上記従来の振動感知ロック装置は、特許文献1に開示の如く、振動(地震)時に、収納装置本体側に設けた係止軸が上下方向に移動して、扉又は引き出し側に設けた係止体を係止してロックし、閉塞した扉又は引き出しの開放を阻止するものである。そのため、従来の振動感知ロック装置は、係止軸が上下方向に移動するから高さ方向のサイズが大きくなり、狭い場所に取り付けることが困難であると共に、取り付けた場合、収納物の出し入れの障害になる場合があった。又、係止軸が下方に突出してロックされるので、地震時に開放された扉又は引き出しが閉塞方向に移動すると突出して固定された係止軸に衝撃的に当接し、係止軸及びケースを壊してしまう可能性があるという問題点があった。
本願出願人は、特許文献2に示すように、薄い構造で、係止軸が突出せず、しかも壊れ難い構造の地震時ロック装置を提案した。この地震時ロック装置は、上記問題点を解消したが、いわゆるプッシュラッチ式ロック装置であり、構造が複雑で、組み立てが容易ではなく、安価に製造することできなかった。
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、薄く、構造が簡単で、壊れ難い構造であり、部品点数が少なく、組立が容易で安価に製造することできる振動感知ロック装置を提供することを目的とする。
本願請求項1に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、開閉する扉又は引き出しを備えた収納装置本体に設けられ、閉塞時の扉又は引き出しを振動時に開放不能にロックする振動感知ロック装置であって、収納装置本体に取り付けられるロック装置本体と、扉又は引き出しに取り付けられる係止体とからなり、ロック装置本体はケースを有し、ケースの前部には、扉又は引き出しに取り付けられた前記係止体を挿入する開口が形成され、ケースの内部には、ケースの開口からケース内に挿入した前記係止体の扉又は引き出しの開閉に伴う動きによって、前後方向に摺動する摺動部材が設けられ、摺動部材には、摺動部材が後方に摺動すると係止体を係止する係止位置に移動し、摺動部材が前方に摺動すると係止体を係止しない非係止位置に移動する係止部材が設けられ、ケースには、非振動時に摺動部材の摺動を阻止しない所定位置で静止しており、振動時に所定位置から移動して摺動部材の前方への摺動を阻止し、閉塞時の扉又は引き出しを開放不能にロックする転動体が設けられ、ケースの側面には、摺動部材が後方に摺動すると係止部材を係止体を係止する係止位置に案内し、摺動部材が前方に摺動すると係止部材を係止体を係止しない非係止位置に案内する案内部が形成されていることを特徴とする。
本願請求項2に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、ケースには、転動体を所定位置まで導く傾斜面が形成されていることを特徴とする。
本願請求項3に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、前記摺動部材又は前記ケースには、係止部材の係止位置と非係止位置で摺動部材を位置決めする位置決め手段が設けられていることを特徴とする。
本願請求項4に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、転動体は、摺動部材が前方に摺動している時、摺動部材に案内されて移動不能となっており、摺動部材が後方に摺動している時、摺動部材から外れて移動可能となるように構成されていることを特徴とする。
本願請求項5に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、転動体は、摺動部材が前方に摺動している時、摺動部材に形成された収納凹部に収納されて移動不能となっており、摺動部材が後方に摺動している時、摺動部材の収納凹部から外れて移動可能となるように構成されていることを特徴とする。
本願請求項6に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、摺動部材は、前記転動体を収容する矩形枠状に形成され、前部材と、後部材と、前部材と後部材の右側を連結する右部材と、前部材と後部材の左側を連結する左部材とからなり、右部材と左部材の前部には、前記係止部材が設けられ、後部材には、前記転動体を収納する前記収納凹部が形成されていることを特徴とする。
