特許文献1に記載される振動型ジャイロ素子では、駆動腕に発生したコリオリ力(つまり検出振動)は、支持腕および基部を経由して検出腕に伝えられる。検出振動は、支持腕と基部を伝播する際に減衰するため、検出振動の伝播過程において、エネルギー損失が生じるのは否めない。
また、特許文献2に記載される振動型ジャイロ素子では、一つの駆動腕の各々は、+Y軸に対して+120°の角度(−Y軸に対して−60°の角度)および−120°の角度(−Y軸に対して+60°の角度)をなす方向に延在している。コリオリ力は駆動振動の方向(速度方向)と角速度ベクトル(角速度方向)の軸で定まる平面に直交する方向に生じるため、検出振動を励起するためのX軸方向へ生じる力はsin60°を乗じた大きさとなり小さくなる。
また、特許文献3に記載される振動型ジャイロ素子における課題について以下に示す。
図19(A)〜図19(C)は、従来例の振動型ジャイロ素子について説明するための図である。図19(A)は特許文献3に記載される振動型ジャイロ素子の構造を示す斜視図であり、図19(B)および図19(C)は、図19(A)におけるA−A線に沿う、駆動腕の断面図の例を示す。
図19(A)の振動型ジャイロ素子901は、2本の駆動腕901,903を有する。この振動型ジャイロ素子901の駆動腕901,903の各々は、理想的にはX軸方向に駆動振動が生じ、Y軸回りの角速度によってZ軸方向のコリオリ力が生じ、Z軸方向に検出振動が生じる。しかしながら、実際は図19(B),図19(C)に示すような加工誤差の存在により、X軸方向の駆動振動にZ軸方向の振動が混在する。図19(B)の例では、駆動腕にヒレ部が生じることによって現実の駆動振動の方向が、理想的な駆動振動の方向からずれる。また、図19(C)の例では、アライメントずれに起因して駆動腕に不整合が生じることによって、現実の駆動振動の方向が、理想的な駆動振動の方向からずれる。
混在したZ軸方向の振動は検出電極により検出振動として検知され、角速度が加わっていないにも関わらず角速度出力が生じる。つまり、図19(B),図19(C)において、太い点線の矢印で示される機会漏れ成分は、実際の角速度が零であっても生じる。よって、実際には角速度が加わっていないにも関わらず、その機会漏れ成分に対応する電気信号が出力されてしまう。これが機械結合による不都合であり、その誤差成分は、コリオリ力による出力に対して極めて大きく、駆動振動のアンバランスは、振動型ジャイロ素子の検出精度に影響を与える。さらに、この機械結合は周囲の温度により変動するためジャイロセンサーの温度安定性に大きく影響を与える。
本発明の少なくとも一つの態様によれば、振動型ジャイロセンサーの検出効率を、より高めることができる。
(1)本発明のジャイロ素子の一態様では、基部と、前記基部から、所定面内で第1方向に延出する検出腕と、前記検出腕の前記基部側の端部と反対側の端部に設けた連結部と、前記連結部から、前記所定面内で前記第1方向と交差する方向である正の第2方向に延出する第1駆動腕と、前記検出腕の前記連結部から、正の第2方向とは逆向きの負の第2方向に延出する第2駆動腕と、前記第1駆動腕に設けられる第1駆動電極と、前記第2駆動腕に設けられる第2駆動電極と、前記検出腕に設けられる検出電極と、を含む。また、前記第1駆動腕は、前記第1駆動電極によって形成される電界による歪みによって、前記所定面に直交する第3方向に振動し、前記第2駆動腕は、前記第2駆動電極によって形成される電界による歪みによって、前記第3方向に振動し、かつ、前記第1駆動腕が正の第3方向に変位するときは、前記第2駆動腕も正の第3方向に変位すると共に、前記第1駆動腕が負の第3方向に変位するときは、前記第2駆動腕も負の第3方向に変位し、前記第1方向の軸回りに作用する角速度によって前記第1駆動腕および前記第2駆動腕の各々に第2方向のコリオリ力が作用し、これによって前記検出腕に第2方向の検出振動が生じ、前記検出振動によって発生する電界によって電荷が移動し、前記電荷の移動による電気信号が前記検出電極から取り出される。
本態様では、所定面内で第1方向に延出する検出腕の連結部に、第1駆動腕と第2駆動腕とが連結される。第1駆動腕は、所定面(例えば、圧電板の所定結晶面を含む面)内で正の第2方向に延在する。第2駆動腕は、所定面内で負の第2方向(正の第2方向とは逆向き)に延在する。第1方向と第2方向とは互いに交差する方向であり、例えば直交する方向である(但し、これに限定されるものではない)。
第1駆動腕および第2駆動腕の各々は、所定面に直交する第3方向に振動する(つまり、面外方向の駆動振動が励振される)。加工誤差が存在した場合には、機械結合により第3方向の振動に第1方向の振動が混在するが、検出振動は第2方向であるため第1方向の振動は検出振動にはなんら影響を与えない。よって、本態様によれば、加工誤差が存在した場合においても機械結合による余計な信号が生じず、効率的にコリオリ力を検出することができる。また、温度による機械結合の変動の影響も受けないことから温度安定性のよいジャイロセンサーが実現できる。
(2)本発明のジャイロ素子の他の態様では、前記第2方向は、前記第1方向に直交する方向であり、前記検出腕、前記第1駆動腕、および前記第2駆動腕の少なくとも一部は、同じ圧電材料で構成される。
本態様では、検出腕の延出方向である第1方向と、第1駆動腕および第2駆動腕の各々の延出方向である第2方向は直交する。また、本態様では、駆動腕の少なくとも一部および検出腕の少なくとも一部は同じ圧電材料で構成される。例えば、駆動腕および検出腕を同じ圧電材料(例えば水晶板やGaPO4)で構成し、その水晶板のもつ圧電特性によって駆動腕や検出腕を振動させることができる。また、例えば、駆動腕(あるいは検出腕)の一部を構成する弾性をもつ基材上に圧電膜(駆動腕(あるいは検出腕)の一部を構成する要素である)を形成してもよい。つまり、圧電膜のもつ圧電特性によって、電界を歪みに変換して駆動腕を振動させたり、あるいは、検出腕に生じた第2検出振動を電界に変換したりすることができる。
例えば、水晶板をフォトリソグラフィーによって加工する場合、Y軸方向に延出された腕に対し、X軸方向に延出された腕は断面の加工精度が高い(水晶の異方性による加工誤差が少ない)。よって、本態様によれば、駆動腕(第1駆動腕および第2駆動腕)の加工誤差を低減することができる。このため、より機械結合の影響が小さいバランスに優れた駆動振動を発生させることができる。
(3)本発明のジャイロ素子の他の態様では、前記検出腕は、互いに表裏関係にある第1面および第2面と、前記第1面と前記第2面とを連結する第3面および第4面と、を備え、前記検出電極は、前記第1面に設けられる第1電極と、前記第2面に設けられ、前記第1電極に接続されている第2電極と、前記第3面に設けられ、前記第1電極および前記第2電極から電気的に独立している第3電極と、前記第4面に設けられ、前記第3電極に接続されている第4電極と、を備えることを特徴とする。また、前記第1駆動腕および前記第2駆動腕の各々は、互いに表裏関係にある一対の主面を備え、前記第1駆動電極は、前記第1駆動腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられた第1櫛歯電極であり、前記第2駆動電極は、前記第2駆動腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第2櫛歯電極である、ことを特徴とする。
本態様では、第1駆動腕に設けられる第1駆動電極および第2駆動腕に設けられる第2駆動電極の各々は、櫛歯電極(IDT(interdigital transducer)電極)である。この櫛歯電極(IDT電極)によって、駆動腕を所定面外に振動させるための電界(駆動腕の延出方向である第2方向の電界)を生じさせることができる。
また、検出腕の第1面〜第4面の各々に設けられる第1電極〜第4電極の各々によって、第2検出振動に伴って生じる微小な電気信号を取り出すことができる。第1電極と第2電極とが接続され、第3電極と第4電極とが接続されている。この検出電極の配置によれば、第1駆動腕から検出腕に漏れ込む不要な駆動振動と、第2駆動腕から検出腕に漏れ込む不要な駆動振動とを相殺する効果を得ることができる。つまり、各駆動腕から漏れ込む不要な駆動振動によって、例えば第1電極から第2電極に向かう電界が生じようとしても、第1電極と第2電極は共通接続されて同電位であることから、そのような電界は現実には生じず、よって、この電極配置によれば、不要な駆動振動によるノイズ信号は検出されない。よって、機械結合による余計な信号が生じず、効率的にコリオリ力を検出することができる。
