JP5552406B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。より詳しくは、排気浄化触媒の温度を制御する触媒温度制御手段を備えた内燃機関の排気浄化装置に関する。
内燃機関の排気系に設けられる排気浄化触媒の活性は、温度の影響を大きく受けることが知られている。このため、エミッション抑制の観点から触媒の温度制御は重要であり、特に内燃機関の始動時には触媒を速やかに昇温することが好ましい。
触媒の温度制御では、排気系の温度を検出する温度センサが用いられるが、排気系の激しい温度変化に耐え得る温度センサは応答性が低い。このため、温度センサを用いたフィードバック制御では、触媒の温度を精度良く制御することは困難である。このため、例えば温度センサの応答遅れをモデル化した温度センサモデルを構築し、このような温度センサの応答遅れを補償する技術が提案されている(特許文献1参照)。
触媒の温度制御では、以上のような温度センサの応答遅れの他にも、排気系の熱伝導の遅れが生じる。例えば、酸化触媒、DPF(Diesel Particulate Filter)及びNOx還元触媒などの複数の排気浄化手段が排気通路に直列に配置される希薄燃焼式内燃機関では、触媒の熱容量が大きいために熱伝導の遅れが生じる。この熱伝導の遅れは、温度センサの応答遅れよりも大きく、特に、通常最も下流に配置されるNOx還元触媒では、熱伝導の遅れは非常に大きなものとなる。以上のように、排気系の熱伝導の遅れが大きいため、上記特許文献1の技術により温度センサの応答遅れを補償しても、触媒の温度を精度良く制御することができなかった。
排気系の熱伝導の遅れの課題を解消するためには、温度センサで検出した現在の触媒の温度だけでなく、触媒に供給されるエネルギに着目することが有効であると考えられる。例えば特許文献2には、このような触媒に供給されるエネルギに着目した制御装置が提案
されている。この制御装置では、内燃機関の筒内で仕事して取り出し得る状態で生じた発熱量のうち図示仕事として用いられずに排出された排気損失としての排気エネルギを燃焼サイクルごとに算出し、この算出した排気エネルギを所定の目標値に一致させることにより、触媒の温度を所望の温度に制御する。
特許第4373909号公報 特許第4100077号公報
ところで、内燃機関の始動直後においては、触媒はその活性温度を大きく下回った状態であるため、この触媒による浄化性能は著しく低い。そこで、特許文献2に示されているように、内燃機関の始動直後の触媒暖機時の目標排気エネルギを、暖機後の目標排気エネルギよりも大きな値に設定することにより、触媒を速やかに昇温することが好ましい。しかしながら、このような制御を行うと、触媒の温度を速やかに上昇させることができるものの目標温度を大きくオーバーシュートしてしまい、結果として燃費が悪化したり触媒が劣化したりするおそれがある。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒の温度について、目標温度をオーバーシュートすることなく速やかに昇温できる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は、内燃機関(例えば、後述のエンジン2)の排気通路(例えば、後述の排気管3)に設けられた排気浄化触媒(例えば、後述の選択還元触媒33)を備える内燃機関の排気浄化装置(例えば、後述の排気浄化装置1)を提供する。前記排気浄化装置は、前記排気浄化触媒の温度を所定の目標温度(TSCR_TRGT)まで昇温するための昇温モードと、前記排気浄化触媒の温度を前記目標温度(TSCR_TRGT)近傍に保持するための保温モードと、を含む複数種類の制御モード下で前記排気浄化触媒の温度を制御する触媒温度制御手段(例えば、後述の温度制御装置41及びそのメインコントローラ42)と、前記排気通路内に単位時間当りに供給されたエネルギである排気エネルギと、当該排気エネルギの所定の期間にわたる積算量である排気エネルギ積算量とを算出する排気エネルギ算出手段(例えば、後述の排気エネルギ推定部44)と、前記内燃機関の始動開始後に前記触媒温度制御手段が前記昇温モード下で前記排気浄化触媒の温度を制御している間において、前記内燃機関の始動開始時から現在までの排気エネルギ積算量(ΣEHAT)が所定の目標値(ΣEHAT_TRGT)に達したことに基づいて、前記制御モードを昇温モードから保温モードへ切替える制御モード切替手段(例えば、後述の制御モード設定部46)と、を備え、前記排気エネルギ積算量の目標値は、前記排気浄化触媒の温度を前記内燃機関の始動開始時における温度から前記目標温度まで上昇させるのに必要な排気エネルギ積算量に相当することを特徴とする。
本発明では、排気浄化触媒の温度を所定の目標温度まで昇温するための昇温モードと、排気浄化触媒の温度を目標温度近傍に保持するための保温モードとを含む複数種類の制御モード下で排気浄化触媒の温度を制御する触媒温度制御手段を設けた。また、この触媒温度制御手段により内燃機関の始動開始後に昇温モード下で排気浄化触媒の温度を制御している間において、内燃機関の始動開始時から現在までの排気エネルギの積算量が、排気浄化触媒の温度をその目標温度まで上昇させるのに必要な排気エネルギ積算量に相当する目標値に達したときに、制御モードを昇温モードから保温モードへの切替える制御モード切替手段を設けた。これにより、内燃機関の始動開始後、昇温モード下で排気浄化触媒の温度を制御している間において、内燃機関の始動開始時から現在までの排気エネルギ積算量が目標値に達した場合には、排気浄化触媒の温度が近い将来に目標温度に到達すると予測できるので、現在の排気浄化触媒の温度がまだ目標温度に達していなくても制御モードを昇温モードから保温モードへと早期に切替えることができる。このように、排気浄化触媒の昇温に寄与する排気エネルギ積算量に基づいて、制御モードを昇温モードから保温モードへと切替えることにより、昇温モード下で排気浄化触媒の温度を速やかに昇温しつつ、当該触媒の温度を目標温度にオーバーシュートすることなく精度良く制御することができる。
