JP5572128B2 - 耐食性アルミニウム合金部材、および、オープンラック式気化器の伝熱管またはヘッダー管 - Google Patents

耐食性アルミニウム合金部材、および、オープンラック式気化器の伝熱管またはヘッダー管 Download PDF

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Description

本発明は、オープンラック式気化器の伝熱管またはヘッダー管を構成する耐食性アルミニウム合金部材に関する。
液化天然ガス(以下、適宜LNGという)は、通常、低温高圧の液体である低温液化燃料として移送または貯蔵され、燃料として使用される前に気化される。そして、大量の低温液化燃料を効率的に気化させるために、海水の熱を利用したオープンラック式気化器(以下、適宜ORVという)が用いられる。
図3(a)、(b)に示すように、ORV10は、多数配列された伝熱管2、2・・・とこれらの伝熱管2を上下端で並列に接合するヘッダー管3、4からなる熱交換パネル1と、熱交換パネル1、1間の上部に配されて各伝熱管2の外表面に供給される海水を貯めるトラフ(堰)7と、熱交換パネル1のそれぞれのヘッダー管3、4を並列に接合するマニホールド5、6と、を備える。低温液化燃料は、下部マニホールド5から下部ヘッダー管3を介して伝熱管2内に下端から導入される。一方、図示しない供給手段によりトラフ7に貯められた海水は、トラフ7の側縁部から溢流して伝熱管2、2・・・の外表面を濡らしながら垂下する。伝熱管2内に導入された低温液化燃料は、当該伝熱管2の外部を流通する海水により加熱されて(熱交換して)気化し、伝熱管2内を上昇する。この気化した燃料は、伝熱管2の上端から上部ヘッダー管4を介して上部マニホールド6へ導出される。すなわち、ORV10は熱交換器の一種であり、海水との熱交換によって低温液化燃料を加熱して気化するものである。
熱交換パネル1(伝熱管2およびヘッダー管3、4)には、熱伝導性や加工性等の観点から、通常、3000系、5000系、6000系等のアルミニウム合金が使用されている。しかしながら、熱交換パネル1はその外表面が海水に曝されるため、腐食し易いアルミニウム合金材では、一旦、外表面の侵食が始まるとその部分が集中的に侵されて孔食に至る虞がある。そのため、熱交換パネル1を構成するアルミニウム合金材には、その表面に防食処理を施す必要がある。特に、熱交換パネル1の下部、具体的には伝熱管2の下部および下部ヘッダー管付近では、内部の極低温(約−160℃)のLNGにより外側の海水が約0℃まで冷却されているため溶存酸素濃度が高く、より厳しい腐食環境となっている。また、近年、ORV10は、ますます高効率化が図られており装置的に大型かつ長時間連続運転する傾向にある。このため、パネル下部では、ORV10を構成する部材の大型化による落下海水の流速増大や連続長時間運転に耐えるようなより高い耐食性、耐久性、信頼性が求められている。
このため従来から前記用途に用いられるAl合金を対象として、種々の防食方法がさかんに研究され、現在では犠牲防食作用を利用した方法がその主流を占めている。この犠牲防食は、Al合金からなる母材合金の表面を、母材合金よりも腐食しやすい金属、すなわち母材合金よりも海水中の腐食電位が卑なイオン化傾向の高い合金で被覆することである。このことにより、当初は被覆合金の被覆作用により母材合金が海水と直接接触せずに耐食性が保たれ、また、被覆合金の一部が剥がれて母材合金が露出し海水と直接接触するようになっても、残った被覆合金の犠牲防食作用により、母材合金の長期耐食性を保証するものである。
例えば、この犠牲防食作用を有する被覆合金として、Al−Zn合金やAl−Mg合金が公知であり、例えばAl−2%Zn、Al−15%Zn、Al−5%Mgなどの合金が使用されている。またこの合金をORV基材合金に被覆する方法として、例えば、特許文献1では、熱交換パネルの外表面に、基材(アルミニウム合金材)より電位の卑なAl−Zn合金を溶射により被覆して犠牲陽極皮膜とし、優先的にこの犠牲陽極皮膜のZnをイオンとして海水中に溶解させることで基材を保護する技術が開示されている。しかしながら、図4に示すように、特許文献1のような耐食性アルミニウム合金部材30では、犠牲陽極皮膜32の主成分であるAlの作用で表面が不働態化しやすい。また、犠牲陽極皮膜32は、溶射によって形成されるため、皮膜内に孔欠陥(気孔)33が存在する。従って、ORVでは、気孔33を経由してORVのアルミニウム合金からなる基材31と犠牲陽極皮膜32との界面34に海水が侵入した場合は、溶存酸素が不足して電位が低くなる界面欠陥部の活性面と、電位が高くなる犠牲陽極皮膜最表面の不働態部との間で電池(酸素濃淡電池)が形成され、界面34で優先的に腐食が進行してしまう。その腐食に伴い生成した腐食生成物の体積膨張により、犠牲陽極皮膜32が押し上げられることで、犠牲陽極皮膜32の膨れや剥離が発生してしまい、かえって短寿命となるという問題がある。
