JP3720984B2 - 高効率減圧精錬方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は溶鋼の真空脱ガス処理において、地金の飛散、付着を抑制した状態で、短時間での極低炭素濃度域までの脱炭や脱水素を可能とする減圧精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、すでに真空脱ガス装置を用いた脱炭においては、真空度低下に従いCOガスが溶鋼内部から発生する内部脱炭と、真空雰囲気に暴露されている自由表面でCOガスが発生する表面脱炭があり、炭素濃度が約30ppm程度よりも高い領域では内部脱炭が、それ以下の低炭素領域では真空脱炭が主として起こり、極低炭素鋼を効率的に溶製するには表面脱炭の促進が必要であることを明らかにしてきた(鉄と鋼、第80年(1994),第3巻,213ぺ一ジ以降)。
また、表面脱炭を活性化させるには、浴内に吹き込まれた気泡が表面で浮上し破泡する領域である気泡活性面を広くとる必要があることも示し、特開平6−116624号公報には、この気泡活性面を極限まで広くとり7ppm以下という炭素濃度まで効率的に脱炭する方法として直胴型で大径の浸漬槽(以下、直胴型大径浸漬槽ということもある)を取鍋内溶鋼に浸漬し、該浸漬槽内部を減圧する真空脱ガス方法を開示した。そして、更に、広い条件での最適化を目的として、特開平6−212241号公報、特開平6−212242号公報、特開平6−116626号公報では、それぞれ脱リン、脱硫のための操業法、精錬時の溶鋼攪拌技術等を開示してきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溶鋼の脱炭反応を効率的に進めるためには、気泡活性面の面積や浸漬槽形状だけでなく、ガス流量、真空度、ガス吹き込み位置(方法)についても総合的に組み合わせて制御する必要があることが分かった。ところが、以上の公報で示されていた技術だけでは、充分に最適条件が開示されておらず、例えば、15分以内に10ppm以下の炭素濃度に到達させ、かつ、地金飛散をほぼ完全に抑制して効率的精錬を実施するための条件については、前記公報等には全く明確に示されていなかった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、前記公報で開示した後の引き続く研究によって、地金の飛散や付着を抑制した状態で、極低炭素濃度域までの脱炭や脱水素を、短時間に旦つ確実に安定的に処理するという減圧精錬方法の工業的確立に発展させる高効率減圧精錬方法を提案することを目的とする。
【0004】
【課顧を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載の高効率減圧精錬方法は、直胴型で大径の浸漬槽を取鍋内溶鋼に浸漬し、該浸漬槽内部を減圧する真空脱ガス方法において、
以下の(1)〜(3)式で表される溶鋼循環流量パラメータΛを0.45〜2.0とすることを特徴とする高効率減圧精錬方法。
Λ=1/(τ/30) ・・・(1)
τ=100{(J2 /H)2 ×(h′/H)-3.2×(a/D/0.15)-0.504/ε}0.337 ・・・(2)
ε=(371/W)・(Q/1000/60)・T×{ln(ρgH/133.32/P)十0.06(1−298/T)}・・・・(3)
ここで、
Jは取鍋内直径(m)、
Hはガス吹き込み位置の浴深(m)、
Dは浸漬槽直径(m)、
Wは溶鋼重量(ton)、
Qは底吹きガス流量(NL/min)、
Pは浸漬管内圧力(Torr)であるが
1Torr以下の場合はP=1とする。
Tは溶鋼温度(K)、
gは重力の加速度(m/s2 )、
ρは溶鋼密度(kg/m3 )、
h′は修正ガス吹き込み位置の浴深(m)、
