JP5569278B2 - 光学フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、透明樹脂フィルムの片面に特定の官能基を有するビニル系共重合樹脂からなる易接着処理層を有する光学フィルムであって、該易接着層が水系接着剤で偏光子と良好な密着性を有する偏光子用保護フィルムに関する。
偏光板は、液晶表示装置において、光源より出射される光から直線偏光を取り出して液晶セルに入射させ、また液晶セルから出射される直線偏光を検出するための部品として用いられている。
偏光板は通常、二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子の片面または両面に、偏光子保護フィルムが積層された構造を有する。偏光板において、偏光子保護フィルムは接着剤を介して偏光子フィルムに貼り合わされている。
貼り合わせには、水溶性のPVA系接着剤が一般的に用いられている。偏光板においては、偏光子保護フィルムと偏光子との接着強度が充分に高いことが必要である。従って、偏光子保護フィルムには、接着剤との濡れ性が良好であることや接着剤との接着強度が高いことが要求される。
例えば、偏光板を製造する際、セルロースエステルフィルムが予め接着面をアルカリ液に浸漬してケン化処理をしてから用いられるのは、そのまま使用すると接着剤との濡れ性が充分でなく、貼り合わせ後の接着強度が充分に得られないためである。
しかしながら、アルカリケン化処理は、強いアルカリ性溶液中にフィルムを浸漬するため、フィルム中の添加剤が溶出し生産性が低下すること、またアルカリケン化処理によりフィルム表面が溶けだし荒れることで、フィルムの外観を損なうなどの問題が生じた。
近年、光学フィルムの需要の高まりにより、生産性に優れ、またさらなる高品位の光学フィルムが要求されるようになってきており、上記課題の改善が望まれていた。
特許文献1、2には、特定のモノマー成分を有する易接着層が記載されているが、光学フィルムの元巻き状態での長期保存性に課題があった。
そこで、特許文献3にはセルロースエステルフィルムの表面をプラズマ処理することでケン化することなく、接着剤の濡れ性、貼り合わせ後の接着強度を向上させる方法が開示されている。
しかしながら、上記の方法を用いて作製された偏光板は、偏光子保護フィルムと偏光子との十分な密着性が得られず、また、接着性を向上させるため、より強い条件により処理を行うと基材内部での分解が促進されてしまうため、実用化にはまだ課題があった。
一方で、特許文献4では、接着剤として活性エネルギー線硬化型接着剤を使用することで表面を処理せずに偏光子と密着させる方法が提案されている。
しかしながら、上記の方法では、一般的で安価な水溶性のPVA系接着剤を使用することはできず、また、フィルムの表面を処理することなく偏光子との密着させることはできるものの、耐水性が十分ではなく、高温高湿環境下等において剥がれが生じる問題があった。
さらに硬化型の接着剤は、製膜されたフィルムを巻芯に巻いたフィルム原反の状態で長期保存した場合に、特に巻芯では強い圧力がかかり、架橋剤が白化することや、添加剤がブリードアウトするといった問題があった。
そこで、特許文献5では、フィルム支持体の最表面に親水性の易接着層を形成することで、水系の接着剤にて偏光子と密着させ、また高温高湿環境下等においても剥がれが生じにくい方法が提案されている。
しかしながら、上記のように親水性が高い層を最表面に有するフィルムの場合、フィルム同士の摩擦が大きいため、製膜されたフィルムを巻芯に巻いた場合に、馬の背故障や、巻き芯転写といったフィルムにシワが発生するという問題が常につきまとう。
このため、特許文献6では、特許文献5のような親水性の易接着層に粒子を添加することで、上記課題を解決する方法が提案されているが、特に近年、液晶表示装置の大型画面化に伴って、フィルム原反の幅は広く、巻長は長くすることが要望されており、フィルムにかかる荷重は増加する傾向にあり、これらの故障の発生を抑制するには十分ではなく根本的な改善が望まれていた。
特開平9−197128号公報 特開平9−222501号公報 特開2009−237247号公報 特開2009−175210号公報 特開2009−205135号公報 特開2010−55062号公報
本発明は、上記の課題に鑑み、易接着層を有しながらもロール形状を適正に維持することのできる光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.透明樹脂フィルムの片面に、下記一般式(1)で表されるポリマーを含有する易接着層を有することを特徴とする光学フィルム。
一般式(1)
−(MMA)p−(X)q−(Y)r−
MMAはメチルメタクリレートを、Xは2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートから選択される少なくとも一種のモノマー単位を、YはMMA、Xと共重合可能なモノマー単位を表す。
p、q、rは質量%であり、40≦p≦80、20≦q≦60、p+q+r=100である。
2.YがN−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN,N−ジメチルメタクリルアミドから選択される少なくとも一種のモノマー単位であることを特徴とする前記1記載の光学フィルム。
本発明では、易接着層を有しながらもロール形状を適正に維持する光学フィルムを提供することができる。