犠牲陽極皮膜に存在する気孔を経由する海水侵入を抑制するため、エポキシ樹脂等で犠牲陽極皮膜を被覆する方法が知られている。例えば、特許文献2では、溶射によって形成された犠牲陽極皮膜に封孔処理剤を塗布し、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂を順次積層して、犠牲陽極皮膜の損耗を抑制し、犠牲陽極機能を長寿命化した熱交換パネルとする技術が開示されている。しかしながら特許文献2のような熱交換パネルは、太陽光の紫外線や熱サイクル等により樹脂が経年劣化するため、樹脂劣化によって露出した犠牲陽極皮膜が紫外線や熱サイクル等により劣化して、剥離等に至るという問題がある。
前記の様な問題を解決する方法として、特許文献3や特許文献4では、犠牲陽極皮膜(溶射皮膜)の最表面から深さ100μmまでの領域の気孔の面積率を低く制御し、犠牲陽極皮膜中に存在する気孔を経由してORVのアルミニウム合金基材と犠牲陽極皮膜との界面に海水が侵入するのを抑制したAl−ZnまたはAl−Mg合金からなる犠牲陽極皮膜を形成する技術が開示されている。
特許第3041159号公報 特開平8−29095号公報 特開2006−183087号公報 特開2007−78237号公報
しかしながら、特許文献3、4の方法を用いても、犠牲陽極層を溶射にて形成する場合、皮膜内に不可避的に生成する気孔は、それぞれが分断して存在するのではなく、皮膜最表面から基材との界面に向って気孔同士が連続していることが多い。したがって、気孔を通じてORVのアルミニウム合金基材と犠牲陽極皮膜との界面に海水が侵入し、界面で優先的に腐食が進行してしまう。その結果、腐食に伴い生成した腐食生成物の体積膨張により、犠牲陽極皮膜に膨れや剥離が生じ、耐食性が低下するという問題を解決できない。
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は、ORV等に用いられた際に、耐食性、特に腐食環境下で長期にわたって使用可能な耐食性に優れる耐食性アルミニウム合金部材およびORVの伝熱管またはヘッダー管を提供することにある。
オープンラック式気化器(ORV)の伝熱管またはヘッダー管を構成する耐食性アルミニウム合金部材において、基材の表面の少なくとも一部に被覆されて当該基材に対して犠牲陽極性を有する犠牲陽極皮膜を備える構成とした場合には、犠牲防食性の発現に伴い、対反応として犠牲陽極皮膜中で腐食生成物が生成し、これが犠牲陽極皮膜の膨れの原因に繋がる。そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ORVの基材と犠牲陽極皮膜との界面での腐食反応よりも犠牲陽極皮膜の表面側領域での腐食反応を優先させ、界面での腐食生成物の生成を抑制することにより、犠牲陽極皮膜の膨れや剥離を抑制するため、犠牲陽極皮膜の表面側領域の気孔の面積率を従来よりも高めに設定し、かつ前記領域で生成する腐食生成物の体積膨張による影響を緩和するために粗大気孔を適量配置すれば良いことを見出した。
前記課題を解決するために、本発明に耐食性アルミニウム合金部材は、アルミニウム合金からなる基材と、前記基材の表面の少なくとも一部に被覆されて当該基材に対して犠牲陽極性を有するアルミニウム合金からなる厚さ250μm以上の犠牲陽極皮膜とを備え、前記犠牲陽極皮膜は、その最表面から深さ150μmまでの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%以上15%以下、かつ、前記気孔のうち、孔径5μm以上の粗大気孔の割合が70%以上であり、さらに、前記最表面から深さ150μmを超えて前記基材との界面までの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%未満、かつ、前記気孔のうち、前記粗大気孔の割合が60%以下であることを特徴とする。
前記構成によれば、犠牲陽極皮膜の2つの所定領域における気孔の面積率、および、粗大気孔の割合を規定することにより、基材と犠牲陽極皮膜との界面での腐食反応よりも、犠牲陽極皮膜の表面側領域での腐食反応が優先され、基材と犠牲陽極皮膜との界面での腐食生成物の生成が抑制される。その結果、腐食生成物の体積膨張に起因した犠牲陽極皮膜の膨れや剥離が抑制される。また、犠牲陽極皮膜の表面側領域の粗大気孔の割合を規定することにより、表面側領域で腐食生成物が生成した際の犠牲陽極皮膜の変形が抑制される。
また、耐食性アルミニウム合金部材は、前記犠牲陽極皮膜が、Al−Zn合金、または、Al−Mg合金からなることが好ましい。
前記構成によれば、犠牲陽極皮膜を所定のアルミニウム合金で構成することにより、腐食環境下での犠牲陽極皮膜の電位が基材の電位よりも卑となり、犠牲陽極皮膜のイオン化傾向が大きなものとなる。その結果、犠牲陽極皮膜の犠牲陽極性が向上し、耐食性アルミニウム合金部材の耐食性が向上する。
本発明に係る外表面に供給される海水との熱交換によって内部に流通する液化天然ガスを気化させるオープンラック式気化器の伝熱管またはヘッダー管は、前記の耐食性アルミニウム合金部材で、前記犠牲陽極皮膜側を外面にして構成されたことを特徴とする。