aは浸漬槽中心に対するガス吹き込み位置(の偏芯距離(m))、であり、ガス吹き込みにパイプを用いた場合は、吐出方向の垂直上方に対してする角度をθ(deg)、パイプ直径をd(m)、ガス密度をρg (kg/m3 )とすると、h′は以下の(4)、(5)式で求められ、前記ガス吹き込みがポーラス煉瓦の場合にはh′=Hとする。
h′=H−cosθ×d×5.07×(Fr′)1/3 ・・・(4)
Fr′=(ρg /ρ)×{(Q/1000/60)/(3.14×(d/2)2 )}2 /(g・H)・・・・(5)
【0005】
請求項2記載の高効率減圧精錬方法は、請求項1記載の精錬方法において、前記直胴型で大径の浸漬槽を前記取鍋内溶鋼に浸漬し、該浸漬槽内部を減圧する真空脱ガス方法であって、
前記溶鋼の炭素濃度が30ppm以下で、以下の(6)式で定義される表面攪拌強度パラメータΠを、0.3〜5の範囲で操業している。
Π=(S+6.5×A)×{(Q/2)・1n(ρgH/133.32/P)}0.52×D-1・H0.52・L-0.32 ・P-2/3/W ・・・・(6)
ここで、
Aは気泡活性面積(m2 )、
Sは浸漬槽断面積(m2 )、
Lは容器の浴深(m)である。
【0006】
請求項3記載の高効率減圧精錬方法は、請求項2記載の精錬方法において、以下の(7)、(8)式で与えられる気泡活性面積当たりの表面破泡エネルギーE(:kW/m2 )を5〜65としている。
E=0.01423/1000・(Q・T/A)×log{(13.6・P+ρ・H)/(13.6・P+ρ・HE )}・・・・(7)
ここで、HE は無効浴深(m)で次式で計算される。
(13.6・P+ρ・HE )・(HE ×1000)3 =(13.6・P+ρ・H)・(12.7)3 ・・・・(8)
請求項4記載の高効率減圧精錬方法は、請求項2又は3記載の精錬方法において、脱炭速度K(=Δ〔%C〕/Δt:%/min)の変化に応じて底吹きガス流量Q(:NL/min)を次の(9)式のパラメータΩが2〜10の範囲になるように制御している。
Ω=(K×10×1000×22.4/12)/S+Q/W/A・・・・(9)
そして、請求項5記載の高効率減圧精錬方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の精錬方法において、ポーラス煉瓦表面積当たりの底吹きガス流量を3〜50NL/min/cm2 としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
真空下での脱ガス精錬を効率的に行うには、例えぱ、前掲の特開平6−212241号公報にても知られるように、▲1▼取鍋内に受湯した溶鋼内に、従来よりはるかに大きい、例えば取鍋内径の30%以上の内径をもった直胴型の真空槽を前記溶鋼内に浸漬し、▲2▼取鍋底部の中心から偏芯した位置に設けたノズルから、特定量のガスを吹き込んで適切な気泡活性面を形成し、▲3▼しかも溶鋼の循環攪拌を図りつつ、▲4▼減圧下で精錬を行うことを提示している。また、この際、脱ガス精錬が効率的であるためには、表面反応、即ち、表面脱炭を極限まで高めることが重要である。
そのためには、適正な溶鋼の均一混合時間と、底吹きされたガス気泡が、自由表面で破泡する領域である気泡活性面を積極的に活用することが効果的であることは言うまでもない。
【0008】
溶鋼の真空脱炭において比較的炭素の高い領域(例えば、〔%C〕≧30ppm)と低炭素の領域(例えば〔%C〕<30ppm)があり、この炭素の高い領域から効率的な精錬をするためには、図1に模式的に示すように、直胴型大型浸漬槽内で精錬された溶鋼が、取鍋全体の溶鋼と停滞することなしに高速に置き換わることである。請求項1は、この高速循環条件を規定したものである。つまり、以下の(1)〜(3)式で表される溶鋼循環流量パラメータΛを0.45〜2.0とすることが必要である。
Λ=1/(τ/30) ・・・(1)
τ=100{(J2 /H)2 ×(h′/H)-3.2×(a/D/0.15)-0.504/ε}0.337 ・・・(2)