(4)本発明のジャイロ素子の他の態様では、前記第1櫛歯電極および前記第2櫛歯電極の各々は、所定距離だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極からなる第1対向部分と、前記第1対向部分に隣接して設けられ、かつ、前記所定距離だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極からなる第2対向部分と、を備え、前記第1対向部分と第2対向部分は、前記駆動腕の延出方向である前記第2方向に沿って配置されており、かつ、前記所定距離をL1とし、前記第1対向部分と前記第2対向部分との間の距離をL2としたとき、L1<L2が成立する。
櫛歯電極は、互いに所定距離だけ離間して対向して配置される一対の電極からなる第1対向部分と、この第1対向部分に隣接し、かつ、互いに所定距離だけ離間して対向して配置される一対の電極からなる第2対向部分と、を有する。第1対向部分および第2対向部分の各々において、対向する一対の電極間に電界(有効電界)が生じ、この電界(有効電界)が駆動腕に加えられる。一方、第1対向部分の第2対向部分側の電極と、第2対向部分の第1対向部分側の電極との間にも電界(無効電界)が生じる。第1対向部分および第2対向部分の各々において生じる有効電界の方向と、第1対向部分と第2対向部分との間に生じる無効電界の方向が逆である場合、有効電界の一部が無効電界によって打ち消されるという不都合が生じる。
このため、本態様では、第1対向部分および第2対向部分の各々における電極間の距離(L1)よりも、第1対向部分と第2対向部分との間の距離(L2:具体的には、第1対向部分の第2対向部分側の電極と第2対向部分の第1対向部分側の電極との間の距離)を大きく設定する。これによって、第1対向部分と第2対向部分との間に生じる無効電界による悪影響(つまり、有効電界の一部が無効電界によって打ち消されること)を軽減することができる。
(5)本発明のジャイロ素子の他の態様では、前記第1櫛歯電極および前記第2櫛歯電極の各々は、前記第2対向部分に隣接して設けられ、かつ、前記所定距離だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極からなる第3対向部分を備え、前記第1対向部分、前記第2対向部分、前記第3対向部分の順に、前記基部からの距離が大きくなるものとし、かつ、前記第2対向部分と前記第3対向部分との間の距離をL3としたとき、L2<L3が成立する。
駆動腕に駆動振動(面外振動)を生じさせるためには、駆動腕の主面(例えば表面および裏面の少なくとも一方)において、圧縮や伸張(引っ張り)の歪み(応力)を生じさせる必要がある。駆動腕は、固定端である基部を基準として面外方向に振動することから、駆動腕の屈曲に最も有効な歪みは、基部に近い箇所における歪みである。基部から遠い箇所(先端付近)の歪みは駆動腕の屈曲に与える影響が小さい。
この考察に基づいて、本態様では、櫛歯電極に含まれる3つの対向部分の各々間の間隔を、基部からの距離に応じて変化させる。つまり、第1対向部分と第2対向部分との間の間隔(L2)よりも、第2対向部分と第3対向部分との間隔(L3)を大きく設定する。
このようにすれば、駆動腕の延出方向に沿って配置される対向部分の数を、各対向部分を等間隔で配置する場合に比べて減少させることができる。このことは、駆動腕に発生する電界の総量が減ることを意味し、よって、消費電力の削減の効果が得られる。一方、基部から遠い箇所における電界が減少したとしても、その電界が駆動腕の屈曲に寄与する程度は小さいことから、駆動腕には、必要な振幅の駆動振動を生じさせることができる。
(6)本発明のジャイロ素子の他の態様は、基部と、前記基部から、所定面内で正の第1方向に延出する第1検出腕と、前記基部から、前記所定面内で、正の第1方向とは逆向きの負の第1方向に延出する第2検出腕と、前記第1検出腕の前記基部側の端部と反対側の端部に設けられた連結部から、前記所定面内で前記第1方向に交差する正の第2方向に延出する第1駆動腕と、前記第1検出腕の前記連結部から前記正の第2方向とは逆向きの負の第2方向に延出する第2駆動腕と、前記基部から、前記正の第2方向に延出する第3駆動腕と、前記基部から、前記負の第2方向に延出する第4駆動腕と、前記第2検出腕の前記基部側の端部と反対側の端部に設けられた連結部から前記正の第2方向に延出する第5駆動腕と、前記第2検出腕の前記連結部から前記負の第2方向に延出する第6駆動腕と、前記第1駆動腕に設けられる第1駆動電極と、前記第2駆動腕に設けられる第2駆動電極と、前記第3駆動腕に設けられる第3駆動電極と、前記第4駆動腕に設けられる第4駆動電極と、前記第5駆動腕に設けられる第5駆動電極と、前記第6駆動腕に設けられる第6駆動電極と、前記第1検出腕に設けられる第1検出電極と、前記第2検出腕に設けられる第2検出電極と、を含むことを特徴とする。
また、前記第1駆動腕は、前記第1駆動電極によって形成される電界による歪みによって、前記所定面に直交する第3方向に振動し、前記第2駆動腕は、前記第2駆動電極によって形成される電界による歪みによって第3方向に振動し、前記第3駆動腕は、前記第3駆動電極によって形成される電界による歪みによって第3方向に振動し、前記第4駆動腕は、前記第4駆動電極によって形成される電界による歪みによって第3方向に振動し、前記第5駆動腕は、前記第5駆動電極によって形成される電界による歪みによって第3方向に振動し、前記第6駆動腕は、前記第6駆動電極によって形成される電界による歪みによって第3方向に振動し、かつ、前記第1駆動腕および前記第2駆動腕が共に正の第3方向に変位するときには、前記第3駆動腕および前記第4駆動腕は共に前記正の第3方向とは逆向きの負の第3方向に変位し、前記第5駆動腕および前記第6駆動腕は共に正の第3方向に変位し、また、前記第1駆動腕および前記第2駆動腕が共に負の第3方向に変位するときには、前記第3駆動腕および前記第4駆動腕は共に正の第3方向に変位し、前記第5駆動腕および前記第6駆動腕は共に負の第3方向に変位する。
本態様では、第1検出腕に加えて第2検出腕が設けられる。第1検出腕には第1検出電極が設けられ、第2検出腕には第2検出電極が設けられる。第1検出腕は基部から正の第1方向に延出し、第2検出腕は負の第1方向に延出する。検出腕の数が増えることによって検出感度が向上する。
また、本態様では、第1駆動腕と第2駆動腕に加えて、第3駆動腕と第4駆動腕、ならびに第5駆動腕と第6駆動腕が設けられる。第1駆動腕と第2駆動腕の各々は、第1検出腕の連結部から互いに逆向き(つまり、正の第2方向と負の第2方向)に延出する。第3駆動腕と第4駆動腕の各々は、基部から互いに逆向き(つまり、正の第2方向と負の第2方向)に延出する。第5駆動腕と第6駆動腕の各々は、第2検出腕の連結部から互いに逆向き(つまり、正の第2方向と負の第2方向)に延出する。第1駆動腕〜第6駆動腕の各々には、第1駆動電極〜第6駆動電極の各々が設けられる。
また、第1駆動腕と第2駆動腕が駆動振動によって正の第3方向に変位するときは、第3駆動腕と第4駆動腕は駆動振動によって負の第3方向に変位し、かつ、第5駆動腕と第6駆動腕は駆動振動によって正の第3方向に変位する。つまり、第1駆動腕と第2駆動腕ならびに第5駆動腕と第6駆動腕の各々には、第3方向に、かつ、各腕の変位が同じ向きとなるように、ウォークモードの駆動振動が励振される。一方、第2駆動腕と第3駆動腕の各々には、第3方向であって、かつ、変位の向きが、第1駆動腕と第2駆動腕ならびに第5駆動腕と第6駆動腕の各々の変位の方向とは逆になるように、ウォークモードの駆動振動が励振される。
換言すれば、3対の駆動腕のうち、両側の2対の駆動腕が同相駆動され、中央の1対の駆動腕は逆相で駆動されるのであり、これによって、力学的にバランスのとれた駆動振動を実現される。面外振動のバランスがよいことから、共振のQ値が高くなり、駆動振動の振幅が増大し、振動周波数も安定する。コリオリ力の大きさは駆動振動の速度に比例し、駆動振動の速度は振幅と振動周波数によって決まる。よって、駆動振動の速度が大きくなり安定することから、より高感度で、かつ、感度安定性が高い振動型ジャイロ素子が実現される。
