JP5568965B2 - ロール状長尺炭素繊維シートの製造方法と、ロール状に巻き取られた長尺炭素繊維シート前駆体及び長尺炭素繊維シート - Google Patents

ロール状長尺炭素繊維シートの製造方法と、ロール状に巻き取られた長尺炭素繊維シート前駆体及び長尺炭素繊維シート Download PDF

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Description

本発明は、複数の炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートを連続して繋ぎ合わてロール状に巻き取る長尺炭素繊維シート前駆体又は長尺炭素繊維シートの製造方法と、そのロール状に巻き取られた長尺炭素繊維シート前駆体又は長尺炭素繊維シートに関する。本発明の炭素繊維シートは、断熱材、耐熱保護材、燃料電池等の電極材、通電材等の各種用途に好適である。
炭素繊維は耐熱性に優れていることから、断熱材、耐熱保護材として利用されており、また、電気伝導性を有していることから、燃料電池等の電極材や通電材料としての応用開発も進められている。
炭素繊維は、一般に、織物状、不織布状、ペーパー状等の炭素繊維シートに加工された状態で使用されている。炭素繊維シートは、炭素繊維シート前駆体を炭素化することで製造される。この炭素繊維シートを上記のような用途に利用するにあたり、再度150〜400℃程度の熱処理を施す場合がある。その再度の熱処理を連続して行うため、炭素繊維シートを長尺化する要望がある。例えば、特開2004−176233号公報(特許文献1)には、複数枚の炭素繊維シートの端部同士を重ね合わせ、所定の物性を有するポリアクリロニトリル系酸化繊維よりなる紡績糸やフィラメント束をもって端部側同士を繋ぎ合わせることで、炭素繊維シートを長尺化する方法が記載されている。具体的には、織物状の炭素繊維シートの端部同士を針を用いて縫い繋ぐ方法が記載されている。縫う方向を重なり部の表側と裏側で異ならせており、表側からは炭素繊維シートの長さ方向に対して斜め方向に所定の角度αで1回、裏側からは炭素繊維シートの長さ方向に平行に所定の長さで1回縫い、これを1セットとする。
また、産業分野によっては大型の炭素質材料の製造についての要望もある。例えば、特開昭61−155260号公報(特許文献2)には、炭素骨材(炭素繊維を含む)とフェノール樹脂等のバインダーとからなり、成形された炭素質材の端部同士を付け合わせ状態で、フェノール樹脂と炭素粒子からなる接着剤及び黒鉛シートを介して接合したのち、焼成して全体がカーボンとして一体化している大型の炭素質材料及び製造方法が記載されている。
更に、特開平5−301781号公報(特許文献3)には、炭素繊維シート化物などの炭素質又は炭素化可能な基材とフェノール樹脂などの炭素化可能な熱硬化樹脂とからなる炭素材用シート状接着材、或いは炭素質フィラーと炭素化可能な熱硬化樹脂とからなる炭素材用シート状接着材を用いて、炭素質材同士を接着した後、焼成して全体を炭素化させる炭素材の接着方法が記載されている。ここで、炭素質材として炭素繊維からなる織布や不織布などのシート状物にフェノール樹脂などをバインダーとして含浸させ、これを圧縮加熱成形した焼成前の炭素質成形材料(前駆体)が例示されている。
特開2004−176233号公報 特開昭61−155260号公報 特開平5−301781号公報
しかし、不織布状やペーパー状の炭素繊維シートは織物状のものに比べて脆く、針を用いて縫い繋ぐと、針を刺した箇所に亀裂が入ってしまう可能性が高く、その亀裂が進行して繋ぎ合わせ部が分断してしまうおそれがある。
一方、炭素繊維シートを製造する際には、炭素繊維シート前駆体を所定の温度に設定した熱処理炉内に走行させて炭素化する。しかし、炭素繊維シート前駆体はエンドレスではないため、炭素繊維シート前駆体ごとに熱処理炉の温度を一旦下げ、新たな炭素繊維シート前駆体を走行ラインに配置して、再度熱処理炉の温度を上げる必要がある。熱処理炉の温度は非常に高温であることから、これらの工程には長時間かかってしまい、結果として熱処理炉の稼働効率を大きく低下させることになる。したがって、炭素繊維シート前駆体を長尺化する要望もある。
炭素繊維シート前駆体を長尺化する方法として、特許文献1に記載の方法に準じて、炭素繊維シート前駆体の端部同士を、針を用いて縫い繋いだ場合、不織布状やペーパー状の炭素繊維シートの場合と同様に、針を刺した箇所に亀裂が入ってしまう可能性が高く、その亀裂が進行して繋ぎ合わせ部が分断してしまうおそれがある。
また、炭素繊維シート前駆体を長尺化する別な方法として、特許文献2に記載の方法に準じて、炭素繊維シート前駆体の端部同士を、接着剤で接合する方法が記載されているが、炭素繊維シート前駆体に少なくとも20mm程度の厚みが必要であり10mm以下の薄物シートを接続する場合には適さないおそれがあり、且つ黒鉛シートを接合面に介在させているためコスト高に繋がるおそれがある。
更に別の接着方法としては、特許文献3に記載の方法に準じて、炭素繊維シート前駆体の端部同士を、シート状接着材で接合する方法が記載されているが、長尺炭素繊維シート及び、連続焼成による低コスト化についての記載がない。
そこで、本発明は、保管や搬送が容易であるロール状に纏められた不織布状やペーパー状の長尺の炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートと、それらの炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートを低コストで効率的に連続して製造できる生産性に優れた製造方法を提供することを目的としている。
上述の課題は、本発明の以下の構成を備えたロール状に巻き取られた長尺の炭素繊維シートの製造方法と、ロール状に巻き取られた長尺の炭素繊維シート前駆体及び炭素繊維シートをもって解決される。
