JP5549548B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は光学フィルムの製造方法に関し、特に液晶表示装置等に用いられる光学フィルムを溶融製膜により効率よく製造する方法に関する。
熱可塑性樹脂を含有する光学フィルム(以下、本願では単に光学フィルムという場合もある)の製造方法は、大別して、熱可塑性樹脂や添加剤を有機溶媒等に溶解したドープを調製した後、このドープを無端ベルト等の上に流延して製造する溶液流延法と、熱可塑性樹脂と添加剤等を200〜300℃に加熱、溶融し、その溶融物を、ダイス等を用いて、ロール上や無端ベルト上に押出して流延する溶融流延法が挙げられる。
これらの製造方法のうち、有機溶媒が不要であることから、環境適性として溶融流延法が好ましい。また、溶媒の乾燥設備や溶媒の回収設備が不要であり、製造設備がコンパクトになる利点からも溶融成膜法が好ましい。
近年、地球環境の保全を目的として、工業製品の製造に伴って発生する二酸化炭素の排出量を低減することが強く求められている。排出量の低減には、製造にかかるエネルギーを削減する手段だけではなく、原材料等の資源を無駄なく活用することも有効である。このため、製造に伴うロスの発生を削減する方法と、発生したロスを再利用・有効活用する方法が求められている。
製造に伴うロスとしては、1)製造開始時や条件出し等で発生する所望の特性を備えていないフィルム、2)ネックイン等により発生する両端部の膜厚が厚い部分、3)原反を規定幅にトリミング(スリッティング)した際に生じる端部等が挙げられる。
溶融製膜法では、スクリュー型押出機等にて熱可塑性樹脂を含むペレット等の原材料に、剪断および熱をかけて溶融し、Tダイ等でフィルム状に押出し、成形機(ドラム式やベルト式等)で冷却してフィルムに製膜し、引き続き、延伸機(縦延伸、横延伸、2軸延伸機等)にて所望の物性、膜厚になるように延伸して光学フィルムを得る。
これら一連の工程を連続して実施し、前記フィルム物性を調整して目標の物性に仕上げるためには、上流側の工程から条件を整え、下記A→B→Cの順番で条件を調整することが効率的である。
A:押出し条件…押出機の調整により、主として安定な押出し条件、押出し量を調整
B:製膜条件…Tダイの幅、成形機の搬送速度を調整することにより主に膜厚(幅手の偏差も含む)を調整
C:延伸条件…膜厚および光学特性等の物性を調整
光学値等に代表されるフィルムの物性は、主にC延伸条件(延伸倍率や延伸温度)により調整される。しかし、延伸倍率は膜厚の変化を伴うため、膜厚と物性を両立するには、AまたはBの条件変更も必要となり、調整に要する時間、ロスを伴う。また、延伸温度は、温度変更そのものに時間がかかる場合が多く、同様にロスを発生させることになる。
所望の物性、膜厚を得るための条件設定において発生するロスが多く、二酸化炭素の排出量を減らすためにも、簡易に物性、膜厚を調整する方法が求められていた。
液晶表示装置等のディスプレイは用途により大サイズ化が進んでいる。一方、パソコン等に使用されるディスプレイは、サイズに大きな変更は無いため、光学フィルムも大サイズから小サイズに対応する必要が有る。一般に光学フィルムは、ロール形状で供給するので、顧客要望に沿って複数のサイズのフィルム幅を供給することが求められている。
フィルム幅を変更するには、製膜の幅を調整するか、製品フィルムをトリミングする方法が有る。
製膜の幅を調整するには、幅の異なるダイスを複数用意し、フィルム幅によって交換する方法、ディッケル構造のダイスを使用する方法、トリミング(スリッティング)により所望の幅に調整する方法等がある。
ダイスを変更するには、いったん流延を停止する必要が有る。溶融成膜法では、流延を停止すると、シリンダーやポリマーフィルター等の内部に残存した熱可塑性樹脂が熱によって劣化するため、内部を全清掃することが必要となり、長時間、設備を停止することになる。また、清掃を実施して再立ち上げした場合には、上記の条件調整を毎回行うことが必要であり、それに伴いロスが発生する。さらに、顧客に要望される全てのサイズのダイスを取り揃えることはコストもかかり現実的ではない。
ディッケル構造(アウターディッケル、インナーディッケル等)のダイスで、成膜の幅を調整する方法は、流延を停止する必要は無い。しかし、固定サイズのダイスと比較すると、ダイス内部での樹脂流量の安定性に劣り、薄膜、高速での流延に適さない。また、構造上、樹脂の滞留部が出来やすいため、ヤケ、メヤニ等の異物の発生が多く、光学フィルムの製造には適していない。
一方、出来上がりのフィルムをトリミングする方法は、トリミング(スリッター)の位置を調整するだけなので、容易に行うことができる。また、上記A〜Cを再調整する必要が無いため短時間で実施することができる。しかし、フィルム幅によりトリミングする幅が異なるため、製品サイズによって屑フィルムの発生量が異なってしまう。
原材料のロスを減らすため、トリミングにより発生した屑フィルムを粉砕のうえ、押出機にリサイクル原料(以降、返材と記載する)として戻すことによりフィルムを製造する方法が知られている。
特許文献1には粉砕した返材のフィルムの平均粒子径とバージン材料の平均粒子径をそろえることにより、製造された光学フィルムの表面物性の安定性が優れていることが記載されているが、返材比率と物性の関係については記載されていない。
特許文献2には、返材とバージン材料の比率を一定にし、返材量の変動に応じて、押出機のスクリュー速度および成形機の速度を調整して、一定品質の光学フィルムを製造する方法が記載されている。しかし、特許文献2は返材比率を一定にすることを手段としており、トリミング幅の変更などにより、返材量が変化しても返材比率を変更することは出来ない。
特許文献3はセルロースエステル光学フィルムのイエローインデックス値の変動比が特定の範囲に収まるように、返材比率を調製することにより、バージンセルロースエステルの持つ光学特性および機械特性が維持できることが記載されている。
しかし、返材は出来るだけ使い切りたいという要望に対し、上記方法ではイエローインデックスを指標に返材比率を決めているので、必ずしも返材を使い切ることは出来ない。
更に、光学フィルムの製造に当たっては、樹脂を押し出し始めてから前記光学特性や機械特性が安定するまでの間に製膜されるフィルムは、返材として使用されることが好ましいが、前記特性が安定するまでの時間は必ずしも一定ではないので、初期の予想より返材が多かったり、少なかったりして、効率的に使い切ることができなかった。
一方、近年、液晶表示装置の適用範囲が広がるとともに、耐熱性、耐湿性等の性能を併せ持った光学フィルムの提供が要望され、光学特性や物理特性の異なる樹脂を組み合わせることで、耐熱性、耐湿性等の各々の樹脂の特性を併せ持つ光学フィルムおよびその製造方法が提案されている。(特許文献4参照)
