JP5348832B2 - 光学フィルムおよびその製造方法、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルム、並びに液晶表示装置 - Google Patents
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Description
[2] セルロースアシレートと、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルを前記セルロースアシレートに対して1質量%〜30質量%含有し、弾性率変動が0.5%〜5%であり、残留溶剤量が0.01質量%以下である光学フィルム。
[3] 光学フィルムの厚みが20〜100μmであることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルム。
[4] 劣化防止剤が0.01〜10質量%以下添加されていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[5] 前記セルロースアシレートが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(1): 2.0≦X+Y<3.0
式(2): 0≦X<2.5
(上式において、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度であり、Yはセルロースの水酸基に対するプロピオニル基とブチリル基の置換度の総和である。)
[6] 前記セルロースアシレートが下記式(3)および(4)を満足することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(3): 2.0≦X+Y<2.59
式(4): 0.3≦X<2.1
(上式において、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度であり、Yはセルロースの水酸基に対するプロピオニル基とブチリル基の置換度の総和である。)
[7] 面内方向のレタデーション(Re)が30〜200nmであり、厚み方向のレタデーション(Rth)が70〜400nmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[9] 前記押出し機内において前記メルトに10℃〜70℃の温度分布を与えることを特徴とする[8]に記載の光学フィルムの製造方法。
[10] 前記メルトが接触する前記キャスティングロールの表面に0.1℃〜5℃の温度差を与えることを特徴とする[8]または[9]に記載の光学フィルムの製造方法。
[11] 前記製膜後に、フィルムを少なくとも1軸に1%〜200%延伸する工程を含むことを特徴とする[8]〜[10]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[12] [8]〜[10]のいずれか一項に記載の製造方法により製造される光学フィルム。
[14] [1]〜[7]または[12]のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いた光学補償フィルム。
[15] [1]〜[7]または[12]のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いた反射防止フィルム。
[16] [1]〜[7]または[12]のいずれか一項に記載の光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムの少なくとも一つを用いた液晶表示装置。
本発明者らが、従来技術で問題となっていた上記微細擦り傷や皺の発生原因を鋭意解析したところ、これらの欠陥は溶融製膜機のキャスティングロール上で発生することが解った。溶融製膜法では、樹脂を混練機で加熱溶融したもの(メルト)を、ギアポンプ、フィルターなどを通した後、T−ダイからキャスティングロール上に押し出し、冷却固化して剥離することによりフィルムに成形している。このときキャスティングロールは、樹脂のガラス転移温度(Tg)の近傍に設定する。この温度がTgより高すぎると、キャスティングロール上にフィルムが粘着して剥離することができない。一方、この温度がTgより低すぎると、キャスティングロール上で固化したフィルムが急激に熱収縮し、大きな厚みむらが発生する。このためキャスティングロールの温度はTg近傍[具体的には(Tg+10℃)〜(Tg−20℃)の範囲内の温度]にするのが好ましいが、この温度域であっても、フィルムがキャスティングロールに弱く粘着しているため、キャスティングロールから搬送張力でフィルムを剥離しようとする時に、微細な傷や皺が発生してしまう。フィルムの厚みが薄いほどキャスティングロールに粘着し易いため、このような微細な傷や皺はフィルムが薄いほど発生し易い。
弾性率変動が1%未満であると、フィルムが全面キャスティングロールに接触し、摩擦で軋んで動けない状態で搬送張力で引っ張られると、フィルムはキャスティングロール上でスリップして微細傷が付いたり、引っ張られることでツレ(波状の凹凸)が発生し、これが折れて皺となったりしまう。一方、弾性率変動が5%より大きいと、フィルム内の収縮応力差によりむしろ強いツレが発生し、好ましくない。
このように下記(1)と下記(3)を組み合わせることによって、所望の弾性率変動を有し、微細な傷や皺が少ない光学フィルムを得ることができるが、それだけでなく得られる光学フィルムに優れた裁断性も付与される。このような優れた裁断性は、下記(1)、(2)、(3)単独では発現しない。セルロースアシレートは単体では脆性が高くて裁断時にひびが入り易いが、これに多価アルコールエステルを添加して均一に混合すると今度は延性が高くなりすぎて、裁断時にヒゲ状のバリが発生し易い。しかし、下記(1)と下記(3)を組み合わせれば適度な混合むらを与えることができるため、延性と脆性の両方の課題を一挙に解決することができる。また、下記(2)をさらに組み合わせて局所的に結晶性の差を与え、部分的に延性の高い非晶部分を形成することによって、脆性を低下させさらに裁断性を向上させることができる。
樹脂は、押出し機内でスクリューによって混練溶融されT−ダイに向かって押出される。このため、スクリュー回転に沿ってメルトには螺旋状に微細な混練ムラが発生する。これが生成するフィルム中に本発明の弾性率変動を与える。このため、多軸の押出し機では混練が均一に行われやすいことから、押出し機は1軸のものを用いることが好ましい。さらに、押出し機内に好ましくは10℃〜70℃、より好ましくは15℃〜60℃、さらに好ましくは20℃〜50℃の温度分布を与えることで、微細な混練ムラをより発生し易くできる。なお、押出し機内の入り口側温度を低くし、出口側温度を高くすることがより好ましい。
この後、スクリューからT−ダイに至る配管の直径方向に温度差を与え、中央部を外周部よりも1℃〜20℃、好ましくは2℃〜16℃、より好ましくは3℃〜12℃高くすることで、この混練ムラをT−ダイまで維持できる。上記のような螺旋状の混練ムラは配管の内部と外周部のメルトが混合することで解消するため、外周部の温度を中央部より下げることでメルトの溶融粘度を増大させ混合による均一化を防止できる。このような配管内の温度分布は、溶融押出し機出口の温度を押出し機からT−ダイに至る配管の温度より高くすることで達成できる。即ち、押出し機から出たメルトは全面均一な温度分布を持っているが、その後の配管の温度をこれよりも低くすることで、配管外周部の温度を内部の温度より低くすることができる。押出し機出口と配管の温度差は、内部のメルトの温度差が上記になるよう、溶融押出し量、配管径に合せて適宜調整する。凡その目安として、溶融押出し機出口の温度を押出し機からT−ダイに至るまでの配管の温度より1℃〜10℃高くするのが好ましく、より好ましくは2℃〜9℃、さらに好ましくは3℃〜8℃である。
上記(1)の条件に加えて、さらに(2)の条件を付加することにより、弾性率変動が0.5〜5%である本発明の光学フィルムをより好ましく製造することができる。
セルロースアシレートは結晶性の樹脂であるため、T−ダイから溶融状態で出てキャスティングロール上で固化する際に微結晶を形成する。このときキャスティングロールの温度に上述の温度差を付与することで結晶形成に差を与え、上述の弾性率変動を生じさせることができる。
このようなキャスティングロールの温度差は、幅方向、長手方向どちらに付与してもよい。この温度差はキャスティングロール内部を温調のために循環させる媒体の流路を邪魔板を設けて調整することでも制御でき、また部分加熱ヒーターを用い、キャスティングロールの外部から局所的に加熱することでも達成できる。
脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルは、メルト中に微細な混練ムラを発生させる作用を有する。即ち、このような多価アルコールエステルは、セルロースアシレートに比べて融点が低いため、低温で融解する。このため混練初期において、セルロースアシレートの固体の周りに多価アルコールエステルの液体が取り巻いている状態が形成される。このような状態では多価アルコールエステルは潤滑油として働き、混練押出し機中でスクリューとセルロースエテル間の摩擦を低下させて剪断力による混合を妨げる。このため、混練押出し機内で微細な混練むらを形成し、上述の弾性率変動を形成する。多価アルコールエステル以外の化合物を添加した場合は、セルロースアシレートとの分散が均一になりすぎてしまうため、混練むらを発現できず弾性率変動を発現できないか、あるいは分散性が悪すぎて本発明の範囲を超える混練むら、弾性率変動を発生してしまう。
上記の多価アルコールエステルの含有率は、セルロースアシレートに対して1質量%〜30質量%であり、好ましくは2質量%〜23質量%、より好ましくは3質量%〜18質量%である。
以下において、本発明で用いる多価アルコールエステルについて詳細に説明する。
本発明で用いる多価アルコールエステルは、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
本発明に用いられる脂肪族多価アルコールは下記の一般式(A)で表される。
一般式(A)
R1−(OH)n
上式において、R1はn価の脂肪族有機基を表し、nは2以上の正の整数であり、OH基はアルコール性水酸基またはフェノール性水酸基を表す。
本発明の多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
(セルロースアシレートの置換度)
本発明で用いるセルロースアシレートは、上記の多価アルコールエステルを適度に分散させることができて、製膜したときに本発明が目的とする弾性率変動を実現することができるものであることが好ましい。具体的には、本発明で用いるセルロースアシレートは、下記式(1)および(2)を満足するものであることが好ましい。
式(1): 2.0≦X+Y<3.0
式(2): 0≦X<2.5
より好ましくは、下記式(3)および(4)を満足するセルロースアシレートである。
式(3): 2.0≦X+Y<2.59
