JP5558207B2 - アスファルト改質用ブロック共重合体及びアスファルト組成物 - Google Patents
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Description
前記熱工法に用いられるアスファルトは、ストレートアスファルトに高温の空気を吹き込むことにより軟化点を高くした、いわゆるブローンアスファルトが殆どである。
ブローンアスファルトは、耐候性や耐水性に優れているものの、一方において、溶融粘度が高く、施工性が劣るという欠点を有している。
また、熱工法においては、300℃程度の高温で施工するため、ブローンアスファルト成分に含まれる低沸点成分の蒸発が起こったり、臭気が発生したりするため、作業現場付近の環境を悪くしているという問題もある。
さらに、性能的にもブローンアスファルトは針入度が小さく、特に低温環境下では、硬くて脆いという欠点がある。
また、特許文献2に記載の技術は、アスファルトに反応性を付与する材料の選択によって反応の割合が異なることや、原産地や精製所等の違いにより、一定の特性を有するアスファルトを入手することは事実上困難であり、同一品質のアスファルト組成物を安定して得ることは難しいという問題がある。
さらに、特許文献3においては、各種の熱可塑性エラストマーが挙げられているものの、これらについて十分な検証が行われておらず、各種熱可塑性エラストマーを併用することにより、低温性能の十分な改善効果が得られるかが明らかではない。
すなわち、本発明は以下の通りである。
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエン単量体単位を含
有し、アルキレン単量体単位が30〜90mol%含まれており、前記アルキレン単量体単位が前記共役ジエン単量体単位を水素添加反応することにより得られたものであり、前記水素添加反応前における前記共役ジエンのビニル結合量が23〜50%である重合体Bからなるブロック共重合体であり、
前記共役ジエン単量体単位が前記ブロック共重合体中に5〜45質量%含まれており、
かつ、下記(a)〜(c)の条件を満たすアスファルト改質用ブロック共重合体。
(a)重合体ブロックAと重合体Bの割合(質量%)が、(A/B)=25/75〜50/50。
(b)ブロック共重合体のGPC測定による数平均分子量[Mn]が標準ポリスチレン換
算で4.5万以上。
(c)ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合を[S]としたとき、[Mn]≦−
0.1[S]+9.5の関係を満たす。なお、[Mn]の単位は万であり、[S]の単位は
質量%である。
前記ブロック共重合体は、−70℃〜−45℃の範囲に1つ以上のtanδ(損失正接
)ピーク1と、80℃以上100℃以下の範囲に1つ以上のtanδ(損失正接)ピーク
2とを有している前記〔1〕に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体。
前記〔1〕又は〔2〕に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体3〜15質量%と、ストレートアスファルト85〜97質量%とを含有するアスファルト組成物。
前記アスファルト組成物を300℃で5時間放置した後の溶融粘度の変化率が、−40
%〜+40%である前記〔3〕に記載のアスファルト組成物。
また、本発明のアスファルト組成物は、ブローンアスファルトに比べ、針入度が高く、適度な硬さと柔軟性と耐熱性とを有している。従って、本発明のブロック共重合体は、アスファルトルーフィング・防水シート施工の熱工法用等に使用されるブローンアスファルトの代替としてのストレートアスファルトの改質材として有効である。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエン単量体単位を含有する重合体Bからなるブロック共重合体である。
重合体ブロックA、重合体B、ブロック共重合体の構成、及びブロック共重合体の製造方法については後述する。
単量体単位を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。
一方、「共役ジエン単量体」は、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、中でも1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、後述する本実施形態におけるアスファルト組成物において、熱安定性の観点から、1,3−ブタジエンがより好ましい。
これらの単量体は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これにより、後述する本実施形態のアスファルト組成物は、耐だれ性に優れ、高い加熱安定性が得られ、耐折曲げ性に優れるものとなる。
重合体ブロックAと重合体Bとの割合A/Bが上記範囲であると、後述する本実施形態のアスファルト組成物において、優れた耐熱性、柔軟性が得られる。
好ましい重合体ブロックAと重合体Bの割合は27/73〜45/55であり、より好ましい重合体ブロックAと重合体Bの割合が27/73〜40/60である。
ブロック共重合体の数平均分子量が4.5万以上であると、後述する本実施形態のアスファルト組成物において、優れた耐熱性が得られる。好ましい数平均分子量の範囲は4.75万以上である。
好ましくは、[Mn]≦−0.1[S]+9.2の範囲である。
後述する本実施形態のアスファルト組成物の溶融粘度との関係において、ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合[S]と、ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定による数平均分子量[Mn]との関係について検証したところ、上記式の関係を満たすことにより、適切な溶融粘度となり、良好な施工性が得られることを確認した。
本実施形態の重合体Bを構成するアルキレン単位とは、エチレン単位、プロピレン単位、ブチレン単位、ヘキシレン単位、及びオクチレン単位等のモノオレフィン単位を示し、特に、エチレン単位、プロピレン単位及びブチレン単位が、経済性の点で好ましい。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