特開2006−220814号公報 特開2001−301009号公報 特開2007−9052号公報 国際公開第09/047924号パンフレット
しかし、本発明者は、複数の熱可塑性樹脂を使用する場合、以下のような問題点が有ることを見出した。
返材は一度加熱されているため、多少の熱分解を受けている。熱可塑性樹脂の熱分解速度は、構造によって個々異なっており、例えば樹脂A、樹脂Bを使用した場合、返材には、樹脂Aが95%、樹脂Bが97%残存することがある(バージン材料を100%とした場合)。返材を使用した製品は、樹脂Aが95%以上100%未満、樹脂Bが97%以上100%未満の比率で存在し、その絶対値は、返材の混合比率に依存する。特に、固有の複屈折率が正の樹脂と負の樹脂を組み合わせて使用した場合、各々の樹脂の残存比率により、無視できない程度の光学特性の変動が発生する。
返材比率を固定して製造する場合は、予め原材料中の樹脂量を、分解を見越した量に増量することで、製品中の樹脂量を合わせることはできる。しかし、上述したように、トリミングの幅によっては返材の量は変動する。
製品サイズ別に原材料を調整することは、原材料の在庫を増やすことになり、省スペース化のメリットを損なう。また、原材料を製造する際のスケールアップのメリットが無くなるため、コストも割高になる。
返材比率を固定するために、例えば余剰な返材をストックし、同種の製品の製造時に使用することも可能であるが、ストックするスペースを確保することは、同様に省スペース化のメリットを損なう。また、溶融成膜法によって発生した返材は、溶融成膜時に熱可塑性樹脂を溶融する温度(およそ200〜300℃)に加熱するので水分は含有せず、製膜直後の返材は乾燥しないで使用することができる。ところが、返材をストックする場合には、返材の吸湿を防止する設備や、ストックした返材を再乾燥する設備が必要となり、同様に溶融成膜法の利点を損なってしまう。
そこで、本発明の第1の目的は、溶融製膜によりフィルムを成型し、延伸により光学特性等の物性を調整する光学フィルムの製造方法において、簡便に目標の物性に調整するとともに、条件調整に伴い発生するロスの量を削減することである。本発明の第2の目的は、フィルム製造時に発生する返材を効率良く使用することである。また、本発明の第3の目的は、複数の樹脂を使用した場合にも、光学値等の変動を抑制し、また、変動した場合においても容易に調整する手段を提供することである。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.溶融製膜し延伸することにより光学フィルムを製造する方法において、初期返材比率R/Mを設定し、押し出し条件、製膜条件および延伸条件を設定し製造を開始したのちに、物性をモニターしながら、押し出し条件、製膜条件を一定にした状態で、物性が許容範囲に入るように、返材比率R/Mを再設定し、
前記物性が、面内方向のリターデーション値(R )または厚み方向のリターデーション値(Rth)であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
(ただし、Rは返材の質量、R は初期の返材の質量、Mはバージン材料の質量、M は初期のバージン材料の質量である。)
.前記光学フィルムが少なくとも2種の熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする前記に記載の光学フィルムの製造方法。
.前記熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を95:5〜50:50の質量比で含有することを特徴とする前記に記載の光学フィルムの製造方法。
.前記アクリル樹脂が下記一般式(1)で表され、重量平均分子量Mwが20000以上1000000以下であることを特徴とする前記に記載の光学フィルムの製造方法。
一般式(1)
−(MMA)−(X)−(Y)
(ただし、MMAはメチルメタクリレートを、Xはアミド基を少なくとも一種有するMMAと共重合可能なモノマー単位を、YはMMA、Xと共重合可能なモノマー単位を表し、p、q、rはモル%であり、55≦p≦99、1≦q≦50、p+q+r=100である。)
.前記返材比率R/Mを再設定し、前記光学フィルムの製造を開始した後、更に、前記物性が前記許容範囲の上限と下限を超えない範囲で、R/Mを調整することを特徴とする前記1〜のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
本発明により、溶融製膜によりフィルムを成型し、延伸により光学特性等の物性を調整する光学フィルムの製造方法において、目標の物性に調整するとともに、条件調整に伴い発生するロスの量を削減することができた。また、複数の樹脂を使用した場合にも、物性の変動を抑制し、また、変動した場合においても容易に調整する手段を提供できた。
返材比率と物性値の関係を示すグラフ 光学フィルムの製造装置 実施例1のR/Mとリターデーション値の関係
本発明では、製造に伴うロスを返材として最大限バージン材料に混合して再利用することにより、ロスを大幅に減らすことができる。ここで、バージン材料は、溶融製膜による加熱を受けていない原材料であり、返材は、該バージン材料が溶融製膜による加熱を受け、該バージン材料と混合して再度溶融製膜用に用いられる材料である。
Rを混合される返材の質量、Mを混合されるバージン材料の質量とし、両者の混合比率を返材比率R/Mで表わす。
前記ロスとしては、1)製造開始時や条件出し等で発生する所望の特性を備えていないフィルム、2)ネックイン等により発生する両端部の膜厚が厚い部分、3)原反を規定幅にトリミング(スリッティング)した際に生じる端部等が挙げられる。また、条件調整を開始するまでに、前工程に達しているフィルムもロスとして返材に使用する。
次に、本発明において、物性調整する方法を以下に説明する。一般的に、工業製品を製造する場合には、目標(許容範囲)の物性は、中心値、および上限と下限により設定する。
(初期返材比率R/M
溶融製膜を開始する際に、まず、予測されるロスを全て使用するという条件で、予定生産量から、初期返材比率R/Mを設定することが好ましい。ここで、Rは初期の混合される返材の質量であり、Mは初期の混合されるバージン材料の質量である。
前記初期返材比率で生産される光学フィルムの物性は、押出条件(押出温度、押出速度など)、製膜条件(Tダイの幅、成形機の搬送速度など)および延伸条件(延伸温度、延伸倍率など)を調整することにより、目標の物性に近づけることができ、特に延伸条件が物性に大きく影響するので、延伸条件を調整することが好ましい。延伸条件のうち延伸倍率を変化させると、膜厚が変化するので、押出条件、製膜条件を調整して、所定の膜厚に戻す必要がある。
(物性のモニター)
光学フィルムの物性としては、光学特性と機械特性の物性があり、機械特性としてはフィルム膜厚、弾性率、熱収縮率などが挙げられ、光学的特性としては、リターデーション値、イエローインデックス、ヘイズ、透過率、故障計等の打点等が挙げられる。
