JP6331851B2 - 取鍋内溶鋼の加熱方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶鋼の取鍋精錬工程における真空脱炭処理を利用して、真空槽内での脱炭処理中に取鍋内の溶鋼に金属元素を添加し、その金属元素を酸化発熱させて溶鋼を加熱させると共に、発熱時に発生する酸化物系介在物の鋼中への残留を低位に抑制して高清浄な溶鋼を製造する技術に関する。
近年、加工性や強度、磁性などのさまざまな面から、鋼製品の特性を更に向上させる要求が種々のユーザーから求められている。これら、高級鋼製品の製造に対応するために、取鍋精錬工程では高純度化や高清浄度化のための精錬処理時間の延長を要したり、連続鋳造工程では介在物や割れ発生低減のための鋳造速度規制やタンディッシュ内溶鋼のスーパーヒート下限値の引き上げなどを要したりすることが多い。これらの対応はいずれも熱放散ロスの増加を伴うものであり、転炉吹錬時には、過剰な高温での吹き止めにつながりやすい。したがって、転炉においては耐火物寿命の低下や吹錬時のスクラップ配合比低下、電気炉においては大量の電力使用などと、コストアップや生産性低下を伴うことが一般的である。
また、高級鋼製品の製造に限らず、ミドルグレード鋼を安定製造するためにも、高スクラップ配合比での操業や、精錬工程と連続鋳造工程とをマッチングさせるための熱裕度確保は、重要な課題である。
これらの課題に対応する目的で、二次精錬工程で溶鋼加熱機能を有するLF(ladle furnace)を用いたり、連続鋳造工程でタンディッシュ内溶鋼にプラズマ加熱を行ったりしているが、設備費やランニングコストが安価で、短時間で溶鋼温度を上げられる処理として、取鍋内の溶鋼にアルミニウムやシリコンを添加して酸化加熱させる金属昇熱も、多くの取鍋精錬工程で採用されている。
このような金属昇熱は、IF(interstitial-free)鋼製造時に採用されるRH(Ruhrstahl-Heraeus)などでの真空脱炭処理中に生じる多くの高温排ガス顕熱起因の温度ロス対応に、特に有効である。この場合、未脱酸状態での脱炭処理の後に金属を真空槽内に添加して真空槽内で上吹きランスやOB(oxygen blowing)羽口から供給する酸素で燃焼させるものであるが、例えば金属としてアルミニウムを用いる場合には、添加したアルミニウムを酸化燃焼させることで鋼中にアルミナ系介在物が大量に発生することが避けられない。したがって、金属昇熱を行う場合には清浄度確保のための対策や管理が併せて求められる。
金属昇熱によって発生する介在物の減少対策として、非特許文献1で説明されているように、環流時間延長によってアルミナ浮上除去分離を実施できることはよく知られている。加えて、特許文献1等により、介在物の低減対策として、溶鋼撹拌による介在物の凝集・合体と、溶鋼中に吹き込まれたガス気泡への介在物の吸着とが、特に効果があることが知られるに至っている。
ほかに、金属昇熱を伴う場合の清浄度確保対策に関する技術として、特許文献2には、溶鋼清浄性を確保するためには特許文献2中の(1)式を満足するための極めて限られたMn濃度とAl濃度、酸素供給条件が記載されている。また、特許文献3には、介在物と反応性の高いフラックスを処理後に添加することが記載されている。
特開2000−178636号公報 特開平9−249910号公報 特開2000−239733号公報
村井剛ら:鉄と鋼,Vol.84(1998)No.1,p.13
非特許文献1に説明されるように、金属昇熱によって発生する大量の介在物の場合も、環流時間を長時間延長することによって低減させることは可能である。しかし、処理時間の延長による生産性低下や耐火物損耗などのコストアップ、更に、処理時間延長自体が溶鋼温度低下につながるため、酸化加熱させる金属添加量の増加などを伴う。