好ましい全共重合体B中のアルキレンの含有量は、40mol%以上85mol%以下であり、より好ましくは50mol%以上80mol%以下である。
なお、前記共役ジエン単量体のビニル結合量は、後述する水素添加前のビニル結合量であるものとする。
これにより、後述する本実施形態のアスファルト組成物は、軟化点が高く、耐だれ性に優れ、高い耐熱性が得られ、耐折曲げ性に優れ、柔軟性が優れる。
なお、共役ジエン単量体のビニル結合量は、後述する水素添加前において、20〜45%であることが好ましい。
なお、−65℃以上−50℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク1と、85℃以上95℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2とを有することがより好ましい。
具体的には、RSI Orchestrator(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名)の自動測定より検出されるピークから求められる。
(A−B)n、A−(B−A)n、[(A−B)n]Xm
Aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックである。
Bは、共役ジエン単量体単位を含有する重合体である。
上記Xは、例えば、四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物等のカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。
上記一般式中、加工性、耐熱性、低温特性等の性能バランスの観点から、A−B−Aの構造が好ましい。
上記一般式中、m及びnは、1以上の整数を示し、1〜5の整数であることが好ましい。
ビニル結合単位の分布は、後述する重合中にビニル化剤を添加したり、重合中の温度を変化させたりする等の方法により制御できる。
本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体は、前記「ビニル芳香族単量体」、前記「共役ジエン単量体」を用いて、所定の重合を行い、その後、水添反応を行うことにより得られる。
重合方法については、特に限定されるものではなく、例えば、配位重合、アニオン重合又はカチオン重合等が挙げられる。構造の制御の容易さの観点からはアニオン重合が好ましい。
例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
水添反応に使用される触媒としては、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一触媒が知られている。
水添反応の具体的な方法としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報及び特公平2−9041号公報に記載された方法が挙げられる。例えば、炭化水素溶媒中で水添触媒の存在下に水素添加して、水素添加物を得ることができる。その際、ブロック共重合体の水素添加率は、反応温度、反応時間、水素供給量、触媒量等を調整することによりコントロールすることができる。
本実施形態のアスファルト組成物は、上述した本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体3〜15質量%と、アスファルト85〜97質量%とを含有している。
アスファルト改質用ブロック共重合体の含有量が3〜15質量%であると、耐熱性に優れたものとなり、また溶融粘度が高くなりすぎず、実用上良好な加工性が得られる。
これらの含有量は、好ましくは、アスファルト改質用ブロック共重合体4〜13質量%、アスファルト87〜96質量%、より好ましくは、アスファルト改質用ブロック共重合体5〜10質量%、アスファルト90〜95質量%の範囲である。
具体的には、加熱条件をJIS K2207石油アスファルトの加熱安定性試験に従って行い、加熱前後のアスファルト組成物の180℃の溶融粘度を測定し、溶融粘度変化率を計算する。
好ましい粘度の変化率の範囲は、−35%〜+35%、さらに好ましい変化率の範囲は、−30%〜+30%である。
前記ストレートアスファルトとしては、針入度が30〜300のストレートアスファルトが好ましい。
より好ましくは、針入度は60〜200である。アスファルト組成物には、必要により、瀝青の中のセミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ等を前記ストレートアスファルトに混合して使用することができる。
前記針入度は、JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に規定の針が5秒間に進入する長さを測定する。
<粘着付与剤樹脂>
本実施形態のアスファルト組成物には、粘着付与剤樹脂を添加してもよい。
粘着付与剤樹脂としては、種類は特に限定はなく、例えば、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等の公知の粘着付与性樹脂が挙げられる。
粘着付与剤は単独で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
粘着付与剤の具体例としては、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。
粘着付与剤樹脂を用いることにより、接着強さの改良が図られる。
本実施形態のアスファルト組成物中における粘着付与剤樹脂の含有量は、本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体を100質量部としたとき、好ましくは0〜200質量部、より好ましくは0〜100質量部の範囲で使用される。
上記範囲の含有量とすることにより、長期貼り付け後においても接着力が強くなりすぎず、剥離の際の糊残りを防止することができる。
本実施形態のアスファルト組成物には、軟化剤を添加してもよい。
軟化剤としては、鉱物油系軟化剤又は合成樹脂系軟化剤のいずれも使用できる。
鉱物油系軟化剤は、一般に、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物が挙げられる。