(7)本発明の振動型ジャイロ素子の他の態様は、前記第1駆動腕〜前記第6駆動腕の各々は、互いに対向する一対の主面を有し、前記第1検出腕および前記第2検出腕の各々は、第1主面としての第1面と、前記第1面に対向する、第2主面としての第2面と、前記第1面と前記第2面とを連結する第3面と、前記第3面に対向する第4面と、を有し、前記第1駆動電極は、前記第1駆動腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第1櫛歯電極であり、前記第2駆動電極は、前記第2駆動腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第2櫛歯電極であり、前記第3駆動電極は、前記第3駆動腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第3櫛歯電極であり、前記第4駆動電極は、前記第4駆動腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第4櫛歯電極であり、前記第5駆動電極は、前記第5駆動腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第5櫛歯電極であり、前記第6駆動電極は、前記第4駆動腕における前記一対の主面の少なくとも一方に設けられる第6櫛歯電極であり、前記第1検出電極は、前記第1検出腕の前記第1面に設けられる、第1検出腕用の第1電極と、前記第1検出腕の前記第2面に設けられる、第1検出腕用の第2電極と、前記第1検出腕の前記第3面に設けられる、第1検出腕用の第3電極と、前記第1検出腕の前記第4面に設けられる、第1検出腕用の第4電極と、を有し、前記第2検出電極は、前記第2検出腕の前記第1面に設けられる、第2検出腕用の第1電極と、前記第2検出腕の前記第2面に設けられる、第2検出腕用の第2電極と、前記第2検出腕の前記第3面に設けられる、第2検出腕用の第3電極と、前記第2検出腕の前記第4面に設けられる、第2検出腕用の第4電極と、を有し、かつ、前記第1検出腕用の第1電極と、前記第1検出腕用の第2電極と、前記第2検出腕用の第1電極と、前記第2検出腕用の第2電極とは共通に接続され、前記第1検出腕用の第3電極と、前記第1検出腕用の第4電極と、前記第2検出腕用の第3電極と、前記第2検出腕用の第4電極とは共通に接続される。
本態様では、上記(6)の態様における電極構造と、電極の接続形態について規定する。すなわち、第1駆動腕には第1駆動電極が形成されるが、この第1駆動電極は、第1駆動腕の一対の主面(第1面および第2面)の少なくとも一方に設けられる第1櫛歯電極である。同様に、第2駆動腕に設けられる第2駆動電極は、第2駆動腕の一対の主面(第1面および第2面)の少なくとも一方に設けられる第2櫛歯電極であり、第3駆動腕に設けられる第3駆動電極は、第3駆動腕の一対の主面(第1面および第2面)の少なくとも一方に設けられる第3櫛歯電極であり、第4駆動腕に設けられる第4駆動電極は、第4駆動腕の一対の主面(第1面および第2面)の少なくとも一方に設けられる第4櫛歯電極であり、第5駆動腕に設けられる第5動電極は、第5駆動腕の一対の主面(第1面および第2面)の少なくとも一方に設けられる第5櫛歯電極であり、第6駆動腕に設けられる第6駆動電極は、第6駆動腕の一対の主面(第1面および第2面)の少なくとも一方に設けられる第6櫛歯電極である。櫛歯電極による第2方向の電界によって、各駆動腕に第3方向(面外方向)の駆動振動が励振される。
また、第1検出腕の第1面〜第4面の各々には、第1検出腕用の第1電極〜第4電極が設けられる。同様に、第2検出腕の第1面〜第4面の各々には、第2検出腕用の第1電極〜第4電極が設けられる。検出振動による歪みに対応して、第1検出腕および第2検出腕の各々に生じる電界の向きは同じである。この点を考慮して、第1検出腕における電極と第2検出腕における電極との接続が決定される。つまり、第1検出腕用の第1電極および第1検出腕用の第2電極は、第2検出腕用の第1電極および第2検出腕用の第2電極に共通に接続される。また、第1検出腕用の第3電極および第1検出腕用の第4電極は、第2検出腕用の第3電極および第2検出腕用の第4電極に共通に接続される。上記2つの共通接続点から、第2検出振動に伴って生じる微小な電気信号を取り出すことができる。
(8)本発明のジャイロセンサーの一態様は、上記いずれかのジャイロ素子と、前記ジャイロ素子に接続された検出回路を含む。
これによって、高精度の検出が可能な振動型ジャイロセンサー(振動型ジャイロスコープ)を実現することができる。
(9)本発明の電子機器の一態様は、上記いずれかのジャイロ素子を含む。
これによって、例えば、高精度な角速度の検出が可能な振動型ジャイロ素子と、角速度以外の物理量を検出する他の検出素子とを組み合わせた、高機能なセンサーユニット(電子機器の一種)を実現することができる。また、このセンサーユニットを、カメラやFA機器等の電子機器に搭載すれば、その電子機器の高機能化が実現する。
(10)本発明の振動型ジャイロセンサーによる角速度の検出方法の一態様は、水晶を加工して形成される振動型ジャイロ素子であって、基部と、前記基部から、前記水晶の所定結晶面を含む所定面内で第1方向に延出する検出腕と、前記検出腕の連結部から、前記所定面内で前記第1方向と直交する方向である正の第2方向に延出する第1駆動腕と、前記検出腕の前記連結部から、正の第2方向とは逆向きの負の第2方向に延出する第2駆動腕と、を有する振動型ジャイロ素子と、前記第1方向の軸回りに作用する角速度を検出する検出回路と、を有する振動型ジャイロセンサーによる角速度の検出方法であって、前記水晶の、第2方向の電界に対応する第2方向の歪みを用いて、前記第1駆動腕および前記第2駆動腕の各々を、前記所定面に直交する第3方向に、かつ変位方向が互いに同じになるようにして振動させ、前記第1方向の軸回りに作用する角速度に対応して生じる第2方向のコリオリ力によって、前記検出腕に第2方向の検出振動を生じさせ、前記検出振動によって発生する電界によって電荷が移動することによって生じる電気信号に基づいて、前記検出回路が前記角速度を検出する。
本態様の角速度(物理量)検出方法では、水晶結晶板(例えばZ板(略Z板))によって構成される振動型ジャイロ素子(振動型ジャイロセンサー用の振動片)を使用する。検出腕は基部から第1方向(例えばY軸方向)に延出する。第1駆動腕および第2駆動腕の各々は、検出腕の連結腕から第2方向(例えばX軸方向)に、かつ互いに逆向きに(例えば+X軸方向と−X軸方向)に延出する。第1方向の軸と第2方向の軸とで規定される平面は、例えば水晶板のZ面を含む平面である。また、本態様では、第1方向と第2方向とは直交する。
水晶板の第2方向の電界(例えばX軸方向の電界Ex)に対応する第2方向の歪み(Sx)を用いて各駆動腕に、第3方向(第1方向の軸および第2方向の軸で規定される平面に直交する方向)の駆動振動(面外振動)が励振される。
また、第1方向(例えばY軸方向)の軸回りに作用する角速度によって、駆動腕に第2方向(例えばX軸方向)のコリオリ力が生じ、コリオリ力によって各駆動腕が変位する。各駆動腕は、検出腕の同じ連結部に連結されていることから、各駆動腕の変位は、そのまま検出腕の変位となる。したがって、検出腕に、効率的に検出振動を生じさせることができる。
検出腕が検出振動によって屈曲すると、検出腕を構成する水晶板の、第2方向(X軸方向)の電界(Ex)に対応した第1方向の歪み(Sy)によって、第2方向の電界(Ex)が生じる。この第2方向の電界(Ex)によって電荷が移動することによって生じる電気信号に基づいて、検出回路が角速度を検出する。
本態様では、基部、駆動腕および検出腕自体が水晶板で構成されることから、圧電膜を基材上に形成する構造に比べて、振動ロスが少なく、また耐久性も高い。また、駆動振動として面外振動(ウォークモードの振動)を利用することから、従来の面内の駆動振動を利用する場合に比べてバランスのよい駆動振動を励振することができる。また、第1駆動腕から検出腕に漏れ込む不要な駆動振動と、第2駆動腕から検出腕に漏れ込む不要な駆動振動とを効率的に相殺する効果を得ることができる。また、駆動腕が検出腕に直接に連結されていることから、コリオリ力を検出腕に効率的に伝えることができる。よって、物理量の検出効率を格段に高めることができる。また、駆動腕と検出腕が分離されていることから、各腕における電極配置や配線も無理なく行える。また、駆動腕と検出腕が分離されていることから、静電結合や電気機械結合の影響も低減することができる。
このように、本発明の少なくとも一つの態様によれば、振動型ジャイロセンサーの検出効率を、より高めることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1実施形態)
図1(A)および図1(B)は、第1実施形態にかかる振動型ジャイロ素子(振動型ジャイロセンサー用振動片)における、角速度の検出原理を説明するための図である。
図1(A)に示されるように、振動型ジャイロ素子(振動型ジャイロセンサー用振動片)100は、基部10と、基部から、所定面内(XY面内)で第1方向(Y軸方向)に延出する検出腕30と、検出腕30の連結部25(図中、点線で囲んで示される)から所定面内(XY面内)において、第1方向(Y軸方向)と交差する方向である第2方向(X軸方向)に延出する一対の駆動腕(第1駆動腕20と第2駆動腕20’)と、を有する。第1駆動腕20は正の第2方向(+X軸方向)に延在し、第2駆動腕20’は負の第2方向(−X軸方向)に延在する。X軸とY軸は直交するのが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、若干の方向のずれがあってもよい。
なお、駆動腕10には駆動電極(図1(A)では不図示)が設けられ、検出腕30には検出電極(図1(A)では不図示)が設けられる。また、基部10は、センサーケース(不図示)等に、例えば接着剤によって固定される。