この場合、前記排気浄化装置は、前記排気エネルギに対する目標値である排気エネルギ目標値を算出する目標排気エネルギ算出手段(例えば、後述の目標排気エネルギ算出部45)をさらに備え、前記触媒温度制御手段は、前記排気エネルギ(EHAT)を前記排気エネルギ目標値(EHAT_TRGT)に一致させながら、前記排気浄化触媒の温度(TSCR_HAT)を前記目標温度(TSCR_TRGT)に一致させることが好ましい。
この発明では、上述のように熱伝導による遅れがある排気浄化触媒の温度を目標温度に制御するにあたり、熱伝導による遅れを考慮する必要のない排気エネルギを排気エネルギ目標値に一致させることにより、排気浄化触媒の温度を精度良く制御することができるので、効率よく排気を浄化できる。
この場合、前記目標排気エネルギ算出手段は、前記昇温モード時における排気エネルギ目標値を、前記保温モード時における排気エネルギ目標値よりも大きな値に設定することが好ましい。
この発明によれば、昇温モード時における排気エネルギ目標値を保温モード時における排気エネルギ目標値よりも大きな値に設定することにより、昇温モード時には、排気浄化触媒に短時間でより多くのエネルギを供給できるため、昇温モードの時間を短縮することができる。
本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置の構成を示す図である。 上記実施形態に係る排気系温度推定装置の構成を示すブロック図である。 上記実施形態に係る温度制御装置の構成を示すブロック図である。 上記実施形態に係る排気エネルギ推定部の構成を示すブロック図である。 上記実施形態に係る目標排気エネルギ算出部の構成を示すブロック図である。 上記実施形態に係る制御モードを切り替える手順を示すフローチャートである。 上記実施形態に係る温度制御装置のメインコントローラの構成を示すブロック図である。 従来の排気浄化装置の制御例を示すタイムチャートである。 上記実施形態に係る排気浄化装置の制御例を示すタイムチャートである。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、図示しない車両に搭載された本実施形態に係る内燃機関(以下、「エンジン」という)2の排気浄化装置1の構成を示す図である。
エンジン2は、リーンバーンエンジンであり、図示しない各気筒の吸気ポート付近には図示しない燃料噴射弁が設けられている。これら燃料噴射弁は、制御装置4により電気的に接続されており、燃料噴射弁による燃料噴射量や噴射時期などは、制御装置4により制御される。
エンジン2の排気管3には、酸化触媒31と、酸化触媒が担持されたDPF(以下、「CSF(Catalyzed Soot Filter)」という)32と、選択還元触媒33とが、上流側からこの順で設けられている。
酸化触媒31は、排気との反応により発生する熱で排気を昇温するとともに、排気中のNOをNOに変換し、後述の選択還元触媒33におけるNOxの還元を促進する。
CSF32は、排気がフィルタ壁の微細な孔を通過する際、排気中の炭素を主成分とする粒子状物質(PM)を、フィルタ壁の表面及びフィルタ壁中の孔に堆積させることによって捕集する。
選択還元触媒33は、アンモニアなどの還元剤が存在する雰囲気下で、排気中のNOxを選択的に還元する。具体的には、CSF32と選択還元触媒33との間に設けられた図示しないユリア噴射装置からアンモニアの前駆体としての尿素水を噴射すると、噴射された尿素水は排気の熱により熱分解又は加水分解されて、アンモニアが生成される。生成されたアンモニアは、選択還元触媒33に吸着されるか、又は排気中のNOxの還元に消費される。
本実施形態における排気系は、排気管3と、この排気管3内に設けられた酸化触媒31、CSF32及び選択還元触媒33とを含んで構成される。
制御装置4には、温度センサ91、クランク角度位置センサ95、アクセル開度センサ96及びエアフローメータ97等の各種センサが電気的に接続されている。温度センサ91は、選択還元触媒33の温度TSCR_SNSを検出し、検出値に略比例した信号を制御装置4に供給する。クランク角度位置センサ95は、エンジン2のクランク軸の回転角度を検出するとともに、所定のクランク角度ごとにパルスを発生し、このパルス信号を制御装置4に供給する。エンジン2の回転数NEは、このパルス信号に基づいて制御装置4により算出される。
アクセル開度センサ96は、車両の図示しないアクセルペダルの踏み込み量(以下、「アクセル開度」という)APを検出し、検出したアクセル開度APに略比例した検出信号を制御装置4に供給する。エンジン2の要求トルクTRQは、このアクセル開度APと上記のエンジン回転数NEに応じて制御装置4により算出される。本実施形態では、この要求トルクTRQを、エンジン2の負荷を表す負荷パラメータとする。エアフローメータ97は、エンジン2の吸入空気量を検出し、検出値に略比例した信号を制御装置4に供給する。
制御装置4は、排気系温度推定装置43と、温度制御装置41と、を含んで構成される。
排気系温度推定装置43は、エンジン2の運転状態に関する複数のパラメータ及び温度センサ91の検出値に基づいて、排気管内の排気温度、酸化触媒31の温度、CSF32の温度及び選択還元触媒33の温度などの排気系の各種温度の他、後述の排気系の熱容量を推定する。
温度制御装置41は、排気系温度推定装置43により算出された排気系の温度及び熱容量などの推定値に基づいて、排気系の温度を制御する。上記排気系のうち特に選択還元触媒33は、その温度とNOx浄化性能との相関が強いため、精度の高い温度制御が要求される。そこで温度制御装置41は、排気系の選択還元触媒33の温度を、そのNOx浄化性能が高く維持されるように定められた目標温度(例えば、250℃)に制御する。
