JP2648769B2 - 溶鋼の真空精錬方法 - Google Patents

溶鋼の真空精錬方法

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JP2648769B2
JP2648769B2 JP3146540A JP14654091A JP2648769B2 JP 2648769 B2 JP2648769 B2 JP 2648769B2 JP 3146540 A JP3146540 A JP 3146540A JP 14654091 A JP14654091 A JP 14654091A JP 2648769 B2 JP2648769 B2 JP 2648769B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、極低炭素領域まで脱炭
速度を低下させることなく効率的な精錬が可能となる極
低炭素鋼の精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】極低炭素溶鋼の減圧脱炭方法としては、
RH、DHが広く用いられている。しかし、炭素濃度を
20ppm以下に低下させる場合には脱炭速度が停滞
し、長時間を要するという問題があった。これを解決す
るためには、通常、RHにおける環流用Arガス流量の
増加や、浸漬管径の増大、あるいはDHにおける槽昇降
速度の増加等による溶鋼環流速度の増大といった方法が
取られている。しかし、これらの方法のうち、環流用A
rガス流量の増加は耐火物の寿命の低下を招くため限界
があり、浸漬管径の増大は寸法制約上の限界があり、槽
昇降速度の増加も溶鋼の追従性からの限界がある。ま
た、材料とプロセス、第3巻(1990)、168にお
いてはRHにおける槽内へのArガス吹き込みによる反
応界面積の増大方法が提示されているが、極低炭素濃度
域において効果を得るためには50Nl/(ton・m
in)以上という大量のガス吹き込みが必要であり、槽
内で激しいスプラッシュを発生させるため、操業性を著
しく損ねるという問題がある。さらに、特開昭57−2
00514号公報によれば、RHにおいて環流用のガス
を取鍋の底部より吹き込む方法が示されているが、極低
炭素濃度領域で効果を出すために多量のガスを導入した
場合には浸漬管耐火物下端部に気泡が衝突するため耐火
物損耗が激しいという問題点を有している。これに対し
て、特開昭53−67605号公報には、円筒形の管を
浸漬し管内を減圧する減圧精錬炉が提示されているが、
この方法では処理中に管内溶鋼と管外溶鋼とを混合させ
ることを目的として、複数回、減圧/復圧を繰り返すた
め、溶鋼反応表面が真空下にさらされる時間が短く、極
低炭素鋼の溶製の場合には長時間を要するという問題が
ある。一方、特開昭51−55717号公報において
は、円筒形の管を浸漬し管内を減圧した上で取鍋底部よ
りポーラスレンガよりArガスを吹き込む減圧精錬炉が
提示されている。しかし、これらで示されているよう
な、円筒形の浸漬管に溶鋼を吸い上げ、取鍋底部に設け
たガス吹き込み孔から不活性ガスを導入する方式のみで
は、安定して極低炭領領域まで脱炭することができない
ため実用化には至っていなく、また、この方法を極低炭
素鋼の精錬に適用した例は示されていない。さらに、こ
の方法のみでは、処理中のスプラッシュの発生も安定し
て抑制できず、また、転炉スラグを巻き込むため高清浄
度鋼の安定した溶製も難しいという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上で示したように、
材料とプロセス、第3巻(1990)168に示された
方法の場合には、激しいスプラッシュを生じるという問
題点があり、また、特開昭57−200514号公報に
示された方法には耐火物損耗が激しいという問題点を有
していた。さらに、特開昭53−67605号公報に示
された方法では、処理中に減圧/復圧を繰り返すため
に、溶鋼反応表面が高真空下にさらされる時間が短く、
極低炭素鋼の溶製の場合には長時間を要するという問題
があった。さらに、特開昭53−67605号公報や特
開昭51−55717号公報に示された方法で、溶鋼の
環流改善を積極的に図っても、安定して極低炭領域まで
脱炭することができない上に、処理中のスプラッシュの
発生も安定して抑制できず、また、高清浄度鋼の安定し
た溶製も難しいという問題があった。従って、本発明の
目的とするところは、激しいスプラッシュの発生、耐火
物損耗、清浄度の低下という問題を起こすことなく、し
かも、短時間処理で極低炭素領域まで脱炭速度を低下さ
せずに効率的な精錬を可能とすることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、先に述べ
た従来技術である、円箇形の浸漬槽に溶鋼を吸い上げ、
取鍋底部に設けたガス吹き込み孔から不活性ガスを導入
する方式に基づいて、種々の条件を変化させた試験を実
施したが、安定した極低炭素領域までの脱炭を行うこと
