JP5568942B2 - 抗菌部材 - Google Patents
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そこで、上述の金属イオンを供給する抗菌部材として、例えば特許文献1、2に示すように、銀、銅、亜鉛等の金属を、イオン交換により結晶質のゼオライトに担持させたものや、イオン交換によってアルミノ珪酸塩に担持させたものが提案されている。
また、特許文献3には、多孔質のシリカの細孔内に、高い殺菌性能を有するリン酸銀化合物を担持させたものが提案されている。さらに、特許文献4には、シリカゲルの表面に、金属イオンを保持する抗菌性アルミノ珪酸塩層を形成したものが提案されている。
すなわち、従来のように、セラミックス等の多孔質材に金属イオン供給物質等を担持させたものでは、長期間にわたって安定した抗菌作用を十分に奏功せしめることが困難であった。
よって、本発明の抗菌部材によれば、長期間にわたって安定した抗菌作用を十分に奏功せしめることが可能となる。
さらに、前記焼結体が、Pを0.01wt%以上添加されたAg合金で構成されているので、焼結体の表面に、少なくともAgとPとOとを含有する化合物を数多く露呈させることができ、水等の抗菌処理を行うことができる。なお、Pの含有量が0.1wt%を超える場合には、この焼結体を粉末焼結する際に、PとAgの化合物がAg粉末の表面に過度に存在することになり、焼結性が著しく阻害されることになる。このため、Pの含有量は0.1wt%以下に設定する必要がある。
この場合、Agイオンの溶出速度を向上させる化合物の数が確保され、Agイオンの溶出を確実に促進することができる。また、長期間にわたって安定してAgイオンを溶出することが可能となる。
この場合、例えばこの抗菌部材を長期間にわたって水中に浸漬した場合に、焼結体の表面に露呈された前記化合物の露出面積(水との接触面積)が減少しても、粒界部分から新たな化合物が露呈されることになる。よって、長期間にわたって安定してAgイオンを溶出することが可能となり、安定した抗菌作用を奏功せしめることが可能となる。
焼結体の比表面積を0.001m2/g以上0.2m2/g以下の範囲内に設定することにより、焼結体は多孔質体を構成することになる。ここで、焼結体の比表面積が0.001m2/g未満であると、水との接触面積が比較的小さくなり、効率的にAgイオンを溶出させることができない。また、Agイオンの溶出量を確保するためには、銀の重量を増加させる必要がある。一方、焼結体の比表面積が0.2m2/gを超えると、剛性が不十分となり、焼結体が崩壊してしまうおそれがある。また、焼結体を焼結する前の状態において、構造体として保持されなくなる。
このため、焼結体の比表面積は、0.001m2/g以上0.2m2/g以下の範囲内に設定することが好ましい。
まず、本発明の第1の実施形態である抗菌部材について、図1から図4を用いて説明する。
本発明の第1の実施形態である抗菌部材10は、銀を主成分とする粉末を焼成した焼結体であり、本実施形態では板状をなしている。
この抗菌部材10は、0.01wt%以上0.1wt%以下のPを含み、残部がAgと不可避不純物とからなるAg合金で構成されている。なお、本実施形態では、さらに、Pの含有量を0.03wt%以上0.06wt%以下に限定している。
さらに、抗菌部材10の粒界部分にも、少なくともAgとPとOとを含有する化合物が配置されている。
まず、0.01wt%以上0.1wt%以下(本実施形態では、0.03wt%以上0.06wt%以下)のPを含み、残部がAgと不可避不純物とからなるAg合金からなる金属粉末を準備する。この銀粉末は、水アトマイズ法、プラズマアトマイズ法等のアトマイズ法、酸化還元法、カルボニル反応法等の公知の手段によって製造することが可能である。なお、水アトマイズ法によって金属粉末を作製する場合には、溶湯にリン酸銀粉末を添加することによってP量を調整することが可能である。
ここで、本実施形態では、Ag合金からなる金属粉末の粒径を、0.5μm以上30μm以下とした。
前述のようにして得られた金属粉末に、バインダ(水溶性樹脂結合剤)、水、と、必要に応じて可塑剤を混合してスラリーを作製する。
ここで、バインダ(水溶性樹脂結合剤)としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、エチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを使用することが可能である。
この成形装置20は、スラリーSを貯留するホッパ21と、ホッパ21から供給されたスラリーSを移送するキャリアシート22と、キャリアシート22を支持するローラ23と、キャリアシート22上に載置されたスラリーSを所定の厚さに成形するブレード24と、成形されたスラリーSを乾燥させる乾燥槽26と、を備えている。
