ところが、上記した従来の交流信号測定装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、上記の交流信号測定装置を含むこの種の測定装置では、例えば、複数の交流信号を入力して測定処理を行う複数チャンネルの構成とした場合においては、一般的に、チャンネル毎に異なる記憶領域が記憶部に設けられ、各記憶領域に各チャンネルのデジタルデータが記憶される。また、このような構成において、各チャンネルのデジタルデータを用いてディップ、スウェルおよび瞬停などのイベント(事象)の発生を、各交流信号のゼロクロスによって区分される半周期毎に検出する機能をさらに備えた構成では、図5に示すように、一般的に、検出したイベントを示すイベント情報も、チャンネル毎に設けられた各記憶領域にチャンネル毎に別々に記憶される。なお、同図および後述する図6では、イベントが発生したことを示す「IN」のイベント情報と、イベントが発生していないことを示す「OUT」のイベント情報が、3つのチャンネル毎に設けた3つの記憶領域にそれぞれ記憶されている状態を図示する。
一方、三相の交流電圧信号のように、周波数が互いに等しくかつ位相が互いに異なる複数の交流信号を入力して各交流信号の信号状態を特定してその結果から各交流信号の品質の良否を評価する評価方法が知られている。この評価方法では、例えば、ディップおよびスウェルについては、図5,6に示すように、3つの交流信号の1つ以上において発生した状態を第1の信号状態と特定し、3つの交流信号のいずれにおいても発生していない状態を第2の信号状態と特定する(両図では、第1の信号状態を「第1」と記載し、第2の信号状態を「第2」と記載する)。また、瞬停については、3つの交流信号の全てにおいて発生した状態を第3の信号状態と特定し、3つの交流信号の1つ以上において発生していない状態を第4の信号状態と特定する。そして、例えば、第1の信号状態および第3の信号状態となった頻度が多いときには各交流信号の品質が不良であるとの評価を行い、第1の信号状態および第3の信号状態となった頻度が少なかったり、第2の信号状態および第4の信号状態が長く続くときには各交流信号の品質が良好であるとの評価を行う。
しかしながら、従来の測定装置を用いて上記したようにイベント情報をチャンネル毎に別々に記憶させたときには、実際には位相が互いに異なっているにも拘わらず、記憶領域内では、図6に示すように、位相が異なることによる各チャンネルにおける半周期同士の時間的なずれ(この例では1/3周期のずれ)が反映されず、これに起因して3つの交流信号の信号状態が実際とは異なる信号状態と特定される結果(図5,6参照)、上記した評価方法での評価を正しく行うことが困難であるという課題が存在する。
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、複数の交流信号における半周期毎のイベントの発生の有無に基づいて特定される各交流信号の信号状態を正確に特定し得る測定装置および信号状態特定方法を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、位相が互いに異なる複数の交流信号を入力して当該各交流信号における予め決められた事象の発生を当該各交流信号のゼロクロスによって区分される半周期毎に検出する事象発生検出部を備えた測定装置であって、前記交流信号の全てにおける前記半周期の各終了時点によって画定される各単位画定時間にそれぞれ対応する複数の単位記憶領域が設けられている記憶部と、1つの前記単位画定時間が含まれる前記各交流信号の前記半周期における事象の発生の有無に基づいて特定される当該各交流信号の信号状態を当該単位画定時間毎に特定すると共に、当該単位画定時間に対応する前記単位記憶領域に前記特定した信号状態を示す状態情報を記憶させる処理部とを備えている。