これらの中でも、特に光学特性が重要であり、光学特性の中でも、リターデーション値ReおよびRthが液晶表示装置に用いられたときに性能に大きく影響するために重要である。
上記物性を測定する方法としては、オフラインにより測定(生産されている光学フィルムを抜き取り測定)するか、オンラインにより測定(生産工程に測定器を設置して、光学フィルムが生産で流れている状態で測定)する方法がある。
前記測定器は測定する物性により目的に合った装置を用いればよい。例えば膜厚であれば、レーザー膜厚計等を用いればよく、リターデーション値であれば自動複屈折率計を用いて測定すればよい。自動複屈折率計としては、例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmでリターデーション値を求めることが出来る。
前記リターデーション値は、面内方向のリターデーション値(Re)、厚み方向のリターデーション値(Rth)を使用することができる。
本発明に係る光学フィルムの面内リターデーション値(Re)および厚さ方向のリターデーション値(Rth)は、以下の式によって求めることが出来る。
Re=(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
ここで、dはフィルムの厚み(nm)、nxはフィルムの面内の最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率ともいう)であり、nyはフィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率であり、nzは厚み方向におけるフィルムの屈折率である。
また、Rthの変動や分布の幅は±10nm未満であることが好ましく、より好ましくは±5nm未満である。更に好ましくは±1nm未満であることが好ましく、最も好ましくはRthの変動がないことである。
また、遅相軸はフィルムの幅手方向±1°若しくは長手方向±1°の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは幅手方向または長手方向に対してに±0.7°の範囲内、更に好ましくは幅手方向または長手方向に対して±0.5°の範囲内である。このような範囲とすることで、得られる液晶ディスプレイのコントラストを高めることができる。
また、これ以外にも、フィルム膜厚、光学的な透過率、故障計等の打点数や、工程で監視する物性(例えば、フィルム搬送張力、フィードローラーのトルク、巻取り張力、延伸機での張力等)を監視項目に併用することができる。
(返材比率R/Mの調製)
返材比率R/Mの調製は、まず目標の物性を達成するために行い、R/Mを変化させて得られた光学フィルムの物性をモニターし、得られたR/Mと物性の関係から、目標の物性を達成する返材比率R/Mを設定することが出来る。
図1は返材比率と物性の関係の例を示すグラフである。この関係は返材比率を変化させて、物性をモニター(測定)することにより知ることができる。
初期返材比率R/Mで生産した光学フィルムの物性が、物性の許容範囲の下限より小さかった場合、または上限よりも高かった場合には、物性を目標値(中心値)に近づけるために、R/MをRc/Mc(図1の返材比率と物性の関係から求めた、物性の目標値を得る返材比率)とすることで、簡易に物性を調整することができる。
特に、複数の熱可塑性樹脂を使用し、かつ、該樹脂の熱分解する速度が異なる場合には、光学フィルムの重要な物性の一つであるリターデーション値(Re、Rth)は、R/Mに対して直線的な関係があることが、本発明者による実験で確認できており、容易に、かつ、精密に物性を調整することが可能である。
また、本発明のもう一つの目的は返材を極力、使い切ることである。
光学フィルムの物性の目標は、物性の目標値の両側に許容幅を有する。該許容幅は目標値より大きい側と小さい側で異なっても良い。従って、前記物性の許容範囲は目標値と前記大きい側の許容幅の和を上限とし、目標値から前記小さい側の許容幅を差し引いた値を下限とする。ある程度、定常状態で製造を続けた場合、生産終了時に残存する返材量を推定することができる。この際、図1のグラフを使用し、許容範囲の上限を超えない程度にR/Mを調整することにより、残存する返材量を極小化することが可能になる。
本発明において、返材比率(R/M)は、0.05以上0.4以下であることが好ましい。返材比率が0.05以上であれば本発明の効果が高く、また0.4以下であれば、光学フィルムとしての性能に高く保つことが出来る。
返材は、例えば、溶融製膜を開始した当初に有る程度返材としてストックし、押出し条件の調整時に使用することができる。
本発明において、返材比率R/Mは、製造に使用するダイス幅、延伸倍率、スリット幅等から製造のロスの発生量を予測し、また、過去の生産時の経験から条件調整でのロスの発生量を予測し、これらのロス量の和と、総生産量から計算することができる。計算により効率良く返材を使い切ることが可能となる。
本発明の熱可塑性樹脂の成形方法は、少なくとも2種類の熱可塑性樹脂を溶融押出し、引き続き延伸する場合特に効果を発揮する。
本発明で用いることができる光学フィルムの製造装置の一例を図2に示す。
溶融押出し機1としては、特に限定はなく、熱可塑性樹脂の押出成形に使用される溶融押出し機を使用することが可能である。例えば単軸スクリュー型押出し機、同方向回転2軸スクリュー型押出し機、異方向回転2軸スクリュー型押出し機、タンデム型押出し機等が代表例として挙げられる。
押出機1から押し出された熱可塑性樹脂は、金属メッシュを挟んだブレーカープレート2を通り、ギヤポンプ3により加圧されポリマーフィルター4を通りTダイ5に送られる。Tダイ5から膜状に押し出された熱可塑性樹脂は成形機6により冷却されフィルム状に成形固化される。成形されたフィルムはスリッター7で所定の幅に断裁され、膜厚計9、フィードローラー10、アキュームレーター11、フィードローラー12、を通過し、縦延伸機14により長さ方向に延伸した後、スリッター21により所定の幅に断裁される。更に、フィードローラー23、アキュームレーター24、フィードローラー25、を通り、横延伸機27により幅方向に延伸され、スリッター31により所定の幅に断裁され、エンボス加工機33によりナーリング加工され、フィードローラー34、アキュームレーター35、フィードローラー36、膜厚計37、故障計38を通り、ワインダー39により巻き取られ光学フィルムと成る。
途中のスリッター7、21、31で断裁された屑はそれぞれ、粉砕機8、22、32により粉砕され返材となる。また、フィードローラー12、25、オンライン位相計41を通過し、目的の膜厚および物性が得られていない初期の製膜フィルムを粉砕するための粉砕機13、26、40が備えられており、前記初期の製膜フィルムは該粉砕機に導かれる。