また、特許文献1等に記載されている従来の手段は、具体的にはAr等の不活性ガスを吹き込むものである。しかし、RHの溶鋼環流中には、不活性ガス以外に酸素を供給して脱炭反応を起こさせる場合があり、その際には当然にCO気泡も発生する。このCO気泡の発生による溶鋼撹拌や気泡界面の利用等も考え得るところ、実際にそれらの利用について言及した文献は無い。したがって、それらを利用するための条件は、不明なままである。
更に、特許文献2に記載の方法によればスラグ中のMnO等を低減することで再酸化によって発生する介在物量の抑制は可能であるが、既に鋼中に微細に分散したアルミナ介在物などの効果的な除去はできない。特許文献3に記載の方法では、フラックス自体のコストや設備制約、フラックス添加に伴う熱ロス、耐火物影響を伴うことは回避できない。
なお、脱炭処理前の溶鋼に金属アルミニウムを添加して酸素供給によって予め昇熱することも可能であるが、その後の真空脱炭処理を実施するためには再び脱炭に必要な酸素を鋼中に供給する必要があり、一般的なAl昇熱法以上の処理時間を要することから実用範囲は極めて限定的なものである。
本発明は、上記従来技術の問題点を踏まえ、溶鋼の金属酸化加熱に伴う清浄度低下を、処理時間の延長や、限定された処理条件によるコスト、生産面の課題の効率的な解決と併せて実現することができる取鍋内溶鋼の加熱方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)
取鍋及び真空槽を有する取鍋精錬装置を用いた前記取鍋内の溶鋼の加熱方法であって、
前記取鍋内の溶鋼を前記真空槽内に吸い上げて脱炭処理を行う工程と、
前記脱炭処理の反応速度が(1)式を満たしている期間中に、前記取鍋内の溶鋼に金属成分を添加し、当該添加部の下部の溶鋼中に先端を浸漬したランスから酸素を供給して、前記金属成分の酸化反応を生じさせる工程と、
を有することを特徴とする取鍋内溶鋼の加熱方法。
d[C]/dt≧15(ppm/min) ・・・(1)式
(2)
前記金属成分の酸化反応を生じさせる工程において、前記溶鋼中に浸漬したランスから酸素を供給しながら、前記真空槽内に挿入した上吹きランス若しくは前記真空槽の側壁に設置した羽口又はこれらの双方からも酸素を供給することを特徴とする(1)に記載の取鍋内溶鋼の加熱方法。
本発明によれば、取鍋内溶鋼の加熱を、金属昇熱によって短時間、低コストで実施することができ、しかもその実施後の溶鋼中の酸化物系介在物残留量を抑制できるため、その工業的な利用価値は極めて高いものである。
本発明の実施形態に係る取鍋内溶鋼の加熱方法を示す模式図である。 脱炭速度と介在物個数との関係を示す図である。
先ず、本発明の実施形態に係る取鍋内溶鋼の加熱方法について、図1を参照しながら説明する。
ここで、本発明は、図1に示す実施形態に限られるものではなく、上記課題を解決のための手段において適宜実施できるものである。図1に示す実施形態では、RH式真空脱ガス装置が用いられているが、例えば、DH型真空脱ガス装置やREDA型真空脱ガス装置などの部分真空型脱ガス装置が用いられてもよい。
本実施形態では、取鍋1内に、転炉や電気炉にて製造された溶鋼2が収容され、真空槽3に延設されている2本の浸漬管21及び22を溶鋼2に浸漬した後、真空槽3の内部を減圧して溶鋼2を真空槽3内へ吸い上げる。また、例えば真空槽3の内部の減圧開始と同時に、浸漬管21及び22の一方、ここでは浸漬管21に設けられた羽口4から、環流ガス5としてアルゴンガスを溶鋼2中に吹き込んで溶鋼2の上昇流を生じさせ、もう一方の浸漬管22から溶鋼2を取鍋1に排出させることにより、溶鋼2を環流させる。減圧された真空槽3内では、溶鋼2に含まれている溶存酸素と炭素とが反応してCOガスが発生し、脱炭スプラッシュ6を伴う激しいボイリングが生じる。このようにして、真空槽3内では、脱炭反応が進行する。