式(4): 0.3≦X<2.1
さらに好ましくは、下記式(5)および(6)を満足するセルロースアシレートである。
式(5): 2.2≦X+Y<2.59
式(6): 1.2≦X<2.1
式(1)〜(6)において、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度であり、Yはセルロースの水酸基に対するプロピオニル基とブチリル基の置換度の総和である。セルロースの水酸基がすべて置換されているときの置換度は3である。
X+Yが式(1)の範囲内であるセルロースアシレートは、多価アルコールエステルと均一に混合しやすいため、混練ムラが生じにくく、その結果として光学フィルムとしたときに本発明が目的としている弾性率変動を実現しやすい。
本発明で用いるセルロースアシレートは上記の組成をもつものが好ましく、かつ重量平均重合度は通常200〜850、好ましくは250〜750、更に好ましくは300〜500である。重量平均重合度は、本発明では後述のゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)を用い、単分散ポリスチレンを標品として測定される。
本発明においては、セルロースアシレートのGPCによる重量平均重合度/数平均重合度が1.6〜3.6であることが好ましく、1.7〜3.3であることが更に好ましく、1.8〜3.2であることが特に好ましい。
これらのセルロースアシレートは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合しても良い。また、セルロースアシレート以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースアシレートと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上である。
本発明のセルロースアシレートの、原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7頁〜12頁にも詳細に記載されている。
セルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92質量%〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。
セルロース原料がフィルム状や塊状である場合は、あらかじめ解砕しておくことが好ましく、セルロースの形態はフラッフ状になるまで解砕が進行していることが好ましい。
セルロース原料はエステル化に先立って、活性化剤と接触させる処理(活性化)を行うことが好ましい。活性化剤としては、カルボン酸または水を用いることができるが、水を用いた場合には、活性化の後に酸無水物を過剰に添加して脱水を行ったり、水を置換するためにカルボン酸で洗浄したり、アシル化の条件を調節したりするといった工程を含むことが好ましい。活性化剤はいかなる温度に調節して添加してもよく、添加方法としては噴霧、滴下、浸漬などの方法から選択することができる。
このような活性化処理により輝点異物を低減することができる。即ちアシル化剤がセルロース内部まで浸透しないため、未反応のセルロースが残ることに起因しており、上述ように活性化処理によりセルロース内部まで十分の膨潤させアシル化剤を浸透させ易くすることで、輝点を減少させることができる。輝点は元のセルロースが繊維状であることに由来し、細長い針状である。このため、濾過では濾材の目の間をすり抜け十分に取りきれないため、本発明のように反応段階から除去することが好ましい。
セルロースアシレートを製造する際には、セルロースにカルボン酸の酸無水物を加え、ブレンステッド酸またはルイス酸を触媒として反応させることで、セルロースの水酸基をエステル化することが好ましい。
セルロース混合エステルを得る方法としては、エステル化剤として2種のカルボン酸無水物を混合または逐次添加により反応させる方法、2種のカルボン酸の混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を用いる方法、カルボン酸と別のカルボン酸の酸無水物(例えば、酢酸とプロピオン酸無水物)を原料として反応系内で混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を合成してセルロースと反応させる方法、置換度が3に満たないセルロースアシレートを一旦合成し、酸無水物や酸ハライドを用いて、残存する水酸基を更にアシル化する方法などを用いることができる。
カルボン酸の酸無水物として、好ましくはカルボン酸としての炭素数が2〜4であるものを用いることができる。例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、2−メチルプロピオン酸無水物などを挙げることができる。
混合エステルを調製する目的で、これらの酸無水物を併用して使用することが好ましく行われる。その混合比は目的とする混合エステルの置換比に応じて決定することが好ましい。酸無水物は、セルロースに対して、通常は過剰当量添加する。すなわち、セルロースの水酸基に対して1.2〜50当量添加することが好ましく、1.5〜30当量添加することがより好ましく、2〜10当量添加することが特に好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートの製造に用いるアシル化の触媒には、ブレンステッド酸またはルイス酸を使用することが好ましい。ブレンステッド酸およびルイス酸の定義については、例えば、「理化学辞典」第五版(2000年)に記載されている。好ましいブレンステッド酸の例としては、硫酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを挙げることができる。好ましいルイス酸の例としては、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化マグネシウムなどを挙げることができる。
触媒としては、硫酸または過塩素酸がより好ましく、硫酸が特に好ましい。触媒の好ましい添加量は、セルロースに対して0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは3〜12質量%である。
エステル化を行う際には、粘度、反応速度、攪拌性、エステル置換比などを調整する目的で、溶媒を添加してもよい。このような溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、カルボン酸、アセトン、エチルメチルケトン、トルエン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどを用いることもできるが、好ましくはカルボン酸であり、例えば、炭素数2〜7のカルボン酸[例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−メチルプロピオン酸、吉草酸、3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2,2−ジメチルプロピオン酸(ピバル酸)、ヘキサン酸、2−メチル吉草酸、3−メチル吉草酸、4−メチル吉草酸、2,2−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、シクロペンタンカルボン酸]などを挙げることができる。更に好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸などを挙げることができる。これらの溶媒は混合して用いてもよい。
エステル化を行う際には、酸無水物と触媒、さらに、必要に応じて溶媒を混合してからセルロースと混合してもよく、またこれらを別々に逐次セルロースと混合してもよいが、通常は、酸無水物と触媒との混合物、または、酸無水物と触媒と溶媒との混合物をエステル化剤として調製してからセルロースと反応させることが好ましい。エステル化の際の反応熱による反応容器内の温度上昇を抑制するために、エステル化剤は予め冷却しておくことが好ましい。冷却温度としては、−50℃〜20℃が好ましく、−35℃〜10℃がより好ましく、−25℃〜5℃が特に好ましい。エステル化剤は液状で添加しても、凍結させて結晶、フレーク、またはブロック状の固体として添加してもよい。
エステル化剤はさらに、セルロースに対して一度に添加しても、分割して添加してもよい。また、エステル化剤に対してセルロースを一度に添加しても、分割して添加してもよい。アシル化剤を分割して添加する場合は、同一組成のアシル化剤を用いても、複数の組成の異なるエステル化剤を用いても良い。好ましい例として、1)酸無水物と溶媒の混合物をまず添加し、次いで、触媒を添加する、2)酸無水物、溶媒と触媒の一部の混合物をまず添加し、次いで、触媒の残りと溶媒の混合物を添加する、3)酸無水物と溶媒の混合物をまず添加し、次いで、触媒と溶媒の混合物を添加する、4)溶媒をまず添加し、酸無水物と触媒との混合物あるいは酸無水物と触媒と溶媒との混合物を添加する、などを挙げることができる。
反応の最低温度は−50℃以上が好ましく、−30℃以上がより好ましく、−20℃以上が特に好ましい。好ましいアシル化時間は0.5時間〜24時間であり、1時間〜12時間がより好ましく、1.5時間〜6時間が特に好ましい。0.5時間より短いと通常の反応条件では反応が十分に進行せず、24時間を越えると、工業的な製造のために好ましくない。
セルロースアシレートを製造する際には、エステル化反応の後に、反応停止剤を加えることが好ましい。
反応停止剤としては、酸無水物を分解するものであればいかなるものでもよく、好ましい例として、水、アルコール(例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなど)またはこれらを含有する組成物などを挙げることができる。また、反応停止剤には、後述の中和剤を含んでいても良い。反応停止剤の添加に際しては、反応装置の冷却能力を超える大きな発熱が生じて、セルロースアシレートの重合度を低下させる原因となったり、セルロースアシレートが望まない形態で沈殿したりする場合があるなどの不都合を避けるため、水やアルコールを直接添加するよりも、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸と水との混合物を添加することが好ましく、カルボン酸としては酢酸が特に好ましい。カルボン酸と水の組成比は任意の割合で用いることができるが、水の含有量が5質量%〜80質量%、さらには10質量%〜60質量%、特には15質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。
反応停止剤は、エステル化の反応容器に添加しても、反応停止剤の容器に反応物を添加してもよい。反応停止剤は3分〜3時間かけて添加することが好ましい。反応停止剤の添加時間が3分以上であれば、発熱が大きくなりすぎて重合度低下の原因となったり、酸無水物の加水分解が不十分になったり、セルロースアシレートの安定性を低下させたりするなどの不都合が生じないので好ましい。また反応停止剤の添加時間が3時間以下であれば、工業的な生産性の低下などの問題も生じないので好ましい。反応停止剤の添加時間として、好ましくは4分〜2時間であり、より好ましくは5分〜1時間であり、特に好ましくは10分〜45分である。反応停止剤を添加する際には反応容器を冷却しても冷却しなくてもよいが、解重合を抑制する目的から、反応容器を冷却して温度上昇を抑制することが好ましい。また、反応停止剤を冷却しておくことも好ましい。