ができなかった。そこで、さらに研究を続行したとこ
ろ、減圧下での脱炭を促進するための基本的な要因は、
従来提唱されていた、溶鋼の還流速度や、吹き込まれた
不活性ガスの滞留時間ではなく、気泡活性面積であると
いう新しい知見を得た。本発明はこの知見に基づきなさ
れたものである。その要旨とするところは、溶鋼中のC
7ppm以下にするにあたり、精錬炉より出鋼された
取鍋溶鋼に対し、取鍋内径の50超〜80%の大径の直
胴形状の容器を溶鋼内に浸漬し、該直胴形状浸漬管内を
復圧することなく、且つ浸漬管内に酸素を供給すること
なく連続的に減圧し、浸漬管内真空面の浴深(H)の
0.5Hよりも深く、且つ浸漬管内面と取鍋底部からの
ガス吹き込み位置の垂直投影線との間隔(Y)との関係
が、Yを0.08H〜0.2Hとする位置から、不活性
ガスまたは中性ガスを0.6〜15N1/min・to
nを供給しつつ脱ガスを行い、かかる流量範囲及び吹き
込み位置からのガス気泡が表面に浮上してできた気泡活
性面の領域が全溶鋼表面の10%以上で、且つ浸漬管内
の真空表面の15〜95%とし、その気泡分散領域の体
積を全溶鋼体積の4%以上として処理を行うことを特徴
とする超低炭素鋼を得る溶鋼の真空精錬方法にある。ま
た、取鍋底部と浸漬管からガスを吹き込み、真空面の浴
深(H)、浸漬管内面と取鍋底部からのガス吹き込み位
置の垂直投影線との間隔(Y)との関係で、Yを0.0
8H〜0.2Hとし、取鍋底部から供給されるガス流量
(Q:N1/min・ton)、及び、浸漬管から供
給されるガス流量(Q:N1/min・ton)を
(Q×Q)の関係で0.5〜6.0(ただし*
は1/3乗)とすることにより、さらに効果的に上記
の各反応が進行することにある。ここで取鍋底部とは取
鍋底部および0.5Hよりも深い位置を示す。一方、処
理開始後、真空度が300Torr以上の範囲で、炭素
濃度(C:ppm)に応じて、真空度(P:Torr)
を、log(C/P*)が0.7〜1.1(ただし*
は1/2乗)の範囲で調節することにより、スプラッ
シュの発生をより低減させることにある。また、脱炭処
理終了後、真空度を低下させ、浸漬管内溶鋼面と浸漬管
下端との距離を1000mm〜200mmとする条件で
適宜時間保持することにより、高清浄度鋼の溶製が可能
となることにある。
【0005】さらに、本発明について詳述する。 本発明は、取鍋内径と浸漬槽内径の比を適正とし、
かつ、撹拌用のガスの吹き込み位置を適正にすることに
より、溶鋼中の炭素濃度は短時間で、極低炭領域まで低
下することを示している。このうち、取鍋内径と浸漬槽
内径の比が、0.3(30%)以下の場合には、真空下
に暴露される溶鋼表面積が小さくなるため脱炭が進行し
にくくなる。逆に、浸漬槽を大きくし過ぎると、浸漬槽
と取鍋の間隙が狭くなり、その部分の溶鋼の撹拌がほと
んど起こらなくなり、この部分の溶鋼と他の部分の溶鋼
との間の入れ替えが極めて遅くなる。この影響は極低炭
素濃度領域においては無視できず、種々の実験により、
溶鋼の入れ替えが問題とならない速度にするためには、
取鍋内径と浸漬槽内径の比として0.8(80%)以下
が必要なことが明らかになった。一方、各種の試験結果
によれば、スプラッシュの発生を抑制して脱炭速度を高
めるためには、真空面の浴深(H)の0.5Hよりも深
い位置から撹拌用ガスを吹き込み必要があることが明ら
かになった。この理由は以下のようなものである。 1)浅い位置からの吹き込みで脱炭を促進するために
は、浴の浅い部分に多数の垂直方向に吹き込むノズルを
配置するか、多数ノズルから水平方向に吹き込み、気泡
到達距離を大きくする必要がある。この内、垂直方向に
吹き込むノズルを配置した場合には、ノズルから出たガ
スは、運動エネルギーを保有していること、及び、ノズ
ル内と溶鋼内では大きな温度、圧力差があることによる
ガスの急激な膨張があることにより、ノズル出口近傍で
激しいエネルギーの発散があるため、その影響が浴表面
にまで影響を与え、激しいスプラッシュの発生を引き起
こす。また、水平方向に吹き込む場合には、最大の気泡
到達距離を大きくしても、気泡分布は、壁面近傍が最も
多くなるため、この部分で無駄なエネルギーが大量に供
給され、スプラッシユを多量に発生する。 2)これに対して、深い位置から吹き込んだ場合には、
ノズル出口近傍での激しく放出されたエネルギーは、鋼
浴を循環流動させるためのエネルギーに転ずることがで
きるため、撹拌、混合が促進されるのみで、浴表面への
影響は極めて少ない。したがって、スプラッシュの発生
を伴うことなく、少ないガス量で効率的な脱炭がおこな
いうる。
【0006】 さらに、本発明者は、極低炭素領域ま
で脱炭速度を低下させることなく脱炭を進行させるため
には、真空下に暴露されている溶鋼表面部分を、有効に
撹拌し実質的な表面積を増大させることが極めて効果的
であるという新しい知見を見いだした。また、有効に撹
拌するための方法としては、水モデルや水銀モデルの手
段による詳細な検討の結果、吹き込まれた気泡を表面の
広い範囲に浮き上がらせることが重要であるという、新
