JP5760844B2 - 光学フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、表示装置に用いられる光学フィルムに関し、特に偏光板に用いられる保護フィルムに関する。
近年、液晶表示装置は、その画質の向上や高精細化技術の向上により、テレビや大型モニターに使用されるようになってきており、特に、これら液晶表示装置の液晶ディスプレイの大画面化の要望が液晶表示装置の材料にも強くなり、部材としての光学フィルムの大サイズ化、光学フィルムの広幅化が求められている。
また一方で、コスト削減などで液晶ディスプレイの薄軽化も求められており、部材としての光学フィルムの薄膜化の開発が急務となっている。
これまで液晶テレビ用の光学フィルムの部材として、従来はセルロース系を用いてきたが、セルロース系は湿度により性能変化が大きく薄膜化すると、膜の中心部まで湿度の影響を受けるため環境変動の影響をより受けやすくなるので、アクリル系フィルムの方が、薄膜には向いている。
しかし、このようなアクリル系フィルムにおいて広幅の薄膜フィルムは巻き取り時、フィルム間の摩擦やブロッキングの影響を受けやすく、シワなどの巻き形状故障が発生し易い。
特に、膜厚が50μm以下になると、フィルム巻き取り時に巻きシワが発生しやすくなり、膜厚が更に薄くなると巻きシワが顕著になる。また、巻き取り時に巻きシワが目視で見られなくても、該フィルムを顕微鏡で観察したときに輝線が見られることがある。輝線は巻き取り時の巻きシワの形状に似ており、シワとして確認されるに至らない程度の歪みによるものと推定される。
この輝線とフィルムに添加されたマット剤の凝集物とが重なると光の散乱が起こり、欠陥となることが問題となっていた。
特許文献1では、光学フィルムの幅手方向の端部の摩擦係数を小さくすることにより巻きシワを防止している。しかし、特許文献1には、厚さ40μm以上のセルロースエステルフィルムについての記載しかなく、薄膜のアクリル樹脂フィルムについての記載は無い。また、このような薄膜のアクリル樹脂フィルムで発生する輝線の防止方法についても記載されておらず、実際、特許文献1の方法では、薄膜のアクリル系フィルムの巻きシワ及び輝線を十分に防止できない。
一方、特許文献2には、アクリル樹脂を用いた逆波長分散性の位相差を有する光学フィルムが記載されているが、厚さが30μm以下、更には20μm以下といった薄膜についての記載は無く、薄膜の光学フィルムにおいて生じる巻きシワや輝線の記載も無い。
特開2009−204848号公報 特開2009−138069号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、薄膜で巻きシワ及び輝線の生じないアクリル系の光学フィルムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討の結果、本発明のアクリル系の光学フィルムは弾性率が高いことを見出し、本発明に至った。
1.アクリル樹脂(A)とアクリル樹脂(B)を60:40〜99:1の質量比で含有する光学フィルムであって、該アクリル樹脂(A)が下記一般式(1)で表され、重量平均分子量Mwが80000以上1000000以下であり、該アクリル樹脂(B)が下記一般式(2)で表され、重量平均分子量Mwが1000以上80000未満であることを特徴とする光学フィルム。
一般式(1) −(MMA)p1−(X1)q1−(Y1)r1
一般式(2) −(MMA)p2−(X2)q2−(Y2)r2
(式中、MMAはメチルメタアクリレート由来の繰り返し単位であり、X1はアミド基を少なくとも一種有するMMAと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位であり、X2はMMAと共重合可能な、アミド基以外の−NR−基又は−OH基を含むモノマー由来の繰り返し単位であり、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Y1は、MMA及びX1と共重合可能で、アミド基を含まない、MMA以外のモノマー由来の繰り返し単位であり、Y2は、MMA及びX2と共重合可能で、−NR−基又は−OH基を含まない、MMA以外のモノマー由来の繰り返し単位であり、p1、q1、r1、p2、q2、r2はモル%であり、50≦p1≦99、1≦q1≦50、p1+q1+r1=100、1≦p2≦50、50≦q2≦99、p2+q2+r2=100である。)
2.弾性率が2.0〜5.0GPaであることを特徴とする前記1に記載の光学フィルム。
3.前記一般式(1)のr1が0であることを特徴とする前記1又は2に記載の光学フィルム。
4.前記一般式(2)のr2が0であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
5.前記一般式(2)のX2が、−OH基を含むモノマー由来の繰り返し単位であることを特徴とする前記1又は2に記載の光学フィルム。
本発明の上記手段により、薄膜で、巻きシワ及び輝線の生じないアクリル系の光学フィルムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
アミド基を有するアクリル樹脂(A)とアミド基以外の−NR−基またはOH基を有するアクリル樹脂(B)との間で水素結合が生じ、そのために光学フィルムの弾性率が向上し、薄膜でも腰の強さを保つことが出来たために、折れたり歪んだりすることなく平滑に巻き取ることができると考えている。
本発明の光学フィルムは、アミド基を有するアクリル樹脂(A)とアミド基以外の−NR−基又はOH基を有するアクリル樹脂(B)を60:40〜99:1の質量比で含有する光学フィルムであって、該アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mwが80000以上1000000以下であり、該アクリル樹脂(B)の重量平均分子量Mwが1000以上80000未満であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、弾性率が2.0〜5.0GPaであることが好ましい。また、アクリル樹脂(B)がOH基を有することが、弾性率向上の効果が大きいことから好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
(アクリル樹脂(A))