前記構成によれば、伝熱管またはヘッダー管が、腐食環境側である外面に所定の犠牲陽極皮膜を備えることにより、オープンラック式気化器の長期の運転環境下でも耐食性が維持される。
また、伝熱管またはヘッダー管は、前記犠牲陽極皮膜の損傷部を補修して補修皮膜を形成した際、前記補修皮膜は、前記基材に対して犠牲陽極性を有するアルミニウム合金からなる厚さ250μm以上の皮膜であって、前記補修皮膜の最表面から深さ150μmまでの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%以上15%以下、かつ、前記気孔のうち、孔径5μm以上の粗大気孔の割合が70%以上であり、さらに、前記最表面から深さ150μmを超えて前記基材との界面までの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%未満、かつ、前記気孔のうち、前記粗大気孔の割合が60%以下であって、前記補修皮膜中の残留塩化物イオン濃度が0.1質量%以下であることが好ましい。
前記構成によれば、伝熱管またはヘッダー管が、犠牲陽極皮膜の損傷部を補修して補修皮膜を形成した際、補修皮膜が所定の皮膜構造、および、残留塩化物イオン濃度であることにより、オープンラック式気化器の長期の運転環境下でも耐食性が維持される。
本発明によれば、ORV等に用いられた際に、耐食性、特に腐食環境下で長期にわたって使用可能な耐食性に優れる耐食性アルミニウム合金部材およびORVの伝熱管またはヘッダー管を提供できる。
本発明に係る耐食性アルミニウム合金部材の構成を示す断面模式図である。 本発明に係る耐食性アルミニウム合金部材の海水中での腐食状態を示す断面模式図である。 オープンラック式気化器の一例を説明する部分概略図であり、(a)は正面図、(b)は側面断面図である。 従来の耐食性アルミニウム合金部材の海水中での腐食状態を示す断面模式図である。
本発明に係る耐食性アルミニウム合金部材の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1、図3(a)、(b)に示すように、耐食性アルミニウム合金部材20は、基材21と、この基材21の表面の少なくとも一部に被覆された所定厚さの犠牲陽極皮膜22と、を備える。
ここで、基材21の表面の少なくとも一部とは、耐食性アルミニウム合金部材20を、ORV10の伝熱管2またはヘッダー管3,4の形状である管形状に成形した際、その外表面となる部分であり、伝熱管2とヘッダー管3、4とからなる熱交換パネル1では、腐食環境に曝される部分である。したがって、伝熱管2またはヘッダー管3、4においては、犠牲陽極皮膜22側を外面にして、犠牲陽極皮膜22で被覆された領域は、管外表面の全体であってもよいし、特に極低温に曝され厳しい腐食環境かつ海水の流れの速い、例えば、熱交換パネル1の下部を構成する管外表面の一部であってもよい。具体的には、下部ヘッダー管3の全体、および、伝熱管2の下半分が挙げられる。
以下に、耐食性アルミニウム合金部材20を構成する要素について説明する。
<基材>
基材21は、アルミニウム合金からなり、その合金種は特に限定されないが、通常、JIS規定の3000系、5000系、または6000系アルミニウム合金が用いられ、押出成形等の公知の方法で、円筒形状の伝熱管2またはヘッダー管3,4の形状に加工される。基材21の厚さは、特に限定されないが、伝熱管2(ヘッダー管3,4)の管径や長さ等に応じて必要な強度が得られる厚さに成形される。また、後記する犠牲陽極皮膜22を溶射法等を用いて形成する前に、基材21の表面(犠牲陽極皮膜22を被覆する領域)をブラスト処理等により粗面化することが好ましい。基材21の表面が粗面化されることで、犠牲陽極皮膜22が剥離し難くなる。そして、基材21は、伝熱管2およびヘッダー管3,4の形状にそれぞれ成形された後、溶接等により接合されて熱交換パネル1の形状に組み立てられ、その後、犠牲陽極皮膜22が形成される。なお、基材21の形状は、伝熱管2およびヘッダー管3,4の形状によって決定されるが、前記した円筒形状に限定されるものではない。
<犠牲陽極皮膜>
犠牲陽極皮膜22は、基材の表面の少なくとも一部に被覆されて基材21に対して犠牲陽極性を有するアルミニウム合金からなる所定厚さの皮膜である。そして、犠牲陽極皮膜22は、所定の領域(表面側領域22Bおよび界面側領域22A)において、気孔の面積率と、粗大気孔の割合が所定範囲に規定された皮膜である。
なお、基材21上に犠牲陽極皮膜22を被覆する方法としては、高効率化しているORV10に用いられている伝熱管2またはヘッダー管3、4の形状が多形状となり複雑化していること、および、伝熱管2とヘッダー管3、4との溶接部での施工性の観点から、犠牲陽極皮膜22の形成は溶射法にて形成することが好ましい。また、犠牲陽極皮膜22は、前記成分のアルミニウム合金を、例えば、線状(ワイヤ状)、または粉末状の溶射材料として、熱源を燃焼ガスとしているフレーム溶射法を適用すればよい。
(アルミニウム合金)
