JP5552838B2 - 高清浄鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、取鍋底部に設置した羽口からガスを吹き込むことによる溶鋼攪拌を伴う取鍋精錬において、精錬時間を短縮することおよび清浄性の高い鋼を精錬することが可能な高清浄鋼の製造方法に関する。
溶鋼を始めとする溶融金属を攪拌することは、成分均一化の促進および精錬時間の短縮にとって非常に重要である。溶融金属の攪拌技術としては、溶融金属の落下エネルギーを使用して攪拌する技術、電磁力を使用する技術、真空槽に溶融金属を吸い上げ、環流させる技術などが実用化されている。
その中でも、取鍋底部に設置した羽口からガスを吹き込み、溶融金属を攪拌する技術は簡便であるため、特殊鋼製鋼を始め、広く使用されている。しかしながら、取鍋底部からガスを吹き込む多くの場合、その目的は攪拌効率の向上と巨視的な流動付与であった。
このため、溶融金属の清浄性を悪化させる微小な非金属酸化物(以下、「介在物」という。)の凝集や浮上除去を促進する効果については、巨視的な流動付与に付随して得られる効果を享受するに留まっており、より積極的に溶鋼中介在物の凝集や浮上除去を促進させる操作は行われていないのが現状であった。
一方、羽口の設置位置として、湯当たり部を避けなければならない等の設備上の制約や実施コストの視点から、取鍋底部に設置される羽口は1箇所または2箇所に留まっている場合が多く、羽口を増やすことによって介在物を除去する操作も積極的には行われていないのが現状であった。
特許文献1には、溶鋼を効率的に攪拌して脱炭を促進させる目的で、「2つのガスプラグからそれぞれ溶鋼に吹込む底ガスの流量の比を少なくとも一時的に一方が他方の0.50倍以下になるようにする」技術が開示されている。特許文献1には、この技術によれば、「取鍋内に非定常な流れを形成し、澱みを解消する」ことによって脱炭効率が向上することが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の発明の着眼点は、溶鋼の巨視的な流動制御にあり、溶鋼中介在物の凝集・浮上除去の促進に繋がる微視的な流動制御を指向する発想ではない。
特許文献1に記載の技術において、羽口1箇所から吹き込むガスの流量変化の1周期に着目すると、溶鋼量を特許文献1に記載の50〜90t、ガス流量を250NL/minから500NL/min、湯面高さを1.5m、ガス流量の変化周期を2分とした場合には、ガス流量の変化周期の1周期当たりに流量変化の差分の積算値として溶鋼に与えられる攪拌エネルギー(単位溶鋼重量当たり)は、数1000J/tとなる。このことからも、特許文献1に記載の技術は、ガス流量変化を巨視的な流動制御を指向していると認められる。
また、特許文献1に記載の技術は、減圧雰囲気または真空雰囲気での脱炭方法であることから、上記のガス流量の変化周期の1周期当たりの攪拌エネルギーは、大気圧雰囲気での場合の数倍になる。このことからも、この技術が凝集・浮上除去の促進に繋がる微視的な流動制御を利用した溶鋼の清浄化に適用できる技術ではないことがわかる。
特許文献2には、「取鍋の底部に複数個の底吹きガスプラグを設け、各プラグへの供給ガス流量を周期的に変化させる」技術が開示されている。この技術では、「各プラグの配列順にその周期的変化波形に位相差を持たせ、溶鋼に水平旋回流動を与える」ことを特徴とし、「精錬時間の短縮、高清浄鋼の製造を可能にする」ことを目的としている。
しかしながら、溶鋼量を特許文献2に記載の50t、ガス流量を250NL/minから750NL/min、湯面高さを1.5m、ガス流量の変化周期を20秒とした場合には、ガス流量の変化周期の1周期当たりに流量変化の差分の積算値として溶鋼に与えられる攪拌エネルギーは、1000J/tを超える。