本発明のロール状に巻き取られた長尺の炭素繊維シートの製造方法の第1の基本構成は、紙管上をロール状に巻き取られた第一炭素繊維シート前駆体又は第一炭素繊維シートの端部に、炭素繊維前駆体とフェノール樹脂とからなるシート状接着材を配置する工程と;第一炭素繊維シート前駆体又は第一炭素繊維シートの端部に第二炭素繊維シート前駆体又は第二炭素繊維シートの端部を重ねる工程と;その重なり部を熱プレス装置で加熱加圧して接着し、繋ぎ合わせた後に第二炭素繊維シート前駆体又は第二炭素繊維シートをロール状の第一炭素繊維シート前駆体又は第一炭素繊維シートに巻取る工程と;前記繋ぎ合わされたロール状の炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートを巻き出しながら連続的に炭素化する工程とを含んでなるロール状長尺炭素繊維シートの製造方法にある。
また、本発明のロール状に巻き取られた長尺の炭素繊維シートの製造方法の第2の基本構成は、紙管上をロール状に巻き取られた第一炭素繊維シート前駆体又は第一炭素繊維シートの端部に、炭素繊維前駆体にフェノール樹脂と炭素材とからなる接着剤を塗布する工程と;第一炭素繊維シート前駆体又は第一炭素繊維シートの端部に第二炭素繊維シート前駆体又は第二炭素繊維シートの端部同士を重ねる工程と;その重なり部を熱プレス装置で加熱加圧して接着し、繋ぎ合わせた後に第二炭素繊維シート前駆体又は第二炭素繊維シートをロール状の第一炭素繊維シート前駆体又は第一炭素繊維シートに巻取る工程と;前記繋ぎ合わされた炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートを巻き出しながら連続的に炭素化する工程とを含んでなるロール状長尺炭素繊維シートの製造方法にある。
上記第1及び第2の基本構成にあって、好ましい態様によれば、前記シート状接着材又は前記接着剤を第一炭素繊維シート前駆体又は第一炭素繊維シートの端部にシート長手方向に対して不連続になるように配置又は塗布し、次いで前記第二炭素繊維シート前駆体又は第二炭素繊維シートの端部に重ねて接着したのち、その一方へとロール状に巻き取り、これを順次複数回繰り返し行って単一のロール状の長尺炭素繊維シート前駆体又はロール状の長尺炭素繊維シートを得るようにする。
更に本発明のロール状に巻き取られた長尺の炭素繊維シート前駆体は、炭素繊維シート前駆体端部同士が重ねられており、その重なり部が炭素繊維前駆体とフェノール樹脂とからなるシート状接着材層又はフェノール樹脂と炭素材からなる接着剤層を介して繋ぎ合わされ、当該接着材層又は接着剤層が炭素繊維シート前駆体の長手方向に対して不連続に配されている。
また、本発明のロール状に巻き取られた長尺の炭素繊維シートは、炭素繊維シート前駆体を連続的に炭素化した炭素繊維シートの端部同士が重ねられており、その重なり部が前記シート状接着材又はフェノール樹脂と炭素材からなる接着剤を炭素化してなる炭化物接着層を介して繋ぎ合わされ、前記炭化物接着層が炭素繊維シートの長手方向に対して不連続に配されている。
本発明に係る上記製造方法によれば、不織布状やペーパー状の薄手で脆弱な材質であっても高品質の長尺炭素繊維シートを安定した工程通過性をもって効率的にロール状に連続製造することができ、更に如何に長尺の連続する炭素繊維シート前駆体及び炭素繊維シート前駆体であっても、単一のロール状に巻き取られているため、その保管や、取り扱い、搬送などの作業が極めて容易になる。
本発明により得られる長尺の炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートの接続部の一例を示す平面図である。 本発明により得られる長尺の炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートの接続部の他例を示す平面図である。 本発明により得られる長尺の炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートの接続部の更に他例を示す平面図である。 本発明により得られる長尺の炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートの接続部の更に他例を示す平面図である。 本発明により得られる長尺の炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートの接続部の更に他例を示す平面図である。 本発明の第1実施形態に係る先行する第一炭素繊維シート前駆体に対する後続の第二炭素繊維シート前駆体の接続工程を示す部分平面図である。 本発明に掛かるロール状の長尺炭素繊維シート前駆体の製造工程例を示す説明図である。 本発明に係る長尺の炭素繊維シートのシート端部の重なり部における熱プレスの態様例を示す説明図である。 本発明に係るシート端部接続後の長尺のロール状炭素繊維シートの連続製造方法の一例を示す工程図である。
以下、図面を参照して本発明の代表的な実施の形態である炭素繊維シート前駆体/炭素繊維シートとそれらの製造方法を具体的に説明する。
まず、本発明に係る長尺の炭素繊維シート前駆体及び長尺の炭素繊維シートについて述べる。
<炭素繊維シート前駆体/炭素繊維シート>
図1〜図5は、比較的長尺の第一炭素繊維シート前駆体11の端部と、同じく比較的長尺の第二炭素繊維シート前駆体12の端部とを、両側端部が互いに揃えられた状態で長手方向に重ねられ、まっすぐに繋ぎ合わされたときの多様な接続部の例を平面図で示している。本実施形態にあっては、比較的長尺の第一炭素繊維シート前駆体11は予め紙管にロール状に巻き取られた状態にあり、比較的長尺の第二炭素繊維シート前駆体12も同じく別の紙管に予め巻き取られた状態にある。ただし、本発明にあっては、炭素繊維シート前駆体の端部と炭素繊維シートの端部とを後述するシート状接着材又は液状接着剤により繋ぎ合わせる場合をも含んでおり、その場合にも繋ぎ合わされた長尺シートは、炭素化工程を経て、シート状接着材又は液状接着剤とともに炭素化される。
