JP5206964B2 - オープンラック式気化器の表面保護方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オープンラック式気化器の表面保護方法に関し、詳しくは、オープンラック式気化器を構成する熱交換パネル等の表面を被覆するクラッド層が減少または消滅した部位や、クラッド層を形成していない非クラッド部を補修し、母材を保護するオープンラック式気化器の表面保護方法に関する。
オープンラック式気化器は、多数の伝熱管がパネル状に配列された熱交換パネルの外側から熱を加え、伝熱管内を通過する液体を加熱気化する熱交換器の一種である。液化天然ガス(以下、「LNG」という)は使用に際し気化させて天然ガス(以下、「NG」という)にもどす必要があり、従来から、オープンラック式気化器がLNGの気化に多用されている。この場合、熱媒体として海水を利用し、これを多数のAl合金製の伝熱管(チューブ)で構成されたパネルの外面に流すことにより、チューブ内のLNGを気化させている。
図1は、LNGの気化に使用されるオープンラック式気化器の要部を構成する熱交換パネルとそれに付帯する設備を模式的に例示する図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A矢視図(部分図)である。
図1に示すように、熱交換パネル1は、熱交換効率を高めるためのフィン付きのチューブ(フィンチューブ)2を管径方向に多数配列するように構成され、パネル1の上部および下部はそれぞれ上部ヘッダー3および下部ヘッダー4に結合されている。このようなパネル1が多数個並列に配置されて、一つのオープンラック式気化装置が構成されている。
各パネル1の上部ヘッダー3および下部ヘッダー4はそれぞれ上部マニホールド5、下部マニホールド6に連結されている。さらに、各パネル1の両側には、パネル1の両面に沿って流下させる海水を保持するトラフ7が取り付けられている。海水は、海水管8を介してトラフ7に供給される。
LNGは、下部マニホールド6を経て下部ヘッダー4へ供給され、チューブ2内を上昇する間に、図1(b)に示すように、パネル1の外面に液膜をつくって流下する海水との熱交換により気化し、NGとして上部ヘッダー3から上部マニホールド5へ導かれる。流下して温度が低下した海水は外部に排出される。
パネルを構成するチューブは、極低温のLNGに接するので低温強度に優れるとともに、高い熱伝導性や、フィン付き管を成形するための良好な加工性が必要とされ、また、熱媒体として海水を用いることから耐海水性も必要とされる。そのため、一般に、チューブの素材(母材)として、良好な耐食性も備えているAl−Mn系、Al−Mg系などのAl合金が用いられている。
しかし、熱交換パネルを構成するチューブは常時海水に晒されるという厳しい腐食環境下にあるので、母材である前記Al合金を保護するため、このAl合金よりも卑なAl−Zn合金等の犠牲陽極被膜を母材表面に形成させる防食手段が講じられる。
犠牲陽極被膜の形成方法としては、線状材料を加熱、溶融させて、圧縮ガスにより微粒化して母材表面に吹き付け、溶射被膜(つまり、犠牲陽極被膜)を形成させる溶射法が、成膜が容易なこともあって一般に行われている。
一方、クラッド方式による犠牲陽極被膜の形成も実施されており、例えば、特許文献1には、管状または棒状の母材インゴットの外周面にAl−Zn合金管を外嵌したクラッド素材を構成し、このクラッド素材を押出加工により成形することにより、Al−Zn合金を犠牲陽極被膜としてクラッドしたオープンラック式気化器用のフィンチューブが記載されている。クラッドされたAl−Zn合金(クラッド層)は母材との結合力が極めて高く、溶射被膜において生じることがある剥離の懸念がなく、長期間にわたって母材を保護することができるとしている。
しかしながら、クラッド方式により犠牲陽極被膜を形成した場合、クラッド層が陽極として溶損するため減少し、局部的に消滅することもある。また、チューブ、ヘッダーの機械加工部や、溶接部などの非クラッド部では、クラッド層が存在しない状態になっている。このようなクラッド層が減少・消滅した部位や、非クラッド部では、母材を保護するための何らかの対策が必要とされる。