特許文献2に記載の技術は、上述の特許文献1に記載の技術と同様に、ガス流量変化を巨視的な流動制御を指向しており、凝集・浮上除去の促進に繋がる微視的な流動制御を利用した溶鋼の清浄化に適用できる技術ではないことがわかる。
一方、溶鋼の巨視的な流動ではなく、微視的な非定常流動に関しては、非特許文献1を始めとする文献で、その有効性が示されている。非特許文献1では、機械攪拌によって付与した非定常攪拌ではあるものの、「平均的な単位体積当たりの攪拌所要動力に対し、混合時間を比較した結果、(非定常攪拌は)定常の邪魔板無し攪拌はもとより、邪魔板有りの定常攪拌よりも混合性能は良い」と報告している。
これは、特許文献1、特許文献2を始め、従来から実施されているガス吹込み操作に伴う巨視的な流動制御と比較して、微視的な非定常流動を付与する方が攪拌効率を向上できることを示唆している。
特開2008−223050号公報 特開平6−235018号公報
加藤、外8名、「乱流攪拌層における非定常攪拌の効果」、化学工学論文集、社団法人化学工学会、第35巻(2009)第1号、p.152−158
本発明は、羽口から吹き込むガスの流量および吹込み周期(吹込みサイクル)を適正に設定し、溶鋼の微視的な流動を制御することで、溶鋼中介在物の凝集・浮上除去を促進させて精錬時間の短縮および鋼の清浄度を向上させ、清浄度の高い鋼を効率的に得ることが可能な、高清浄鋼の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、羽口から多孔質プラグを介してArガスを吹き込むことが可能で、その際のガス流量および吹込みサイクルを制御する溶鋼2.3tを対象にした取鍋実験を通して、溶鋼の清浄度の変化挙動を調査した。
その結果、ガス流量を増大させることによって攪拌強度を高める手法ではなく、吹込みガス流量および吹込みサイクルを付与し、これを適正に制御するという手法によれば、時間平均すると同じ流量のガスを導入した場合であっても、ガス流量を制御しない場合と比較して大きな脱酸速度定数が得られ、到達酸素値が低減できるという新事実を知見した。
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、その要旨は下記の高清浄鋼の製造方法にある。
取鍋底部に設置した羽口から溶鋼中にガスを吹き込む取鍋精錬において、前記ガス流量を周期的に変化させ、その時に下記(1)式で求められる羽口一つ当たりの単位時間、単位溶鋼重量当たりの攪拌エネルギー密度εの、最大ガス流量と最小ガス流量での値の差異ΔEcyc(/t)が20以上であり、ガス流量の変化周期C(s)が2≦ΔEcyc/C(W/(t・s))≦5の関係を満たしており、最小ガス流量と最大ガス流量での攪拌エネルギーの差分の積算値として溶鋼に与えられるガス流量変化の1周期当たりの攪拌エネルギーΣcyc(J/t)が50以上200以下であることを特徴とする高清浄鋼の製造方法。
ε=(0.00618×Q×T/m)×[ln{1+(9.8×7000×h)/p}] …(1)
ここで、上記(1)式中の各記号は下記の諸量を意味する。
ε(W/t−溶鋼):攪拌エネルギー密度、
Q(NL/min):吹き込みガス流量、
T(K):溶鋼温度、
m(t):溶鋼質量、
h(m):溶鋼の浴深さ、
p(Pa):雰囲気の圧力。
取鍋底部の羽口からガスを吹き込むと、羽口の上部には溶鋼と気泡の混ざった気泡柱が形成される。この気泡柱の周囲の溶鋼流動は、気泡のガス流量と相関がある。すなわち、底吹きガス(吹込みガス)の流量を制御することによって、気泡柱周囲の溶鋼流動が変化することになる。このため、時間平均すると同一の流量でガスを吹き込んだ場合であっても、短時間にガス流量が変化する条件と、ガス流量が一定の条件とでは、気泡柱周囲の溶鋼流動は大きく異なることになる。