第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12は、繋ぎ合わされた後に高温の焼成炉にて炭素化することにより炭素繊維シートとなるものであり、織物状、不織布状、ペーパー状のいずれでもよい。ここで、炭素繊維シート前駆体とは、炭素化される繊維シートの少なくとも一部の構成材が炭素化される以前の状態にあるときのシートを言い、炭素繊維シートとは、繊維シートの構成材の全てが炭素化されたのちの状態にあるときのシートを言う。そのため、炭素繊維シート前駆体の繊維材料には、炭素化される前の炭素化可能な繊維は勿論のこと、炭素化された繊維をも含んでいる。
本発明にあって、複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14及び最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15の形態はいずれも上記接続部を1以上有し、例えば紙管43に連続して巻き取られた単一のロール状に形成されている。なお、その接続部である先行する第一炭素繊維シート前駆体11と後続の第二炭素繊維シート前駆体12との端部同士の重なり部20は、炭素繊維前駆体にフェノール樹脂とからなるシート状接着材21a、又はフェノール樹脂と炭素材からなる接着剤21bを介して繋ぎ合わされ、最終的な焼成前であれば複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14となり、前記シート状接着材21a又は接着剤21bが炭素化された焼成後であれば最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15となり、これらがロール状に形成される。
本実施形態にあっては、図1〜図5に示すように、それぞれに上記第一炭素繊維シート前駆体11又は第二炭素繊維シート前駆体12の端部には、前記シート状接着材21a又は接着剤21bがシート長手方向に不連続に配されていることを特徴としている。
繋ぎ合わされる第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12は、炭素化可能な繊維又は炭素化された繊維を含むシートであり、織物状、不織布状、ペーパー状のいずれでもよい。第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12の長さ、厚さ及び目付は、使用目的に応じて適宜設定できるが、炭素化された炭素繊維シートが亀裂や破断なしに円滑にロール状に巻き取りを可能にするには、例えば、長さは50〜1500m、厚さは0.1〜10mm、目付は10〜200g/m2 であることが好ましい。
第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12又は最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15に含まれる炭素化可能な繊維又は炭素化された繊維の材質としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維、ピッチ系繊維、レーヨン系繊維、フェノール系繊維等を挙げることができる。得られた炭素繊維シートの曲げ強度及び引張強度が高くなることから、PAN系繊維又はピッチ系繊維を用いることが好ましく、PAN系繊維を用いることがより好ましい。炭素化可能な繊維又は炭素繊維は平均直径4〜10μmの短繊維であることが好ましい。
前述のような炭素繊維シート前駆体11,12,14や最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15の構成繊維は、炭素化工程を経て、炭素により結着された炭素繊維シートとなる。このような炭素繊維シートは、炭素化可能な繊維又は炭素化された繊維と炭素前駆体樹脂とを含んだ長尺な炭素繊維シート前駆体は連続的に炭素化することで得ることができる。
図6に示すように、繋ぎ合わされる第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12の各端部同士が重なり合った重なり部20の全体長さLは、第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12の端部同士を、前記シート状接着材21a又は前記接着剤21bによって接続することが可能な範囲にあれば適宜設定することができるが、100〜1500mmが好ましく、200〜1000mmであることがより好ましい。
本発明にあって、前記第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12同士、又はこれらの第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12(炭素繊維シート自体をも含む。)と炭素繊維シート、或いは炭素繊維シートの端部同士を重ね合わせた重なり部20には、シート長手方向に対して前記シート状接着材21a又は前記接着剤21bを不連続に配することで、ロール等で屈曲されても接続部が剥離し難く、品質の良い長尺の炭素繊維シートを裂断したり亀裂を生じさせないで連続して製造することが可能となる。