またこの温度制御装置41は、昇温モードと、保温モードと、停止モードとの3つの異なる種類の制御モード下で選択還元触媒33の温度を制御することが可能となっている。
昇温モードとは、例えばエンジン2の始動開始直後において、選択還元触媒33の温度がその目標温度に対して十分に低い場合に、選択還元触媒33の温度を目標温度まで速やかに昇温し、早期活性化を図る制御モードである。
保温モードとは、例えば選択還元触媒33の温度が目標温度に達した後において、選択還元触媒33の温度を目標温度の近傍に保持し、NOx浄化性能を高く維持する制御モードである。
停止モードとは、例えば高負荷運転時など選択還元触媒33の温度が目標温度に対して十分に高い場合において、上記昇温モードや保温モードのように選択還元触媒33の昇温及び保温に寄与する制御を行わない制御モードである。
以下、これら排気系温度推定装置43及び温度制御装置41の構成について、図面を参照して詳細に説明する。
先ず、排気系温度を推定する排気系温度推定装置43について説明する。
図2は、排気系温度推定装置43の構成を示すブロック図である。
排気系温度推定装置43は、排気系温度推定モデル431と、温度センサモデル432と、モデルパラメータ同定器434と、排気系熱容量推定部435とを備え、これらにより、排気系の各種温度及び熱容量を推定する。
排気系温度推定モデル431は、燃料噴射量、回転数、吸入空気量、ポスト噴射量(後述のポスト噴射に供される燃料噴射量)などのエンジンの運転状態を特徴付ける複数のパラメータを入力とし、排気系の各部分の熱伝導を再現する物理モデルに基づいて、排気管のうち酸化触媒に流入する排気の温度の推定値TEX_HATと、酸化触媒の温度の推定値TDOC_HATと、CSFの温度の推定値TCSF_HATと、選択還元触媒の温度の推定値TSCR_HATと、の4種類の排気系の温度の推定値を算出する。
具体的には、排気系温度推定モデル431では、上記複数のパラメータに基づいてエンジン直下のポート部排気温度を推定するとともに、このポート部排気温度を、ニュートンの冷却則に従い差分方程式で定式化された排気系の物理モデルに入力することで、上記各部分の温度を推定する。なお、このような排気系の物理モデルの詳細な構成や、差分方程式で構築する具体的な手順については、例えば本願出願人による特開2006−250945号公報や特許4373909号公報などに記載されているので、ここでは詳細な説明を省略する。
また、このような排気系の物理モデルを差分方程式で構築する際、複数の排気系の物理特性に関する複数のパラメータを同定する必要がある。これら複数の未定のパラメータのうち、排気管の断面積や長さなど排気系の劣化に伴ってほとんど変化しないパラメータには予め実験により測定された固定値が用いられるが、排気系を構成する各部分の比熱など排気系の劣化に伴って変化し得る複数のモデル化パラメータa1,a2,…,anは、後述のモデルパラメータ同定器434により逐次発生された値が用いられる。
温度センサモデル432は、排気系温度推定モデル431により算出された選択還元触媒温度推定値TSCR_HATに基づいて、温度センサ出力値TSCR_SNSの推定値TSCR_SMを算出する。上述のように、温度センサ91の出力値TSCR_SNSには、実際の選択還元触媒の温度変化に対し遅れが生じる。そこで、温度センサモデル432は、この実際の温度センサの遅れをモデル化するとともに、排気系温度推定モデル431により算出された選択還元触媒温度推定値TSCR_HATに上記モデル化した遅れを生じさせることにより、温度センサ出力値TSCR_SNSの推定値TSCR_SMを算出する。
モデルパラメータ同定器434は、温度センサ出力推定値TSCR_SMと温度センサ出力値TSCR_SNSとの誤差が、排気系温度推定モデル431における排気系モデルと実際の排気系との誤差に起因するものであるとみなし、このモデルの誤差を解消するべく温度センサ出力推定値TSCR_SMと温度センサ出力値TSCR_SNSとの誤差が最小となるように上記物理モデルに含まれるモデル化パラメータa1,a2,…,anを逐次同定する。ここで、モデル化パラメータを同定する手法としては、例えば逐次型最小2乗法アルゴリズムといった従来既知のアルゴリズムが用いられる。このように、モデル化誤差が最小になるようにモデル化パラメータを同定することにより、排気系温度推定モデル431における物理モデルを現実の排気系の劣化に合わせて修正できるので、各種温度の推定精度を高く維持することができる。
排気系熱容量推定部435は、モデルパラメータ同定器434により発生された複数のモデル化パラメータa1,a2,…,anに基づいて、排気系の熱容量[J/K]に相当する排気系熱容量σSYSTEMを算出する。この排気系熱容量σSYSTEMとは、排気管並びにその内部に設けられた各種触媒及びフィルタを含む排気系全体を対象とした熱容量であり、より具体的には、排気系のうち選択還元触媒を単位温度上昇させるため、排気管内に供給する必要のあるエネルギを示す。上述のように、複数のモデル化パラメータa1,a2,…,anには、排気系の各部分における比熱などの情報が含まれているため、これらモデル化パラメータa1,a2,…,anから、上述のような定義の排気系熱容量σSYSTEMを算出することができる。
図3は、温度制御装置41の構成を示すブロック図である。
温度制御装置41は、メインコントローラ42と、排気エネルギ推定部44と、目標排気エネルギ算出部45と、制御モード設定部46とを含んで構成され、これらにより選択還元触媒の温度を制御する。
排気エネルギ推定部44は、排気管内に単位時間当りに供給された排気のエネルギである排気エネルギ[W]の推定値EHATと、この排気エネルギ推定値EHATの所定の期間にわたる積算量である排気エネルギ積算量[J]の推定値ΣEHATとを算出する。