犠牲陽極皮膜22は、腐食環境下、具体的には海水中において、基材21に対して犠牲陽極性(犠牲防食性)を有するアルミニウム合金、具体的には基材21を構成するアルミニウム合金よりも電位が卑となるアルミニウム合金からなる必要がある。その結果、耐食性アルミニウム合金部材20は、基材21の表面が、基材合金よりも腐食しやすい、すなわち基材合金よりも海水中での腐食電位が卑なイオン化傾向の高い合金で被覆されることとなる。このことにより、当初は、犠牲陽極皮膜22の被覆効果により基材合金が海水と直接接触せずに耐食性が保たれ、また、犠牲陽極皮膜22の一部が剥がれて基材合金が露出し海水と直接接触するようになっても、残存している犠牲陽極皮膜22の犠牲防食性により、基材合金の長期耐食性を保証することができる。
犠牲陽極皮膜22のアルミニウム合金は、前記したように基材合金より海水中での電位が卑となり(イオン化傾向が大きい)、かつ、溶射材料として好適であるアルミニウム合金であって、具体的には、Al−Zn合金、Al−Mg合金またはZn、Mgを含む二種以上の元素を含むAl合金が挙げられる。具体的にはZn:0.1〜30質量%、Mg:0.1〜15質量%の一種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金が好ましい。すなわち、Zn、Mgを単独、または、Zn、Mgを含む二種以上の元素を前記含有量の範囲でAlに添加して、基材21を形成するアルミニウム合金の電位と比較して卑となる電位とすればよい。なお、Zn、Mgを含む二種以上の元素を含有する場合は、Zn、Mgのそれぞれの元素の含有量が前記範囲を満足し、かつ、Zn、Mgの含有量の合計を30質量%以下(Al:70質量%以上)とすることが好ましい。Zn、Mgの含有量の合計が30質量%を超えると、不均一な材料となり溶射材料として使いづらくなったり、溶射により形成した犠牲防食層中の成分に不均一が生じることで局部的な溶出が促進されてしまい、所望の犠牲防食性を発揮できない虞がある。このようなアルミニウム合金で犠牲陽極皮膜22を構成することにより、犠牲陽極皮膜22にピンホール等の部分的な欠損が生じても、犠牲陽極皮膜22が腐食環境(海水中)で積極的にアノード反応(M→Mn++ne、M:Al、Zn、Mg、n:価数)を起こすことで基材21の腐食を防止(犠牲防食)することができる。
(表面側領域における気孔の面積率、および、粗大気孔の割合)
犠牲陽極皮膜22では、表面側領域22B、具体的には、犠牲陽極皮膜22の最表面から深さ150μmまでの領域において、その厚さ方向の断面における気孔23の面積率が5%以上15%以下、かつ、断面における気孔23のうち、孔径5μm以上の粗大気孔23aの割合が70%以上であることが必要である。
これにより、腐食環境下、具体的には海水中の耐食性アルミニウム合金部材20では、海水浸入が犠牲陽極皮膜22の表面側領域22Bで留まり、基材21と犠牲陽極皮膜22との界面24にまで達することがないため、犠牲陽極皮膜22の表面側領域22Bでの腐食が優先的に生じる。また、粗大気孔23a内で腐食生成物が生成され、腐食生成物の体積膨張が粗大気孔23a内で止まるため、腐食生成物の体積膨張によって犠牲陽極皮膜22が変形することがなく、犠牲陽極皮膜22の膨れや剥離につながることがない。
気孔23の面積率が5%未満の場合には、表面側領域22Bにおける粗大気孔23aの個数が少なくなり、海水浸入が表面側領域22Bに留まらず界面側領域22A(界面24)まで達するため、表面側領域22Bでの優先腐食効果が十分でなくなる。また、気孔23の面積率が15%を超える場合には、海水侵入が過剰となり不要な腐食を生じてしまう。なお、気孔23の面積率は、6%以上14%以下が好ましく、7%以上13%以下がより好ましい。
粗大気孔23aの孔径は、気孔内に腐食生成物が生成しても、腐食生成物の体積膨張が気孔内に止まり、犠牲陽極皮膜22の変形につながらないような大きさに設定する必要があり、その孔径は5μm以上である。そして、粗大気孔23aの割合が70%未満の場合には、粗大気孔23aの個数が少なくなるため、海水浸入が粗大気孔23aに留まらず、界面24まで達する。その結果、界面24に生成した腐食生成物の体積膨張により犠牲陽極皮膜22が変形する。なお、粗大気孔23aの割合は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。一方、表面側領域22Bにおける粗大気孔23aの割合は、多くても支障が無いためその上限を100%とするが、実際の施工上は適宜調整しても孔径5μm未満の気孔23を無くすことは困難なため、上限は98%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
(界面側領域における気孔の面積率、および、粗大気孔の割合)
犠牲陽極皮膜22では、界面側領域22A、具体的には、犠牲陽極皮膜22の最表面から深さ150μmを超えて基材21との界面24までの領域において、その厚さ方向の断面における気孔23の面積率が5%未満、かつ、その断面における気孔23のうち、孔径5μm以上の粗大気孔23aの割合が60%以下であることが必要である。