本願請求項7に係る振動感知ロック装置は、上記目的を達成するため、前記係止体は、扉又は引き出しに取り付けられる基台と、基台にスライド可能に取り付けられた係止アームとからなり、当該係止アームは、前記ロック装置本体のケースに形成された開口の位置に合わせて調節可能であることを特徴とする。
本願発明に係る振動感知ロック装置は、収納装置本体に取り付けられるロック装置本体と、扉又は引き出しに取り付けられる係止体とからなる。ロック装置本体はケースを有する。ケースの前部には、扉又は引き出しに取り付けられた前記係止体を挿入する開口が形成されている。ケースの内部には、ケースの開口からケース内に挿入した前記係止体の扉又は引き出しの開閉に伴う動きによって、前後方向に摺動する摺動部材が設けられている。摺動部材には、摺動部材が後方に摺動すると係止体を係止する係止位置に移動し、摺動部材が前方に摺動すると係止体を係止しない非係止位置に移動する係止部材が設けられている。ケースには、非振動時に摺動部材の摺動を阻止しない所定位置で静止しており、振動時に所定位置から移動して摺動部材の前方への摺動を阻止し、閉塞時の扉又は引き出しを開放不能にロックする転動体が設けられている。
振動感知ロック装置は、扉又は引き出しの開放時、摺動部材がケースの前方に摺動しており、これに設けられた係止部材が非係止位置に位置している。扉又は引き出しを閉塞すると、これに設けられた係止体がケースの開口からケース内に挿入され、この係止体によって摺動部材が後方に強制的に摺動させられる。摺動部材が後方に摺動すると係止部材が係止位置に移動して係止体を係止する。非振動(地震)時においては、球体が摺動部材の摺動を阻止しない所定位置で静止しているので、扉又は引き出しを開放することができる。扉又は引き出しを開放すると、これに設けられた係止体がケースの開口から引き出され、この係止体によって摺動部材が前方に摺動する。摺動部材が前方に摺動すると、係止部材が非係止位置に移動して係止体に対する係止が解除され、扉又は引き出しを開放することができる。
振動感知ロック装置は、摺動部材が後方に摺動して係止部材が係止体を係止している状態の時、振動(地震)が発生すると、球体が所定位置から移動して摺動部材の前方への摺動を阻止する。扉又は引き出しは、開放方向に移動しようとしても、これに設けられた係止体が摺動部材の係止部材に係止されており、摺動部材の前方への摺動が阻止されているから、扉又は引き出しの開放が規制される。このように、本願発明に係る振動感知ロック装置は、開閉する扉又は引き出しを備えた収納装置本体に設けられ、閉塞時の扉又は引き出しを振動時に開放不能にロックすることができる。本願発明に係る振動感知ロック装置は、上下方向に移動する係止軸を備えていないので、薄い構造を採用することができ、構造が簡単で壊れ難く、部品点数が少なく、組立が容易で安価に製造することできるという効果がある。
本願発明に係る振動感知ロック装置は、上記効果に加え、ケースに転動体を所定位置まで導く傾斜面が形成されているので、転動体を確実に所定位置へ導くことができ、所定位置で安定して静止させることができるという効果がある。
本願発明に係る振動感知ロック装置は、上記効果に加え、摺動部材又はケースに係止部材の係止位置と非係止位置で摺動部材を位置決めする位置決め手段が設けられているので、扉又は引き出し側に設けられた係止体に対する係止及び係止解除を確実に行わせることができるという効果がある。
本願発明に係る振動感知ロック装置は、転動体は、摺動部材が前方に摺動している時、摺動部材に案内されて移動不能となっており、摺動部材が後方に摺動している時、摺動部材から外れて移動可能となるように構成されている。本願発明に係る振動感知ロック装置は、上記効果に加え、摺動部材が前方に摺動して係止部材が非係止位置にある時には、振動時(地震時)であっても転動体が所定位置から移動できないので、係止部材の非係止位置状態が保持されており、振動時(地震時)に扉又は引き出しを閉塞して扉又は引き出しの係止体を係止部材に係止させて、扉又は引き出しをロックすることができるという効果がある。
本願発明に係る振動感知ロック装置は、ケースの側面には、摺動部材が後方に摺動すると係止部材を係止体を係止する係止位置に案内し、摺動部材が前方に摺動すると係止部材を係止体を係止しない非係止位置に案内する案内部が形成されているので、上記効果に加え、摺動部材が後方に摺動すると確実に係止部材が係止位置に移動し、摺動部材が前方に摺動すると確実に係止部材が非係止位置に移動して、係止及び係止解除を正確に行わせることができるという効果がある。