本発明に好ましい溶液流延製膜方法の工程を模式的に示した図である。 多層同時流延製膜装置の流延ダイ付近の拡大図である。 本発明のロール状光学フィルムの保管形態を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
<本発明の光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、透明樹脂フィルムの片面に、下記一般式(1)で表されるポリマーを含有する易接着層を有することを特徴とする。
一般式(1)
−(MMA)p−(X)q−(Y)r−
MMAはメチルメタクリレートを、Xは2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートから選択される少なくとも一種のモノマー単位を、YはMMA、Xと共重合可能なモノマー単位を表す。
p、q、rは質量%であり、40≦p≦80、20≦q≦60、p+q+r=100である。
そして好ましくは、YがN−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN,N−ジメチルメタクリルアミドから選択される少なくとも一種のモノマー単位であることを特徴とする。
以下、一般式(1)で表されるポリマーをアクリル樹脂Aと略す。
<アクリル樹脂A>
本発明のアクリル樹脂Aは、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
MMAはメチルメタクリレートを、Xは2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートから選択される少なくとも一種のモノマー単位を、YはMMA、Xと共重合可能なモノマー単位を表す。
p、q、rは質量%であり、40≦p≦80、20≦q≦60、p+q+r=100である。
Yとしては、MMA、Xと共重合可能なモノマーを適宜選択することができる。例えば、スチレン、MMA、X以外のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、N−アルキル置換アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等があげられる。
そして好ましくは、YがN−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN,N−ジメチルメタクリルアミドから選択される少なくとも一種のモノマー単位である。Yは2種以上であってもよい。
これらのモノマーは市販のものをそのまま使用することができる。
qは、20≦q≦60であり、モノマーの性質により適宜選択されるが、好ましくは30≦q≦50である。また、Xは複数のモノマーであってもよい。
Yは必要に応じて使用できるものであり、0≦r≦20であることが好ましい。
上記関係を満たすアクリル樹脂を、透明樹脂フィルムの片側に、バーコーターを用いて塗工して製造された易接着層付きフィルムは、巻き取られた後の馬の背故障や、まき始めのシワ、巻き芯転写の発生がなく、さらには、易接着層と偏光子との密着性が良い。
一方、上記関係を満たさない場合は、馬の背故障や、まき始めのシワ、巻き芯転写の発生があり、また、易接着層と偏光子との密着性が劣化する。
本発明のアクリル樹脂Aは、特に透明性の点で、重量平均分子量(Mw)が1000〜500000であるが、好ましくは、3000〜300000の範囲内であることが好ましい。
重量平均分子量(Mw)が1000以下では、耐熱性、耐久性が不足し、一方で300000以上では、バーコーターを用いて塗工する際、粘度が高く平面性が劣化、または生産性が低下する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: THF
カラム: Shodex KF806、KF805、KF803、KF802(昭和電工(株)製を4本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明におけるアクリル樹脂Aの製造方法としては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。
重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
<透明樹脂フィルム>
本発明の透明樹脂フィルムとしては、公知の透明樹脂フィルムの中から適宜選択して用いることができる。
このような透明プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースプロピオネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、シンジオタクチックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォン系フィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、ポリアリレートフィルム等を挙げることができる。
本発明においては、アクリル樹脂フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースプロピオネートフィルム、ポリカーボネート系フィルム、ノルボルネン系ポリオレフィン系フィルム及びポリエステル系フィルムは、透明性に優れ、光学的に好適に用いられ、密着性の点からセルロースエステルが最も好ましい。