目標排気エネルギ算出部45は、上記排気エネルギ推定値EHATに対する目標値である排気エネルギ目標値EHAT_TRGTと、排気エネルギ積算量推定値ΣEHATに対する目標値である排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TRGTを算出する。
制御モード設定部46は、温度制御装置41における制御モードを、昇温モード、保温モード及び停止モードの何れかに設定する。
メインコントローラ42は、排気系温度推定装置43により算出された酸化触媒温度推定値TDOC_HAT、CSF温度推定値TCSF_HAT及び選択還元触媒温度推定値TSCR_HAT、並びに排気エネルギ推定部44及び目標排気エネルギ算出部45により算出された排気エネルギ推定値EHAT及び排気エネルギ目標値EHAT_TRGTに基づいて、選択還元触媒の温度に影響のあるエンジンの運転パラメータとして、ポスト噴射の実行に供される燃料噴射量であるポスト噴射量GPOSTを決定する。
ここで、ポスト噴射とは、燃焼室内の燃焼後の膨張行程又は排気工程において実行され、気筒内での燃焼に寄与しない燃料噴射である。このポスト噴射が実行されると、未燃の炭化水素(HC)成分を含む排気が排気管内の酸化触媒に供給され、この酸化触媒においてHCの酸化反応が進行し、反応により生じた熱により下流側のCSF及び選択還元触媒が昇温又は保温される。
以下、排気エネルギ推定部44、目標排気エネルギ算出部45、制御モード設定部46、メインコントローラ42の構成について、順に説明する。
図4は、排気エネルギ推定部44の構成を示すブロック図である。排気エネルギ推定部44は、排気熱容量推定部441と、乗算器442と、排気HCエネルギ推定部443と、加算器444と、積分器445とから構成される。排気エネルギ推定部44は、これら構成により、排気エネルギ推定値EHAT及び排気エネルギ積算量推定値ΣEHATを算出する。
排気熱容量推定部441は、吸入空気量GAに基づいて排気管内の排気の質量流量を推定し、さらにこの質量流量に排気の比熱を乗算することにより、単位時間当りに排気管内に流入する排気の熱容量に相当するする排気熱容量[J/K]の推定値σEXを算出する。
乗算器442は、排気熱容量推定値σEXに排気温度推定値TEX_HATを乗算することにより、単位時間当りに排気管内に流入する排気の熱量に相当する排気温度エネルギ[W]の推定値EEX_HATを算出する。
排気HCエネルギ推定部443は、単位時間当りに排気管内に流入する排気のHC量を推定し、さらにこのHC量に基づいて、単位時間当りに排気管内に流入する排気中に含まれる未燃成分HCのエネルギに相当する排気HCエネルギ[W]の推定値EHC_HATを算出する。この排気HCエネルギとは、排気中の未燃成分HCが酸化触媒やCSFなどにおいて燃焼することで発生しうるエネルギをいう。また、排気中のHC量は、図示仕事として取り出すことを目的としエンジンに供給された燃料量(燃料噴射量からポスト噴射量を除いた燃料量)のうち完全に燃焼し切れずに排気管内に供給された燃料量と、ポスト噴射を実行することで排気管内に供給された燃料量と、に基づいて推定される。また、これらのうちエンジンで完全に燃焼し切れずに排気管内に供給された燃料量は、例えば、エンジンの負荷パラメータTRQ及び回転数NEに応じて、所定のマップを検索することで算出される。
加算器444は、乗算器442で算出された排気温度エネルギ推定値EEX_HATと、排気HCエネルギ推定部443で算出された排気HCエネルギ推定値EHC_HATとを合算することにより排気エネルギ推定値EHATを算出する。
積分器445は、加算器444で算出される排気エネルギ推定値EHATを、所定の期間にわたって積算することにより、排気エネルギ積算量推定値ΣEHATを算出する。具体的には、この積分器445は、エンジンの始動開始時から、上記排気エネルギ推定値EHATの積算を開始する。したがって、この積分器445により算出される排気エネルギ積算量推定値ΣEHATは、エンジンの始動開始時から現在までの間に排気管内に供給されたエネルギの総量となる。
図5は、目標排気エネルギ算出部45の構成を示すブロック図である。目標排気エネルギ算出部45は、必要排気エネルギ基準値算出部451と、TP排気エネルギ算出部452と、放熱エネルギ算出部453と、加算器454,455と、必要上昇温度算出部456と、乗算器457と、から構成される。目標排気エネルギ算出部45は、これら構成により、排気エネルギ目標値EHAT_TRGT及び排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TRGTを算出する。
先ず、排気エネルギ目標値EHAT_TRGTの算出に係る必要排気エネルギ基準値算出部451、TP排気エネルギ算出部452、放熱エネルギ算出部453及び加算器454,455について説明する。
必要排気エネルギ基準値算出部451は、エネルギの逃げ分が無いと仮定したときに、選択還元触媒の温度を目標温度TSCR_TRGTまで昇温又は目標温度TSCR_TRGT近傍に保持するのに供給する必要のある排気エネルギに相当する必要排気エネルギ基準値EBASE_TRGTを、選択還元触媒温度推定値TSCR_HAT及びその目標温度TSCR_TRGT及び現在の制御モードの種類に基づいて算出する。より具体的には、必要排気エネルギ基準値算出部451では、制御モードごとに予め設定されたマップに基づいて、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HAT及びその目標温度TSCR_TRGTに応じた基準値EBASE_TRGTを算出する。