一方、気泡柱周囲の溶鋼流動の状態を変化させたとしても、変化した後の状態が長時間維持されていると、その溶鋼流動は定常状態となる。そこで、溶鋼流動の状態が変化した後に、別の状態へ変化させることを繰り返すことで、気泡柱周囲の溶鋼流動は常に非定常な状態となる。
すなわち、投入する攪拌エネルギーが巨視的には同一であっても、ガス流量の変化幅を大きくすること、またはガス流量の変更頻度を高くすることで、ガス流量変化に伴う投入攪拌エネルギーの密度を高めることができる。
ガス流量の変化幅を大きくすることと変更頻度を高くすることの両方の条件が揃った場合には、流量制御と吹込み周期を設定しない場合と比較して、取鍋内の溶鋼流動は、巨視的には同じであるものの、微視的には大きく異なる状態が形成されることになる。この場合には、溶鋼中の微視的な流動は常に変化を繰り返すことになるため、介在物の凝集頻度が高くなり、介在物径が大きくなることで浮上除去効率も高くなるといった、清浄化サイクルが形成される。
上記発明を実施するにあたっては、取鍋底部に設置した2箇所以上となる羽口からガスを吹き込むことが好適である。
さらに、複数箇所の羽口からガスを吹き込む場合には、隣接する羽口から吹き込むガス流量が最大値となるタイミングを同期させないことが好適である。
本発明の高清浄鋼の製造方法によれば、従来と同一の総流量のガスを導入した場合であっても、従来よりも大きな脱酸速度が得られる。このため、軸受鋼を始めとする高清浄度鋼に本発明の製造方法を適用することで、従来よりも格段に清浄性の高い製品が得られることに加え、精錬時間の大幅な低減が可能であり、工業的に大きな便益をもたらすことができる。
本発明の高清浄鋼の製造方法を実施可能な取鍋の模式図である。 図2は、底吹きガスの吹込み周期の例であり、同図(A)は一度に変化させる場合、同図(B)は1周期中で複数回に分けて変化させる場合、同図(C)は正弦波に従うように変化させる場合である。 羽口数が4の場合の吹込みサイクルの一例である。 羽口数が4の場合の例として、参照例であるRun32と本発明例であるRun9からRun12までの全酸素濃度の推移を示す図である。 羽口数が1の場合の例として、参照例であるRun29と本発明例であるRun1からRun3までの全酸素濃度の推移を示す図である。 精錬能に及ぼすΔEcycとΔEcyc/Cの影響を示す図である。 精錬能に及ぼすΔEcyc/CとΣcycの影響を示す図である。
1.本発明の基本構成
図1は、本発明の高清浄鋼の製造方法を実施可能な取鍋の模式図である。本発明は、主に溶融金属を保持する取鍋において適用される。本発明は、吹込みガス流量を制御することを特徴としているため、適用対象は取鍋に限らず、ガス吹込み用の羽口を有しているのであれば、転炉といった大型の精錬容器から、タンディッシュといった受鋼容器全般に適用できる。
取鍋本体1の底部にはガス吹込み箇所として羽口が設置され、ガスはこの羽口から溶鋼4中に吹き込まれる。羽口には、図1に示すように、例えば多孔質プラグ(ポーラスプラグ)2等のガス吹込み用の耐火物レンガやスリットノズル等のガス吹込み装置が設置され、ガスが吹き込まれる。多孔質プラグ2から吹き込まれたガスは、気泡柱3を形成する。
取鍋本体1の底部に羽口を複数設置する場合には、湯当たり部等の設置不可能な場所を除いて、気泡の合体が生じない程度に、隣接する羽口をそれぞれ同程度に距離を離して設置することができる。隣接する羽口とは、羽口の配置位置が物理的に最も近い羽口を指す。このとき、取鍋本体1の底部に設置する羽口の数nは、下記(2)式で規定される範囲とする。
1≦n<A/P …(2)
ここで、上記(2)式中の各記号は下記の諸量を意味する。
A:溶鋼表面積、
P:羽口上部に気泡上昇によって形成される溶鋼の盛り上がり部の面積。
盛り上がり部の面積Pは、下記(3)式で求めることができる。
P=π×{h×tan(θ/2)}2 …(3)
ここで、上記(3)式中の各記号は下記の諸量を意味する。
π:円周率、
h:溶鋼の浴深さ(湯面高さ)、