また、本実施形態では、下記(1)式で規定される脱炭反応速度を維持しつつ、金属添加装置7から溶鋼2にアルミニウムやシリコンなどの昇熱用金属(金属成分)を含有した昇熱用金属源8を添加して溶け込ませる。更に、昇熱用金属源8の添加と共に、その添加部の下部の溶鋼2中に先端を挿入した酸素供給ランス11から酸素ガスを吹き込む。この結果、溶鋼2に溶け込んだ昇熱用金属の多くが、溶鋼2中の酸素供給ランス11の排出口付近の主な発熱部分12で酸化され、発熱反応により溶鋼2が加熱される。
d[C]/dt≧15(ppm/min) ・・・(1)式
つまり、脱炭反応の反応速度(d[C]/dt)が(1)式を満たしている期間中に、溶鋼2に昇熱用金属源8を添加し、溶鋼2中に浸漬した酸素供給ランス11から酸素を供給して、昇熱用金属源8に含まれる昇熱用金属の酸化反応を生じさせる。(1)式で規定される脱炭反応速度の限定理由については後述する。
昇熱用金属源8の添加に関し、除滓堰9と金属添加装置7から吹き付けるガスで取鍋スラグ10から溶鋼2の表面の一部を露出させ、取鍋スラグ10の影響を受けることなく添加できる構造を採用してもよい。また、昇熱用金属源8を添加する方法は金属添加装置7からの添加に限定されず、酸素供給ランス11とは別に準備したランスを溶鋼2中に浸漬しておき、このランスから昇熱用金属源8を吹き込むようなインジェクション方式を採用してもよい。
酸素の供給に関し、酸素供給ランス11から供給する酸素は昇熱用金属の燃焼用であることから、例えば、昇熱用金属として金属アルミニウムを添加する場合には、酸化により生成するAl23と化学量論的に合った量の酸素を、金属アルミニウムの供給速度と一致する流量を目標にして供給することが安定操業のために好ましい。金属アルミニウムの添加が、並行して進行している脱炭反応に必要な溶存酸素濃度に影響を及ぼさないようにするためである。
本実施形態では、酸素供給ランス11から溶鋼2に吹き込む酸素ガスとして、工業用の純酸素ガスなどの高濃度(90vol%超)の酸素ガスを使用することが望ましい。昇熱用金属を酸化させるガスとして安価な空気を使用しても同様の効果は得られるが、空気に含有される窒素による溶鋼2の冷却、ボイリングの発生、及び溶鋼2のN濃度の上昇などの問題点があるからである。
また、酸素源として、ダスト(酸化鉄粉)、鉄鉱石、マンガン酸化物などを溶鋼2中に添加することも考えられる。この場合、昇熱用金属(例えばAl、Si)よりも卑な金属の酸化物は還元されるため、FeやMnとして溶鋼2に回収することができるという利点がある。しかし、金属酸化物の還元熱自体が発熱量を低下させるため、溶鋼2を加熱しようとする本実施形態で用いる酸素源として好適だとはいえない。取鍋スラグ10中の酸化鉄の還元も発熱に寄与するが、その還元熱自体が発熱量を低下させるので、その積極的な利用も適さない。炭酸ガスを用いた場合などでも、炭酸ガスの分解に吸熱が伴うことから、炭酸ガスも酸素源として好適だとはいえない。
酸素供給ランス11からの酸素ガスの供給は連続的又は断続的に行われる。酸素ガスの供給は、取鍋1の壁面に羽口を設置しておき、この羽口から行ってもよい。いずれにしても、酸素供給ランス11や羽口の吹込孔の寿命確保のためには、これらを、内管から酸素ガスを吹き込み、外管から炭酸ガスやLPG(liquefied petroleum gas)などの保護用冷却ガスを吹き込む二重管構造とすることが好ましい。
また、供給する酸素ガスの量は、昇熱用金属を酸化させるのに十分な量であることに加えて、脱炭速度が(1)式を満たすように、真空槽3内の溶鋼2中の溶存酸素濃度を考慮して調整する。
