JP5182647B2 - 抗菌部材 - Google Patents
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そこで、上述の金属イオンを供給する抗菌部材として、例えば特許文献1、2に示すように、銀、銅、亜鉛等の金属イオンを、イオン交換により結晶質のゼオライトに担持させたものや、イオン交換によってアルミノ珪酸塩に担持させたものが提案されている。
また、特許文献3には、多孔質のシリカの細孔内に、高い殺菌性能を有するリン酸銀化合物を担持させたものが提案されている。さらに、特許文献4には、シリカゲルの表面に、金属イオンを保持する抗菌性アルミノ珪酸塩層を形成したものが提案されている。
すなわち、従来のように、セラミックス等の多孔質材に金属イオン等を担持させたものでは、長期間にわたって安定した抗菌作用を十分に奏功せしめることが困難であった。
さらに、多孔質体であることから、水との接触面積が大きくなり、Agイオンを効率的に溶出させることが可能となる。
よって、本発明の抗菌部材によれば、長期間にわたって安定した抗菌作用を十分に奏功せしめることが可能となる。
なお、Caの含有量が0.1wt%を超える場合には、この多孔質体を粉末焼結する際に、CaとAgの化合物がAg粉末の表面に過度に存在することになり、焼結性が著しく阻害されることになる。このため、Caの含有量は0.1wt%以下に設定する必要がある。
多孔質体の比表面積が0.001m2/g未満であると、水との接触面積が比較的小さくなり、効率的にAgイオンを溶出させることができない。また、Agイオンの溶出量を確保するためには、銀の重量を増加させる必要がある。
一方、多孔質体の比表面積が0.2m2/gを超えると、剛性が不十分となり、多孔質体が崩壊してしまうおそれがある。また、多孔質体を焼結する前の状態において、構造体として保持されなくなる。
このため、多孔質体の比表面積は、0.001m2/g以上0.2m2/g以下の範囲内に設定することが好ましい。
本実施形態である抗菌部材10は、図1に示すように、相互に連通状態の空孔部11が入り込むことによって、スポンジ状をなす三次元網目構造とされた骨格部12を有する多孔質体とされている。
そして、この多孔質体(抗菌部材10)の比表面積は、0.001m2/g以上0.2m2/g以下の範囲内に設定されている。
まず、0.01wt%以上0.1wt%以下(本実施形態では、0.03wt%以上0.06wt%以下)のPを含み、残部がAgと不可避不純物とからなるAg合金からなる金属粉末を準備する。この銀粉末は、水アトマイズ法、プラズマアトマイズ法等のアトマイズ法、酸化還元法、カルボニル反応法等の公知の手段によって製造することが可能である。なお、水アトマイズ法によって金属粉末を作製する場合には、溶湯にリン酸銀粉末を添加することによってP量を調整することが可能である。
ここで、本実施形態では、Ag合金からなる金属粉末の粒径を、0.5μm以上30μm以下とした。
前述のようにして得られた金属粉末に、バインダ(水溶性樹脂結合剤)、発泡剤、水、と、必要に応じて界面活性剤や可塑剤を混合して発泡性のスラリーを作製する。
ここで、バインダ(水溶性樹脂結合剤)としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、エチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを使用することが可能である。
また、本実施形態においては、得られたスラリーSに塩化カルシウムを添加し、Ca濃度を調整した。
これらの原料を、金属粉末:5〜80質量%、バインダー:0.5〜20質量%、発泡剤:0.05〜1質量%、可塑剤:0.1〜15質量%、界面活性剤:0.05〜50質量%、塩化カルシウム:0〜3質量%水:残部、の比率で混合して、スラリーSを作製した。
この成形装置20は、スラリーSを貯留するホッパ21と、ホッパ21から供給されたスラリーSを移送するキャリアシート22と、キャリアシート22を支持するローラ23と、キャリアシート22上に載置されたスラリーSを所定の厚さに成形するブレード24と、成形されたスラリーSを発泡させる発泡槽25と、発泡したスラリーを乾燥させる乾燥槽26と、を備えている。
まず、均一化したスラリーSをホッパ21に貯留しておき、このホッパ21からキャリアシート22上にスラリーSを供給する。このキャリアシート22は、ローラ23によって後段側(図3において右側)に向けて移送される。キャリアシート22上に載置されたスラリーSは、キャリアシート22とともに移送され、ブレード24によって薄板状に成形される。本実施形態では、幅20〜300mm、厚さ0.3〜3mmの薄板状に成形するように構成されている。
