JP5549916B2 - 熱転写受像シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材と、前記基材上に、少なくとも2層からなる中空層と、プライマー層と、受容層とを有する熱転写受像シートおよびその製造方法に関する。
従来、種々の印字方法が知られているが、その中でも熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)は、昇華性染料を色材としているため、濃度階調を自由に調節でき、中間色や階調の再現性にも優れ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像を形成することができる。
この熱拡散型転写方式とは、色素(昇華性染料)を含有する熱転写インクシートと熱転写受像シートとを重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによってインクシートを加熱することでインクシート中の色素を受像シートに転写して画像情報の記録を行うものである。このような熱拡散型転写方式が普及するなかで、印画速度の高速化が進んでおり、従来の熱転写インクシートと熱転写受像シートを用いて従来の熱エネルギーを印画しても十分な発色濃度を得られない等の問題が生じている。
さらに、熱拡散型転写方式では、その他の種々の問題も存在している。例えば、受像シートの離型性不足に起因して、印画の際にインクシートが受像シートの受容層表面に貼り付き、印画後にインクシートを画像受容層から剥離する際に、剥離音の発生、走行不良、および画像上の剥離線の発生等の問題が生じている。
そこで、少なくとも一種のパラフィンワックス分散物および塩化ビニル系ラテックスを含有させた受容層を有する熱転写受像シートを用いることが提案されているが、印画物の画像濃度については評価が不十分であり、実用可能な画像濃度が得られているとは言い難い。さらに、印画物の面質については何ら言及されておらず、面質を向上させる方法は何ら提案されていない(例えば、特許文献1を参照)。
また、印刷方式の中でも、スライドコート法は、他の印刷方式と比較して塗布ムラを抑制できる印刷方式として知られている。例えば、基材上に直接塗布する層と、その上に塗布する層とを同様の組成で粘度の異なるインキとすることで、塗布ムラをより抑制することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかし、基材上に直接塗布する層と、その上に塗布する層との組成が異なる場合や高速印刷の場合には、塗布ムラを十分に抑制することができなかった。ところで、昇華転写受像シートでは、様々な機能を持たせるために、組成の異なる複数の層を設けることが要求されている。したがって、同一組成のインキにより複数層積層することは、機能確保、コスト等の様々な観点から実用化し難い。そのため、提案されている方法を昇華転写受像シートの製造には転用できない。したがって、現在までに昇華転写受像シートの面質を改善する方法は提案されていない。
したがって、特に高速印刷条件で、印画時の離型性を維持しながら、作製した印画物の、濃度、接着性、および面質を向上することができる、熱転写受像シートおよびその製造方法の開発が切望されている。
特開2008−6789号公報 特開2000−153214号公報
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に高速印刷条件で、印画時の離型性を維持しながら、作製した印画物の、濃度、接着性、および面質を向上することができる、熱転写受像シートおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、基材上に、少なくとも2層からなる中空層と、プライマー層と、受容層とをこの順に有する熱転写受像シートにおいて、中空層の少なくとも2層に中空粒子を含有させることで、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
基材と、前記基材上に、少なくとも2層からなる中空層と、プライマー層と、受容層とを有する熱転写受像シートであって、
前記中空層が、前記基材に接する中空層Aと、前記プライマー層に接する中空層Bとを有し、前記中空層Aが、中空粒子、メチルメタクリレート・ブタジエン系樹脂、および親水性バインダーを含み、前記中空層Bが、中空粒子、ポリエステル・ウレタン系樹脂、および親水性バインダーを含む、熱転写受像シートを提供するものである。
また、他の態様によれば、本発明は、
上記の熱転写受像シートの製造方法であって、
前記中空層Aから前記受容層間を構成する全ての層が、水系塗布かつ同時重層塗布方式によって形成される、熱転写受像シートの製造方法を提供するものである。
本発明の熱転写受像シートによれば、高速印刷条件であっても、印画時の離型性を維持しながら、作製した印画物の、濃度、接着性、および面質を向上することができる。また、本発明の製造方法によれば、上記の熱転写受像シートを提供することができ、熱転写受像シートの各層の層間接着性の向上やコスト改善等の効果を得ることができる。
熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、基材と、該基材上に、少なくとも2層からなる中空層と、プライマー層と、受容層とをこの順に有するものである。好ましい態様では、熱転写受像シートは中間層や離型層等のその他の層をさらに有してもよい。
基材
本発明における基材は、受像層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、過熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有する材料であることが好ましい。
このような基材の材料としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムが挙げられ、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルムも使用でき、特に限定されない。また、上記基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙或いはセルロース合成紙とプラスチックフィルムとの合成紙が挙げられる。本発明においては、市販の基材を用いることもでき、例えば、RCペーパー(三菱製紙(株)製、商品名:STF−150)等が好ましい。
中空層
本発明における中空層は、熱転写による画像形成時に加えられた熱が、基材等への伝熱によって損失されることを防止できる断熱性やクッション性を有するものである。また、中空層は、中空粒子、樹脂、および親水性バインダーを含むものであり、その他の添加剤をさらに含んでもよい。なお、中空層は、少なくとも2層以上からなるものであり、基材に接する中空層Aと、プライマー層に接する中空層Bとを有するものである。このように中空層を2層以上設けることで、印画品質に影響する断熱性およびクッション性と、基材への密着性とを分離することができ、例えば、中空層Aで基材への密着性とクッション性を、中空層Bで画像濃度を向上させるための断熱性とクッション性を得ることができる。
中空層A
本発明において中空層Aは、中空粒子、樹脂、および親水性バインダーを含むものである。樹脂としては、メチルメタクリレート・ブタジエン系樹脂(以下、「MBR系樹脂」ということがある)、スチレン・ブタジエン系樹脂(SBR系樹脂)、二トリルブタジエンゴム(NBR系樹脂)、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびアクリル系樹脂を用いることができ、MBR系樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂を含むことで、中空粒子のバインド力、基材および中空層Bへの密着性、印画時のクッション性を向上することができる。本発明においては、市販のMBR系樹脂を用いることもでき、例えば、DIC(株)製、商品名:ラックスターDM820等が好ましい。
中空層B
本発明において中空層Bは、中空粒子、樹脂、および親水性バインダーを含むものである。樹脂としては、ポリエステル・ウレタン系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、ニトリルブタジエンゴム、メチルメタクリレート・ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびアクリル系樹脂を用いることができ、ポリエステル・ウレタン系樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂を含むことで、中空粒子のバインド力、プライマー層および中空層Aとの密着性を向上することができる。本発明においては、市販のポリエステル・ウレタン系樹脂を用いることもでき、例えば、DIC(株)製、商品名:ハイドランAP−40等が好ましい。
中空粒子
本発明で用いる中空粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μmである。中空粒子の平均粒子径が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を中空層に与えることができる。また、中空粒子の平均中空率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30〜80%である。中空粒子の平均中空率が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を中空層に与えることができる。本発明においては、市販の中空粒子を用いることもでき、例えば、ローペイクHP−1055、ローペイクHP−91、ローペイクOP84J、およびローペイクSE(ロームアンドハース社製)、ならびに、MH−8101、MH−8055、MH−5055(日本ゼオン)等が好ましい。