気孔23の面積率を、優先して腐食を発生させる表面側領域22Bよりも低減することにより、腐食環境下、具体的には海水中の耐食性アルミニウム合金部材20では、犠牲陽極皮膜22の界面側領域22Aへの海水侵入が抑制され、基材21と犠牲陽極皮膜22との界面24での腐食生成物の生成を抑制できる。その結果、犠牲陽極皮膜22の膨れや剥離をさらに抑制できる。また、粗大気孔23aの割合を表面側領域22Bよりも低減することにより、その効果をより一層高めることができる。
気孔23の面積率が5%を超える場合、または、粗大気孔23aの割合が60%を超える場合には、界面側領域22Aへの海水浸入の抑制効果がなくなる。なお、気孔23の面積率は、4.5%以下が好ましく、4%以下がより好ましい。また、粗大気孔23aの割合は、55%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
前記した犠牲陽極皮膜22中の気孔23の面積率、および、孔径5μm以上の粗大気孔23aの割合の制御については、溶射材であるワイヤの送り速度や溶融液滴を対象物に吹き付ける圧縮空気量を制御すること、溶射ガンの先端から溶射対象物までの距離または角度を変化させることにより、溶融した溶射溶線の液滴が溶射対象物に衝突する際の変形自由度を調整すれば良い。例えば、ワイヤの送り速度を遅くすることで単位時間あたりに噴射される溶融液滴量を減らしたり、圧縮空気量を減らすこと、また溶射ガン先端から溶射対象物までの距離を遠くする等の方法で、溶融液滴の基材衝突時の変形自由度を低下させることにより、気孔23の面積率や粗大気孔23aの割合を増大させることができる。
したがって、犠牲陽極皮膜22を溶射により形成する際に、たとえば途中で溶射条件を変更して気孔23の面積率および粗大気孔23aの割合が互いに異なる2つの層(表層および深層)を形成することにより、気孔23の面積率および粗大気孔23aの割合が表面側領域22Bと界面側領域22Aとで異なる犠牲陽極皮膜22を製造することができる。
なお、上記の2つの層を形成する場合、表層と深層との境界は、犠牲陽極皮膜22の最表面から深さ150μmの位置(すなわち、上述した表面側領域22Bと界面側領域22Aの境目)であってもよいが、本発明はこれに限定されず、たとえば最表面から深さ100μm以上200μm以下の任意の位置とすることもできる。また、犠牲陽極皮膜22は、2つの層を積層した構成に限定されず、溶射条件を複数回変化させることにより気孔23の面積率および粗大気孔23aの割合が互いに異なる3つ以上の層を積層したものであってもよいし、溶射条件を連続的に変化させることにより気孔23の面積率および粗大気孔23aの割合が連続的に変化したものであってもよい。
いずれにせよ、犠牲陽極皮膜22の最表面から深さ150μmまでの領域(表面側領域22B)と、深さ150μmを超えた領域(界面側領域22A)とにおいて、気孔23の面積率および粗大気孔23aの割合を測定した場合に、測定結果がそれぞれ上記の範囲に含まれていれば本発明の範囲に含まれる。
(犠牲陽極皮膜の厚さ)
犠牲陽極皮膜22の厚さについては、溶射法にて形成された犠牲陽極皮膜22の気孔密度が同じであるならば、皮膜厚さが厚いほど外環境遮断能が高まるため、250μm以上とする。その効果を十分に発揮させるためには、好ましくは270μm以上、より好ましくは300μm以上とする。一方、皮膜厚さが厚すぎると、皮膜の圧縮残留応力が皮膜厚さ増加分だけ累積され、大きな界面破壊力が発生して剥離しやすくなるため、皮膜は800μm以下が好ましく、700μm以下がより好ましく、600μm以下が最適である。
犠牲陽極皮膜22は、皮膜自体の耐久性を高めるため、溶射法によって施工した溶射皮膜に対し、エポキシ樹脂などを用いて封孔処理を行った溶射皮膜であってもよい。封孔剤としては、一般に用いられている溶射皮膜用封孔剤でよいが、Al−Zn合金、およびAl−Mg合金溶射皮膜への浸透性に優れた高分子エポキシ樹脂、例えば、SAクリア(神東塗料株式会社製)が好ましい。そして、このような封孔剤を溶射膜表面に1回以上塗布することが好ましい。
次に、本発明に係るオープンラック式気化器(ORV)の伝熱管またはヘッダー管を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、ヘッダー管は、伝熱管との接合部(溶接部等)を含めてヘッダー管であるとする。
図1、図3(a)、(b)に示すように、ORV10の伝熱管2またはヘッダー管3、4は、前記した耐食性アルミニウム合金部材20で、犠牲陽極皮膜22を外面にして構成されている。これによって、伝熱管2またはヘッダー管3、4の耐食性が向上する。そして、伝熱管2およびヘッダー管3、4は、ORV10において熱交換パネル1を構成する。また、ORV10では、熱交換パネル1(伝熱管2およびヘッダー管3、4)の外側には海水が流通し、内部にはLNG(低温液化燃料、燃料ガス)が流通し、LNGは海水との熱交換によって気化される。なお、ORV10は、図3(a)、(b)に記載された構造に限定されるものではなく、前記した伝熱管2およびヘッダー管3、4から構成される熱交換パネル1を備えるものであれば他の構造であってもよい。
