以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、ここでは、置換又は無置換を明示していない基及び原子団には、置換基を有していないものと置換基を有しているものとの双方が含まれることとする。例えば、置換又は無置換を明示していない「アルキル基」は、置換基を有していないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有しているアルキル基(置換アルキル基)をも包含することとする。
本発明に係る組成物は、〔1〕酸の作用により分解して酸を発生する化合物(以下、酸増殖剤ともいう)と、〔2〕活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤ともいう)及び/又は〔3〕加熱により酸を発生する化合物(以下、熱酸発生剤ともいう)とを含んでいる。
〔1〕酸増殖剤
本発明に係る酸増殖剤は、式A−LGにより表される化合物である。式中、Aは、下記一般式(A−1)により表される残基である。LGは、酸の作用により脱離して、式A−Hにより表される酸を発生させる基である。
式(A−1)中、
R20及びR21は、各々独立に、有機基を表す。R20とR21とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
Gは、炭素原子、硫黄原子、又はS=Oを表す。
式A−Hにより表される酸は、従来の酸増殖剤が発生するスルホン酸と比較して、酸性度がより高い。それゆえ、式A−LGにより表される化合物を用いると、例えば、後述する酸分解性樹脂の脱保護反応、酸架橋剤の架橋反応、及び、カチオン重合性化合物の重合反応の効率を高めることが可能となる。
特には、脱保護反応の活性化エネルギーが高い保護基を備えた酸分解性樹脂を用いる場合、通常のスルホン酸では、上記の脱保護反応を十分な効率で行うことができない場合がある。それゆえ、この場合、例えば、フッ化アルキルスルホン酸を発生する化合物が用いられる。しかしながら、このような化合物では、反応性と安定性との両立が比較的困難である。
これに対し、式A−LGにより表される化合物は、反応性と安定性との双方に優れている。即ち、この化合物は、脱保護反応の活性化エネルギーが高い保護基を備えた酸分解性樹脂を用いる場合にも、適切に使用することができる。また、この化合物は、従来のスルホン酸発生型の酸増殖剤と比較して、安定性に優れている。それゆえ、この化合物を用いると、従来のスルホン酸発生型の酸増殖剤を用いた場合と比較して、組成物の経時安定性を向上させることが可能となる。
R20の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。R20は、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましい。
R21の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。R21は、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましい。
R20及びR21のアルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、1〜12であることが更に好ましい。このアルキル基は、置換基を更に有していてもよい。
R20及びR21のシクロアルキル基の炭素数は、3〜20であることが好ましく、3〜18であることがより好ましく、3〜12であることが更に好ましい。このシクロアルキル基は、置換基を更に有していてもよい。
R20及びR21のアルケニル基の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜18であることがより好ましく、2〜12であることが更に好ましい。このアルケニル基は、置換基を更に有していてもよい。
R20及びR21のシクロアルケニル基の炭素数は、3〜20であることが好ましく、3〜18であることがより好ましく、3〜12であることが更に好ましい。このシクロアルケニル基は、置換基を更に有していてもよい。
R20及びR21のアルキニル基の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜18であることがより好ましく、2〜12であることが更に好ましい。このアルキニル基は、置換基を更に有していてもよい。
R20及びR21のシクロアルキニル基の炭素数は、3〜20であることが好ましく、3〜18であることがより好ましく、3〜12であることが更に好ましい。このシクロアルキニル基は、置換基を更に有していてもよい。
R20及びR21のアリール基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることが更に好ましい。このアリール基は、置換基を更に有していてもよい。
R20及びR21の複素環基は、ヘテロ原子として、例えば、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含んでいる。この複素環基の炭素数は、4〜20であることが好ましく、4〜13であることがより好ましい。
上記の各基が有し得る置換基としては、例えば、以下の置換基群が挙げられる。これらのうち、フッ素原子が特に好ましい。これら置換基は、以下の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これら置換基は、可能な場合には、互いに結合して環を形成していてもよい。
<置換基群>
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、炭化水素環基、複素環基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、シアノ基、アルキルチオキシ基、アリールチオキシ基。
R20及びR21は、各々独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基であることが特に好ましい。
Gは、上述した通り、炭素原子、硫黄原子、又はS=Oを表す。Gは、S=Oであることが好ましい。即ち、残基Aは、下記一般式(A−2)により表されることが好ましい。この場合、電子吸引性の増大により酸強度が高くなり、酸分解性樹脂の脱保護反応、酸架橋剤の架橋反応、及び、カチオン重合性化合物の重合反応の効率を更に向上させることが可能となる。
式(A−2)中、R20及びR21は、一般式(A−1)における各々と同義である。
残基Aは、下記一般式(A−2’)により表されることが好ましい。この場合、式A−Hにより表される酸の強度を、より高くすることが可能となる。
式中、Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
Rは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
Lは、z≧2の場合には各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
Wは、水素原子又は1価の置換基を表す。
n及びxは、各々独立に、1〜20の整数を表す。
yは、0〜10の整数を表す。
zは、0〜10の整数を表す。
Xf、R、L、n、x、y及びzの好ましい例は、下記一般式(A−3)又は(A−4)について後述するものと同じである。
Wは、例えば、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基又は環状構造を有する基(例えば、環状脂肪族基、アリール基若しくは複素環を有する基)を表す。Wは、フッ素原子又は環状構造を有する基であることがより好ましい。
残基Aは、下記一般式(A−3)又は(A−4)により表されることがより好ましい。この場合、式A−Hにより表される酸の強度を、更に高くすることが可能となる。
式(A−3)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
m及びnは、各々独立に、1〜20の整数を表す。
式(A−4)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
Rは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
Lは、z≧2の場合には各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
Eは、環状構造を有する基を表す。
n及びxは、各々独立に、1〜20の整数を表す。
yは、0〜10の整数を表す。
zは、0〜10の整数を表す。
式(A−3)及び(A−4)におけるXfは、フッ素原子であるか、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。このアルキル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、炭素数が1〜4のものがより好ましい。また、フッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、Xfは、好ましくは、フッ素原子、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F15、C8F17、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2C2F5、CH2CH2C2F5、CH2C3F7、CH2CH2C3F7、CH2C4F9又はCH2CH2C4F9である。中でも、フッ素原子又はCF3が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
m及びnの各々は、上述した通り、1〜20の整数を表す。m及びnは、各々独立に、1〜10であることが好ましく、1〜7であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
Rは、上述した通り、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましい。また、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。具体的には、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F15、C8F17、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2C2F5、CH2CH2C2F5、CH2C3F7、CH2CH2C3F7、CH2C4F9及びCH2CH2C4F9が挙げられ、中でもCF3が好ましい。
Lは、上述した通り、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、アルキレン基、シクロアルキレン基及びアルケニレン基が挙げられる。中でも、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−SO2−が好ましく、−COO−、−OCO−又は−SO2−がより好ましい。
Eは、環状構造を有する基を表す。この環状構造を有する基としては、例えば、環状脂肪族基、アリール基及び複素環を有する基が挙げられる。
Eとしての環状脂肪族基は、単環を有していてもよく、多環を有していてもよい。単環を有した環状脂肪族基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が好ましい。多環を有した環状脂肪族基としては、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。特には、Eとして6員環以上のかさ高い構造を有する環状脂肪族基を採用した場合、PEB(露光後加熱)工程での酸の膜中拡散性が抑制され、解像力及びEL(露光ラチチュード)を更に向上させることが可能となる。
Eとしてのアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基又はアントリル基である。
Eとしての複素環を有する基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。この基に含まれているヘテロ原子としては、窒素原子又は酸素原子が好ましい。複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環等が挙げられる。中でも、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環が好ましい。
Eは、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖及び環状の何れであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜30が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基及びスルホン酸エステル基が挙げられる。
xは、1〜8であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。yは、0〜4であることが好ましく、0であることがより好ましい。zは0〜8であることが好ましく、0〜4であることがより好ましい。
以下に、残基Aの具体例を挙げる。
次に、LGにより表される基の例について説明する。LGは、上述した通り、酸の作用により脱離して、式A−Hにより表される酸を発生させる基である。
式A−LGにより表される化合物は、例えば、下記一般式(1)乃至(5)の何れかにより表される化合物である。式A−LGにより表される化合物は、下記一般式(1)により表される化合物であることが特に好ましい。
式中、
R1乃至R4、R7乃至R13、及びR15乃至R19は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
R5、R6及びR14は、各々独立に、1価の置換基を表す。
Aは、上記一般式(A−1)乃至(A−4)の何れかにより表される残基である。
なお、これら一般式(1)乃至(5)により表される化合物の各々は、残基Aを複数備えていてもよい。即ち、これら一般式(1)乃至(5)により表される化合物の各々は、同一分子中に、式A−Hにより表される酸を発生し得る構造を複数備えていてもよい。
一般式(1)により表される化合物について、詳しく説明する。
まず、R1乃至R4について説明する。
式(1)中、R1乃至R4の各々は、水素原子又は1価の置換基を表している。
1価の置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、アルキルチオキシ基、アリールチオキシ基及び複素環基が挙げられる。なお、これらのうち、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、アルキルチオキシ基、アリールチオキシ基及び複素環基は、置換基を有していてもよい。
アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基及び3−ニトロフェナシル基が挙げられる。
シクロアルキル基は、単環構造を有していてもよく、多環構造を有していてもよい。単環構造を有したシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基等が好ましい。多環構造を有したシクロアルキル基としては、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等が好ましい。炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基がより好ましい。
アルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基及びスチリル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、プロピニル基及びプロパルギル基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−及びp−トリル基、キシリル基、o−、m−及びp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、並びにオバレニル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、n−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ヘキシロキシ基、t−ブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、デシロキシ基及びドデシロキシ基が挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、トリルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、トリフルオロメチルフェニルオキシ基、シアノフェニルオキシ基及びニトロフェニルオキシ基が挙げられる。
アルカノイル基としては、炭素数2〜20のアルカノイル基が好ましく、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基及び4−メトキシベンゾイル基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基及びトリフルオロメチルオキシカルボニル基が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基及び4−メトキシフェニルオキシカルボニル基が挙げられる。
アルキルスルホニルオキシ基としては、炭素数1〜20のアルキルスルホニルオキシ基が好ましく、例えば、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、プロピルスルホニルオキシ基、イソプロピルスルホニルオキシ基、ブチルスルホニルオキシ基、ヘキシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基、オクチルスルホニルオキシ基、2−エチルヘキシルスルホニルオキシ基、デカノイルスルホニルオキシ基、ドデカノイルスルホニルオキシ基、オクタデカノイルスルホニルオキシ基、シアノメチルスルホニルオキシ基、メトキシメチルスルホニルオキシ基及びパーフルオロアルキルスルホニルオキシ基が挙げられる。
アリールスルホニルオキシ基としては、炭素数6〜30のアリールスルホニルオキシ基が好ましく、例えば、フェニルスルホニルオキシ基、1−ナフチルスルホニルオキシ基、2−ナフチルスルホニルオキシ基、2−クロロフェニルスルホニルオキシ基、2−メチルフェニルスルホニルオキシ基、2−メトキシフェニルスルホニルオキシ基、2−ブトキシフェニルスルホニルオキシ基、3−クロロフェニルスルホニルオキシ基、3−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ基、3−シアノフェニルスルホニルオキシ基、3−ニトロフェニルスルホニルオキシ基、4−フルオロフェニルスルホニルオキシ基、4−シアノフェニルスルホニルオキシ基、4−メトキシフェニルスルホニルオキシ基、4−メチルスルファニルフェニルスルホニルオキシ基、4−フェニルスルファニルフェニルスルホニルオキシ基及び4−ジメチルアミノフェニルスルホニルオキシ基が挙げられる。
アルキルスルホニル基としては、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基が好ましく、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、デカノイルスルホニル基、ドデカノイルスルホニル基、オクタデカノイルスルホニル基、シアノメチルスルホニル基、メトキシメチルスルホニル基及びパーフルオロアルキルスルホニル基が挙げられる。
アリールスルホニル基としては、炭素数6〜30のアリールスルホニル基が好ましく、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、2−メトキシフェニルスルホニル基、2−ブトキシフェニルスルホニル基、3−クロロフェニルスルホニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基、3−シアノフェニルスルホニル基、3−ニトロフェニルスルホニル基、4−フルオロフェニルスルホニル基、4−シアノフェニルスルホニル基、4−メトキシフェニルスルホニル基、4−メチルスルファニルフェニルスルホニル基、4−フェニルスルファニルフェニルスルホニル基及び4−ジメチルアミノフェニルスルホニル基が挙げられる。
アルキルチオキシ基としては、例えば、メチルチオキシ基、エチルチオキシ基、プロピルチオキシ基、n−ブチルチオキシ基、トリフルオロメチルチオキシ基、ヘキシルチオキシ基、t−ブチルチオキシ基、2−エチルヘキシルチオキシ基、シクロヘキシルチオキシ基、デシルチオキシ基及びドデシルチオキシ基が挙げられる。
アリールチオキシ基としては、例えば、フェニルチオキシ基、1−ナフチルチオキシ基、2−ナフチルチオキシ基、トリルチオキシ基、メトキシフェニルチオキシ基、ナフチルチオキシ基、クロロフェニルチオキシ基、トリフルオロメチルフェニルチオキシ基、シアノフェニルチオキシ基及びニトロフェニルチオキシ基が挙げられる。
複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子を含んだ芳香族又は脂肪族の複素環が好ましい。この複素環基としては、例えば、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b] チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基及びチオキサントリル基が挙げられる。
R1乃至R4の何れかが有し得る置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;メチルアミノ基及びシクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基及びピペリジノ基等のジアルキルアミノ基;フェニルアミノ基及びp−トリルアミノ基等のアリールアミノ基;メチル基、エチル基、tert−ブチル基及びドデシル基等のアルキル基;フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基及びフェナントリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;ホルミル基;メルカプト基;スルホ基;メシル基;p−トルエンスルホニル基;アミノ基;ニトロ基;シアノ基;トリフルオロメチル基;トリクロロメチル基;トリメチルシリル基;ホスフィニコ基;ホスホノ基;トリメチルアンモニウミル基;ジメチルスルホニウミル基、並びにトリフェニルフェナシルホスホニウミル基が挙げられる。
R1乃至R4は、それらの2以上が互いに結合して、環構造を形成していてもよい。この環構造は、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素環であってもよく、へテロ原子を含んだ複素環であってもよい。また、これらR1乃至R4は、多環縮合環を形成していてもよい。