母材を保護する方法としては、例えば、特許文献2では、チューブあるいはヘッダーの外表面の一部または全面に、ペトロラタム(原油の減圧蒸留残渣から分離精製した常温で半固形の石油ワックス)を10質量%以上含有する有機物被覆層を形成させたオープンラック式気化器用伝熱管あるはヘッダー管が提案され、また、特許文献3では、同じく、炭素繊維、ガラス繊維等の強度の高い強化繊維を10〜80質量%含有する厚み50μm以上の強化繊維含有有機樹脂被覆層を有するオープンラック式気化器用伝熱管が提案されている。
しかし、特許文献2、特許文献3に記載されるオープンラック式気化器用伝熱管等においては、被覆層内部の局部空間で母材あるいは溶射被膜表面に隙間腐食が懸念される一方、被覆層で覆われていることにより伝熱管等の表面状態を目視あるいは溶射膜厚の測定といった手段でその健全性を監視することができない。また、いずれも被覆層が有機物で構成されており、長期間にわたる防食効果の維持、耐久性も課題として残る。
特開平5−164496号公報 特開2004−293811号公報 特開2007−120878号公報
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、表面がクラッド層で被覆されたオープンラック式気化器において、クラッド層が減少または一部消滅した場合や、チューブ、ヘッダーの機械加工部や、溶接部など、クラッド層が存在しない場合に、その部位を補修するオープンラック式気化器の表面保護方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、前記補修を必要とする部位にAl−Zn系の溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層(一般に、「メタリコン層」と称される)を形成する方法について検討した。
メタリコン層を形成する補修方法は、従来、オープンラック式気化器において、熱交換パネルを構成するチューブの母材保護のためにその表面に形成されている溶射被膜の補修には用いられている。この場合のメタリコン溶射では、経験的に2.0質量%(以下、合金元素の「%」は「質量%」を意味する)の亜鉛を含有するアルミニウム(Al−2.0%Zn)を溶射している。
また、表面がクラッド層で被覆されたオープンラック式気化器においては、溶接部など、クラッド層が存在していない非クラッド部にメタリコン溶射が行われる場合はあった。しかし、従来どおりのメタリコン溶射(Al−2.0%Zn)にとどまり、非クラッド部とクラッド部(クラッド層が存在する部分)との境界の施工方法は確立しておらず、施工したメタリコンがどのような腐食挙動をするのか不明であった。一方、クラッド層が減少または一部消滅した場合のメタリコン溶射による補修については実施された例はなく、補修方法についての提案、報告等は見あたらない。
そこで、本発明者らは、表面がクラッド層で被覆されているオープンラック式気化器について、クラッド層が完全には消滅していない表面のクラッド層の上にメタリコン層(溶融アルミニウム亜鉛合金層)を形成させて実地試験を行ったところ、クラッド層とメタリコン層間の剥離や、メタリコン層の不均一な消耗は起こらず、クラッド層の上へのメタリコン層の溶射は有効な補修方法であることを確認した。
また、非クラッド部を保護(防食)するために当該非クラッド部に施工するメタリコン層が、非クラッド部とクラッド部との境界付近でクラッド層の表面に跨って施工された場合にも、メタリコン層は防食層として有効に機能し、このような場合におけるメタリコン層の溶射も補修方法として有効であることが判明した。
さらに、メタリコン層の腐食電位をクラッド層のそれよりも30mV以上低く維持することにより、クラッド層とメタリコン層が共存する環境下において常にメタリコン層を犠牲陽極として先に溶損(減少)させることができ、良好な防食効果が安定して得られることを確認した。
本発明は、このような検討結果に基づきなされたもので、その要旨は、下記のオープンラック式気化器の表面保護方法にある。