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記処理部は、1つの前記単位画定時間が含まれる前記各交流信号の前記半周期の1つ以上において前記事象としての第1の事象が発生したときを前記信号状態としての第1の信号状態と特定して当該単位画定時間に対応する前記単位記憶領域に当該第1の信号状態を示す前記状態情報としての第1状態情報を記憶させ、前記1つの単位画定時間が含まれる前記各交流信号の前記半周期のいずれにおいても前記第1の事象が発生していないときを前記信号状態としての第2の信号状態と特定して当該第2の信号状態を示す前記状態情報としての第2状態情報を当該単位画定時間に対応する前記単位記憶領域に記憶させる。
また、請求項3記載の測定装置は、請求項1または2記載の測定装置において、前記処理部は、1つの前記単位画定時間が含まれる前記各交流信号の前記半周期の全てにおいて前記事象としての第2の事象が発生したときを前記信号状態としての第3の信号状態と特定して当該単位画定時間に対応する前記単位記憶領域に当該第3の信号状態を示す前記状態情報としての第3状態情報を記憶させ、前記1つの単位画定時間が含まれる前記各交流信号の1つ以上において前記第2の事象が発生していないときを前記信号状態としての第4の信号状態と特定して当該単位画定時間に対応する前記単位記憶領域に当該第4の信号状態を示す前記状態情報としての第4状態情報を記憶させる。
また、請求項4記載の信号状態特定方法は、位相が互いに異なる複数の交流信号を入力して当該各交流信号における予め決められた事象の発生を当該各交流信号のゼロクロスによって区分される半周期毎に検出し、前記交流信号の全てにおける前記半周期の各終了時点によって画定される1つの単位画定時間が含まれる前記各交流信号の前記半周期における事象の発生の有無に基づいて特定される当該各交流信号の信号状態を当該単位画定時間毎に特定し、前記各単位画定時間にそれぞれ対応して記憶部に設けられている各単位記憶領域に前記特定した信号状態を示す状態情報を記憶させる。
請求項1記載の測定装置、および請求項4記載の信号状態特定方法では、入力した位相が互いに異なる複数の交流信号の全てにおける半周期の各終了時点によって画定される単位画定時間が含まれる各交流信号の半周期における事象の発生の有無に基づいて特定される各交流信号の信号状態を単位画定時間毎に特定し、各単位画定時間にそれぞれ対応して記憶部に設けられている各単位記憶領域に、特定した信号状態を示す状態情報を記憶させる。このため、この測定装置および信号状態特定方法では、単位画定時間毎の信号状態そのものを示す状態情報を単位画定時間の時系列が特定可能な状態で記憶部に記憶させることができる結果、半周期同士の時間的なずれが反映されない情報を用いることに起因して実際とは異なる信号状態を特定するおそれのある従来の構成とは異なり、各交流信号の実際の信号状態を、状態情報を用いて正確に把握することができる。このため、この測定装置および信号状態特定方法によれば、例えば、ある種類の信号状態となった頻度が多いときには各交流信号の品質が不良であるとの評価を行い、また、その信号状態となった頻度が少なかったり、他の種類の信号状態が長く続くときには各交流信号の品質が良好であるとの評価を行う評価方法を行う際に、その評価を正しく行うことができる。
また、請求項2記載の測定装置では、1つの単位画定時間が含まれる各交流信号の半周期の1つ以上において第1の事象が発生したときを第1の信号状態と特定してその単位画定時間に対応する単位記憶領域に第1状態情報を記憶させ、1つの単位画定時間が含まれる各交流信号の半周期のいずれにおいても第1の事象が発生していないときを第2の信号状態と特定してその単位画定時間に対応する単位記憶領域に第2状態情報を記憶させる。このため、この測定装置によれば、第1の事象の発生の有無に基づいて信号状態を特定し、その信号状態となった頻度に基づいて各交流信号の品質を評価するような評価方法において、各信号状態となった頻度を正確に把握することができるため、交流信号の品質の評価を正しく行うことができる。