本願発明に係る振動感知ロック装置は、係止体が扉又は引き出しに取り付けられる基台と、基台にスライド可能に取り付けられた係止アームとで構成されているので、上記効果に加え、係止アームをロック装置本体のケースに形成された開口の位置に合わせて簡単に調節することができるという効果がある。
振動感知ロック装置1は、開閉する扉(又は引き出し)5を備えた収納装置本体2に設けられ、閉塞時の扉(又は引き出し)5を振動時に開放不能にロックするものであって、収納装置本体2に取り付けられるロック装置本体10と、扉(又は引き出し)5に取り付けられる係止体100とからなる。ロック装置本体10はケース11を有する。ケース11の前部には、扉(又は引き出し)5に取り付けられた前記係止体100を挿入する開口36が形成されている。
ケース11の内部には、ケース11の開口36からケース11内に挿入した前記係止体100の扉(又は引き出し)5の開閉に伴う動きによって、前後方向に摺動する摺動部材70が設けられている。摺動部材70には、摺動部材70が後方に摺動すると係止体100を係止する係止位置に移動し、摺動部材70が前方に摺動すると係止体100を係止しない非係止位置に移動する係止部材90が設けられている。ケース11には、非振動時に摺動部材70の摺動を阻止しない所定位置で静止しており、振動時に所定位置から移動して摺動部材70の前方への摺動を阻止し、閉塞時の扉(又は引き出し)5を開放不能にロックする転動体30が設けられている。
振動感知ロック装置1は、扉(又は引き出し)5の開放時、摺動部材70がケース11の前方に摺動しており、これに設けられた係止部材90が非係止位置に位置している。扉(又は引き出し)5を閉塞すると、これに設けられた係止体100がケース11の開口36からケース11内に挿入され、この係止体100によって摺動部材70が後方に強制的に摺動させられる。摺動部材70が後方に摺動すると係止部材90が係止位置に移動して係止体100を係止する。非振動(地震)時においては、球体が摺動部材70の摺動を阻止しない所定位置で静止しているので、扉(又は引き出し)5を開放することができる。扉(又は引き出し)5を開放すると、これに設けられた係止体100がケース11の開口36から引き出され、この係止体100によって摺動部材70が前方に摺動する。摺動部材70が前方に摺動すると、係止部材90が非係止位置に移動して係止体100に対する係止が解除され、扉(又は引き出し)5を開放することができる。
振動感知ロック装置1は、摺動部材70が後方に摺動して係止部材90が係止体100を係止している状態の時、振動(地震)が発生すると、球体が所定位置から移動して摺動部材70の前方への摺動を阻止する。扉(又は引き出し)5は、開放方向に移動しようとしても、これに設けられた係止体100が摺動部材70の係止部材90に係止されており、摺動部材70の前方への摺動が阻止されているから、扉(又は引き出し)5の開放が規制される。このように、振動感知ロック装置1は、開閉する扉(又は引き出し)5を備えた収納装置本体2に設けられ、閉塞時の扉(又は引き出し)5を振動時に開放不能にロックすることができる。
振動感知ロック装置1は、ケース11に、転動体30を所定位置まで導く傾斜面14が形成されているので、転動体30を確実に所定位置へ導くことができ、所定位置で安定して静止させることができる。振動感知ロック装置1は、前記摺動部材70又は前記ケース11に係止部材90の係止位置と非係止位置で摺動部材70を位置決めする位置決め手段81,82が設けられているので、扉(又は引き出し)5側に設けられた係止体100に対する係止及び係止解除を確実に行わせることができる。
振動感知ロック装置1は、摺動部材70が前方に摺動している時、転動体30が摺動部材70に案内されて移動不能となっており、摺動部材70が後方に摺動している時、転動体30が摺動部材70から外れて移動可能となるように構成されている。振動感知ロック装置1は、摺動部材70が前方に摺動して係止部材90が非係止位置にある時には、振動時(地震時)であっても転動体30が所定位置から移動できないので、係止部材90の非係止位置状態が保持されており、振動時(地震時)に扉(又は引き出し)5を閉塞して扉(又は引き出し)5の係止体100を係止部材90に係止させて、扉(又は引き出し)5をロックすることができる。
振動感知ロック装置1は、摺動部材70が前方に摺動している時、転動体30が摺動部材70に形成された収納凹部79に収納されて移動不能となり、摺動部材70が後方に摺動している時、転動体30が摺動部材70の収納凹部79から外れて移動可能となるように構成されていることが望ましい。