なお、上記の「平均粒子径」は、以下のようにして求められる。中空粒子を水中に分散させてなる水分散体を調整し、この中空粒子の水分散体のものを乾燥させて乾燥体となし、その後に透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)にて乾燥体における中空粒子をなす粒子(100個)を観察して、個々の粒子についてその外面側の直径(外径)を計測し、それらの値を平均して平均粒子径とした。また、「平均中空率」は以下のようにして求めることができる。中空粒子を水中に分散させてなる水分散体を調整し、この中空粒子の水分散体のものを乾燥させて乾燥体となし、その後に透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)にて乾燥体中における中空粒子をなす粒子(100個)を観察して、個々の粒子についてその内面側の直径(内径)を計測し、それらの値を平均して平均粒子内径とした。そして、平均粒子内径から中空部の体積を定めるとともに、その値を上記平均粒子径から粒子の見掛けの体積で除して100を乗じることで平均中空率を算出した。
本発明の好ましい態様によれば、中空層Aにおける中空粒子の含有量が、前記中空層Bにおける中空粒子の含有量よりも少ないことが好ましい。なお、中空粒子の含有量とは、中空層おける、樹脂および親水性バインダーの総固形分に対する質量割合である。中空層Aにおける中空粒子の含有量を中空層Bにおける中空粒子の含有量よりも低くすることで、断熱性やクッション性を維持したままで、基材と中空層Bとの層間密着性を向上することができる。また、中空層Aにおいて、中空粒子と、樹脂および親水性バインダーの総固形分との質量比は、好ましくは5:95〜70:30であり、より好ましくは10:90〜60:40であり、中空層Bにおいて、中空粒子と、樹脂および親水性バインダーの総固形分との質量比は、好ましくは50:50〜90:10であり、より好ましくは65:35〜80:20である。中空粒子の含有量が上記程度範囲内にあることで、断熱性やクッション性を維持したままで、層間密着性を確保することができる。
プライマー層
本発明におけるプライマー層は、受容層と中空層との密着性、印画物の保存性、耐エンボス性などを向上させるものである。好ましい態様では、プライマー層は、架橋中空粒子、樹脂、および親水性バインダーを含むものであり、樹脂としてはアクリル系樹脂を含むものが好ましい。必要に応じてアニオン性、ノニオン性、またはカチオン性の帯電防止剤や金属酸化物系の帯電防止剤を添加してもよい。また、白色度を調整するために酸化チタン、炭酸カルシウムなどの白色顔料や蛍光増白剤を添加してもよい。
架橋中空粒子
本発明において、架橋中空粒子は、耐熱温度200℃以上、好ましくは300℃以上の高耐熱性粒子であることが好ましい。なお、粒子の耐熱温度は粒子が熱により破壊あるいは潰れることなく耐え得る最大の温度であり、本発明においては熱応力歪み測定装置(TMA)(セイコー電子工業(株)製)により測定した値で表して、上記耐熱温度以上を有していればよい。このような架橋中空粒子の平均粒子径は、0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μmである。また、平均中空率は、好ましくは10〜60%、より好ましくは20〜40%であり、中空層に用いられる中空粒子よりも平均中空率の低い粒子であってもよい。このような架橋粒子を用いることで、印画物の濃度向上と耐エンボスの改善を同時に実現することができる。
アクリル系樹脂
本発明において、アクリル系樹脂とは、アクリル酸またはメタクリル酸のモノマーの重合体もしくはその誘導体、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーの重合体もしくはその誘導体、アクリル酸またはメタクリル酸のモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体、およびアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体を含むものである。
本発明の好ましい態様によれば、アクリル系樹脂は、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体であるのが好ましい。アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーとしては、例えば、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート等、好ましくは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、およびラウリルメタクリレート等を挙げることができる。他のモノマーとしては、例えば、芳香族炭化水素、アリール基含有化合物、アミド基含有化合物、および塩化ビニル等、好ましくは、スチレン、ベンジルスチレン、フェノキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、およびメタクリルアミド等を挙げることができる。本発明においては、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートと、芳香族炭化水素、アリール基含有化合物、およびアミド基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体を用いることが特に好ましい。上記のようなモノマーを共重合させることで、濃度および離型性を向上させることができる。なお、2種以上のアクリル系樹脂を混合して用いてもよい。