また、請求項3記載の測定装置では、1つの単位画定時間が含まれる各交流信号の半周期の全てにおいて第2の事象が発生したときを第3の信号状態と特定してその単位画定時間に対応する単位記憶領域に第3状態情報を記憶させ、1つの単位画定時間が含まれる各交流信号の半周期の1つ以上において第2の事象が発生していないときを第4の信号状態と特定してその単位画定時間に対応する単位記憶領域に第4状態情報を記憶させる。このため、この測定装置によれば、瞬停の発生の有無に基づいて信号状態を特定し、その信号状態となった頻度に基づいて各交流信号の品質を評価するような評価方法において、各信号状態となった頻度を正確に把握することができるため、交流信号の品質の評価を正しく行うことができる。
以下、測定装置および信号状態特定方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、測定装置の一例としての測定装置1の構成について説明する。図1に示す測定装置1は、周波数が互いに等しくかつ位相が互いに異なる複数の交流信号(一例として、図2に示す三相の交流電圧信号Su,Sv,Sw(以下、区別しないときには「交流電圧信号S」ともいう))を入力して、各交流電圧信号Sにおけるディップ、スウェルおよび瞬停等のイベント(予め決められた事象の一例)を検出すると共に、その検出結果に基づいて各交流電圧信号Sの信号状態(各交流電圧信号S全体としての信号状態)が後述する第1〜第4の信号状態のいずれであるかを特定可能に構成されている。また、測定装置1は、各交流電圧信号Sについての物理量(例えば、電圧の実効値)を測定可能に構成されている。具体的には、測定装置1は、信号処理部11、サンプリング部12、操作部13、表示部14、記憶部15および処理部16を備えて構成されている。
信号処理部11は、入力した交流電圧信号Sに含まれているノイズ成分を除去する信号処理を実行する。また、信号処理部11は、図1に示すように、複数(この例では、3つ)の交流電圧信号Sを入力して上記の信号処理を実行可能な複数チャンネル(この例では、Ch1〜Ch3までの3チャンネル)の構成となっている。また、信号処理部11は、交流電圧信号Sの周波数(公称周波数:50Hzおよび60Hz)にそれぞれ対応付けられて互いに電気的特性の異なる複数(一例として、2つ)のフィルタ回路21を各チャンネル毎に備えて構成されている。なお、同図では、各チャンネル毎に1つのフィルタ回路21のみを図示している。フィルタ回路21は、交流電圧信号Sに含まれている公称周波数よりも高周波の成分および低周波の成分を除去する(つまり、公称周波数の成分を抽出する)バンドパスフィルタで構成されている。また、信号処理部11は、操作部13に対する切り替え操作によってこれら複数のフィルタ回路21の中から切り替えられたフィルタ回路21によって交流電圧信号Sに対して上記の信号処理を実行する。
サンプリング部12は、信号処理部11によって信号処理が実行された後の交流電圧信号Sを入力してデジタルデータ(サンプリングデータ)Ddを出力するサンプリング処理を実行する。また、サンプリング部12は、図1に示すように、複数(この例では3つ)のサンプリング回路31を備えて3つの交流電圧信号Sを入力して上記の信号処理を実行可能な複数チャンネル(この例では、Ch1〜Ch3までの3チャンネル)の構成となっている。サンプリング回路31は、上記したサンプリング処理を実行して、図外のサンプリングクロック生成回路によって生成される予め決められたサンプリング周期(周波数)のサンプリングクロックに同期して交流電圧信号Sをサンプリングする。この場合、デジタルデータDdは、処理部16よって実行される後述する測定処理において、交流電圧信号Sの物理量(例えば、電圧の実効値)の測定、および交流電圧信号Sにおけるイベントの検出に用いられる。また、サンプリング部12は、一例として、FPGA(Field Programmable Gate Array )で構成されている。なお、サンプリング部12を処理部16と共にCPUで構成することもできる。
操作部13は、処理の開始を指示する操作や、公称周波数を切り替える(フィルタ回路を切り替える)切り替え操作などを行うための各種のスイッチを備えて構成され、それらが操作されたときに操作信号Soを出力する。表示部14は、処理部16の制御に従って各種の画像や測定値を表示する。