しい知見を得た。これは、例えば、大量の気泡を上昇さ
せても、途中に狭い断面積の流路を通過した場合や、吹
き込み位置が浅く表面での気泡の浮上領域の面積が狭い
場合には、吹き込むガス量を増加させても実質的な表面
積は増加しないことを意味しており、単に、鋼浴全体に
対する撹拌力や環流速度という、既存の概念では説明が
困難な現象であり、表面領域に対する撹拌という新しい
概念を提起するものである。取鍋内溶鋼の深い位置から
のガス撹拌下での流動状況は、水モデルや数値計算によ
り明らかとされているが、吹き込まれたガスが浮上する
領域では大きな上向きの流れが生じ、表面の気泡浮上領
域で最も強い上向きの流れとなる。これに対して、気泡
浮上領域以外の表面では、表面に水平方向の炉壁へ向か
う流れになり、この流れが炉壁へ衝突して下向きの流れ
へと変化している。これらの流動の内、水平方向の炉壁
へ向かう流れの速さは、本発明者による研究の結果、い
わゆる撹拌エネルギーや環流速度と対応することが明ら
かになった。
【0007】しかし、真空下での脱炭反応に対しては、
水平方向の炉壁へ向かう流れの速さよりも、吹き込まれ
たガスが浮上する領域での大きな上向きの流れが圧倒的
に重要であることが明らかになり、さらに、種々の試験
結果により、この脱炭特性を支配する要因は、以下で定
義するところの気泡活性面積であることが明らかになっ
た。ここで、気泡活性面とは、吹き込まれたガス気泡が
表面に浮上する領域という定義であり、その決定方法
は、水モデル、水銀モデル、あるいは、実機での観察結
果より、垂直方向に吹き込まれたガスに対する気泡活性
面積(AN)は(1)式で、水平方向に吹き込まれたガ
スに対する気泡活性面積(AU)は(2)式で与えるも
のである。 AN=3.14×(0.212×H)2 ・・・・・(1) AU=3.14×(7×Q067)2/2 ・・・・・(2) ここで、Hは吹き込み位置から溶鋼面までの距離(m)
であり、Qはノズル1個当りのガス吹き込み量(Nm3
/s)である。
【0008】図1は、小型の真空溶解炉にて未脱酸溶鋼
を脱炭処理した場合の実験結果を示したものであり、縦
軸は(3)式で示す脱炭速度定数(K)である。 K=(1n[%C]1−1n[%C]2)/Δt〕 ・・・(3) ここで、[%C]1は実験開始時の炭素濃度、[%C]2
実験終了時の炭素濃度、及び、Δtは実験時間(分)で
ある。(1nは自然対数。) 実験は図2の(a)に示すように、炉内にガス導入用の
パイプを浸漬し、浸漬深さを変化させた実験と、(b)
のように、浸漬するパイプの数を変化させた実験、及
び、(c)のごとく、上部に管を浸漬させ、浮上するガ
ス気泡を途中で狭い断面積の流路を通過させた場合につ
いて実施した。また、いずれの場合も供給したガス量は
一定とした。 図1より、吹き込み深さが深いほどKは
大きく、また、同一の吹き込み深さであっても、ガス導
入用パイプの数が多い方がKは大きく、逆に、途中で狭
い断面積の流路を通過させた場合には、Kがかなり小さ
くなることがわかる。 これは、同一のガス導入深さ
で、同一のガス流量であれば、撹拌エネルギーは同一で
あることから、撹拌エネルギーや環流速度といった水平
方向の炉壁へ向かう流れの速さで代表される指標では説
明しえない新しい現象である。
【0009】図3は、この結果を(1)式で定義した気
泡活性面積で整理したものであるが、極めて統一的に整
理でき、気泡活性面積が脱炭反応速度を支配する主要な
因子であることが明らかになった。この、脱炭反応に対
して気泡活性面積が重要である理由は以下のように考え
られる。 1)脱炭反応の起こる自由表面は、スラグが存在しない
ためにメタルの流動に対する抵抗が、ほとんどない。そ
のため、スラグとメタルの間の反応に比較して、メタル
相表面の流動はきわめて容易である。したがって、表面
流速に大きく影響される物質移動速度は、少量のガスに
より撹拌するのみで充分に大きくでき、これを、さらに
大きくしても反応速度に対する影響は小さい。このこと
が、撹拌エネルギーや環流速度といった水平方向の炉壁
へ向かう流れの速さで決定される指標と脱炭反応速度が
関係しない理由である。 2)脱炭反応の速度を増大させるためには、物質移動速
度の増加ではなく、反応表面積の増加が最も重要な要因
となる。ところで、気泡が浮上し表面で破泡するという
一連の経過を考えると、気泡が溶鋼との密度差により浮
上した後、表面で破裂し、次いで、周囲の溶鋼表面が波
立つという過程をとる。このうち、気泡が表面で破裂し
た瞬間が、最も大きな表面積を形成し、その後、周囲に
生成される波では表面積はほとんど増加されない。一
方、気泡が浮上することにより形成される、最表面での
上向きの流れの速度は、ガス吹き込み速度や撹拌エネル
ギーに影響されるが、それは、液滴を高くまで飛散させ
る運動エネルギーを与えるものであり、個々の気泡が表
面で破裂した瞬間の自由表面の形態には大きくは影響し
ない。したがって、個々の気泡が表面で破裂する時に形
成する自由表面はほぼ一定であり、反応容器全体の表面