膜厚は、適宜選択することができるが30〜200μmであることが好ましい。また、Ro、Rtのレターデーションも適宜設計することができる。
<易接着層>
本発明の易接着層は、アクリル樹脂A以外に、レベリング剤等の界面活性剤、架橋剤、マット剤、防腐剤等の添加剤を添加することができる。
また、易接着性を阻害しない範囲で、その他の樹脂を添加してもよい。
本発明の易接着層において、本発明のアクリル樹脂Aは、層の構成成分として100〜70質量%であることが好ましい。
易接着層の膜厚は0.01〜20μmであり、透明樹脂フィルムに対する付き量は、10〜20000mg/mである。好ましくは、膜厚0.1〜5μm、付き量100〜5000mg/mである。接着力により適宜設計することができる。
本発明の易接着層は、本発明のアクリル樹脂Aおよびその他の添加剤を、溶剤に溶解ないし分散させた溶液を、透明樹脂フィルム上にグラビアコーター、ディップコーター、押し出しコーター、リバースコーター等の公知の方法で塗布、乾燥することで得ることができる。
溶剤としては、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、メチレンクロライド、トルエン等、通常使用する公知の溶剤を適宜選択することができる。
溶液濃度は、コーター等塗布装置の適性により適宜選択することができるが、0.1〜10質量%が好ましい。
透明樹脂フィルムは、塗布前にコロナ放電、火炎処理等の前処理をしておくことも好ましい。
<粒子>
本発明は、フィルム表面の算術平均粗さRa、構造表面のパラメータMr1(%)の値を制御する為に、樹脂フィルム中に粒子を添加することができる。該粒子は、無機粒子或いは有機粒子等、特に限定されるものではないが、平均一次粒子径が1nm〜10nmの無機粒子を用いることが好ましい。
上記平均一次粒子径は、500個の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真からの目視やイメージ写真を画像処理することにより、または動的光散乱法、静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により計測することができる。ここでいう平均一次粒子径は、個数平均粒子径をさす。尚、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
好ましい無機粒子としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの無機粒子は、種類、平均粒子径が異なる2種以上を併用してもよく、粒子の表面を有機物により表面処理したものも好ましく用いられる。
特に好ましい無機粒子は、これらの中でも二酸化珪素である。平均一次粒子径が1nm〜10nmの二酸化珪素の具体例としては、アエロジルR812、R976、R200、R300(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いるとヘイズを調整するのが容易であり好ましい。
また、粒子の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.65である。尚、粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定できる。
上記無機粒子の含有量は、樹脂フィルムの主成分である樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜1質量部が好ましく、本発明の効果を得る上でより好ましくは0.05質量部〜0.30質量部である。
前記粒子は、本発明のアクリル樹脂Aおよびその他の添加剤と共に有機溶媒中に含有させて分散させてもよく、また、単独で該有機溶媒中に分散させてもよい。粒子の分散方法としては、前もって有機溶媒に浸してから高剪断力を有する分散機(高圧分散装置)で細分散させておくのが好ましい。
また、ドープ調製の場合は、多量の有機溶媒に粒子を分散しておき、樹脂溶液と合流させ、インラインミキサーで混合してドープにすることも好ましい。この場合、粒子分散液に他の添加剤である紫外線吸収剤を加え紫外線吸収剤液としてもよい。
<偏光板>
本発明の光学フィルムは、ポリビニルアルコールを偏光子とする偏光板の偏光板保護フィルムとすることが好ましい。この場合、本発明の易接着層が偏光子と作用することとなる。
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することができる。
本発明の光学フィルムの易接着層側に、通常使用されるポリビニルアルコール系の水性接着剤を使用して、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。
例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
<液晶表示装置>
本発明の光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができるが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。
本発明の偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
本発明の偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特にVA型の画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