記憶部15は、処理部16の制御に従い、処理部16によって生成される情報であって後述する第1〜第4の信号状態をそれぞれ示す状態情報Ds1〜Ds4(以下、区別しないときには「状態情報Ds」ともいう)を記憶する。また、記憶部15は、ディップの発生の有無に基づいて特定した信号状態を示す状態情報Dsを記憶するための記憶領域Ff1、スウェルの発生の有無に基づいて特定した信号状態を示す状態情報Dsを記憶するための記憶領域Ff2、および瞬停の発生の有無に基づいて特定した信号状態を示す状態情報Dsを記憶するための記憶領域Ff3(以下、記憶領域Ff1〜Ff3を区別しないときには「記憶領域Ff」ともいう)を有している。さらに、記憶部15は、各交流電圧信号Sのゼロクロス(立ち上がりのゼロクロス、および立ち下がりのゼロクロス:図2参照)によって区分される全ての交流電圧信号Sにおける半周期Thの各終了時点Tpによって画定される各単位画定時間Tuにそれぞれ対応する複数の単位記憶領域Fuが、上記した各記憶領域Ff1〜Ff3にそれぞれ設けられるように構成されており、各単位画定時間Tu毎の状態情報Dsを各単位記憶領域Fuに記憶する。なお、同図の上段では、交流電圧信号Su,Sv,Swの波形と、半周期Th、終了時点Tpおよび単位画定時間Tuとの関係を示し、同図の下段では、各交流電圧信号Su,Sv,Swの各半周期Thと各単位画定時間Tuとの関係を示すと共に、各単位画定時間Tuに対応付けて設けられている各単位記憶領域Fuが単位画定時間Tuの時系列と同じ時系列で並んでいる状態を概念的に示している。
処理部16は、操作部13から出力される操作信号Soに従って測定装置1を構成する各部を制御する。また、処理部16は、事象発生検出部として機能し、各交流電圧信号Sの半周期Thにおけるディップおよびスウェル(いずれも、予め決められた第1の事象(イベント)に相当する)の発生をデジタルデータDdに基づいて検出すると共に、各交流電圧信号Sの半周期Thにおける瞬停(予め決められた第2の事象(イベント)に相当する)をデジタルデータDdに基づいて検出する。
また、処理部16は、状態情報記憶処理を実行する。処理部16は、この状態情報記憶処理において、上記した単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thにおけるイベントの発生の有無に基づいて特定される各交流電圧信号Sの信号状態が、後述する第1〜第4の信号状態のいずれであるかを単位画定時間Tu毎に特定すると共に、信号状態を特定した単位画定時間Tuに対応する単位記憶領域Fuにその信号状態を示す状態情報Dsを記憶させる。この場合、この測定装置1では、一例として、単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thの1つ以上においてディップまたはスウェルが発生した状態が第1の信号状態として規定され、単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thのいずれにおいてもディップもスウェルも発生していない状態が第2の信号状態として規定されている。また、単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thの全てにおいて瞬停が発生した状態が第3の信号状態として規定され、単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thの1つ以上において瞬停が発生していない状態が第4の信号状態として規定されている。
また、処理部16は、測定処理を実行し、デジタルデータDdを用いて交流電圧信号Sの物理量(例えば、電圧の実効値)を測定する。さらに、処理部16は、上記した状態情報記憶処理によって記憶部15に記憶させた状態情報Dsに基づく各交流電圧信号Sの状態や、測定した物理量を表示部14に表示させる。
次に、周波数が互いに等しくかつ位相が互いに異なる複数の交流信号を入力して各交流信号の信号状態を測定装置1を用いて特定する信号状態特定方法、およびその際の測定装置1の動作について説明する。なお、周波数が50Hzで位相が互いに120°異なる三相の交流電圧信号Su,Sv,Swを交流信号として入力する例について説明する。
