以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明を鉄骨ラーメンユニット工法により構築された2階建てユニット式建物にて具体化している。図1はユニット式建物の概要を示す斜視図、図2は建物ユニット及び拡張ユニットの骨格を示す斜視図である。
図1に示すように、住宅等の建物10は、下階部分としての一階部分11と、上階部分としての二階部分12と、屋根13とを有している。一階部分11は基礎の上に設けられ、二階部分12は一階部分11の上に設けられ、屋根13は二階部分12の上に設けられている。建物10は、複数の建物ユニット20により形成された建物本体15を有している。建物本体15においては複数の建物ユニット20が一体的に結合されており、それら建物ユニット20により一階部分11及び二階部分12が構成されている。建物ユニット20は略直方体形状に形成されており、壁部等により形成された周面を有している。
建物本体15の外面側には、一階部分11と二階部分12との境界部を跨ぐように拡張ユニット30が設けられている。拡張ユニット30は略直方体形状に形成されており、壁部等により形成された周面を有している。拡張ユニット30は建物本体15の外壁面から屋外側に突出した状態となっている。拡張ユニット30は、一階部分11の複数の建物ユニット20のうち下階建物ユニット20aと結合されているとともに、二階部分12の複数の建物ユニット20のうち上階建物ユニット20bと結合されている。この場合、拡張ユニット30の下部と下階建物ユニット20aの上部とが結合されており、拡張ユニット30の上部と上階建物ユニット20bの下部とが結合されている。
図2に示すように、下階建物ユニット20a及び上階建物ユニット20bは、それぞれの四隅に配置された柱21と、隣り合う柱21の上端部を連結する天井大梁22と、隣り合う柱21の下端部を連結する床大梁23とを有しており、建物ユニット20a,20bにおいては柱21、天井大梁22、床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして設置されている。
建物ユニット20a,20bの長辺部(桁面)に沿って延び且つ相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく建物ユニット20a,20bの長辺部に沿って延び且つ相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25と床小梁26とはそれぞれ同間隔でかつ各々上下に対応する位置に水平に設けられている。
建物ユニット20a,20bにおいては、天井小梁25に対して天井面材が取り付けられ、それら天井小梁25や天井面材により天井部が形成されており、床小梁26に対して床面材が取り付けられ、それら床小梁26や床面材により床部が形成されている。また、柱21に対して壁材が取り付けられ、それら柱21や壁材により壁部が形成されている。なお、建物ユニット20a,20bにおいては、柱21や天井大梁22、床大梁23を含んだ骨格により躯体が構成されている。
上階建物ユニット20bは、その柱21が下階建物ユニット20aの柱21の上に載った状態で下階建物ユニット20aの上に配置されている。この場合、上階建物ユニット20bの柱21の下端部と下階建物ユニット20aの柱21の上端部とがボルト等の連結部材により連結されている。
拡張ユニット30は、建物ユニット20a,20bの柱21と平行に延びる柱41と、柱41の上端部に接続された天井大梁42と、柱41の下端部を連結する床大梁43とを有しており、拡張ユニット30においては、柱41、天井大梁42、床大梁43により直方体状の骨格が形成されている。柱41は四角筒状の角形鋼よりなる。天井大梁42は断面コ字状の溝形鋼よりなり、それぞれの溝の開放部を拡張ユニット30の内側に向けて配置されている。同様に、床大梁43は断面コ字状の溝形鋼よりなり、それぞれの溝の開放部を拡張ユニット30の内側に向けて配置されている。
拡張ユニット30においては、複数の天井大梁42のうち上階建物ユニット20bに向けて延びている天井大梁42が上階建物ユニット20bの柱21に連結されており、複数の床大梁43のうち下階建物ユニット20aに向けて延びている床大梁43が下階建物ユニット20aの柱21に連結されている。これにより、拡張ユニット30が下階建物ユニット20a及び上階建物ユニット20bと結合されている。