なお、ここで設定する排気エネルギ目標値は、単位時間当りに排気管内に供給される排気エネルギに対する目標値であるので、この排気エネルギ目標値を大きくすると、単位時間当りに排気管内に供給されるエネルギの量が大きくなるので、選択還元触媒の温度変化は急になる傾向がある。
したがって、昇温モード時に参照されるマップ及び保温モード時に参照されるマップは、同じ選択還元触媒温度推定値TSCR_HAT及び目標温度TSCR_TRGTに対し、保温モード時における必要排気エネルギ基準値よりも昇温モード時における必要排気エネルギ基準値の方が大きな値になるように設定される。このようにして必要排気エネルギ基準値を定めることにより、昇温モード時における排気エネルギ目標値を保温モード時における排気エネルギ目標値よりも大きな値に設定される。
TP排気エネルギ算出部452は、単位時間当りにテールパイプから排出されるエネルギ、すなわち排気管内に供給された排気エネルギのうち、排気系の昇温に寄与することなく排気管を通過してテールパイプから外に逃げてゆくエネルギに相当するTP排気エネルギETPを算出する。より具体的には、TP排気エネルギ算出部452は、エンジンの負荷パラメータTRQ、回転数NE及び吸入空気量GAに基づいて所定のマップを検索することにより、TP排気エネルギETPを算出する。
放熱エネルギ算出部453は、単位時間当りに排気系から放熱される熱量、すなわち排気管内に供給された排気エネルギのうち、排気系の昇温に寄与することなく排気系から放熱されて外に逃げていくエネルギに相当する放熱エネルギERADを算出する。より具体的には、放熱エネルギ算出部453は、エンジンの負荷パラメータTRQ及び外気温度に基づいて所定のマップを検索することにより、放熱エネルギERADを算出する。
加算器454,455は、以上のようにして算出された基準値EBASE_TRGT、TP排気エネルギETP及び放熱エネルギERADを合算し、この合計値を排気エネルギ目標値EHAT_TRGTとして決定する。
次に排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TARGTの算出に係る必要上昇温度算出部456及び乗算器457について説明する。
必要上昇温度算出部456は、選択還元触媒の目標温度TSCR_TRGTからエンジンの始動開始時における選択還元触媒の温度を減算することにより、エンジン始動開始時において、選択還元触媒の温度を目標温度まで上昇させる必要のある温度に相当する必要上昇温度ΔTSCRを算出する。
乗算器457は、上記必要上昇温度ΔTSCRに、排気系熱容量σSYSTEMを乗算して得られる値を、エンジンの始動開始時において選択還元触媒の温度をエンジンの始動開始時における温度から目標温度TSCR_TRGTまで上昇させるために最低限必要なエネルギに相当する排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TRGTとして決定する。
図6は、制御モードを切り替える手順を示すフローチャートであり、エンジンの始動を開始したことに応じて制御モード設定部において実行される。制御モード設定部では、以下、詳細に説明するように、図6のフローチャートに示された手順に従って触媒温度制御装置における制御モードを、昇温モード、保温モード及び停止モードで切り替える。
先ず、S1では、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATは第1温度閾値T1より低いか否かを判別する。ここで、第1温度閾値T1は、制御モードを昇温モードに設定するか否かを判別するために設定された閾値であり、過剰昇温を回避するため、選択還元触媒の目標温度TSCR_TRGTよりも低い値に設定される。
S1における判別がNOの場合には、選択還元触媒の温度は十分に高いと判断し、制御モードを昇温モードに設定することなくS5に移り、制御モードを保温モードに設定する。
S1における判別がYESの場合には、選択還元触媒における浄化性能を向上するために、選択還元触媒を速やかに昇温し早期に活性化させる必要があると判断し、S2に移り制御モードを昇温モードに設定した後、S3に移る。以下、S3及びS4において詳細に説明するように、S2において制御モードを昇温モードに設定した後、制御モードを昇温モードから保温モードに切り替えるタイミングは、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATと、排気エネルギ積算量推定値ΣEHATとの2つの異なるパラメータに応じて判断される。
S3では、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATが、第1温度閾値T1以上となったか否かを判別する。S3の判別がYESの場合には、これ以上制御モードを昇温モードに設定し続ける必要はないと判断し、S5に移り、制御モードを昇温モードから保温モードに切り替える。一方、S3の判別がNOの場合には、排気エネルギ積算量推定値ΣEHATに基づいて制御モードを切り替えるタイミングを判断するべく、S4に移る。
S4では、エンジンの始動開始時から現在までの排気エネルギの積算量である排気エネルギ積算量推定値ΣEHAT(上述の図4参照)と、エンジン始動開始時に設定された排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TRGT(上述の図5参照)とを取得し、さらに排気エネルギ積算量推定値ΣEHATが排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TRGTに達したか否かを判別する。
S4の判別がNOの場合、制御モードを昇温モードに設定し続ける必要があると判断し