基部10、第1駆動腕20、第2駆動腕20’ならびに検出腕30自体を水晶結晶板のような圧電材料板で構成することができる。また、基部10、ならびに第1駆動腕20、第2駆動腕20’および検出腕30における基材を弾性を有する材料で構成し、その基材上に圧電膜を形成してもよい。つまり、圧電膜のもつ圧電特性によって、電界を歪みに変換して駆動腕を振動させたり、検出腕に生じた第2検出振動を電界に変換したりすることもできる。但し、基部10、第1駆動腕20、第2駆動腕20’および検出腕30自体を水晶板等で構成する構造は、圧電膜を基材上に形成する構造に比べて、振動ロスが少なく、耐久性も高い。
なお、本実施形態では、図1(A)の振動型ジャイロ素子(振動型ジャイロセンサー用振動片)は、基部10、第1駆動腕20、第2駆動腕20’および検出腕30自体が、Z板(略Z板)の水晶結晶板によって構成されるものとする。
検出腕30の先端付近に設けられる連結部25は、基部10とは異なり、固定されていないことから、第1駆動腕20および第2駆動腕20’がコリオリ力によって変位すると、その変位に伴って連結部25も変位し、よって、検出腕30も変位する。よって、第12駆動腕20および第2駆動腕20’に生じたコリオリ力を、検出腕30に効率的に伝達すること(つまり、コリオリ力を検出振動に効率的に変換すること)ができる。
また、第1方向の軸(Y軸)と第2方向の軸(X軸)とで規定される平面(XY平面)は、例えば水晶板のZ面を含む平面である上述のとおり、第1方向と第2方向は、広義には互いに交差する方向であり、以下の説明では、互いに直交するものとする。
図1(A)に示されるように、第1駆動腕20における駆動振動VA、ならびに、第2駆動腕20’における駆動振動VA’は共に、面外方向(XY平面に垂直なZ軸方向)に生じる。この駆動振動VA,VA’は、例えば、水晶板の第2方向の電界(X軸方向の電界Ex)に対応する第2方向の歪み(Sx)を利用することによって生じさせることができる。
ここで、図1(B)を参照する。図1(B)は、水晶板の圧電定数と電界と歪みの関係を示す図である。太線で囲んで示されるように、水晶板は、第2方向の電界Exに対応する圧電定数として、高い数値を示しているd11とd12の二つを有している。d11は、第2方向の電界Exに対応して発生する第2方向(X軸方向)の歪みの大きさに関係する圧電定数であり、d12は、第2方向の電界Exに対応して発生する第1方向(Y軸方向)の歪みの大きさに関係する圧電定数である。図示されるように、d11、d12は共に高い数値を示しており、電界Exによって大きな歪みSx、Syを生じさせる、逆に歪みSx、Syによって大きな電界Exを生じさせることができることを表している。よって、駆動振動の励振や、物理量の検出のために使用することができる。なお、d12について極性が負になっているのは、X方向に正の電界(+Ex)が生じたとき、Y方向に負の歪み、すなわち収縮が生じることを意味している。
つまり、水晶板は、第2方向(X軸方向)の正の電界+Exが生じると、d11によって第2方向(X軸方向)に伸張する歪みSxが発生し、また、d12によって、Y方向に収縮する歪みSyが発生する。本実施形態では、圧電定数d11による歪みSxを、駆動振動VAおよびVA’の励振に使用する。
また、逆に、水晶板に、例えば、第1方向(Y軸方向)の収縮歪みSyが生じると、圧電定数d12によって、正の第2方向(+X軸方向)に電界+Exが生じ、その電界の向きに電荷が移動する。本態様では、この圧電定数d12を、検出振動を電気信号に変換するために利用する。
図2(A)および図2(B)は、振動型ジャイロ素子の物理量の検出原理を説明するための図である。図2(A)は、各腕の振動姿態の一例を示す図であり、図2(B)は電気信号の検出動作を示す図である。
上述のとおり、第1駆動腕20および第2駆動腕20’は、水晶結晶の圧電定数d11による歪みSxを利用して、第3方向(第1方向軸および第2方向軸で規定される平面に直交する方向であり、ここではZ軸方向)に励振され、これによって駆動振動(面外振動)VA,VA’が生じる。駆動振動VA、VA’は同相の駆動振動である。つまり、第1駆動腕20が正の第3方向(+Z軸方向)に変位するときは、第2駆動腕20’も正の第3方向(+Z軸方向)に変位し、第1駆動腕20が負の第3方向(−Z軸方向)に変位するときは、第2駆動腕20’も負の第3方向(−Z軸方向)に変位する。
この状態で、振動型ジャイロ素子100が、第1方向(Y軸方向)の軸回りに回転すると、駆動腕に角速度が加わる。3次元空間における角速度は角速度ベクトルによって表すことができる。図2(A)では、Y軸に関して、図中の矢印で示す方向に角速度が生じ、この場合の角速度ベクトルは、右ネジの進行方向(すなわち+Y軸方向)に生じる。
駆動振動中の第1駆動腕20および第2駆動腕20’に角速度Ωが作用することによって、各腕にコリオリ力Fc(Fc)が第2方向(X軸方向:ここでは−X軸方向)に生じる。これによって、第1駆動腕20、第2駆動腕20’は、負の第2方向(−X軸方向)に変位する。この変位は、連結部25を介して検出腕30に伝わり、検出腕30も負の第2方向(−X軸方向)に変位する。つまり、検出腕30に、−ΔXの変位が生じる。これによって、検出腕30に検出振動VBが生じる。図2(A)の例では、検出振動VBの方向は負の第2方向(−X軸方向)である。
検出腕30が屈曲すると、検出腕30には、図示したように第1方向(Y軸方向)の歪みSyによる電界Ex(+Ex,−Ex)が生じる。つまり、検出腕30を構成する水晶板の、第2方向(X軸方向)の電界(Ex)に対応した第1方向の歪みSyに関係する圧電定数(d12)によって、第2方向の電界(+Ex,−Ex)が生じる。この第2方向の電界(+Ex,−Ex)によって電荷Q1,Q2の移動が生じる。つまり、微小な電流が生じる。この微小な電気信号(電荷信号あるいは電流信号)に基づいて、角速度を検出することができる。
図2(B)には、検出腕30のA−A線に沿う断面図が示されている。検出腕30は、第1主面としての第1面(表面:A面)と、第1面に対向する第2主面としての第2面(裏面:B面)と、第1面と第2面とを連結する第3面(左側面:C面)と、第3面に対向する第4面(右側面:D面)とを有する。第1面、第2面、第3面および第4面の各々には、検出電極としての第1電極32a、第2電極32b、第3電極32cならびに第4電極32dが設けられている。
第1電極32aは第2電極32cに接続され、第3電極32cは第4電極32dに接続されている。第1電極32aと第2電極32bの共通接続点NP1は、検出回路の前段に配置されているQ/V変換回路120の入力端子J1に接続される。また、第3電極32cと第4電極32dの共通接続点NP2は、Q/V変換回路120の入力端子J2に接続される。
検出腕30に検出振動VBが生じると、検出腕30の第1方向(Y軸方向)の歪み(−Sy,+Sy)に対応して、圧電定数d12による電界Ex(第2方向の電界+Ex,−Ex)が生じる。電界Ex(+Ex,−Ex)が生じると、この電界Exに対応して電荷Qの移動が生じる。つまり、図2(B)において矢印で示す方向(端子J2から端子J1に向かう方向)に、電荷Qの移動が生じる。電荷の移動によって生じる微小な電流信号(電荷信号)は、検出回路の前段に配置されているQ/V変換回路120によって電圧に変換される。この電圧信号に基づいて物理量(角速度)が検出される。
図3(A)および図3(B)は、振動型ジャイロ素子の物理量の検出原理を説明するための図である。図3(A)は、各腕の振動姿態の他の例を示す図であり、図3(B)は電気信号の検出動作を示す図である。図3(A)および図3(B)の各々は、図2(A)および図2(B)に対応する。
図3(A)の例では、第1駆動腕20は、面外方向の駆動振動VAによって正の第3方向(+Z軸方向)に屈曲しており、同様に、第2駆動腕20’は、面外方向の駆動振動VA’によって正の第3方向(+Z軸方向)に屈曲している。この状態で、第1方向の軸(ここでは+Y軸方向)の回りに角速度Ωが作用すると、正の第2方向(+X軸方向)にコリオリ力Fcが生じる。
これによって、第1駆動腕20および第2駆動腕20’の各々は、正の第2方向(+X軸方向)に変位する。この変位は、連結部25を介して検出腕30に伝わり、検出腕30も正の第2方向(+X軸方向)に変位する。つまり、検出腕30に、+ΔXの変位が生じる。これによって、検出腕30に検出振動VBが生じる。図3(A)の例では、検出振動VBの方向は正の第2方向(+X軸方向)である。
検出腕30に検出振動VBが生じると、先に説明したように、水晶結晶の圧電定数d12によって第2方向の電界Ex(+Exと−Ex)が生じ、これに伴って電荷Qの移動が生じる。
つまり、図3(B)において矢印で示す方向(端子J1から端子J2に向かう方向)に、電荷Qの移動が生じる。電荷の移動によって生じる微小な電流信号(電荷信号)は、検出回路の前段に配置されているQ/V変換回路120によって電圧に変換される。この電圧信号に基づいて物理量(角速度)が検出される。