脂肪族又は芳香族の炭化水素環としては、例えば、6員環、5員環又は7員環構造のものが挙げられる。この炭化水素環としては、6員環又は5員環構造のものが好ましく、5員環構造のものが特に好ましい。
複素環としては、例えば、ヘテロ原子として硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を含んだものが挙げられる。この複素環としては、ヘテロ原子として硫黄原子を含んだものがより好ましい。
多環縮合環としては、例えば、炭化水素環のみからなる縮合環が挙げられる。この多環縮合環としては、例えば、2〜4個のベンゼン環が縮合環を形成したもの及びベンゼン環と5員不飽和環とが縮合環を形成したものが挙げられる。
多環縮合環は、少なくとも1つの複素環を含んだ縮合環であってもよい。この多環縮合環としては、例えば、ベンゼン環と5員複素環とが縮合環を形成したもの、及び、ベンゼン環と6員複素環とが縮合環を形成したものが挙げられる。
R1乃至R4が形成し得る環構造としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ジチオラン環、オキシラン環、ジオキシラン環、チイラン環、ピロリジン環、ピペリジン環、イミダゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾジチオール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾジチオール環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環及びフェナジン環が挙げられる。中でも、ジチオラン環、ベンゾジチオール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環及びベンゾオキサゾール環が特に好ましい。
一般式(1)におけるR1乃至R4としては、例えば、以下の化学式中に記載されているものが挙げられる。
次に、R5及びR6について説明する。
式(1)中、R5及びR6の各々は、1価の置換基を表している。1価の置換基としては、例えば、1価の有機基及びシリル基が挙げられる。1価の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基及びジアルキルアミノカルボニル基が挙げられる。これら1価の有機基は、置換基を更に有していてもよい。
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルチオカルボニル基及びアリールチオカルボニル基としては、例えば、先にR1乃至R4について説明したのと同様のものが挙げられる。
置換基を有していてもよいジアルキルアミノカルボニル基としては、例えば、ジメチルアミノカルボニル基、ジメエルアミノカルボニル基、ジプロピルアミノカルボニル基及びジブチルアミノカルボニル基が挙げられる。
R5及びR6は、互いに結合して、環状アセタール構造を形成していることが好ましい。この環状アセタール構造は、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素環又はへテロ原子を含んだ複素環を置換基として備えていてもよい。また、これら炭化水素環及び/又は複素環は、環状アセタールと縮合環を形成していてもよい。なお、これら炭化水素環及び複素環としては、例えば、先にR1乃至R4について説明したのと同様のものが挙げられる。
一般式(1)におけるR5及びR6としては、例えば、以下の化学式中に記載されているものが挙げられる。
一般式(1)により表される化合物としては、例えば、以下の化学式中に記載されているものが挙げられる。
一般式(2)乃至(5)により表される化合物について、詳しく説明する。
まず、式(2)におけるR7乃至R9について説明する。
R7乃至R9は、水素原子又は1価の置換基である。この1価の置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基及びオクチル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数4〜10のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基、ボロニル基、イソボロニル基、トリシクロデカニル基、ジシクロペンテニル基、ノボルナンエポキシ基、メンチル基、イソメンチル基、ネオメンチル基及びテトラシクロドデカニル基が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基及びトリル基が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、具体的にはベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
なお、これらアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Cl、Br及びF等のハロゲン原子、−CN基、−OH基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アセチルアミノ基等のアシルアミノ基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェノキシエチル基等のアリロキシアルキル基、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、並びに炭素数2〜5のアシルオキシ基が挙げられる。
好ましいR7としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
好ましいR8としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基及び水素原子が挙げられる。
好ましいR9としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
R7とR9とは、互いに結合して、環構造を形成していることが更に好ましい。この環構造としては、シクロペンチル環又はシクロヘキシル環が特に好ましい。
次に、式(3)におけるR10及びR11について説明する。
R10及びR11は、水素原子又は1価の置換基である。
R10としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニルオキシ基及び水素原子が挙げられる。
R11としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニル基及び水素原子が挙げられる。
アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基としては、例えば、先に一般式(2)について説明したのと同様のものが挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキシロキシ基及びブトキシ基が挙げられる。
アリーロキシ基としては、炭素数6〜14のアリーロキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基及びナフトキシ基が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素2〜6個のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基及びシクロヘキセニル基が挙げられる。
アルケニルオキシ基としては、炭素数2〜8個のアルケニルオキシ基が好ましく、具体的には、ビニルオキシ基及びアリルオキシ基が挙げられる。
これらアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニル基及びアルケニルオキシ基の各々は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、先に一般式(2)について説明したのと同様のものが挙げられる。
好ましいR10としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビニロキシ基及びメチルビニロキシ基が挙げられる。
好ましいR11としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビニル基及びアリル基が挙げられる。
R10とR11とは、互いに結合して、環構造を形成していることが更に好ましい。この環構造としては、3−オキソシクロヘキセニル環又は3−オキソインデニル環が特に好ましい。なお、これら3−オキソシクロヘキセニル環及び3−オキソインデニル環は、環内に酸素原子を含んでいてもよい。
続いて、式(4)におけるR12乃至及びR14について説明する。
R12及びR13は、水素原子又は1価の置換基である。R14は、1価の置換基である。
R12としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基及び水素原子が挙げられる。
R13としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アラルキル基及び水素原子が挙げられる。
R14としては、例えば、酸の作用により脱離する基である。
酸の作用により脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、及び−CH(R36)(Ar)により表される基が挙げられる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
Arは、アリール基を表す。
アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基及びアリーロキシ基としては、例えば、先に一般式(2)及び(3)について説明したのと同様のものが挙げられる。これら基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、先に一般式(2)について説明したのと同様のものが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
好ましいR12としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基及び水素原子が挙げられる。
好ましいR13としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンジル基及び水素原子が挙げられる。
好ましいR14としては、例えば、t−ブチル基等の3級アルキル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基及び1−エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、並びにテトラヒドロピラニル基が挙げられる。
次に、式(5)におけるR15〜R19について説明する。
R15乃至R19は、水素原子又は1価の置換基である。
R15としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニルオキシ基及び水素原子が挙げられる。
R16としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニル基及び水素原子が挙げられる。
R17としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニル基及び水素原子が挙げられる。