この測定装置1では、操作部13に対して処理の開始を指示する操作が行われたときに、信号処理部11の各フィルタ回路21(例えば、50Hz用のフィルタ回路21)が、信号ケーブルを介して入力した交流電圧信号S(交流電圧信号Su,Sv,Sw)のノイズ成分を除去する信号処理をそれぞれ開始し、処理後の交流電圧信号Sをサンプリング部12に出力する。また、サンプリング部12の各サンプリング回路31が、サンプリング処理をそれぞれ開始して、サンプリングクロックに同期して交流電圧信号Sをサンプリングすることにより、デジタルデータDdを生成して処理部16に出力する。
次いで、処理部16は、図2に示すように、各交流電圧信号Sと基準値(0V)とのゼロクロス(交差)を検出し、立ち上がりのゼロクロスおよび立ち下がりのゼロクロスによって区分される各交流電圧信号Sの半周期ThをデジタルデータDdに基づいて特定する。また、処理部16は、各半周期Thにおけるイベント(ディップ、スウェルおよび瞬停)の発生をデジタルデータDdに基づいて検出すると共に、各半周期Thにおける瞬停をデジタルデータDdに基づいて検出する。
さらに、処理部16は、状態情報記憶処理を実行する。この状態情報記憶処理では、処理部16は、各交流電圧信号Sにおける半周期Thの終了時点Tp(図2参照)によって画定される各単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thにおいてイベントが発生したか否か(発生の有無)に基づいて、各交流電圧信号Sの信号状態が第1〜第4の信号状態のいずれであるかを単位画定時間Tu毎に特定する。また、処理部16は、単位画定時間Tuに対応する記憶部15における記憶領域Ffの単位記憶領域Fuにその信号状態を示す状態情報Dsを記憶させる。
次に、各交流電圧信号Sの半周期Thにおけるディップの発生の有無に基づいて各交流電圧信号Sの信号状態を単位画定時間Tu毎に特定する際の状態情報記憶処理を具体的に説明する。この際に、処理部16は、次のような処理を行う。例えば図3に示すように、処理部16は、まず、単位画定時間Tu1が含まれる交流電圧信号Su,Sv,Swにおける各々の半周期Th1の中で、交流電圧信号Svの半周期Th1においてディップが発生したときには(同図では、ディップが発生した旨を「IN」で示し、ディップが発生していない旨を「OUT」で示す)、各交流電圧信号Sの信号状態が上記した第1の信号状態(各交流電圧信号Sの半周期Thの1つ以上においてディップが発生した状態)であることを特定する。次いで、処理部16は、記憶部15の記憶領域Ff1における単位画定時間Tu1に対応する単位記憶領域Fuに、特定した第1の信号状態を示す状態情報Ds1を記憶させる。この際に、処理部16は、同図に示すように、その単位画定時間Tu1の終了時点を画定する半周期Thの終了時点Tpに対応する交流電圧信号Sのチャンネル(この例では、交流電圧信号Svを入力するCh2)を特定可能なチャンネル情報を状態情報Ds1と共に単位記憶領域Fuに記憶させる。
続いて、処理部16は、図3に示すように、単位画定時間Tu2が含まれる交流電圧信号Su,Swにおける各々の半周期Th1、および単位画定時間Tu2が含まれる交流電圧信号Svにおける半周期Th2のいずれにおいてもディップが発生していないときには、各交流電圧信号Sの信号状態が上記した第2の信号状態(単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thのいずれにおいてもディップが発生していない状態)であることを特定する。次いで、処理部16は、記憶部15の記憶領域Ff1における単位画定時間Tu2に対応する単位記憶領域Fuに、特定した第2の信号状態を示す状態情報Ds2を上記したチャンネル情報と共に記憶させる。以下、処理部16は、同様の処理を行うことにより、同図に示すように、各半周期Thにおけるディップの発生の有無に基づいて各交流電圧信号Sの信号状態を単位画定時間Tu毎に特定して、各単位画定時間Tuに対応する単位記憶領域Fuに、特定した信号状態を示す状態情報Dsをチャンネル情報と共に記憶させる。