S3に移る。S4の判別がYESの場合、すなわち排気エネルギ積算量推定値ΣEHATが排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TRGTに達した場合には、選択還元触媒の温度を目標温度TSCR_TRGTまで昇温するのに必要なエネルギは既に供給され、近い将来選択還元触媒の温度が目標温度TSCR_TRGTに到達すると判断し、S5に移り、制御モードを昇温モードから保温モードに切り替える。
S5において制御モードを保温モードに設定した後、S6では、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATは第2温度閾値T2以上であるか否かを判別する。ここで、第2温度閾値T2は、制御モードを保温モードから停止モードに切り替えるか否かを判別するために設定された閾値であり、過剰昇温を回避するため、上記第1温度閾値T1及び目標温度TSCR_TRGTよりも高い値に設定される。
S6における判別がYESの場合には、選択還元触媒の温度が目標温度TSCR_TRGTよりも十分に高く、保温モード下で選択還元触媒の温度を制御せずとも選択還元触媒の温度を目標温度TSCR_TRGTよりも高い状態で所定時間以上保持できると判断し、S7に移り、制御モードを保温モードから停止モードに切り替える。一方、S6における判別がNOの場合には、制御モードを保温モードに維持し続ける。
S7において制御モードを停止モードに設定した後、S8では、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATは第3温度閾値T3より低いか否かを判別する。ここで、第3温度閾値T3は、制御モードを停止モードから保温モードに切り替えるか否かを判別するために設定された閾値であり、第1温度閾値T1より高く第2温度閾値T2より低い値に設定される。
S8における判別がYESの場合には、制御モードを停止モードにし続けると選択還元触媒の温度が目標温度TSCR_TRGTから大きく下回るおそれがあると判断し、S5に移り、制御モードを停止モードから保温モードに切り替える。一方、S8における判別がNOの場合には、制御モードを停止モードに維持し続ける。
以上のように、制御モード設定部は、制御モードを昇温モードから保温モードに切り替えた後は、例えばエンジンが停止されることで本制御モード切替処理が中断されるまで、制御モードを保温モードと停止モードとの間で、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATに応じて切り替える。
図7は、メインコントローラ42の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、メインコントローラ42では、エンジンの運転状態に応じて基準噴射量算出部420により算出された基準噴射量GPOST_BASEと、選択還元触媒の温度を目標温度に一致させるように温度FB噴射量算出部421により算出された温度FB噴射量GCOR_TEMPと、排気エネルギをその目標値に一致させるようにエネルギFB噴射量算出部422により算出されたエネルギFB噴射量GCOR_ENERGYと、を合算することでポスト噴射量GPOSTを決定する。
基準噴射量算出部420は、ポスト噴射量GPOSTの基準値となる基準噴射量GPOST_BASEを、エンジンの負荷パラメータTRQや回転数NEなどのエンジンの運転状態を示すパラメータに基づいて所定のマップを検索することにより決定する。
温度FB噴射量算出部421は、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATが目標温度TSCR_TRGTに一致するように温度FB噴射量GCOR_TEMPを算出する。上述のように、排気管内に設けられた酸化触媒、CSF及び選択還元触媒のうち、温度制御において最も高い精度その温度制御が要求される選択還元触媒は、酸化触媒やCSFなどの下流側に設けられており遅れが大きい。そこで温度FB噴射量算出部421では、図7に示すように、選択還元触媒に対応して設けられた第1フィードバックコントローラ421Aと、選択還元触媒よりも遅れの小さいCSFに対応して設けられた第2フィードバックコントローラ421Bと、CSFよりも遅れの小さい酸化触媒に対応して設けられた第3フィードバックコントローラ421Cと、の3つのコントローラを直列に組み合わせて構成したカスケード制御により選択還元触媒の温度を制御する。
第1フィードバックコントローラ421Aは、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATと目標温度TSCR_TRGTとの偏差が“0”になるように、選択還元触媒よりも遅れの小さいCSFの温度を制御するべく、その目標CSF温度基準値TCSF_TRGT_BASEに対する補正値を算出する。CSFの目標温度TCSF_TRGTは、この第1フィードバックコントローラ421Aにより算出された補正値と目標CSF温度基準値TCSF_TRGT_BASEとを合算することにより算出される。
第2フィードバックコントローラ421Bは、CSFの温度推定値TCSF_HATと目標温度TCSF_TRGTとの偏差が“0”になるように、CSFよりも遅れの小さい酸化触媒の温度を制御するべく、その目標酸化触媒温度基準値TDOC_TRGT_BASEに対する補正値を算出する。酸化触媒の目標温度TDOC_TRGTは、この第2フィードバックコントローラ421Bにより算出された補正値と目標酸化触媒温度基準値TDOC_TRGT_BASEとを合算することにより算出される。
第3フィードバックコントローラ421Cは、酸化触媒の温度推定値TDOC_HATと目標温度TDOC_TRGTとの偏差が“0”になるように温度FB噴射量GCOR_TEMPを算出する。
なお、上記目標CSF温度基準値TCSF_TRGT_BASEや目標酸化触媒温度基準値TDOC_TRGT_BASEとは、エンジンが定常運転状態となったときにCSFの温度及び酸化触媒の温度が収束すると考えられる値であり、それぞれ、負荷パラメータTRQや回転数NEなどのエンジンの運転状態を示すパラメータに基づいて所定のマップを検索して定められた値が用いられる。