以下に、好ましい実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例1
合成例1
<アクリル樹脂Aの合成>
攪拌機、2個の滴下ロート、ガス導入管及び温度計の付いたガラスフラスコに、表1記載の種類及び質量比率のモノマーの混合液40g、連鎖移動剤のメルカプトプロピオン酸2g及びトルエン30gを仕込み、90℃に昇温した。
その後、一方の滴下ロートから、表1記載の種類及び質量比率のモノマー混合液60gを3時間かけて滴下すると共に、同時にもう一方のロートからトルエン14gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.4gを3時間かけて滴下した。
その後さらに、トルエン56gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.6gを2時間かけて滴下した後、さらに2時間反応を継続させ、アクリル樹脂Aを得た。
次いでモノマー種、連鎖移動剤のメルカプトプロピオン酸の添加量、アゾビスイソブチロニトリルの添加速度を変更して分子量の異なるアクリル樹脂を作製した。
なお、本発明アクリル樹脂Aのモノマー構成等は表1に示した。表1に記載した各単量体を示す略記号の意義は下記の通りである。
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
VP:N−ビニルピロリドン
ACMO:アクリロイルモルホリン
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
DMMA:N,N−ジメチルメタクリルアミド
HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド
Figure 0005569278
<光学フィルムの作成:液接着層の形成>
表1に示したアクリル樹脂Aを、表2に示した液組成Bに、表3に記載の粒子Cとともに添加し塗布液を調製した。粒子Cは、アクリル樹脂Aの100質量部に対して、表4,5に記載の量を添加した。
この塗布液を透明樹脂フィルムの片側に、バーコーターを用いて乾燥膜厚0.3μmになるように塗工し、150℃で3分乾燥して、易接着層を有する光学フィルムを作製した。
光学フィルムは、巻芯の大きさが、内径152mm、外径165mm、長さ1550mmになるように巻き取った。同様にして透明樹脂フィルム、アクリル樹脂、液組成を表4,5に記載したように組み合わせ、光学フィルムを作製した。なお、表4,5に記載した透明樹脂フィルムは下に示す。
フィルム1:特開2009−269970の実施例1記載のフィルム
フィルム2:コニカミノルタオプト(株)製,商品名コニカミノルタタックKC4UY 厚み40μm
フィルム3:特許第4315898号の実施例1記載のフィルム1B
フィルム4:WO/2009/047924実施例1記載の光学フィルム1
フィルム5:日本ゼオン(株)製,商品名ゼオノアフィルム,厚み40μm
フィルム6:三菱樹脂(株)製,商品名S100−38,厚み38μm
Figure 0005569278
Figure 0005569278
<偏光板の作成>
上記で作製した光学フィルムの対向面には偏光板保護フィルムとして、膜厚40μmのコニカミノルタTACフィルム(コニカミノルタオプト(株)製、KC4UY)を使用し、下記のようにして偏光子を挟み貼り合わせ偏光板を作製した。
本発明の光学フィルムは工程2から、対向面のTACフィルムは工程1から実施した。
工程1:50℃、2mol%の水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、ついで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した。
工程2:延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製し、該偏光子を固形分2質量%の完全鹸化ポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを本発明の光学フィルム、偏光子、対向面用TACフィルムの順で積層した。
工程4:工程3で積層した本発明の光学フィルム、偏光子および対向面のTACフィルムを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:工程4で作製した貼り合わせた試料を80℃の乾燥機中にて5分間乾燥し、偏光板を作製した。
(評価方法)
得られた光学フィルムを使用して、以下の評価を実施した。なお、評価条件は特に指定の無い限り、23℃55%RHの雰囲気下でおこなった。
(馬の背故障、巻芯転写)
巻き取ったフィルム試料をポリエチレンシートで2重に包み、図2(a)、(b)、(c)に示すような保管形態で、25℃、50%RHの条件下で30日間保存した。その後、ポリエチレンシートを開け、フィルム試料表面に点灯している蛍光灯の管を反射させて映し、その歪み或いは細かい乱れを観察し、馬の背故障を下記レベルにランク分けした。
○:蛍光灯が真っすぐに見える
△:蛍光灯が部分的に曲がって見える
×:蛍光灯がまだらに映って見える
また、保存後のフィルム試料を巻き返して、50μm以上の点状の変形、または幅手方向の帯状の変形がはっきり見える巻芯転写が、巻芯部分より何mまで発生しているかを測定し、下記レベルにランク分けを行った。
○:巻芯部分より20m未満
△:巻芯部分より20〜50m未満