また、図示しないが、ORVの伝熱管またはヘッダー管においては、使用中に犠牲陽極皮膜に一部損傷が生じた場合には、損傷が生じた犠牲陽極皮膜を除去し、その除去部に補修皮膜を形成する。そして、犠牲陽極皮膜の除去は、アルミナグリッドや砂等を用いるブラスト処理などの方法で行われる。また、補修皮膜の形成は、溶射法などの方法で行われ、犠牲陽極皮膜除去部に、伝熱管またはヘッダー管のアルミニウム合金基材に対して犠牲陽極性を有するアルミニウム合金を被覆する。
そして、複雑な形状を有するORVの伝熱管またはヘッダー管では、補修時(再溶射時)に、部位によっては補修前の部分的に損傷が生じている犠牲陽極皮膜を完全に除去することができない場合もある。そして、残存する犠牲陽極皮膜中には海水起因の塩化物イオン(Cl)が残留している。
犠牲陽極皮膜が残存している箇所に、従来技術(特許文献1〜4)に記載された方法で再溶射を行って補修皮膜を形成しても、残存犠牲陽極皮膜中に残留していた塩化物イオンが補修皮膜を構成するアルミニウム合金(Al−Zn合金やAl−Mg合金を含む)の腐食を促進させ、容易に補修皮膜に腐食が進行してしまう。それによって、アルミニム合金基材と補修皮膜との界面に海水が浸入して界面で優先的に腐食が進行し、腐食に伴い生成した腐食生成物の体積膨張により、補修皮膜に膨れや剥離が生じる。その結果、伝熱管またはヘッダー管の耐食性が低下してしまう。
そのため、ORVの伝熱管またはヘッダー管においては、犠牲陽極皮膜の損傷部を補修して補修皮膜を形成した際には、補修前の犠牲陽極皮膜中の残留塩化物イオン濃度を低減し、さらに形成する補修皮膜の皮膜構造も補修前の犠牲陽極皮膜と同様にする必要がある。なお、本発明においては、補修前の犠牲陽極皮膜中の残留塩化物イオン濃度は、補修皮膜中の残留塩化物イオン濃度を測定することによって行う。また、本発明においては、犠牲陽極皮膜を完全に除去することができない場合があるため、残存する犠牲陽極皮膜と補修によって形成した皮膜とを合わせて補修皮膜と称する。
具体的には、ORVの伝熱管またはヘッダー管においては、補修皮膜は、アルミニウム合金基材に対して犠牲陽極性を有するアルミニウム合金からなる厚さ250μm以上の皮膜である。また、補修皮膜は、その最表面から深さ150μmまでの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%以上15%以下、かつ、前記気孔のうち、孔径5μm以上の粗大気孔の割合が70%以上である。さらに、補修皮膜は、その最表面から深さ150μmを超えて前記基材との界面までの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%未満、かつ、前記気孔のうち、前記粗大気孔の割合が60%以下である。加えて、補修皮膜は、その皮膜中の残留塩化物イオン濃度が0.1質量%以下である。これにより、ORVの伝熱管またはヘッダー管の耐食性が向上する。なお、補修皮膜の材質、厚さ、気孔の面積率および粗大気孔の割合については、前記犠牲陽極皮膜と同様であるので、説明を省略する。
補修皮膜中の残留塩化物イオン濃度を0.1質量%以下にすることにより、補修皮膜の腐食を抑制し、補修皮膜の膨れおよび剥離を抑制することができるが、残留塩化物イオン濃度については、好ましくは0.09質量%未満、より好ましくは0.08質量%未満とする。そして、残留塩化物イオン濃度の測定方法は、X線マイクロアナライザ(EPMA)やエネルギー分散形X線分光器(EDX)、ICP発光分光分析装置等を用いて行えばよい。例えば、EPMAにより補修皮膜中の任意の200μm×200μmの領域の塩化物イオンのマッピングを行い、その3視野の平均値として評価すればよい。
補修皮膜中の残留塩化物イオン濃度を0.1質量%以下にするためには、高圧水を噴射するような洗浄機を用いて、補修前の犠牲陽極皮膜を洗浄することが好ましい。洗浄時の水圧については高すぎると、水圧によりORVのアルミニウム合金基材自体が損傷してしまうおそれがあるため、その上限は7MPa程度が好ましい。また、ORVに対して高圧水の当たる向きを60度以上の角度を取ることが好ましい。
<試験材の作製>
(実施例No.1〜5、9〜13)
伝熱管およびヘッダー管に換えて、下記試験材を作製した。試験材の基材として、Al合金(A5083)の板材(縦100mm×横100mm×厚さ20mm)の片面に、ショットブラスト(アルミナグリッド#16〜#20)にて粗面化(算術平均粗さRa=20〜40μm)した基材を準備した。そして、基材の上に、フレーム溶射法(プロパン−酸素)を用いて、Al−2%Zn合金、および、Al−5%Mg合金からなる溶射ワイヤの送り速度2600mm/min、溶射ガン先端から溶射対象物までの距離(溶射距離)を200〜250mmとしての溶射皮膜(犠牲陽極皮膜の界面側領域)を形成した。さらに、孔径5μm以上の粗大気孔を有する溶射皮膜を導入するために、前記した溶射皮膜上に、溶射ワイヤの送り速度を1820〜2340mm/min、溶射ガン先端から溶射表面までの距離(溶射距離)を300〜350mmに調整して前記と同様にして厚さ150μmの溶射皮膜(犠牲陽極皮膜の表面側領域)を形成した。なお、溶射皮膜(界面側領域)の厚さは、溶射皮膜の合計厚さが表1に示す合計厚さになるように調整した。
