JP6151228B2 - オープンラック型気化器用伝熱管およびその製造方法 - Google Patents
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また、特許文献3には、円筒状の本体部と、本体部の外表面から外方に向かって突出した複数のフィンとを備えた基材と、基材の外周面を覆う犠牲陽極用の皮膜とからなるオープンラック型気化装置用フィンチューブが開示されている。そして、特許文献3のフィンチューブでは、基材と皮膜とは、二重構造のビレットを塑性加工することによりクラッド成形されており、隣接するフィン同士の間の谷部はフィンの側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、本体部の中心に向かって凸状となる形状を呈し、谷部の曲率半径Rと本体部外形Dとが所定の関係を有する。
また、前記オープンラック型気化器用伝熱管は、前記基材がJIS3000系、JIS5000系のいずれかのアルミニウム合金よりなり、前記犠牲防食皮膜がJIS7000系の系アルミニウム合金からなることが好ましい。
また、本発明のオープンラック型気化器用伝熱管の製造方法によれば、複雑な形状を有する伝熱管であっても、犠牲防食性および補修性に優れた伝熱管を製造できる。
図7、図8に示すように、オープンラック型気化器(以下、適宜ORVという)10は、多数配列された伝熱管2と、これらの伝熱管2を上下端で並列に接合する上部ヘッダー管4および下部ヘッダー管3からなる熱交換パネル1と、熱交換パネル1の間の上部に配されて各伝熱管2の外表面に供給される海水を貯めるトラフ(堰)7と、熱交換パネル1のそれぞれの下部ヘッダー管3および上部ヘッダー管4を並列に接合する下部マニホールド5および上部マニホールド6と、を備える。LNGは、下部マニホールド5から下部ヘッダー管3を介して伝熱管2内に下端から導入される。一方、図示しない供給手段によりトラフ7に貯められた海水は、トラフ7の側縁部から溢流して各伝熱管2の外表面を濡らしながら垂下する。伝熱管2内に導入されたLNGは、当該伝熱管2の外部を流通する海水により加熱されて(熱交換して)気化し、伝熱管2内を上昇する。この気化したLNGは、伝熱管2の上端から上部ヘッダー管4を介して上部マニホールド6へ導出される。すなわち、ORV10は、熱交換器の一種であり、海水との熱交換によってLNGを加熱して気化するものである。
したがって、本発明の伝熱管2においては、以下のような特徴を有することが、犠牲防食性の向上と、犠牲防食皮膜24が消失した部分の補修性を向上させために必要である。
図2に示すように、基材20は、伝熱管2の管軸直交断面において、隣接するフィン22同士を繋ぐ谷部23が直線部分23aを有する必要がある。この直線部分23aは、押出成形時に使用する金型の押出形状の設計時に設定する。
図2に示すように、押出成形によりクラッドされた犠牲防食皮膜24は、メタルフローの関係から谷部23で膜厚が薄くなる傾向にある。したがって、谷部23にクラッドされた犠牲防食皮膜24の最小厚(a)を100μm以上とする。好ましくは、150μm以上とする。このように、犠牲防食皮膜24の最小厚(a)を規定することで、ORV運転環境化で使用されても、犠牲防食皮膜24が消失することがなく、犠牲防食性が向上する。この最小厚(a)は、前記距離(A)と、後記する押出成形時に使用する伝熱管用ビレット30の構成、具体的には蓋材34(図3、図5参照)の有無とで制御する。
本発明の製造方法は、準備工程と、押出工程とを含むものである。以下、各工程について説明する。なお、伝熱管の構成については、図1、図2を参照して説明する。
準備工程は、所定の伝熱管用ビレットを準備する工程である。図3、図5に示すように、伝熱管用ビレット30は、管状の基材用ビレット31とその外周面に接合された管状の犠牲防食皮膜用第1ビレット32とからなる二重構造を有する側材ビレット33と、犠牲防食皮膜用第2ビレットとなる板状の蓋材34とからなる。なお、伝熱管用ビレット30を構成する側材ビレット33(基材用ビレット31および犠牲防食皮膜用第1ビレット32)および蓋材34のサイズは、作製する伝熱管2のサイズおよび押出条件等を考慮して適宜設定する。
押出工程は、所定の押出金型を用いて、伝熱管用ビレット30の蓋材34が押出方向の前方に配置されるようにして、所定の押出速度で伝熱管用ビレット30を押出成形することによって、基材20の外周面に犠牲防食皮膜24がクラッドされた伝熱管2を作製する工程である。このように、蓋材34が押出方向の前方に配置されるようにして押出成形することによって、基材20の谷部23への皮膜材料の供給が補充され、局部的な皮膜材料の不足が回避され、犠牲防食皮膜24の最小厚(a)および最大厚(b)が所定範囲に制御される。なお、蓋材34が押出方向の後方に配置されるようにして押出成形してもよいが、谷部23への皮膜材料の補充量は前方配置よりも少ないものとなる。