上記により粉砕された製膜フィルムは、返材として、図示されていない返材用ホッパーに送られ、更に図示されていない混合用ホッパーに送られて、バージン材料と混合され、押出機1に送られる。
本発明に使用するポリマーフィルターは特に限定はなく、例えばスクリーンメッシュと呼ばれるステンレス等の合金からなる金網の単層体、ステンレス等の合金からなる金網を積層し、各層を焼結した焼結金属フィルター、ステンレス鋼の微細繊維を複雑に編み込んだ金網にて繊維間の接点を焼結した焼結金属ファイバフィルター、金属粉末を焼結した焼結金属フィルター等が挙げられ、これらの中で特に焼結金属ファイバフィルターを使用することが好ましい。
Tダイとしては、コートハンガータイプとストレートマニフォールドタイプとに分別されるが、本発明では特に限定はなく、使用する樹脂により適宜選択することが可能となっている。又、単層用でも多層用であっても構わない。
製膜機は、Tダイで膜状に押出された樹脂を冷却ロールに押付ける押付けロールと、冷却ロールにより冷却固化された未延伸フィルムを搬送する複数の搬送ロールとを有している。
縦延伸機14は冷却ロールから剥離され、得られた延伸前のフィルムを搬送方向に延伸する。横延伸機27は横方向(幅方向)に延伸する延伸装置である。例えば、縦延伸の場合は複数のヒートロール15〜20及び/又は赤外線ヒーター42等の加熱装置を有する縦延伸装置により熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgからガラス転移温度Tg+100℃の範囲内に加熱し、一段又は多段縦延伸することが好ましい。横延伸の場合は、横延伸機としてのテンター延伸装置で延伸することが好ましい。
横延伸機は、延伸の前の予熱ゾーン28、テンターによる延伸ゾーン29、延伸されたフィルムの歪を緩和するための緩和ゾーン30を有することが好ましい。
横延伸機に使用するテンターは特に限定はなく、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。
延伸部で必要とする幅、厚さに延伸した後、テンター工程内の緩和ゾーンに搬送され延伸した状態が固定される。
次に図2に示す溶融流延方式の光学フィルムの製造装置を使用し、フィルムを成形する時の一般的条件を示す。冷却ロールでの引取り速度は、例えばフィルムが光学用途に使用するフィルムの場合は、分子配向性、複屈折性を考慮し5m/分から100m/分で行うことが好ましい。
溶融押出し機での熱可塑性樹脂の溶融温度は使用する熱可塑性樹脂により適宜選択すればよく、その中でも溶融樹脂の熱分解によるフィルム外観性の悪化を避けるため、樹脂を溶融させた後Tダイから吐出されるまでの間を300℃以下に維持することが好ましく、290℃以下であることが特に好ましい。
溶融押出し機は、使用する熱可塑性樹脂、添加物等に水等の揮発性成分が含まれていると、押出時にフィルム外観性が悪化するため、揮発性成分を除去するための真空ベント、ホッパドライヤー等が具備されたものが適宜使用される。
溶融押出し機のシリンダー径、L/D、圧縮比、スクリューデザインは一般的に生産速度、フィルムの寸法などに応じて最適化すればよく、特に光学用途フィルムの製造の際には、吐出速度を安定化させると共に、摩擦発熱の抑制や樹脂温度を分解温度以下に維持することを目的に最適化すればよい。
溶融押出し機のスクリュー回転数、Tダイからの吐出量は、製造するフィルムの厚みや引取り速度等に応じて適宜選択することが可能である。又、溶融樹脂の酸化による熱分解や黄変を抑制するため、ホッパー、押出し機シリンダー内部等を窒素、アルゴン等の不活性ガスでパージ或いは真空にすることが好ましい。
冷却ロールの温度設定は、得られるフィルムの外観性や特性に与える影響の大きい重要な製造条件の1つであり、Tダイから流下するフィルム状の溶融樹脂の冷却ロールへの密着性及び離型性のバランスを考慮して最適化されるものであり、表面温度を熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して−40℃から+20℃とすることが好ましく、特に−35℃から+10℃とすることが好ましい。
溶融押出し時の溶融物の温度は、通常150℃から300℃の範囲、好ましくは180℃から270℃、更に好ましくは200℃から250℃の範囲である。溶融物の温度は、接触式温度計を使用して測定した値である。
本発明では、A押出し条件(押出機〜Tダイ)、B製膜条件(Tダイ〜成形機)、C延伸条件の順番に条件を調整していくことが好ましい。条件を調整中のフィルムは、各々の工程に設置した粉砕機において粉砕処理し、返材として回収する。本発明に使用する粉砕機は、フィルムを充分な速度で粉砕する能力があれば、特に方式に限定はない。また、得られた返材(粉砕物)については、乾燥空気を使用した空送ラインや、ベルトコンベア等で押出し機のホッパー、秤量機まで移動させることが好ましい。
本発明では、上記A〜Cの間および任意の箇所に、フィルムアキュームレーターを設置し、フィルムの速度差を吸収させながら、フィルムをスプライスする。本発明のスプライスは、手動で行っても、市販のオートスプライサーを使用してもよいが、返材を有効に再利用するためには、粘着テープ等を使用しない熱融着タイプのスプライサーを使用することが好ましい。
本発明において、ネックインによって発生するフィルム両端部の厚膜部の除去、横延伸機等の入口幅へのフィルム幅調整、製品サイズへのトリミング等において、フィルムをスリッティングする。ロールカッター、固定刃を使用したスリッター、レーザー等を使用したスリッター等を用いることができる。また、フィルム破断を防止するため、スリッター直前、もしくはスリッター中にフィルムを加熱してもよい。スリットにて切り取られたフィルムは、粉砕機に導入する。
(熱可塑性樹脂)
本発明では、少なくとも2種の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
本発明において使用できる熱可塑性樹脂として、セルロースエステル、アクリル、環状オレフィン樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。これらのうち本発明はアクリル樹脂とセルロース樹脂の組合せを好適に適用することができる。
<アクリル樹脂>
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。
前記アクリル樹脂は、下記一般式(1)で表され、重量平均分子量Mwが20000以上1000000以下であることが好ましい。
−(MMA)p−(X)q−(Y)r−
MMAはメチルメタクリレートを、Xはアミド基を少なくとも一つ有しMMAと共重合可能なモノマー単位を、YはMMA、Xと共重合可能なモノマー単位を表す。p、q、rはモル%であり、50≦p≦99、1≦q≦50、p+q+r=100である。