ε=(371/W)・(Q/1000/60)・T×{1n(ρgH/133.32/P)十0.06(1−298/T)}...(3)
ここで、Hはガス吹き込み位置の浴深(m)、Tは溶鋼温度(K)、Dは浸漬槽直径(m)、Jは取鍋内直径(m)、h′は修正ガス吹き込み位置の浴深(m)、aは浸漬槽中心に対するガス吹き込み位置(の偏芯距離(m))であり、ガス吹き込みパイプを用いた場合は、吐出方向の重直上方に対してなす角度をθ(deg)、パイプ直径をd(m)、ガス密度をρg (kg/m3 )とすると、h′は以下の(4)、(5)式で求められる。また、ガス吹き込みがポーラス煉瓦の場合にはh′=Hとする。
h′=H−cosθ×d×5.07×(Fr′)1/3 ・・・(4)
Fr′=(ρg /ρ)×{(Q/1000/60)/(3.14×(d/2)2 )}2 /(g・H)・・・(5)
【0009】
図2に溶鋼循環流量パラメータΛと溶鋼の炭素濃度〔%C〕が100〜10ppmの範囲における脱炭速度定数(K)の関係を示す(この場合、表面攪拌強度パラメータΠは2〜3とした)が、溶鋼循環流量パラメータΛが0.45よりも小さい場合には、循環が悪くなるため脱炭速度が低下し、Λを2.0よりも大きくすると循環のために供給する底吹きガス流量が大きくなりすぎるため地金飛散が激しくなる。本発明の方式では、基本的にガス気泡による循環流は浸漬槽内で形成される。ΛがO.45よりも小さい場合には、浸漬槽内循環流の流速が小さいため浸漬槽外の溶鋼に循環流を形成させることができず、浸漬槽内で閉鎖的となるため極めて脱炭に悪影響を与えるが、0.45以上であれば浸漬槽内循環流が浸漬槽外の溶鋼にも影響を与え、浸漬槽外にも循環流が形成されるため脱炭速度が増加する。溶鋼循環流量パラメータΛの物理的意味は以下のようなものである。
溶鋼重量を加味したW/(τ/30)は本発明者らにより導出された溶鋼循環速度と均一混合時間(τ)との関係を規定した式であり、τは図1に示した本発明技術での均一混合時間である。ここで均一混合時間とは任意の位置での濃度変化が溶鋼全体に均一になるまでに要する時間であり、一般にはCu合金を添加し、Cu濃度がほぼ均一(±5%の誤差の範囲)になるまでの時間として測定される。
【0010】
τ=100{(J2 /H)2 ×(h′/H)-3.2×(a/D/0.15)-0.504/ε}0.337 なる(3)式は、図1に示した本発明技術での均一混合時間を表わす実験式であり、本発明者らの詳細なる実験により始めて明らかとされたものである、特に、(a/D/0.15)-0.504は、底吹きガス吹き込み位置と浸漬槽中心位置との偏芯距離の影響を定量化したものであり、均一混合時間には、取鍋中心との相対位置関係は何ら影響を持たず、ガス吹き込み位置と浸漬槽中心位置との偏芯距離でのみ決定される点が重要である。
(h′/H)-3.2はガス吹き込み方法の影響を定量化した実験式である。ガス吹き込みはポーラス煉瓦の他に、インジェクションランスを浸漬してパイプからガスを吹き込むことがある。ポーラス煉瓦の場合には、ガスは慣性力を失って吐出されるためh′=Hとなるが、パイプの場合には、慣性力によりジェットコアと呼ばれる気柱が立つため、実質的なガス吹き込み深さは、気柱高さを幾何学的にガス吹き込み位置の浴深Hより差し引く必要があることを意味する。気柱高さはcosθ×d×5.07×(Fr′)1/3 で表わされる。なお、請求項1においては、炭素濃度に規定せず本条件を満足する必要があり、脱炭のみならず、脱水素、脱窒素等の脱ガス処理に対しても必要な要件である。
【0011】
請求項2及びこれに従属する請求項3〜5記載の高効率減圧精錬方法は、表面反応を極限まで高めるための条件を示したものである。表面反応を利用するには、底吹きされた気泡群が浮上途中で自由に水平方向に広がりながら上昇し、合体することなく小さな気泡径を保ったままで自由表面に到達することが重要である。このような場合には、自由表面で極めて多くの小さな気泡が破泡するため、破泡により小さな液滴が生成し、あるいは、表面に細かい周波数の波立ちが起こり、気泡群としての破泡の総エネルギーを有効に反応表面積の増大に変換することが可能となる。
