JP5570114B2 - 近赤外線吸収剤およびその分散液 - Google Patents

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本発明は、近赤外線の吸収効果に優れ、液中での分散性が良く、薄膜のヘーズが低い近赤外線吸収剤とその分散液に関する。
近赤外線の吸収効果に優れた材料として、インジウム錫酸化物(ITO)、およびアンチモン錫酸化物(ATO)が知られており、さらに、その改良がなされている。例えば、特開平6−247716号公報(特許文献1)には、ITO粉末を有機溶媒に含浸させ、不活性ガス定雰囲気下で熱処理することによって、インジウムと錫の合計量に対して、1〜15モル%の錫を含有するインジウム錫酸化物(ITO)からなる粉末が記載されている。
この粉末はITOの一部が還元されてキャリア濃度が向上することによって抵抗が低下し、導電性を有すると共に、一定範囲量の錫を含有することによって青味を帯びた色調を有するようになる。また、このITO粉末は高いキャリア密度に起因する近赤外線カット特性を有しているため、樹脂もしくは溶媒中に均一に分散することによって、可視光線に対して非常に高透明かつ近赤外線を効果的にカットすることが可能である。従って、このITO粉末を用いることによって、優れた近赤外線カット特性と高い可視光線透過率、低ヘーズを兼ね備えた中間膜および合わせガラスを得ることが可能である(特開2005−187226号公報:特許文献2)。
しかし、より高い近赤外線カット特性を得るためには、膜中のITO微粒子含有量を増加させる必要があり、ITO微粒子含有量が増加すると、粒子による可視光線の散乱も増加するため膜ヘーズも高くなりやすいという問題があった。
特開平6−247716号公報 特開2005−187226号公報
本発明は、近赤外線吸収剤として用いられているITO粉末やATO粉末等について、従来の上記問題を解決したものであり、近赤外線の吸収効果に優れ、液中での分散性が良く、薄膜でのヘーズが低い近赤外線吸収剤とその分散液を提供する。
本発明は上記課題を解決する手段として以下の構成を有する近赤外線吸収剤に関する。
〔1〕インジウム錫酸化物(ITO)粉末またはアンチモン錫酸化物(ATO)粉末の表面が、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、およびトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択された少なくとも1種によって表面処理されてなる近赤外線吸収剤であって、上記選択された少なくとも1種からなる溶媒または上記選択された少なくとも1種を主成分とする溶媒に分散して使用されることを特徴とする近赤外線吸収剤。
さらに本発明は、上記課題を解決する手段として以下の構成を有する近赤外線吸収剤分散液に関する。
〔2〕インジウム錫酸化物(ITO)粉末またはアンチモン錫酸化物(ATO)粉末の表面が、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、およびトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択された少なくとも1種によって表面処理されてなる近赤外線吸収剤が、上記選択された少なくとも1種からなる溶媒または上記選択された少なくとも1種を主成分とする溶媒に分散されていることを特徴とする近赤外線吸収剤分散液。
本発明の近赤外線吸収剤およびその分散液は、近赤外線吸収剤の表面が分散溶媒の主成分と同成分の表面処理剤によって修飾されているので、近赤外線吸収剤と分散溶媒の親和性がよく、アルコールによって表面処理したものよりも近赤外線吸収剤の分散性が良い。このため、従来よりも近赤外線吸収剤の分散性に優れた分散液を形成することが可能であり、近赤外線吸収特性に優れ、かつ分散液のヘーズが低い薄膜を形成することができる。また、分散時間の短縮も図れる。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の近赤外線吸収剤は、インジウム錫酸化物(ITO)粉末またはアンチモン錫酸化物(ATO)粉末の表面が、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、およびトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択された少なくとも1種によって表面処理されてなる近赤外線吸収剤であって、上記選択された少なくとも1種からなる溶媒または上記選択された少なくとも1種を主成分とする溶媒に分散して使用されることを特徴とする近赤外線吸収剤である。
近赤外線吸収剤としては、インジウム錫酸化物(ITO)、またはアンチモン錫酸化物(ATO)を用いることができる。
表面処理剤としては、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、およびトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択された少なくとも1種、または上記群より選択された少なくとも1種を主成分としアルコールを含む混合溶液を用いることができる。
表面処理剤は、分散溶媒と同成分、または分散溶媒の主成分と同成分のものを用いる。分散溶媒の主成分と同成分の表面処理剤とは、例えば、分散溶媒が上記群より選択された少なくとも1種、または上記群より選択された少なくとも1種を主成分としアルコールおよび水を含む混合溶媒である場合、上記選択された少なくとも1種を表面処理剤として用い、または、上記選択された少なくとも1種を主成分としアルコールまたは水含む混合溶液を表面処理剤として用いる。
分散溶媒は、具体的には、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、およびトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
表面処理剤として上記群より選択された少なくとも1種を用いた場合、分散溶媒としては、上記選択された少なくとも1種を主成分とし、アルコールを含む混合溶媒、または上記選択された少なくとも1種を主成分としアルコールを含み、さらに水やオクチル酸を加えた混合溶媒などが用いることができる。なお、水やオクチル酸は表面処理時に酸化剤として作用するので、単独で使用するとキャリア密度が減少するが、上記選択された少なくとも1種と併用することによって近赤外線吸収剤と分散溶媒の親和性を高めることができる。
ITO粉末、ATO粉末などの近赤外線吸収剤の表面に、分散溶媒と同成分の表面処理剤または分散溶媒の主成分と同成分の表面処理剤を吸着させることにより、近赤外線吸収剤と分散溶媒との親和性が向上し、該溶媒中での近赤外線吸収剤の分散性に優れており、アルコールによって表面処理したものよりも近赤外線吸収剤の分散性が良い。このため、分散時間を短縮することができ、さらに、従来よりも近赤外線吸収剤の分散性に優れた分散液を形成することが可能であり、近赤外線吸収特性に優れ、かつ分散液のヘーズが低い薄膜を形成することができる。
本発明に係る近赤外線吸収剤の分散液は、インジウム錫酸化物(ITO)粉末またはアンチモン錫酸化物(ATO)粉末の表面が、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、およびトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択された少なくとも1種によって表面処理されてなる近赤外線吸収剤が、上記選択された少なくとも1種からなる溶媒または上記選択された少なくとも1種を主成分とする溶媒に分散されていることを特徴とする近赤外線吸収剤分散液である。
近赤外線吸収剤の表面に付着している表面処理剤の量は、近赤外線吸収剤の質量に対して0.001〜5.0%が好ましい。表面処理剤の量が上記範囲より少ないと近赤外線吸収剤の分散性を十分に高めることが難しくなる。一方、上記範囲よりも多く表面処理剤を使用しても近赤外線吸収剤の分散性は上記範囲量の場合と同程度である。
表面処理の方法は、ITO粉末、ATO粉末などの近赤外線吸収剤を表面処理剤の溶液に浸して近赤外線吸収剤の粉末表面に表面処理剤を含浸させ、これを引上げた後に窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で、50〜500℃で、1分〜24時間、加熱処理すると良い。上記加熱処理によって表面処理剤は還元され分解される。