θ:気泡柱の頂角。
なお気泡柱の頂角θはガスと溶鋼の密度差や吹込みガス流量によって変わるが、溶鋼の場合には一般にθは20度程度である。
取鍋本体1の底部に設置する羽口は、1箇所配置するだけでも効果を得られるものの、取鍋本体1の底部の湯当たり部を避けるといった物理的制約や、複数配置に伴う施工工数の増大の制約が許す限りにおいて多数箇所に配置することができる。
底吹きガスの種類としては、Arを始めとする不活性ガスを始め、N2ガスやO2ガス、CO2ガス、COガス等を用いても良い。これらのガスは、羽口に至る配管に設けたマスフローコントローラ等を用いて流量および吹込み周期が制御される。
本発明の高清浄鋼の製造方法は、炭素鋼からステンレス鋼を始め、清浄性が要求される全ての鋼種に対して適用できる。このとき、溶鋼の全酸素濃度には特に制限はなく、鋼の清浄性の悪い状態からでも処理することができる。また、本発明の適用対象となる鋼は、溶融状態であることが必要であるため、溶鋼温度は対象鋼の融点よりも30℃以上、好ましくは50℃以上高いことが好適である。
2.底吹きガスの吹込み方法(羽口が単数の場合)
図2は、底吹きガスの吹込み周期の例であり、同図(A)は一度に変化させる場合、同図(B)は1周期中で複数回に分けて変化させる場合、同図(C)は正弦波に従うように変化させる場合である。
本発明の高清浄鋼の製造方法を実施するには、前記(1)式を用いて底吹きガスの流量が最大値Qmax(NL/min)の場合と最小値Qmin(NL/min)の場合のそれぞれの攪拌エネルギー密度ε(以下、それぞれε_Qmax、ε_Qminと表記する。)を算出し、ガス流量を周期的に変化させる操作に伴う最大ガス流量と最小ガス流量での単位時間あたりの攪拌エネルギー密度の差異ΔEcyc(/t)(=ε_Qmax−ε_Qmin)が20以上となるようにQmaxおよびQminを設定する。本発明の効果(清浄化効果)をより効率的に享受するにはΔEcyc(/t)は30以上であることが望ましい。
また、ガス流量の変化の周期C(s)は、2≦ΔEcyc/C(W/(t・s))≦5の関係を満たす範囲内で設定する。発明の効果をより効率的に享受するにはC(s)は3≦ΔEcyc/C(W/(t・s))の関係を満たす範囲内であることが望ましい。
上記条件を満たすガス流量制御範囲内であったとしても、その設定が極端な場合、すなわち、ガス流量変化の1サイクル中で瞬間的にガス流量を高める設定や、常にガス流量が高い設定から瞬間的にガス流量を絞る設定では、流量変化に伴って溶鋼に与えられるエネルギーΣcycが少なすぎる、または過剰になるため、清浄化効果を享受できない。
このため、Σcycは、溶鋼流動が変化し、精錬能が向上する適正な範囲内で設定する必要がある。すなわち、最小ガス流量と最大ガス流量での攪拌エネルギーの差分の積算値として溶鋼に与えられるガス流量変化の1周期当たりの攪拌エネルギーΣcyc(J/t)は50以上200以下であることが必要である。発明の効果をより効率的に享受するには、Σcyc(J/t)は100以上であることが望ましい。
精錬期間中は、上記の周期を繰り返すことで、溶鋼中に連続的に底吹きガスを吹き込む。
このときのガス流量は、図2(A):サイクルAに示すように一度に変化させる以外にも、図2(B):サイクルBに示すように1周期中で何回かに分けてガス流量を変化させても良いし、図2(C):サイクルCに示すような正弦波に従うように変化させても良い。また、ガス流量の変化サイクルは、周期Cが上記要件を満たす範囲であれば、図2に示す周期に限るものではない。
3.底吹きガスの吹込み方法(羽口が複数の場合)