すなわち、母材金属表面に、犠牲陽極としてこの母材金属よりも腐食電位が低い金属からなるクラッド層が形成されたオープンラック式気化器において、クラッド層が減少または消滅した部位、およびクラッド層を形成していない非クラッド部のいずれか一方または両方、ならびにそれらの周囲のクラッド層に対して、クラッド層が存在する部位と存在しない部位の表面粗さの十点平均粗さ(Rz)が均一でかつ粗くなるように処理を施した後、腐食電位がクラッド層の腐食電位より30〜100mV低いアルミニウム亜鉛合金を溶射して、当初のクラッド層の厚さより薄い溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層を形成することを特徴とするオープンラック式気化器の表面保護方法である。
前記の「非クラッド部」とは、機械加工部や、溶接部など、クラッド層が存在していない部位をいう。
「クラッド層表面粗さの十点平均粗さ(Rz)」は、JIS B 0601(1994)で定義される表面粗さの十点平均粗さ(Rz)である。以下、単に表面粗さ(Rz)と記す。また、ここでいう「腐食電位」とは、オープンラック式気化器で熱媒体として使用する海水中での腐食電位であり、例えば飽和カロメル電極を照合電極として測定される。
本発明のオープンラック式気化器の表面保護方法において、当初のクラッド層の厚さを150〜1000μmとし、溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層の厚さを50〜200μmとする実施形態を採ることが望ましい。なお、「当初のクラッド層の厚さ」とは、使用に供する前のオープンラック式気化器におけるクラッド層の厚さを意味する。
また、本発明のオープンラック式気化器の表面保護方法において、クラッド層が存在する部位と存在しない部位に均一になるように粗面化する処理を施した後の表面粗さ(Rz)が100μm以上であれば、溶融アルミニウム亜鉛合金層の密着性が良好であり、望ましい。
本発明のオープンラック式気化器の表面保護方法によれば、表面が犠牲陽極として機能するクラッド層で被覆されたオープンラック式気化器において、クラッド層が減少し、または一部が消滅した場合や、機械加工部、溶接部など、クラッド層を形成していない場合などにおいて、それらの部位を補修し、クラッド層さらには母材表面における腐食の進行を効果的に防止することができる。
本発明のオープンラック式気化器の表面保護方法では、前記のように、母材金属表面に、犠牲陽極としてこの母材金属よりも腐食電位が低い金属からなるクラッド層が形成されたオープンラック式気化器において、クラッド層が減少または消滅した部位および非クラッド部のいずれか一方または両方、ならびにそれらの周囲のクラッド層に対して、溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層を形成する。
溶融アルミニウム亜鉛合金層は、一般にメタリコン層と称されるAl−Zn系の合金層であり(以下、通称に従い、溶融アルミニウム亜鉛合金層をメタリコン層ともいう)、前述したように、従来、Al−2.0%Zn合金を素材とするメタリコン溶射が、母材保護のために設けられている溶射被膜の補修に用いられている。本発明の表面保護方法では、このようなメタリコン溶射をクラッド層の補修に適用する。
前記クラッド層は、熱交換パネルを構成するAl−Mn系(A3203材)、Al−Mg系(A5052材)等のAl合金製のチューブ母材など、オープンラック式気化器の表面を保護するために設けられた犠牲防食作用を有する被覆層で、前記の熱交換パネルを構成するAl合金よりも卑なAl−Zn合金からなるものである。一般的には、Al−1.5%Znの7072材が使用される。
クラッド層は犠牲陽極被膜であり、溶損して層厚は次第に減少するので、本発明の表面保護方法では、そのクラッド層が減少して薄くなった部位の表面、またはクラッド層が減少して一部消滅した部位の表面(つまり、母材表面)にメタリコン溶射を適用して溶融アルミニウム亜鉛合金層を形成させる。