かかる構成によれば、拡張ユニット30と建物本体15との境界部においては、拡張ユニット30と建物ユニット20a,20bとが躯体同士で互いに結合されていることになり、拡張ユニット30は建物ユニット20a,20bにより片持ち支持されている。この場合、拡張ユニット30において建物ユニット20a,20bに向けて延びている大梁42,43は、その大梁42,43の端面が建物ユニット20a,20bの柱21の側面と当接した状態で柱21に対して連結部材や溶接等により連結されている。
拡張ユニット30においては、天井大梁42に対して天井面材が取り付けられ、天井大梁42や天井面材を含んで天井部が形成されており、床大梁43に対して床面材が取り付けられ、床大梁43や床面材を含んで床部が形成されている。また、柱41に対して壁材が取り付けられ、それら柱41や壁材により壁部が形成されている。なお、拡張ユニット30においては、柱41や天井大梁42、床大梁43を含んだ骨格により躯体が構成されている。
拡張ユニット30の長手方向の長さ及び柱高さは、建物ユニット20a,20bの長手方向の長さ及び柱高さとそれぞれ同じになっている。また、拡張ユニット30の短手方向の長さは建物ユニット20a,20bの短手方向の長さより短くなっている。
本実施形態では、拡張ユニット30の内部空間と建物ユニット20a,20bの内部空間とは、それら拡張ユニット30と建物ユニット20a,20bとの境界部において連通されている。この場合、拡張ユニット30の内部空間を通じて建物ユニット20a,20bの通気を行うことが可能となっており、建物10においてはその通気状態を制御する通気システムが構築されている。
ここでは、通気システムについて図3を参照しつつ説明する。図3は建物10の構成を示す概略断面図である。なお、図3には、通気システムに関する電気的な構成を示すブロック図が含まれている。
図3に示すように、建物本体15の一階部分11には建物内空間としての下階居室51が設けられており、二階部分12には建物内空間としての上階居室52が設けられている。下階居室51及び上階居室52は、一階部分11及び二階部分12のそれぞれにおいてリビングやキッチン、廊下、浴室などの居住空間を形成している。下階居室51は下階建物ユニット20aの内部空間を含んで構成されており、上階居室52は上階建物ユニット20bの内部空間を含んで構成されている。
建物10には、建物本体15の側面から屋外側に張り出した張出部としての拡張部55が設けられている。拡張部55は建物本体15の側面に対して取り付けられており、その内部空間が拡張空間56となっている。拡張部55は拡張ユニット30により形成されており、拡張空間56は拡張ユニット30の内部空間となっている。拡張部55は一階部分11と二階部分12との境界部を跨ぐように設けられており、拡張部55の下面部は境界部の下方にあり、上面部は境界部の上方にある。なお、拡張部55の下面部は一階部分11の床面と天井面との間にあり、上面部は二階部分12の床面と天井面との間にある。
建物本体15と拡張部55との境界部において、居室51,52と拡張空間56とは仕切壁61,62により仕切られている。仕切壁61,62のうち一階部分11において下階居室51と拡張空間56とを仕切る下階仕切壁61には、それら居室51,52を通気可能に連通する下階通気部64が形成されている。下階通気部64は、拡張部55の下面部と一階部分11の天井部との間で上下に延びている。この場合、下階通気部64の内周側の下面は拡張部55の内周側の下面と同一平面を形成しており、下階通気部64の内周側の上面は一階部分11の天井面と同一平面を形成している。
仕切壁61,62のうち二階部分12において上階居室52と拡張空間56とを仕切る上階仕切壁62には、それら上階居室52と拡張空間56とを通気可能に連通する上階通気部65が形成されている。上階通気部65は、二階部分12の床部と拡張部55の上面部との間で上下に延びている。この場合、上階通気部65の内周側の下面は二階部分12の床面と同一平面を形成しており、上階通気部65の内周側の上面は拡張部55の内周側の上面と同一平面を形成している。
なお、仕切壁61,62は、建物本体15と拡張部55との境界部において、建物ユニット20a,20bの壁部と拡張ユニット30の壁部とを含んで構成されている。それら壁部にはそれぞれ開口部が形成されており、それら開口部により通気部64,65が形成されている。具体的には、下階建物ユニット20aと拡張ユニット30との境界部において、下階建物ユニット20aの上部と拡張ユニット30の下部にはそれぞれ開口部が設けられており、それら開口部により下階通気部64が形成されている。また、上階建物ユニット20bと拡張ユニット30との境界部において、上階建物ユニット20bの下部と拡張ユニット30の上部にはそれぞれ開口部が設けられており、それら開口部により上階通気部65が形成されている。
