JP5559981B2 - プレスフィット用端子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
この制御回路系統及びパワー回路系統と外部との接続には、基板に形成されたスルーホールの内幅より拡幅した膨出部を備えるプレスフィット用端子が使用され、このプレスフィット用端子の膨出部をスルーホールに差し込むことで、電気的な接続が行われている。なお、プレスフィット用端子の表面には、鉛フリーを考慮して接続基板のスルーホールとの接触性を高めるため、Snめっきがなされている。
なお、プレスフィット用端子とは異なる構造の端子として、かん合型端子がある。このかん合型端子は、一般に、めす端子がバネ構造を有するものであり、端子の取付けに際しては、プレスフィット用端子のように、多大な力を要しない(例えば、1端子当り0.3〜0.4kg程度)ため、めっき材に削れが発生しない。また、かん合型端子は、プレスフィット用端子の使用形態とは異なるため、例え削れかすが発生したとしても、この削れかすが基板の電気回路をショートさせるという問題も生じない。
このため、本願発明者らは、母材の表面に、Cu含有率が35〜75at%であるCu−Sn合金層を設けたプレスフィット用端子を発明し、先に出願した(特許文献2参照)。
また、母材の表面に形成されるCu−Sn合金層の種類が規定されておらず、製品品質がばらつき、更なる硬度向上の要求に対して十分に対応できない恐れもあった。
加熱処理により、母材の表面に、下地めっき層を介して、Cu3Sn合金層とCu6Sn5合金層が順次設けられ、該Cu6Sn5合金層の表面におけるSnの露出をなくし、
前記Cu3Sn合金層と前記Cu6Sn5合金層との合計厚みが0.2μm以上5μm以下であり、しかも前記Cu6Sn5合金層の表面への前記Cu3Sn合金層の露出を、全表面積の50%以下とし、更に、前記スルーホールに接する部位のめっき厚を他の部分より薄くした。
第1の発明に係るプレスフィット用端子において、前記スルーホールへの圧入時に、長さ300μm以上の端子めっきの削れかすが発生しないことが好ましい。
第1の発明に係るプレスフィット用端子において、自動車の電子制御装置に使用されることが好ましい。
母材に下地めっきを行い、この下地めっき層の上にCu又はCu合金によるCuめっきを行い、更に、その上にSn又はSn合金によるSnめっきを行う第1工程と、
前記第1工程で、下地めっき、Cuめっき、及びSnめっきが行われた前記母材を加熱して、該母材の表面に、前記下地めっき層を介してCu3Sn合金層とCu6Sn5合金層を順次設け、加熱処理された該Cu6Sn5合金層の表面におけるSnの露出をなくし、しかも前記Cu6Sn5合金層の表面への前記Cu3Sn合金層の露出を、全表面積の50%以下とし、更に前記スルーホールに接する部位のめっき厚を他の部分より薄くする第2工程とを有し、
前記Cu3Sn合金層と前記Cu6Sn5合金層との合計厚みが0.2μm以上5μm以下である。
また、Cu6Sn5合金層の下層にCu3Sn合金層を形成することで、Cu6Sn5合金層の表面へのSnの露出をなくした製品を製造する際の製造条件(例えば、下地めっき、Cuめっき、及びSnめっきのめっき厚や、加熱処理時の温度等)を広げることができる。
従って、スルーホールとの接触性の低下を生じない高硬度の製品を、生産性よく、しかも安定に製造できる。
さらに、Cu3Sn合金層とCu6Sn5合金層の合計厚みを規定するので、ハンドリング(搬送)やアセンブリ(組立て)時に付く疵で母材が露出することを防止できると共に、めっき加工費の低減が図れ、しかも曲げ加工性も良好にできる。
また、スルーホールに接する部位のめっき厚を他の部分より薄くするので、スルーホールとの接触性の低下を生じない高硬度の製品を、更に生産性よく安定に製造できる。
請求項7記載のプレスフィット用端子の製造方法は、母材が、予めプレス加工されたプレスフィット用端子材であるので、切断端面も含むプレスフィット用端子全体のめっきができる。