アクリル樹脂(A)は下記一般式(1)で表され、重量平均分子量(Mw)は80000以上1000000以下である。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の上限値は、製造上の観点から1000000以下とされる。
本発明のアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明におけるアクリル樹脂(A)の製造方法としては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。
重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
(一般式(1))
前記一般式(1)において、MMAはメチルメタクリレート由来の繰り返し単位を、X1はアミド基を少なくとも一種有しMMAと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位を、Y1はMMA、X1と共重合可能でアミド基を含まない、MMA以外のモノマー由来の繰り返し単位を表す。p1、q1、r1はモル%であり、50≦p1≦99、1≦q1≦50、p1+q1+r1=100である。
X1は一種でも2種以上でもよく、1モノマー単位中に複数の官能基を有していてもよい。
X1を形成する具体的なモノマーとしては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジン、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メタクリロイルピロリジン、メタクリロイルピペリジン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン等が挙げられる。
好ましくは、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、が挙げられる。
これらのモノマーは市販のものをそのまま使用することができる。
q1は、1≦q1≦50であり、モノマーの性質により適宜選択されるが、好ましくは5≦q1≦30である。また、Xは複数のモノマーであってもよい。
Y1はMMA及びX1と共重合可能で、アミド基を含まない、MMA以外のモノマー由来の繰り返し単位を表す。Y1を形成するモノマーの具体例としては、MMA以外のアルキルメタアクリレートモノマー、アルキルアクリレートモノマー、オレフィン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等のモノマーが挙げられる。Y1は2種以上であってもよい。
Y1は必要に応じて使用できるものであるが、弾性率を高くして光学フィルムの腰を強くするために、使用しないこと、即ちr1=0が最も好ましい。
(アクリル樹脂(B))
アクリル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は1000以上80000未満である。アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、上記のアクリル樹脂(A)と同様に測定できる。
本発明の構成と効果の関係について以下のように考察した。アクリル樹脂(B)は、アクリル樹脂(A)の間隙に入り込み、アクリル樹脂(B)の親水性基とアクリル樹脂(A)のアミド基の間に水素結合を形成し、硬いフィルムを形成するものと考えられる。そのため、薄膜のフィルムでも腰があり、巻きシワを生じにくくさせているものと考えられる。
(一般式(2))
前記一般式(2)において、MMAは一般式(1)に記載のMMAと同義である。
X2はMMAと共重合可能な、アミド基以外の−NR−基又は−OH基を有するモノマー由来の繰り返し単位であり、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、X2は好ましくは−OH基を有するモノマー由来の繰り返し単位である。
X2を形成する具体的なモノマーとしては、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、2,3−ジブロモマレイミド、2−メチル−3−ビニルマレイミド等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
Y2は、MMA及びX2と共重合可能で、−NR−基又は−OH基を含まない、MMA以外のモノマー由来の繰り返し単位を表し、Y2を形成するモノマーの具体例は、一般式(1)のY1を形成するモノマーの具体例と同じである。p2、q2、r2はモル%であり、1≦p2≦50、50≦q2≦99、p2+q2+r2=100である。
Y2は必要に応じて使用できるものであるが、弾性率を高くして光学フィルムの腰を強くするために、使用しないことが好ましい。即ちr2=0が好ましい。
(光学フィルム)
本発明の光学フィルムは偏光子に貼合して偏光子を保護するための保護フィルムとして用いることができる。前記光学フィルムは薄膜化が可能であり、これにより偏光子と保護フィルムからなる薄膜の偏光板を作製することが出来る。また、前記光学フィルムは複屈折性を有する位相差フィルムであってもよい。
前記光学フィルムが位相差フィルムである場合、下記式(I)により定義される面内リターデーション値Ro(590)が0〜100nmの範囲内であり、下記式(II)により定義にされる厚さ方向のリターデーション値Rt(590)が−100〜100nmの範囲内であるように調整することが好ましい。
式(I):Ro(590)=(nx−ny)×d(nm)
式(II):Rt(590)={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
〔上式中、Ro(590)は測定波長590nmにおけるフィルム内の面内リターデーション値を表し、Rt(590)は測定波長590nmにおけるフィルム内の厚さ方向のリターデーション値を表す。
また、dは光学フィルムの厚さ(nm)を表し、nxは590nmにおけるフィルムの面内の最大の屈折率を表し、遅相軸方向の屈折率ともいう。nyは590nmにおけるフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率を表し、nzは590nmにおける厚み方向におけるフィルムの屈折率を表す。〕