積を有効に増大させるためには、表面で破裂する気泡の
数を多くすることが重要となる。このためには、気泡の
合体を可能な限り抑制できるように、広い面積にわたっ
て気泡を浮上させることが必要となり、気泡活性面の大
きさが重要となる。
【0010】図4は、図5に示すようにな、下端を開放
した円筒管を浸漬し、その内部を真空にする形式の試験
炉を用いた実験結果を示したものであるが、(4)式で
定義される気泡活性面が全溶鋼表面積に占める割合
(A)と、(5)式で定義される気泡活性面が真空表面
積に占める割合(B)とに依存し、これらの値が適正で
あれば、炭素濃度が6ppm程度の極低炭素域まで速度
が低下せずに脱炭できることがわかる。ここで、全溶鋼
表面積(G)は、図5における、真空下表面(イ)と大
気圧下表面(ロ)の合計を意味し、また、真空表面積
(g)は、図5における、真空下表面(イ)の面積を意
味する。 A={(気泡活性面積)/(全溶鋼表面積)}×100・・・・(4) B={(気泡活性面積)/(真空表面積)}×100・・・・・(5) また、図6は、これらの結果を、脱炭速度定数と気泡活
性面が全溶鋼表面積に占める割合で整理したものであ
る。この図より、気泡活性面を全溶鋼表面積の10%以
上にすることで、脱炭速度定数は飛躍的に増大すること
がわかる。一方、図7は、種々の断面積を有する浸漬管
を用いて、同様な実験を行った場合の結果を、脱炭速度
定数と気泡活性面が真空表面積に占める割合で整理した
ものである。この図より、気泡活性面を真空表面積の9
5%以上にすると脱炭速度が低下することがわかる。こ
れは、真空下表面の全体に気泡が浮上した場合には、下
降流の生成が阻害されるため、環流が極めて悪化し、真
空下表面で脱炭された溶鋼と取鍋内部の溶鋼との、入れ
替わりが不十分となることに起因する。また、気泡活性
面が真空表面積の15%以下の場合にも脱炭速度の低下
が見られるが、これは、後述するように、この条件の場
合には浸漬槽直径が大きくなりすぎるためである。
【0011】 前述したように、真空下での脱炭を効
率的に行うためには、気泡活性面の大きさが重要であ
る。しかし、気泡活性面が適正であっても、[C]が処
理開始時から、20ppm程度までの間の脱炭速度を、
より増大させるためには、以下で定義する気泡分散領域
の体積が、全溶鋼体積の4%以上が必要であることが、
詳細な実験により明らかになった。ここで、気泡分散領
域は、吹き込まれた気泡が浮上していく領域を意味し、
垂直方向に吹き込まれたガスに対する気泡分散領域(W
N)は、(1)式で定義した気泡活性面積(AN)により
(6)式で、水平方向に吹き込まれたガスに対する気泡
分散領域(WU)は、(2)式で定義した気泡活性面積
(AU)により(7)式で与えるものであり、両方法を
併用する場合には、その和として与えることができる。 WN=AN・H/3 ・・・・(6) WU=AU・H/3 ・・・・(7) ここで、Hは吹き込み位置から溶鋼面までの距離(m)
であり、Qはノズル1個当りのガス吹き込み量(Nm3
/s)である。この理由は以下のようなものである。
[C]が高い場合には、溶鋼中の[C]と[O]の積に
よって平衡関係に基づいて計算される溶鋼のCO分圧の
方が、実際の真空度よりも、充分に大きいために、CO
ガス気泡は溶鋼内部から発生することができる。したが
って、気泡活性面積が充分にあることに加えて、内部か
らの気泡の発生を促進することが脱炭速度の増大を引き
起こす。この内部からの気泡の発生には、COガス気泡
の核発生位置を与えることが重要である。本発明者によ
る詳細な検討により、この気泡発生核として、従来考え
られていた耐火物表面よりも、吹き込まれたガス気泡の
表面が有効であることが確認された。したがって、
[C]が高い場合には、吹き込まれたガスを溶鋼内部で
も、大きく広げて、気泡が存在する領域を広くすること
により、内部から発生するCO気泡の核発生位置を数多
く与えることにより、脱炭速度の向上が可能となるもの
である。図8は、この結果を示したものであるが、同一
の気泡活性面積であっても、より深い位置から吹き込ん
だ場合の方が気泡分散領域の体積が大きくなり、4%以
上にすることで脱炭速度もより一層の向上が図れている
ことがわかる。さらに、気泡分散領域の体積が広い場合
には、溶鋼内部に含まれる全気泡の表面積の合計が大き
くなるため、[C]と[O]が気泡の表面でCOガスと
なり気泡内に取り込まれる、いわゆる気泡脱炭速度が大
きくなるため、低炭素濃度域でも脱炭速度が増加する効
果を有している。
【0012】 前述したように、真空下での脱炭を効
率的に行うためには、気泡活性面の大きさが重要であ
る。しかし、気泡活性面が適正であっても、より効率的
な処理を目的とする場合には撹拌用ガス流量を適正範囲
に制御する必要がある。つまり、撹拌用ガス流量が少な
すぎる場合には、単位時間当りに破裂する気泡の数が少
ないため表面積の増加効果が不充分となる上、環流速度
が悪化するため、真空下表面で脱炭された溶鋼と取鍋内
部の溶鋼との入れ替わりが不十分となる問題が発生す