薄板状に成形されたスラリーSは、キャリアシート22とともに、発泡槽25へと移送される。この発泡槽25内は、例えば温度30〜40℃、湿度75〜95%に調整されており、薄板状に成形されたスラリーSは、この発泡槽25内を、例えば10〜20分かけて通過する。このように発泡槽25内を通過する際に、スラリーS中の発泡剤が発泡することになる。
発泡したスラリーSは、さらにキャリアシート22とともに乾燥槽26へと移送される。この乾燥槽26内は、例えば温度50〜70℃に調整されており、発泡したスラリーSが、この乾燥槽26内を、例えば10〜20分かけて通過する。このように乾燥槽26内を通過する際に、発泡したスラリーSが乾燥される。
これにより、スポンジ状のグリーンシートGが得られることになる。
次に、成形装置20によって成形されたスポンジ状のグリーンシートGを、脱脂炉に装入し、例えば、大気雰囲気で、450〜550℃、25〜30分間保持する。これにより、グリーンシートに含まれる脂分(有機バインダー等)が揮発除去される。
そして、脱脂されたグリーンシートGを、焼結炉内に装入し、例えば、大気雰囲気で、800〜900℃、60〜120分間保持する。これにより、スポンジ状をなすグリーンシートGが焼結される。
これにより、三次元網目構造をなす多孔質体(抗菌部材10)が製造される。なお、多孔質体(抗菌部材10)の比表面積は、スラリーSに混合される発泡剤の材質、量、発泡工程S4の条件等によって調整される。
よって、安定して金属イオンを供給でき、長期間にわたって安定した抗菌作用を十分に奏功せしめることができる。
また、Pの含有量が0.1wt%以下、Caの含有量が0.1wt%以下とされていることから、焼結性が確保され、本実施形態である抗菌部材10を良好に製造することが可能となる。
さらに、本実施形態では、Pの含有量が、0.03wt%以上0.06wt%以下に限定されていることから、上述の作用効果を確実に奏功せしめることができる。
例えば、本実施形態では、Pの含有量の調整を、Ag粉末作製工程S1において行うものとして説明したが、これに限定されることはなく、スラリーに対して添加してもよいし、焼結時に添加してもよい。焼結後の多孔質体(抗菌部材)において、P量が調整されていればよい。
また、Caの添加についても、本実施形態に限定されることはなく、上述のPと同様に、焼結後の多孔質体(抗菌部材)において、Ca量が調整されていればよい。
さらに、バインダー、発泡剤、可塑剤、界面活性剤等は、本実施形態に限定されることはなく、他のバインダー、発泡剤、可塑剤、界面活性剤等を用いてもよい。
まず、Agイオンの溶出量について評価した。
上述の実施形態に記載された製造方法によって抗菌部材を作製した。このとき、Ag粉末のP濃度を調整するとともに、スラリーを作製する際に、Ag粉末に塩化カルシウムを添加した。P、Caをともに添加しなかったサンプルを比較例とし、Pのみを添加したものを本発明例1とし、P、Caをともに添加したものを本発明例2とした。ここで、比較例、本発明例1、2の試験片は、10mm角×厚さ1.5mmの平板状とし、重量を0.2gとした。
一方、Pを含有する本発明例1、2においては、純水中のAgイオン濃度が2mg/L、4mg/Lであって、従来例1、2と同等のAgイオン濃度をなっている。このことから、Pを含有させることによって、Agイオンの溶出が促進されることが確認される。
さらに、Caを含有した本発明例2においては、Caを含有しない本発明例1よりも、Agイオン濃度が高くなっていることから、Caの添加により、さらにAgイオンの溶出が促進されることが確認される。
上述の本発明例2、従来例1、2の試験片を、それぞれ80℃、100ccの純水中に浸漬し、攪拌しながら24時間保持し、純水中のAgイオン濃度をICP−AES(プラズマ発光分光分析)によって測定した。その後、純水を全て入れ替えて、さらに24時間保持し、純水中のAgイオン濃度をICP−AES(プラズマ発光分光分析)によって測定した。これを繰り返して、Agイオンの溶出量の安定性について評価した。評価結果を図4に示す。
S スラリー
G グリーンシート
Claims (3)
- 三次元網目構造状の多孔質体からなり、
前記多孔質体が、0.01wt%以上0.1wt%以下のPを含み、残部がAgと不可避不純物とからなるAg合金で構成されていることを特徴する抗菌部材。 - 三次元網目構造状の多孔質体からなり、
前記多孔質体が、0.01wt%以上0.1wt%以下のPと、0.01wt%以上0.1wt%以下のCaを含み、残部がAgと不可避不純物とからなるAg合金で構成されていることを特徴する抗菌部材。 - 前記多孔質体の比表面積が、0.001m2/g以上0.2m2/g以下の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抗菌部材。
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