面内リターデーション値Ro(590)は、好ましくは、0〜250nmの範囲内である。
一方、厚さ方向のリターデーション値Rt(590)については、好ましくは、−50〜50nmの範囲内である。
所望のリターデーションは、このフィルムの組成に応じて、延伸の温度(それぞれの区画の温度の組み合わせ)、倍率、延伸する速度、延伸する順序、延伸する時のフィルムの残留溶媒量などを調整、制御することでリターデーション値を所望の値にすることができる。
リターデーションをこのような範囲に調整することにより本発明フィルムを使用した液晶表示装置の視野角を広げ、正面コントラストを改善することができる。
正面コントラスト=(表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度)/(表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度)
視野角は液晶表示装置の観察方向を法線方向から傾けていった場合に一定レベルのコントラストを維持できる角度のことである。
遅相軸方向の均一性も重要であり、フィルム巾方向に対して、角度が−5〜+5°であることが好ましく、さらに−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、特に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましく、特に−0.1〜+0.1°の範囲にあることが好ましい。これらのばらつきは延伸条件を最適化することで達成できる。
本発明の光学フィルムの厚みムラに基づく表面の形状は、隣接する山の頂点から谷の底点までの高さが300nm以上であり、傾きが300nm/mm以上の長手方向に連続するスジがないことが好ましい。
スジの形状は、表面粗さ計を用いて測定したもので、具体的には、ミツトヨ製SV−3100S4を使用して、先端形状が円錐60°、先端曲率半径2μmの触針(ダイヤモンド針)に測定力0.75mNの加重をかけながら、測定速度1.0mm/secでフィルムの巾方向に走査し、Z軸(厚み方向)分解能0.001μmとして断面曲線を測定する。
この曲線から、スジの高さは、山の頂点から谷の底点までの垂直距離(H)を読み取る。スジの傾きは、山の頂点から谷の底点までの水平距離(L)を読み取り、垂直距離(H)を水平距離(L)で除して求める。
また本発明の光学フィルムの厚みは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。5μm以上であれば巻きシワが生じにくく、50μm以下であれば表示装置の薄型化に適合できコストの低減にも大きく寄与できる。より好ましくは10μm以上40μm以下、特に好ましくは15μm以上30μm以下である。
本発明の光学フィルムは、上記のような物性を満たしていれば、大型の液晶表示装置や屋外用途の液晶表示装置用の偏光板保護フィルムとして特に好ましく用いることができる。
(セルロースエステル)
本発明の光学フィルムは、弾性率を高くして巻きシワや輝線の発生を防止するために、樹脂としてアクリル樹脂のみで構成されることが好ましいが、更にセルロースエステルを含有することも強度の点から好ましい。
前記セルロースエステルは、特に脆性の改善やアクリル樹脂(A)と相溶させたときに透明性の観点から、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であることが好ましく、2.0〜3.0であることが更に好ましい。
即ち、前記セルロースエステル樹脂は、炭素数が3〜7のアシル基により置換されたセルロースエステル樹脂が好ましく、具体的には、プロピオニル、ブチリル等が好ましく用いられるが、特にプロピオニル基が好ましく用いられる。
セルロースエステルの、アシル基の総置換度が2.0以上である場合、即ち、セルロースエステル分子の2,3,6位の水酸基の残度が1.0以下である場合には、アクリル樹脂(A)と十分に相溶し、好ましい。
また、アシル基の総置換度が2.0以上である場合、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2以上であれば、高い相溶性が得られ、ヘイズが低く抑えられる。
また、アシル基の総置換度が2.0以上の場合、炭素数8以上のアシル基の置換度が低く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2以上の場合は、靭性が高く、所望の特性が得られやすい。
セルロースエステルのアシル置換度は、総置換度(T)が2.0〜3.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であれば問題ないが、炭素数が3〜7以外のアシル基、即ち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。
また、セルロースエステルのアシル基の総置換度(T)は、2.5〜3.0の範囲であることが更に好ましい。
セルロースエステルとしては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、即ち、炭素原子数3または4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
これらの中で特に好ましいセルロースエステルは、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル樹脂(A)との相溶性、脆性の改善の観点から75000以上であり、75000〜300000の範囲であることが好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)が75000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が落ちてくる。また、300000を超える場合は、粘度が高くなり製膜が難しくなる。
本発明では2種以上のセルロースを混合して用いることもできる。
本発明のセルロースエステル樹脂の重量平均分子量は、上記GPCによって測定することができる。
(アクリル樹脂(A)、(B)とセルロースエステルの混合)
本発明の光学フィルムにおいてセルロースエステルを混合する場合、(アクリル樹脂(A)及び(B)):セルロースエステルは、50:50〜95:5の質量比で、相溶状態で含有されることが好ましく、更に好ましくは60:40〜70:30である。