以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。
〔ITO粉末の合成〕
InCl3水溶液(In金属 350g含有)900mLと、55%SnCl4水溶液144gとを混合し、この混合水溶液を、NH4HCO31900gを含有するアルカリ水溶液6Lに加えて60℃の液温で30分間反応させ、反応後、イオン交換水によって繰り返し傾斜洗浄を行った。上澄み液の電気伝導度が5000Ω・cm以上になったところで沈殿(In/Sn共沈水酸化物)を濾別し、110℃で一晩乾燥した後、大気中、550℃で3時間焼成し、粉砕して凝集体をほぐし、ITO粉末440gを得た。
〔表面処理〕
上記ITO粉末40gを、表面処理剤として用いた表1に示す溶媒に浸して、ITO粉末に下記溶媒を含浸させた後、ガラスシャーレに入れ、窒素ガス雰囲気下、330℃にて2時間加熱処理した。
〔分散液の調製〕
表面処理されたITO粉末10gを分散混合溶媒に加え、この混合溶媒をジルコニアビーズによって60分間攪拌して分散液を調製した。分散混合溶媒は表1に示す表面処理剤30gにリン酸エステル系分散剤1gおよびエタノール3gを加えたものを用いた。

〔分散液の評価〕
上記分散液を、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートで0.7質量%まで希釈した。この希釈液を光路長1mmのガラスセルに入れ、分光透過率を日立自記分光光度計(U−4000)を用い、規格(JIS R 3216−1998)に従って測定した。さらに、ヘーズをスガ試験機製ヘーズコンピュータ(HZ-2)を用い、規格(JIS K 7136)に従って測定した。測定結果を表1に示す。
〔実施例1〜3〕
実施例1:表面処理剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを用いた。
実施例2:表面処理剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートに無水エタノールおよび水を含む混合溶液を用いた。
実施例3:表面処理剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートにオクチル酸、無水エタノール、および水を含む混合溶液を用いた。
〔比較例1〜5〕
比較例1:表面処理剤として無水エタノールを用いた。
比較例2:表面処理剤として無水エタノールに水を加えた混合溶液を用いた。
比較例3:表面処理剤としてオクチル酸を用いた。
比較例4:表面処理剤として水を用いた。
比較例5:表面処理剤を含浸させずに窒素ガス雰囲気下、330℃にて2時間加熱処理した。
表1に示すように、本発明の近赤外線吸収剤を用いた分散液(実施例1〜3)は、何れも分散時間が短く、日射透過率が60%以下であり、近赤外線吸収効果が良い。さらに、ヘーズは0.5%以下であり、可視光線の散乱が少なく可視光線透過率が高い。
一方、比較例1〜5は、何れもヘーズ0.6%以上である。また比較例1〜2は日射透過率が低く、近赤外線吸収効果は良いが、可視光線透過率が低い。比較例3〜5はヘーズが0.7以上であり、また日射透過率が高く、近赤外線吸収効果が低い。
Figure 0005570114

Claims (2)

  1. インジウム錫酸化物(ITO)粉末またはアンチモン錫酸化物(ATO)粉末の表面が、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、およびトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択された少なくとも1種によって表面処理されてなる近赤外線吸収剤であって、上記選択された少なくとも1種からなる溶媒または上記選択された少なくとも1種を主成分とする溶媒に分散して使用されることを特徴とする近赤外線吸収剤。
  2. インジウム錫酸化物(ITO)粉末またはアンチモン錫酸化物(ATO)粉末の表面が、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、およびトリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエートからなる群より選択された少なくとも1種によって表面処理されてなる近赤外線吸収剤が、上記選択された少なくとも1種からなる溶媒または上記選択された少なくとも1種を主成分とする溶媒に分散されていることを特徴とする近赤外線吸収剤分散液。
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