Xはアミド基を少なくとも一つ有しMMAと共重合可能なモノマー単位であり、Xは一種でも2種以上でもよく、1モノマー単位中に複数の官能基を有していてもよい。
Xの具体的なモノマーとしては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルピロリジン、アクリロイルピペリジン、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、メタクリロイルピロリジン、メタクリロイルピペリジン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン等が挙げられる。
好ましくは、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、が挙げられる。
これらのモノマーは市販のものをそのまま使用することができる。
qは、1≦q≦50であり、モノマーの性質により適宜選択されるが、好ましくは5≦q≦30である。また、Xは複数のモノマーであってもよい。
前記アクリル樹脂におけるYはMMA、Xと共重合可能なモノマー単位を表す。
Yとしては、MMA以外のアクリルモノマー、メタクリルモノマー、オレフィン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等特許文献1、2、3に記載のモノマーが挙げられる。Yは2種以上であってもよい。
Yは必要に応じて使用できるものであり、使用しないことが最も好ましい。
前記アクリル樹脂は、特にセルロースエステル樹脂と相溶した際の透明性の改善の観点で、重量平均分子量(Mw)が20000以上であることが好ましい。
前記アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000〜1000000の範囲内であることが更に好ましく、50000〜600000の範囲内であることが特に好ましく、100000〜400000の範囲であることが最も好ましい。
前記アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限値は、製造上の観点から1000000以下とされることが好ましい形態である。
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明におけるアクリル樹脂の製造方法としては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。
重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
前記セルロースエステル樹脂は、特に脆性の改善やアクリル樹脂と相溶させたときに透明性の観点から、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度は、2.0〜3.0であることが好ましい。
即ち、前記セルロースエステル樹脂は炭素数が3〜7のアシル基により置換されたセルロースエステル樹脂であることが好ましい。具体的には、プロピオニル、ブチリル等が好ましく用いられるが、特にプロピオニル基が好ましく用いられる。
セルロースエステル樹脂の、アシル基の総置換度が2.0を上回る場合、即ち、セルロースエステル分子の2,3,6位の水酸基の残度が1.0を下回る場合には、アクリル樹脂(A)と十分に相溶し光学フィルムとして用いる場合にヘーズが小さい。
また、アシル基の総置換度が2.0以上であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2を上回る場合は、更に高い相溶性が得られる。
例えば、アシル基の総置換度が2.0以上の場合、炭素数3のアシル基、即ちアセチル基の置換度が低く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2を上回る場合は、相溶性が向上しヘーズが低下する。
また、アシル基の総置換度が2.0以上の場合、炭素数8以上のアシル基の置換度が低く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2を上回る場合も、強靭で、所望の特性が得られる。
前記セルロースエステル樹脂のアシル置換度は、総置換度(T)が2.0〜3.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であることが好ましく、炭素数が3〜7以外のアシル基、即ち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。
また、セルロースエステル樹脂のアシル基の総置換度(T)は、2.5〜3.0の範囲であることが更に好ましい。
前記セルロースエステル樹脂としては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、即ち、炭素原子数3または4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
前記セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル樹脂との相溶性、脆性の改善の観点から75000以上であり、75000〜300000の範囲であることが好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が75000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が落ちてくる。また、300000を超える場合は、粘度が高くなり製膜が難しくなる。本発明では2種以上のセルロース樹脂を混合して用いることもできる。
前記セルロースエステル樹脂の重量平均分子量は、上記ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる。
<その他の添加剤>
本発明の光学フィルムには、リターデーションを制御することを目的とした位相差制御剤、フィルムに加工性を付与する可塑剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)等の添加剤を含有させることが好ましい。
<位相差制御剤>
〈グリコールと二塩基酸のポリエステルポリオール〉
本発明において使用され得るポリエステルポリオールとしては、炭素数の平均が2〜3.5であるグリコールと炭素数の平均が4〜5.5である二塩基酸との脱水縮合反応、又は該グリコールと炭素数の平均が4〜5.5である無水二塩基酸の付加及び脱水縮合反応による常法により製造されるものであることが好ましい。
〈芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールのポリエステル〉
本発明の位相差制御剤として、下記一般式(I)で表される芳香族末端ポリエステルを用いることができる。