る。このためには、詳細な実験により、0.6Nl/
(min・ton)以上のガス量が必要であることが明
らかになった。また、必要以上に撹拌用ガスを入れる
と、気泡が浮上することにより形成される最表面での上
向きの流れの速度は、液滴を高くまで飛散させる運動エ
ネルギーを与えるものであり、個々の気泡が表面で破裂
した瞬間の自由表面の形態には大きくは影響しないた
め、いわゆる、スプラッシュと称される液滴の飛散が大
きくなるという問題点が生じる。この操業上の支障を招
く、液滴の飛散を最小限に抑制するためには、撹拌用ガ
ス流量を15Nl/(min・ton)以下とする必要
がある。また、撹拌用ガス流量が必要以上に大きい場合
には、気泡脱炭が少なくなるという悪影響を生む。これ
は、以下の理由による。まず、ガス流量が少ない場合に
は、個々の気泡は合体せずに浮上し、かつ、溶鋼全体の
上昇流速が小さいので気泡の浴内滞留時間も長いため、
浮上中に充分に気泡脱炭が進行する。これに対して、ガ
ス流量を増大させて行くと、適切な範囲内であれば、溶
鋼全体の上昇流速が大きくなり浴内滞留時間が短くなる
反面、合体しない限りは、単位時間当りに吹き込まれる
気泡の数は多くなるため、その相対関係として、気泡脱
炭量は低下しないが、必要以上に増加させると、気泡の
合体がおこるため、気泡脱炭量が減少する。この、臨界
のガス流量は、種々の実験により、スプラッシュの発生
上問題が生じる流量と同一の、15Nl/(min・t
on)であることがわかった。図9は、この関係を示し
たものである。
【0013】さらに極低炭素鋼を溶製する場合において
は、[C]が15ppm以下の濃度領域で撹拌用ガス流
量を1Nl/(min・ton)〜15Nl/(min・
ton)とする必要がある。これは以下のような理由に
よるものである。 1)[C]が15ppmよりも高い場合には、溶鋼中の
[C]と[O]の積によって平衡関係に基づいて計算さ
れる溶鋼のCO分圧の方が、実際の真空度よりも、充分
に大きいために、COガス気泡は表面直下の溶鋼内部か
ら発生することができ、そのため、気泡活性面積が充分
にあれば、その領域の表面直下でCOガスが容易に発生
し、そのCOガス気泡の表面での破裂により、なお一
層、表面積が増大するという効果があるため、環流を阻
害しない最小限のガス量で大きな脱炭速度定数が得られ
る。 2)これに対して、[C]が15ppm以下の場合には
平衡関係に基づいて計算される溶鋼のCO分圧の方と実
際の真空度との差が小さいために、表面直下でのCOガ
スの発生は期待できなくなり、表面積を[C]が15p
pmよりも高い領域に匹敵するまでに増加させるために
は、吹き込むガス気泡の数自体を多くする必要がある。
【0014】 前述したように、真空下での脱炭を効
率的に行うためには、気泡活性面の大きさが重量であ
る。さらに脱炭速度を向上させるためには、取鍋底部、
及び、浸漬管からガスを吹き込み、真空面の浴深
(H)、浸漬管内面とガス吹き込み位置の鉛直投影線と
の間隔(Y)との関係で、Yを0.08H〜0.20H
とし、取鍋底部から供給されるガス流量;N1/
(min・ton)、及び、浸漬管から供給されるガ
ス流量;N1/(min・ton)を(Q×
)を0.5〜6.0(ただし*は1/3乗)
とすることが重量であることが明らかになった。この理
由は以下に示すものである。 1)耐火物表面はCOガス気泡の核発生位置として作用
するが、耐火物表面に激しい流動が存在する場合には、
一旦、表面で生成した気泡が直ちに耐火物表面から剥
離、除去されるため、新たなCO気泡が引き続いて容易
に発生し、脱炭速度を一層増加させることができる。こ
のためには、浸漬管内面に接触しながら大量の気泡を上
昇させることが効果的である。 2)環流をより促進させるためには、浸漬管中の溶鋼内
の気泡存在密度を非対称にすることが必要である。その
ためには、壁面近傍に大量の気泡を集中して存在させる
ことが効果的である。しかし、取鍋底部からの吹き込み
の場合、浸漬管内面とガス吹き込み位置の鉛直投影線と
の間隔(Y)を小さくしすぎると、底部より供給された
ガスが浸漬管耐火物先端に衝突し、激しい耐火物溶損を
招くという問題があり、逆に、Yを大きくしすぎると、
壁面近傍を上昇する気泡が少なくなるため効果が小さく
なる。したがって、数多くの実験結果により、適正範囲
が真空面の浴深(H)との関係で0.08H〜0.20
Hにあることが明らかになった。さらに、浸漬管壁面か
らガスを供給することは、壁面近傍を上昇する気泡を多
くする効果はあるものの、ガス吹き込み位置から溶鋼表
面までの深さが小さいため、ガスの浮力による攪拌の仕
事自体が小さく、取鍋内溶鋼と浸漬管内溶鋼との入れ替
わりが不十分となる。本発明者による数多くの詳細な実
験の結果、上記の効果を得るためには、取鍋底部から供
給されるガス流量(Q)に対して、浸漬管から供給さ
れるガス流量(Q)はその1/3乗でしか影響を及ぼ
さないという知見を得、また、その最適範囲としては、
後述する表5の試験結果から(Q×Q)が0.