羽口数が2つ以上である場合、溶鋼中に形成される気泡柱が凝集を促進する領域が増大するため、本発明の効果はより明確に現れる。このときのガス流量およびガス流量変化周期は、上述の羽口が単数である場合と同様に、ガス流量を周期的に変化させる操作に伴う最大ガス流量と最小ガス流量での単位時間あたりの攪拌エネルギーの差異ΔEcyc(/t)(=ε_Qmax−ε_Qmin)が各羽口について20以上となるようにQmaxおよびQminを設定する。また、ガス流量の変化の周期C(s)は、各羽口について2≦ΔEcyc/C(W/(t・s))≦5の関係を満たすように決定する。さらに、最小ガス流量と最大ガス流量での攪拌エネルギーの差分の積算値として溶鋼に与えられるガス流量変化の1周期当たりの攪拌エネルギーΣcyc(J/t)は各羽口について50以上200以下になるように設定する。
このとき、各羽口のガス流量が最大値を取るタイミングが同期している場合には、瞬間的に取鍋に吹き込まれるガス流量が過剰となり、溶鋼が取鍋から吹きこぼれる等、操業を阻害する可能性がある。
各羽口に吹き込むガス流量、および、ガス吹込みタイミングは、羽口直前に設置するマスフローコントローラ等の流量制御装置で制御および計測することができる。
ここでいう「ガス流量が最大値を取るタイミング」とは、設定したガス流量変化周期において最も早いタイミングで最大ガス流量に到達するタイミングである。また、「同期している」とは、隣接する羽口におけるガス流量の最大値を取るタイミングの差異がガス流量変化の1周期に要する時間の1割未満である状態を指す。
一方、ガス流量の最大値を取るタイミングを適正に調整することで、隣接する気泡柱間には溶鋼流速差を生じさせることができる。この場合、羽口が単数の場合よりも有利に溶鋼中介在物の凝集を促進させることができる。このため、羽口を複数箇所に設置する場合は、隣接する羽口から吹き込むガスの流量の最大値を取るタイミングを同期させないことが好適である。
個別の羽口からの吹込み周期は前記図2に示すどの形態であっても良く、ガス流量やガス流量変化周期が各羽口で異なっていても良い。このため、羽口を複数箇所に設置した場合には、ガス流量の最大値を取るタイミングが隣接する羽口間で溶鋼中介在物の凝集が促進されるような流速差が生じるように、適度に位相差を持たせると良い。
図3は、羽口数が4の場合の吹込みサイクルの一例である。取鍋本体の底面の4箇所に設置した羽口に多孔質プラグを配置し、それぞれポーラスNo.1〜4とする。図3に示した例では、それぞれの羽口から吹き込む底吹きガスの吹込みサイクルは前記図2(A)と同様とした。また、ガス流量変化の位相差は、ポーラスNo.1とNo.2、ポーラスNo.2とNo.3、ポーラスNo.3とNo.4、およびポーラスNo.4とNo.1とで、それぞれ1サイクルの吹込み周期Cの4分の1とした。
本発明の高清浄鋼の製造方法の効果を確認するため、以下に示す取鍋精錬試験を実施して、その結果を評価した。
1.試験条件
本発明は、表1に示す組成の鋼2.3tを予め電気炉で溶解した後、本発明を実施可能な取鍋(例えば前記図1に示す構成の取鍋)で受鋼した時点から開始した。受鋼の際に、取鍋内にAlを入れ置きしておき、ガス吹込みの開始時点で溶鋼中にAl23が懸濁するようにした。このとき、溶鋼中の溶存酸素は僅かであり、溶鋼中の酸素分はほぼ全てがAl23として存在することを化学分析で確認している。
Figure 0005552838
受鋼後、速やかに鉄製サンプラーで溶鋼試料を採取し、その後取鍋底部の4箇所に設置した羽口から多孔質プラグを介してArガスを導入した。吹込みガスの流量は、多孔質プラグの手前に設置したマスフローコントローラによって、各羽口で独立に制御した。
このとき、吹込みガスの流量および流量変化周期を変化させ、精錬途中にも鉄製サンプラーで溶鋼試料を採取し、溶鋼の清浄度を調査した。
取鍋には蓋を被せ、溶鋼と蓋との間の大気をArガスで置換することで、大気からの再酸化の影響を排した。精錬処理中の溶鋼温度は、1620℃から1580℃の間で推移した。
取鍋精錬試験は、表2に示すRun1からRun32の条件で行った。吹込みサイクルのパターンは、図2に示す(A)、(B)または(C)のいずれかとした。