前記シート状接着材21a又は前記接着剤21bとしては、その後に行う工程を考慮して適宜選択できる。例えば、レゾール系、ノボラック系または、レゾールとノボラックのブレンドしたものを用いることができる。なお、本発明においては、例えば第一炭素繊維シート前駆体11の端部と第二炭素繊維シート前駆体12の端部との重なり部20が炭素化工程を外れることなく円滑に通過すればよいため、シート状接着材21a又は前記接着剤21bには残炭率の高い熱硬化樹脂が好ましく、特にフェノール樹脂が好適である。
また、前記シート状接着材21aに使用される炭素繊維前駆体についても適宜選択できる。例えば、織物状、不織布状、ペーパー状などの各種シートを用いることができ、シート同士の繋ぎ合わせ工程や最終製品の製造工程にて、各種ロールによる屈曲などに耐え得るため、厚さは0.1〜5mm、目付は10〜100g/m2 であることが好ましい。
また、前記接着剤21bに使用される炭素材においても適宜選択できる。例えば、黒鉛粉、カーボンブラック、ミルドファイバー等を用いることができ、塗布厚については塗布層ごとに50〜100μm程度で均一に塗布することが好ましい。
また、炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートの端部を前記シート状接着材21a又は前記接着剤21bで接続した重なり部20を、炭素化工程にて連続焼成する際に、ロール等で屈曲された場合、ロール状に巻き取る場合に重なり部20で剥離することを抑制し、且つ柔軟性をもたせるためには、例えば図1〜図6に示すように、前記シート状接着材21a、前記接着剤21b及び上記炭化物接着層が、炭素繊維シート前駆体のシート長手方向に対して不連続に形成されていることが肝要である。
長さLをもつ重なり部20におけるシート状接着材21a又は接着剤21bの配置はシート長手方向に不連続で2〜30箇所とすればよく、その長手方向の各シート状接着材21a又は接着剤21bの長さL1は10mm〜700mmであることが好ましく、20mm〜500mmがより好ましい。シート状接着材21a又は前記接着剤21b間の間隙L2については、5mm〜1000mmが好ましく、10mm〜500mmがより好ましい。また各シート先端におけるシート状接着材21a又は前記接着剤21bの非存在部分のシート長手方向の長さL3については0mm<L3<50mmとすることが好ましい。
また、図3及び図4に示すように、前記シート状接着材21a又は前記接着剤21bはシート幅方向にも連続せず所望の間隔で不連続に配置してもよく、この場合のシート状接着材21a又は前記接着剤21bは2〜5箇所に分割することができ、また同時にその配置形態もマトリックス状や千鳥状など多様である。
更に本発明にあって、図5に示すように、シート状接着材21a又は接着剤21bを上記重なり部20の幅方向中央部に配するとともに、重なり部20における各炭素繊維シート前駆体又は炭素繊維シートの各端部の2つの角部のうち、少なくとも一方の角部をシート幅方向の長さL4、シート長手方向の長さL5の三角形状に切り落とすことが好ましい。炭素繊維シート前駆体の側端部の反りは、その角部においてより発生しやすいので、その角部を切り落とすことで、反りによる影響を低減することができる。その場合は、炉内走行時やロール状の巻取り時などに他部材と引掛かりにくくなるため、炭素繊維シート前駆体の中心付近のみ前記シート状接着材21a又は前記接着剤21bで接続することができる。
次に、本発明に係るロール状の炭素繊維シート前駆体/炭素繊維シートの連続製造方法の代表的な実施形態を図面を参照しながら具体的に説明する。
<炭素繊維シート前駆体/炭素繊維シートの製造方法>
本発明に係る複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14及び最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15は、例えば、繋ぎ合わせる2以上のロール状の炭素繊維シートを予め製造しておき、図6に示すように、それらを上述の構成となるように上記シート状接着材21a又は前記接着剤21bで繋ぎ合わせたのち、図7に示すように、先に製造された複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14上に直接巻き取り、或いは図8に示すように、前記シート状接着材21a又は接着剤21bで複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14を、図9に示すように、連続的に熱処理して製造することができる。この方法によれば、炭素化を行う熱処理炉の稼働効率を高めることができるばかりでなく、最終製品である長尺の炭素繊維シートをロール状に形成できるため、以降の製品の取り扱いが容易となり、二次加工などの作業効率や搬送効率などを高めることが可能となる。
以下、この製造方法について図7〜図9に基づいて具体的に説明する。
なお、複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14は、製造される炭素繊維シートの用途に応じて、図7に示すように必要枚の数炭素繊維シート前駆体14a,14b,14c……を繋ぎ合されてもよく、各繋ぎ合わせ箇所における繋ぎ合わせの寸法や形態は独立して設定できる。
炭素繊維シート前駆体は、炭素化することにより炭素繊維シートとなるものであり、織物状、不織布状、ペーパー状のいずれでもよく、特に本発明における複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14には、シート構成材料である繊維が炭素化されていない場合は当然として、予め炭素化されている場合をも含み、更には繋ぎ合わされるシート自体が予め炭素化され、それらの炭素繊維シート同士が上記シート状接着材21a又は前記接着剤21bにより接続された長尺の未炭素化繊維シートをも含んでいる。