外径250mmのA5052合金またはA3003合金製の基材用ビレットと、外径280mm、ビレット厚15mmのA7072合金製の犠牲防食皮膜用第1ビレットと、外径280mm、ビレット厚30mmのA7072合金製の蓋材(犠牲防食皮膜用第2ビレット)とを用いて、焼きばめ等の手法で、図3または図5に示すような構造の伝熱管用ビレットを作製した。これらの伝熱管用ビレットを表1に示す押出速度で押出成形して、図1に示すような伝熱管(試験材No.1〜16)を作製した。また、試験材No.2の伝熱管においては基材の谷部を曲線とし、それ以外の試験材においては基材の谷部に直線部分を設けた。
室温の人工海水(株式会社ヤシマ製金属腐食試験用アクアマリン)中に試験材を浸漬し、犠牲防食皮膜(A7072合金)の自然電位に対して120mV(vs.SCE:飽和カロメル電極基準電位)貴な電位を試験材に印加する耐食性試験を実施した。試験材の谷部に基材が露出するまでの時間が半年を超えるものを犠牲防食性が良好「○」、半年以下のものを犠牲防食性が不良「×」と評価した。
溶射による補修性については、前記耐食性試験で試験材の谷部に基材を露出させた後、基材表面をショットブラストにより粗面化し、その上にフレーム溶射法(熱源:プロパン−酸素)にてAl−2質量%Zn合金の溶射皮膜を形成した。補修性の評価は、溶射後の試験材を切断し、谷部の表面粗度(最大谷深さ:Rv)を画像解析により求めた。なお、事前の検討結果からRvが30μmを超える場合は、溶射による犠牲防食皮膜の耐膨れ剥離性に優れることが判明しているため、溶射補修性が良好「○」と評価した。Rvが30μm以下の場合は、溶射による犠牲防食皮膜の耐膨れ剥離性が劣るため、溶射補修性が不良「×」と評価した。
20 基材
21 本体部
22 フィン
22a 直線部分
23 谷部
23a 直線部分
24 犠牲防食皮膜
30 伝熱管用ビレット
31 基材用ビレット
32 犠牲防食皮膜用第1ビレット
33 側材ビレット
34 蓋材
A 距離
a 最小厚
b 最大厚
Claims (5)
- オープンラック型気化器の熱交換パネルを構成する伝熱管であって、
前記伝熱管は、管状の本体部と前記本体部の外周面から外方に向かって突出した複数のフィンとを備えた基材と、押出成形によって前記基材の外周面にクラッドされた犠牲防食皮膜とを備え、
前記伝熱管の管軸直交断面において、隣接する前記フィン同士を繋ぐ谷部が直線部分を有し、
前記谷部の中央点から前記フィンの側辺を形成する直線部分の始点までの距離(A)と、前記基材と前記犠牲防食皮膜との間で規定される犠牲防食距離との関係がA<(犠牲防食距離)であり、
前記谷部にクラッドされた前記犠牲防食皮膜の膜厚の最小厚(a)が100μm以上であって、
前記最小厚(a)と、前記フィンの先端部にクラッドされた前記犠牲防食皮膜の膜厚の最大厚(b)との関係が、b≦10aであり、かつ、前記最大厚(b)が、前記フィンの中心線から前記中心線と直交する方向に測定した膜厚であることを特徴とするオープンラック型気化器用伝熱管。 - 前記基材がJIS3000系、JIS5000系のいずれかのアルミニウム合金よりなり、前記犠牲防食皮膜がJIS7000系の系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1に記載のオープンラック型気化器用伝熱管。
- 請求項1または2に記載のオープンラック型気化器用伝熱管の製造方法であって、
基材用ビレットとその外周面に接合された管状の犠牲防食皮膜用第1ビレットとからなる二重構造を有する側材ビレットと、犠牲防食皮膜用第2ビレットとなる板状の蓋材とからなる伝熱管用ビレットを準備する準備工程と、
前記谷部が直線部分を有し、かつ、前記距離(A)と犠牲防食距離との関係がA<(犠牲防食距離)を満足する押出形状を有する押出金型を用いて、前記蓋材が押出方向の前方に配置されるようにして前記伝熱管用ビレットを押出速度1〜6m/minで押出成形することによって、前記基材の外周面に前記犠牲防食皮膜がクラッドされた伝熱管を作製する押出工程と、を含むことを特徴とするオープンラック型気化器用伝熱管の製造方法。 - 前記伝熱管用ビレットは、
前記基材用ビレットの一方の端面と前記犠牲防食皮膜用第1ビレットの一方の端面とが同一面となるように接合された前記側材ビレットと、
前記側材ビレットの一方の端面と接合する前記蓋材とからなることを特徴とする請求項3に記載のオープンラック型気化器用伝熱管の製造方法。 - 前記伝熱管用ビレットは、
前記基材用ビレットの一方の端面が前記犠牲防食皮膜用第1ビレットの一方の端面よりも押出方向で後方に配置するように接合された前記側材ビレットと、
前記犠牲防食皮膜用第1ビレットの内周面に接合する前記蓋材とからなり、
前記蓋材の一方の端面と前記犠牲防食皮膜用第1ビレットの一方の端面とが同一面となるように接合されることを特徴とする請求項3に記載のオープンラック型気化器用伝熱管の製造方法。
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