また、前記摺動部材70は、次のように構成しても良い。摺動部材70は、転動体30を収容する矩形枠状に形成され、前部材71と、後部材72と、前部材71と後部材72の右側を連結する右部材73と、前部材71と後部材72の左側を連結する左部材74とからなる。右部材73と左部材74の前部には、前記係止部材90が設けられている。後部材72には、前記転動体30を収納する前記収納凹部79が形成されている。
振動感知ロック装置1は、ケース11の側面17,18に、摺動部材70が後方に摺動すると係止部材90を係止体100を係止する係止位置に案内し、摺動部材70が前方に摺動すると係止部材90を係止体100を係止しない非係止位置に案内する案内部42,55が形成されている。摺動部材70が後方に摺動すると確実に係止部材90が係止位置に移動し、摺動部材70が前方に摺動すると確実に係止部材90が非係止位置に移動して、係止及び係止解除を正確に行わせることができる。
前記係止体100は、扉(又は引き出し)5に取り付けられる基台101と、基台101にスライド可能に取り付けられた係止アーム102とで構成されているので、係止アーム102をロック装置本体10のケース11に形成された開口36の位置に合わせて簡単に調節することができる。
さらに振動感知ロック装置1について詳細に説明する。図1乃至3に示すように、振動感知ロック装置1は、収納装置本体2に取り付けられるロック装置本体10と、扉(開き戸)又は引き出し5に取り付けられる係止体100とからなる。収納装置本体2は、箪笥、キャビネット、机、吊り戸棚等の家具類であって、開閉する扉(又は引き出し)5を備えている。ロック装置本体10は、ケース11を有する。ケース11は、ケース本体12と蓋体50とからなる。ケース本体12は、底壁13と、底壁13の前端に形成された前壁15と、底壁13の後端に形成された後壁16と、底壁13の右端に形成された右壁17と、底壁13の左端に形成された左壁18とで形成されている。
底壁13の略中間両側には、円筒軸状のボス21,22が設けられ、ボス21,22に軸穴21a,22aが形成されている。ボス21,22には、仕切り板25が設けられている。仕切り板25は、左右方向に伸び、底壁13の前後方向を仕切るように形成されている。仕切り板25の略中央には、後部側に突出する略三角状の案内突起26が設けられている。案内突起26の頂部26aは、後部側を向いており、頂部26aの右側に右案内面26bが形成され、頂部26aの左側に左案内面26cが形成されている。
底壁13の仕切り板25によって仕切られた後部27側には、球体30が配置されている。この後部27側底壁13には、球体30を所定位置に静止させることができるようになっており、この所定位置に向かって傾斜する傾斜面14が形成されている。さらに、後部27側底壁13の周囲には、球体30を傾斜面14内に位置させるため、傾斜壁31が形成されている。底壁13の仕切り板25によって仕切られた前部28側には、右壁17及び左壁18と略平行に一対のガイドレール33,33が形成されている。
ケース本体12の前壁15には、ケース本体12内外を連通する略矩形状の開口36が形成されている。図5(a)に示すように、開口36を形成する上縁には、ケース本体12の内側に向かって下降傾斜する上案内傾斜面37が形成され、開口36を形成する下縁には、ケース本体12の内側に向かって上昇傾斜する下案内傾斜面38が形成されている。前壁15、後壁16、右壁17及び左壁18には、蓋体50を嵌合する段凹部15a,16a,17a,18aが形成されている。前部28側であって、右壁17及び左壁18の内側には、凹部41,41が切り欠かれており、凹部41,41に下案内縁42,42が形成されている。下案内縁42は、底壁13と略平行に伸びる下平行縁43と、前壁15近傍で上昇傾斜する下傾斜縁45とからなる。
図1に示すように、蓋体50は、ケース本体12の段凹部15a,16a,17a,18aに嵌合して取り付けられるようになっており、前記ボス21,22を挿通する挿通孔51,52が形成されている。図3に示すように、蓋体50は、挿通孔51,52に挿通したボス21,22の軸穴21a,22aにネジ6,6を通し、当該ネジ6,6を収納装置本体2の上壁3に螺着することにより、上壁3に固定されるのと同時にケース本体12に取り付けられ、ケース11を構成する。図2に示すように、蓋体50の下面50b前部両側には、ケース本体12の前記凹部41,41を塞ぐ案内突起53が形成されている。案内突起53の下端には、上案内縁55が形成されている。上案内縁55は、前記ケース本体12の下平行縁43と略平行の上平行縁56と、下傾斜縁45と略平行に上昇傾斜する上傾斜縁57とからなる。