膨出部14の開き幅は、スルーホール12の直径(例えば、1mm)の1.1〜1.3倍の範囲(例えば、1.2mm)にあり、スルーホール12にプレスフィット用端子10を差し込んだ場合、一定の押圧力を発生するようになっている。
このとき、面取りされた角部の形状は、プレスフィット用端子10をスルーホール12へ挿入した際に、面取りされた各角部を通過する円の形状が、スルーホールと一致するのが好ましい。
これらの膨出部16〜20においても、その角部に丸み付け加工を行って、スルーホール12により広い面積で密着させるようにするのが好ましい。
母材21は、Cu板又はCu合金板からなる素材を、プレスフィット用端子10と同一形状にプレス加工することにより形成されている。
また、下地めっき層22は、Niで形成するのが好ましく、その厚みを0.2μm以上5μm以下としている。
なお、Niめっきの種類によっては、ピンホールが存在する場合もある。このため、形成されるNiめっきが緻密な光沢めっきの場合は、下限を0.3μm(更には0.5μm)とすることが好ましく、無光沢めっきの場合は、下限を0.4μm(更には0.7μm)とすることが好ましい。一方、上限については、Niめっきが厚いほど割れが発生し易くなるため、2μmとすることが好ましい。
ここで、各合金層の合計厚みの下限値は、ハンドリングやアセンブリ時に付く疵で、母材が露出しないことを考慮して、0.2μmとした。一方、各合金層の合計厚みが5μmを超える場合、めっき加工費のコストが上昇し、更には曲げ加工性が悪くなる。
なお、Cu6Sn5合金層は、接触抵抗性もSnめっき層を表面に用いた場合と遜色がなく、しかも腐食性を有するガス(例えば、亜硫酸ガス)に対しても耐食性を有し、長期の寿命を有するため、その厚みを0.15μm以上とするのがよい。
Cu6Sn5合金の硬度は、例えば、荷重10gfでHv200〜300であるため、Snの硬度と比較して高く、しかも高硬度で安定している。
このため、プレスフィット用端子10を基板11のスルーホール12へ圧入する際、長さ300μm以上の端子めっきの削れかすが発生しない。なお、端子めっきの削れかすの下限は、100μmまで低減すると、プレスフィット用端子の製品品質を更に向上できる。
なお、この方法と実質的に等価の評価方法で削れかすの長さを評価する場合も、本発明は適用される。
なお、膨出部14のめっき厚みは、例えば、めっき電流密度を低下させること、またリフロー(加熱)時にめっき金属を他の部分に流すこと、等の方法を用いることにより薄くできる。
まず、Cu板又はCu合金板からなる素材を、プレスフィット用端子10と同一形状にプレス加工することにより、母材21を形成する。
次に、プレス加工後の母材21にNiめっきによる下地めっきを行い、この下地めっき層22の上にCuによるCuめっきを行い、更にその上にSnによるSnめっきを行い、Cuめっき層とSnめっき層を順次形成する。ここで、Niの下地めっき層の厚みを0.2μm以上5μm以下とし、Cuめっき層の厚みを0.05μm以上2μm以下とし、Snめっき層の厚みを、形成されるCu3Sn合金層23とCu6Sn5合金層24の厚みに応じて調整(例えば、Cuめっき層の厚みの1.0倍以上1.9倍未満)している(以上、第1工程)。
なお、Cu6Sn5合金層の表面へCu3Sn合金層が露出する場合もあるが、このとき、Cu6Sn5合金層の表面へのCu3Sn合金層の露出は、全表面積の50%以下(好ましくは、40%以下、更には30%以下)であればよい。
以上のように、下地めっき層22の上に、Cuめっき層とSnめっき層を形成し、これらを加熱して合金を生成しているので、比較的簡便にCu3Sn合金層23とCu6Sn5合金層24を形成できる。