また一方では、地金の飛散という面からこれをみると、個々の気泡の破泡のエネルギーは極めて小さいためにその飛散が抑制されるという特色をもっている。
【0012】
これを実現する第1の条件が、図1に模式的に示したような取鍋内径に対して内径30%以上の径を有する直胴型で大径の浸漬槽10を取鍋11内の溶鋼12に浸漬し、浸漬槽10の内部を減圧し、更に、底吹き羽口13からアルゴンガス等の気体を吹き込むことである。これによって、底吹き羽口13から吹き込まれた気泡群14は浮上途中で自由に水平方向に広がりながら上昇することができるため、自由表面に広い気泡活性面15を形成することが可能となる。第2の条件は、溶鋼12の炭素濃度が30ppm以下で、以下の式で定義される表面攪拌強度パラメータΠを0.3〜5とすることにある。
Π=(S+6.5×A)・{(Q/2)×1n(ρgH/133.32/P)}0.52・D-1×H0.52・L-0.32 ・P-2/3/W ・・・・(6)
ここで、Wは溶鋼重量(ton)、Aは気泡活性面積(m2 )、Sは浸漬槽断面積(m2 )、Qは底吹きガス流量(NL/min)、Dは浸漬槽直径(m)、Pは浸漬管内圧力(Torr)であるが1Torr以下の場合はP=1とする、また、ρは溶鋼密度(kg/m3 )、Hはガス吹き込み位置の浴深(m)、Lは容器の浴深(m)であり、gは重力加速度(m/s2 )である。
【0013】
気泡活性面15は、図1にも示すように、底吹きされた気泡群14が12度の立体角で広がるとして幾何学形状から計算されるものである。
図3は、表面攪拌強度パラメータΠと炭素濃度が25〜10ppmの間の脱炭速度定数(K2)との関係を示した実験結果である。
K2=1n(25/10)/dt
ここで、dtは当該炭素濃度範囲を脱炭するのに要する時間(min)である。表面攪拌強度パラメータΠが0.3(図3中の縦実線の値)より小さい場合には脱炭速度が小さく、5(図3中の縦破線の値)よりも大きい場合には脱炭速度は大きいが地金飛散が増加して操業が困難になる。表面攪拌強度パラメータΠが0.3よりも小さい場合には、ガス気泡が有する浮力のエネルギーが浮上中に、ほとんどすべてを溶鋼の攪拌のために消費されてしまうため表面での破泡時に表面積の増加に供されるエネルギー自体が小さく、幾何学的には気泡活性面は形成されていても実質的にはほとんど活性化されていないため脱炭速度は極めて小さい。しかし、0.3以上であれぱ、浮力のエネルギーの内、溶鋼の攪拌のために消費されたエネルギーを差し引いても、破泡時に表面積の増加に供されるエネルギーが充分に残っているため、気泡活性面の生成に有効に寄与し脱炭速度が増大する。
【0014】
上記式(6)で表される表面攪拌強度パラメータΠの物理的意味は、以下の通りである。(S+6.5×A)は反応表面積に対応するものであり、本発明者らの詳細なる研究により気泡活性面は幾何学的自由表面に対して6.5倍の反応表面積を有することを明らかにしたものである。
{(Q/2)・1n(ρgH/133.32/P)}0.52・D-1・H0.52・L-0.32 の項は自由表面での反応の物質移動係数を表わしたパラメータで、これも本発明者らの詳細なる研究により始めて明らかとなった数式であり、静圧を考慮したガス流量の対数平均値を用いた場合に最も良い技術指標となることを見出したものである。
-2/3は気泡の自由表面での破泡による表面積増大効果と真空度の関係を表わしたもので、減圧にするほど表面直下での気泡の膨張が大きくなるため表面積の増加効果が大きくなる。ここで重要なことはPが1Torr以下の場合はP=1とする点である。これは、1Torr以下の減圧である場合には気泡の膨張が大きくなりすぎ、隣接する他の気泡との合体が生じ、有効な表面積拡大効果には寄与しなくなることを示している(なお、請求項1記載の発明についても同じ)。