図2に示すように、蓋体50の下面50b後部中央には、ケース本体12の案内突起26と対向するガイド突起60が形成されている。ガイド突起60は、前部側に突出する略三角状の案内突起61を有している。案内突起61の頂部61aは、前部側を向いており、頂部61aの右側に右案内面61bが形成され、頂部61aの左側に左案内面61cが形成されている。
蓋体50の下面50bであって、ガイド突起60の右側には右案内突起63が形成され、ガイド突起60の左側には左案内突起62が形成されている。右案内突起63は、後部側にいくに従って右側に拡がるように傾斜する右傾斜突起63bと、右傾斜突起63bの前端に連接され、右側に伸びる右突出突起63aとからなる。また、右案内突起63の内側に沿って右案内溝66が形成され、右案内溝66は、右傾斜突起63bに沿って形成された右傾斜案内溝66bと、右突出突起63aに沿って形成された右突出案内溝66aとからなる。
左案内突起62は、後部側にいくに従って左側に拡がるように傾斜する左傾斜突起62bと、左傾斜突起62bの前端に連接され、左側に伸びる左突出突起62aとからなる。また、左案内突起62の内側に沿って左案内溝65が形成され、左案内溝65は、左傾斜突起62bに沿って形成された左傾斜案内溝65bと、左突出突起62aに沿って形成された左突出案内溝65aとからなる。
ケース11内には、前後方向に摺動可能となる摺動部材70が設けられている。摺動部材70は、前記球体30を収容する矩形枠状に形成され、前部材71と、後部材72と、前部材71と後部材72の右側を連結する右部材73と、前部材71と後部材72の左側を連結する左部材74とからなる。右部材73の前部は、前部材71から突出し、略U字状の右軸受け部75が形成されている。左部材74の前部は、前部材71から突出し、略U字状の左軸受け部76が形成されている。
摺動部材70の前部には、係止部材90が設けられている。係止部材90は、上板91と、上板91の右端に形成された右側板92と、上板91の左端に形成された左側板93と、上板91の前端に形成された係止縁94(図5参照)と、上板91の後端両側に形成された一対の係合溝97,97と、右側板92に突設された右支軸95と、左側板93に突設された左支軸96とからなる。図4に示すように、係止部材90は、一対の係合溝97,97が前部材71の前部に形成された係合突起77,77に摺動可能に係合するようにして、右支軸95が摺動部材70の右軸受け部75に回動可能且つ上下方向に移動可能に取り付けられ、左支軸96が摺動部材70の左軸受け部76に回動可能且つ上下方向に移動可能に取り付けられている。
図4に示すように、摺動部材70は、仕切り板25を内側に配置するようして、ケース本体12内の前後方向に摺動可能に設けられ、右部材73がケース本体12の右壁17に摺接し、左部材74がケース本体12の左壁18に摺接する。前記右支軸95は、ケース本体12の右壁17に形成された下案内縁42と蓋体50の右側に形成された上案内縁55に案内されるようになっている。前記左支軸96は、ケース本体12の左壁18に形成された下案内縁42と蓋体50の左側に形成された上案内縁55に案内されるようになっている。なお、前部材71の下端には、ケース本体12に形成された一対のガイドレール33,33に案内されるガイド凹部78,78が形成されている。
摺動部材70の後部材72の右側には右弾性片81が形成され、後部材72の左側には左弾性片82が形成されている。右弾性片81の先端には、蓋体50の右案内突起63に圧接する円軸状の右摺接突起83が形成されている。左弾性片82の先端には、蓋体50の左案内突起62に圧接する円軸状の左摺接突起84が形成されている。
摺動部材70は、図4(b)に示すように、後方に移動した時には、前部材71と後部材72の略中間に、球体30が静止する所定位置がくるように構成されている。後部材72には、図4(a)に示すように、前方に移動した時には、所定位置で静止している球体30を収納することができる略U字状の収納凹部79が形成されている。なお、この収納凹部79は、摺動部材70が前後方向に摺動しても、蓋体50に設けたガイド突起60に接触しないように、厚みを薄くして形成されている。