炭素繊維シート前駆体の長さ、厚さ及び目付は、製造される炭素繊維シートの使用目的に応じて適宜設定できるが、例えば既述したように、熱処理工程や巻取り工程におけるシートの損傷を回避するため、長さは1〜1500m、厚さは0.1〜10mm、目付は10〜200g/m2 であることが好ましい。
繋ぎ合わされる第一及び第二の炭素繊維シート前駆体11,12としては、例えば、炭素化される前の繊維又は炭素化がなされた繊維と炭素化前の結着樹脂である炭素前駆体樹脂とを含んでなる炭素繊維シート前駆体が挙げられる。この炭素繊維シート前駆体を結着樹脂とともに炭素化することで、炭素繊維が炭素により結着されている炭素繊維シートとなる。
炭素繊維シートの主な構成材料である炭素化可能な繊維又は炭素化された繊維の種類としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維、ピッチ系繊維、レーヨン系繊維、フェノール系繊維等を用いることができる。得られた炭素繊維シートの曲げ強度及び引張強度が高くなることから、PAN系繊維又はピッチ系繊維を用いることが好ましく、特にPAN系炭素繊維を用いることがより好ましい。材料繊維は平均直径4〜10μmの短繊維であることが好ましい。
上記炭素前駆体樹脂は、炭素繊維間を結着する目的で使用されるものであり、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ピッチ、澱粉等を用いることができる。このうち、フェノール樹脂やピッチは、炭素化のための熱処理により炭化物となり、炭素繊維シート中の炭素繊維間を結着する機能を発揮する。また、澱粉やPVAは、炭素繊維シート前駆体を得る上での通過性を高める機能を発揮する。
炭素化の可能な繊維と炭素前駆体樹脂とを含んでなる炭素繊維シート前駆体の場合、繊維の含有比率は10〜90質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましく、30〜50質量%がさらに好ましい。繊維の含有比率が10質量%を下回ると、得られる炭素繊維シートの引張強さが低下したり、脆く折れやすくなる傾向がある。また、繊維の含有比率が90wt%を超えると、得られる炭素繊維シートが嵩高になり、引張強度や圧縮強度が低下する傾向があり、例えば燃料電池の電極用としても適さない場合がある。
炭素化可能な繊維と炭素前駆体樹脂とを含んでなる炭素繊維シート前駆体には、繊維及び炭素前駆体樹脂の外に、炭素粉末、金属粉末、無機粉末、金属繊維、無機繊維等を含んでもよい。得られる炭素繊維シートを燃料電池電極基材として用いる場合には、導電性向上、不純物低減のために、炭素粉末を含んでいることが好ましい。
炭素繊維シート前駆体を作製する方法としては、液体の媒体中に繊維を分散させて抄造する湿式法や、空気中に繊維を分散させて降り積もらせる乾式法などの抄紙方法が適用できるが、中でも湿式法が好ましい。繊維が単繊維に分散するのを助け、分散した単繊維が再び収束を防止するのを防ぐためにも、適切な量の炭素前駆体樹脂と共に湿式抄紙することが好ましい。
炭素可能な繊維と炭素前駆体樹脂とを混合する方法としては、水中で攪拌分散させる方法と、直接混ぜ込む方法があるが、均一に分散させるためには水中で攪拌分散させる方法が好ましい。このように繊維に炭素前駆体樹脂を混ぜることにより、炭素繊維シート前駆体の強度を保持し、その製造途中で炭素繊維シート前駆体から繊維が剥離したり、繊維の配向が変化したりするのを防止することができる。
炭素繊維シート前駆体の作製は、連続で行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。生産性及び機械的強度の観点からは、連続で行うことが好ましい。
なお、後述するように、炭素繊維シート前駆体を複数の温度で熱処理する場合、途中の段階まで熱処理したシートも炭素繊維シート前駆体に含まれるものとする。
繋ぎ合わせる炭素繊維シート前駆体の端部同士を重ねて形成した重なり部20の全体長さLは、既述したように、シート状接着材21a又は接着剤21bで繋ぎ合わせることが可能な範囲であれば適宜設定できるが、このとき熱処理炉内での引っ掛かりを防止する観点から、先行する炭素繊維シート前駆体が下側で、それに続く炭素繊維シート前駆体が上側になるように重ねることが好ましい。
例えば、図7に示す様に、第1シャフト41に取付けられたロール状の炭素繊維シート前駆体14a,14b,14c…のシート端部と第2シャフト42に取付けてある炭素繊維シート前駆体14の端部とを重ね、熱プレス装置35を用いて複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14と炭素繊維シート前駆体14a,14b,14c…とを順次接続する。なお、その際に、先行する複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14の端部が上側になるように後続のロール状の炭素繊維シート前駆体14a,14b,14c…の端部を重ね接続する。これらの作業を複数回繰り返し行い、複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14を作製することが好ましい。
また、バッチプレス装置を使用する場合、図8(b)に示すように、上下部プレス板35a,35bのプレス面は平面でも良いが、同図(a)に示すように、上部プレス板35aのプレス面を凸、下部プレス板35bのプレス面を凹にすることによって、上記炭素繊維シート前駆体を接続する際にシート端部を揃えやすいため好ましい。
熱プレス装置35の条件として、加熱温度は使用する樹脂によって異なるが200〜300℃が好ましい。成型圧力に関しては、前記シート状接着材21a又は前記接着剤21bが剥がれない程度に加圧されていればよいため0.5MPa〜10MPaの圧力で加圧することが好ましい。加熱加圧成型の時間は、30秒〜10分であることが好ましい。