【0015】
さらに、効率的な精錬を実施するための条件が請求項3以降である。
請求項3は、気泡活性面での破泡のエネルギーを最大に生かすための条件である、つまり、(7)、(8)式で与えられる気泡活性面積当たりの表面破泡エネルギーE(:kW/m2 )を5〜65とすることにある。
E=0.01423/1000・(Q・T/A)×1og{(13.6・P+ρ・H)/(13.6・P+ρ・HE )}・・・・(7)
ここで、HE は無効浴深(m)で次式で計算される。
(13.6・P+ρ・HE )・(HE ×1000)3 =(13.6・P+ρ・H)・(12.7)3 ・・・・(8)
無効浴深とは、表面直下で気泡の膨張が急激に大きくなり表面破泡エネルギーに寄与しなくなる浴深であり、表面破泡エネルギーとしては、この領域での膨張は無視できることを意味している。
【0016】
図4に表面破泡エネルギーEと脱炭速度定数K2の関係を示す(この場合には、表面攪拌強度パラメータΠは2〜3、溶鋼循環流量パラメータΛは0.8〜1.3とした)が、表面破泡エネルギーEが5(図4中の縦実線の値)よりも小さいと脱炭速度が低下しており、65(図4中の縦破線の値)よりも大きい場合には表面破泡エネルギーEを大きくするために多量のガスを吹き込む必要が生じるため多量の地金飛散が発生する。表面破泡エネルギーEは物理的には、底吹きガスのエネルギーの内、自由表面の盛り上がりに寄与するエネルギーを示した数式であるという意味を持つ。つまり、表面破泡エネルギーEが大きければ底吹きされたガス気泡は自由表面の揺動を介して表面積の増大を招くため脱炭速度が増大するが、表面破泡エネルギーEが5よりも小さい場合には、自由表面を盛り上げるための位置エネルギーの増大にほとんどすべてのエネルギーが消費されてしまうため、気泡活性面は幾何学的には生成していても、ほとんど活性化されず脱炭速度は低い。表面破泡エネルギーEが5以上であれば、位置エネルギーの増加分を差し引いても気泡群はエネルギーを残したまま表面に到達するため気泡活性面が活性化され脱炭速度は向上する。
【0017】
請求項4は、脱炭の進行に応じた気泡活性面の活性度の制御に関するものであり、脱炭速度K(=Δ〔%C〕/Δt:%/min)の変化に応じて底吹きガス流量Q(:NL/min)を(9)式のパラメータΩが2〜10の範囲になるように制御することで脱炭速度が向上する。
Ω=(K×10×1000×22.4/12)/S+Q/W/A・・・・(9)
つまり、内部脱炭が活発に起こる時期は底吹きガスによる表面反応はあまり必要なく、内部脱炭が起こりにくくなった低炭素濃度域に表面反応を活性化させる必要がある。パラメータΩが2よりも小さい場合には、低炭素濃度域に表面反応が充分に活性化させられず脱炭速度が低下し、10よりも大きい場合には、内部脱炭が活発に起こる時期に必要以上に底吹きガスを流すためガスコストが増加し経済的では無い。
【0018】
請求項5は、底吹きガスをポーラス煉瓦から供給する場合の最適条件を規定したものであり、ポーラス煉瓦表面積当たりの底吹きガス流量を3〜50NL/min/cm2 とするものである。50よりも多い場合には、ポーラス煉瓦表面直上で気泡同士が合体し気泡群が有効に広がらず、3よりも小さい場合には気泡群中の気泡密度が小さすぎるため、溶鋼の下降流により気泡群が押し曲げられて気泡が浸漬槽外に流出し、有効に気泡活性面の生成に使用されなくなるためである。
【0019】
【実施例】
本発明の実施例1は以下の条件で行った。溶鋼重量Wは350ton、取鍋内直径Jは4m、浸漬槽の内側の直径Dは2m、浸漬槽断面積Sは3.14m2 、底吹きガスはArとし、取鍋炉底に設置した直径90mmのポーラス煉瓦から吹き込んだ。ガス吹き込み位置の浴深Hは容器の浴深Lと同一で4.77m、浸漬槽中心に対するガス吹き込み位置の偏芯距離aは0.35m、溶鋼温度Tは1870(K)、底吹きガス流量Qは300(NL/min)とした。