アクリル樹脂(A)及び(B)とセルロースエステルの質量比が、95:5以下であると、セルロースエステルによる強度の効果が大きく、70:30以下であると更に強度が大きくなる。同質量比が50:50以上であると、高い弾性率を得ることが出来、60:40以上であると更に高い弾性率を得ることが出来る。
本発明の光学フィルムにおいては、アクリル樹脂とセルロースエステルが相溶状態で含有されることが好ましい。光学フィルムとして必要とされる物性や品質を、異なる樹脂を相溶させることで相互に補うことにより達成している。
アクリル樹脂とセルロースエステルが相溶状態となっているかどうかは、例えばガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。
例えば、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、両者の樹脂を混合したときは、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は2つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。
なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)とする。
(その他の添加剤)
本発明の光学フィルムには、リターデーションを制御することを目的とした位相差制御剤、フィルムに加工性を付与する可塑剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)等の添加剤を含有させることが好ましい。
〈グリコールと二塩基酸のポリエステルポリオール〉
位相差制御剤として用いられるポリエステルポリオールとしては、炭素数の平均が2〜3.5であるグリコールと炭素数の平均が4〜5.5である二塩基酸との脱水縮合反応、又は該グリコールと炭素数の平均が4〜5.5である無水二塩基酸の付加及び脱水縮合反応による常法により製造されるものであることが好ましい。
〈芳香族末端ポリエステル〉
本発明の位相差制御剤として、下記一般式(3)で表される芳香族末端ポリエステルを用いることができる。
一般式(3) B−(G−A)−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
前記芳香族末端ポリエステルの具体的な化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0183)〜(0186)を挙げることができる。
前記芳香族末端ポリエステルの含有量は、光学フィルム中に0〜20質量%含有することが好ましく、特に1〜11質量%含有することが好ましい。
〈多価アルコールエステル系化合物〉
位相差制御剤として、多価アルコールエステル系化合物を含有させることができる。
多価アルコールエステル系化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0218)〜(0170)を挙げることができる。
〈糖エステル化合物〉
位相差制御剤として用いられる糖エステル化合物としては、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物を使用することが好ましい。
本発明に用いられる糖エステル化合物としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
前記糖エステル化合物は、糖化合物の有する水酸基の一部または全部がエステル化されているものまたはその混合物である。
本発明の糖エステル化合物の具体的化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0060)〜(0070)を挙げることができる。
〈可塑剤〉
可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等を用いることができる。
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸およびグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が可塑化効果が大きい。
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000mPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
可塑剤はアクリル樹脂を含有する組成物100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。またこれらの可塑剤は単独或いは2種以上混合して用いることもできる。
〈酸化防止剤〉
本発明では、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
例えば、BASFジャパン株式会社から、“IrgafosXP40”、“IrgafosXP60”という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、BASFジャパン株式会社、“Irganox1076”、“Irganox1010”、(株)ADEKA“アデカスタブAO−50”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”および“ADK STAB 3010”、BASFジャパン株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、BASFジャパン株式会社から、“Tinuvin144”および“Tinuvin770”、株式会社ADEKAから“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、”Sumilizer TPL−R”および“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から、“Sumilizer GM”および“Sumilizer GS”という商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
〈着色剤〉