パラフィン系炭化水素の炭素原子数が全炭素原子中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、ナフテン系炭化水素の炭素原子が30〜45%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、また、芳香族系炭化水素の炭素原子が35%以上のものが芳香族系オイルと呼ばれている。
軟化剤としては、ゴム用軟化剤であるパラフィン系オイルが好ましく、合成樹脂系軟化剤としては、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が好ましいものとして挙げられる。
軟化剤を含有させることにより、本実施形態のアスファルト組成物において、密着性や粘着性の改良が図られる。
本実施形態のアスファルト組成物中の軟化剤の含有量は、軟化剤のブリード抑制や、本実施形態のアスファルト組成物において実用上十分な機械強度を確保する観点から、0〜100質量%であることが好ましい。
軟化剤のアスファルト組成物中の含有量は、0〜50質量%の範囲がより好ましく、0〜30質量%以下の範囲がさらに好ましい。
本実施形態のアスファルト組成物には、酸化防止剤、光安定剤等の安定剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
本実施形態のアスファルト組成物には、その他、必要に応じて、従来アスファルト組成物に慣用されている各種添加剤、例えばシリカ、タルク、炭酸カルシウム、鉱物質粉末、ガラス繊維等の充填剤や補強剤、鉱物質の骨材、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類、あるいは、アゾジカルボンアミド等の発泡剤、アタクチックポリプロビレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンープロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレンーイソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及び本発明以外のスチレンーブタジエン系ブロック共重合体、スチレンーイソプレン系ブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン系ブロック共重合体などの合成ゴムを添加してもよい。
本実施形態のアスファルト組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の混合機、熱溶融釜、ニーダー等により加熱溶融混練し、均一混合する方法で製造できる。
例えば、熱溶融釜にストレートアスファルトを浸漬し、完全に溶融させ、ホモミキサーなどの攪拌機で攪拌しながら、本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体や各種添加剤を添加し、その後、攪拌速度を上げ、混練することによりアスファルト組成物が製造できる。
〔I.ブロック共重合体の組成及び構造の評価〕
(I−1)スチレン含有量、ブタジエンのビニル結合量、全重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量
ブロック共重合体中のスチレン含有量、ブタジエンのビニル結合量、重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。
測定機器:JNM−LA400(JEOL製)
溶媒:重水素化クロロホルム
測定サンプル:ブロック共重合体を水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度:50mg/ml
観測周波数:400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数:64回
パルス幅:45°
測定温度:26℃
水添前のブロック共重合体の数平均分子量及び分子量分布は、下記の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
分子量分布は、得られた重量平均分子量と数平均分子量との比により算出した。
測定装置:LC−10(島津製作所製)
カラム:TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm)、2本
溶媒:テトラヒドロフラン
検量線用サンプル:市販(東ソー株式会社製)の標準ポリスチレン、10点測定
後述する実施例、比較例で作製した水添後のブロック共重合体を測定材料として用い、これを幅10mm、長さ35mmのサイズにカットし、測定用試料とした。
装置ARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名)の捻りタイプのジオメトリーに、測定用試料をセットし、実効測定長さは25mm、ひずみ0.5%、周波数1Hz、−70℃〜50℃まで、昇温速度3℃/分の条件により測定した。
tanδピーク温度は、RSI Orchestrator(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名)の自動測定より検出されるピークから求めた値である。
(II−1)溶融粘度
ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORYIES、INC.製)を用い、温度条件は160℃、180℃、スピンドル番号は28で測定した。
溶融粘度は250℃以下であれば実用上良好であると判断した。
JIS−K 2207に準じて、アスファルト組成物の軟化点を測定した。
規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。
軟化点は、90℃以上であれば実用上良好であると判断した。
JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に規定の針が5秒間に進入する長さを測定した。
針入度の規格は、40に近い方が良好であるものと判断した。
JIS−K 2207に準じ、鋼板の上に載せた大きさ40mm×60mm、厚さ3mm(3個取り)の型枠にアスファルト組成物を流し込み、冷却後、アスファルト組成物を型枠通りの大きさに削り取り、型枠を外した。
次に、70±2℃に保った高温空気槽中に試料台を試料の長辺方向が垂直になるように懸垂した。
5時間後試料台を取り外し、試料の長辺方向の最大長さを読み取り、測定値から60mmを差し引いた数値のうち、最大長さをだれ長さとした。