取鍋内の炭素が約0.035%、酸素が約0.055%の溶鋼に浸漬槽を浸漬し、槽内を排気することで真空処理を実施した。
炭素濃度が100ppmの時点での真空度は20Torrであり、Λは0.50であった。炭素濃度が30ppm時点では真空度は5torrに低下し、Λは0.55であった。11分の処理で炭素は25ppmへ低下した。
【0020】
比較例1も実施例1と同一の装置で実施した。
取鍋内の炭素が約0.035%、酸素が約0.055%の溶鋼に浸漬槽を浸漬し、槽内を排気することで真空処理をした。Qを100NL/minとした。
炭素濃度が100ppmの時点での真空度は20Torrであり、Λは0.35であった。炭素濃度が30ppm時点では真空度が5Torr程度であり、Λは0.38であった。炭素濃度を25ppmに到達するのに19分の時間を要した。
【0021】
本発明の実施例2は以下の条件で行った。溶鋼重量Wは350ton、取鍋内直径Jは4m、浸漬槽の内側の直径Dは2m、浸漬槽断面積Sは3.14m2 、底吹きガスはArとし、取鍋炉底に設置した直径90mmのポーラス煉瓦から吹き込んだ。ガス吹き込み位置の浴深Hは容器の浴深Lと同一で4.77m、浸漬槽中心に対するガス吹き込み位置の偏芯距離aは0.35m、気泡活性面積Aは2.15m2 となる。また、溶鋼温度Tは1870(K)、溶鋼密度ρは7000kg/m3 であり、無効浴深HE は0.015m程度となる。底吹きガス流量Qを400〜1500(NL/min)、低炭素領域での浸漬管内圧力Pは1〜10(Torr)とした、取鍋内の炭素が約0.035%、酸素が約0.055%の溶鋼に浸漬槽を浸漬し、槽内を排気することで真空処理を約15分間実施した。炭素濃度が約50ppmに到達するまではQを500NL/minとし、その後、Qを1000NL/minに上昇させた。到達真空度は約1Torrであった。
炭素濃度が50ppmの時点での真空度は10Torrであり、溶鋼循環流量パラメータΛは0.58であった、炭素濃度が30ppm以下では真空度は1Torr以下に低下し、表面攪拌強度パラメータΠは2.46,溶鋼循環流量パラメータΛは0.89,表面破泡エネルギーEは30.4、パラメータΩは3.1で、ポーラス煉瓦表面積当たりの底吹きガス流量は15.7NL/min/cm2 であった。脱炭速度定数K2は0.23と高く、15分の処理で7ppmの炭素濃度に到達したが、地金飛散は極めて軽微であった。
【0022】
比較例2も実施例2と同一の装置で実施した。
取鍋内の炭素が約0.035%、酸素が約0.055%の溶鋼に浸漬槽を浸漬し、槽内を排気することで真空処理を約15分間実施した。炭素濃度に依らずにQを150NL/minとし、到達真空度は7Torrであった。
炭素濃度が50ppmの時点での真空度は25Torrであり、溶鋼循環流量パラメータΛは0.39であった。炭素濃度が30ppm以下では真空度は7Torr程度であり、表面攪拌強度パラメータΠは0.16、溶鋼循環流量パラメータΛは0.43、表面破泡エネルギーEは4.13、パラメータΩは1.98で、ポーラス煉瓦表面積当たりの底吹きガス流量は2.36NL/min/cm2 であった。脱炭速度定数K2は0.12と低く、15分の処理で21ppmの炭素濃度にしか到達しなかった。
【0023】
【発明の効果】
請求項1〜5記載の高効率減圧精錬方法によって、地金の飛散、付着を抑制した状態で、比較的炭素濃度の高い領域の安定した脱炭や短時間での極低炭素濃度域までの脱炭や脱水素を安定して実施することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高効率減圧精錬方法の説明図である。
【図2】溶鋼循環流量パラメータΛと脱炭速度(K)の関係を示すグラフである。
【図3】表面攪拌強度パラメータΠと脱炭速度(K2)の関係を示すグラフである。
【図4】表面破泡エネルギーEと脱炭速度(K2)の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 浸漬槽 11 取鍋