エステル化の反応停止工程あるいはエステル化の反応停止工程後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解、カルボン酸およびエステル化触媒の一部または全部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)またはその溶液を添加してもよい。中和剤の溶媒としては、水、アルコール(例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなど)、カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、ケトン(例えば、アセトン、エチルメチルケトンなど)、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒、およびこれらの混合溶媒を好ましい例として挙げることができる。
このようにして得られたセルロースアシレートは、全置換度がほぼ3に近いものであるが、所望の置換度のものを得る目的で、少量の触媒(一般には、残存する硫酸などのエステル化触媒)と水との存在下で、20〜90℃に数分〜数日間保つことによりエステル結合を部分的に加水分解し、セルロースアシレートのエステル置換度を所望の程度まで減少させること(いわゆる熟成)が一般的に行われる。部分加水分解の過程でセルロースの硫酸エステルも加水分解されることから、加水分解の条件を調節することにより、セルロースに結合した硫酸エステルの量を削減することができる。
所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を、前記のような中和剤またはその溶液を用いて完全に中和し、部分加水分解を停止させることが好ましい。反応溶液に対して溶解性が低い塩を生成する中和剤(例えば、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなど)を添加することにより、溶液中あるいはセルロースに結合した触媒(例えば、硫酸エステル)を効果的に除去することも好ましい。
セルロースアシレート中の未反応物、難溶解性塩、その他の異物などを除去または削減する目的で、反応混合物(ドープ)の濾過を行うことが好ましい。濾過は、エステル化の完了から再沈殿までの間のいかなる工程において行ってもよい。濾過圧や取り扱い性の制御の目的から、濾過に先立って適切な溶媒で希釈することも好ましい。
好ましい濾過の孔径は0.1μm〜30μmが好ましく、より好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは3μm〜15μmである。このような濾過フィルターの主素材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。フィルター形状は、サーフェースタイプでもデプスタイプでも適用されるが、デプスタイプの方が目詰まりしにくいことからより好ましい。
濾過溶液の粘度は1Pa・s〜1000Pa・sが好ましく、より好ましくは3Pa・s〜100Pa・s、さらに好ましくは5Pa・s〜50Pa・sである。
このようにして得られたセルロースアシレート溶液を、水もしくはカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸など)水溶液のような貧溶媒中に混合するか、セルロースアシレート溶液中に、貧溶媒を混合することにより、セルロースアシレートを再沈殿させ、洗浄および安定化処理により目的のセルロースアシレートを得ることができる。再沈殿は連続的に行っても、一定量ずつバッチ式で行ってもよい。セルロースアシレート溶液の濃度および貧溶媒の組成をセルロースアシレートの置換様式あるいは重合度により調整することで、再沈殿したセルロースアシレートの形態や分子量分布を制御することも好ましい。
生成したセルロースアシレートは洗浄処理することが好ましい。洗浄溶媒はセルロースアシレートの溶解性が低く、かつ、不純物を除去することができるものであればいかなるものでも良いが、通常は水または温水が用いられる。洗浄水の温度は、好ましくは25℃〜100℃であり、更に好ましくは30℃〜90℃であり、特に好ましくは40℃〜80℃である。洗浄処理はろ過と洗浄液の交換を繰り返すいわゆるバッチ式で行っても、連続洗浄装置を用いて行ってもよい。再沈殿および洗浄の工程で発生した廃液を再沈殿工程の貧溶媒として再利用したり、蒸留などの手段によりカルボン酸などの溶媒を回収して再利用することも好ましい。
洗浄の進行はいかなる手段で追跡を行ってよいが、水素イオン濃度、イオンクロマトグラフィー、電気伝導度、ICP、元素分析、原子吸光スペクトルなどの方法を好ましい例として挙げることができる。
このような処理により、セルロースアシレート中の触媒(硫酸、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩化亜鉛など)、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物など)、中和剤と触媒との反応物、カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、中和剤とカルボン酸との反応物などを除去することができ、このことはセルロースアシレートの安定性を高めるために有効である。
温水処理による洗浄後のセルロースアシレートは、安定性を更に向上させたり、カルボン酸臭を低下させるために、弱アルカリ(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物など)の水溶液などで処理することも好ましい。
残存不純物の量は、洗浄液の量、洗浄の温度、時間、攪拌方法、洗浄容器の形態、安定化剤の組成や濃度により制御できる。本発明においては、残留硫酸根量(硫黄原子の含有量として)が0〜500ppmになるようにアシル化、部分加水分解および洗浄の条件を設定する。
本発明においてセルロースアシレートの含水率を好ましい量に調整するためには、セルロースアシレートを乾燥することが好ましい。乾燥の方法については、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されないが、加熱、送風、減圧、攪拌などの手段を単独または組み合わせで用いることで効率的に行うことが好ましい。乾燥温度として好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜180℃であり、特に好ましくは50〜160℃である。本発明のセルロースアシレートは、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.7質量%以下であることが特には好ましい。
本発明のセルロースアシレートは粒子状、粉末状、繊維状、塊状など種々の形状を取ることができるが、フィルム製造の原料としては粒子状または粉末状であることが好ましいことから、乾燥後のセルロースアシレートには、粒子サイズの均一化や取り扱い性の改善のために、粉砕や篩がけを行っても良い。セルロースアシレートが粒子状であるとき、使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子サイズを有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子サイズを有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。また、本発明のセルロースアシレート粒子は、見かけ密度が好ましくは0.5〜1.3、更に好ましくは0.7〜1.2、特に好ましくは0.8〜1.15である。見かけ密度の測定法に関しては、JIS K−7365に規定されている。
本発明のセルロースアシレート粒子は安息角が10〜70度であることが好ましく、15〜60度であることが更に好ましく、20〜50度であることが特に好ましい。
本発明の光学フィルムに可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の観点から必要である。また本発明で行う溶融製膜法においては、用いるセルロースアシレート単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロースアシレートよりも可塑剤を含むフィルム構成材料の粘度が低下できる目的を含んでいる。
劣化防止剤を添加することにより、フィルムがキャスティングロールに弱く粘着しまとわり付くことで発生する微細な傷や皺の発生を抑制することができる。セルロースアシレートは混練押出し機内で溶融されるが、その時熱分解物が発生する。これはセルロースアシレートが分子切断したものであり、粘張な糊のような作用をする。このため熱分解の進行したものは上記のようなキャスティングロールへのまとわりつきが発生し易く、微細な傷や皺の発生原因となる。劣化防止剤を添加すればこのような問題を抑制することができる。
しかしながら、その一方で、劣化防止剤を添加しすぎるとフィルム表面にブリードアウトし易く、これが粘張な糊のような作用をしてキャスティングロールへまとわりつき易い。このため、劣化防止剤は、セルロースアシレートに対して好ましくは0.01質量%〜10質量%、より好ましくは0.05質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜3質量%添加する。
劣化防止剤としては、酸化防止剤、酸捕捉剤、光安定剤、過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤のいずれも使用することができが、より好ましいのが酸化防止剤、酸捕捉剤、光安定剤であり、さらに好ましいのが酸化防止剤である。
なお、本発明における劣化防止剤とは、以下の方法で求められる安定化度指数が0.8以下のものを指す。安定化度指数を求めるためには、測定対象となる材料を0.3質量%添加したセルロースアシレート樹脂10gを240℃の空気恒温槽中に入れ1時間熱処理する。その熱処理前と熱処理後の樹脂を各々ジクロロメタンに2%濃度で溶解し、分光光度計を用いて400nmにおける吸光度を測定する(リファレンスはジクロロメタンで測定)。熱処理前の吸光度をA(f)、熱処理後の吸光度をA(t)として、下記式から安定化度指数を求める。
安定化度指数=A(t)/A(f)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の熱や酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
セルロースアシレートは高温下では酸によっても分解が促進されるため、本発明の光学フィルムにおいては酸捕捉剤を含有することが好ましい。