下階通気部64には、その下階通気部64を開閉する下階開閉装置67が設けられており、上階通気部65には、その上階通気部65を開閉する上階開閉装置68が設けられている。それら開閉装置67,68は、開閉可能な開閉体と開閉体を駆動開閉する駆動部とをそれぞれ有しており、開閉体は仕切壁61,62に対して軸支され、駆動部は電気モータを含んで構成されている。
下階開閉装置67が開状態にある場合、下階通気部64を通じて下階居室51と拡張空間56との間で通気が可能となり、下階開閉装置67が閉状態にある場合、下階通気部64を通じての通気が停止される。上階開閉装置68が開状態にある場合、上階通気部65を通じて上階居室52と拡張空間56との間で通気が可能となり、上階開閉装置68が閉状態にある場合、上階通気部65を通じての通気が停止される。
拡張部55の下面部には開口部としての下側拡張通気部71が設けられており、その下側拡張通気部71により拡張空間56と屋外空間とが連通されている。この場合、下側拡張通気部71は一階部分11と二階部分12との境界部より下方に存在している。拡張部55の上面部には開口部としての上側拡張通気部72が設けられており、その上側拡張通気部72により拡張空間56と屋外空間とが連通されている。この場合、上側拡張通気部72は一階部分11と二階部分12との境界部より上方に存在している。
下側拡張通気部71には、その下側拡張通気部71を開閉する下側拡張開閉装置74が設けられており、上側拡張通気部72には、その上側拡張通気部72を開閉する上側拡張開閉装置75が設けられている。それら開閉装置74,75は、開閉可能な開閉体と開閉体を駆動開閉する駆動部とをそれぞれ有しており、開閉体は拡張部55の周面部に対して軸支され、駆動部は電気モータを含んで構成されている。
下側拡張開閉装置74が開状態にある場合、下側拡張通気部71を通じて屋外空間と拡張空間56との間で通気が可能となり、下側拡張開閉装置74が閉状態にある場合、下側拡張通気部71を通じての通気が停止される。上側拡張開閉装置75が開状態にある場合、上側拡張通気部72を通じて屋外空間と拡張空間56との間で通気が可能となり、上側拡張開閉装置75が閉状態にある場合、上側拡張通気部72を通じての通気が停止される。
次に、通気システムに関する電気的な構成について説明する。
通気システムは制御手段としてのコントローラ81を含んで構成されている。コントローラ81は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを有している。コントローラ81は建物10内において例えば一階部分11の壁面に対して取り付けられている。コントローラ81は、通気システムに関する情報を記憶する記憶部82を有している。
コントローラ81には、一階部分11の下階居室51の温度を検出する下階温度センサ85と、二階部分12の上階居室52の温度を検出する上階温度センサ86と、屋外の温度を検出する外気温度センサ87とが接続されており、それらセンサ85〜87は検出信号をコントローラ81に対して出力する。下階温度センサ85は一階部分11の下階居室51に設けられており、上階温度センサ86は二階部分12の上階居室52に設けられている。外気温度センサ87は建物10の外壁における屋外面に対して取り付けられている。
コントローラ81には、人により入力操作が行われる操作装置88と、ファンを有する送風装置89とが接続されている。操作装置88は、建物10内において人が操作可能な位置に設けられている。操作装置88は入力操作が可能となっており、入力操作により入力された入力情報は記憶部82に記憶される。入力情報には、例えば住人にとって快適な温度や湿度といった環境情報が含まれている。送風装置89は例えば拡張部55内に設けられており、拡張空間56の内側から外側へ空気を送り出す方向にファンを回転させる運転状態と、拡張空間56の外側から内側へ空気を取り込む方向にファンを回転させる運転状態とに切り替えられるようになっている。コントローラ81は指令信号を出力することにより送風装置89の動作制御を行う。
また、コントローラ81には、下階開閉装置67、上階開閉装置68、下側拡張開閉装置74、上側拡張開閉装置75が接続されており、コントローラ81は指令信号を出力することによりこれら開閉装置67,68,74,75の動作制御を行う。具体的には、コントローラ81は、通気制御に関して複数の通気モードを設定し、その通気モードに合わせて開閉装置67,68,74,75を開閉させる。通気モードには、開閉装置67,68,74,75の全てを開状態とする全開モードと、下階居室51及び上階居室52との間で通気を行わせる階間通気モードと、上階居室52及び屋外の間で通気を行わせる上階通気モードと、下階居室51及び屋外の間で通気を行わせる下階通気モードとが含まれている。