受容層
本発明における受容層は、熱転写による画像形成時に熱転写インクシートから転写される昇華性染料を受容するとともに、受容した昇華性染料を受容層に保持することで、受容層の面に画像を形成かつ維持することができる。好ましい態様では、受容層は2層以上からなるものであり、プライマー層に接する受容層(以下、「受容層A」ということがある)は、層間接着性を向上させるために、親水性バインダーを含むことが好ましく、基材から最も離れた位置にある受容層(以下、「受容層B」ということがある)は、離型剤を含むことが好ましい。受容層の形成には、塩化ビニルの重合体もしくはその誘導体、および塩化ビニルと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体を樹脂として用いることができ、塩ビ・アクリル樹脂を用いることが好ましい。なお、2種以上の塩ビ・アクリル樹脂を混合して用いてもよい。本発明においては、受容層Aによってプライマー層との層間接着性、印画物の耐湿熱保存性を改善し、受容層Bによって印画時の離型性、発色濃度を改善することができる。
親水性バインダー
本発明の好ましい態様によれば、中空層、プライマー層、および受容層に含まれる親水性バインダーとしては、ゼラチンおよびその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸およびその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、ならびにアラビアゴムを挙げることができ、特にゼラチンが好ましい。このような親水性バインダーを用いることで、受容層と接する層との層間接着性を向上させることができる。特に、水系塗布および同時重層塗布方式により各層を形成する場合には、ゼラチンを用いることで、各塗工液の粘度を所望の範囲に調整し、所望の膜厚を得ることができる。本発明においては、市販のゼラチンを用いることもでき、例えば、RR、R、およびCLV(新田ゼラチン(株)製)等が好ましい。
離型剤
本発明における受容層に含まれる離型剤としては、シリコーンオイル(反応硬化型シリコーンを含む)、リン酸エステル系可塑剤、およびフッ素系化合物を挙げることができ、特にシリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン等の各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、およびポリエーテル変性シリコーン等を用い、これらを混合したり、各種の反応を用いて重合させて用いることもできる。また、2種以上の離型剤を混合して用いてもよい。このような離型剤を用いることで、印画時に熱転写インクシートと熱転写受像シートの受容層との融着および印画感度低下などの問題を改善することができる。
本発明においては、ポリエーテル変性シリコーン型の離型剤を用いることが特に好ましい。ポリエーテル変性シリコーン型の離型剤を2種以上用いてもよく、その他の離型剤と併用しても良い。なお、受容層Bにおける離型剤の含有量は、離型剤と、樹脂の総固形分との質量比が、好ましくは1:99〜15:85である。離型剤の含有量が上記範囲程度であれば、熱転写インクシートと熱転写受像シートの受容層との融着および印画感度低下などの問題を改善することができる。本発明においては、市販の離型剤を用いることもでき、例えば、KF−615AおよびKF−352A(信越化学工業(株)製)、ならびにFZ−2101(東レダウコーニング(株)製)等が好ましい。
離型層
本発明においては、上記の離型剤を受容層に添加せず、受容層上に別途離型層として設けても良い。
中間層
本発明においては、中空層とプライマーの間やプライマー層と受容層の間に少なくとも1層の中間層を設けてもよい。中間層を設けることで、耐溶剤、高温/高湿下での画像保存時の染料拡散バリア、層間接着、白色付与、基材のギラつき感/ムラの隠蔽、および帯電防止等の機能を付加するこができる。中間層の形成手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、中間層に、蛍光増白剤、無機微粒子、中空微粒子、および導電性フィラーやポリアニリンスルホン酸のような有機導電材等を添加する方法が挙げられる。
熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートの製造には、公知の製造方法を用いることができる。熱転写受像シートの各層の塗布には、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ダイコート、スライドコート、およびカーテンコート等の公知の方法を用いることができ、スライドコートやカーテンコート等の複数の層を同時重層塗布できる方法が好ましい。本発明においては、中空層から受容層間を構成する全ての層を、水系塗布および同時重層塗布方式により形成することが特に好ましい。このような製造方法により、熱転写受像シートの各層の層間接着性の向上やコスト改善等の効果が得られる。また、本発明においては、高速印刷により塗布を行うことが好ましく、塗布速度は、毎分200〜300mが好ましい。このような高速印刷を行うことで、コストをより改善することができる。なお、高速印刷(例えば、毎分200〜300m)による塗布の場合には、塗布ムラが問題となることがあるが、本発明の熱転写受像シートを用いることで、塗布ムラを抑制することができ、画像欠陥を改善できる。
熱転写インクシート
本発明の熱転写受像シートと共に用いる熱転写インクシートは、基材上に熱拡散性色素を含むインク層を有するものである。このようなものであれば、公知の熱転写インクシートでよく、特に限定されるものではない。
画像形成方法
本発明の熱転写受像シートを用いる画像形成方法においては、熱転写受像シートと、熱拡散性色素を含有する熱転写インクシートとを重ね合わせて、記録信号に応じて加熱することにより、該熱転写インクシートが含有する熱拡散性色素を、該熱転写受像シートに転写することにより画像形成することできる。
このような画像形成方法で用いることのできる熱転写記録装置としては、公知のものを用いることができ、特に限定されない。本発明においては、市販の熱転写記録装置を用いることができ、例えば、昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)が挙げられる。
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。なお、表記の重量部は固形分で記載し、必要に応じて純水にて希釈した。
実施例1
熱転写受像シート1の作製
基材シートとしてRCペーパー(三菱製紙(株)製、商品名:STF−150)を用い、下記組成の中空層A形成用塗工液1、中空層B形成用塗工液1、プライマー層形成用塗工液1の組成、受容層A形成用塗工液1、受容層B形成用塗工液1を40℃にそれぞれ加熱し、スライドコーティングを用いて、WET時の厚みがそれぞれ10μm、25μm、15μm、5μm、8μmとなるように塗布し、5℃にて30秒間冷却した後、50℃にて2分間乾燥し、熱転写受像シート1(層構成:基材/中空層A/中空層B/プライマー層/受容層A/受容層B)を得た。なお、塗布速度は、毎分250mであった。
中空層A形成用塗工液1の組成
・ローペイクHP−91(中空粒子、平均粒子径1μm、平均中空率50%、ロームアンドハース社製) 60重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・ラックスターDM820(MBR系樹脂、DIC(株)製) 20重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.15重量部
水400部を加えて希釈した。
中空層B形成用塗工液1の組成
・ローペイクHP−91(中空粒子、平均粒子径1μm、平均中空率50%、ロームアンドハース社製) 70重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 25重量部
・ハイドランAP−40(ポリエステル・ウレタン系樹脂、DIC(株)製) 5重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.2重量部
水500部を加えて希釈した。
プライマー層形成用塗工液1の組成
・SX−866(架橋中空粒子、平均粒子径0.3μm、平均中空率30%、JSR(株)社製) 70重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 25重量部
・NKJ300(アクリル系樹脂、新中村化学工業(株)製) 5重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.2重量部
水500部を加えて希釈した。
受容層A形成用塗工液1の組成
・ビニブラン900(塩ビ・アクリル樹脂、日信化学工業(株)製) 90重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 10重量部
水250部を加えて希釈した。
受容層B形成用塗工液1の組成
・ビニブラン900(塩ビ・アクリル樹脂、日信化学工業(株)製) 90重量部
・KF−615A(シリコーン系離型剤、日信化学工業(株)製) 10重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5重量部
水150部を加えて希釈した。