本発明において、製造後に偏光膜(偏光子)保護フィルムとして晒される外光や液晶ディスプレイのバックライトからの光に対する安定化剤として、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含等まれる。
セルロースアシレートには、その他の添加剤として、紫外線吸収剤、マット剤、レタデーション上昇剤などを添加するのも好ましい。
本発明の光学フィルムを液晶セルに対して外側に用いる偏光膜保護フィルムとして用いる場合には、さらに紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤とは、製造後に使用される環境下で紫外線によってフィルムを構成する材料が分解することを防ぐ効果のある材料である。セルロースアシレート自体は比較的紫外線に対して強い材料であるが、その他の添加剤については紫外線に対して弱い化合物である場合もあるし、偏光膜や液晶セルも紫外線に対して弱いものであるため、少なくとも外光が当たる側の偏光膜保護フィルムや、液晶ディスプレイのバックライトが入射する側の偏光膜保護フィルムに付いては紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
このような紫外線吸収剤としては、偏光膜や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、特に好ましくはベンゾトリアゾール系化合物である。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
本発明の光学フィルムには、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができ、微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
本発明の光学フィルムに配向膜を形成して液晶層を設け、光学フィルムと液晶層由来のレタデーションを複合化して光学補償能を付与して、液晶表示品質の向上を図ることができる。このような目的に本発明の光学フィルムを用いるとき等は、レタデーションを上昇する作用を有するレタデーション上昇剤を添加することが好ましい。レタデーション上昇剤は、欧州特許911,656A2号公報に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物等を使用することができる。また二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環が特に好ましい。
その他の添加剤としては、例えば、染料、顔料、蛍光体、透湿抑制剤等が挙げられる。また、上記機能を有するものであれば、これに分類されない添加剤も用いることができる。
本発明の光学フィルムには、残留溶剤が含まれていないか、含まれていても極めて少ないことが好ましい。具体的には、残留溶剤量は0.01質量%以下であることが好ましく、ゼロであることが最も好ましい。特に、以下に記載する溶融製膜法により製造した本発明の光学フィルムは、製膜時に溶剤を使用しないため、製造される光学フィルムにも溶剤が含まれない点で極めて好ましい。
(1)ペレット化
上記の方法で調製した未使用のセルロースアシレートと添加物は、溶融製膜に先立ち混合しペレット化しておくことが好ましい。このとき、再使用セルロースアシレートと未使用セルロースアシレートと添加剤とを一緒にペレット化することがより好ましい。ペレット化に際しては、上述の方法に従い混合の均質化を行うことが好ましい。なお、未使用セルロースアシレートと再使用セルロースアシレートの混合物の分散ばらつきは、この時に求める。
ペレット化を行うにあたりセルロースアシレートおよび添加物は事前に乾燥しておくことが好ましいが、ベント式押出機を用いることで、これを代用することもできる。乾燥を行う場合は、乾燥方法として、加熱炉内にて90℃で8時間以上加熱する方法等を用いることができるが、この限りではない。ペレット化は上記透明熱可塑性樹脂と添加物を2軸混練押出機を用い150℃〜250℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作成することができる。また、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウオーターカット法等によりペレット化を行っても構わない。
押出機は十分な溶融混練が得られる限り、任意の公知の単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。
ペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。またペレット化を行う時に、上記添加物は押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することもできる。
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは、20rpm〜700rpm、さらにより好ましくは30rpm〜500rpmである。回転数が10rpm以上であれば、滞留時間が長くなり過ぎて熱劣化により分子量が低下したり、黄色味が悪化したりする等の問題が生じにくい傾向がある。また、回転数が1000rpm以下であれば、剪断による分子の切断、分子量低下、架橋ゲルの発生などが生じにくい傾向がある。
ペレット化における押出滞留時間は通常10秒〜30分、より好ましくは15秒〜10分、さらに好ましくは30秒〜3分である。十分に溶融ができれば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色み発生を抑えることができる点で好ましい。
溶融製膜に先立ち原料(セルロースアシレートや添加剤)中の水分を減少させることが好ましい。乾燥の方法については、除湿風乾燥機を用いて乾燥することが多いが、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されない(加熱、送風、減圧、攪拌などの手段を単独または組み合わせで用いることで効率的に行うことが好ましい、更に好ましくは、乾燥ホッパ−を断熱構造にすることが好ましい)。乾燥温度として好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜180℃であり、特に好ましくは60〜150℃である。乾燥温度が低過ぎると乾燥に時間がかかるだけでなく、含有水分率が目標値以下にならず好ましくない。一方、乾燥温度が高過ぎると樹脂が粘着してブロッキングして好ましくない。乾燥風量として好ましくは20〜400m3/時間であり、更に好ましくは50〜300m3/時間、特に好ましくは100〜250m3/時間である。乾燥風量が少ないと乾燥効率が悪く好ましくない。一方、風量を多くしても一定量以上あれば乾燥効果の更なる向上は小さく経済的でない。エアーの露点として、好ましくは0〜−60℃であり、更に好ましくは−10〜−50℃、特に好ましくは−20〜−40℃である。乾燥時間は少なくとも15分以上必要であり、さらに好ましくは1時間以上、特に好ましくは2時間以上である。一方、50時間を超えて乾燥させても更なる水分率の低減効果は少なく、樹脂の熱劣化の懸念が発生するため乾燥時間を不必要に長くすることは好ましくない。本発明のセルロースアシレートは、その含水率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましい。
原料のセルロースアシレートは押出機の供給口を介してシリンダー内に供給される。
押出し機のシリンダー内は供給口側から順に、供給口から供給した透明熱可塑性樹脂を定量輸送する供給部(領域A)と透明熱可塑性樹脂を溶融混練・圧縮する圧縮部(領域B)と溶融混練・圧縮された透明熱可塑性樹脂を計量する計量部(領域C)とで構成される。樹脂は上述の方法により水分量を低減させるために、乾燥することが好ましいが、残存する酸素による溶融樹脂の酸化を防止するために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は通常2.5〜4.5に設定され、L/Dは通常20〜70に設定されている。ここでスクリュー圧縮比とは供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち供給部Aの単位長さあたりの容積÷計量部Cの単位長さあたりの容積で表され、供給部Aのスクリュー軸の外径d1、計量部Cのスクリュー軸の外径d2、供給部Aの溝部径a1、および計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとはシリンダー内径に対するシリンダー長さの比である。また、押出温度は通常190〜240℃に設定される。より好ましくは200℃〜235℃、さらに好ましくは210℃〜230℃である。ここで上述のように温度分布を加えることが好ましい。
また、押出温度は上述の温度範囲にすることが好ましい。このようにして得たセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが2.0%以下、イエローインデックス(YI値)が10以下である特性値を有している。
押出し機の後からT−ダイまでの間の配管内に上述のように温度分布を与えることが好ましい。
樹脂中の異物濾過のためや異物によるギアポンプ損傷を避けるため押し出し機出口にフィルター濾材を設けるいわゆるブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。またさらに精度高く異物濾過をするために、ギアポンプ通過後にいわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。本発明では再使用セルロースアシレート中の異物を少なくするために、このような濾過工程を入れることが好ましく、なかでも精密濾過の可能なリーフ型ディスクフィルターを用いることが好ましい。耐圧,フィルターライフの適性を確保するためにディスクフィルターは好ましくは1枚〜300枚、より好ましくは5枚〜120枚、さらに好ましくは10枚〜80枚使用する。
濾過は、1段で行ってもよく、多段で行ってもよい。濾過精度は3μm〜20μmが好ましく、更に好ましくは5μm〜15μmである。
濾材の種類は、高温高圧下で使用される点から鉄鋼材料を用いることが好ましく、鉄鋼材料の中でも特にステンレス鋼,スチールなどを用いることが好ましく、腐食の点から特にステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成としては、線材を編んだものの他に、例えば金属長繊維あるいは金属粉末を焼結し形成する焼結濾材が使用でき、濾過精度,フィルターライフの点から焼結濾材が好ましい。