本発明においては、着色剤を使用することが好ましい。着色剤と言うのは染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘーズの低減を有するものを指す。
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
〈マット剤〉
本発明では、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤を添加することが好ましい。
本発明で用いられるマット剤としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよい。これらのマット剤は、単独でも二種以上併用しても使用できる。
粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。
これらの中でも、透明性(ヘーズ)に優れる二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。
粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80nmから180nmの範囲であることが特に好ましい。
なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
(光学フィルムの製造方法)
次に、本発明の位相差フィルムの製造方法について説明する。
本発明の位相差フィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても、溶融流延法で製造されたフィルムであって良いが、薄膜を均一に製造できることから溶液流延法が好ましい。
本発明の位相差フィルムの溶液流延法での製造は、アクリル樹脂(A)、(B)および添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをドラム又はバンド支持体(無限に移行する無端の金属支持体)上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
(ドープ調製)
本発明に係るドープで用いられる溶剤は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
上記記載のドープを調製する時の、アクリル樹脂(A)、(B)の溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
次に、このアクリル樹脂(A)、(B)の溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
(流延)
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたは金属支持体上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたは金属支持体から剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレス製バンド支持体又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。
本発明の光学フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。また、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
前記金属支持体から剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブは縦方向に延伸する為、本発明においては流延支持体からウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力をできるだけ下げた状態で行うことが好ましい。具体的には、例えば50〜170N/m以下にすることが効果的である。その際、20℃以下の冷風を当て、ウェブを急速に固定化することが好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、更に延伸処理により屈折率(面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny及び厚さ方向の屈折率nz)を調整することができる。
〈延伸工程〉
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、さらに少なくとも1方向に1.01〜5.0倍延伸することが好ましい。延伸によりスジの鋭さが緩やかになり高度に矯正することができるからである。
好ましくは縦(フィルム搬送方向)、横(巾方向)両方向にそれぞれ1.1〜3.0倍延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。特に光学フィルムが、偏光板保護フィルムを兼ねる位相差フィルムの場合は、延伸方向を巾方向とすることで偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。
巾方向に延伸することで光学フィルムの遅相軸は巾方向になる。
通常、延伸倍率は1.1〜3.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は通常、フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われ、本発明の光学フィルムでは、延伸温度は100℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは120℃〜150℃である。
延伸は、幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
上記の方法で作製した光学フィルムのレターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
長手方向に収縮するには、例えば、巾延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
(乾燥)
流延後、もしくは延伸後のウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下、100℃以上で10分以上60分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100〜200℃、更に好ましくは110〜160℃で乾燥が行われる。