ここでは、通気モードごとの建物10内の空気の流れについて図4を参照しつつ説明する。図4は建物10内の空気の流れについて説明するための図である。
コントローラ81が全開モードにある場合、図4(a)に示すように、開閉装置67,68,74,75により下階通気部64、上階通気部65、下側拡張通気部71及び上側拡張通気部72がそれぞれ開状態とされている。この場合、下階居室51及び上階居室52の両方と屋外空間との通気が拡張空間56を通じて行われる。
コントローラ81が階間通気モードにある場合、図4(b)に示すように、下階開閉装置67及び上階開閉装置68により下階通気部64及び上階通気部65が開状態とされており、下側拡張開閉装置74及び上側拡張開閉装置75により下側拡張通気部71及び上側拡張通気部72が閉状態とされている。この場合、下階居室51と上階居室52との間での通気が拡張空間56を通じて行われるが、これら居室51,52と屋外空間との間での通気は行われない。例えば、下階居室51において周囲に比べて相対的に温度の高い高温空気が拡張空間56を通じて上階居室52に流れ込むと、その高温空気により上階居室52が暖められる。また、上階居室52において周囲に比べて相対的に温度の低い低温空気が拡張空間56を通じて下階居室51に流れ込むと、その低温空気により下階居室51が冷やされる。
なお、高温空気は居室51,52において天井面付近に溜まりやすくなっており、天井面付近より下方に存在する空気より温度が高くなっている。これに対して、低温空気は居室51,52において床面付近に溜まりやすくなっており、床面付近より上方に存在する空気より温度が低くなっている。
コントローラ81が上階通気モードにある場合、図4(c)に示すように、上階開閉装置68及び下側拡張開閉装置74により上階通気部65及び下側拡張通気部71が開状態とされており、下階開閉装置67及び上側拡張開閉装置75により下階通気部64及び上側拡張通気部72が閉状態とされている。この場合、上階居室52と屋外空間との間での通気は拡張空間56を通じて行われるが、拡張空間56を通じての下階居室51の通気は行われない。
特に、上階通気部65は上階居室52の床面付近に設けられ、且つ下側拡張通気部71は上下階の境界部より下方であって拡張部55の下面部に設けられている。したがって、上階居室52において低温空気が床面付近に溜まっていれば、その低温空気は上階通気部65から拡張空間56に向けて流れ落ち、さらに拡張空間56においてそのまま流れ落ちることで拡張部55の下側拡張通気部71から下方に向けて屋外へ排出される。これにより、上階居室52に低温空気がこもることが抑制される。その一方で、拡張空間56内の空気より温度の低い外気は、下側拡張通気部71が開状態とされていてもその下側拡張通気部71から拡張空間56には流れ込みにくく(上昇しにくく)なっている。これにより、上階居室52に低温の外気が流れ込むことが抑制される。以上の結果、上階居室52の温度低下が抑制されている。
コントローラ81が下階通気モードにある場合、図4(d)に示すように、下階開閉装置67及び上側拡張開閉装置75により下階通気部64及び上側拡張通気部72が開状態とされており、上階開閉装置68及び下側拡張開閉装置74により上階通気部65及び下側拡張通気部71が閉状態とされている。この場合、下階居室51と屋外空間との間での通気は拡張空間56を通じて行われるが、拡張空間56を通じての上階居室52の通気は行われない。
特に、下階通気部64は下階居室51の天井面付近に設けられ、且つ上側拡張通気部72は上下階の境界部より上方であって拡張部55の上面部に設けられている。したがって、下階居室51において高温空気が天井面付近に溜まっていれば、その高温空気は下階通気部64から拡張空間56に向けて流れ込みつつ上昇し、さらに拡張空間56においてそのまま上昇することで拡張部55の上側拡張通気部72から上方に向けて屋外へ排出される。これにより、下階居室51に高温空気がこもることが抑制される。その一方で、拡張空間56内の空気より温度の高い外気は、上側拡張通気部72が開状態とされていてもその上側拡張通気部72から拡張空間56に流れ込みにくく(流下しにくく)なっている。これにより、下階居室51に高温の外気が流れ込むことが抑制される。以上の結果、下階居室51の温度上昇が抑制されている。