R18としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニル基及び水素原子が挙げられる。
R19としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニル基及び水素原子が挙げられる。
アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニル基及びアルケニルオキシ基としては、例えば、先に一般式(2)及び(3)について説明したのと同様のものが挙げられる。
これらアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルケニル基及びアルケニルオキシ基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、先に一般式(2)について説明したのと同様のものが挙げられる。
好ましいR15としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビニロキシ基及びメチルビニロキシ基が挙げられる。
好ましいR16としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビニル基及びアリル基が挙げられる。
好ましいR17としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビニル基及びアリル基が挙げられる。
好ましいR18としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビニル基及びアリル基が挙げられる。
好ましいR19としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ビニル基及びアリル基が挙げられる。
R15乃至R19の少なくとも2つは、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
一般式(2)乃至(5)におけるR7乃至R19としては、例えば、以下の化学式中に記載されているものが挙げられる。
一般式(1)乃至(5)の何れかにより表される化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
式A−LGにより表される化合物は、下記一般式(A1−1)により表される化合物であることが特に好ましい。
式(A1−1)中、R20、R21及びGは、それぞれ、一般式(A−1)における各々と同義である。R1乃至R6は、それぞれ、一般式(1)における各々と同義である。
一般式(A1−1)により表される化合物は、例えば、以下のようにして合成する。
まず、下記一般式(1N−I)により表されるアミンと、下記一般式(1A−I)により表される酸ハロゲン化物又は下記一般式(1B−I)により表される酸無水物とを、塩基の存在下で反応させる。これにより、下記一般式(1N−II)により表されるアミンを合成する。
なお、一般式(1N−I)により表されるアミンに対する酸ハロゲン化物又は酸無水物のモル比は、例えば0.9〜2.0の範囲内とし、典型的には1.0〜1.1の範囲内とする。
また、反応は、低温で酸ハロゲン化物又は酸無水物を滴下することにより行うことが好ましい。この反応の溶媒としては、上記反応を阻害しない各種のものを使用することができる。これらのうち、炭化水素系溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ペンタン、ベンゼン、トルエン及びキシレンが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、及び1,4-ジオキサンが挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、及び1,2-ジクロロエタンが挙げられる。この他に、水、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、酢酸エステル類、及びアセトン等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これら溶媒のうち、上記のエーテル系溶媒及びハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、ハロゲン化炭化水素系溶媒がより好ましい。
好ましい反応温度は、塩基の種類や使用する溶媒により異なるが、-78℃から使用する溶媒の沸点までの範囲内であり、特に好ましくは、-20℃〜−15℃の範囲内である。反応時間は、例えば10分から48時間の範囲内であり、好ましくは30分から6時間の範囲内である。
この反応に用いる塩基は、有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよい。この塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム及びカルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩;リン酸三ナトリウム及びリン酸三カリウム等のリン酸塩;カリウムt−ブトキシサイド等のアルカリ金属アルコキサイド;水素化ナトリウム、水素化カリウム及び水素化リチウム等の金属水素化物;n−ブチルリチウム、メチルリチウム及びリチウムジイソプロピルアミド等のアルキルリチウム試薬;又は、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,8−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、ジメチルアニリン、N−メチルモルフォリン、ピリジン、2,6−ルチジン、及びジメチルアミノピリジン等の有機塩基を用いることができる。特には、有機塩基を用いることが好ましい。
式(1N−I)中、R1乃至R6は、それぞれ、一般式(1)における各々と同義である。
式(1A−I)中、R20は、一般式(A−1)におけるものと同義である。Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
式(1B−I)中、R20は、一般式(A−1)におけるものと同義である。
式(1N−II)中、R20は、一般式(A−1)におけるものと同義である。R1乃至R6は、それぞれ、一般式(1)における各々と同義である。
次に、上記一般式(1N−II)により表されるアミンと、下記一般式(1A−II)により表される酸ハロゲン化物又は下記一般式(1B−II)により表される酸無水物とを、塩基の存在下で反応させる。これにより、一般式(A1−1)により表される化合物を得る。
なお、一般式(1N−II)により表されるアミンに対する酸ハロゲン化物又は酸無水物のモル比は、例えば0.9〜2.0の範囲内とし、典型的には1.0〜1.5の範囲内とする。
また、反応は、低温で酸ハロゲン化物又は酸無水物を滴下することにより行うことが好ましい。この反応の溶媒としては、上記反応を阻害しない各種のものを使用することができる。これらのうち、炭化水素系溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ペンタン、ベンゼン、トルエン及びキシレンが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、及び1,4-ジオキサンが挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンが挙げられる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、及び1,2-ジクロロエタンが挙げられる。この他に、水、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、酢酸エステル類、及びアセトン等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これら溶媒のうち、上記のエーテル系溶媒を用いることが特に好ましい。
好ましい反応温度は、塩基の種類や使用する溶媒により異なるが、-78℃から使用する溶媒の沸点までの範囲内であり、特に好ましくは、-20℃〜−15℃の範囲内である。反応時間は、例えば10分から48時間の範囲内であり、好ましくは30分から6時間の範囲内である。
この反応に用いる塩基は、有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよい。この塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム及びカルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩;リン酸三ナトリウム及びリン酸三カリウム等のリン酸塩;カリウムt−ブトキシサイド等のアルカリ金属アルコキサイド;水素化ナトリウム、水素化カリウム及び水素化リチウム等の金属水素化物;n−ブチルリチウム、メチルリチウム及びリチウムジイソプロピルアミド等のアルキルリチウム試薬;又は、ピリジン、トリエチルアミン、N、N−ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,8−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、ジメチルアニリン、N−メチルモルフォリン、ピリジン、2,6−ルチジン、及びジメチルアミノピリジン等の有機塩基を用いることができる。この塩基としては、金属水素化物が好ましく、水素化ナトリウムが特に好ましい。
式(1A−II)中、R21及びGは、それぞれ、一般式(A−1)におけるものと同義である。Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
式(1B−II)中、R21及びGは、それぞれ、一般式(A−1)におけるものと同義である。
なお、上では、R20を含んだ基を備えた第2級アミンの水素原子をR21を含んだ基で置換することにより合成する方法について説明したが、一般式(A1−1)により表される化合物を合成する方法は、これには限られない。例えば、この化合物は、R21を含んだ基を備えた第2級アミンの水素原子を、R20を含んだ基で置換する方法により合成してもよい。
また、式A−LGにより表される他の化合物は、例えば、上で一般式(A1−1)により表される化合物について説明したのと同様の方法により合成することができる。
上述した酸増殖剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。この酸増殖剤の含量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%である。なお、この酸増殖剤の含量は、後述する光発生剤の含量の0.5倍〜2倍であることが好ましい。
〔2〕光酸発生剤
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。光酸発生剤としては、例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物、及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。これらの例としては、スルホニウム塩及びヨードニウム塩等のオニウム塩、並びに、ビス(アルキルスルホニルジアゾメタン)等のジアゾジスルホン化合物が挙げられる。
光酸発生剤の好ましい例としては、下記一般式(ZI)、(ZII)及び(ZIII)により表される化合物が挙げられる。