図1,3に示すように、係止体100は、扉(又は引き出し)5にネジ7によって取り付けられる基台101と、基台101にスライド可能に取り付けられた係止アーム102とからなる。基台101の略中央部には、上下方向に伸びる一対の案内溝103,103が形成されている(図4参照)。基台101の両側にはネジ穴109,109が形成されている。
係止アーム102は、先端上部に係止突起105が形成され、後端に摺動板106が形成されている。係止アーム102の先端下部には、案内傾斜面112が形成されている。また、係止アーム102の後部上面には、係止アーム102と略平行のガイド突起110が形成されている。ガイド突起110の先部には傾斜ガイド111が設けられている。摺動板106には、前記一対の案内溝103,103に所定の摩擦力で取り付けられる一対の案内突起107,107が形成されている。係止アーム102は、一対の案内突起107,107が基台101の一対の案内溝103,103に所定の摩擦力で固定して取り付けられ、摩擦力以上の力を加えることにより、基台101に対して上下方向に移動させることができる。
上記構成の振動感知ロック装置1は、以下のように使用することができる。図3に示すように、ロック装置本体10は、吊り戸棚、机、箪笥、キャビネット等の収納装置本体2の上壁3に取り付けられ、係止体100は、前記収納装置本体2の扉(又は引き出し)5に取り付けられる。ロック装置本体10は、ケース11に蓋体50を嵌合した状態で、ボス21,22の軸穴21a,22aにネジ6を通し、当該ネジ6,6を収納装置本体2の上壁3に螺着することにより、収納装置本体2の上壁3に固定される。また、係止体100は、基台101のネジ穴109,109にネジ7,7を挿通してこのネジ7を扉(又は引き出し)5の前壁8に螺着することにより、扉(又は引き出し)5の前壁8に固定される。なお、ケース11は、開口36が扉(又は引き出し)5の前壁8側を向くように取り付けられている。係止体100は、扉(又は引き出し)5の閉塞時、係止アーム102が開口36からケース11内に挿入できるように取り付けられている。
図4(a),図5(a)に示すように、扉(又は引き出し)5が開放されている状態において、摺動部材70は、右弾性片81の右摺接突起83が右案内突起63の右突出突起63aに係合し、左弾性片82の左摺接突起84が左案内突起62の左突出突起62aに係合しており、前方で位置決めされている。また、この状態の時、係止部材90は、右支軸95及び左支軸96がケース本体12の左右両側に設けられた下傾斜縁45と上傾斜縁57によって上方に移動している。ロック装置本体10は、非振動時(非地震時)には、球体30が所定位置(静止位置)で静止しており、球体30が摺動部材70の収納凹部79内に位置している。係る場合、収納凹部79の開放部79aは、仕切り板25によって塞がれており、振動(地震)が発生しても、球体30が収納凹部79内から飛び出ることはない。
図4(b),図5(b)に示すように、扉(又は引き出し)5を閉塞すると、係止体100がケース11の開口36からケース11内に挿入され、係止アーム102の先端が摺動部材70の前部材71を押圧して、摺動部材70を後方に移動させる。摺動部材70は、右弾性片81の右摺接突起83が右突出突起63aから外れて右傾斜突起63bに係合し、左弾性片82の左摺接突起84が左突出突起62aから外れて左傾斜突起62bに係合し、後方で位置決めされる。また、この状態の時、係止部材90は、右支軸95及び左支軸96がケース本体12の左右両側に設けられた下平行縁43と上平行線56によって下方に案内され、下側に移動している。そのため、係止部材90に設けられた係止縁94は、係止アーム102の係止突起105と係止可能となっている。ロック装置本体10は、非振動時(非地震時)には、球体30が所定位置(静止位置)で静止しているが、摺動部材70が後方に移動したため、球体30が摺動部材70の収納凹部79から外れており、収納凹部79内にガイド突起60が位置している。
図4(c),図5(c)に示すように、扉(又は引き出し)5を開放すると、係止アーム102の係止突起105が係止部材90の係止縁94を係止して、係止部材90を前方に移動させ、係止部材90を取り付けている摺動部材70も前方に移動させる。摺動部材70は、右弾性片81の右摺接突起83が右傾斜突起63bから右突出突起63aに係合し、左弾性片82の左摺接突起84が左傾斜突起62bから左突出突起62aに係合していき、図4(a),図5(a)に示すように、前方で位置決めされる。また、摺動部材70は、前方に移動すると、係止部材90の右支軸95及び左支軸96がケース本体12の左右両側に設けられた下平行縁43と上平行線56から下傾斜縁45と上傾斜縁57に摺動し、上方に移動する。そのため、係止部材90に設けられた係止縁94が、係止アーム102の係止突起105から外れ、扉(又は引き出し)5を開放することができる。ロック装置本体10は、非振動時(非地震時)には、球体30が所定位置(静止位置)で静止しているので、扉(又は引き出し)5の開閉をスムーズに行うことができる。