また、処理部16は、各交流電圧信号Sの半周期Thにおけるスウェルの発生の有無に基づいて各交流電圧信号Sの信号状態を特定する際には、上記したディップの発生の有無に基づく各交流電圧信号Sの信号状態を特定する際の状態情報記憶処理と同様に状態情報記憶処理を行って記憶部15の記憶領域Ff2における各単位記憶領域Fuに、状態情報Dsおよびチャンネル情報を記憶させる。
次に、各交流電圧信号Sの半周期Thにおける瞬停の発生の有無に基づいて各交流電圧信号Sの信号状態を単位画定時間Tu毎に特定する際の状態情報記憶処理を具体的に説明する。この際には、処理部16は、次のような処理を行う。例えば図4に示すように、処理部16は、まず、単位画定時間Tu1が含まれる交流電圧信号Su,Sv,Swにおける各々の半周期Th1の中で、交流電圧信号Svの半周期Th1において瞬停が発生していないときには(同図では、瞬停が発生した旨を「IN」で示し、瞬停が発生していない旨を「OUT」で示す)、各交流電圧信号Sの信号状態が上記した第4の信号状態(各交流電圧信号Sの半周期Thの1つ以上において瞬停が発生していない状態)であることを特定する。次いで、処理部16は、記憶部15の記憶領域Ff3における単位画定時間Tu1に対応する単位記憶領域Fuに、特定した第4の信号状態を示す状態情報Ds4をチャンネル情報と共に記憶させる。
続いて、処理部16は、図4に示すように、単位画定時間Tu2が含まれる交流電圧信号Su,Swにおける各々の半周期Th1、および単位画定時間Tu2が含まれる交流電圧信号Svにおける半周期Th2の全てにおいて瞬停が発生したときには、各交流電圧信号Sの信号状態が上記した第3の信号状態(各交流電圧信号Sの半周期Thの全てにおいて瞬停が発生した状態)であることを特定する。次いで、処理部16は、記憶部15の記憶領域Ff2における単位画定時間Tu2に対応する単位記憶領域Fuに、特定した第3の信号状態を示す状態情報Ds3をチャンネル情報と共に記憶させる。以下、処理部16は、同様の処理を行うことにより、同図に示すように、各半周期Thにおける瞬停の発生の有無に基づいて各交流電圧信号Sの信号状態を単位画定時間Tu毎に特定して、各単位画定時間Tuに対応する単位記憶領域Fuに、特定した信号状態を示す状態情報Dsおよびチャンネル情報を記憶させる。
この場合、図3,4に示すように、この測定装置1では、各交流電圧信号Sにおける半周期Thの終了時点Tpによって画定される各単位画定時間Tuにそれぞれ対応させて記憶部15に設けられる各単位記憶領域Fuに単位画定時間Tu毎の状態情報Dsを記憶させる。つまり、この測定装置1では、単位画定時間Tu毎の信号状態そのものを示す状態情報Dsを単位画定時間Tuの時系列が特定可能な状態で記憶部15に記憶させている。このため、この測定装置1では、半周期Th同士の時間的なずれが反映されないイベント情報を用いるため実際とは異なる信号状態を特定するおそれのある従来の構成とは異なり、状態情報Dsを用いることで、図3,5に示すように、各交流電圧信号Sの実際の信号状態を正確に把握することが可能となっている(両図では、第1の信号状態を「第1」と記載し、第2の信号状態を「第2」と記載する)。このため、この測定装置1では、例えば、ある信号状態(この例では、第1の信号状態)となった頻度が多いときには各交流電圧信号Sの品質が不良であるとの評価を行い、また、その信号状態となった頻度が少なかったり、他の信号状態(この例では、第2の信号状態)が長く続くときには各交流電圧信号Sの品質が良好であるとの評価を行う評価方法を行う際に、各交流電圧信号Sの評価を正しく行うことが可能となっている。
また、処理部16は、上記した状態情報記憶処理と並行して測定処理を実行し、デジタルデータDdを用いて各交流電圧信号Sの物理量(例えば、電圧の実効値)を測定する。また、処理部16は、状態情報記憶処理によって記憶部15に記憶させた状態情報Dsに基づく各交流電圧信号Sの信号状態、および測定した物理量を表示部14に表示させる。