所定の熱処理の後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
ナーリング加工は、加熱されたエンボスロールを押し当てることにより形成することができる。エンボスロールには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
本発明の位相差フィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μm、幅5〜20mmが好ましい。また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻き取りの前に設けることが好ましい。
(巻き取り)
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
本発明の光学フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
(巻きシワ)
ナーリング加工が施され、光学フィルムがロールに巻き取られる際に、巻きシワが生じないためには、巻き取られる直前のフィルムを平面状に保たなければならない。フィルムは巻き取られるときに、すでに巻き取られているフィルムのロールの裏面と巻き取られるフィルムの表面との間の摩擦力とフィルムが横に広がる力とのバランスが巻きシワに影響すると考えられる。つまり、横に広がる力が摩擦力より強ければフィルムが平面状になり巻きシワは生じない。そのための方法として、フィルムに微粒子を添加して表面に凹凸をつけ摩擦力を小さくする方法、及び、フィルムの腰を強くしてフィルムが横に広がる力を大きくする方法が挙げられる。しかし、フィルムが薄膜となると腰が弱くなって巻きシワが生じやすくなる。
本発明の光学フィルムは、樹脂の弾性率を高めることにより、膜厚が50μm以下といった薄膜のフィルムでも、十分な腰の強さを有し、巻きシワや輝線の発生を防止することができる。
前記光学フィルムの弾性率は2.0〜5.0GPaであることが好ましい。2.0GPa以上であれば、十分な腰の強さを有することができ、5.0GPa以下であればフィルムの強度を十分大きくでき、取り扱い性が良好となる。
(輝線)
輝線は、ロールに巻き取られた光学フィルムを50倍程度の倍率の顕微鏡で反射光により観察することにより確認される。輝線の形状は巻きシワに似ており、巻きシワのようにフィルムが折れてはいないが、巻きシワに至らないフィルムの歪みによるものと推察される。輝線は目視では観察されないが、この輝線とフィルムに添加されたマット剤の凝集物とが重なると光の散乱が起こり、欠陥となる。評価方法としては、この光の散乱を直接観察することが考えられるが、輝線の観察に比べ作業の効率が悪いため、輝線により評価する方法が好適である。
<偏光板>
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することができる。
偏光子と前記光学フィルムとの接着方法は、該光学フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に貼り合わせる方法、又は、該偏光子と該光学フィルムを完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法が好ましい。
前記偏光子のもう一方の面には本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等を用いることが出来る。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
<液晶表示装置>
本発明の光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができるが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明の偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
本発明の偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特にVA型の画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
(懸濁剤の合成例)
先ず、メチルメタクリレート/アクリルアミド共重合体系懸濁剤を、次の様にして調整した。
メチルメタクリレート 20質量部
アクリルアミド 80質量部
過硫酸カリウム 0.3質量部
イオン交換水 1500質量部。
上記を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら、単量体が完全に重合体に転化するまで、70℃に保ち反応を進行させた。得られた水溶液を懸濁剤とした。
(アクリル樹脂(A′)−1の合成)
容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、上記懸濁剤0.05質量部をイオン交換水165質量部に溶解した溶液を供給し、系内を窒素ガスで置換しながら400rpmで撹拌した。
次に、下記仕込み組成の混合物質を、反応系を撹拌しながら添加した。
メチルメタクリレート 78.3質量部
ビニルピロリドン 21.7質量部
t−ドデシルメルカプタン 1.2質量部
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル 重量平均分子量が75000となる量。
(上記メチルメタアクリレート(MMA)とビニルピロリドンのモル比は80:20であり、p1/q1が80/20となる。)
添加後、70℃まで昇温し、内温が70℃に達した時点を重合開始時点として、180分間保ち、重合を進行させた。
その後、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(A′)−1を得た。共重合体(A′)−1の重量平均分子量を下記により測定した結果、75000であった。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
(アクリル樹脂(A)−1〜(A)−21及び(A′)−2〜(A′)−16の合成)