厚み精度を向上させるためには、吐出量の変動を減少させることが重要であり、押出機出機とダイスの間にギアポンプを設けて、ギアポンプから一定量のセルロースアシレート樹脂を供給することは効果がある。ギアポンプとは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合い回転させることにより、ハウジングに形成された吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成された吐出口からその樹脂を一定量吐出するものである。押出機先端部分の樹脂圧力が若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置下流の樹脂圧力の変動は非常に小さなものとなり、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動幅を±1%以内にすることが可能である。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。また、ギアポンプのギアの変動を解消した3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。
ギアポンプを用いるその他のメリットとしては、スクリュー先端部の圧力を下げて製膜できることから、エネルギー消費の軽減・樹脂温上昇の防止・輸送効率の向上・押出機内での滞留時間の短縮・押出機のL/Dを短縮が期待できる。また、異物除去のために、フィルターを用いる場合には、ギアポンプが無いと、ろ圧の上昇と共に、スクリューから供給される樹脂量が変動したりすることがあるが、ギアポンプを組み合わせて用いることにより解消が可能である。一方、ギアポンプのデメリットとしては、設備の選定方法によっては、設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり、注意が必要である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。
ギアポンプの軸受循環用ポリマーの流れが悪くなることにより、駆動部と軸受部におけるポリマーによるシールが悪くなり、計量および送液押し出し圧力の変動が大きくなったりする問題が発生するため、透明熱可塑性樹脂の溶融粘度に合わせたギアポンプの設計(特にクリアランス)が必要である。また、場合によっては、ギアポンプの滞留部分が透明熱可塑性樹脂の劣化の原因となるため、滞留のできるだけ少ない構造が好ましい。押出機とギアポンプあるいはギアポンプとダイ等をつなぐポリマー配管やアダプタについても、できるだけ滞留の少ない設計が必要である。このとき上述のように配管内の中央部と外周部に差を与えることが好ましい。
上記の如く構成された押出機によって透明熱可塑性樹脂が溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはダイ内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であればよい。本発明の光学フィルムを製造する際にはT−ダイを好ましく用いることができ、フィッシュテールダイやハンガーコートダイもT−ダイの範疇として好ましく用いることができる。T−ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜5.0倍が良く、好ましくは1.2〜3倍、更に好ましくは1.3〜2倍である。リップクリアランスがフィルム厚みの1.0倍より小さ過ぎる場合には製膜により面状の良好なシートを得ることが困難である。また、リップクリアランスがフィルム厚みの5.0倍を超えて大き過ぎる場合にはシートの厚み精度が低下するため好ましくない。ダイはフィルムの厚み精度を決定する非常に重要な設備であり、厚み調整が厳密にコントロールできるものが好ましい。通常厚み調整は40〜50mm間隔で調整可能であるが、好ましくは35mm間隔以下、更に好ましくは25mm間隔以下でフィルム厚み調整が可能なタイプが好ましい。また、製膜フィルムの均一性を向上するために、ダイの温度ムラや幅方向の流速ムラのできるだけ少ない設計が重要である。また、下流のフィルム厚みを計測して、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも長期連続生産の厚み変動の低減に有効である。
フィルムの製造は設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合によっては機能層を外層に設けために多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般的には機能層を表層に薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
ダイからキャスティングロール上にメルトを押出したあと、キャスティングロール上で固化する。このとき、本発明では静電印加法、タッチロール法を用いるのが好ましい。
(7−1)タッチロール法
タッチロール法は、ダイから出たメルトをキャスティングドラムとタッチロールで挟み込んで冷却固化するものである。これにより、タッチロール上で発生した皺を伸ばす効果がある。
タッチロールは通常剛直な素材を用いるが、剛直すぎると皺を押しつぶしてしまい。折れ皺となり好ましくない。このためタッチロールの材質は、弾性を有するものが好ましい。
ロールに低弾性を付与するためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mmである。更に好ましくは0.3mm〜3.5mmである。タッチロールは金属シャフトの上に設置し、その間に熱媒(流体)を通しても良く、外筒と金属シャフトの上に間に弾性体層を設け、外筒の間に熱媒(流体)を満たしたものが挙げられる。
タッチロールはキャスティングロールに対し、押さえ圧0.1〜10MPaが好ましく、より好ましくは0.2〜8MPa、さらに好ましくは0.3〜5MPaである。ここでいう押さえ圧とは、タッチロールを押付ける力を、タッチロールとキャスティングロールの接触面積で割った値を指す。押さえ圧は上記範囲未満ではタッチロールの押し付けが弱く面内の不均一性を是正できず、一方上記を越えると全幅に亘り均一な押さえ圧を加えることができず(ロールがたわみ両端もしくは中央に線圧が集中し易い)不均一性が増加しやすくなる。
タッチロールの温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃に設定する。このような温度制御はこれらのロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成できる。
タッチロール、キャスティングロールは、表面が鏡面であることが好ましく、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。具体的には例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
静電印加はメルトに静電気を与え、これによりキャスティングロールとの密着を改良するものである。これによりメルトがキャスティングロール上でスリップし微細傷を発生するのを抑制する。静電印加はメルト全面に付与してもよいが、両端あるいは片端に付与するのがより好ましい。すなわち、全面に渡って静電印加を行うと幅全面に渡りメルトがキャスティングロールに弱く粘着し(まとわりつき)、やや傷が発生しやすくなる。このためスリップを防止しながら、かつまとわり付かないよう、両端のみに静電印加(エッジピニング)するのが好ましい。静電印加する幅は一端あたり全幅の1%〜20%が好ましく、より好ましくは2%〜15%、さらに好ましくは3%〜12%である。
静電印加はメルトが接触する直上1cm〜30cmのところに3kV〜15kV、より好ましくは4kV〜12kVの、さらに好ましくは5kV〜9kVの電圧を電極に加えることが好ましい。電極は針状のものを使用することができ、この本数を増やすことで静電印加の幅を調整できる。このようなエッジピニングの方法は例えば特開2003−94509号、特開2004−91619号、特開2004−160819号、特開2005−14522号各公報などに記載の方法を用いることができる。
キャスティングロール上で冷却固化しフィルムとするが、上記のように幅方向、長手方向でキャスティングロールに温度差を与えることが好ましい。
このキャスティングロールの直ぐ後にもう1本以上のキャスティングロールを直列に並べることが好ましい。この時、上流側から順次温度を低下させる(徐冷)ことで微細傷を防止できる。即ち徐冷にすることで温度低下に伴う急激な収縮応力の発生を防止し、これに伴うキャスティングロール上でのスリップによる微細傷の発生を防止することができる。
キャスティングロールの総数は1本〜6本、より好ましくは2本〜5本である。キャスティングロールの直径は50mm〜5000mmが好ましく、より好ましくは100mm〜2000mm、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。キャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。キャスティングドラムは60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
この後、固化したフィルムをキャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
製膜幅は好ましくは0.7m〜5m、より好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mである。
キヤストロールの後で少なくとも片端をスリット(トリミング)する。トリミングはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等いずれのタイプの物を用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼いずれを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。トリミング幅は、各々膳幅の1%〜20%が好ましく、より好ましくは2%〜15%、さらに好ましくは3%〜12%である。トリミングで切り落とした部分は破砕し製膜原料に使用することが好ましい。
巻き取り前に、片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜200μmが好ましく、より好ましくは10μm〜150μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mm、さらに好ましくは5mm〜20mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜200μmが好ましく、10μm〜150μmがより好ましく、15μm〜100μmがさらに好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