図9に示すように、複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14を炭素化する。炭素化は、繋ぎ合わされた炭素繊維シート前駆体14を連続して引き出しながら熱処理炉内に走行させることで行うことができる。複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14の炭素化は、複数の温度で熱処理することにより行うことが好ましい。途中の段階まで熱処理をした炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた炭素繊維シート前駆体の炭素化は、その後の段階からの熱処理を行えばよい。
炭素化処理として、炭素繊維シート前駆体を1000℃以上の温度で炭素化処理する。この炭素化処理により炭素前駆体樹脂が炭素化され、炭素繊維シートを得ることができる。炭素化処理の温度は1000〜3000℃が好ましく、1000〜2200℃がより好ましい。炭素化処理は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。炭素化処理の時間は10分〜1時間が好ましい。炭素化処理前に、炭素繊維シート前駆体を前炭素化炉内で300〜800℃の温度でもって前炭素化処理することもできる。前炭素化処理は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
上記のように複数の温度で熱処理することが好ましいことから、炭素化を行う熱処理炉である前熱処理炉31及び焼成炉32は、異なる温度に設定可能な複数の領域を有することが好ましい。複数の領域は、1つの熱処理炉内に設置されていてもよいし、複数の熱処理炉を組み合わせてもよい。
炭素化炉内及び前炭素化炉内には、図示を省略するが、屈曲部材が設けられていることが好ましい。そして、炭素繊維シート前駆体を前記屈曲部材に接触させながら熱処理炉内を走行させることが好ましい。こうすることで、得られる炭素繊維シートにシワや凹凸が発生しにくくなる。
屈曲部材は、例えば、熱処理炉内の炉床、炉天井、又は炉床と炉天井との間に設けることができる。炭素繊維シート前駆体の全幅と屈曲部材を接触させるため、炭素繊維シート前駆体の進行方向と交差する方向に設けることが好ましい。その観点から、棒状の屈曲部材が好ましいが、板状の屈曲部材でもよい。なお、棒状とは、断面の長径と短径の比が4倍以内であることとする。棒状とすることで、屈曲部材の高さを低く、かつ炭素繊維シート前駆体との接触長を短くすることができ、炭素繊維シート前駆体の摩耗を防止することができる。屈曲部材の素材としては、安価で不活性雰囲気中で化学的に安定な炭素製のものを用いることが好ましい。
接続前の第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12は200℃以上300℃未満の温度で酸化処理することが好ましい。この酸化処理により、炭素化が可能な繊維又は炭素化された繊維を炭素前駆体樹脂によってより融着させ、且つ炭素前駆体樹脂の炭素化率を向上させることができる。酸化処理の温度は240〜270℃がより好ましい。酸化処理は大気雰囲気下で行うことが好ましい。酸化処理の時間は10分〜2時間が好ましく、10分〜90分がさらに好ましい。
また、接続前の第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12を300℃未満の温度で加熱加圧成型することが好ましい。こうすることで、シート構成繊維を炭素前駆体樹脂で融着させ、得られる炭素繊維シートの厚みムラを低減できる。加熱加圧成型は、炭素繊維シート前駆体を均等に加熱加圧成型できる技術であればよく、例えば、上下両面から平滑な剛板にて熱プレスする方法でもよく、連続ベルトプレス装置を用いて行う方法でもよい。
加熱温度は、効果的に表面を平滑にするために、300℃未満が好ましく、200〜270℃がより好ましい。成型圧力に関しては、炭素前駆体樹脂の比率が多い場合は、成型圧力が低くても炭素繊維シート前駆体の表面を平滑にすることが容易である。このとき必要以上にプレス圧を高くすることは、成型時に炭素繊維を破壊する、得られる炭素繊維シートの組織が緻密になりすぎるなどの問題が生じる場合がある。したがって、0.02MPa〜10MPaの圧力で加圧することが好ましい。加熱加圧成型の時間は、30秒〜10分が好ましい。
剛板に挟んで、又連続ベルト装置で炭素繊維シート前駆体の加熱加圧成型を行うときは、剛板やベルトに炭素前駆体樹脂などが付着しないように予め剥離剤を塗っておくか、炭素繊維シート前駆体と剛板やベルトとの間に離型紙を挟んで行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
炭素化可能な短繊維として、平均繊維径が7μm、平均繊維長が3mmのポリアクリロニトリル(PAN)系繊維(三菱レイヨン株式会社製)と平均繊維径が4μm、平均繊維長が3mmのPAN系繊維(三菱レイヨン株式会社製)を70:30(質量比)で混合した短繊維を用いた。バインダー繊維として、1.1dtex、カット長5mmのビニロン短繊維(ユニチカ株式会社製ユニチカビニロンF)と、ポリビニルアルコール(PVA)の短繊維(クラレ株式会社製VBP105−1カット長3mm)を用意した。
先ず、PAN系短繊維を湿式短網連続抄紙装置のスラリータンクで水中に均一に分散して単繊維に解繊し、十分に分散したところにPVA短繊維及びビニロン短繊維をPAN系短繊維100質量部に対して、それぞれ18質量部、32質量部となるように均一に分散し、これを通常の長網抄紙法を使って目付け40g/ m2 で長さ150mの炭素化可能な繊維紙を得た。