上記一般式(ZI)中、R201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
R201〜R203のうち2つは、単結合又は連結基を介して互いに結合して、環構造を形成してもよい。この場合の連結基としては、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。R201〜R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
R201、R202及びR203の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)又は(ZI−3)における対応する基が挙げられる。
X−は、非求核性アニオンを表す。X−としては、例えば、スルホン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4 −、PF6 −及びSbF6 −が挙げられる。X−は、好ましくは、炭素原子を含んだ有機アニオンである。好ましい有機アニオンとしては、例えば、下記AN1〜AN3に示す有機アニオンが挙げられる。
式AN1〜AN3中、Rc1〜Rc3は、各々独立に、有機基を表す。この有機基としては、例えば、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは、アルキル基、アリール基、又はこれらの複数が連結基を介して連結された基である。なお、この連結基としては、例えば、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−及び−SO2N(Rd1)−が挙げられる。ここで、Rd1は水素原子又はアルキル基を表し、結合しているアルキル基又はアリール基と環構造を形成してもよい。
Rc1〜Rc3の有機基は、1位がフッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子若しくはフルオロアルキル基で置換されたフェニル基であってもよい。フッ素原子又はフルオロアルキル基を含有させることにより、光照射によって発生する酸の酸性度を上昇させることが可能となる。これにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の感度を向上させることができる。なお、Rc1〜Rc3は、他のアルキル基及びアリール基等と結合して、環構造を形成していてもよい。
また、好ましいX-として、下記一般式(SA1)又は(SA2)により表されるスルホン酸アニオンが挙げられる。
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、−(D−B)基以外の置換基を更に有していてもよい。
nは、1以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2〜3であり、最も好ましくは3である。
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基は、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基又はエステル基である。
Bは、炭化水素基を表す。
式(SA2)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
R1及びR2は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、及び、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基から選ばれる基を表し、複数存在する場合のR1及びR2の各々は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Lは、単結合又は2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Eは、環状構造を有する基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
まず、式(SA1)により表されるスルホン酸アニオンについて、詳しく説明する。
式(SA1)中、Arは、好ましくは、炭素数6〜30の芳香族環である。具体的には、Arは、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環又はフェナジン環である。中でも、ラフネス改良と高感度化との両立の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
Arが−(D−B)基以外の置換基を更に有している場合、この置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、この置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオキシ基、エチルチオキシ基及びtert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基;フェニルチオキシ基及びp−トリルチオキシ基等のアリールチオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基及び2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基;分岐鎖アルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;アセチレン基;プロピニル基及びヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;並びにスルホン酸基が挙げられる。中でも、ラフネス改良の観点から、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基が好ましい。
式(SA1)中、Dは、好ましくは、単結合であるか、又は、エーテル基若しくはエステル基である。より好ましくは、Dは、単結合である。
式(SA1)中、Bは、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基である。Bは、好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基である。Bとしてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
Bとしてのアルキル基は、好ましくは、分岐鎖アルキル基である。この分岐鎖アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、イソヘキシル基、3,3−ジメチルペンチル基及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。
Bとしてのシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。単環のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基及びピネニル基が挙げられる。
Bとしてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基が置換基を有している場合、この置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、この置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオキシ基、エチルチオキシ基及びtert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基;フェニルチオキシ基及びp−トリルチオキシ基等のアリールチオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基及びドデシル基等の直鎖アルキル基;2―エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;アセチレン基;プロピニル基及びヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;スルホン酸基;並びにカルボニル基が挙げられる。中でも、ラフネス改良と高感度化との両立の観点から、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基が好ましい。
次に、式(SA2)により表されるスルホン酸アニオンについて、詳しく説明する。
式(SA2)中、Xfは、フッ素原子であるか、又は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。このアルキル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、炭素数が1〜4のものがより好ましい。また、フッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、Xfは、好ましくは、フッ素原子、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F15、C8F17、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2C2F5、CH2CH2C2F5、CH2C3F7、CH2CH2C3F7、CH2C4F9又はCH2CH2C4F9である。中でも、フッ素原子又はCF3が好ましく、フッ素原子が最も好ましい。
式(SA2)中、R1及びR2の各々は、水素原子、フッ素原子、アルキル基、及び、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基から選ばれる基である。フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましい。また、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。具体的には、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F15、C8F17、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2C2F5、CH2CH2C2F5、CH2C3F7、CH2CH2C3F7、CH2C4F9及びCH2CH2C4F9が挙げられ、中でもCF3が好ましい。
式(SA2)中、xは1〜8が好ましく、1〜4がより好ましい。yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。zは0〜8が好ましく、0〜4がより好ましい。
式(SA2)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、アルキレン基、シクロアルキレン基及びアルケニレン基が挙げられる。中でも、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−SO2−が好ましく、−COO−、−OCO−又は−SO2−がより好ましい。
式(SA2)中、Eは、環状構造を有する基を表す。環状構造を有する基としては、例えば、環状脂肪族基、アリール基及び複素環状構造を有する基等が挙げられる。