耐だれ性(だれ長さ)は、5mm以下であれば、実用上良好であると判断した。
長さ100mm、幅50mm、厚さ3mmに成形したアスファルト組成物のシートを温度調整されたドライアイス−エタノール液に10分間以上浸漬後、シートを取り出し、すばやく直径が15mmの金属棒にシートの長手方向を曲げる様に巻き付け、シートに亀裂が発生しない最低の温度を測定し、低温での柔軟性を評価した。
60℃恒温室内に2時間養生し、保護手袋をした指で押さえた時の感触を3名の試験者で確認を行い、施工時における周囲の汚染の程度を評価した。
アスファルト組成物を300℃で5時間加熱し、加熱前後のそれぞれの試料につき180℃の溶融粘度を測定する。
具体的には、加熱条件をJIS K2207石油アスファルトの加熱安定性試験に従って行い、加熱前後のアスファルト組成物の180℃の溶融粘度を測定し、溶融粘度変化率を計算した。
溶融粘度の変化率を加熱安定性として判断した。
なお、溶融粘度測定装置として、「ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORYIES、INC.製)を用いた。
溶融粘度の変化率が−40%〜+40%の範囲であれば、アスファルト組成物の分解や架橋が抑制されており、性能の低下や施工性の劣化が防止され、実用上良好な流動性が確保でき、熱安定性に優れているものと判断した。
ブロック共重合体の水添反応に用いた水添触媒は下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に、乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビスシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、水添触媒を調製した。
<ポリマー1:スチレン−ブタジエン−アルキレン−スチレンブロック共重合体:A−B−A)>
ここで、A、Bは下記の重合体ブロックを示すものとする。(以下、同様)
A:ポリスチレンブロック
B:ポリブタジエンブロック(ブタジエン−アルキレン)
内容積が20Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.035質量部と、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」と記載する。)を、n−ブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で15分間重合した。
その後、ブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を加えて75℃で80分間重合した。
次に、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン(濃度22質量%)を加えて75℃で20分間重合した。
上述のようにして得られたポリマーは、スチレン含有量30質量%、ブタジエン含有量70質量%、ポリブタジエン部のビニル結合量41モル%、ポリマー全体の数平均分子量6万、分子量分布1.03であった。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られたブロック共重合体(ポリマー1)の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は87mol%であった。
また、ポリマー1のtanδピーク温度は−53℃と89℃であった。
なお、前記ブロック共重合体(ポリマー1)の重合体B中のアルキレン単量体単位は、水添前のポリブタジエン部のビニル結合の位置に依存するため、エチレン及び/又はブチレンとなる。以下、(ポリマー2)〜(ポリマー12)においても同様である。
n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.033質量部添加した。
水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして77ppm添加して水添反応を行った。
その他の条件は、上述した(ポリマー1)と同様にして、水添ブロック共重合体(ポリマー2)を得た。
ブロック共重合体(ポリマー2)の水添前のポリブタジエン部のビニル結合量は40モル%、数平均分子量は5.3万、分子量分布1.03、水添後のポリマー2の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は75mol%、tanδピーク温度は−52℃、92℃であった。
n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.042質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して、0.25モル添加した。
水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして71ppm添加して水添反応を行った。
その他の条件は、上述した(ポリマー1)と同様にして、ブロック共重合体(ポリマー3)を得た。
ブロック共重合体(ポリマー3)の水添前のポリブタジエン部のビニル結合量は28モル%、数平均分子量は4.9万、分子量分布1.03、水添後のポリマー2の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は70mol%、tanδピーク温度は−58℃、91℃であった。
上記ポリマー1と同様に、内容積が20Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、スチレン18質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.040質量部と、TMEDAをnーブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で15分間重合した。
その後、ブタジエン65質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を加えて75℃で80分間重合した。
次に、スチレン17質量部を含むシクロヘキサン(濃度22質量%)を加えて75℃で20分間重合した。