以上説明した振動型ジャイロ素子100は、駆動振動として面外振動(ウォークモードの振動)を利用することから、従来の面内の駆動振動を利用する場合に比べて、振動の振幅を容易に大きくできる(隣接して他の腕が存在しないため、他の腕によって振幅が制限されることがなく、機械的な耐久性が確保される範囲内で振幅を増大させることが可能である。
また、第1駆動腕20と第2駆動腕20’は、水晶板(圧電板)の基本的な結晶軸に沿って配置されることから、例えばフォトリソグラフィーを用いて精度よく加工することができる。
また、ウォークモードの振動(面外振動)では、正の第3方向(+Z軸方向)の変位と負の第3方向(−Z軸方向)の変位はバランスよく生じる。つまり、第1駆動腕20の駆動振動VAと、第2駆動腕20’の駆動振動VA’は、互いにバランスがとれている。このことは、物理量(角速度や角加速度等)の検出効率を高めることに貢献する。
また、駆動腕(20,20’)と検出腕30が分離されていることから、各腕における電極配置や配線も無理なく行える。また、駆動腕(20,20’)と検出腕30が分離されていることから、静電結合や電気機械結合の影響も低減される。
また、第1駆動腕20の駆動振動VAと、第2駆動腕20’の駆動振動VA’のバランスがとれていることから、機械結合によって、各駆動腕から検出腕に漏れ込む不要な駆動振動成分を効率的に相殺することもできる。なお、静電結合、電気機械結合ならびに機械結合については、図17を用いて後述する。
また、基部10、駆動腕(20,20’)および検出腕30自体を水晶板で構成し、水晶板自体がもつ圧電定数を用いて駆動振動を励振し、かつ水晶板自体がもつ圧電定数を用いて検出信号(電気信号)を検出することによって、圧電膜を基材上に形成する構造に比べて、振動ロスが少なく、また耐久性を高くすることができる。
図4(A)〜図4(D)は、電極の配置例を示す図である。図4(A)は、振動型ジャイロ素子100の第1面(表面)における電極配置を示す図である。図4(B)は、振動型ジャイロ素子100の第2面(裏面)における電極配置を示す透視図である。図4(C)は、図4(A)のA−A線に沿う断面図である。図4(D)は、図4(A)のB−B線に沿う断面図である。
まず、駆動腕20に設けられる駆動電極(櫛歯電極)について説明する。駆動腕20は一対の主面(第1面(表面)と第2面(裏面))を有する。この一対の主面の少なくとも一方に、櫛歯電極が形成される。本実施形態では、第1面(表面)および第2面(裏面)の双方に櫛歯電極が形成される。
図4(A)において太い点線で囲んで示されるように、第1駆動腕20の第1面(表面)には、櫛歯電極(IDT(interdigital transducer)電極)40aが設けられる。櫛歯電極40aは、電極41a(斜線が施されている電極)と電極41b(黒塗りの電極)とを有する。
同様に、第2駆動腕20’の第1面(表面)には、櫛歯電極(IDT電極)40bが設けられる。櫛歯電極40bは、電極41a’(斜線が施されている電極)と電極41b’(黒塗りの電極)とを有する。
また、図4(B)において太い点線で囲んで示すように、第1駆動腕20の第2面(裏面)には、櫛歯電極40cが設けられる。櫛歯電極40cは、電極41c(斜線が施された電極)と電極41d(黒塗りの電極)とを有する。電極41cは、電極41aに接続される。また、電極41dは、電極41bに接続される。
同様に、第2駆動腕20’の第2面(裏面)には、櫛歯電極(IDT電極)41dが設けられる。櫛歯電極41dは、電極41c’(斜線が施されている電極)と電極41d’(黒塗りの電極)とを有する。
ここで、図4(D)を参照する。第1駆動腕20に設けられる第1駆動電極としての櫛歯電極40a(表面に設けられる櫛歯電極)は、所定距離L1だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極(電極41aと電極41b)からなる第1対向部分42(1)と、第1対向部分42(1)に隣接して設けられ、かつ、所定距離L1だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極(41a,41b)からなる第2対向部分42(2)と、第2対向部分42(2)に隣接して設けられ、かつ、所定距離L1だけ離れて互いに対向して配置される一対の電極(41a,41b)からなる第3対向部分42(3)と、を有している。
第1対向部分41(1)〜第3対向部分42(3)の各々は、駆動腕20の延出方向である第2方向(X軸方向)に沿って配置されている。また、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間の距離(あるいは、第2対向部分42(2)と第3対向部分42(3)との間の距離)をL2としたとき、L1<L2が成立する。
L1<L2とするのは、以下の理由による。以下の説明では、第1対向部分42(1)および第2対向部分42(2)に着目する。第1対向部分42(1)および第2対向部分42(2)の各々において、対向する一対の電極(41a,41b)間に電界(有効電界)Ex(1)が生じ、この電界(有効電界)Ex(1)が駆動腕20に加えられ、駆動腕20に圧縮または伸張(引っ張り)の各応力が生じる。
一方、第1対向部分42(1)における第2対向部分側の電極41bと、第2対向部分42(2)の第1対向部分側の電極41aとの間にも電界(無効電界)Ex2が生じる。第1対向部分42(1)および第2対向部分42(2)の各々において生じる有効電界の方向Ex(1)と、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間に生じる無効電界Ex(2)の方向が逆である場合、有効電界Ex(1)の一部が無効電界Ex(2)によって打ち消されるという不都合が生じる。
このため、図4(D)に示される例では、第1対向部分42(1)および第2対向部分42(2)の各々における電極間の距離L1よりも、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間の距離(L2:具体的には、第1対向部分の第2対向部分側の電極41bと第2対向部分の第1対向部分側の電極41aとの間の距離)を大きく設定する。これによって、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間に生じる無効電界Ex(2)による悪影響(つまり、有効電界Ex(1)の一部が無効電界Ex(2)によって打ち消されること)を軽減することができる。
次に、検出腕30における検出電極の配置について説明する。ここでは図4(C)を参照する。先に説明したとおり、検出腕30は、第1面(表面:A面)と、第1面に対向する第2面(裏面:B面)と、第1面と第2面を連結する第3面(左側面:C面)と、第3面に対向する第4面(右側面:D面)とを有する。
検出電極は、検出腕30の第1面(A面)に設けられる第1電極32aと、検出腕30の第2面(B面)に設けられ、第1電極32aに接続されている第2電極32bと、検出腕30の第3面(C面)に設けられ、第1電極32aおよび第2電極32bから電気的に独立している第3電極32cと、検出腕30の第4面(D面)に設けられ、第3電極32cに接続されている第4電極32dと、を有する。第1電極32aと第2電極32bの共通接続点をJ1とする。第3電極32cと第4電極32cの共通接続点をJ2とする。共通接続点J1およびJ2は、検出回路の入力端子に相当する。
図5は、振動型ジャイロセンサーの構成の一例を示す図である。図5において、振動型ジャイロセンサー105は、振動型ジャイロ素子100と、発振駆動回路110と、検出回路140と、を有する。発振駆動回路110は、AGC回路112を有する。発振駆動回路110の入力端子J3およびJ4は各々、振動型ジャイロ素子100の基部10に設けられるパッドP3およびパッドP4の各々に接続される。
また、検出回路140は、Q/V変換回路120と、増幅回路122と、移相器124と、同期検波回路126と、ローパスフィルター(LPF)128と、A/D変換回路130と、を有する。検出回路140の入力端子J1およびJ2の各々は、振動型ジャイロ素子100の基部10に設けられるパッドP1およびパッドP2の各々に接続される。
本実施形態では、不要な駆動振動成分(機械結合)は十分に低減される。実用上問題ないレベルまで不要な駆動振動成分を低減できるのであれば、Q/V変換回路や増幅回路など初段の増幅率を高く、後段の増幅率を低く設定できるため検出回路で発生するノイズを低減することができる。つまり低ノイズなジャイロセンサーを実現できる。
また、図5において、L1〜L11およびL1’〜L11’の各々は、導体材料で構成される配線を示している。これらの配線は、必要に応じて、第1面上、第2面上、第3面上、第4面上のいずれにも形成することができる。なお、点線で囲んで示される配線L5および配線L10は、スルーホールを経由する迂回配線である。