Eとしての環状脂肪族基は、単環構造を有していてもよく、多環構造を有していてもよい。単環構造を有した環状脂肪族基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が好ましい。多環構造を有した環状脂肪族基としては、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。特には、Eとして6員環以上のかさ高い構造を有する環状脂肪族基を採用した場合、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性が抑制され、解像力及びEL(露光ラチチュード)を更に向上させることが可能となる。
Eとしてのアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、又はアントリル基である。
Eとしての複素環状構造を有する基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。この基に含まれているヘテロ原子としては、窒素原子又は酸素原子が好ましい。複素環構造の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環等が挙げられる。中でも、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環が好ましい。
Eは、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖及び環状の何れであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基及びスルホン酸エステル基が挙げられる。
光酸発生剤としては、一般式(ZI)により表される構造を複数有する化合物を使用してもよい。例えば、一般式(ZI)により表される化合物のR201〜R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)により表されるもう1つの化合物のR201〜R203の少なくとも1つと結合した構造を有する化合物であってもよい。
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)〜(ZI−4)を挙げることができる。
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である。即ち、化合物(ZI−1)は、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
化合物(ZI−1)は、R201〜R203の全てがアリール基であってもよく、R201〜R203の一部がアリール基であり、それら以外がアルキル基であってもよい。なお、化合物(ZI−1)が複数のアリール基を有する場合、これらアリール基は互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
化合物(ZI−1)としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物及びアリールジアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
化合物(ZI−1)におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、又は、インドール残基及びピロール残基等のヘテロアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基又はインドール残基が特に好ましい。
化合物(ZI−1)が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖、分岐鎖又はシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
これらアリール基及びアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びフェニルチオ基が挙げられる。
好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、及び、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシ基が挙げられる。特に好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。置換基は、3つのR201〜R203のうちの何れか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がフェニル基の場合には、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
また、R201、R202及びR203のうち1つ又は2つが、置換基を有していてもよいアリール基であり、残りの基が直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基である態様も好ましい。この構造の具体例としては、特開2004−210670号公報の段落0141〜0153に記載の構造が挙げられる。
このとき、上記アリール基としては、具体的には、R201、R202及びR203としてのアリール基と同様であり、フェニル基又はナフチル基が好ましい。また、アリール基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアルキル基の何れかを置換基として有することが好ましい。置換基としより好ましくは、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルコキシ基である。
上記の残りの基としての直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。これら基は、更に置換基を有していてもよい。また、上記の残りの基が2つ存在する場合、これら2つが互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
化合物(ZI−1)は、例えば、以下の一般式(ZI−1A)により表される化合物である。
一般式(ZI−1A)中、
R13は、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
R14は、複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基又はシクロアルキルスルホニル基を表す。
R15は、各々独立して、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。2つのR15は、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
X−は、非求核性アニオンを表し、例えば、一般式(ZI)におけるX−と同様のものが挙げられる。
R13、R14又はR15のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。このアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
R13、R14又はR15のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデカニル、シクロベンテニル、シクロヘキセニル及びシクロオクタジエニル基が挙げられる。これらのうち、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基が特に好ましい。
R13又はR14のアルコキシ基のアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のアルキル基として説明したものが挙げられる。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基及びn−ブトキシ基が特に好ましい。
R13のシクロアルキルオキシ基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のシクロアルキル基として説明したものが挙げられる。このシクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が特に好ましい。
R13のアルコキシカルボニル基のアルコキシ基部分としては、例えば、先にR13又はR14のアルコキシ基として説明したものが挙げられる。このアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基及びn−ブトキシカルボニル基が特に好ましい。
R14のアルキルスルホニル基のアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のアルキル基として説明したものが挙げられる。また、R14のシクロアルキルスルホニル基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のシクロアルキル基として説明したものが挙げられる。これらアルキルスルホニル基又はシクロアルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基及びシクロヘキサンスルホニル基が特に好ましい。
lは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。rは、好ましくは0〜2である。
R13、R14及びR15の各基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシアルキル基、シクロアルキルオキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、及びシクロアルキルオキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数1〜20のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜20のものが挙げられる。
アルコキシアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基及び2−エトキシエチル基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシアルキル基としては、例えば、シクロヘキシルオキシメチル基、シクロペンチルオキシメチル基及びシクロヘキシルオキシエチル基等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
アルコキシカルボニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基及びt−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシカルボニル基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基及びシクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
アルコキシカルボニルオキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基及びt−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ基及びシクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
2つのR15が互いに結合して形成し得る環構造としては、一般式(ZI−1A)中のS原子と共に、5員環又は6員環、特に好ましくは5員環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)を形成する構造が好ましい。