また、オープンラック式気化器の表面全体を、剥離の懸念がなく、耐久性に優れるクラッド層で被覆しようとしても、機械加工部、溶接部などの非クラッド部が不可避的に存在する。本発明のオープンラック式気化器の表面保護方法では、このような非クラッド部に対しても同様に溶融アルミニウム亜鉛合金層を形成させる。
図2は、クラッド層が形成されたオープンラック式気化器の構成部材の一部を模式的に例示する断面図で、(a)はクラッド層が減少するとともに、その一部が消滅して母材が露出したチューブの表面にアルミニウム亜鉛合金を溶射した状態を示す図であり、(b)はクラッド層を形成していない非クラッド部の表面にアルミニウム亜鉛合金を溶射した状態を示す図である。
図2(a)に示すように、母材9表面に形成されたクラッド層10が当初の厚さを維持している部分(K面)よりも減少した部位(A面)では、クラッド層10の表面に、また、クラッド層10の一部が消滅して母材9が露出した部位(B面)では、直接母材9表面に溶融アルミニウム亜鉛合金層11を形成させる。その場合、クラッド層10が減少または消滅した部位(A面またはB面)だけではなく、例えばクラッド層10が減少した部位(A面)の周囲のクラッド層(図2(a)中に符号K0を付し、太線で示した部分)に対しても溶融アルミニウム亜鉛合金層11を形成させる。
また、図2(b)に示すように、本発明の表面保護方法では、クラッド層10を形成していない非クラッド部の表面(C面)に溶融アルミニウム亜鉛合金を溶射する。この場合も、非クラッド部の表面(C面)だけではなく、その周囲のクラッド層(図2(b)中に符号K0を付し、太線で示した部分)に対しても溶融アルミニウム亜鉛合金層11を形成させる。
クラッド層が減少または消滅した部位、および/または非クラッド部の周囲のクラッド層に対しても溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層を形成するのは、クラッド層が減少または消滅した部位や非クラッド部とその周囲の当初の厚さを維持しているクラッド層との境界部分を未補修のままで残さず、完全に保護するためである。
本発明の表面保護方法では、このように溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層を形成するに先立ち、クラッド層が減少または消滅した部位、および/または非クラッド部、ならびにそれらの周囲のクラッド層に対して、クラッド層が存在する部位と存在しない部位の表面粗さ(Rz)が均一でかつ粗くなるように処理を施す(この処理を、以下、均一・粗面化処理ともいう)。
このように、表面粗さ(Rz)が均一でかつ粗くなるように処理を施すのは、形成する溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層の密着性が形成面の粗さによって異なり、特にクラッド層が存在する部位と存在しない(母材が露出している)部位で表面粗さ(Rz)の差が大きいからである。なお、表面粗さ(Rz)の均一・粗面化の程度は、クラッド層が存在する部位と存在しない部位に形成された溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層の密着性がほぼ同等とみなされる程度であればよい。
均一・粗面化処理の方法としては、ブラスト処理が適用できるが、必ずしもこれに限定されず、表面保護の対象範囲が狭い場合や、ブラスト処理の実施が困難な場合等においては、機械的な、例えばヤスリまたはこれに類した治具を用いる方法などを適用することも可能である。
ブラスト処理を適用する際には、母材とクラッド層とで表面硬度が異なるので、ブラストの条件を適宜変更することが必要である。その場合、例えば、母材とクラッド層のそれぞれについて、ブラスト粉末の種類、形状、粒度や、噴射圧力、その他必要な条件と表面粗さ(Rz)との関係をあらかじめ把握しておき、これらブラスト条件を変更することにより、クラッド層が存在する部位と存在しない部位の表面粗さ(Rz)を比較的容易に均一かつ粗面化することが可能である。