次に、通気システムにおいてコントローラ81により行われる通気制御処理の処理手順について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、通気制御処理は所定周期で繰り返し実行される。
図5において、ステップS11では、全開モードに設定するか否かを判定する。ここでは、下階温度センサ85、上階温度センサ86及び外気温度センサ87の各検出信号に基づいて、下階居室51、上階居室52及び屋外の各温度をそれぞれ算出するとともに、下階居室51と屋外との温度差及び上階居室52と屋外との温度差を算出し、それら温度差がいずれも所定値(例えば3℃)より小さい場合に、全開モードに設定するとして、ステップS12に進む。なお、現在時刻が1日のうちの所定時刻であるか否かを判定し、現在時刻が所定時刻である場合に下階居室51及び上階居室52の両方の換気を同時に行う構成としてもよい。
ステップS12では、全開モードに設定するとともに、全開処理を実行する。全開処理では、下階開閉装置67、上階開閉装置68、下側拡張開閉装置74、上側拡張開閉装置75の動作制御を行い、下階通気部64、上階通気部65、下側拡張通気部71、上側拡張通気部72をそれぞれ開状態とする。つまり、拡張部55の拡張空間56に通じる全ての通気部64,65,71,72を開状態とする(図4(a)参照)。また、送風装置89に送風動作を行わせ、拡張空間56から屋外に向けての送風や、拡張空間56から居室51,52に向けての送風を行う。これにより、拡張空間56を通じての下階居室51及び上階居室52の外気による換気が積極的に行われる。
全開モードに設定しない場合、ステップS13に進み、階間通気モードに設定するか否かを判定する。ここでは、下階居室51と上階居室52との温度差を算出し、上階居室52の温度が下階居室51の温度より低く且つその温度差が所定値(例えば5℃)より大きいか否かを判定する。そして、上階居室52が下階居室51より温度が低く且つその温度差が所定値より大きい場合に、階間通気モードに設定するとして、ステップS14に進む。
ステップS14では、階間通気モードに設定するとともに、階間通気処理を実行する。階間通気処理では、下階通気部64及び上階通気部65を開状態とし、下側拡張通気部71及び上側拡張通気部72を閉状態とする(図4(b)参照)。また、送風装置89に送風動作を行わせ、下階居室51から上階居室52に向けての送風や、上階居室52から下階居室51に向けての送風を行う。これにより、拡張空間56を通じての下階居室51と上階居室52との間での換気が積極的に行われる。
階間通気モードに設定しない場合、ステップS15に進み、上階通気モードに設定するか否かを判定する。ここでは、上階居室52の温度が所定温度(例えば18℃)より低いか否かを判定し、低い場合に上階通気モードに設定するとして、ステップS16に進む。
ステップS16では、上階通気モードに設定するとともに、上階通気処理を実行する。上階通気処理では、上階通気部65及び下側拡張通気部71を開状態とし、下階通気部64及び上側拡張通気部72を閉状態とする(図4(c)参照)。また、送風装置89に送風動作を行わせ、拡張空間56から下側拡張通気部71を通じて屋外に向けての送風を行う。これにより、上階居室52の床面周辺の空気(低温空気)が拡張空間56を通じて屋外に積極的に排出される。
上階通気モードに設定しない場合、ステップS17に進み、下階通気モードに設定するか否かを判定する。ここでは、下階居室51の温度が所定温度(例えば28℃)より高いか否かを判定し、高い場合に下階通気モードに設定するとして、ステップS18に進む。
ステップS18では、下階通気モードに設定するとともに、下階通気処理を実行する。下階通気処理では、下階通気部64及び上側拡張通気部72を開状態とし、上階通気部65及び下側拡張通気部71を閉状態とする(図4(d)参照)。また、送風装置89に送風動作を行わせ、拡張空間56から上側拡張通気部72を通じて屋外に向けての送風を行う。これにより、下階居室51の天井面周辺の空気(高温空気)が拡張空間56を通じて屋外に積極的に排出される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