この環構造は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
R15としては、メチル基、エチル基、及び2つのR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基が特に好ましい。
R13のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基、並びに、R14のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子(特にフッ素原子)が好ましい。
以下に、一般式(ZI−1A)により表される化合物におけるカチオンの好ましい具体例を示す。
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
R201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、炭素数が例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
R201〜R203は、各々独立に、アルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基、ビニル基であることが好ましい。更に好ましくは、直鎖、分岐鎖若しくは環状の2−オキソアルキル基又はアルコキシカルボニルメチル基であり、特に好ましくは、直鎖又は分岐鎖の2−オキソアルキル基である。
R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖、分岐鎖及び環状の何れであってもよく、好ましい例としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基)及び炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はノルボニル基)が挙げられる。
R201〜R203としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐鎖及び環状の何れであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基が挙げられる。
R201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基の好ましい例としては、炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)が挙げられる。
R201〜R203は、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、ヒドロキシ基、シアノ基及び/又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
R201〜R203のうち2つが互いに結合して、環構造を形成していてもよい。この環構造は、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合及び/又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基又はペンチレン基)が挙げられる。
次いで、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)により表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
式中、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、1〜6が好ましい。
R6c及びR7cは、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜6が好ましい。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基又はビニル基を表す。これら原子団の炭素数は、1〜6が好ましい。
R1c〜R7cの何れか2つ以上が互いに結合して、環構造を形成していてもよい。また、RxとRyとが結合して、環構造を形成していてもよい。これらの環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合及び/又はアミド結合を含んでいてもよい。
一般式(ZI−3)におけるX−は、一般式(ZI)におけるX−と同義である。
化合物(ZI−3)の具体例としては、特開2004−233661号公報の段落0046及び0047、又は、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046に例示されている化合物に記載されている化合物が挙げられる。
続いて、化合物(ZI−4)について説明する。
化合物(ZI−4)は、以下の一般式(ZI−4)により表されるカチオンを有した化合物である。この化合物(ZI−4)は、アウトガスの抑制に有効である。
一般式(ZI−4)中、
R1〜R13は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。R1〜R13のうち少なくとも1つは、アルコール性ヒドロキシ基を含む置換基であることが好ましい。なお、ここで「アルコール性ヒドロキシ基」とは、アルキル基の炭素原子に結合したヒドロキシ基を意味している。
Zは、単結合又は2価の連結基である。
R1〜R13がアルコール性ヒドロキシ基を含む置換基である場合、R1〜R13は−(W−Y)により表される基であることが好ましい。ここで、Yはヒドロキシ基で置換されたアルキル基であり、Wは単結合又は2価の連結基である。
Yにより表されるアルキル基の好ましい例としては、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。Yは、特に好ましくは、−CH2CH2OHにより表される構造を含んでいる。
Wにより表される2価の連結基としては、特に制限は無いが、好ましくは単結合、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた2価の基であり、更に好ましくは、単結合、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基における任意の水素原子を単結合で置換した2価の基である。
R1〜R13がアルコール性ヒドロキシ基を含む置換基である場合、含まれる炭素数は、好ましくは2〜10であり、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくは2〜4である。
R1〜R13としてのアルコール性ヒドロキシ基を含む置換基は、アルコール性ヒドロキシ基を2つ以上有していてもよい。R1〜R13としてのアルコール性ヒドロキシ基を含む置換基の有するアルコール性ヒドロキシ基の数は、1〜6であり、好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1である。
一般式(ZI−4)により表される化合物の有するアルコール性ヒドロキシ基の数は、R1〜R13すべて合わせて1〜10であり、好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜3である。
R1〜R13がアルコール性ヒドロキシ基を含有しない場合、R1〜R13としての置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基〔−B(OH)2〕、ホスファト基〔−OPO(OH)2〕、スルファト基(−OSO3H)、並びに、他の公知の置換基が挙げられる。
R1〜R13がアルコール性ヒドロキシ基を含有しない場合、R1〜R13は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基又はウレイド基である。
R1〜R13がアルコール性ヒドロキシ基を含有しない場合、R1〜R13は、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、又はカルバモイル基である。
R1〜R13がアルコール性ヒドロキシ基を含有しない場合、R1〜R13は、特に好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基である。
R1〜R13のうちの隣接する2つが互いに結合して、環構造を形成してもよい。この環構造には、芳香族及び非芳香族の炭化水素環並びに複素環が含まれる。これら環構造は、更に組み合わされて、縮合環を形成していてもよい。
化合物(ZI−4)は、好ましくは、R1〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性ヒドロキシ基を含んだ構造を有しており、更に好ましくは、R9〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性ヒドロキシ基を含んだ構造を有している。
Zは、上述したように、単結合又は2価の連結基を表している。この2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、ジスルフィド基、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基及びアミノスルホニルアミノ基が挙げられる。
この2価の連結基は、置換基を有していてもよい。これらの置換基としては、例えば、先にR1〜R13について説明したのと同様のものが挙げられる。
Zは、好ましくは、単結合、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基及びアミノスルホニルアミノ基等の電子求引性を持たない結合又は基である。Zは、更に好ましくは、単結合、エーテル基又はチオエーテル基であり、特に好ましくは、単結合である。
以下、一般式(ZII)及び(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)及び(ZIII)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。これらアリール基、アルキル基及びシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
R204〜R207としてのアリール基の好ましい例としては、先に化合物(ZI−1)におけるR201〜R203について列挙したのと同様の基が挙げられる。
R204〜R207としてのアルキル基及びシクロアルキル基の好ましい例としては、先に化合物(ZI−2)におけるR201〜R203について列挙した直鎖、分岐鎖又はシクロアルキル基が挙げられる。
なお、一般式(ZII)及び(ZIII)におけるX−は、一般式(ZI)におけるX−と同義である。
光酸発生剤の他の好ましい例として、下記一般式(ZIV)、(ZV)又は(ZVI)により表される化合物が挙げられる。
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar3及びAr4は、各々独立に、置換又は無置換のアリール基を表す。
R208は、一般式(ZV)と(ZVI)とで各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表している。これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