これらの後巻き取るが、好ましい巻き取り張力は1kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは2kg/m幅〜40kg/幅、更に好ましくは3kg/m幅〜20kg/幅である。巻き取り張力が1kg/m幅より小さ過ぎる場合には、フィルムを均一に巻き取ることが困難である。逆に、巻き取り張力が50kg/幅を超えて大き過ぎる場合には、フィルムが堅巻きになってしまい、巻き外観が悪化するのみでなく、フィルムのコブの部分がクリープ現象により延びてフィルムの波うちの原因になったり、あるいはフィルムの伸びによる残留複屈折が生じたりするため好ましくない。巻き取り張力は、ラインの途中のテンションコントロールにより検知し、一定の巻き取り張力になるようにコントロールされながら巻き取ることが好ましい。製膜ラインの場所により、フィルム温度に差がある場合には熱膨張により、フィルムの長さが僅かに異なる場合があるため、ニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
巻き取り張力はテンションコントロールの制御により、一定張力で巻き取ることもできるが、巻き取った直径に応じてテーパーをつけ、適正な巻き取り張力にすることがより好ましい。一般的には巻き径が大きくなるにつれて張力を少しずつ小さくするが、場合によっては、巻き径が大きくなるにしたがって張力を大きくする方が好ましい場合もある。
樹脂を溶解した溶液をドラム、バンド等の支持体上で乾燥させることにより製膜する溶液製膜法により製膜した場合は、製膜フィルムが厚み方向に体積収縮するため、面配向が進みやすく、Rthが大きくなり易い。特にセルロースアシレートのように吸湿性が高い樹脂を使用した場合は、このような面配向は湿度変化による影響を受け易く、湿度変化によるRthの変動が大きくなり易い。一方、上記のような溶融製膜法によれば、溶剤の揮発による体積変化がないため、面配向が発生し難くRthが発現し難い。さらに湿度変化によるRthの変動も少ない。
上述のように製膜したセルロースアシレートフィルムを、縦延伸、横延伸することも好ましい。縦延伸、横延伸はいずれか一方でも良く、両方実施しても良い。また縦延伸、横延伸は各々1回で行っても良く、複数回に亘って実施しても良く、同時に縦、横に延伸しても良い。
縦延伸、横延伸はTg〜(Tg+50℃)で行うのが好ましく、より好ましくは(Tg+3℃)〜(Tg+40℃)、さらに好ましくは(Tg+5℃)〜(Tg+30℃)である。
好ましい延伸倍率は少なくとも一方に1%〜200%、より好ましくは2%〜180%、さらに好ましくは3%〜150%である。縦、横均等に延伸してもよいが、一方の延伸倍率を他方より大きくし不均等に延伸するほうがより好ましい。縦(MD)、横(TD)いずれを大きくしても良いが、小さい方の延伸倍率は1%〜30%が好ましく、より好ましくは2%〜25%であり、さらに好ましくは3%〜20%である。大きいほうの延伸倍率は好ましくは30%〜200%であり、より好ましくは35%〜180%、さらに好ましくは40%〜150%である。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げても良い(横延伸)。また、特開2000−37772号、特開2001−113591号、特開2002−103445号各公報に記載の同時2軸延伸法を用いても良い。
Re、Rthの比を自由に制御するには、縦延伸の場合、ニップロール間をフィルム幅で割った値(縦横比)を制御することでも達成できる。即ち縦横比を小さくすることで、Rth/Re比を大きくすることができる。また、縦延伸と横延伸とを組み合わせてRe,Rthを制御することもできる。即ち縦延伸倍率と横延伸倍率を差が小さくすることでReは小さくでき、この差を大きくすることでReは大きくできる。
200≧Re≧30
400≧Rth≧70
より好ましくは
150≧Re≧30
300≧Rth≧80
さらに好ましくは
100≧Re≧40
250≧Rth≧90
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、さらに好ましくは0±1°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°あるいは−90±2°、さらに好ましくは90±1°あるいは−90±1°である。
延伸後のセルロースアシレートフィルムの厚みはいずれも15μm〜95μmが好ましく、より好ましくは20μm〜80μm、さらに好ましくは30μm〜70μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
このようにして得たフィルムは、単独で光学フィルムとして使用してもよいし、偏光膜と組み合わせて使用してもよいし、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。これらは以下の工程により達成できる。
(1)表面処理
表面処理を行うことによって、各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上させることができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。
これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理である。
塗布方法の場合、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を用いることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒〜5分が好ましく、5秒〜5分がさらに好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開第02/46809号パンフレットに内容の記載が挙げられる。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設しても良く、表面処理なしで塗設しても良い。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
本発明の透明熱可塑性フィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(イー1)使用素材
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、58頁、2001年3月15日発行)に記載の化合物が挙げられる。
バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合しても良く、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与しても良い。架橋は、光、熱あるいはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させる。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、通常15〜50℃、好ましくは17〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。延伸倍率は、延伸後/初期状態の長さ比(以下同じ)に基づくが前記作用効果の点より好ましい延伸倍率は1.2〜3.5倍、より好ましくは1.5〜3.0倍である。この後、50℃〜90℃において乾燥させて偏光膜を得る。
上記表面処理後のセルロースアシレートフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、透明熱可塑性フィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45度になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
このようにして得た偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作成することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸を45度になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20度〜70度傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層から成るλ/4板を用いることが好ましい。
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、透明熱可塑性フィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
(ロー1)配向膜
上記表面処理した透明熱可塑性フィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光膜上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。が発生することがある。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行って良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜は、透明支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、液晶表示装置の液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
工業的に実施する場合、搬送している偏光膜のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報明細書の段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースアシレートを挙げることができる。セルロースアシレートの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相-固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 〜50J/cm2 の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2 の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2 の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
偏光膜と光学補償層の傾斜角度は、液晶表示装置を構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型液晶表示装置において必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向は液晶表示装置の設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
このような光学補償フィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941、特開2004−12731号、特開2004−215620号、特開2002−221726号、特開2002−55341号、特開2003−195333号各公報に記載のものなどを使用できる。