12 取鍋内溶鋼 13 底吹き羽口
14 気泡群 15 気泡活性面

Claims (5)

  1. 直胴型で大径の浸漬槽を取鍋内溶鋼に浸漬し、該浸漬槽内部を減圧する真空脱ガス方法において、
    以下の(1)〜(3)式で表される溶鋼循環流量パラメータΛを0.45〜2.0とすることを特徴とする高効率減圧精錬方法。
    Λ=1/(τ/30) ・・・(1)
    τ=100{(J2 /H)2 ×(h′/H)-3.2×(a/D/0.15)-0.504/ε}0.337 ・・・(2)
    ε=(371/W)・(Q/1000/60)・T×{ln(ρgH/133.32/P)十0.06(1−298/T)}・・・・(3)
    ここで、
    Jは取鍋内直径(m)、
    Hはガス吹き込み位置の浴深(m)、
    Dは浸漬槽直径(m)、
    Wは溶鋼重量(ton)、
    Qは底吹きガス流量(NL/min)、
    Pは浸漬管内圧力(Torr)であるが
    1Torr以下の場合はP=1とする。
    Tは溶鋼温度(K)、
    gは重力の加速度(m/s2 )、
    ρは溶鋼密度(kg/m3 )、
    h′は修正ガス吹き込み位置の浴深(m)、
    aは浸漬槽中心に対するガス吹き込み位置(の偏芯距離(m))、であり、ガス吹き込みにパイプを用いた場合は、吐出方向の垂直上方に対してする角度をθ(deg)、パイプ直径をd(m)、ガス密度をρg (kg/m3 )とすると、h′は以下の(4)、(5)式で求められ、前記ガス吹き込みがポーラス煉瓦の場合にはh′=Hとする。
    h′=H−cosθ×d×5.07×(Fr′)1/3 ・・・(4)
    Fr′=(ρg /ρ)×{(Q/1000/60)/(3.14×(d/2)2 )}2 /(g・H)・・・・(5)
  2. 請求項1記載の精錬方法における、前記直胴型で大径の浸漬槽を前記取鍋内溶鋼に浸漬し、該浸漬槽内部を減圧する真空脱ガス方法において、
    前記溶鋼の炭素濃度が30ppm以下で、以下の(6)式で定義される表面攪拌強度パラメータΠを、0.3〜5の範囲で操業することを特徴とする高効率減圧精錬方法。
    Π=(S+6.5×A)×{(Q/2)・1n(ρgH/133.32/P)}0.52×D-1・H0.52・L-0.32 ・P-2/3/W ・・・・(6)
    ここで、
    Aは気泡活性面積(m2 )、
    Sは浸漬槽断面積(m2 )、
    Lは容器の浴深(m)である。
  3. 請求項2記載の精錬方法において、以下の(7)、(8)式で与えられる気泡活性面積当たりの表面破泡エネルギーE(:kW/m2 )を5〜65とすることを特徴とする高効率減圧精錬方法。
    E=0.01423/1000・(Q・T/A)×log{(13.6・P+ρ・H)/(13.6・P+ρ・HE )}・・・・(7)
    ここで、HE は無効浴深(m)で次式で計算される。
    (13.6・P+ρ・HE )・(HE ×1000)3 =(13.6・P+ρ・H)・(12.7)3 ・・・・(8)
  4. 請求項2又は3記載の精錬方法において、脱炭速度K(=Δ〔%C〕/Δt:%/min)の変化に応じて底吹きガス流量Q(:NL/min)を次の(9)式のパラメータΩが2〜10の範囲になるように制御することを特徴とする高効率減圧精錬方法。
    Ω=(K×10×1000×22.4/12)/S+Q/W/A・・・・(9)
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の精錬方法において、ポーラス煉瓦表面積当たりの底吹きガス流量を3〜50NL/min/cm2 とすることを特徴とする高効率減圧精錬方法。
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