ここで、(1)式について説明する。本実施形態では、昇熱用金属源8に含まれる昇熱用金属の酸化反応により溶鋼2が加熱されるが、この酸化反応に伴って酸化物系介在物が生成する。また、この酸化反応は、溶鋼2の脱炭反応の進行中に生じる。そして、(1)式で規定される脱炭速度によって、その除去を効率的に進行させることができることを調査実験にて明らかにした。真空槽3内ではCOボイリングが激しく発生しており、これによって細かい酸化物系介在物が凝集合体しているためと考えられる。
d[C]/dt≧15(ppm/min) ・・・(1)式
その調査実験では、270t/chのRH式脱ガス装置を用い、真空槽内の真空度が10mmHg以下の条件で、異なる炭素濃度を選定して脱炭速度と介在物個数の減少状況との関係を調査した。また、介在物源として、アルミニウム粉とダスト(酸化鉄粉)との混合粉、又は、メタリックシリコン粒とダストとの混合粉を真空槽内に添加して、アルミナ介在物又はシリカ介在物を発生させた。そして、それらの添加の1分後及び3分後に取鍋から溶鋼サンプルを採取して、光学顕微鏡観察にて最大粒径が2μm以上の介在物の個数を調査した。このようにして、アルミナ除去実験及びシリカ除去実験を行った。この結果を図2に示す。
その結果、混合粉の添加から1分後に採取したサンプルの介在物個数はアルミナ除去実験及びシリカ除去実験のいずれにおいても60〜80個/mm2であったが、添加から3分後に再度採取したサンプルの介在物個数は、脱炭速度が速いほど介在物個数が少ないことが分かった。また、図2では、2点間の平均脱炭速度を横軸に、添加から2分後のサンプルの介在物個数を縦軸に示している。図2に示す結果から、(1)式にて規定した15ppm/min以上の脱炭速度で介在物除去の作用効果が著しいことを見出すことができた。
なお、RH式脱ガス装置を用いて真空槽3内で処理された溶鋼2は、連続的に取鍋1へと循環されるため、真空槽3内での溶鋼2からの介在物の除去効果が取鍋1内の溶鋼2に明確に表れるためには、通常1分間以上の時間がかかる。そのために、上記の調査実験では、介在物源の添加から1分後に最初の溶鋼サンプルを採取したのであり、実際、そのサンプルでは脱炭速度の条件を変えた影響が表れていなかった。
介在物の凝集合体には激しいボイリング(高速の脱炭速度)が有効であることから、脱炭速度の上限は限定されない。但し、脱炭速度が500ppm/minを超える操業を実施するためには、発生するガスの増加によりボイリング領域が上昇して、通常の真空脱ガス設備のものでは安定操業が困難になるなどの問題がある。また、500ppm/minを実現するための高排気量の真空ブースターなどが必要になることもある。このように、500ppm/minを超える脱炭速度で操業を行うには、設備的に特殊なものが要求される点に留意することが望ましい。
本実施形態では、激しいボイリングを伴う脱炭によって、取鍋1内で生成するサイズ径が数十μm以下の介在物を真空槽3内で凝集合体させ、その後、凝集合体した介在物を取鍋1内の溶鋼2へと排出してこの溶鋼2上の取鍋スラグ10中へと浮上分離させる。本実施形態では、このようにして、介在物の除去を促進する。このようなサイズ径が数十μm以下の介在物は、それらが単独の状態では浮上速度が遅いために、凝集合体しない場合には、分離に長時間の環流処理を要する。
(1)式で規定した脱炭速度d[C]/dt(ppm/min)が金属昇熱の間でも維持されていることを確認するためには、例えば、排ガス流量Vg(Nm3/min)とCOおよびCO2ガスの濃度とを圧力・ガス分析計14にてモニターして、処理溶鋼量W(ton)から、次の(2)式にて連続的に演算管理することが可能である。