次に、フェノール樹脂(DIC株式会社製フェノライトJ−325)を40質量%含むフェノール樹脂のメタノール溶液が付着したローラーに炭素繊維紙を均一に片面ずつ接触させた後、連続的に熱風を吹きかけ乾燥して、目付け64g/ m2 の樹脂付着繊維紙を得た。この樹脂付着繊維紙を長網に接していた面が外側を向くようにそれぞれ2枚貼り合せた後、一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置(ダブルベルトプレス装置:DBP)を用いて連続的に加熱し、表面が平滑化されたシート厚み0.30mmで、幅300mm、長さ100mの表面平滑化シートを得た。なお、このとき樹脂付着繊維紙がベルトに貼り付かないように2枚の離型紙の間に挟んで通した。
その後、得られた表面平滑化シートを、窒素ガス雰囲気とした、500℃の連続前熱処理炉中で5分間加熱して前熱処理を行い、フェノール樹脂の硬化及び前炭素化を行った。引き続き、得られた樹脂硬化シートを窒素ガス雰囲気中、2000℃の連続焼成炉において5分間加熱し、炭素化して多孔質炭素繊維シート36を連続的に得て、外径6インチの円筒型紙管43に巻き取った。この多孔質炭素繊維シート36は薄膜化されているが、平滑で取り扱いやすく、曲げ強度及びガス透過性に優れた電極基材となる。
本実施形態にあっては、図7に示すように、第1シャフト41にロール状の炭素繊維シート前駆体14aを装着し、第2シャフト42に複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14を装着する。複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14の端部の裏面に短冊状のシート状接着材21aをシート長手方向に不連続になるように、前記シート状接着材21aの両端部22を5mm幅の両面テープで仮留めした。
複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14の端部と炭素繊維シート前駆体14aの端部とを重ね、熱プレス装置35を用い250℃×2分、0.5MPaの条件で加熱加圧して接続した。次いで、第2シャフト42側のロール状炭素繊維シート前駆体14に、同じくロール状の炭素繊維シート前駆体14aを巻取った。以下、この作業を数回繰り返し行い、500m(100m×5)の炭素繊維シート前駆体14〜14c,…を繋ぎ合わせて巻取った単一の巻体を得た。
別の方法として、第1シャフト41に複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14を装着し、第2シャフト42にロール状炭素繊維シート前駆体14aを装着する。複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14の端部の裏面にシート長手方向に不連続となるように前記接着剤21bを塗布した。ロール状炭素繊維シート前駆体14のシート端部とロール状炭素繊維シート前駆体14aのシート端部とを重ね、熱プレス装置35を用いて250℃×2分、0.5MPaの条件で加熱加圧して両シートを接続した。
次いで、第2シャフト42側の複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14に第1シャフト側のロール状炭素繊維シート前駆体14aのシートを引き出しながら巻取った。以下、この作業を数回繰り返し行い、500m(100m×5)の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせて単一に巻き取り巻体を得た。
続いて、前記炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせて単一に巻き取ったロール状の単一の複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体14を炭素化工程の巻出し部34に装着したあと、前熱処理炉31に導入して、窒素ガス雰囲気で500℃の連続前熱処理炉31中で5分間加熱して炭素化が可能な熱硬化樹脂を硬化させると同時に前炭素化を行い、前熱処理炉31を通過したシート状の多孔質炭素繊維シート36は、引き続いて窒素ガス雰囲気中、2000℃の連続焼成炉32に導入されて炭化されたのち、巻取り部37においてロール状に巻き取り、最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15を得た。
この最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15が所定の長さに達したとき、繋ぎ合わされた第一及び第二炭素繊維シート前駆体11,12の重なり部20が連続焼成炉32の出側ニップロール38を出た処でシートを切断し、巻取り部37に巻き上げられた最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15を取り除き、新たな外径6インチの円筒型紙管43を巻取り部37に装着した後に、連続焼成炉32の出側ニップロール38の上流側に残された多孔質炭素繊維シート36を巻き取って、最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート15を得た。
なお実施例1〜4では、目付け64g/ m2 の前記樹脂付着繊維紙を任意の寸法に切り取った得たシート状接着材21aを使用し、また実施例5〜8にあっては、上記接着剤21bとしてフェノール樹脂(DIC株式会社製フェノライトJ−325)を70質量%とカーボン粉末30質量%を混合し、均一に撹拌したのち50℃の熱風乾燥機に15分程度滞在させて、メタノールを飛ばしたものを使用した。実施例1〜4と実施例5〜8とは、実施例1〜4が接続部にシート状接着材21aを使用し、実施例5〜8が接続部に接着剤21bを使用する以外は、実施例1と実施例5、実施例2と実施例6、実施例3と実施例7、実施例4と実施例8は、それぞれ対応して同一の条件としている。その条件を表1及び表2に示す。表1及び表2は、表面が平滑化されたシート厚み0.30mmの炭素繊維シート前駆体を用い、実施例1〜8に基づく接続部条件の下での焼成工程における工程通過性を示している。