ECBモードおよびSTNモードに対しても、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明の透明熱可塑性フィルムは上記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシト゛組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書の段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。 硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書)により、塗布により形成することができる。
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を、塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
以下に本発明で使用した測定法について記載する。
(1)光学フィルムの弾性率変動
製膜後トリミング前のフィルムから幅方向に両端10%ずつを除いたものを用意し、幅方向に20等分した各点についてサンプリングした。このとき20点をサンプリングした幅方向のラインをラインaとする。ラインaから長手方向にキャスティングロールの周長の1/5ずつ離れた位置にラインb、ラインc、ラインd、ラインeを想定し、これらの各ラインについても幅方向に等間隔で20点をサンプリングした。下記の実施例では、隣り合うライン間の距離を20cm、ライン上の隣り合うサンプリング地点の間の距離を1cmとした。
25℃・相対湿度60%にて2時間以上調湿した後、この雰囲気中で引張り試験機を用いてチャック間距離10cm、引張り速度10mm/分で弾性率を測定した。弾性率は、弛み補正を行った後、歪0.1mmと歪0.5mmの間の傾きから算出した。
全測定点(100点)の弾性率の平均値(A)、最大値(M)、最小値(m)から、以下の式にしたがって弾性率変動を算出した。
弾性率変動(%)=100×(M−m)/A
光学フィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿した。その後、自動複屈折計(KOBRA−WR:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定した。この測定値と、平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA−WRにRe、Rthを算出させた。
DSCの測定パンにフィルムを20mg入れ、窒素気流中にて10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。その後、再度30℃から250℃まで昇温したときにベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)とした。
光学フィルムを7mm×35mmに切り出して、ガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株)製)を用いてベース残留溶剤量を測定した。
セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で、セルロースアシレートの13C−NMRにより求めた。
THFを溶離液として、単分散ポリスチレンを標準分子量として、セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)をGPCを用いて求めた。NMRで求めた組成から、1セグメントあたりの分子量(m)を求めた。Mwをmで割ることにより、重量平均重合度(DPw)を求めた。
(1−1)セルロースアセテートプロピオネート(CAP)の合成
セルロース(広葉樹パルプ)10質量部に、酢酸0.1質量部、プロピオン酸2.7質量部を噴霧した後、1時間室温で保存した(前処理)。別途、無水酢酸1.2質量部、プロピオン酸無水物61質量部、硫酸0.7質量部の混合物を調製し、−10℃に冷却後に、前記前処理を行ったセルロースと反応容器内で混合した。30分経過後、外設温度を30℃まで上昇させ、4時間反応させた。反応容器に25%含水酢酸46質量部を添加し、内温を60℃に上昇させて、2時間攪拌した。酢酸マグネシウム4水和物と酢酸と水とを等質量ずつ混合した溶液を6.2質量部添加し、30分間攪拌した。反応液を、保留粒子サイズ40μm、10μm、5μmの金属焼結フィルターにて順番に加圧ろ過して異物を除去した。75%含水酢酸に濾過後の反応液を混合してセルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた後、70℃の温水にて、洗浄液のpHが6〜7になるまで洗浄を行った。さらに、0.001%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌する処理を行った後に濾過した。得られたセルロースアセテートプロピオネートを70℃で乾燥させた。1H−NMRの測定から、得られたセルロースアセテートプロピオネートは、アセチル基の置換度が0.15、プロピオニル基の置換度が2.55、重量平均重合度が430、数平均重合度が165であった。
セルロース(綿花リンター)100質量部、酢酸135質量部を、還流装置を付けた反応容器に取り、60℃に加熱しながら激しく攪拌した。この後、反応容器を5℃の氷水浴に60分間置き冷却した(前処理)。別途、アシル化剤として酪酸無水物1080質量部、硫酸10.0質量部の混合物を作製し、−20℃に冷却した後に、前記前処理を行ったセルロースを収容する反応容器に一度に加えた。30分経過後、外設温度を20℃まで上昇させ、5時間反応させた。反応容器を5℃の氷水浴にて冷却し、約5℃に冷却した12.5質量%含水酢酸2400質量部を1時間かけて添加した。内温を30℃に上昇させ1.5時間攪拌した(熟成)。次いで反応容器に、酢酸マグネシウム4水和物の50質量%水溶液を100質量部添加し、30分間攪拌した。これを40μm、10μmフィルターで順次濾過し、この濾液に、酢酸1000質量部、50質量%含水酢酸2500質量部を徐々に加え、セルロースアセテートブチレートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートブチレートの沈殿を温水で洗浄した。洗浄後、0.005質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌し、さらに、洗浄液のpHが7になるまで水で洗浄を行った後、70℃で乾燥させた。得られたセルロースアセテートブチレートは、アセチル基の置換度が0.84、ブチリル基の置換度が2.12、重量平均重合度が440、数平均重合度が170であった。
アシル化剤の種類、量を変えることで置換度を変え、熟成時間を変えることで重合度を変え、表1記載の各セルロースアシレートを合成した。
上記(1)で調製したセルロースアシレートを下記方法でペレット化した。
セルロースアシレート100質量部、下記から選択した多価アルコールエステル、下記から選択した劣化防止剤(選択した種類、量(セルロースアシレートに対する質量%)は表1に記載)、二酸化珪素粒子(アエロジルR972V)0.05質量部、紫外線吸収剤(2−(2'−ヒドロキシー3'、5−ジ−tert−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール0.05質量部、2,4−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン0.1質量部)を混合した。なお、セルロースアシレートは未使用のものを75質量%と製膜後トリミングした両端部を破砕したものを25質量%混合して使用した。さらに一部の試料には、多価アルコールエステル以外の化合物でセルロースアシレートに良く使用される可塑剤(トリフェニルフォスフェート(TPP)、アジピン酸ジオクチル(ADO))を表1記載のように添加した(便宜上、多価アルコールエステルの欄に記載している)。
これらを100℃で3時間乾燥して含水率を0.1質量%以下にした後、2軸混練機を用いて200℃で溶融した後、60℃の温水中に押し出しストランドとした。その後、裁断して、直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットを得た。
多価アルコールエステル#5:トリプロピレングリコールジベンゾエート
多価アルコールエステル#6:トリメチロールプロパントリベンゾエート
多価アルコールエステル#7:3-メチルペンタン−1,3,5−トリオールと
安息香酸とのエステル
劣化防止剤A:スミライザーGP(住友化学(株)製)/酸化防止剤
劣化防止剤B:IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)
/酸化防止剤
劣化防止剤C:トリスノニルフェニルホスファイト/酸化防止剤
劣化防止剤D:n−オクタデシル=3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキ
シフェニル)−プロピオネート/酸化防止剤
劣化防止剤E:アデカスタブPEP36(ADEKA(株)製)/酸化防止剤
劣化防止剤F:アデカスタブAO80(ADEKA(株)製)/酸化防止剤
劣化防止剤G:4,4'−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン/酸補足剤
劣化防止剤H:チヌビン360(チバスペシャルケミカルズ社製)/光安定剤
上記ペレットを破砕したセルロースアシレートを用い、露点温度−40℃の脱湿風を用いて100℃で5時間乾燥し含水率を0.01質量%以下にした後、80℃のホッパーに投入し、表1に示す温度差(出口温度−入口温度)に調整した溶融押出し機で溶融した。なお、溶融押出機に用いたスクリューは単軸で直径は60mm、L/D=50、圧縮比4であった。溶融押出機から押出された樹脂は、表1記載のように溶融押出し機出口の温度を、押し出し機出口からT−ダイ入口の間の配管の温度より高くすることで、配管中央部のメルト温度を外周部より高くした(ただし、比較例5と比較例7では温度差を設けなかった)。表1に配管中央部のメルト温度と外周部のメルト温度の差を示す。メルト温度は、配管の中央部(直径の中心)にて、熱電対を用いて測定した。
この後、100メッシュのブレーカープレートを通過させた後、ギアポンプを通して一定量計量して送り出した。この時、ギアポンプ前の樹脂圧力が10MPaの一定圧力で制御できる様に、押出機の回転数を調整した。ギアポンプから送り出されたメルト樹脂は、濾過精度5μmmのリーフディスクフィルターにて濾過した後、スリット間隔0.8mm、230℃のT−ダイからキャスティングロール(CR)上に押出した。用いたキャスティングロールの周長は1mであった。