d[C]/dt={Vg×(CO%+CO2%)/100}×(1000/22.4)×(12/W) ・・・(2)式
また、酸素の供給を、酸素供給ランス11からだけで行うのではなく、真空槽3内の上吹きランス13及び/又は真空槽3の側壁に設けた羽口からも行ってもよい。真空槽3の側壁に設けた羽口として羽口4を用いてもよく、他の羽口(図示せず)を用いてもよい。例えば、炭素含有量が0.1質量%以上([C]≧0.1質量%)の比較的炭素濃度が高い溶鋼や、クロム含有量が6質量%以上([Cr]≧6質量%)の高クロム鋼などのように純鉄では1である酸素活量係数foが0.5以下になる鋼種の処理に本実施形態を用いることもできる。但し、このような鋼種の処理では、酸素供給ランス11からの酸素の供給のみでは、真空槽3内で活発なボイリングによる介在物除去を実現するための溶存酸素活量を確保することが困難になることがある。このような場合に、酸素供給ランス11のみならず、上吹きランス13及び/又は真空槽3の側壁に設けた羽口からも酸素を供給することにより、脱炭ボイリングが促進される。この場合、酸素供給ランス11から供給された酸素は主に昇熱用金属の酸化に用いられ、上吹きランス13及び/又は真空槽3の側壁に設けた羽口から供給された酸素は主に脱炭ボイリングの促進に用いられる。
このように酸素を供給する経路を真空槽3内と真空槽3外とで併用する方法によれば、上記した比較的炭素濃度が高い溶鋼や、高クロム鋼などに限らず、上記の(2)式を満たすように昇熱用金属を添加すると共に、両酸素を適切に調整して供給すれば、所望の効果を享受することができる。
[C]≧0.1質量%の比較的炭素濃度が高い溶鋼や、[Cr]≧6質量%の高クロム鋼などのように酸素活量係数が0.5以下になる鋼種を除く、一般的な低炭素溶鋼を対象とする場合、真空槽3内で供給する酸素の供給量は、真空槽3外で供給する酸素と併せて供給する酸素合計供給量の5%以下(0%であってもよい)とすることが、本発明の効果を十分に享受するためには好ましい。この比率が5%超では、添加した昇熱用金属のうちで、真空槽3内に供給された酸素により酸化されるものの割合が過剰になり、昇熱用金属の酸化により発生する介在物が十分には凝集合体せず、介在物の除去が困難になることがある。
一方、[C]≧0.1質量%の比較的炭素濃度が高い溶鋼や、[Cr]≧6質量%の高クロム鋼などのように酸素活量係数が0.5以下である鋼種を対象とする場合、真空槽3内で供給する酸素の供給量は、真空槽3外で供給する酸素と併せて供給する酸素合計供給量の10%以上40%以下とすることが好ましい。この比率が10%未満では、真空槽3内でのボイリングによる介在物の低減効果が不十分になることがある。この比率が40%超では、添加した昇熱用金属のうちで、真空槽3内に供給された酸素により酸化されるものの割合が過剰になり、昇熱用金属の酸化により発生する介在物が十分には凝集合体せず、介在物の除去が困難になることがある。
但し、ここで述べた真空槽3内で供給する酸素の比率は、アルミニウムやシリコンなどの昇熱用金属が残留(40ppm以上で規定)するときのものであり、昇熱用金属が残留しない条件での脱炭目的の酸素供給は、清浄度に悪影響を及ぼさないことは明らかなので、上記の適した操業範囲とは無関係である。
次に、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
本発明の効果を検証するために、270t/chのRH脱ガス装置を用い、転炉で溶製した溶鋼の減圧脱炭処理を実施した。この溶鋼の温度は1620〜1640℃、[C]は0.04〜0.06質量%、[O]は300〜600ppmであった。下降浸漬管横に耐火物とAr吹付にてスラグを排除した部位に昇熱剤のアルミニウムショットを連続的に添加し、添加位置の下方500mmに先端がくるように、酸素供給ランス(二重管構造:外管にはCO2の羽口保護ガスを流して、内管に純酸素を供給)を取鍋に浸漬し、取鍋内での発熱が生じる処置を実施した。このとき、排気ガスの流量と濃度分析によって連続的に(2)式で脱炭速度を演算モニターしつつ真空槽内の脱炭が阻害されないように酸素流量をコントロールして処理を実施した。