Figure 0005552838
表2に示すように、実施例のうちRun1からRun15までが本発明例、Run16からRun28までが比較例、Run29からRun32までが参照例である。Run1からRun28までは吹込みガス流量を周期的に変化させた条件とした。Run29からRun32までは、それぞれ羽口数を1個から4個まで異なる個数とし、吹込みガス流量を一定とした条件とした。
取鍋精錬は、ガス吹込み開始後約15分で終了した。羽口数や、ガスの吹込み条件によって時間平均した攪拌エネルギー密度は異なるため、Run1からRun28までのそれぞれの実施例について全酸素濃度推移から脱酸速度を求め、羽口数毎に参照例であるRun29からRun32までの結果と比較して、精錬能を評価した。
また、Run1からRun28までのそれぞれの実施例の条件におけるガス吹込み開始後15分の手前の時点での到達酸素濃度を求め、同様に羽口数毎にRun29からRun32までの結果と比較して精錬能を評価した。
図4は、羽口数が4の場合の例として、参照例であるRun32と本発明例であるRun9からRun12までの全酸素濃度の推移を示す図である。同図から、吹込みガス流量を時間変化させることで、脱酸速度が向上し、到達酸素濃度が低減できていることが判る。
図5は、羽口数が1の場合の例として、参照例であるRun29と本発明例であるRun1からRun3までの全酸素濃度の推移を示す図である。同図から、吹込みガス流量を適切に制御することで、羽口数に関係なく精錬能が向上することが判る。
図6は、精錬能に及ぼすΔEcycとΔEcyc/Cの影響を示す図である。同図では、横軸を、最大ガス流量と最小ガス流量での単位時間あたりの攪拌エネルギー密度の差異ΔEcyc(=ε_Qmax−ε_Qmin)(/t)とし、縦軸をΔEcyc/C(W/(t・s))とした。
図7は、精錬能に及ぼすΔEcyc/CとΣcycの影響を示す図である。同図では、横軸をΔEcyc/C(W/(t・s))とし、縦軸をガス流量変化の1周期当たりの積算攪拌エネルギーΣcyc(J/t)とした。
図6および図7では、精錬能について、清浄化能良を白抜きマーク、清浄化能不良を黒塗りマークで示した。参照例としてガス流量を一定としたRun29からRun32までの結果と羽口数毎に比較して、脱酸速度が1.2倍以上に向上し、かつガス吹込み開始後15分時点での到達酸素濃度がRun29からRun32までの結果の0.8倍以下に低下した実施例を、清浄化能良と評価し、どちらかを満たさないまたは両方を満たさない実施例を清浄化能不良と評価した。
ΔEcycは、最小ガス流量と最大ガス流量での単位時間あたりの攪拌エネルギーの差異であるから、この値が小さい場合、ガス流量を変化させても溶鋼の流動には影響が及ばない。
図6中には、境界1として、ΔEcyc=20/tの境界を示す。ΔEcyc(/t)が20より小さい場合、すなわち境界1より左側の領域では、ガス流量の変化周期によらず、精錬能改善効果が現れていないことが判る。そのため、ガス流量制御の効果を得るにはΔEcyc(/t)が20以上であることが必須であることが判る。
また、ΔEcyc/C(W/(t・s))は、その次元からも判るように、ガス流量を上げる操作または下げる操作に伴って溶鋼に投入する攪拌エネルギーの投入密度を示している。ΔEcyc/C(W/(t・s))の値が小さい場合、または大きすぎる場合には、ガス流量変化に伴うエネルギーを溶鋼が効率的に受け取れない。
図6中には、境界2および境界3として、ΔEcyc/C=2W/(t・s)または5W/(t・s)の境界を示す。ΔEcyc/Cが2W/(t・s)より小さい領域および5W/(t・s)よりも大きい領域では、精錬能改善効果が現れていない。このことから、ガス流量制御の効果を得るには2≦ΔEcyc/C(W/(t・s))≦5であることが必須であることが判る