排気エネルギFB噴射量算出部422は、排気エネルギ推定値EHATと排気エネルギ目標値EHAT_TRGTとの偏差が“0”になるように、排気エネルギFB噴射量GCOR_ENERGYを算出する第4フィードバックコントローラ422Aを備える。なお、図5を参照して説明したように、排気エネルギ目標値EHAT_TRGTは、上述のように昇温モード下では保温モード下よりも大きな値に設定される。したがって、昇温モード下である場合には排気エネルギFB噴射量GCOR_ENERGYを介してポスト噴射量GPOSTが大きな値に決定されるので、結果として選択還元触媒が速やかに昇温される。
以上のようにして算出された温度FB噴射量GCOR_TEMPと排気エネルギFB噴射量GCOR_ENERGYとを加算してポスト噴射量GPOSTを決定することにより、排気エネルギ推定値EHATを排気エネルギ目標値EHAT_TRGTに一致させながら、選択還元触媒の温度推定値TSCR_HATを目標温度TSCR_TRGTに一致させることができる。
なお、上述のフィードバックコントローラ421A,421B,421C,422Aのフィードバックアルゴリズムとしては、スライディングモード制御、PID制御及びバックステッピング制御など、従来既知のフィードバックアルゴリズムが用いられる。
以下、図8及び図9を参照して、エンジンの始動開始後における従来の排気浄化装置及び本実施形態の排気浄化装置の制御例について説明する。
図8は、従来の排気浄化装置の制御例を示すタイムチャートである。ここで従来の排気浄化装置とは、本実施形態の排気浄化装置とは異なり、エンジンの始動開始後、選択還元触媒の温度が閾値を上回ったことに応じて、制御モードを昇温モードから保温モードへ切り替えた例を示す。なお、図8に示す例では、上記制御モードの切り替えに係る閾値(最上段中の一点鎖線参照)を、選択還元触媒の目標温度(最上段中の実線参照)よりもやや小さな値に設定した。また、図8では、酸化触媒の温度を細線で示し、選択還元触媒の温度を太線で示す。
図8に示すように、先ず時刻t0においてエンジンの始動を開始すると、昇温モード下で選択還元触媒の温度が制御される。すなわち、排気管内に供給する排気エネルギの目標値を大きな値に設定し、選択還元触媒を速やかに昇温する制御が行われる。
時刻t0においてエンジンの始動を開始すると、排気管内のうち最も上流側に設けられた酸化触媒の温度が急激に上昇し、時刻t1近傍で平衡に達する。これに対し、酸化触媒よりも下流側に設けられた選択還元触媒の温度は、酸化触媒の温度が平衡に達する時刻t1の近傍において相当の時間の遅れをもって上昇し始める。
時刻t2では、選択還元触媒の温度が閾値に達したことに応じて制御モードを昇温モードから保温モードに切り替えるべく、排気管内に供給する排気エネルギの目標値を、昇温モード時よりも小さな値に設定する。時刻t2において制御モードを昇温モードから保温モードに切り替えると、最も遅れの小さい酸化触媒の温度は、制御モードを保温モードに切り替えたことに伴って速やかに低下し始めるのに対し、最も遅れの大きい選択還元触媒の温度は、酸化触媒と選択還元触媒の間に設けられたCSFの潜熱などの影響により、制御モードの切り替え後もなお上昇し続け、図8に示すように、目標温度を大きくオーバーシュートしてしまうこととなる。すなわち、従来の排気浄化装置によれば、選択還元触媒の温度を目標温度に対し過剰昇温させるエネルギが供給されてしまう。
図9は、本実施形態の排気浄化装置の制御例を示すタイムチャートである。図9では、酸化触媒の温度を細線で示し、選択還元触媒の温度を太線で示す。
先ず、時刻t3においてエンジンの始動を開始すると、昇温モード下で選択還元触媒の温度が制御される。すなわち、排気管内に供給する排気エネルギの目標値を大きな値に設定し、選択還元触媒を速やかに昇温する制御が行われる。したがって、上記従来の排気浄化装置と同様に、酸化触媒の温度は時刻t4において速やかに平衡に達するとともに、酸化触媒の温度上昇に遅れて選択還元触媒の温度が上昇し始める。なお、本実施形態の排気浄化装置では、図9中最下段に示すように、従来のもとと異なり、エンジンの始動開始後、昇温モード下で制御を開始してからの排気エネルギの積算量である排気エネルギ積算量の推定値ΣEHATを算出する。
時刻t5では、排気エネルギ積算量推定値ΣEHATが排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TRGTを上回ったことに応じて制御モードを昇温モードから保温モードに切り替えるべく、排気エネルギの目標値を、昇温モード時よりも小さな値に設定する。時刻t5において制御モードを昇温モードから保温モードに切り替えると、酸化触媒の温度は速やかに低下し始める。これに対し、選択還元触媒の温度は、制御モードの切り替え後もなお上昇し続けるものの、大きくオーバーシュートすることなく目標温度に収束する。すなわち、図8に示すような選択還元触媒の過剰昇温は生じない。
このように、排気エネルギ積算量推定値ΣEHATに基づいて制御モードを切り替えることにより、選択還元触媒を過剰昇温させる余分なエネルギを供給することなく昇温モードから保温モードに切り替えることができるので、従来の排気浄化装置と比較して早期(図9中時間T参照)に保温モードに切り替え、選択還元触媒の温度を目標温度に精度良く制御することができる。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