実施例2
熱転写受像シート2の作製
中空層A形成用塗工液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に各塗工液を調製して、熱転写受像シート2を作製した。
中空層A形成用塗工液2の組成
・ローペイクHP−91(中空粒子、平均粒子径1μm、平均中空率50%、ロームアンドハース社製) 10重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 45重量部
・ラックスターDM820(MBR系樹脂、DIC(株)製) 45重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.15重量部
水400部を加えて希釈した。
実施例3
熱転写受像シート3の作製
中空層B形成用塗工液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に各塗工液を調製して、熱転写受像シート3を作製した。
中空層B形成用塗工液2の組成
・ローペイクHP−91(中空粒子、平均粒子径1μm、平均中空率50%、ロームアンドハース社製) 80重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 15重量部
・ハイドランAP−40(ポリエステル・ウレタン系樹脂、DIC(株)製) 5重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.2重量部
水500部を加えて希釈した。
実施例4
熱転写受像シート4の作製
中空層B形成用塗工液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に各塗工液を調製して、熱転写受像シート4を作製した。
中空層B形成用塗工液3の組成
・ローペイクHP−91(中空粒子、平均粒子径1μm、平均中空率50%、ロームアンドハース社製) 50重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 25重量部
・ハイドランAP−40(ポリエステル・ウレタン系樹脂、DIC(株)製)25重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.2重量部
水500部を加えて希釈した。
比較例1
熱転写受像シート5の作製
中空層A形成用塗工液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に各塗工液を調製して、熱転写受像シート5を作製した。
中空層A形成用塗工液3の組成
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・ラックスターDM820(MBR系樹脂、DIC(株)製) 20重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.15重量部
水400部を加えて希釈した。
比較例2
熱転写受像シート6の作製
中空層B形成用塗工液の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様に各塗工液を調製して、熱転写受像シート6を作製した。
中空層B形成用塗工液4の組成
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 25重量部
・ハイドランAP−40(ポリエステル・ウレタン系樹脂、DIC(株)製) 5重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業社製) 0.2重量部
水500部を加えて希釈した。
比較例3
熱転写受像シート7の作製
中空層Aを設けなかった以外は、実施例1と同様に各塗工液を調製して、熱転写受像シート7(層構成:基材/中空層B/プライマー層/受容層A/受容層B)を作製した。
熱転写受像シートの評価
上記の実施例および比較例で作製した熱転写受像シートについて、(1)離型性評価、(2)画像濃度評価、(3)層間接着性評価、および(4)面質評価を行った。
(1)離型性評価(印画可能か否かの評価)
あらかじめヘッド温度が35℃となるまで暖めた昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)にて、作製した熱転写受像シートに黒ベタ画像を印画し、その際に剥離音が聞こえるかどうかを官能評価した。
・評価基準
○:剥離音が聞こえなかった、あるいは機械音にまぎれる程度であった。
△:剥離音が聞こえた。
×:印画できず、リボンと受像紙の貼りつきが発生した。
(2)画像濃度評価
昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII)にて、作製した熱転写受像シートに、RGB値が15×n(n=0〜17)の18階調グラデーション画像を印画し、光学濃度計(グレタグマクベス社製spectrolino)による光学反射濃度が最大となる値を測定した。