アクリル樹脂(A′)−1の合成において、表1に記載のように、MMAとX1を形成するモノマーとをp1/q1(モル比)で仕込み、表1に記載の重量平均分子量となるように2,2′−アゾビスイソブチロニトリルの添加量を調整した他は同様にして、本発明に係るアクリル樹脂(A)のアクリル樹脂(A)−1〜(A)−21及び比較のアクリル樹脂(A′)−2〜(A′)−16を合成した。
(アクリル樹脂(B)−1〜(B)−23及び(B′)−1〜(B′)−20の合成)
アクリル樹脂(A′)−1の合成において、表2に記載のように、MMAとX2を形成するモノマーとをp2/q2(モル比)で仕込み、表2に記載の重量平均分子量となるように2,2′−アゾビスイソブチロニトリルの添加量を調整した他は同様にして、本発明に係るアクリル樹脂(B)のアクリル樹脂(B)−1〜(B)−23及び比較の(B′)−1〜(B′)−20を合成した。
〔光学フィルムの作製〕
(光学フィルム1の作製)
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
(ドープ液1)
下記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープ液1を作製した。
アクリル樹脂(A′)−1 60質量部
アクリル樹脂(B)−5 40質量部
微粒子添加液1 2質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部。
(製膜)
上記作製したドープ液1を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
剥離したウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。
テンターで延伸後、130℃で5分間緩和を行った後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径15.24cmコアに巻き取り、光学フィルム1を得た。
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。
光学フィルム1の残留溶剤量は0.1%であり、膜厚は20μm、巻長は4000mであった。
(光学フィルム2〜83の作製)
上記光学フィルム1の作製において、アクリル樹脂(A)、(A′)及びアクリル樹脂(B)、(B′)の種類と組成比を、表3及び表4に記載のように変えた以外は同様にして、光学フィルム2〜83を作製した。
《評価》
(巻きシワの観察)
巻き取ったロールからフィルムを繰り出し、50mおきに、長手方向1m、幅手方向全幅で切り出し、目視にてシワの観察をした。
○:全くシワが見られない
△:シワが1〜2箇所で見られた
×:シワが3箇所以上で見られた。
(輝線の観察)
上記巻きシワの観察で、全く巻きシワが見られなかったフィルムについて、下記の要領で輝線を観察した。
巻きシワの観察のために切り出した試料を用い、幅手方向の全幅に渡り等間隔で10箇所について輝線の観察を行った。
観察するフィルム面積は、1箇所に付き1cmで、顕微鏡はミツトヨ製SV−3100S4を使用して、倍率50倍で、反射光を当て観察した。
○:全ての試料で輝線が観察されなかった。
△:1〜2本の輝線が観察された。
×:3本以上の輝線が観察された。
(弾性率の測定)
23℃、55%RHの環境下で試料を24時間調湿し、JIS K7127に記載の方法に準じて、同環境下引っ張り試験器オリエンテック(株)社製テンシロンRTA−100を使用し、試験片の形状は1号形試験片で、試験速度は10mm/分の条件で測定した。
上記評価の結果を表3、4に示す。
表3、4より、本発明に係るアクリル樹脂(A)及びアクリル樹脂(B)を60:40〜99:1の質量比で含有する光学フィルムは、厚さ20μmの薄膜でも、巻きシワが無く、輝線が観察されないことが分かる。更に、本発明の光学フィルムは、弾性率を2.0〜5.0の範囲にすることが、巻きシワの防止及び輝線の防止に効果を発揮することが分かる。

Claims (5)

  1. アクリル樹脂(A)とアクリル樹脂(B)を60:40〜99:1の質量比で含有する光学フィルムであって、該アクリル樹脂(A)が下記一般式(1)で表され、重量平均分子量Mwが80000以上1000000以下であり、該アクリル樹脂(B)が下記一般式(2)で表され、重量平均分子量Mwが1000以上80000未満であることを特徴とする光学フィルム。
    一般式(1) −(MMA)p1−(X1)q1−(Y1)r1
    一般式(2) −(MMA)p2−(X2)q2−(Y2)r2
    (式中、MMAはメチルメタアクリレート由来の繰り返し単位であり、X1はアミド基を少なくとも一種有するMMAと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位であり、X2はMMAと共重合可能な、アミド基以外の−NR−基又は−OH基を含むモノマー由来の繰り返し単位であり、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Y1は、MMA及びX1と共重合可能で、アミド基を含まない、MMA以外のモノマー由来の繰り返し単位であり、Y2は、MMA及びX2と共重合可能で、−NR−基又は−OH基を含まない、MMA以外のモノマー由来の繰り返し単位であり、p1、q1、r1、p2、q2、r2はモル%であり、50≦p1≦99、1≦q1≦50、p1+q1+r1=100、1≦p2≦50、50≦q2≦99、p2+q2+r2=100である。)
  2. 弾性率が2.0〜5.0GPaであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記一般式(1)のr1が0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
  4. 前記一般式(2)のr2が0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
  5. 前記一般式(2)のX2が、−OH基を含むモノマー由来の繰り返し単位であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
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