溶鋼の環流を開始してから溶鋼中にAlまたはSiを添加して脱炭反応を停止させるまでの真空脱炭処理時間は約15分とし、酸素供給による加熱処理は、真空槽内でボイリングを伴う内部脱炭が激しく発生する[C]>100ppmの領域で行うことを考えて、溶鋼の環流開始以降1〜8分の間に真空槽外の取鍋内溶鋼中で温度補償を実施した。
具体的には、今回の処理における溶鋼の初期組成では、初めから含有されている300〜600ppmの[O]や取鍋スラグからの侵入酸素も含めると、脱炭に必要な酸素を追加して供給する必要はない程度である。しかし、昇熱用金属を連続添加して酸化させるためには、酸素の供給が必要である。そこで、15ppm/min以上の脱炭速度を得るために、実施例1では、合計190kgのアルミニウムショットを32kg/分の供給速度で添加し、これと同時に酸素ガスを38Nm3/分の供給速度で6分間吹き込んだ。また、実施例2では、合計330kgのSi品位が75%のフェロシリコンを52kg/分の供給速度で添加し、これと同時に酸素ガスを42Nm3/分の供給速度で6.3分間吹き込んだ。
なお、この昇熱では、約40Nm3/分の供給速度にてヒートサイズが270tの取鍋に酸素ガスを吹き込んでおり、これは0.15Nm3/分・tに相当する。ところで、取鍋内に過剰な酸素供給を実施した場合には、ジェット形成による鍋底への高温溶鋼アタックが激しく、耐火物に悪影響が発生することがある。通常の取鍋精錬鍋の深さが2〜4m程度(ヒートサイズ50〜400t程度想定)であり、0.2Nm3/分・tを超える酸素供給速度を確保するためには、複数の酸素供給ランスを用いるなど、上記の悪影響を抑制する構成を設備に付することが望ましい。
また、酸素吹き込み量に見合った昇熱用金属は、化学量論的に必要とされる量を目安に添加することが真空槽内への流入溶存酸素量の変動抑制には実用的である。金属アルミニウムを添加する場合には、例えば、酸素1Nm3あたり1.6kg程度(Al23生成相当)とする。また、フェロシリコンを添加する場合には、シリコン含有分から求まるSiO2生成相当とし、例えば、上記のようにSi品位が75%の場合は、酸素1Nm3あたり2.2kg程度とする。
実施例1及び実施例2では、昇熱時(環流開始以降1〜8分の範囲内)の脱炭速度の範囲(連続モニター下限〜上限値)は16〜250ppm/minであった。
なお、本実施例操業の対象鋼種の製品(自動車用極低炭素鋼板)で要求される清浄度の規格はトータル酸素25ppm以下であり、目標とする溶鋼温度の上昇量(温度補償)は20℃以上(好ましくは35℃以上)である。また、対象鋼種は自動車用極低炭素鋼板であり、脱炭処理後の溶鋼の[C]は50ppm未満とし、製品条件より連続鋳造にて鋳造したときの格付けは[Al]:0.03〜0.05質量%、[Ti]:0.02〜0.04質量%とし、製品品位はタンディッシュで採取した格付サンプルのトータル酸素濃度で調査を実施した。
また、種々の比較例についても調査を行った。比較例1では、酸素ガスを上吹きランスのみから供給した。比較例2では、脱炭速度を10〜14ppm/minの範囲内に制御した。比較例3では、脱炭処理を実施し、その後にAl添加による昇熱を実施した。比較例4では、先行してAl昇熱を実施して、その後に脱炭に必要な溶存酸素供給を行った。
これらの結果を表1に示す。
Figure 0006331851