一般式(I) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(I)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステルと同様の反応により得られる。
本発明の芳香族末端ポリエステルの具体的な化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0183)〜(0186)を挙げることができる。
本発明の芳香族末端ポリエステルの含有量は、光学フィルム中に0〜20質量%含有することが好ましく、特に1〜11質量%含有することが好ましい。
〈多価アルコールエステル系化合物〉
本発明の光学フィルムには、多価アルコールエステル系化合物を含有させることができる。
多価アルコールエステル系化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0218)〜(0170)を挙げることができる。
〈糖エステル化合物〉
本発明の糖エステル化合物しては、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物を使用することが好ましい。
本発明に用いられる糖エステル化合物としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
本発明に用いられる糖エステル化合物は、糖化合物の有する水酸基の一部または全部がエステル化されているものまたはその混合物である。
本発明の糖エステル化合物の具体的化合物としては、特開2010−32655号明細書段落(0060)〜(0070)を挙げることができる。
〈その他の位相差制御剤〉
本発明の上記位相差制御剤以外としては、分子内にビスフェノールAを含有しているものも好ましい。ビスフェノールAの両端にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した化合物などを用いることができる。
例えばニューポールBP−2P、BP−3P、BP−23P、BP−5PなどのBPシリーズ、BPE−20(F)、BPE−20NK、BPE−20T、BPE−40、BPE−60、BPE−100、BPE−180などのBPEシリーズ(三洋化成(株)製)などやアデカポリエーテルBPX−11、BPX−33、BPX−55などのBPXシリーズ((株)アデカ製)がある。
ジアリルビスフェノールA、ジメタリルビスフェノールAや、ビスフェノールAを臭素などで置換したテトラブロモビスフェーノールAやこれを重合したオリゴマーやポリマー、ジフェニルフォスフェイトなどで置換したビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェイト)なども用いることができる。
ビスフェノールAを重合したポリカーボネートやビスフェノールAをテレフタル酸などの二塩基酸と重合したポリアリレート、エポキシを含有するモノマーと重合したエポキシオリゴマーやポリマーなども用いることができる。
ビスフェノールAとスチレンやスチレンアクリルなどをグラフト重合させたモディパーCL130DやL440−Gなども用いることができる。
またトリアジン構造をもつものも好ましい。特開2001−166144号公報等に記載の化合物を使用することができる。
<可塑剤>
可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等を用いることができる。
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸およびグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が可塑化効果が大きい。
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000mPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
可塑剤はアクリル樹脂を含有する組成物100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。またこれらの可塑剤は単独或いは2種以上混合して用いることもできる。
〈酸化防止剤〉
本発明では、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
例えば、BASFジャパン株式会社から、“IrgafosXP40”、“IrgafosXP60”という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、BASFジャパン株式会社、“Irganox1076”、“Irganox1010”、(株)ADEKA“アデカスタブAO−50”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”および“ADK STAB 3010”、BASFジャパン株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、BASFジャパン株式会社から、“Tinuvin144”および“Tinuvin770”、株式会社ADEKAから“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“Sumilizer TPL−R”および“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から、“Sumilizer GM”および“Sumilizer GS”という商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
〈着色剤〉
本発明においては、着色剤を使用することが好ましい。着色剤と言うのは染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。
着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
〈マット剤〉
本発明では、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤を添加することが好ましい。
本発明で用いられるマット剤としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよい。これらのマット剤は、単独でも二種以上併用しても使用できる。
粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。
これらの中でも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズが小さいこと)に優れる二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。
粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80nmから180nmの範囲であることが特に好ましい。
なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
〈粘度低下剤〉
本発明において、溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加することができる。
水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、すなわち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。
これらは、セルロース樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロース樹脂組成物の溶融温度を低下することができる、または同じ溶融温度においてセルロース樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロース樹脂組成物の溶融粘度を低下することができる。
(実施例1)
(ペレット化)
下記の処方を、ヘンシェルミキサーを用いて、2300r/minで60秒間混合した。引き続き、ベント付き、L/D=35(押出し機のスクリューの有効長Lと、半径Dの比率)の2軸押出し機において、ベントで真空吸引しながらストランド用ダイを介して250℃で、直径3mmのストランド形状で押出し、50℃の水で1分間洗浄し、水切りをした後、長さ2mmから3mmに断裁しペレットを成形した。
(処方)
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、商品名:CAP−482−20) 35質量部
アクリル共重合体(MMA/ACMO:70/30、平均分子量10万) 65質量部
安定剤IRGANOX1010(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
安定剤PEP−36(ADEKA(株)製) 0.075質量部
安定剤Sumilizer(GS:住友化学(株)製) 0.48質量部
ただし、ACMO:アクリロイルモルホリン
前記アクリル共重合体はラジカル重合開始剤として過酸化ベンゾイルを用いて、常法により合成された。
(目標の設定と初期返材比率の設定)
目標の物性値であるリターデーション値を以下のように設定した。
Re:0±1.5nm(目標値:0nm、許容幅±1.5nm)
Rth:0±4nm(目標値:0nm、許容幅±4nm)
製品のサイズ:膜厚25um、幅2300mm
初期返材比率は製膜の安定までのロスおよびスリット屑の量の予測から、R/M=0.3(30%ともいう)と設定した。
上記の初期返材比率R/Mにおいて、上記の製品サイズおよび目標値に近づけるように、押出条件、製膜条件および延伸条件を予測して設定した。
(ペレットの乾燥)
上記で得られたペレットを90℃の熱風乾燥機にて含水率が500ppm以下になるまで乾燥した。バージン材料用のホッパー、秤量機、混合用ホッパーを介し(全て図示せず)、図2に記載の押出し機1に供給した。
(押出し条件の調整)
上記で乾燥したペレットを、押出機1のシリンダー後尾から乾燥窒素を供給しながら、圧縮比4:1の一軸押出しスクリュー(図示せず)、金属メッシュを挟んだブレーカープレート2、ギヤポンプ3、リーフディスクフィルター4、および、ダイス幅1500mm、リップ間隔1mmのTダイ5を経て、成形機6を後退させた状態で、溶融温度250℃で押出した。
押出した樹脂を垂れ流しながら、Tダイ5の出口を目視で観察し、異物が無いことを確認後、垂れ流された樹脂を3連ロール式の成型機6をダイス5の下に移動してから通紙して、冷却しながら製膜し、スリッター7、膜厚計9に通紙したのち、予めスリッター7からフィードローラー12の間に通紙しておいたリーダーフィルムに連結して、フィードローラー12まで通紙した。連結部がフィードローラー12を通過した時点で、製膜フィルムを粉砕機13に導入して粉砕し、返材として、返材用ホッパーに移送した。
返材用ホッパーに返材が60kg以上たまった段階で、上記バージン材料用の秤量機、および返材用の秤量機で、R/Mが0.3の比率になるように秤量し、混合用ホッパーに供給を開始した。
同時に、前記シリンダーの出口、ギヤポンプの入口、出口、リーフディスクフィルター4の入口、出口、Tダイ5の入口の樹脂圧、樹脂温度の監視を開始した。また、粉砕機13の粉砕量を秤量することで樹脂の流出量(以降Q値)を測定した。
また、スリッター7において、製膜フィルムを1300mmになるように両端をトリミングし、切り取った両端のフィルムは粉砕機8に投入して、上記同、返材用ホッパーに移送した。
Q値(時間当たりの押し出し量)を200kg/Hrになるように、ギヤポンプの回転数、スクリュー回転数を調節し、また、シリンダーおよび各部ヒーターの出力を調整して樹脂温度を安定化させた。
(製膜条件の調整)
成形機ロールの温度および回転数を、製膜フィルムの状態を確認しながら微調整した。また、インライン膜厚計9の情報に基づき、Tダイ5のダイスリップの調整ボルト、および、ダイス付属のヒートボルトを調整することで、製膜フィルムの平均膜厚を110μm、膜厚変動幅を±2μmになるように調整した。なお、この時点での製膜フィルムの搬送速度(以下CSと称する)は50m/分であった。
(延伸条件の調整)
縦延伸機14において、ヒートローラー15、16、17、18、19、20の温度を、入口から順番に60℃、90℃、120℃、120℃、90、60℃に温調した状態で、縦延伸機14、スリッター21、フィードローラー23、アキュームレーター24、フィードローラー25の間にリーダーフィルムを通紙した。
通紙したリーダーフィルムの後尾と、粉砕機13に導入していた製膜フィルムを接続し、アキュームレーター11において速度差を吸収しながらフィードローラー25まで製膜フィルムを通紙した。また、リーダーフィルムの後尾がフィードローラー25を通過した時点で、製膜フィルムを粉砕機26に導き、上記同様に粉砕して返材ホッパーに空送を開始した。また、製膜フィルムの通紙とほぼ同時に、縦延伸機14の各ヒートローラーの回転数を微調整することで製膜フィルムの弛み、シワを無くし、また、赤外ヒーター21の出力を調整しながら、第6、7のヒートローラー以降の搬送速度を100m/分まで徐々に増速することで、製膜フィルムをMD方向に2倍に延伸した。
またスリッター21を稼働し、フィルム幅1150mmになるようにフィルムの両端のトリミングを開始して、発生した屑フィルムは粉砕機22に導き、発生した返材は上記同、返材用ホッパーに移送した。
クリップ型のテンター(横延伸機)27において、余熱ゾーン28、延伸ゾーン29、緩和ゾーン30を120℃、140℃、100℃に温調し、余熱ゾーンの幅を1150mmに調整し、延伸ゾーンと緩和ゾーンの幅は、その1.05倍に調整した。