5〜6.0の領域にあることが明らかになった。(ただ
し*は1/3乗)ここで、(Q×Q)が0.
5以下(ただし*は1/3乗)の場合にはガス量が少
ないため上記効果が得られず、6.0以上の場合には、
浸漬管壁面近傍の上昇流が強すぎるために耐火物溶損が
激しいという問題があり、さらに、壁面近傍の局所的な
ガス流量が大きすぎるために激しいスプラッシュを生じ
るという問題がある。
【0015】 前述したように、真空下での脱炭を効
率的に行うためには、気泡活性面の大きさが重要であ
る。さらに種々の実験によれば、スプラッシュの発生
を、より低く抑制して、効率的な脱炭を行うためには、
処理開始後、真空度が300Torr以上の範囲で、炭
素濃度(C;ppm)に応じて真空度(P;Torr)
をlog(C/P*2)が0.7〜1.1の範囲(たゞし*
2は1/2乗)で調節することが重要であることが明らかに
なった。(ここで、logは常用対数を表す。)。処理中
に発生するスプラッシュについて調査した結果、スプラ
ッシュのうち細粒のものは、真空槽内を上昇する排ガス
の実流速で規定され、粗粒のものは吹き込まれた撹拌用
ガスによる表面での上向きの溶鋼流速により規定され、
脱炭初期のスプラッシュは前者が支配的であり、脱炭末
期のスプラッシュは後者が支配的であることが明らかに
なった。したがって、処理開始後の脱炭初期のスプラッ
シュを抑制するためには、この条件下での真空槽内を上
昇する排ガスの実流速を小さくすることが必要であり、
具体的には真空度をできる限り低い状態で脱炭させるこ
とが必要になる。本発明者による詳細な実験によれば、
脱炭反応を効率的に進行させるためには、真空度を、溶
鋼中の[C]と[O]の積によって平衡関係に基づいて
計算される溶鋼のCO分圧よりも、約20Torr程度
低くすれば充分であり、それ以上に高真空にすることに
は意味がないことが明らかになった。つまり、例えば
[C]が200ppm以上の範囲では平衡するCO分圧
は330Torr以上であることになる。本発明者によ
る詳細な実験により、スプラッシュの発生を抑制して脱
炭させるためには、処理開始後、真空度が300Tor
r以上の範囲で、炭素濃度(C;ppm)に応じて真空
度(P;Torr)をlog(C/P*2)が0.7〜
1.1の範囲(たゞし*2は1/2乗)で調節することが重
要であることが明らかになった。
【0016】前述したように、真空下での脱炭を効率
的に行うためには、気泡活性面の大きさが重要である。
これに加えて、脱炭処理終了後、はじめて真空度を低下
させ、浸漬管内溶鋼面と浸漬管下端との距離を1000
mm〜200mmとする条件で適宜時間保持することに
より、介在物を浸漬管外へと流出させ、清浄性の極めて
高い鋼が得られるという知見を得た。この理由は以下の
ようなものである。つまり、転炉スラグが溶鋼中に巻き
込まれて生成したスラグ系介在物や、脱炭処理後、脱酸
剤を添加することにより生成された脱酸生成物等は、強
い溶鋼の循環流により溶鋼中に分散するが、本発明者に
よる調査によれば、浸漬管内溶鋼表面で主に生成された
これらの酸化物は、強い下降流に乗って、浸漬管内の溶
鋼内部に運ばれるが、浸漬管下端を過ぎて、浸漬管外面
と取鍋内面の間隙部へ到達した場合には、そこの部分に
は強い流動が生じていないため、浮力により表面に浮上
分離できることが明らかになった。しかし、浸漬管内溶
鋼面と浸漬管下端との距離が大きい場合には、浸漬管内
の溶鋼内部に運ばれた介在物が浸漬管下端を過ぎるまで
深く運ばれる確立が低く、充分な浮上分離はできない。
この介在物が浸漬管下端まで容易に運ばれるためには、
浸漬管内溶鋼面と浸漬管下端との距離を1000mm以
下とすることが必要である。そこで、脱炭処理終了後、
はじめて真空度を低下させ、浸漬管内溶鋼面と浸漬管下
端との距離を1000mm以下とする条件で適宜時間保
持することにより、介在物を浸漬管外部の溶鋼表面へ浮
上分離することができ、高清浄度鋼の溶製が可能とな
る。ここで、浸漬管内溶鋼面と浸漬管下端との距離を2
00mm以下にすると、溶鋼表面の波立ちにより浸漬管
内の溶鋼と浸漬管外の溶鋼、あるいはスラグとの分離、
遮断が不十分となり、浸漬管外部のスラグが逆に浸漬管
内部へ混入する場合が生じ、清浄化効果が得られなくな
る。
【0017】本発明の場合、ガス吹き込み方法として
は、浸漬槽投影面の中心、もしくは、中心以外の部分に
位置した少なくとも1個以上の、 取鍋底部に設けた多
孔質煉瓦、取鍋底部に設けたパイプ、もしくは、浸漬ラ
ンスとすることが望ましい。ここで、浸漬ランスとして
は、垂直形状のインジェクションランス、先端をL字、
あるいはJ字に近い形状に曲げたランスのいずれであっ
ても同等の効果がえられる。ここで、撹拌用のガスとし
ては、不活性、及び、中性ガスとすることが効果的であ
る。また、本発明においては、適量の転炉吹き止めスラ
グを表面に存在させた状態で処理を行うことにより、特