拡張ユニット30が建物本体15の外面側に設けられ、その拡張ユニット30により一階部分11の下階居室51と二階部分12の上階居室52とが通気可能に連通されている。この場合、下階居室51の天井部や上階居室52の床部に通気口が形成されてその通気口を通じてそれら下階居室51と上階居室52との間で通気が行われる構成とは異なり、下階居室51や上階居室52を利用する際に天井部や床部の通気口によってそれら居室51,52の利用に際しての制限が生じるという不都合を回避できる。また、建物本体15の内部や壁体の内部により下階居室51と上階居室52とが連通されている構成に比べて、それら下階居室51と上階居室52との間で通気される通気量を大きくすることができる。以上の結果、下階居室51や上階居室52の利用に際して制限を生じさせることなく、一階部分11及び二階部分12にて居室51,52同士の通気を好適に行わせることができる。
一階部分11の下階居室51において下階通気部64は天井面付近に設けられており、二階部分12の上階居室52において上階通気部65は床面付近に設けられている。このため、下階居室51では天井面付近に溜まった高温空気が拡張空間56に流れ込みやすくなっており、上階居室52では床面付近に溜まった低温空気が拡張空間56に流れ込みやすくなっている。したがって、下階居室51と上階居室52とが拡張空間56により連通されている構成において、下階居室51と上階居室52との間で低温空気や高温空気の授受を好適に行わせることができる。
拡張部55において、下階通気部64の内周側の下面は拡張部55の内周側の下面と同一平面を形成しているため、低温空気を拡張空間56の下部に溜めることなく下階通気部64から下階居室51に流れ込ませることができる。これにより、上階居室52から下階居室51に低温空気を供給する際にその供給効率が低下することを抑制できる。また、拡張部55の下面部に下側拡張通気部71が設けられているため、低温空気を拡張空間56の下部に溜めることなく下側拡張通気部71から屋外に排出することができる。したがって、上階居室52から屋外に低温空気を排出する際にその排出効率が低下することを抑制できる。
拡張部55において、上階通気部65の内周側の上面は拡張部55の内周側の上面と同一平面を形成しているため、高温空気を拡張空間56の上部に溜めることなく上階通気部65から上階居室52に流れ込ませることができる。これにより、上階居室52から下階居室51に高温空気を供給する際にその供給効率が低下することを抑制できる。また、拡張部55の上面部に上側拡張通気部72が設けられているため、高温空気を拡張空間56の上部に溜めることなく上側拡張通気部72から屋外に排出することができる。したがって、下階居室51から屋外に高温空気を排出する際にその排出効率が低下することを抑制できる。
拡張部55において下側拡張通気部71は上下階の境界部より下方に設けられている。この場合、下側拡張通気部71は上階居室52の上階通気部65より下方に存在しているため、上階居室52から拡張空間56に流れ込んだ低温空気はそのまま流下して下側拡張通気部71から屋外に排出される。その一方で、上階居室52より低い温度の外気は下側拡張通気部71からは拡張空間56に流れ込みにくくなっている。しかも、下側拡張通気部71は拡張部55の下面部に設けられているため、低い温度の外気は下側拡張通気部71において上昇しにくくなっており、拡張空間56へはより一層流れ込みにくくなっている。以上の結果、上階居室52から屋外への低温空気の排出を促進しつつ、屋外から上階居室52に低い温度の外気が流れ込むことを抑制できる。つまり、上階居室52の温度低下を抑制できる。
拡張部55において上側拡張通気部72は上下階の境界部より上方に設けられている。この場合、上側拡張通気部72は下階居室51の下階通気部64より下方に存在しているため、下階居室51から拡張空間56に流れ込んだ高温空気はそのまま上昇して上側拡張通気部72から屋外に排出される。その一方で、下階居室51より高い温度の外気は上側拡張通気部72からは拡張空間56に流れ込みにくくなっている。しかも、上側拡張通気部72は拡張部55の上面部に設けられているため、高い温度の外気は上側拡張通気部72において流下しにくくなっており、拡張空間56へはより一層流れ込みにくくなっている。以上の結果、下階居室51から屋外への高温空気の排出を促進しつつ、屋外から下階居室51に高温の外気が流れ込むことを抑制できる。つまり、下階居室51の温度上昇を抑制できる。
なお、拡張通気部71,72は拡張部55の上面部や下面部に設けられているため、その拡張通気部71,72が拡張部55の側面部に設けられている構成とは異なり、拡張部55の側面近傍に隣の敷地の建物が存在している場合でも、その建物に拡張通気部71,72が塞がれた状態となることがない。したがって、他の建物に関係なく、拡張通気部71,72を通じて拡張空間56の通気を好適に行わせることができる。