キャスティングロールには内部に邪魔板を設けることで内部を循環する熱媒の流れを調整し表1記載のように温度差を与えた。キャスティングロールの温度差は、幅方向に20等分した各地点を熱電対を用いて測定することにより算出した。なお、キャスティングロールの平均温度はTg−10℃に設定した(Tgは樹脂のガラス転移温度)。この時、このキャスティングロール上で、下記の静電印加法を用いて製膜した。なお、下記タッチロール法を用いた場合も同様の結果を得た。
5kVに印加した針状の電極を用いて、フィルム両端から3cmのところに幅3cmずつ静電印加(エッジピニング)した。
特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い、Tg−5℃に調温したタッチロール(但し薄肉金属外筒厚みは3mmとした)を1MPaでキャスティングロールに接触させた。接触点はT−ダイから出てきたメルトがキャスティングロールに初めて接触する点に調整した。
この後、製膜フィルム両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、30m/分で幅1.5m、長さ3000mの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムのTgを測定した結果を表1に示す。また、得られた未延伸フィルムの残留溶剤量を測定したところ、残留溶剤は検出されなかった。
得られた各フィルムについて上述の方法に従って弾性率変動を測定し、結果を表1に記載した。併せて、微細傷、皺の発生を目視で観察し、100m2あたりの発生数を表1に記載した。なお、微細傷、皺は、黒い背景の上にフィルムを通しながら、点光源(タングステンランプ)を照射することで、微細な傷や皺まで観察した。具体的には20μm以上の傷や皺をカウントした。
一方、本発明の範囲外のもの、特に特開2006−142800号公報の実施例1の光学フィルムNo.2に準じたもの(比較例7)は、これと対比させて実施した実施例50に比べ、微細傷、皺の発生が著しく増加した。
さらに下記の方法でフィルムを打ち抜き、破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、裁断性を評価した。評価に際しては、まず、フィルムを10cm角の正方形にトムソン刃で打ち抜いた(例えば特公平6−73838号公報に記載の方法に準じて行った)。次いで、4辺の破断面をSEMを用い1000倍で50サンプル観察した。裁断面に破断屑が発生していたもの、あるいは髭状に裁断不良を検出した辺の数(n)を観察した辺の数(m)で割り、裁断性不良率を下記のように百分率で示した。結果を表1に示した。
裁断性不良率(%)=100×(n/m)
(5−1)表面処理
(3)で製膜した未延伸フィルムに対して、下記の浸漬法で鹸化を行った。また、下記の塗布鹸化も実施したが浸漬鹸化と同様の結果を得た。
a)浸漬鹸化
60℃に調温した1.5mol/LのNaOH水溶液を鹸化液として用いて、未延伸フィルムを2分間浸漬した。その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
b)塗布鹸化
iso−プロパノール80質量部に水20質量部を加え、これにKOHを1.5mol/Lとなるように溶解して60℃に調温したものを鹸化液として用いた。この鹸化液を60℃の未延伸フィルム上に10g/m2で塗布し、1分間鹸化した。その後、50℃の温水を10L/m2・分で1分間スプレーして洗浄した。
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸して厚み20μmの偏光膜を調製した。
このようにして得た偏光膜を、上記方法で鹸化処理した未延伸フィルムを用い、下記構成となるようにPVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として貼り合せ偏光板を作成した。なお、下記に記載したフジタック(富士写真フィルム製TD80)も上記の方法で鹸化処理を行った。
偏光板A: 鹸化処理した未延伸フィルム/偏光膜/フジタック
偏光板B: 鹸化処理した未延伸フィルム/偏光膜/鹸化処理した未延伸フィルム
上記の偏光板Bでは両面に同じ種類のフィルムを用いたが、異種の光学フィルムを用いたものでも、本発明の条件を満たす光学フィルム同士であれば、良好な結果が得られた。
このようにして得た偏光板を特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置の偏光板に代えて取り付けた。これを20セット作成し、この画面上に5mm間隔の格子模様を出し、微細傷や皺に起因する格子模様の歪みを目視で観察し、100m2あたりの発生数に換算して表1に示した。本発明を実施したものは良好な性能が得られた。
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、(4)で得られた本発明の未延伸フィルムを使用した。特開平7−333433号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、(4)で得られた本発明の未延伸フィルムを使用して光学補償フィルターフィルムを作製し、TN型液晶表示装置に使用したところ同様に良好な光学補償フィルムを作成できた。
(4)で得られた本発明の未延伸フィルムを用いて発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能が得られた。
(5)で得られた本発明の偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いた。さらに、本発明の低反射フィルムをこれらの液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、良好な性能を示した。
実施例8、11、23、比較例1の未延伸シートを、各フィルムのガラス転移温度より10℃高い温度(Tg+10℃)で1000%/分の速度にて表2の倍率で縦方向(MD)、横方向(TD)に延伸して延伸フィルムを得た。延伸フィルムのRe、Rth、微細傷、皺を測定した結果を表2に示す。ここでいう延伸倍率は、下記式で定義される。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
偏光板C: 鹸化処理した延伸フィルム/偏光膜/フジタック
偏光板D: 鹸化処理した延伸フィルム/偏光膜/鹸化処理した延伸フィルム
このようにして得た偏光板を、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置の偏光板に代えて取り付けた。これを上記と同様にして「画像ボケ」を計測した。本発明を実施したものはいずれも良好な光学特性を示した。
Claims (16)
- セルロースアシレートと、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルを前記セルロースアシレートに対して1質量%〜30質量%含有し、弾性率変動が0.5%〜5%である溶融製膜した光学フィルム。
- セルロースアシレートと、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルを前記セルロースアシレートに対して1質量%〜30質量%含有し、弾性率変動が0.5%〜5%であり、残留溶剤量が0.01質量%以下である光学フィルム。
- 光学フィルムの厚みが20〜100μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
- 劣化防止剤が0.01〜10質量%以下添加されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記セルロースアシレートが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(1): 2.0≦X+Y<3.0
式(2): 0≦X<2.5
(上式において、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度であり、Yはセルロースの水酸基に対するプロピオニル基とブチリル基の置換度の総和である。) - 前記セルロースアシレートが下記式(3)および(4)を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
式(3): 2.0≦X+Y<2.59
式(4): 0.3≦X<2.1
(上式において、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度であり、Yはセルロースの水酸基に対するプロピオニル基とブチリル基の置換度の総和である。) - 面内方向のレタデーション(Re)が30〜200nmであり、厚み方向のレタデーション(Rth)が70〜400nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- セルロースアシレートと、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルを前記セルロースアシレートに対して1質量%〜30質量%含有するメルトを、押出し機から配管を通してT−ダイへ誘導し、さらにT−ダイからキャスティングロール上に供給して冷却することにより製膜する工程を含む光学フィルムの製造方法において、前記押出し機内の入口側温度と出口側温度の温度差を10℃〜70℃にし、前記配管中における前記メルトの配管中央部の温度が外周部の温度より1℃〜20℃高くなるように制御する光学フィルムの製造方法。
- 前記押出し機の出口側温度を前記押出し機から前記T−ダイに至る配管の温度より高くすることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記メルトが接触する前記キャスティングロールの表面に0.1℃〜5℃の温度差を与えることを特徴とする請求項8または9に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記製膜後に、フィルムを少なくとも1軸に1%〜200%延伸する工程を含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 請求項8〜10のいずれか一項に記載の製造方法により製造される光学フィルム。
- 請求項1〜7または12のいずれか一項に記載の光学フィルムを少なくとも1層積層した偏光板。
- 請求項1〜7または12のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いた光学補償フィルム。
- 請求項1〜7または12のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いた反射防止フィルム。
- 請求項1〜7または12のいずれか一項に記載の光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムの少なくとも一つを用いた液晶表示装置。
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