に、処理開始時から[C]が20ppm程度までの間の
脱炭速度を、より増大させることができる。この理由は
以下のようなものである。つまり、[C]が高い場合に
は、溶鋼中の[C]と[O]の積によって平衡関係に基
づいて計算される溶鋼のCO分圧の方が、実際の真空度
よりも充分に大きいために、COガス気泡は溶鋼内部か
ら発生することができ、この内部からの気泡の発生を促
進するには、COガス気泡の核発生位置を与えることが
重要である。この気泡発生核として、巻き込まれた転炉
スラグ粒子が非常に大きな役目を果たし、内部から発生
するCO気泡の核発生位置を数多く与えることにより、
脱炭速度の向上が可能となるものである。さらに、転炉
スラグには高い濃度の酸化鉄が含まれるため、その周囲
の溶鋼の酸素濃度が部分的に高くなり、より一層、脱炭
が促進される条件を引き起こす。このためには、必要充
分な量の転炉スラグが必要であり、その値は3kg/t
on以上であることが確認されている。また、逆に、転
炉吹き止めスラグが15kg/tonよりも多く存在し
た状態で処理をおこなうと、スラグが厚すぎるため、撹
拌用に吹き込まれたガスが表面で破裂した時に自由表面
が形成され難くなり、脱炭に悪影響をもたらす。なお、
このスラグ滴の巻き込みによる核発生の促進は、表面直
下が最も効果的である。そのため、マクロ的な循環流に
より壁面近傍で形成される下降流では、粒子が溶鋼内部
の深い位置まで巻き込まれるために効果的ではなく、気
泡活性面で気泡が破裂した時にミクロ的に生成される、
小さな下降流による巻き込みが有効である。さらに、本
発明においては、均一混合時間を60秒以下とすること
により処理開始時から[C]が20ppm程度までの間
の脱炭速度をより増大されることが明らかになった。均
一混合時間に代表される環流速度が悪い場合には、真空
下表面で脱炭された溶鋼と取鍋内部の溶鋼との、入れ替
わりが不十分となるため、脱炭速度をより向上させる場
合には、均一混合時間の短縮が必要となる。特に、この
影響は、脱炭速度が速い処理開始時から[C]が20p
pm程度までの、比較的[C]が高い領域で顕著とな
る。しかし、均一混合時間が60秒以下であれば、で
示した方法による脱炭の場合には充分となる。これに加
えて、本発明においては、[C]を10ppm以下まで
低下させるためには、この炭素濃度の領域で、真空度を
5Torr以下とすることが必要である。
【0018】
【実施例】以下の実施例は、175トンの転炉出鋼溶鋼
を用いて、図5に示した形状の真空精錬炉にて実施し
た。いずれの場合も、処理前の炭素濃度は250〜39
0ppmであり、処理後の[C]が10〜30ppmの
範囲で(3)式により求めた脱炭速度定数と、到達炭素
濃度で評価した。実施例の表1は、種々の大きさの浸漬
槽を用いて、ガス吹き込み位置を変化させることによ
り、(4)式で定義した気泡活性面積と全溶鋼表面積と
の比(A)、及び、(5)式で定義した気泡活性面積と
真空表面積の比(B)を変化させた実験結果である。
【0019】
【表1】
【0020】実施例の表2は、(4)式で定義した気泡
活性面積と全溶鋼表面積の比(A)、(5)式で定義し
た気泡活性面積と真空表面積の比(B)一定範囲とし、
気泡分散領域の体積と全溶鋼体積の比を変化させたもの
である。
【0021】
【表2】
【0022】実施例の表3は、(4)式で定義した気泡
活性面積と全溶鋼表面積の比(A)、(5)式で定義し
た気泡活性面積と真空表面積の比(B)を一定範囲と
し、インジェクションランスを用いることにより、ガス
吹き込み深さを種々変化させたものである。ここで、ス
プラッシュ発生状況は、○は発生が少なく問題のない状
態を意味し、×は発生が多く操業に支障がある状態を意
味する。
【0023】
【表3】
【0024】実施例の表4は、(4)式で定義した気泡
活性面積と全溶鋼表面積の比(A)、(5)式で定義し
た気泡活性面積と真空表面積の比(B)を一定範囲と
し、ガス吹き込み流量を種々変化させたものである。こ
こで、スプラッシュ発生状況は、○は発生が少なく問題
のない状態を意味し、×は発生が多く操業に支障がある
状態を意味をする。
【0025】
【表4】
【0026】実施例の表5は、(4)式で定義した気泡
活性面積と全溶鋼表面積の比(A)、(5)式で定義し
た気泡活性面積と真空表面積の比(B)を一定範囲と
し、ガスを浸漬槽壁面と取鍋底部から吹き込んだ実験結
果である。ここで、Hは真空面の浴深(mm)、Yは浸
漬管内面とガス吹き込み位置の鉛直投影線との間隔(m
m)、Q1は取鍋底部から供給されるガス流量(Nl/
(min・ton))、Q2は浸漬管から供給されるガ
ス流量(Nl/(min・ton))である。
【0027】
【表5】
【0028】実施例の表6は、(4)式で定義した気泡
活性面積と全溶鋼表面積の比(A)、(5)式で定義し
た気泡活性面積と真空表面積の比(B)を一定範囲と