まず、均一化したスラリーSをホッパ21に貯留しておき、このホッパ21からキャリアシート22上にスラリーSを供給する。このキャリアシート22は、ローラ23によって後段側(図4において右側)に向けて移送される。キャリアシート22上に載置されたスラリーSは、キャリアシート22とともに移送され、ブレード24によって薄板状に成形される。本実施形態では、幅20〜300mm、厚さ0.3〜3mmの薄板状に成形するように構成されている。
薄板状に成形されたスラリーSは、キャリアシート22とともに乾燥槽26へと移送される。この乾燥槽26内は、例えば温度50〜70℃に調整されており、薄板状に成形されたスラリーSが、この乾燥槽26内を、例えば10〜20分かけて通過する。このように乾燥槽26内を通過する際に、薄板状に成形されたスラリーSが乾燥される。これにより、グリーンシートGが得られることになる。
次に、成形装置20によって成形されたグリーンシートGを、脱脂炉に装入し、例えば、大気雰囲気で、450〜550℃、25〜30分間保持する。これにより、グリーンシートに含まれる脂分(有機バインダー等)が揮発除去される。
そして、脱脂されたグリーンシートGを、焼結炉内に装入し、例えば、大気雰囲気で、800〜900℃、60〜120分間保持し、グリーンシートGを焼結させる。この焼結工程S6において、Ag、P,Oを含む化合物からなる粒状物質15が、板状をなす焼結体の表面に露呈されることになる。
これにより、板状をなす焼結体からなる抗菌部材10が製造される。
よって、安定して金属イオンを供給でき、長期間にわたって安定した抗菌作用を十分に奏功せしめることができる。
さらに、本実施形態では、Pの含有量が、0.03wt%以上0.06wt%以下に限定されていることから、上述の作用効果を確実に奏功せしめることができる。
本発明の第2の実施形態である抗菌部材110は、銀を主成分とする粉末を焼成した焼結体であり、本実施形態では、図5に示すように、相互に連通状態の空孔部111が入り込むことによって、スポンジ状をなす三次元網目構造とされた骨格部112を有する多孔質焼結体とされている。
また、この多孔質焼結体(抗菌部材110)の比表面積は、0.001m2/g以上0.2m2/g以下の範囲内に設定されている。
まず、0.01wt%以上0.1wt%以下(本実施形態では、0.03wt%以上0.06wt%以下)のPを含み、残部がAgと不可避不純物とからなるAg合金からなる金属粉末を準備する。この銀粉末は、水アトマイズ法、プラズマアトマイズ法等のアトマイズ法、酸化還元法、カルボニル反応法等の公知の手段によって製造することが可能である。なお、水アトマイズ法によって金属粉末を作製する場合には、溶湯にリン酸銀粉末を添加することによってP量を調整することが可能である。
ここで、本実施形態では、Ag合金からなる金属粉末の粒径を、0.5μm以上30μm以下とした。
前述のようにして得られた金属粉末に、バインダ(水溶性樹脂結合剤)、発泡剤、水、と、必要に応じて界面活性剤や可塑剤を混合して発泡性のスラリーを作製する。
ここで、バインダ(水溶性樹脂結合剤)としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、エチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを使用することが可能である。
これらの原料を、金属粉末:5〜80質量%、バインダー:0.5〜20質量%、発泡剤:0.05〜1質量%、可塑剤:0.1〜15質量%、界面活性剤:0.05〜50質量%、塩化カルシウム:0〜3質量%、水:残部、の比率で混合して、スラリーSを作製した。
この成形装置120は、スラリーSを貯留するホッパ121と、ホッパ121から供給されたスラリーSを移送するキャリアシート122と、キャリアシート122を支持するローラ123と、キャリアシート122上に載置されたスラリーSを所定の厚さに成形するブレード124と、成形されたスラリーSを発泡させる発泡槽125と、発泡したスラリーを乾燥させる乾燥槽126と、を備えている。
まず、均一化したスラリーSをホッパ121に貯留しておき、このホッパ121からキャリアシート122上にスラリーSを供給する。このキャリアシート122は、ローラ123によって後段側(図7において右側)に向けて移送される。キャリアシート122上に載置されたスラリーSは、キャリアシート122とともに移送され、ブレード124によって薄板状に成形される。本実施形態では、幅20〜300mm、厚さ0.3〜3mmの薄板状に成形するように構成されている。
薄板状に成形されたスラリーSは、キャリアシート122とともに、発泡槽125へと移送される。この発泡槽125内は、例えば温度30〜40℃、湿度75〜95%に調整されており、薄板状に成形されたスラリーSは、この発泡槽125内を、例えば10〜20分かけて通過する。このように発泡槽125内を通過する際に、スラリーS中の発泡剤が発泡することになる。
発泡したスラリーSは、さらにキャリアシート122とともに乾燥槽126へと移送される。この乾燥槽126内は、例えば温度50〜70℃に調整されており、発泡したスラリーSが、この乾燥槽126内を、例えば10〜20分かけて通過する。このように乾燥槽126内を通過する際に、発泡したスラリーSが乾燥される。