図6は、駆動振動の励振の一例について説明するための図である。図6の上側には駆動腕20の平面図が示され、中段には駆動腕のA−A線に沿う断面図が示され、下側には面外方向に振動している駆動腕の様子が示されている。図示されるように、櫛歯電極による第2方向(X軸方向)の電界Exによって、駆動腕の第1面(A面)および第2面(B面)に歪み(応力)が発生する。第1面(A)面に収縮応力が発生し、第2面に伸張(引っ張り)応力が発生する場合には、駆動腕20は、正の第3方向(+Z方向)に屈曲する。一方、第1面(A)面に伸張(引っ張り)応力が発生し、第2面に収縮応力が発生する場合には、駆動腕20は、負の第3方向(−Z方向)に屈曲する。正の第3方向(+Z方向)への屈曲と、負の第3方向(−Z方向)への屈曲は交互に生じる。よって、第3方向(XY平面に垂直なZ方向)の駆動振動(面外振動あるいはウォークモードの振動)が定常的に生じる。
なお、図6の中段に示される駆動電極の配置は一例であり、これに限定されるものではない。ここで、図17を参照する。図17は、駆動振動の励振の他の例について説明するための図である。
図17の例では、駆動腕20の第1面(A面)に設けられる一対の櫛歯電極のうちの一方の電極41b(黒塗りの電極)と、駆動腕20の第2面(B面)に設けられる一対の櫛歯電極のうちの一方の電極41d(黒塗りの電極:電極41bと同電位の電極)とが、対向して設けられている。
例えば、電極41bおよび電極41d(黒塗りの電極)の電位極性を+とし、電極41aおよび電極41c(斜線の電極)の電位極性を−とする。第1面(A面)に設けられる櫛歯電極の極性の並びは、電極41bを起点として、基部(図中の左端)から遠ざかる方向に沿って、+,−,+,−,+となる。また、第2面(B面)に設けられる櫛歯電極の極性の並びは、電極41bに対向する電極41dを起点として、基部(図中の左端)から遠ざかる方向に沿って、+,−,+,−,+,−となる。このように、互いに対向する電極を起点として考えると、第1面(A面)の櫛歯電極の極性の並びと、第2面(B面)の櫛歯電極の極性の並びとが一致していることになる。
このような電極配置によって、第1面(A面)と第2面(B面)との間で、無駄な縦方向の電界が生じにくくなる。よって、駆動腕20に無用な歪みが生じることが抑制される。また、無駄な電界が減少することから、消費電力を抑制することもできる。
ここで、図7に戻って説明を続ける。以下、本実施形態によれば、機械結合による影響を十分に抑制できる理由について説明する。図7(A)〜図7(G)は、機械結合による影響を抑制できる理由について説明するための図である。
先に説明したように、第1駆動腕20および第2駆動腕20’の各々には、理想的には、第3方向(Z軸方向)の駆動振動VAおよびVA’が生じる。但し、実際の駆動振動には、第3方向(Z軸方向)以外の方向の振動成分も混在している。
図7(B)〜図7(E)の各々は、図7(A)におけるA−A線に沿う、第1駆動腕の断面図の例を示す。図7(B)に示されるように、第1駆動腕20の断面形状が理想的に線対称であれば、駆動振動VAは第3方向(Z軸方向)に生じる。理想的な駆動振動VAならば、検出腕30に漏れ込む不要な駆動振動成分は、ほとんど発生しない。
しかし、実際は、図7(C)〜図7(E)に示すように、第1駆動腕20の断面形状は、加工誤差によって線対称ではなくなり、したがって、第1方向(Y軸方向)に、不要な駆動振動成分va(y)が生じる。以上の説明では、第1駆動腕20についての駆動振動VAを例にとったが、第2駆動腕20’についての駆動振動VA’についても同様に、不要な駆動振動成分va(y)’が生じる。
図7(A)に示すように、不要な駆動振動成分va(y)は、機械結合によって第1駆動腕20から検出腕30に漏れ込む。また、不要な駆動振動成分va(y)’は、機械結合によって第1駆動腕20から検出腕30に漏れ込む。
この場合、図7(F)に示すように、検出腕30を構成する圧電体(水晶)には第1方向の歪みSyが生じ、圧電定数d12によって、検出腕30の第3電極32c側には電界Ex’が発生しようとし、また、検出腕30の第4電極32d側には電界Exが発生しようとする。電界Ex’と電界Exの向きは同じ方向(つまり、第3電極32cから第4電極32dに向かう方向)である。
しかし、実際には、第3電極32cと第4電極32dは共通に接続されており、同電位であるため電位差が生じず、よって、圧電定数d12による電界Ex’ならびに電界Exは発生せず、電荷の移動は生じない。なお、通常の検出動作の場合は、第2方向(X軸方向)への振動であり例えば図7(G)に示すように、方向が逆向きの電界+Ex、−Exが生じることから、第1電極32aおよび第2電極32bと、第3電極32cおよび第4電極32dとの間で、電荷の移動が生じる。
つまり、第1駆動腕20および第2駆動腕20’の各々からのY方向の駆動振動成分va(y)ならびにva(y)’は、連結部25を介して検出腕30に伝播されるものの、生じる応力の向きが同じであることから相殺され、よって、検出電極(32a〜32d)からは不要な駆動振動成分は出力されないことになる。つまり、機械結合による第1方向(Y軸方向)の振動成分に対して不感の検出系が実現される。
特に、本実施形態では、第1駆動腕20と第2駆動腕20’は、水晶板(圧電板)の基本的な結晶軸に沿って配置されることから、例えばフォトリソグラフィーを用いて精度よく加工することができ、また、ウォークモードの振動(面外振動)では、正の第3方向(+Z軸方向)の変位と負の第3方向(−Z軸方向)の変位はバランスよく生じることから、第1駆動腕20の駆動振動VAと、第2駆動腕20’の駆動振動VA’は、互いにバランスがとれている。よって、不要な駆動振動成分の相殺の効果が高く、よってノイズ信号を十分に低くすることができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、検出腕の数、ならびに駆動腕の数を増加させ、また、各駆動腕に、バランスのとれたウォークモードの駆動振動を励振し、これらによって、物理量の検出感度を向上させる。
図8は、第2実施形態にかかる振動型ジャイロ素子の構成を示す図である。図8の振動型ジャイロ素子100は、基部10と、基部10から、所定面内(ここでは水晶のZ面を含むXY面内)で正の第1方向(+Y軸方向)に延出する第1検出腕30と、基部10から、所定面内で、正の第1方向とは逆向きの負の第1方向(−Y軸方向)に延出する第2検出腕30’と、第1検出腕30の連結部25から正の第2方向(+X軸方向)に延出する第1駆動腕20aと、第1検出腕の連結部25から負の第2方向(−X軸方向)に延出する第2駆動腕20a’と、基部10から、正の第2方向(+X軸方向)に延出する第3駆動腕20bと、基部10から、負の第2方向(−X軸方向)に延出する第4駆動腕20’と、第2検出腕30’の連結部25’から正の第2方向(+X軸方向)に延出する第5駆動腕20cと、第2検出腕30’の連結部25’から負の第2方向(−X軸方向)に延出する第6駆動腕20c’と、第1駆動腕20aに設けられる第1駆動電極40(1)と、第2駆動腕20a’に設けられる第2駆動電極40(2)と、第3駆動腕20bに設けられる第3駆動電極40(3)と、第4駆動腕20b’に設けられる第4駆動電極40(4)と、第5駆動腕20cに設けられる第5駆動電極40(5)と、第6駆動腕20c’に設けられる第6駆動電極40(6)と、第1検出腕30に設けられる第1検出電極(32a〜32d)と、第2検出腕30’に設けられる第2検出電極(32a’〜32d’)と、を含む。
第1駆動電極40(1)は、第1駆動腕20aにおける一対の主面の少なくとも一方(本実施形態では両主面の各々とする)に設けられる第1櫛歯電極(電極41a(1)と電極41b(1)を含む)であり、第2駆動電極40(2)は、第2駆動腕20a’における一対の主面の少なくとも一方(本実施形態では両主面の各々とする)に設けられる第2櫛歯電極(電極41a(1)’と電極41b(1)’を含む)であり、第3駆動電極40(3)は、第2駆動腕20a’における一対の主面の少なくとも一方(本実施形態では両主面の各々とする)に設けられる第3櫛歯電極(電極41a(2)と電極41b(2)を含む)であり、第4駆動電極40(4)は、第4駆動腕20b’における一対の主面の少なくとも一方(本実施形態では両主面の各々とする)に設けられる第4櫛歯電極(電極41a(2)’と電極41b(2)’を含む)であり、第5駆動電極40(5)は、第5駆動腕20cにおける一対の主面の少なくとも一方(本実施形態では両主面の各々とする)に設けられる第5櫛歯電極(電極41a(3)と電極41b(3)を含む)であり、第6駆動電極40(6)は、第6駆動腕20c’における一対の主面の少なくとも一方(本実施形態では両主面の各々とする)に設けられる第6櫛歯電極(電極41a(3)’と電極41b(3)’を含む)である。