×:巻芯部分より50m以上
(巻始めシワ)
巻芯にフィルムを巻き取る作業を行い、巻始めでシワが発生して不良となった場合は巻芯からフィルムを取り外して、再度巻き取る作業を行った。この時の不良回数をカウントした。この作業を10回行い、平均値を求め、下記レベルにランク分けを行った。
◎:1回未満
○:1回以上3回未満
△:3回以上6回未満
×:6回以上
(密着性の評価)
上記作成した各偏光板を、23℃80%RHの雰囲気下で24時間保存時、その後同雰囲気下、手で剥離性を測定し剥離できたかどうかで確認し、下記基準で評価した。
○:貼合されており、手で剥離出来ない
△:端部のみが剥がれ、それ以上剥がすと部材が破壊される
×:容易に手で剥離出来てしまう
Figure 0005569278
Figure 0005569278
表4,5に示した結果から明らかなように、本発明の上記手段により、作成された易接着層を有する偏光子保護フィルムは、水系接着剤で偏光子と良好な密着性を有し、また製造時にロール状に巻き取られた際にも馬の背故障や、巻き芯転写といった問題が生じることがない。
実施例2
以下に示すセルロースアシレートドープを作製し、コア層用ドープとした。
〈コア層用セルロースアシレートドープの調整〉
セルロースジアセテート 100質量部
(総置換度2.42、アセチル基置換度2.42)
芳香族末端エステル系可塑剤(1) 6質量部
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 1質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 4質量部
ジクロロメタン 450質量部
エチルアルコール 50質量部
Figure 0005569278
〈スキン層用ドープの調整〉
表1化合物A10 100質量部
ジクロロメタン 450質量部
エチルアルコール 50質量部
微粒子(アエロジルR976V(日本アエロジル株式会社製) 0.1質量部
比較例
〈コア層用セルロースアシレートドープの調整〉
セルロースジアセテート 100質量部
(総置換度2.42、アセチル基置換度2.42)
芳香族末端エステル系可塑剤(1) 6質量部
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 1質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 4質量部
ジクロロメタン 450質量部
エチルアルコール 50質量部
〈スキン層用ドープの調整〉
表1化合物A7 100質量部
ジクロロメタン 450質量部
エチルアルコール 50質量部
微粒子(アエロジルR976V(日本アエロジル株式会社製) 0.1質量部
(溶液流延法)
上記の各ドープをミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、ドープを調製した。
次に、上記により調製したコア層用ドープ、スキン層用ドープを製膜化してフィルムを製造した。
ドープを流延する際には、図2に示すように、走行する流涎ベルト4の上に流延ダイ3から上記2種類のドープを共に流延した。ここで、各ドープの流延量を調整することによりコア層40μm、スキン層2μmとなるように同時多層流延を行い流延膜を形成させた。
次に、この流延膜を流延バンドから剥ぎ取り湿潤フィルムとした後、渡り部及びテンターで乾燥させてフィルムとした。フィルムを乾燥室に送り、多数のローラに巻き掛けながら搬送する間に乾燥を十分に促進させた。
最後に、巻取室の巻取ローラで巻取りフィルム製品とした。ドープを剥ぎ取った直後の残留溶剤量は約30質量%であった。
その後、テンターを用いて延伸率30%まで拡幅した後、140℃で60秒間緩和させ、フィルムを得た。
本フィルムを評価した結果を表6に示す。
Figure 0005569278
本発明の易接着層の形成方法にかかわらず、目的の効果を示した。
1 バックアップローラ
2 エンボスロール
3 同時多層流延ダイス
4 流延ベルト
5 テンター
6 フィルム乾燥装置
7 巻き取りロール状光学フィルム
8 流延膜
9 コア層用ドープ
10 スキン層用ドープ
11 コア層
12 スキン層
13 巻芯本体
14 支え板
15 架台
16 ロール状光学フィルム

Claims (2)

  1. 透明樹脂フィルムの片面に、下記一般式(1)で表されるポリマーを含有する易接着層を有し、前記ポリマーの重量平均分子量(Mw)が1000〜500000であることを特徴とする光学フィルム。
    一般式(1)
    −(MMA)p−(X)q−(Y)r−
    MMAはメチルメタクリレートを、Xは2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートから選択される少なくとも一種のモノマー単位を、YはMMA、Xと共重合可能なモノマー単位を表す。
    p、q、rは質量%であり、40≦p≦80、20≦q≦60、p+q+r=100である。
  2. YがN−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN,N−ジメチルメタクリルアミドから選択される少なくとも一種のモノマー単位であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルム。
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