このように、この測定装置1および信号状態特定方法では、入力した複数の交流電圧信号Sの全てにおける半周期Thの終了時点Tpによって画定される単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thにおけるイベントの発生の有無に基づいて特定される各交流電圧信号Sの信号状態を単位画定時間Tu毎に特定し、各単位画定時間Tuにそれぞれ対応して記憶部15に設けられている各単位記憶領域Fuに特定した信号状態を示す状態情報Dsを記憶させる。このため、この測定装置1および信号状態特定方法では、単位画定時間Tu毎の信号状態そのものを示す状態情報Dsを単位画定時間Tuの時系列が特定可能な状態で記憶部15に記憶させることができる結果、半周期Th同士の時間的なずれが反映されないイベント情報を用いることに起因して実際とは異なる信号状態を特定するおそれのある従来の構成とは異なり、各交流電圧信号Sの実際の信号状態を、状態情報Dsを用いて正確に把握することができる。このため、この測定装置1および信号状態特定方法によれば、例えば、ある種類の信号状態となった頻度が多いときには各交流電圧信号Sの品質が不良であるとの評価を行い、また、その信号状態となった頻度が少なかったり、他の種類の信号状態が長く続くときには各交流電圧信号Sの品質が良好であるとの評価を行う評価方法を行う際に、その評価を正しく行うことができる。
また、この測定装置1および信号状態特定方法では、1つの単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thの1つ以上においてディップまたはスウェル(第1の事象)が発生したときを第1の信号状態と特定してその単位画定時間Tuに対応する単位記憶領域Fuに状態情報Ds1を記憶させ、1つの単位画定時間Tuが含まれる各交流信号の半周期Thのいずれにおいてもディップまたはスウェルが発生していないときを第2の信号状態と特定してその単位画定時間Tuに対応する単位記憶領域Fuに状態情報Ds2を記憶させる。このため、この測定装置1および信号状態特定方法によれば、ディップまたはスウェルの発生の有無に基づいて信号状態を特定し、その信号状態となった頻度に基づいて各交流電圧信号Sの品質を評価するような評価方法において、各信号状態となった頻度を正確に把握することができるため、交流電圧信号Sの品質の評価を正しく行うことができる。
また、この測定装置1および信号状態特定方法では、1つの単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thの全てにおいて瞬停(第2事象)が発生したときを第3の信号状態と特定してその単位画定時間Tuに対応する単位記憶領域Fuに状態情報Ds3を記憶させ、1つの単位画定時間Tuが含まれる各交流電圧信号Sの半周期Thの1つ以上において瞬停が発生していないときを第4の信号状態と特定してその単位画定時間Tuに対応する単位記憶領域に状態情報Ds4を記憶させる。このため、この測定装置1および信号状態特定方法によれば、瞬停の発生の有無に基づいて信号状態を特定し、その信号状態となった頻度に基づいて各交流電圧信号Sの品質を評価するような評価方法において、各信号状態となった頻度を正確に把握することができるため、交流電圧信号Sの品質の評価を正しく行うことができる。
なお、測定装置および信号状態特定方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、3つの交流電圧信号Sを入力して状態情報記憶処理を実行する構成および方法について上記したが、交流電流信号などの交流電圧信号S以外の他の交流信号を入力して状態情報記憶処理を実行する構成および方法を採用することもできる。また、交流信号の数も上記の構成および方法において例示した3つに限定されず、周波数が互いに等しくかつ位相が互いに異なる限り、2つまたは4つ以上の任意の複数を採用することができ、これらの各交流信号について上記した状態情報記憶処理を実行することができる。