表1に示すように、基本条件でもある実施例1では、温度補償及び清浄度共に良好であり、本発明によって昇熱を実施して、低コスト、短時間化の効果が得られることが確認できた。
実施例2でも、温度補償及び清浄度共に良好であり、フェロシリコンを用いた場合にも実施例1と同様に良好な発明効果が確認できた。
比較例1では、酸素ガスを上吹きランスからのみ供給したので、昇熱及び脱炭は実施例1及び実施例2と同様であったが、トータル酸素がやや高く、つまり、アルミナ介在物が多量に残存して清浄度が低く、不合格であった。これは、COボイリングによる凝集合体の促進領域である真空槽内で昇熱に伴うアルミナが発生したためである。
比較例2では、実施例1と同様にアルミニウムを添加したが、酸素供給ランスから供給する酸素の供給速度を調節して脱炭速度を10〜14ppm/minとしたため、ボイリングが抑制されて介在物除去が不十分であった。また、脱炭自体も溶存酸素不足で不良であり、格付けサンプルの[C]は64ppmで規格外れであった。
比較例3では、Al昇熱の後に脱炭処理を実施したため、実施例1と比較して8分間も余計に時間がかかり、生産性が低かった。更に、長時間処理によって温度ロスも多くなり、昇熱に消費したAlの量も多く、コスト高な処理であった。
比較例4では、先行してAl昇熱を実施して、その後に脱炭に必要な溶存酸素供給を行ったため、事前昇熱のためのランス駆動の時間、及び溶存酸素制御を含む送酸のための時間が余計にかかり、実施例1と比較して14分間も処理時間が長くなった。更に、処理時間延長に伴う温度ロス分のAl燃焼も必要であったことから、処理時間、コスト面では非常に不利な操業であった。
上記実施例操業とは異なる鋼種([C]:0.2鋼 厚板材)にて本発明を実施(酸素供給ランスのみからの酸素供給)したときには、取鍋内への昇熱Al添加を実施し、連続的に酸素供給をしても、炭素濃度が高いことからボイリングのための酸素が不足して介在物除去が不十分でないこともあった。しかし、真空槽内の上吹きランスからも酸素を供給することで、脱炭速度が15ppm/minを超える条件を容易に実現でき、昇熱に伴う清浄度悪化が全く見られない良好な操業が確立できた。
本発明によれば、鉄鋼製品の高級化や製造生産性向上に必要な二次精錬での溶鋼加熱を、大規模な設備増強などを必要とせず、低コストかつ短時間で実施することができ、その工業的価値は極めて高く、鉄鋼産業において利用可能性が大きいものである。
1:取鍋
2:溶鋼
3:真空槽
4:羽口
5:環流ガス
6:脱炭スプラッシュ
7:金属添加装置
8:昇熱用金属源
9:除滓堰
10:取鍋スラグ
11:酸素供給ランス
12:主な発熱部分
13:上吹きランス
14:圧力・ガス分析計
21、22:浸漬管

Claims (2)

  1. 取鍋及び真空槽を有する取鍋精錬装置を用いた前記取鍋内の溶鋼の加熱方法であって、
    前記取鍋内の溶鋼を前記真空槽内に吸い上げて脱炭処理を行う工程と、
    前記脱炭処理の反応速度が(1)式を満たしている期間中に、前記取鍋内の溶鋼に金属成分を添加し、当該添加部の下部の溶鋼中に先端を浸漬したランスから酸素を供給して、前記金属成分の酸化反応を生じさせる工程と、
    を有することを特徴とする取鍋内溶鋼の加熱方法。
    d[C]/dt≧15(ppm/min) ・・・(1)式
  2. 前記金属成分の酸化反応を生じさせる工程において、前記溶鋼中に浸漬したランスから酸素を供給しながら、前記真空槽内に挿入した上吹きランス若しくは前記真空槽の側壁に設置した羽口又はこれらの双方からも酸素を供給することを特徴とする請求項1に記載の取鍋内溶鋼の加熱方法。
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