図9(A)〜図9(F)は、図8に示される振動型ジャイロ素子の振動姿態の例を示す図である。図9(A)、図9(C)、図9(E)は駆動振動VA,VA’の態様のみを示す斜視図である。図9(B)、図9(D)、図9(F)は検出振動VBによる各腕の屈曲状態のみを示す平面図(すなわち、平面視における各腕の変位状態を示す図)である。また、図9(B)は図9(A)に対応し、図9(D)は図9(C)に対応し、図9(F)は図9(E)に対応する。
図9(A)および図9(B)では、振動型ジャイロ素子100は静止状態にある。図9(C)では、振動型ジャイロ素子100の第1駆動腕20a、第2駆動腕20a’、第5駆動腕20c、第6駆動腕20c’は、駆動振動VA,VA’によって、正の第3方向(+Z軸方向)に屈曲している。一方、第3駆動腕20b、第4駆動腕20b’は、駆動振動VA,VA’によって、負の第3方向(−Z軸方向)に屈曲している。
図9(D)では、正の第1方向の軸(+Y軸)回りに角速度Ωが生じ、これによって、第3駆動腕20bおよび第4駆動腕20b’以外の腕は、検出振動VBによって、負の第2方向(−X軸方向)に変位している。第3駆動腕20bおよび第4駆動腕20b’にも、正の第2方向(+X軸方向)のコリオリ力が作用するが、基部10は固定されていることから、第3駆動腕20bおよび第4駆動腕20b’には変位は生じない。
図9(E)では、振動型ジャイロ素子100の第1駆動腕20a、第2駆動腕20a’、第5駆動腕20c、第6駆動腕20c’は、駆動振動VA,VA’によって、負の第3方向(−Z軸方向)に屈曲している。一方、第3駆動腕20b、第4駆動腕20b’は、駆動振動VA,VA’によって、正の第3方向(+Z軸方向)に屈曲している。
図9(F)では、正の第1方向の軸(+Y軸)回りに角速度Ωが生じ、これによって、第3駆動腕20bおよび第4駆動腕20b’以外の腕は、検出振動VBによって、正の第2方向(+X軸方向)に変位している。第3駆動腕20bおよび第4駆動腕20b’にも、負の第2方向(−X軸方向)のコリオリ力が作用するが、基部10は固定されていることから、第3駆動腕20bおよび第4駆動腕20b’には変位は生じない。
本実施形態では、第1駆動腕20aと第2駆動腕20a’ならびに第5駆動腕20cと第6駆動腕20c’の各々には、第3方向(Z軸方向)に、かつ、各腕の変位が同じ向きとなるように、ウォークモードの駆動振動が励振される。一方、第3駆動腕20bと第4駆動腕20b’の各々には、第3方向(Z軸方向)であって、かつ、変位の向きが、第1駆動腕20aと第2駆動腕20a’ならびに第5駆動腕20cと第6駆動腕20c’の各々の変位の方向とは逆になるように、ウォークモードの駆動振動が励振される。
換言すれば、3対の駆動腕のうち、両側の2対の駆動腕が同相駆動され、中央の1対の駆動腕は逆相で駆動されるのであり、これによって、力学的にバランスのとれた駆動振動を実現される。面外振動のバランスがよいことから、共振のQ値が高くなり、駆動振動の振幅が増大し、振動周波数も安定する。よって、より高感度で、かつ、感度安定性が高い振動型ジャイロ素子が実現される。
また、2つの検出腕(第1検出腕30と第2検出腕30’)が設けられることから、電界によって移動する電荷量が増え、検出感度を高めることができる。
図10(A)および図10(B)は、第2実施形態にかかる振動型ジャイロセンサーにおける物理量の検出動作を説明するための図である。図10(A)に示されるような変位が各腕に生じている状態では、図10(B)における矢印の向き(端子J1から端子J2に向かう向き)に電荷Qが移動する。
すなわち、図10(B)に示されるように、第1検出腕30の第1面(表面)には第1検出腕用の第1電極32aが設けられている。第1検出腕30の第2面(裏面)には第1検出腕用の第2電極32bが設けられている。第1検出腕30の第3面(左側面)には第1検出腕用の第3電極32cが設けられている。第1検出腕30の第4面(右側面)には第1検出腕用の第4電極32dが設けられている。
また、第2検出腕30’の第1面(表面)には第2検出腕用の第1電極32a’が設けられている。第2検出腕30’の第2面(裏面)には第2検出腕用の第2電極32b’が設けられている。第2検出腕30’の第3面(左側面)には第2検出腕用の第3電極32c’が設けられている。第2検出腕30’の第4面(右側面)には第2検出腕用の第4電極32d’が設けられている。
そして、第1検出腕用の第1電極32aと、第1検出腕用の第2電極32bと、第2検出腕用の第1電極32a’と、第2検出腕用の第2電極32b’とは共通に接続されている。また、第1検出腕用の第3電極32cと、第1検出腕用の第4電極32dと、第2検出腕用の第3電極32c’と、第2検出腕用の第4電極32d’とは共通に接続されている。
第1検出腕30には、検出振動VBによる第1方向(Y軸方向)の歪み(−Syおよび+Sy)に対応して、圧電定数d12による電界(+Exおよび−Ex)が生じ、同様に、第2検出腕30’には、検出振動VBによる第1方向(Y軸方向)の歪み(−Syおよび+Sy)に対応して、圧電定数d12による電界(+Exおよび−Ex)が生じる。各検出腕に生じる電界の向きは同じである。この電界によって、各検出腕において電荷が移動する。よって、図10(B)に示される矢印の向き(つまり、端子J1から端子J2に向かう方向)に電荷Qが移動する。
図11(A)および図11(B)は、第2実施形態にかかる振動型ジャイロセンサーにおける物理量の検出動作を説明するための図である。図11(A)に示されるような変位が各腕に生じている状態では、図11(B)における矢印の向き(端子J2から端子J1に向かう向き)に電荷Qが移動する。つまり、第1検出腕30には、検出振動VBによる第1方向(Y軸方向)の歪み(−Syおよび+Sy)に対応して、圧電定数d12による電界(+Exおよび−Ex)が生じ、同様に、第2検出腕30’には、検出振動VBによる第1方向(Y軸方向)の歪み(−Syおよび+Sy)に対応して、圧電定数d12による電界(+Exおよび−Ex)が生じる。各検出腕に生じる電界の向きは同じである。この電界によって、各検出腕において電荷が移動する。よって、図11(B)に示される矢印の向き(つまり、端子J2から端子J1に向かう方向)に電荷Qが移動する。
このようにして、電荷Qの移動が生じ、この電荷の移動に伴う電気信号(微小な電流信号)が検出電極(32a〜32d、32a’〜32d’)から取り出される。
(第3実施形態)
図12は、振動型ジャイロ素子における駆動腕の他の例を示す図である。図12の上側には、駆動腕20の平面図が示され、下側には、駆動腕20のA−A線に沿う断面図が示される。
図12の下側の断面図に示されるように、駆動腕20の第1面(表面)には、凸部60a〜60cが設けられている。そして櫛歯電極を構成する、対向する一対の電極41aおよび41bは、凸部60a〜60cの各々を挟むように形成されている。同様に、駆動腕20の第2面(裏面)には、凸部60a’〜60c’が設けられている。そして、櫛歯電極を構成する、対向する一対の電極41cおよび41dは、凸部60a’〜60c’の各々を挟むように形成されている。
この構造によれば、無駄な電界が減少することから、対向する電極(41aと41b、41cと41d)間に生じる電界Exの強度を大きくすることができる。よって、より効率的に駆動振動を励振することができる。
また、各対向部分間に生じる無効な電界(図中、点線で示される)は、空気(減圧パッケージ内では例えば真空に近い)の誘電率が、振動腕の材料(水晶や石英)等の誘電率よりも小さいことから弱められる。よって、無効電界によって有効電界が打ち消されることが効果的に低減される。この点も効率的な駆動振動の励振に寄与する。
よって、本実施形態によれば、効率的に駆動振動を励振することができるため駆動振動の振幅が増加し、角速度によって生じる検出振動振幅も大きくなることから、振動型ジャイロセンサーの、より高感度化が実現される。
(第4実施形態)
図13は、振動型ジャイロ素子における駆動腕における櫛歯電極の他の構成例を示す図である。
先に説明した図4(D)の例では、櫛歯電極における、各対向部分間の距離は等間隔であったが、図13の例では、各対向部分間の距離を、基部10からの距離に応じて異ならせる。
図13において、櫛歯電極の第1対向部分42(1)、第2対向部分42(2)、第3対向部分42(3)の各々は、記載の順に、基部10からの距離が遠くなる。そして、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間隔をL2とし、第2対向部分42(2)と第3対向部分42(3)との間の距離をL3としたとき、L2<L3が成立する。この理由は以下のとおりである。