上述のようにして得られたポリマーは、スチレン含有量35質量%、ブタジエン含有量65質量%、ポリブタジエン部のビニル結合量45モル%、ポリマー全体の数平均分子量5.7万、分子量分布1.03であった。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られたブロック共重合体(ポリマー4)の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は74mol%、tanδピーク温度は−53℃、93℃であった。
上記ポリマー1と同様に、内容積が20Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.042質量部と、TMEDAをnーブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で15分間重合した。
その後、ブタジエン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を加えて75℃で80分間重合した。
次に、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン(濃度22質量%)を加えて75℃で20分間重合した。
上述のようにして得られたポリマーは、スチレン含有量40質量%、ブタジエン含有量60質量%、ポリブタジエン部のビニル結合量40モル%、ポリマー全体の数平均分子量4.8万、分子量分布1.04であった。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られたブロック共重合体(ポリマー5)の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は65mol%、tanδピーク温度は−51℃、93℃であった。
上記ポリマー1と同様に、内容積が20Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、スチレン24.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.045質量部と、TMEDAをnーブチルリチウム1モルに対して0.1モル添加し、70℃で25分間重合した。
その後、ブタジエン53質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を加えて75℃で85分間重合した。
次に、スチレン22.5質量部を含むシクロヘキサン(濃度22質量%)を加えて75℃で25分間重合した。
上述のようにして得られたポリマーは、スチレン含有量47質量%、ブタジエン含有量53質量%、ポリブタジエン部のビニル結合量23モル%、ポリマー全体の数平均分子量4.8万、分子量分布1.08であった。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られたブロック共重合体(ポリマー6)の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は35mol%、tanδピーク温度は−65℃、94℃であった。
ポリマー1〜ポリマー6に示す方法と同様に、添加するスチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、ブタジエン、スチレン、チタンを、下記表2に示すポリマーが得られるように変量して各ポリマーを得た。
364gのストレートアスファルト80−100(新日本石油株式会社製)を750ccの容器に入れ、容器を180℃のオイルバスに浸漬し、ストレートアスファルトを完全溶解させた。
次に、回転速度3000rpmでストレートアスファルトをホモミキサーで攪拌しながら、上述のようにして得られたブロック共重合体(ポリマー1)36gを少しずつ、ストレートアスファルト中に添加した。
添加が終了したら、攪拌速度を6000rpmに上げ、90分間混練してアスファルト組成物を得た。
表1〜表3に示す各ポリマーを用い、それぞれのブロック共重合体とアスファルトとの比率に従い、実施例1と同様の混練方法により、アスファルト組成物を得た。
実施例1と同様のポリマー1を用い、ブロック共重合体とアスファルトとの比率を変えた。その他の条件は、実施例1と同様の混練方法でアスファルト組成物を得た。
得られた各アスファルト組成物の物性を、下記〔表1〕、〔表2〕、〔表3〕に示した。
Claims (4)
- ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエン単量体単位を含
有し、アルキレン単量体単位が30〜90mol%含まれており、前記アルキレン単量体単位が前記共役ジエン単量体単位を水素添加反応することにより得られたものであり、前記水素添加反応前における前記共役ジエンのビニル結合量が23〜50%である重合体Bからなるブロック共重合体であり、
前記共役ジエン単量体単位が前記ブロック共重合体中に5〜45質量%含まれており、
かつ、下記(a)〜(c)の条件を満たすアスファルト改質用ブロック共重合体。
(a)重合体ブロックAと重合体Bの割合(質量%)が、(A/B)=25/75〜50/50。
(b)ブロック共重合体のGPC測定による数平均分子量[Mn]が標準ポリスチレン換
算で4.5万以上。
(c)ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合を[S]としたとき、[Mn]≦−
0.1[S]+9.5の関係を満たす。なお、[Mn]の単位は万であり、[S]の単位は
質量%である。 - 前記ブロック共重合体は、
−70℃〜−45℃の範囲に1つ以上のtanδ(損失正接)ピーク1と、
80℃以上100℃以下の範囲に1つ以上のtanδ(損失正接)ピーク2と、
を、有している請求項1に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体。 - 請求項1又は2に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体3〜15質量%と、ストレートアスファルト85〜97質量%とを含有するアスファルト組成物。
- 前記アスファルト組成物を300℃で5時間放置した後の溶融粘度の変化率が、−40
%〜+40%である請求項3に記載のアスファルト組成物。
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