本発明の表面保護方法では、さらに、溶融アルミニウム亜鉛合金層を形成するに際し、腐食電位がクラッド層の腐食電位より30〜100mV低いアルミニウム亜鉛合金を溶射する。
これは、溶融アルミニウム亜鉛合金層の犠牲防食作用により、クラッド層が減少または消滅した部位や、非クラッド部を保護するためである。溶融アルミニウム亜鉛合金層の腐食電位がクラッド層の腐食電位より30mV以上低ければ、溶融アルミニウム亜鉛合金層を犠牲陽極として先に溶損させ、クラッド層を安定して保護することができる。
一方、溶融アルミニウム亜鉛合金層の腐食電位がクラッド層の腐食電位よりも100mVを超えるほど低い場合は、犠牲防食作用は大きくなるが、溶融アルミニウム亜鉛合金層の溶損速度が増大し過ぎるため、溶融アルミニウム亜鉛合金層の消耗が早く、補修頻度が増えてメンテナンス費用が増大する。
クラッド層はAl−Zn合金からなるものであり、溶融アルミニウム亜鉛合金層もAl−Zn合金であって、両者の腐食電位は亜鉛の含有量でほぼ定まる。前述のように、クラッド層の亜鉛の質量比よりも溶融アルミニウム亜鉛合金層の亜鉛の質量比の方を百分率で0.5%以上高くすることによって、溶融アルミニウム亜鉛合金層の腐食電位をクラッド層のそれよりも常に低く維持できることを本発明者らは確認したが、前記の溶融アルミニウム亜鉛合金層がクラッド層に対して低く維持すべき腐食電位の下限の30mVは、この0.5%に概ね該当する。さらに、クラッド層と溶融アルミニウム亜鉛合金層における適正な亜鉛含有量について本発明者らが得た知見は次のとおりである。
一般的には、クラッド層の亜鉛含有量を0.5〜3%の範囲内とし、溶融アルミニウム亜鉛合金層の亜鉛含有量を1〜4%の範囲内とすることが望ましい。例えば、クラッド層の亜鉛含有量が1.5%であれば、溶融アルミニウム亜鉛合金層の亜鉛含有量は、前記1〜4%の範囲内でクラッド層より若干高めに(0.5%以上に)設定し、例えば2%とする。
クラッド層の亜鉛含有量の望ましい範囲を上記のように規定するのは、亜鉛含有量が0.5%に満たない場合は、母材に対する犠牲防食作用が十分に発揮されないことがあり、3%を超えると、前記犠牲防食作用は大きくなるが、クラッド層の溶解(腐食)速度が増大するため消耗が早く、母材が露出する虞も生じるからである。
一方、溶融アルミニウム亜鉛合金層の亜鉛含有量の望ましい範囲は、概ねクラッド層の亜鉛含有量により定まる。溶融アルミニウム亜鉛合金層の亜鉛含有量の下限を1%とするのは、クラッド層の亜鉛含有量の下限が0.5%であるから、それより若干高めに設定してクラッド層に対する犠牲防食作用を十分に発揮させるためであり、上限を4%とするのは、クラッド層において上限が3%であるから同様にそれよりも若干高めに設定する。
このような知見に基づけば、前記溶射するアルミニウム亜鉛合金についての規定は、亜鉛含有量によっても可能と考えられるが、ここでは、前記のように、アルミニウム亜鉛合金層の溶解(腐食による溶損)速度に直接に影響を及ぼすクラッド層と溶融アルミニウム亜鉛合金層の腐食電位の差により規定した。
本発明の表面保護方法では、溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層を形成するに際し、上記のように、溶射する部位の表面粗さ(Rz)を均一・粗面化する処理を実施した後、形成する溶融アルミニウム亜鉛合金層とクラッド層の腐食電位差を規定することに加え、さらに、溶融アルミニウム亜鉛合金層を当初のクラッド層の厚さよりも薄く形成する。
これは、溶射する溶融アルミニウム亜鉛合金層が厚すぎると、使用中に剥離や割れ等が生じるおそれがあるからである。溶融アルミニウム亜鉛合金層の適正な厚さの設定は必ずしも容易ではないが、母材保護のために形成されているクラッド層の厚さを目安として、その厚さより薄くすることにより、剥離や割れが生じない密着性のよい溶融アルミニウム亜鉛合金層を形成させることができる。
以上述べたように、本発明のオープンラック式気化器の表面保護方法は、クラッド層が形成されたオープンラック式気化器において、クラッド層が減少または消滅した部位、および/または非クラッド部、ならびにそれらの周囲のクラッド層に対して、表面粗さ(Rz)が均一でかつ粗くなるように処理を施した後、腐食電位がクラッド層の腐食電位より低い溶融アルミニウム亜鉛合金を溶射して、当初のクラッド層の厚さより薄い溶融アルミニウム亜鉛合金層を形成する表面保護方法である。