(比較例No.6〜8、14〜16)
溶射距離を250mm(比較例No.6、14)、350mm(比較例No.7、15)と一定とした条件で、界面側領域および表面側領域の両領域の犠牲陽極皮膜(溶射皮膜)を形成したこと以外は、実施例と同様にして試験材を作成した。なお、比較例(No.7)は特許文献3のアルミニウム合金部材に相当する試験材であって、比較例(No.15)は特許文献4のアルミニウム合金部材に相当する試験材である。また、比較例(No.8、16)は、溶射ワイヤの送り速度2600mm/min、溶射ガン先端から溶射対象物までの距離(溶射距離)を200〜250mmに調整した条件で約50μm程度、その後溶射ワイヤの送り速度を1820〜2430mm/min、溶射ガン先端から溶射対象物までの距離(溶射距離)を300〜350mmに調整した条件で160〜170μm程度の皮膜厚さとなるように溶射を行った。
試験材の気孔の面積率、孔径5μm以上の粗大気孔の割合については、前記手法により得られた試験材から供試材を切り出し、切断面を研磨して光学顕微鏡にて100倍視野を任意に5視野撮影し、各5視野の平均値として求めた。なお、気孔の面積率、粗大気孔の割合の解析手法は、撮影した写真に対して、画像解析ソフト(例えばImageJなど)を用いて二値化し、観察視野の総面積に対する気孔面積の比率として求めた。また、試験材の気孔の面積率、粗大気孔の割合および溶射皮膜(犠牲陽極皮膜)の合計厚さについては、表1に示すとおりである。さらに、表1において、下線部は本発明の要件を満たさないことを示す。
Figure 0005572128
<耐食性試験(熱サイクル腐食試験)とその評価>
実機での使用環境を考慮した熱サイクル腐食試験として、作製した試験片から切り出した供試材に対して以下の試験を行った。供試材の犠牲陽極皮膜の表面へ、pH8.2、液温35℃に調整した人工海水(株式会社ヤシマ製金属腐食試験用アクアマリン)の噴霧を行い、また、1日1回、LNGによる基材冷却を模擬するため、基材のみを液体窒素に浸漬し冷却する工程を合計8週間行った。
犠牲陽極皮膜の膨れについては、前記工程が1週間終了する毎に、供試材の外観を観察して、犠牲陽極皮膜の膨れの有無を評価した。犠牲陽極皮膜の膨れについては目視による観察を行い、100cmあたり評価面積において、膨れが発生しなかったものを「◎:優れている」、膨れ数が5個未満のものを「○:良好」、5個以上10個未満のものを「△:やや劣っている」、10個以上のものを「×:劣っている」として評価した。その結果を表2に示す。
犠牲陽極皮膜の密着力については、8週間の試験終了後に犠牲陽極皮膜表面に直径20mmの円形鋼製治具を接着剤により貼り付け、治具周囲の犠牲陽極皮膜に対してのせん断強度影響を排除するために基材に達する切り込みを入れた後、室温にてクロスヘッドスピード1mm/minにて引張を行い、犠牲陽極皮膜の基材からの剥離強度を求め、密着力を評価した。剥離強度が7kN以上のものを「◎:優れている」、5kN以上7kN未満のものを「○:良好」、3kN以上5kN未満のものを「△:やや劣っている」、3kN未満のものを「×:劣っている」として評価した。その結果を表2に示す。
Figure 0005572128
表1および表2の結果から、実施例No.1〜5、および、実施例No.9〜13の試験材は、いずれも本発明の要件を満たしているため、熱サイクル腐食試験後の犠牲陽極皮膜の膨れが抑制され、優れた密着力を有していた。
それに対して、比較例No.6、および、比較例No.14は、犠牲陽極皮膜の表面側領域の気孔の面積率、および、粗大気孔の割合が本発明の要件を満たしていないため、熱サイクル腐食試験後の犠牲陽極皮膜に膨れが生じ、犠牲陽極皮膜の密着力も低かった。また、比較例No.7(特許文献3に相当)、および、比較例No.15(特許文献4に相当)は、犠牲陽極皮膜の界面側領域の気孔の面積率、および、粗大気孔の割合が本発明の要件を満たしていないため、熱サイクル腐食試験後の犠牲陽極皮膜に膨れが生じ、犠牲陽極皮膜の密着力も低かった。さらに、比較例No.8、16は、犠牲陽極皮膜の合計厚さが薄いため、熱サイクル腐食試験後の犠牲陽極皮膜に膨れが生じ、犠牲陽極皮膜の密着力も低かった。
(実施例No.17、18、21、22)
実施例1で作製した試験材No.5(犠牲陽極皮膜の合金種:Al−2%Zn合金)、No.13(犠牲陽極皮膜の合金種:Al−5%Mg合金)を用いて、実施例1で記載した熱サイクル腐食試験を8週間行った。そして、熱サイクル腐食試験後の試験材No.5、13の犠牲陽極皮膜を高圧水により洗浄し、その後、ショットブラスト(アルミナグリッド#16〜#20)にて、厚さ100μm程度の犠牲陽極皮膜が残存するように犠牲陽極皮膜を除去した。次いで、残存犠牲陽極皮膜の上に、実施例1で記載したフレーム溶射法を用いて再溶射を行い、表3に示すような補修皮膜が形成された試験材No.17、18、21、22を作製した。