・評価基準
○:1.90以上
△:1.80〜1.90
×:1.80以下
(3)層間接着性評価
熱転写受像シート(寸法;縦×横の寸法が5(cm)×5(cm))に対して、その側端縁よりも内側の領域に、粘着材(メンディングテープ(3M社製;Scotch Brand Tape MP−12))を貼り付けた。熱転写受像シートに粘着材を貼り付けた後、熱転写受像シートの面と粘着材の面の位置関係が熱転写受像シートの面に対して粘着材の面が45度の角をなす位置関係となるように、粘着剤を熱転写受像シートから剥離した。このとき、基材シートと中空層の「層間接着性」は、粘着剤と熱転写受像シートとの接触界面で粘着剤の剥離が生じたか、熱転写受像シートを構成する層の一部に粘着剤に追従する部分を生じつつ粘着剤の剥離が生じたかについての観察を行うことで、次のように評価した。
○:熱転写受像シートを構成する層の一部に粘着剤に追従する部分を生じておらず、粘着剤と熱転写受像シートとの界面で剥離が綺麗に生じた。
△:熱転写受像シートを構成する多孔質層の一部に粘着剤に追従してはがれを生じた部分の面積が、粘着剤剥離前の粘着剤と熱転写受像シートの接触面積の5%以下に留まっていた。
×:はがれを生じて且つそのはがれを生じた部分の面積が、粘着剤剥離前の粘着剤と熱転写受像シートの接触面積の5%を超えていた。
(4)面質評価
印画物の面質を印画試験によって測定した。印画試験は、得られた熱転写受像シートに昇華型熱転写法による所定画像の印画を行うことで実施した。このとき、印画される所定画像には、ブラックの18ステップに分割された画像を用い、昇華型熱転写法による印画を行う装置として、昇華型熱転写プリンタ(ALTECH ADS社製;MEGAPIXELIII)を用い、熱転写シートとしては昇華型熱転写プリンタ(ALTECH ADS社製;MEGAPIXELIII)に使用可能な専用インクリボンを用いた。そして、ブラックの18ステップに分割された画像が熱転写受像シートに形成された後、転写画像のざらつき感を目視観察することにより、次のように判定した。
○:印画ムラが全く認められなかった。
△:一見すると印画ムラが認められないが、転写画像に近接してみるとややムラが認められた。
×:一見して印画ムラが認められた。
上記の各評価の結果を表1に示す。本発明の組成を満たす実施例1〜4の熱転写受像シートは、比較例1〜3の熱転写受像シートと比較して、印画時の離型性を維持しながら、作製した印画物の、濃度、接着性、および面質を向上できることがわかる。
Figure 0005549916

Claims (9)

  1. 基材と、前記基材上に、少なくとも2層からなる中空層と、プライマー層と、受容層とを有する熱転写受像シートであって、
    前記中空層が、前記基材に接する中空層Aと、前記プライマー層に接する中空層Bとを有し、前記中空層Aが、中空粒子、メチルメタクリレート・ブタジエン系樹脂、および親水性バインダーを含み、前記中空層Bが、中空粒子、ポリエステル・ウレタン系樹脂、および親水性バインダーを含む、熱転写受像シート。
  2. 前記中空層Aにおける中空粒子の含有量が、前記中空層Bにおける中空粒子の含有量よりも少ない、請求項1に記載の熱転写受像シート。
  3. 前記中空層Aにおいて、前記中空粒子と、前記樹脂および前記親水性バインダーの総固形分との質量比が、5:95〜70:30であり、前記中空層Bにおいて、前記中空粒子と、前記樹脂および前記親水性バインダーの総固形分との質量比が、50:50〜90:10である、請求項1または2に記載の熱転写受像シート。
  4. 前記プライマー層が、架橋中空粒子、アクリル系樹脂、および親水性バインダーを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
  5. 前記プライマー層に含まれる架橋中空粒子が、耐熱温度200℃以上の高耐熱性粒子である、請求項に記載の熱転写受像シート。
  6. 前記受容層が、少なくとも2層からなり、前記プライマー層に接する受容層Aと、前記基材から最も離れた位置にある受容層Bとを有し、前記受容層Aが、塩化ビニル系樹脂および親水性バインダーを含み、前記受容層Bが塩化ビニル系樹脂および離型剤を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
  7. 前記受容層Bにおいて、前記離型剤と、前記樹脂の総固形分との質量比が、1:99〜15:85である、請求項に記載の熱転写受像シート。
  8. 前記中空層Aから前記受容層間を構成する全ての層が、水系塗布かつ同時重層塗布方式によって形成される、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の熱転写受像シートの製造方法であって、
    前記中空層Aから前記受容層間を構成する全ての層が、水系塗布かつ同時重層塗布方式によって形成される、熱転写受像シートの製造方法。
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