本発明の表面保護方法においては、当初のクラッド層の厚さを150〜1000μmとし、溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層の厚さを50〜200μmとする実施形態を採ることが望ましい。
当初のクラッド層の厚さが150μm未満であると、犠牲陽極であるクラッド層が比較的短期間に消滅してしまい、長期間にわたる母材の保護ができなくなる場合がある。一方、クラッド層の厚さが1000μmを超えると、クラッド層自体の孔食による形状変化や、脱落が顕著になるからである。
溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層の厚さを50〜200μmとするのは、厚さが50μm未満では補修した部位を長期間にわたって保護することができず、200μmを超えると剥離や割れが生じるおそれが出てくるからである。
本発明の表面保護方法においては、クラッド層が存在する部位と存在しない部位の粗面化処理後の表面粗さ(Rz)を100μm以上とする実施形態を採ることが望ましい。形成する溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層の密着性は、当該溶射層を形成する面の粗さによって異なり、一般に、粗い方が密着力が大きくなる。前記表面粗さ(Rz)が100μm以上であれば、密着性に優れた溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層が得られる。
表面粗さ(Rz)の上限は特に規定しない。粗すぎると、それに応じて溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層の厚さを厚くしなければならないので、表面粗さ(Rz)の上限は、採用する溶融アルミニウム亜鉛合金層の厚さにより、必然的に規定される。
本発明の表面保護方法によれば、クラッド層と溶融アルミニウム亜鉛合金層間の剥離、または母材と溶融アルミニウム亜鉛合金層間の剥離や、溶融アルミニウム亜鉛合金層の不均一な消耗は起こらず、クラッド層または母材を効果的に保護することができる。なお、溶融アルミニウム亜鉛合金層の形成は、オープンラック式気化器を使用に供する前に、クラッド層の表面に行ってもよい。
本発明の表面保護方法の効果を確認するため、表面がクラッド層で被覆されているオープンラック式気化器の熱交換パネルを使用して実地試験を行った。熱交換パネルの母材はAl−Mn系合金(A3203材)製であり、クラッド層は、厚さ400μmで、7072材(Al−1.5%Zn)で構成されている。
試験においては、クラッド層上に設けた各小区画(100mm×100mm)において、クラッド層表面粗さ(Rz)をそれぞれ変化させた後、種々の異なった腐食電位を示す溶融アルミニウム亜鉛合金を溶射層の厚さを変更させて溶射することによりクラッド層上に溶融アルミニウム亜鉛合金層を形成させ、試験に供した。なお、試験期間は、60日間である。
表1に試験条件を示す。表1において、「クラッド層表面粗さ(Rz)」は、前記各小区画のクラッド層表面の粗さをアルミナブラスト条件を変えて調整した後、触針式表面粗さ計により表面粗さを測定し、表面粗さ(Rz)を求めた。また、「溶射層の厚さ」は、あらかじめ求めておいた溶射条件(圧縮空気圧、溶射時間等)と溶射層の厚さとの関係に基づき、溶射条件を調節して得られた溶射層の厚さを表示している。
Figure 0005206964
試験結果を表1に併せて示す。「試験結果」の欄の○印は、溶融アルミニウム亜鉛合金層の剥離がなく、溶損による消滅がほとんど認められないことを、△印は、溶融アルミニウム亜鉛合金層の多少の溶損が認められるが、剥離は生じていないことを、×印は、溶融アルミニウム亜鉛合金層の一部または全部が剥離し、または溶損により大部分が消滅していることを意味する。○印または△印はであれば、良好と評価した。