さらに、ΔEcycおよびΔEcyc/Cが上記条件を満たすガス流量を設定した場合であっても、ガス流量の周期変化に伴って溶鋼に与えられるエネルギーが少なすぎる場合、または大きすぎる場合には、ガス流量を変化させても精錬能改善効果が得られない。なお、図6中*印はRun26からRun28の結果であり、境界1から境界3に示すΔEcycおよびΔEcyc/Cの要件は満たしているものの、上記の溶鋼に与えられるエネルギーの要件を満たしておらず、清浄化能不良であった条件である。
図7中には、境界4および境界5として、ガス流量の周期変化に伴って溶鋼に与えられる1周期当たりの積算エネルギーΣcyc=50J/tまたは200J/tの境界を示す。Σcycが50J/tより小さい領域および200J/tよりも大きい領域では、ΔEcycおよびΔEcyc/Cが、ΔEcyc(/t)が20以上、かつ2≦ΔEcyc/C(W/(t・s))≦5を満足していても、精錬能改善効果が現れていない。このことから、ガス流量制御の効果を得るにはΣcyc(J/t)が50以上200以下であることが必須であることが判る。
本発明の効果は、複数箇所の羽口からガスを吹き込むことでも享受できており、溶鋼中介在物の凝集の促進、取鍋のフリーボードを確保する面からも2箇所以上に羽口を設置することが好適である。
また、複数箇所の羽口からガスを吹き込む場合、取鍋から溶鋼が吹きこぼれる等、操業を阻害する要因を低減することに加え、溶鋼中介在物の凝集を促進させることからも、隣接する羽口から吹き込むガス流量の最大値を取るタイミングを同期させないことが好適である。
本発明の高清浄鋼の製造方法によれば、従来と同一の総流量のガスを導入した場合であっても、従来よりも大きな脱酸速度が得られる。このため、軸受鋼を始めとする高清浄度鋼に本発明の製造方法を適用することで、従来よりも格段に清浄性の高い製品が得られることに加え、精錬時間の大幅な低減が可能であり、工業的に大きな便益をもたらすことができる。
1:取鍋本体、 2:多孔質プラグ(ポーラスプラグ)、 3:気泡柱、 4:溶鋼

Claims (3)

  1. 取鍋底部に設置した羽口から溶鋼中にガスを吹き込む取鍋精錬において、
    前記ガス流量を周期的に変化させ、
    その時に下記(1)式で求められる羽口一つ当たりの単位時間、単位溶鋼重量当たりの攪拌エネルギー密度εの最大ガス流量と最小ガス流量での値の差異ΔEcyc(/t)が20以上であり、
    ガス流量の変化周期C(s)が2≦ΔEcyc/C(W/(t・s))≦5の関係を満たしており、
    最小ガス流量と最大ガス流量での攪拌エネルギーの差分の積算値として溶鋼に与えられるガス流量変化の1周期当たりの攪拌エネルギーΣcyc(J/t)が50以上200以下であることを特徴とする高清浄鋼の製造方法。
    ε=(0.00618×Q×T/m)×[ln{1+(9.8×7000×h)/p}] …(1)
    ここで、上記(1)式中の各記号は下記の諸量を意味する。
    ε(W/t−溶鋼):攪拌エネルギー密度、
    Q(NL/min):吹き込みガス流量、
    T(K):溶鋼温度、
    m(t):溶鋼質量、
    h(m):溶鋼の浴深さ、
    p(Pa):雰囲気の圧力。
  2. 取鍋底部に設置した2箇所以上となる羽口から溶鋼中にガスを吹き込むことを特徴とする請求項1に記載の高清浄鋼の製造方法。
  3. 隣接する羽口から吹き込むガス流量の最大値を取るタイミングを同期させないことを特徴とする請求項2に記載の高清浄鋼の製造方法。
JP2010042894A 2010-02-26 2010-02-26 高清浄鋼の製造方法 Active JP5552838B2 (ja)

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