駆動腕20に駆動振動(面外振動)を生じさせるためには、駆動腕20の主面(例えば表面および裏面の少なくとも一方)において、圧縮や伸張(引っ張り)の歪み(応力)を生じさせる必要がある。駆動腕20は、固定端である基部10を基準として面外方向に振動することから、駆動腕の屈曲に最も有効な歪みは、基部10に近い箇所における歪みである。基部から遠い箇所(先端付近)の歪みは駆動腕の屈曲に与える影響が小さい。
この考察に基づいて、本実施形態では、櫛歯電極に含まれる3つの対向部分の各々間の間隔を、基部からの距離に応じて変化させる。つまり、第1対向部分42(1)と第2対向部分42(2)との間の間隔L2よりも、第2対向部分42(2)と第3対向部分42(3)との間隔L3を大きく設定する。
図13の例では、第1地点N1〜第2地点N2までの距離をL4としたとき、第2地点N2から第3地点N3までの距離L5が、2・L4となるように設定されている。
このようにすれば、駆動腕20の延出方向に沿って配置される対向部分の数を、各対向部分を等間隔で配置する場合に比べて減少させることができる(特に、駆動腕が長い場合には、対向部分の数の削減効果が顕在化する)。このことは、駆動腕20に発生する電界の総量が減ることを意味し、よって、消費電力の削減の効果が得られる。一方、基部10から遠い箇所における電界が減少したとしても、その電界が駆動腕の屈曲に寄与する程度は小さいことから、駆動腕20には、必要な振幅の駆動振動を生じさせることができる。
(第5実施形態)
本実施形態では、基材上に圧電材料膜を形成する例について説明する。図14(A)〜図14(C)は、振動型ジャイロ素子の他の例(基材上に圧電材料膜を形成する例)について説明するための図である。
図14(A)は、基材上に圧電材料膜(圧電膜)を形成した振動型ジャイロ素子102の平面図である。図14(B)は、第1駆動腕20のA−A線に沿う断面図である。また、図14(C)は、検出腕30のB−B線に沿う断面図である。図14(A)に示される振動型ジャイロ素子102の基本的な動作は第1実施形態で示したものと同じである。但し、図14の例では、駆動振動の励振ならびに検出腕の歪みの電気信号への変換に、基材上に形成される圧電材料膜を使用する。
基材は剛性を有する材料(例えば水晶やSi)であり、圧電材料としては、例えば、ZnO,AlN、LiNbO3、KNbO3のいずれかを使用することができる。図14(B)において、剛性を有する基材91上には、下部駆動電極92と、圧電材料膜93と、上部電極94とで構成される積層体90aが設けられている。下部電極92と上部電極94との間に電界を加えることによって、圧電材料膜93を伸縮させることができる。これによって、駆動腕に駆動振動(第3方向の面外振動)を生じさせることができる。
なお、第2駆動腕20’にも同様の積層構造を有する積層体90bが設けられており、同様の動作によって、第2駆動腕20’に面外振動を生じさせることができる。
また、図14(C)に示すように、検出腕30の、例えば第1面上には、第1検出用積層体110aと、第2検出用積層体110bと、が形成されている。第1検出用積層体110aは、下部駆動電極112aと、圧電材料膜93aと、上部電極114aとで構成される。また、第2検出用積層体110bは、下部駆動電極112bと、圧電材料膜93bと、上部電極114bとで構成される。
検出腕30の先端が、例えば負の第2方向(−X側)に屈曲したときは、第2積層体110bの圧電材料膜93bに圧縮力に伴う電界+Ezが発生し、第1積層体110aの圧電材料膜93aに伸張力(引っ張り力)に伴う電界−Ezが発生し、各電界によって、電荷の移動が生じる。各電荷の移動による変動電圧を差動検出すれば、検出腕30の曲げ応力の大きさを検出することができ、よって、角速度を検出するがことができる。
図15(A)〜図15(F)は、圧電材料膜(圧電セラミック)の特性を説明するための図である。図15において、(+)や(−)は極性を示し、丸で囲まれて示されている−は、分極されたマイナスイオンを示し、丸で囲まれて示されている+は、分極されたプラスイオンを示す。図15(A)は、無負荷状態を示す。図15(B)のように、圧電材料膜93に圧縮が生じると、正極性の電圧が生じる。また、図15(C)のように、圧電材料膜93に引っ張りが生じると、負極性の電圧が生じる。
また、図15(D)に示すように、圧電材料膜93に正極性の電圧が印加されると、圧電材料膜93に引っ張り応力が発生する。また、図15(E)に示すように、圧電材料膜93に負極性の電圧が印加されると、圧電材料膜93に収縮応力が生じる。よって、図15(F)に示すように、圧電材料膜93に交流信号を供給すると、圧電材料膜93に伸縮(伸張と収縮)を生じさせることができる。このような圧電材料膜の特性を利用すれば、図14の例で説明したように、駆動腕に駆動振動(第3方向の面外振動)を生じさせることができ、また、駆動腕に生じる応力を電気信号に変換することもできる。
(第6実施形態)
本実施形態では、電子機器の一例について説明する。図16は、振動型ジャイロセンサーを含む電子機器について説明する。図16は、振動型ジャイロセンサーを含む電子機器の構成の一例を示す図である。
図16において、上記いずれかの実施形態の振動型ジャイロ素子100(あるいは102)ならびに他の種類の検出素子(ここでは加速度検出素子とする)500を組み合わせることによって、高機能なセンサーユニット(電子機器の一種)600を実現することができる。
また、このセンサーユニット600(ならびに、例えばCPU700等)を、カメラやFA機器等の電子機器800に搭載すれば、電子機器800を、より高機能化することができる。すなわち、振動型ジャイロセンサー100(102)は、従来に比べて格段に高精度な角速度の検出が可能であり、よって、電子機器(600、800)の性能が向上する。
(静電結合、電気機械的結合、機械結合についての説明)
図18は、振動型ジャイロセンサーおける、静電結合、電気機械的結合ならびに機械結合について説明するための図である。図17において、駆動電極400と検出電極430とが近接して配置されると、各電極間には寄生容量が形成される。よって、各電極間で静電結合(クロストーク)CP1が生じ易くなる。
また、駆動電極400と検出電極430が近接して配置され、かつ、駆動電極400と検出電極430の電位が異なる場合には、意図しない不要な電界が生じ、これに伴う不要な振動成分が発生する。つまり、電気機械結合CP2およびCP3が生じる。
また、剛性のある材料を経由した機械結合C4により、駆動腕に生じる駆動振動の一部が、検出腕に漏れ込む(伝播する)場合も有り得る。上述のとおり、本発明の各実施形態にかかる振動型ジャイロセンサーでは、駆動腕と検出腕が分離されていることから、各腕における電極配置や配線も無理なく行える。また、駆動腕と検出腕が分離されていることから、静電結合や電気機械結合の影響も低減される。
また、先に説明したように、本発明の各実施形態では、駆動腕から漏れ込む不要な駆動振動成分は相殺されて、十分に抑制される。よって、機械結合による影響を低減できる。
このように、本発明の少なくとも一つの実施形態にかかる振動型ジャイロ素子では、機械結合による不要な振動成分を相殺し十分に抑制したため、加工誤差が存在した場合においても機械結合による余計な信号を抑制できる。このため温度による機械結合の変動の影響も小さく、温度安定性のよいジャイロセンサーが実現できる。さらに、機械結合による余計な信号が生じないことから、効率的にコリオリ力を検出することができ、低ノイズなジャイロセンサーを実現できる。加えて、駆動振動として面外振動(ウォークモードの振動)を利用することから、従来の面内の駆動振動を利用する場合に比べて、駆動腕に生じた検出振動を、より効率的に検出腕に伝えることができ、高精度の検出が可能な振動型ジャイロセンサー(振動型ジャイロスコープ)を実現することができる。よって、物理量の検出効率を格段に高めることができる。なお、振動型ジャイロセンサーは、上記いずれかの実施形態の振動型ジャイロ素子と、検出電極から出力される電気信号に基づいて、例えば第1方向の軸回りに作用する角速度を検出する検出回路(図5の参照符号140)と、を含む。
また、前掲の実施形態において、駆動腕あるいは検出腕となり得る第1の振動腕と、検出腕または駆動腕となり得る振動腕とを例えば直交して配置しておき、用途に応じて、櫛歯電極をいずれか一方の振動腕に形成し、検出電極をいずれか他方の振動腕に形成することによって、角速度の検出軸を切り換えることができる。本発明の実施形態では、このような応用が適宜、可能である。
以上、本発明をいくつかの実施形態を用いて説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、本願発明の振動型ジャイロセンサーはデジタルカメラ、カーナビゲーションシステム、携帯電話、モバイルPC、およびゲームコントローラ等の電子機器にも適用可能である。本願発明の振動型ジャイロセンサーを用いれば、電子機器の角速度(物理量)の検出精度を向上できる。