また、スリッター31、エンボス加工機33、フィードローラー34、アキュームレーター35、フィードローラー36、インライン膜厚計37、故障計38およびオンライン位相計41までリーダーを順に通紙した。
アキュームレーター24で速度差を吸収しながら、粉砕機26に導入していた製膜フィルムを、横延伸機27に導入し、横延伸機27を出た段階で、予めスリッター31から2軸ワインダー39まで通紙しておいたリーダーフィルムに連結し、そのまま2軸ワインダー39まで通紙した。
引き続き、横延伸機27の延伸ゾーン29、緩和ゾーン30の幅を下流側から広げてゆき、横延伸機27出口における製膜フィルムの幅を、横延伸機27入口前のフィルムの幅の2.2倍まで広げた。幅が2.2倍に成る前の製膜フィルムは粉砕機40に導いた。幅が2.2倍に広がった時点で、スリッター31を稼働し、フィルム幅を2300mmにトリミングした。トリミングした屑フィルムは粉砕機32に導き、上記同様に返材ホッパーに空送を開始した。
膜厚25um、幅2300mm、両端にエンボス加工済みのフィルムが得られた。
(フィルム物性の測定)
上記フィルムの面内リターデーション値(Re)および厚さ方向のリターデーション値(Rth)を、オンライン位相差計41を用いて、波長590nmで求めた。
初期返材比率(R0/M0=0.3)におけるリターデーション値は、Re=1.8、Rth=−2.2であり、Reが許容範囲を超えていた。
また、膜厚計37において、製膜フィルムの膜厚は25μmであった。
(物性の調整)
上記のフィルムにおいて、延伸倍率(MD、TD)を変更せずに、R/Mを表1のように変化してリターデーションを測定した。
(1)R/Mを0.15から0.35まで0.05ずつ変化させて測定し、(2)物性値の目標を達成するR/Mに設定して、(3)上記の押出、製膜、延伸を行い、リターデーションが安定するのに要するまでの(1)、(2)、(3)の合計時間を計測したが、およそ20分であった。
表1に上記のようにR/Mを変化させたときのリターデーション値を記した。
また、表1を元に作成したグラフを図3に示す。
Figure 0005549548
表1および図3より、物性値の目標、Re=0(許容幅:±2nm)、Rth=0(許容幅:±5nm)に対して、最も近い物性値を示す返材比率がR/M=0.25で、目標(目標値を中心とした許容幅の範囲内)に入るのは、R/M=0.2〜0.29であることが判る。
本発明の実施例では、R/Mを4回変化(初期立上条件+変更4回)させることによって、物性が目標値(中心値)となるR/M、および、物性が目標の範囲に入るR/Mの上下限までを確認することができる。これに要する時間は、80分(20分×4)であった。
(比較例1)
実施例1において、R/Mを変更せずに、横延伸機の延伸ゾーンの温度を変更することで物性を調整した。
温度を5℃あげることで調整することができたが、横延伸機の延伸ゾーンの温度調整に、5℃変更するのに30分以上かかり、かつ、温度が安定化するのに更に30分程度かかったため、温度を1回変化させるために要した時間は合計1時間であった。温度を下げるためには上げるとき以上の時間を要するので、最初の条件から、4点温度を変化させるのに要する時間は4時間(1時間×4)以上である。
(比較例2)
実施例1−3において、横延伸の倍率で物性を調整した。
倍率をx2.0倍に変更することで調整できたが、膜厚も3um大きくなった。
これを調整するために、縦延伸機の延伸倍率を2.4倍に変更したが、縦延伸機のヒートローラー上でフィルムにシワが入り、このシワを解消するために加熱ローラーのドロー比を調整するのに30分以上かかった。最初の条件から、延伸倍率を4点変化させるのに要する時間は2時間(30分×4)以上である。
以上より、R/Mの比率変更によって、膜厚を変動せずに物性(リターデーション)を調整でき、条件を変更するのに要する時間は、本発明のR/Mを用いるのが最も短いことが判る。
1 押出し機
2 ブレーカープレート
3 ギヤポンプ
4 ポリマーフィルター
5 Tダイ
6 成型機
7 スリッター
8 粉砕機
9 膜厚計
10 フィードローラー
11 アキュームレーター
12 フィードローラー
13 粉砕機
14 縦延伸機
15〜20ヒートローラー
21 スリッター
22 粉砕機
23 フィードローラー
24 アキュームレーター
25 フィードローラー
26 粉砕機
27 横延伸機
28 予熱ゾーン
29 延伸ゾーン
30 緩和ゾーン
31 スリッター
32 粉砕機
33 エンボス加工機
34 フィードローラー
35 アキュームレーター
36 フィードローラー
37 膜厚計
38 故障計
39 ワインダー
40 粉砕機
41 オンライン位相差計
42 赤外線ヒーター

Claims (5)

  1. 溶融製膜し延伸することにより光学フィルムを製造する方法において、初期返材比率R/Mを設定し、押し出し条件、製膜条件および延伸条件を設定し製造を開始したのちに、物性をモニターしながら、押し出し条件、製膜条件を一定にした状態で、物性が許容範囲に入るように、返材比率R/Mを再設定し、
    前記物性が、面内方向のリターデーション値(R )または厚み方向のリターデーション値(Rth)であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
    (ただし、Rは返材の質量、Rは初期の返材の質量、Mはバージン材料の質量、Mは初期のバージン材料の質量である。)
  2. 前記光学フィルムが少なくとも2種の熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を95:5〜50:50の質量比で含有することを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記アクリル樹脂が下記一般式(1)で表され、重量平均分子量Mwが20000以上1000000以下であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
    一般式(1)
    −(MMA)−(X)−(Y)
    (ただし、MMAはメチルメタクリレートを、Xはアミド基を少なくとも一種有するMMAと共重合可能なモノマー単位を、YはMMA、Xと共重合可能なモノマー単位を表し、p、q、rはモル%であり、55≦p≦99、1≦q≦50、p+q+r=100である。)
  5. 前記返材比率R/Mを再設定し、前記光学フィルムの製造を開始した後、更に、前記物性が前記許容範囲の上限と下限を超えない範囲で、R/Mを調整することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
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