コントローラ81により全開処理や階間通気処理、上階通気処理、下階通気処理が行われる場合、それら処理に合わせて送風装置89の送風動作が行われる。この場合、下階居室51及び上階居室52の外気による換気効率や、下階居室51と上階居室52との間での換気効率、上階居室52からの低温空気の排出効率、下階居室51からの高温空気の排出効率を高めることができる。
拡張ユニット30と建物ユニット20a,20bとが躯体同士で連結されることで、拡張ユニットが建物ユニット20a,20bにより片持ち支持されている。このため、拡張ユニット30の構造上の支持強度を確保しつつ、拡張ユニット30を一階部分11と二階部分12との境界部を跨ぐように配置することができる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
(1)拡張ユニット30の拡張空間56は、人の出入りが可能な居住空間とされてもよい。例えば、図6に示すように、建物10において、二階部分12の上階居室52の床面より低い位置に床面を有するスキップフロア91が設けられており、そのスキップフロア91が拡張部55(拡張ユニット30)の内部に形成されている構成とする。この構成では、上階居室52においてスキップフロア91との境界部付近にテーブル92が設けられており、上階居室52においては椅子に座った人がテーブル92を使用し、スキップフロア91においては立った人がテーブル92を使用するようになっている。
ここでは、スキップフロア91と上階居室52とによりキッチンが構成されている。この場合、スキップフロア91が調理スペースとなっており、上階居室52が食事スペースとなっている。これにより、スキップフロア91にて調理している人は上階居室52にて椅子に座っている人に目線の高さを合わせやすくなっている。ここでは、スキップフロア91の床部が土間の役割を果たしていることになる。
拡張部55の外壁部と建物本体15の外壁部とにはそれぞれ窓部93,94が設けられている。窓部93,94にはガラス板が設けられており、その窓部93,94を通じて太陽光が上階居室52やスキップフロア91に差し込むようになっている。なお、窓部94は、建物本体15の外壁部において拡張部55の上部に配置されている。この場合、窓部94は、上階居室52の天井部とスキップフロア91の天井部との間のスペースに配置されていることになる。
拡張部55の下方にはダストシュータ95が設けられている。ダストシュータ95はスキップフロア91の内部空間とそのスキップフロア91の下方の屋外空間とに通じるように上下方向に延びており、スキップフロア91から投入されたゴミをスキップフロア91の下方の屋外空間に放出する。
なお、拡張ユニット30により居住空間が構成される場合、拡張ユニット30の天井部に、水平方向に延び且つ互いに対向する一対の天井大梁42を連結する天井小梁が設けられているとともに、拡張ユニット30の床部に、水平方向に延び且つ互いに対向する一対の床大梁43を連結する床小梁が設けられていることが好ましい。この場合、天井小梁は、拡張ユニット30の短辺部(妻面)の天井大梁42と平行に延び、長辺部(桁面)の相対する天井大梁42の間に所定間隔で複数配置されており、天井大梁42の間に架け渡された状態となっている。同様に、床小梁は、拡張ユニット30の短辺部の床大梁43と平行に延び、長辺部の相対する床大梁43の間に所定間隔で複数配置されており、床大梁43の間に架け渡された状態となっている。
(2)屋外空間において拡張部55の下方に車両用の充電装置が設けられていてもよい。例えば、拡張部55の下方スペースの少なくとも一部が駐車スペースに含まれており、その駐車スペースに駐車された車両に対して電力を供給する給電装置が拡張部55の下方に設けられている構成とする。この構成によれば、拡張部55の下方スペースを有効に利用することができる。
また、屋外空間において拡張部55の上方にバルコニー等の付属空間が設けられていてもよい。この場合、拡張部55の上面部が付属空間の床部を形成していることが好ましい。これにより、拡張部55の上方スペースを有効に利用することができる。
