭素(列)の寄与を見つけることによって構成される。どの炭素がその中心ユニットに属するかを決めるとき、ポリマー生長方向について矛盾していないことが必要である。この指定行列の有用な性質は、それぞれの行の合計が、その行の寄与因子であるトライアッドの中心ユニット内の炭素の数に等しくなければならないことである。この等しさは、容易に確認することができ、従って、相当な共通データエントリーエラーを防止することができる。
指定行列を構成した後、冗長検査を行う必要がある。言い換えると、線形独立行の数は、生成ベクトル中の独立変数の数に等しいかそれより大きい必要がある。その行列が、冗長テストに不合格である場合には、第二段階に戻り、積分領域を再分配し、その後、冗長検査に合格するまで指定行列を定義し直す必要がある。
一般に、行列Mにおいて、列の数に追加の制約又は制限を加えた数が行の数より大きいとき、その系は、過剰決定される。この差が大きいほど、その系は大きく過剰決定される。系が過剰決定されるほど、この行列法は、低いシグナル対ノイズ(S/N)比データの積分から生じ得る不一致データ、又は多少の共鳴の部分的飽和を補正する又は同定することができる。
最終段階は、その行列を解く段階である。これは、Microsoft ExcelにおいてそのSolver機能を用いて容易に実行される。Solverは、先ず、解ベクトル(異なるトライアッド中のモル比)を推測し、次に、算出された生成ベクトルとインプット生成ベクトルとの差の合計を最小にするように繰返し推測することによって機能する。また、Solverは、制約又は制限を明確にインプットさせる。
1,2−挿入プロピレン組成は、立体規則的プロピレンが中心にあるトライアッド配列モル分率のすべてを合計することによって計算する。2,1挿入プロピレン組成(Q)は、Qが中心にあるトライアッド配列モル分率のすべてを合成することによって計算する。そのモルパーセントは、そのモル分率に100をかけることによって計算する。C2組成は、P及びQモル百分率の値を100から引くことによって決定する。
(実施例1)
メタロセンによって触媒されるもの:
この実施例は、米国特許第5,616,664号の実施例15に従って合成したメタロセン触媒を使用して作ったプロピレン−エチレンコポリマーについての組成値の計算を明示するものである。米国特許出願第2003/0204017号の実施例1に従って、プロピレン−エチレンコポリマーを製造する。そのプロピレン−エチレンコポリマーを次のように分析する。100.4MHzの13C共鳴振動数に対応するVarian UNITY Plus 400MHz NMR分光光度計をしようしてデータを収集する。緩和剤が存在する状態で定量的な13Cデータ獲得が確保されるような獲得パラメータを選択する。1Hゲートデカップリング、1データファイルあたり4000の減衰シグナル、7秒のパルス繰返し時間遅れ、24,200Hzのスペクトル幅、及び32Kデータ点のファイルサイズと、130℃に加熱したプローブヘッドを用いてデータを獲得する。サンプルは、10mm NMR管の中の0.4g サンプルに、クロムアセチルアセトナート(緩和剤)中0.025Mであるテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物(おおよそ3L)を添加することによって調製する。その管の上部空き高の酸素を純粋な窒素での置換によってパージする。周期的還流させながら(これはヒートガンによって開始させる)その管及びその内容物を150℃に加熱することにより、サンプルを溶解し、均質化する。
データ収集後、それらの化学シフトを内部的に21.90ppmでのmmmmペンタッドに関係付ける。
メタロセンプロピレン/エチレンコポリマーについては、the Journal of Macromolecular Chemistry and Physics, "Reviews in Macromolecular Chemistry and Physics," C29 (2&3), 201-317, (1989)の中で同定されているthe Integral Resions指定を用い、以下の手順を用いて、ポリマー中のエチレンパーセントを計算する。
領域Dは、次のように計算する:D=P−(G−Q)/2。
領域Eは、次のように計算する:E=R+Q+(G−Q)/2。
トライアッドは、次のように計算する:
上で論じたように、ブロック共重合体は、ハードセグメント及びソフトセグメントを含む。ソフトセグメントは、ブロック共重合体中に、そのブロック共重合体の総重量の約1重量パーセントから約99重量パーセント、好ましくは約5重量パーセントから約95重量パーセント、約10重量パーセントから約90重量パーセント、約15重量パーセントから約85重量パーセント、約20重量パーセントから約80重量パーセント、約25重量パーセントから約75重量パーセント、約30重量パーセントから約70重量パーセント、約35重量パーセントから約65重量パーセント、約40重量パーセントから約60重量パーセント、又は約45重量パーセントから約55重量パーセント存在し得る。逆に言えば、ハードセグメントは、上で述べたものと同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメント重量百分率(及び従ってハードセグメント重量百分率)は、NMRによって測定することができる。
上で論証したように、本発明の実施形態は、α−オレフィンのブロック共重合体の新規の類を提供する。前記ブロック共重合体は、ゼロより大きい、好ましくは0.2より大きい、平均ブロック指数を特徴とする。それらのブロック構造のため、前記ブロック共重合体は、他のエチレン/α−オレフィンコポリマーについて見られない特性と特徴の独特な組み合わせを有する。さらに、前記ブロック共重合体は、異なるブロック指数を有する様々な画分を含む。そのようなブロック指数の分布は、それらのブロック共重合体の物理的特性全体に影響を及ぼす。重合条件を調節することによってブロック指数の分布を変えることができ、それによって、所望のポリマーを作製する能力が得られる。そのようなブロック共重合体は、多くの最終用途を有する。例えば、前記ブロック共重合体を使用して、ポリマーブレンド、繊維、フィルム、成形品、潤滑剤、基油などを作ることができる。他の利点及び特徴は、当業者には明らかである。
限定された数の実施形態に関して本発明を説明したが、1つの実施形態の特定の特徴が、本発明の他の実施形態にもあると考えるべきではない。1つだけの実施形態が、本発明のすべての態様の代表にはならない。一部の実施形態における組成物又は方法は、本明細書中で述べていない数多くの化合物又は段階を含むことがある。他の実施形態における組成物又は方法は、本明細書に列挙していないいずれの化合物又は段階も含まない、又は実質的に有さない。説明した実施形態からの様々な変形及び変更が存在する。樹脂を作る方法を多数の動作及び段階を含むと説明している。これらの段階又は動作は、別の指示が無い限り、いずれの順序又は順番で実施してもよい。最後に、本明細書に開示するいずれの数も、その数を記載する際に「約」又は「おおよそ」という語を用いているかどうかにかかわらず、近似値を意味すると解釈しなければならない。添付のクレームは、本発明の範囲内に入るそれらの変更及び変形すべてを包含すると解釈される。