し、300Torrまでの排気パターンを図10に示し
たように種々変化させたものである。ここで、スプラッ
シュ発生状況は、○は発生が少なく問題のない状態を意
味し、×は発生が多く操業に支障がある状態を意味す
る。
【0029】
【表6】
【0030】実施例の表7は、(4)式で定義した気泡
活性面積と全溶鋼表面積の比(A)、(5)式で定義し
た気泡活性面積と真空表面積の比(B)を一定範囲と
し、脱炭処理終了後に真空度を低下させ、浸漬管内溶鋼
面と浸漬管下端との距離を種々変化させたものである。
【0031】
【表7】
【0032】
【発明の効果】本発明を用いることにより、激しいスプ
ラッシュの発生、耐火物損耗、清浄度の低下という問題
を起こすことなく、しかも、短時間処理で極低炭素領域
まで脱炭速度を低下させずに効率的な精錬が可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】小型溶解炉実験による脱炭速度定数とガス導入
用パイプ浸漬深さの関係を示す図、図中の(a),
(b),(c)は図2の(a),(b),(c)に対応
する。
【図2】小型実験方法を示した略図、
【図3】図1に示した小型溶解炉実験の結果を、脱炭速
度定数と気泡活性面積との関係で整理した図、
【図4】図5に示した実機規模試験における、脱炭速度
と処理時間の関係に対する気泡活性面積と全溶鋼表面積
の比の影響、及び、気泡活性面積と真空下表面積の比の
影響を示した図、
【図5】本発明の実施形態例を示した図、(イ)は真空
下表面、(ロ)は非真空下溶鋼表面、(ハ)は気泡活性
面を表す。
【図6】実機規模試験における、脱炭速度定数に対する
気泡活性面積と全溶鋼表面積の比の影響を示した図、
【図7】実機規模試験における、脱炭速度定数に対する
気泡活性面積と真空下表面積の比の影響を示した図、
【図8】実機規模試験における、気泡分散領域体積と脱
炭速度定数の関係を示した図、
【図9】実機規模試験における、脱炭速度定数、及び、
スプラッシュ発生挙動に対する撹拌用ガス流量の影響を
示した図、
【図10】実機規模試験における炭素濃度と真空度の関
係を示した図である。
【符号の説明】
1 溶解炉 2 ガス導入用パイプ 3 耐火物製円管 4 溶鋼 5 吹き込まれたガス気泡 6 浸漬管 7 取鍋 8 多孔質煉瓦。 特許出願人 新日本製鐵株式会社代理人 弁理士
椎 名 彊

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶鋼中のCを7ppm以下にするにあた
    り、精錬炉より出鋼された取鍋溶鋼に対し、取鍋内径の
    50超〜80%の大径の直胴形状の容器を溶鋼内に浸漬
    し、該直胴形状浸漬管内を復圧することなく、且つ浸漬
    管内に酸素を供給することなく連続的に減圧し、浸漬管
    内真空面の浴深(H)の0.5Hよりも深く、且つ浸漬
    管内面と取鍋底部からのガス吹き込み位置の垂直投影線
    との間隔(Y)との関係が、Yを0.08H〜0.2H
    とする位置から、不活性ガスまたは中性ガスを0.6〜
    15N1/min・tonを供給しつつ脱ガスを行い、
    かかる流量範囲及び吹き込み位置からのガス気泡が表面
    に浮上してできた気泡活性面の領域が全溶鋼表面の10
    %以上で、且つ浸漬管内の真空表面の15〜95%と
    し、その気泡分散領域の体積を全溶鋼体積の4%以上と
    して処理を行うことを特徴とする超低炭素鋼を得る溶鋼
    の真空精錬方法。
  2. 【請求項2】 供給されるガス体を取鍋底部および直胴
    形状浸漬管から吹き込むとともに、浸漬管内真空面の浴
    深(H)、浸漬管内面と取鍋底部からのガス吹き込み位
    置の垂直投影線との間隔(Y)との関係において、Yを
    0.08H〜0.2Hとし、取鍋底部から供給されるガ
    ス流量Q(N1/min・ton)、および浸漬管か
    ら供給されるガス流量Q(N1/min・ton)を
    ×Qを0.5〜6(ただし*は1/3乗)
    とすることを特徴とする請求項1記載の溶鋼の真空精錬
    方法。
  3. 【請求項3】 直胴形状浸漬管内を減圧しガス体を供給
    して処理する際に、真空度が300Torr以上の範囲
    で、炭素濃度(C:ppm)に応じて、真空度(P:T
    orr)を、log(C/P*)が0.7〜1.1
    (ただし*は1/2乗)の範囲で調節することを特徴
    とする請求項1記載の溶鋼の真空精錬方法。
  4. 【請求項4】 脱炭処理終了後、真空度を低下させ浸漬
    管内溶鋼内面と浸漬管下端との距離を1000mm〜2
    00mmとし、適宜時間保持することを特徴とする請求
    項1記載の溶鋼の真空精錬方法。
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