Cu合金からなるプレスフィット用端子の母材の表面に、厚み2μmのNiめっきを介して、Cuめっき、及びSnめっきを順次行い、これを加熱(リフロー)し、Cu3Sn合金層とCu6Sn5合金層を順次設けた。その結果、Cu6Sn5合金層の表面には、Snの露出がなかった。
一方、Cu合金からなるプレスフィット用端子の母材の表面に、厚み2μmのNiめっきを介して、Cuめっき、及びSnめっきを順次行い、これを加熱し、上記したCu3Sn合金層がない、Cu含有率が35〜50at%のCu−Sn合金層を設けた。その結果、Cu−Sn合金層の表面にSnが散在的に露出した。
このように、母材の表面に、Cu3Sn合金層とCu6Sn5合金層を順次設けることで、Snの露出がなく、高硬度の製品を生産性よく、しかも安定に製造できることを確認できた。
また、前記実施の形態においては、第1工程で、下地めっき層の上にCuからなるCuめっき層とSnからなるSnめっき層を順次形成した場合について説明したが、Cuめっき層をCu合金で構成してもよく、またSnめっき層をSn合金で構成してもよい。また、下地めっき層の上に直接Cu3Sn合金とCu6Sn5合金を順次めっきしてもよい。この場合、組織の合金化を高めるために更に加熱するのが好ましい。
Claims (7)
- 基板に形成されたスルーホールに圧入して該基板に取付けるプレスフィット用端子において、
加熱処理により、母材の表面に、下地めっき層を介して、Cu3Sn合金層とCu6Sn5合金層が順次設けられ、該Cu6Sn5合金層の表面におけるSnの露出をなくし、
前記Cu3Sn合金層と前記Cu6Sn5合金層との合計厚みが0.2μm以上5μm以下であり、しかも前記Cu6Sn5合金層の表面への前記Cu3Sn合金層の露出を、全表面積の50%以下とし、
更に、前記スルーホールに接する部位のめっき厚を他の部分より薄くしたことを特徴とするプレスフィット用端子。 - 請求項1記載のプレスフィット用端子において、前記母材がCu又はCu合金であることを特徴とするプレスフィット用端子。
- 請求項1又は2記載のプレスフィット用端子において、前記下地めっき層はNiであり、該下地めっき層の厚みが0.2μm以上5μm以下の範囲にあることを特徴とするプレスフィット用端子。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレスフィット用端子において、前記スルーホールへの圧入時に、長さ300μm以上の端子めっきの削れかすが発生しないことを特徴とするプレスフィット用端子。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレスフィット用端子において、自動車の電子制御装置に使用されることを特徴とするプレスフィット用端子。
- 基板に形成されたスルーホールに圧入して該基板に取付けるプレスフィット用端子の製造方法において、
母材に下地めっきを行い、この下地めっき層の上にCu又はCu合金によるCuめっきを行い、更に、その上にSn又はSn合金によるSnめっきを行う第1工程と、
前記第1工程で、下地めっき、Cuめっき、及びSnめっきが行われた前記母材を加熱して、該母材の表面に、前記下地めっき層を介してCu3Sn合金層とCu6Sn5合金層を順次設け、加熱処理された該Cu6Sn5合金層の表面におけるSnの露出をなくし、しかも前記Cu6Sn5合金層の表面への前記Cu3Sn合金層の露出を、全表面積の50%以下とし、更に前記スルーホールに接する部位のめっき厚を他の部分より薄くする第2工程とを有し、
前記Cu3Sn合金層と前記Cu6Sn5合金層との合計厚みが0.2μm以上5μm以下であることを特徴とするプレスフィット用端子の製造方法。 - 請求項6記載のプレスフィット用端子の製造方法において、前記母材は、予めプレス加工されたプレスフィット用端子材であって、前記下地めっき層はNiからなることを特徴とするプレスフィット用端子の製造方法。
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