作製した試験材No.17、18、21、22について、実施例1と同様にして、補修皮膜の合計厚さ、気孔の面積率、粗大気孔の割合を測定した。その結果を表3に示す。また、補修皮膜中の残留塩化物イオン濃度をEPMAにて測定した。その結果も表3に示す。次いで、作製した試験材No.17、18、21、22について、実施例1で記載した熱サイクル腐食試験を再度8週間行い、実施例1と同様な方法で補修皮膜の膨れ、密着力について評価した。その結果を表4に示す。
(比較例No.19、20、23、24)
比較例No.19、23については、溶射距離を250mmと一定とした条件で界面側領域および表面側領域の両領域の補修皮膜を形成したこと以外は、実施例と同様にして試験材No.19、23を作製した。また、比較例No.20、24については、高圧水による犠牲陽極皮膜の洗浄を行わなかったこと以外は、実施例と同様にして試験材No.20、24を作製した。
作製した試験材No.19、20、23、24について、実施例と同様にして、補修皮膜の合計厚さ、気孔の面積率、粗大気孔の割合、残留塩化物イオン濃度を測定した。その結果を表3に示す。なお、表3において、下線部は本発明の要件を満たさないことを示す。次いで、作製した試験材No.19、20、23、24について、実施例と同様にして熱サイクル腐食試験を再度8週間行い、実施例と同様な方法で補修皮膜の膨れ、密着力について評価した。その結果を表4に示す。
Figure 0005572128
Figure 0005572128
表3および表4の結果から、実施例No.17、18、および、実施例No.21、22については、いずれも本発明の要件を満たしているため、熱サイクル腐食試験後の補修皮膜の膨れが抑制され、優れた密着力を有していた。
それに対して、比較例No.19、および、比較例No.23は、補修皮膜中の残留塩化物イオン濃度は所望の値を満たしているが、補修皮膜が所望の皮膜構造でないため、熱サイクル腐食試験後の補修皮膜に膨れが生じ、補修皮膜の密着力も低かった。また、比較例No.20、および、比較例No.24は、補修皮膜中の残留塩化物イオン濃度が所望の値を満たしていないため、補修皮膜が所望の皮膜構造であっても、熱サイクル腐食試験後の補修皮膜に膨れが生じ、補修皮膜の密着力も低かった。
1 熱交換パネル
2 伝熱管
3 下部ヘッダー管
4 上部ヘッダー管
10 オープンラック式気化器(ORV)
20 耐食性アルミニウム合金部材
21 基材
22 犠牲陽極皮膜
23 気孔
23a 粗大気孔

Claims (4)

  1. アルミニウム合金からなる基材と、前記基材の表面の少なくとも一部に被覆されて当該基材に対して犠牲陽極性を有するアルミニウム合金からなる厚さ250μm以上の犠牲陽極皮膜とを備え、
    前記犠牲陽極皮膜は、その最表面から深さ150μmまでの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%以上15%以下、かつ、前記気孔のうち、孔径5μm以上の粗大気孔の割合が70%以上であり、
    さらに、前記最表面から深さ150μmを超えて前記基材との界面までの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%未満、かつ、前記気孔のうち、前記粗大気孔の割合が60%以下であることを特徴とする耐食性アルミニウム合金部材。
  2. 前記犠牲陽極皮膜が、Al−Zn合金、または、Al−Mg合金からなることを特徴とする請求項1に記載の耐食性アルミニウム合金部材。
  3. 外表面に供給される海水との熱交換によって内部に流通する液化天然ガスを気化させるオープンラック式気化器の伝熱管またはヘッダー管において、
    請求項1または請求項2に記載の耐食性アルミニウム合金部材で、前記犠牲陽極皮膜側を外面にして構成されたことを特徴とするオープンラック式気化器の伝熱管またはヘッダー管。
  4. 請求項3に記載のオープンラック式気化器の伝熱管またはヘッダー管において、
    前記犠牲陽極皮膜の損傷部を補修して補修皮膜を形成した際、
    前記補修皮膜は、前記基材に対して犠牲陽極性を有するアルミニウム合金からなる厚さ250μm以上の皮膜であって、
    前記補修皮膜の最表面から深さ150μmまでの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%以上15%以下、かつ、前記気孔のうち、孔径5μm以上の粗大気孔の割合が70%以上であり、
    さらに、前記最表面から深さ150μmを超えて前記基材との界面までの領域において、その厚さ方向の断面における気孔の面積率が5%未満、かつ、前記気孔のうち、前記粗大気孔の割合が60%以下であって、
    前記補修皮膜中の残留塩化物イオン濃度が0.1質量%以下であることを特徴とするオープンラック式気化器の伝熱管またはヘッダー管。
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