(3)図7に示すように、下階建物ユニット20aと上階建物ユニット20bとの境界部を跨ぐように設けられている拡張ユニット100が、四隅に配置された柱101を有していてもよい。この構成では、拡張ユニット100は、4本の柱101に加えて、隣り合う柱101の上端部及び下端部を連結する各4本の天井大梁102及び床大梁103と、長辺側の相対する天井大梁102同士及び床大梁103同士を連結する天井小梁104及び床小梁105とを有している。この場合、建物ユニット20a,20b側に配置された柱101と建物ユニット20a,20bの柱21とがそれぞれの側面を当接させた状態で配置されており、それら柱101と柱21とが固定具や溶接等により結合されることにより拡張ユニット100と建物ユニット20a,20bとが連結されている。
なお、拡張ユニット100において天井小梁104や床小梁105は設けられていなくてもよい。また、拡張ユニット100において建物ユニット20a,20bとの境界部側の天井大梁102や床大梁103は設けられていなくてもよい。
(4)拡張ユニット30は、拡張ユニット30は水平方向に並ぶ複数の建物ユニット20に跨るように配置されていてもよい。例えば、一階部分11において複数の建物ユニット20と結合されており、二階部分12において複数の建物ユニット20と結合されている構成とする。
また、拡張ユニット30は、建物ユニット20a,20bに向けて延びる天井大梁42及び床大梁43が建物ユニット20a,20bにおいて隣り合う柱21の中間位置に存在するように設けられていてもよい。この場合、建物ユニット20a,20bには拡張ユニット30側の柱21間に補助柱が設けられており、補助柱は、拡張ユニット30において建物ユニット20a,20bに向けて延びる天井大梁42及び床大梁43の端部と連結されている。
(5)拡張空間56と居室51,52とを連通する通気部64,65は、拡張ユニット30と建物ユニット20a,20bとが対向する部分において設置高さは任意に設定されてもよい。例えば、下階通気部64が、下階居室51の天井面から下方に離間し且つ拡張部55の下面部から上方に離間した位置に設けられている構成とする。
(6)拡張空間56と屋外空間とを連通する拡張通気部71,72は、拡張部55の側面部に配置されていてもよい。例えば、下側拡張通気部71が拡張部55の側面部において上下階の境界部より下方に配置され、上側拡張通気部72が拡張部55の側面部において上下階の境界部より上方に配置されていることが好ましい。また、拡張通気部71,72は拡張部55に設けられていなくてもよい。つまり、拡張部55は屋外空間に通じていなくてもよい。
(7)拡張ユニット30において拡張空間56の通気が行われる通気位置の高さが切り替えられる構成としてもよい。例えば、コントローラ81が、拡張ユニット30について下側拡張通気部71と上側拡張通気部72とを選択的に開状態に切り替える構成とする。この構成においてコントローラ81は、下階居室51の下階通気部64を開状態とした場合に、下階居室51の温度が所定温度(例えば28℃)より低いか否かを判定し、低いと判定すれば拡張通気部71,72のうち下側拡張通気部71を開状態とする。この場合、下階居室51の天井面付近に高温空気が溜まっていても、その高温空気が屋外に排出されにくい状態で下階居室51と屋外との通気を行うことができる。
また、コントローラ81は、上階居室52の上階通気部65を開状態とした場合に、上階居室52の温度が所定温度(例えば18℃)より高いか否かを判定し、高いと判定すれば拡張通気部71,72のうち上側拡張通気部72を開状態とする。この場合、上階居室52の床面近傍に低温空気が溜まっていても、その低温空気が屋外に排出されにくい状態で上階居室52と屋外との通気を行うことができる。
(8)建物本体15の内部空間と拡張部55の拡張空間56とが仕切材により仕切られていてもよい。例えば、拡張ユニット30の屋外側の側面にガラス板が設けられ、仕切材がガラス材により形成されている構成とする。この構成においては、拡張ユニット30を利用していわゆるダブルスキン構造が構築されている。これにより、建物本体15の屋外側である拡張ユニット30において給気や採光の調整を行うことが可能となる。
(9)建物本体15において拡張空間56を通じての温度差換気が行われる構成としてもよい。例えば、一階部分11において拡張部55とは下階居室51を挟んで反対側に下階通気口が設けられているとともに、建物10の屋根13に屋根通気口が設けられている構成とする。この構成によれば、下階居室51の高温空気が拡張空間56を通じて上階居室52に流れ込んだ場合、それに伴って外気が下階通気口から下階居室51に流れ込むとともに、上階居室52の高温空気が屋根通気口を通じて屋外に流れ出る。このようにして、拡張空間56を通じて居室51,52の温度差換気が行われる。同様に、上階居室52の低温空気が拡張空間56を通じて下階居室51に流れ込んだ場合も、拡張空間56を通じて居室51,52の温度差換気が行われる。