図4(b),図5(b)に示すように、扉(又は引き出し)5を閉塞した状態の時は、所定位置(静止位置)にある球体30が転動可能ではあるが静止している。この時、振動(地震)が発生すると、図6に示すように、球体30が静止位置から転動する。扉(又は引き出し)5が振動(地震)によって開放方向に移動しようとすると、仕切り板25と摺動部材70の後部材72間に球体30が介在するので、摺動部材70が前方(開放方向)に移動することができない。係止部材90に設けられた係止縁94は、係止アーム102の係止突起105と係止した状態のままなので、扉(又は引き出し)5は開放されることがない。このように、振動感知ロック装置1は、扉(又は引き出し)5の閉塞時に、振動(地震)が発生すると、球体30が所定位置から移動して、摺動部材70の前方(扉5の開放方向)への移動を阻止し、扉(又は引き出し)5の開放を規制する。なお、図4(a),図5(a)に示すように、扉(又は引き出し)5が開放されている状態において、振動感知ロック装置1は、球体30が摺動部材70の収納凹部79内に位置しているので、振動(地震)が発生しても、球体30が収納凹部79内から飛び出ることがなく、そのため、振動(地震)時にあっても扉(又は引き出し)5を閉塞することができる。
上記してきた球体30の所定位置(静止位置)は、特に限定されないが、仕切り板25に形成された案内突起26の頂部26aと、ガイド突起60に形成された案内突起61の頂部61aを結ぶ直線上の略中央に設けておくことが望ましい。図4(b)に示すように、扉(又は引き出し)5を閉塞した状態の時に、振動(地震)が発生すると、図6に示すように、球体30が静止位置から転動する。左右方向の振動(地震)の時には、球体30は左右方向に転動して仕切り板25と摺動部材70の後部材72間に直ちに介在し、扉(又は引き出し)5の開放方向への移動を阻止する。前後方向の振動(地震)の時には、球体30は前後方向に転動して仕切り板25の案内突起26の頂部26a、又はガイド突起60の案内突起61の頂部61aに当接する。球体30は、仕切り板25の案内突起26の頂部26aに当接した場合には、左案内面26c又は右案内面26bによって左右に振り分けられる。また、球体30は、ガイド突起60の案内突起61の頂部61aに当接した場合には、左案内面61c又は右案内面61bによって左右に振り分けられる。左右に振り分けられた球体30は、仕切り板25と摺動部材70の後部材72間に介在するので、扉(又は引き出し)5の開放方向への移動を阻止する。このように、球体30の所定位置(静止位置)は、仕切り板25の案内突起26の頂部26aと、ガイド突起60の案内突起61の頂部61aを結ぶ直線上の略中央に設けることが望ましく、振動(地震)時に球体30を迅速に左右に転動させ、扉(又は引き出し)5の開放を確実に阻止することができる。
図7(a)に示すように、振動感知ロック装置1は、係止アーム102がロック装置本体10の開口36より上方に位置する場合は、係止アーム102の先端が開口36の上部に形成された上案内傾斜面37により下方に押し下げられ、さらに、傾斜ガイド111,ガイド突起110が上案内傾斜面37により順番に下方に押し下げられ、図7(c)に示すように、摺動板106が下方に自動調節されて、係止アーム102がロック装置本体10内に挿入される。また、図7(b)に示すように、振動感知ロック装置1は、係止アーム102がロック装置本体10の開口36より下方に位置する場合は、係止アーム102の先端が開口36の下部に形成された下案内傾斜面38により上方に押し上げられ、さらに、案内傾斜面112が下案内傾斜面38により上方に押し下げられ、図7(c)に示すように、摺動板106が上方に自動調節されて、係止アーム102がロック装置本体10内に挿入される。このように、振動感知ロック装置1は、ロック装置本体10に係止される係止アーム102の高さ方向の位置を自動で調節することができ、収納装置本体2に対する扉又は引き出し5の高さ方向の位置がずれたとしても簡単に対応することができる。