(1)本実施形態では、選択還元触媒の温度を目標温度TSCR_TRGTまで速やかに昇温するための昇温モードと、選択還元触媒の温度を目標温度TSCR_TRGT近傍に保持するための保温モードとを含む複数種類の制御モード下で選択還元触媒の温度を制御する温度制御装置を設けた。また、この温度制御装置によりエンジンの始動開始後に昇温モード下で選択還元触媒の温度を制御している間において、エンジンの始動開始時から現在までの排気エネルギの積算量の推定値ΣEHATが、選択還元触媒の温度をその目標温度TSCR_TRGTまで上昇させるのに最低限必要な排気エネルギ積算量に相当する目標値ΣEHAT_HATに達したときに、制御モードを昇温モードから保温モードへの切替える制御モード設定部を設けた。これにより、エンジンの始動開始後、昇温モード下で選択還元触媒の温度を制御している間において、エンジンの始動開始時から現在までの排気エネルギ積算量の推定値ΣEHATが目標値ΣEHAT_HATに達した場合には、選択還元触媒の温度が近い将来に目標温度TSCR_TRGTに到達すると予測できるので、現在の選択還元触媒の温度がまだ目標温度TSCR_TRGTに達していなくても制御モードを昇温モードから保温モードへと早期に切替えることができる。このように、選択還元触媒の昇温に寄与する排気エネルギ積算量に基づいて、制御モードを昇温モードから保温モードへと切替えることにより、昇温モード下で選択還元触媒の温度を速やかに昇温しつつ、当該触媒の温度を目標温度TSCR_TRGTにオーバーシュートすることなく精度良く制御することができる。
(2)上記実施形態では、上述のように熱伝導による遅れがある選択還元触媒の温度を目標温度TSCR_TRGTに制御するにあたり、熱伝導による遅れを考慮する必要のない排気エネルギの推定値EHATを排気エネルギ目標値EHAT_TRGTに一致させることにより、選択還元触媒の温度を精度良く制御することができるので、効率よく排気を浄化できる。
(3)本実施形態よれば、昇温モード時における排気エネルギ目標値を保温モード時における排気エネルギ目標値よりも大きな値に設定することにより、昇温モード時には、選択還元触媒に短時間でより多くのエネルギを供給できるため、昇温モードの時間を短縮することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
例えば、上記実施形態では、排気浄化装置1をリーンバーン式のエンジンに適用したが、これに限定されず、ディーゼルエンジンに適用することもできる。
また、上記実施形態に係る排気浄化装置1では、上流側から順に酸化触媒、CSF及び選択還元触媒を排気通路内に備えるものであったが、これに限定されない。これら以外にも、三元触媒(TWC)や、DPF、NOx吸着触媒(LNT)及びNOx浄化触媒(LNC)等と組み合わせてもよい。
上記実施形態では、メインコントローラにより、選択還元触媒の温度に影響のあるエンジンの運転パラメータとしてポスト噴射量を決定したが、これ以外にもエンジンの点火時期の遅角量を決定してもよい。
上記実施形態では、モデルパラメータ同定器により逐次同定された複数のモデル化パラメータa1,a2,…,anに基づいて排気系熱容量σSYSTEMを算出し、この排気系熱容量σSYSTEMに基づいて排気エネルギ積算量目標値ΣEHAT_TRGTを算出したが、これに限らない。排気系熱容量σSYSTEMには、固定値やマップに基づいて算出される値を用いることもできる。
1…排気浄化装置
2…エンジン(内燃機関)
3…排気管(排気通路)
4…制御装置
41…温度制御装置(触媒温度制御手段)
42…メインコントローラ(触媒温度制御手段)
44…排気エネルギ推定部(排気エネルギ算出手段)
45…目標排気エネルギ算出部(目標排気エネルギ算出手段)
46…制御モード設定部(制御モード切替手段)
43…排気系温度推定装置

Claims (3)

  1. 内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒を備える内燃機関の排気浄化装置であって、
    前記排気浄化触媒の温度を所定の目標温度まで昇温するための昇温モードと、前記排気浄化触媒の温度を前記目標温度近傍に保持するための保温モードと、を含む複数種類の制御モード下で前記排気浄化触媒の温度を制御する触媒温度制御手段と、
    前記排気通路内に単位時間当りに供給されたエネルギである排気エネルギと、当該排気エネルギの所定の期間にわたる積算量である排気エネルギ積算量とを算出する排気エネルギ算出手段と、
    前記内燃機関の始動開始後に前記触媒温度制御手段が前記昇温モード下で前記排気浄化触媒の温度を制御している間において、前記内燃機関の始動開始時から現在までの排気エネルギ積算量が所定の目標値に達した場合には、前記排気浄化触媒の温度が前記目標温度に達していなくても前記制御モードを昇温モードから保温モードへ切替える制御モード切替手段と、を備え、
    前記排気エネルギ積算量の目標値は、前記排気浄化触媒の温度を前記内燃機関の始動開始時における温度から前記目標温度まで上昇させるのに必要な排気エネルギ積算量に相当することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
  2. 前記排気エネルギに対する目標値である排気エネルギ目標値を算出する目標排気エネルギ算出手段をさらに備え、
    前記触媒温度制御手段は、前記排気エネルギを前記排気エネルギ目標値に一致させながら、前記排気浄化触媒の温度を前記目標温度に一致させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  3. 前記目標排気エネルギ算出手段は、前記昇温モード時における排気エネルギ目標値を、前記保温モード時における排気エネルギ目標値よりも大きな値に設定することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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