表1において、試験No.1〜3はクラッド層表面粗さ(Rz)を変化させた場合、試験No.4〜7は腐食電位が異なるアルミニウム亜鉛合金を溶射することによりクラッド層とアルミニウム亜鉛合金層との腐食電位差を変化させた場合、試験No.8〜11は溶射層の厚さを変化させた場合である。
表1に示すように、クラッド層とアルミニウム亜鉛合金層との腐食電位差が本発明の規定から外れる比較例7では、溶融アルミニウム亜鉛合金層の大部分が溶損し、溶射層の厚さが本発明の規定から外れる比較例11では、溶融アルミニウム亜鉛合金層の一部が剥離した。
これに対し、クラッド層表面粗さ(Rz)が望ましい粗さ(100μm以上)の下限に比べて幾分小さい本発明例1、および前記の腐食電位差が上限(−100mV)に近い本発明例6で、溶融アルミニウム亜鉛合金層の多少の溶損が認められたが、剥離は生じておらず、その他の本発明例では溶損がほとんど認められなかった。
本発明のオープンラック式気化器の表面保護方法は、表面を被覆するクラッド層が減少または消滅した部位、および/または非クラッド部、ならびにそれらの周囲のクラッド層に対して、表面粗さ(Rz)が均一でかつ粗くなるように処理を施した後、腐食電位がクラッド層より低い溶融アルミニウム亜鉛合金を溶射して、クラッド層の厚さより薄い溶融アルミニウム亜鉛合金層を形成する方法であり、当該部位を補修し、クラッド層表面さらには母材表面における腐食の進行を効果的に防止することができる。
したがって、本発明の表面保護方法は、特に、LNGの気化に使用される表面がクラッド層で被覆されたオープンラック式気化器の保守管理の際に、有効に利用することができる。
LNGの気化に使用されるオープンラック式気化器の要部を構成する熱交換パネルを模式的に例示する図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A矢視図(部分図)である。 クラッド層が形成されたオープンラック式気化器の構成部材の一部を模式的に例示する断面図で、(a)はクラッド層が減少するとともに、その一部が消滅して母材が露出したチューブの表面にアルミニウム亜鉛合金を溶射した状態を示す図であり、(b)はクラッド層を形成していない非クラッド部の表面にアルミニウム亜鉛合金を溶射した状態を示す図である。
符号の説明
1:熱交換パネル、 2:チューブ、 3:上部ヘッダー、
4:下部ヘッダー、 5:上部マニホールド、 6:下部マニホールド、
7:トラフ、 8:海水管、 9:母材、
10:クラッド層、 11:溶融アルミニウム亜鉛合金層(メタリコン層)

Claims (3)

  1. 母材金属表面に、犠牲陽極としてこの母材金属よりも腐食電位が低い金属からなるクラッド層が形成されたオープンラック式気化器において、
    クラッド層が減少または消滅した部位、およびクラッド層を形成していない非クラッド部のいずれか一方または両方、ならびにそれらの周囲のクラッド層に対して、
    クラッド層が存在する部位と存在しない部位の表面粗さの十点平均粗さ(Rz)が均一でかつ粗くなるように処理を施した後、
    腐食電位がクラッド層の腐食電位より30〜100mV低いアルミニウム亜鉛合金を溶射して、
    当初のクラッド層の厚さより薄い溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層を形成することを特徴とするオープンラック式気化器の表面保護方法。
  2. 当初のクラッド層の厚さを150〜1000μmとし、溶融アルミニウム亜鉛合金溶射層の厚さを50〜200μmとすることを特徴とする請求項1に記載のオープンラック式気化器の表面保護方法。
  3. 前記均一になるように粗面化する処理を施した後の表面粗さの十点平均粗さ(Rz)が100μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のオープンラック式気化器の表面保護方法。
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