Figure 0005568965
Figure 0005568965
表1及び表2から理解できるように、実施例1〜8における工程通過性は、それぞれ良好であることを確認した。但し、長手方向に対して前記シート状接着材と前記接着剤とを不連続に配置していない実施例4及び実施例8については、シート接続部の破損が時々発生する事ことを確認した。
以上述べたとおり、本発明による長尺炭素繊維シートの製造方法は、比較的短い前記炭素繊維シート前駆体の端部同士を接着し、繋ぎ合わせることにより、比較的長いロール状の炭素繊維シート前駆体を得ることが可能となる。更に、接続部のシート長手方向に対して前記シート状接着材21a又は前記接着剤21bを不連続に配することによりロール状に巻き上げるとき、炉内ガイドロール(ガイドバー)などを通過する際のシート端部同士の接続部の破損を抑制すると共に、焼成工程における生産性向上が大幅に期待できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されないことは、以上の説明からも理解できるところであろう。
11 第一炭素繊維シート前駆体
12 第二炭素繊維シート前駆体
14 複数の炭素繊維シート前駆体を繋ぎ合わせた長尺のロール状炭素繊維シート前駆体
15 最終製品としての長尺のロール状炭素繊維シート
20 重なり部
21a シート状接着材
21b 接着剤
22 仮留め部(両端部)
31 前熱処理炉
32 焼成炉
34 巻出し部
35 熱プレス装置
35a 上部プレス板
35b 下部プレス板
36 多孔質炭素繊維シート
37 巻取り部
38 ニップロール
41 第1シャフト
42 第2シャフト
43 紙管

Claims (6)

  1. ロール状に巻き取られた第一炭素繊維シート前駆体の端部に又はロール状に巻き取られた第一炭素繊維シートの端部に、炭素繊維前駆体とフェノール樹脂とからなるシート状接着材を配置する工程と;
    前記第一炭素繊維シート前駆体の端部又は前記第一炭素繊維シートの端部に第二炭素繊維シート前駆体の端部又は第二炭素繊維シートの端部を重ね重なり部をつくる工程と;
    その重なり部を熱プレス装置で加熱加圧して、繋ぎ合わせた後に、第二炭素繊維シート前駆体又は第二炭素繊維シートをロール状に巻き取られた第一炭素繊維シート前駆体上に又はロール状に巻き取られた第一炭素繊維シート上に巻き取り、繋ぎ合わされてロール状に巻き取られた巻き取り体をつくる工程と;
    前記繋ぎ合わされてロール状に巻き取られた巻き取り体から巻き出しながら連続的に炭素化して巻き取る工程と;
    を含んでなるロール状長尺炭素繊維シートの製造方法。
  2. 紙管上をロール状に巻き取られた第一炭素繊維シート前駆体の端部に又はロール状に巻き取られた第一炭素繊維シートの端部にフェノール樹脂と炭素材とからなる接着剤を塗布する工程と;
    前記第一炭素繊維シート前駆体の端部又は第一炭素繊維シートの端部に第二炭素繊維シート前駆体の端部又は第二炭素繊維シートの端部を重ね重なり部をつくる工程と;
    その重なり部を熱プレス装置で加熱加圧して、繋ぎ合わせた後に第二炭素繊維シート前駆体又は第二炭素繊維シートをロール状に巻き取られた第一炭素繊維シート前駆体上に又はロール状に巻き取られた第一炭素繊維シート上に巻き取り、繋ぎ合わされてロール状に巻き取られた巻き取り体をつくる工程と;
    前記繋ぎ合わされてロール状に巻き取られた巻き取り体から巻き出しながら連続的に炭素化して巻き取る工程と;
    を含んでなるロール状長尺炭素繊維シートの製造方法。
  3. 前記シート状接着材を第一炭素繊維シート前駆体の端部に又は第一炭素繊維シートの端部にシート長手方向に対して不連続となるように配置し、次いで前記第二炭素繊維シート前駆体の端部に又は前記第二炭素繊維シートの端部に重ねて接着したのち、その一方にロール状に巻き取り、これを順次複数回繰り返し行って単一のロール状炭素繊維シート前駆体又はロール状炭素繊維シートを得ることを含んでなる請求項1記載の長尺炭素繊維シートの製造方法。
  4. 前記接着剤を第一炭素繊維シート前駆体の端部に又は第一炭素繊維シートの端部にシート長手方向に対して不連続となるように塗布し、次いで前記第二炭素繊維シート前駆体の端部に又は前記第二炭素繊維シートの端部に重ねて接着したのち、その一方にロール状に巻き取り、これを順次複数回繰り返し行って単一のロール状炭素繊維シート前駆体又はロール状炭素繊維シートを得ることを含んでなる請求項2記載の長尺炭素繊維シートの製造方法。
  5. 炭素繊維シート前駆体端部同士が重なっており、その重なり部が炭素繊維前駆体とフェノール樹脂とからなるシート状接着材層又はフェノール樹脂と炭素材からなる接着剤層を介して繋ぎ合わされてロール状に巻き取られた長尺炭素繊維シート前駆体であって、前記重なり部の接着層が炭素繊維シート前駆体の長手方向に対して不連続に配されてなるロール状の長尺炭素繊維シート前駆体。
  6. 前記炭素繊維シート前駆体を連続的に炭素化してなる炭素繊維シートの端部同士が重なっており、その重なり部が前記シート状接着材又はフェノール樹脂と炭素材からなる接着剤を炭素化してなる炭化物接着層を介して繋ぎ合わされてロール状に巻き取られた長尺炭素繊維シートであって、前記炭化物接着層が炭素繊維シートの長手方向に対して不連続に配されてなるロール状の長尺炭素繊維シート。
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