これにより、スポンジ状のグリーンシートGが得られることになる。
次に、成形装置120によって成形されたスポンジ状のグリーンシートGを、脱脂炉に装入し、例えば、大気雰囲気で、450〜550℃、25〜30分間保持する。これにより、グリーンシートに含まれる脂分(有機バインダー等)が揮発除去される。
そして、脱脂されたグリーンシートGを、焼結炉内に装入し、例えば、大気雰囲気で、800〜900℃、60〜120分間保持する。これにより、スポンジ状をなすグリーンシートGが焼結される。
これにより、三次元網目構造をなす多孔質焼結体(抗菌部材110)が製造される。なお、多孔質焼結体(抗菌部材110)の比表面積は、スラリーSに混合される発泡剤の材質、量、発泡工程S14の条件等によって調整される。
さらに、本実施形態では、Pの含有量が、0.03wt%以上0.06wt%以下に限定されていることから、上述の作用効果を確実に奏功せしめることができる。
例えば、本実施形態では、Pの含有量の調整を、Ag粉末作製工程において行うものとして説明したが、これに限定されることはなく、スラリーに対して添加してもよいし、焼結時に添加してもよい。焼結後の焼結体(抗菌部材)において、P量が調整されていればよい。
さらに、バインダー、発泡剤、可塑剤、あるいは、界面活性剤、発泡剤等は、本実施形態に限定されることはなく、他のバインダー、可塑剤、界面活性剤、発泡剤等を用いてもよい。
まず、Agイオンの溶出量について評価した。
上述の第1の実施形態に記載された製造方法によって抗菌部材を作製した。このとき、Ag粉末のP濃度を調整した。
得られた抗菌部材の表面についてオージェ電子分光法による2次電子像観察を行い、少なくともAg、P、Oを含有する化合物の粒状物質の有無について評価した。粒状物質が観察されなかったものを比較例とし、粒状物質が観察されたものを本発明例1,2とした。なお、本発明例1では、2次電子像観察において縦20μm×横24μmの観察視野内に13ヶの粒状物質が観察され、本発明例2では、2次電子像観察において縦20μm×横24μmの観察視野内に27ヶの粒状物質が観察された。
ここで、比較例、本発明例1、2の試験片は、10mm角×厚さ1.5mmの平板状とし、重量を0.2gとした。
一方、Pを含有し、表面に前記化合物の粒状物質が観察された本発明例1、2においては、純水中のAgイオン濃度が5ppm、6ppmであり、従来例1、2のイオン濃度3ppm、2ppmよりも高くなっていることが確認された。
また、抗菌部材の表面に、少なくともAg、P、Oを含有する化合物を配置することによって、Agイオンの溶出が促進されることが確認された。
上述の本発明例1、2、比較例の試験片に加えて、抗菌部材の表面に露呈された粒状物質の数が本発明例1,2よりも少ない(縦20μm×横24μmの観察視野内に10ヶ未満)試験片を作製し、本発明例3とした。
これらの試験片を、それぞれ80℃、100ccの純水中に浸漬し、攪拌しながら14日間保持し、純水中のAgイオン濃度をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって測定した。その後、純水を全て入れ替えて、さらに14日間保持し、純水中のAgイオン濃度をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって測定した。これを繰り返して、Agイオンの溶出量の安定性について評価した。評価結果を図8に示す。
また、粒状物質の数が縦20μm×横24μmの観察視野内に10ヶ未満とされた本発明例3においては、比較例に比べてAgイオン濃度が高いものの、14日目と28日目で大きくAgイオン濃度が低下しており、時間の経過に伴ってAgイオンの溶出量が低下することが確認される。
S スラリー
G グリーンシート
Claims (4)
- 銀を主成分とする粉末を焼成した焼結体からなり、
この焼結体は、少なくともAgとPとOとを含有する化合物を有しており、前記焼結体の表面に、前記化合物の少なくとも一部が露呈されており、
前記焼結体は、0.01wt%以上0.1wt%以下のPを含有していることを特徴とする抗菌部材。 - 前記焼結体の表面の2次電子像観察において、縦20μm×横24μmの観察視野内に、10ヶ以上の粒状の前記化合物が観察されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌部材。
- 前記焼結体の粒界部分に、前記化合物が配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抗菌部材。
- 前記焼結体の比表面積が、0.001m2/g以上0.2m2/g以下の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抗菌部材。
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