これら基は、フッ素原子により置換されていることが好ましい。こうすると、光酸発生剤が発生する酸の強度を高めることが可能となる。
R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は電子吸引性基を表す。これらアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び電子吸引性基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
好ましいR209としては、置換又は無置換のアリール基が挙げられる。
好ましいR210としては、電子吸引性基が挙げられる。この電子吸引性基としては、好ましくは、シアノ基及びフルオロアルキル基が挙げられる。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。これらアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基を有していてもよい。
なお、光酸発生剤として、一般式(ZVI)により表される構造を複数有する化合物も好ましい。このような化合物としては、例えば、一般式(ZVI)により表される化合物のR209又はR210と、一般式(ZVI)により表されるもう一つの化合物のR209又はR210とが互いに結合した構造を有する化合物が挙げられる。
光酸発生剤としては、一般式(ZI)〜(ZIII)により表される化合物がより好ましく、一般式(ZI)により表される化合物が更に好ましく、化合物(ZI−1)〜(ZI−3)が特に好ましい。
以下に、光酸発生剤の具体例を示す。
なお、光酸発生剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
また、光酸発生剤の含量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%である。
〔3〕熱酸発生剤
熱酸発生剤は、通常は50〜450℃、好ましくは200〜350℃に加熱することにより酸を発生する化合物である。この熱酸発生剤としては、例えば、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩及びホスホニウム塩などのオニウム塩を用いることができる。
スルホニウム塩としては、例えば、4−アセトフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、及びジメチル−3−クロロ−4−アセトキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネートなどのアルキルスルホニウム塩;ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−2−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイントシレート、及び2−ニトロベンジルトシレートなどのベンジルスルホニウム塩;ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルジベンジルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、ジベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、及びベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートなどのジベンジルスルホニウム塩;並びに、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、p−ニトロベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、及びo−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネートなどの置換ベンジルスルホニウム塩が挙げられる。
ベンゾチアゾニウム塩としては、例えば、3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム テトラフルオロボレート、3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、及び3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネートなどのベンジルベンゾチアゾリウム塩が挙げられる。
さらに、上記以外の熱酸発生剤として、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノンを例示することができる。これらのうち、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、及び3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネートが特に好ましい。これらの市販品としては、例えば、サンエイド SI−L85、SI−L110、SI−L145、SI−L150、及びSI−L160(三新化学工業(株)製)が挙げられる。
なお、これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、熱酸発生剤の含量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜25質量%であり、更に好ましくは2〜20質量%である。
<レジスト組成物>
本発明に係る組成物をレジスト用途に使用する場合、この組成物は、上記の〔2〕光酸発生剤を含んでいる。また、この組成物は、〔3〕熱酸発生剤を更に含んでいてもよい。この組成物は、ポジ型組成物として使用してもよく、ネガ型組成物として使用してもよい。
前者の場合、本発明に係る組成物は、典型的には、〔A1〕酸の作用により分解し、アルカリ現像液への溶解度が増大する樹脂(以下、酸分解性樹脂ともいう)を更に含んでいる。また、この組成物は、〔A3〕酸の作用により分解してアルカリ現像液への溶解度が増大する、分子量3000以下の化合物(以下、溶解阻止化合物ともいう)を更に含んでいてもよい。
後者の場合、本発明に係る組成物は、〔A2〕アルカリ現像液に可溶な樹脂(以下、「アルカリ可溶性樹脂」ともいう)と、〔A4〕酸の作用により上記アルカリ可溶性樹脂と架橋する酸架橋剤とを更に含んでいてもよい。
また、本発明に係る組成物は、〔A5〕塩基性化合物、〔A6〕フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤、〔A7〕疎水性樹脂、〔A8〕有機溶剤、及び/又は〔A9〕その他の添加剤を更に含んでいてもよい。
〔A1〕酸分解性樹脂
酸分解性樹脂は、典型的には、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を生じる基(以下、酸分解性基ともいう)を備えている。この樹脂は、酸分解性基を、樹脂の主鎖及び側鎖の一方に備えていてもよく、これらの両方に備えていてもよい。この樹脂は、酸分解性基を、側鎖に備えていることが好ましい。
酸分解性基としては、−COOH基及び−OH基等のアルカリ可溶性基の水素原子を、酸の作用により脱離する基で置換した基が好ましい。酸の作用により脱離する基としては、アセタール基又は3級エステル基が特に好ましい。
これら酸分解性基が側鎖として結合する場合の母体樹脂としては、例えば、側鎖に−OH又は−COOH基を有するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。このようなアルカリ可溶性樹脂の例としては、後述するものが挙げられる。
これらアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、0.261Nテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)で測定(23℃)して、17nm/秒以上が好ましい。この速度は、特に好ましくは、33nm/秒以上である。
このような観点から、特に好ましいアルカリ可溶性樹脂としては、o−、m−及びp−ポリ(ヒドロキシスチレン)並びにこれらの共重合体、水素化ポリ(ヒドロキシスチレン)、ハロゲン又はアルキル置換ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(ヒドロキシスチレン)の一部O−アルキル化物又はO−アシル化物、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体及び水素化ノボラック樹脂等のヒドロキシスチレン構造単位を含んだ樹脂;並びに、(メタ)アクリル酸及びノルボルネンカルボン酸等のカルボキシ基を有する繰り返し単位を含んだ樹脂が挙げられる。
好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、1−アルコキシエトキシスチレン及び(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルが挙げられる。この繰り返し単位としては、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート又はジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂は、欧州特許254853号明細書、特開平2−25850号公報、同3−223860号公報及び同4−251259号公報等に開示されているように、例えば、樹脂に酸の作用により脱離する基の前駆体を反応させるか、又は、酸の作用により脱離する基の結合したアルカリ可溶性樹脂モノマーを種々のモノマーと共重合させることにより得られる。
本発明の組成物に、KrFエキシマレーザー光、電子線、X線又は波長50nm以下の高エネルギー光線(例えば、EUV)を照射する場合には、この樹脂は、ヒドロキシスチレン繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくは、この樹脂は、ヒドロキシスチレンと酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレンとの共重合体、又は、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルとの共重合体である。
このような樹脂としては、具体的には、下記一般式(A)により表される繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
式中、R01、R02及びR03は、各々独立に、例えば、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。Ar1は、例えば、芳香環基を表す。なお、R03とAr1とがアルキレン基であり、両者が互いに結合することにより、−C−C−鎖と共に、5員又は6員環を形成していてもよい。
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1〜4の整数を表し、1〜2が好ましく、1がより好ましい。
R01〜R03としてのアルキル基は、例えば、炭素数20以下のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基又はドデシル基である。より好ましくは、これらアルキル基は、炭素数8以下のアルキル基である。なお、これらアルキル基は、置換基を有していてもよい。
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R01〜R03におけるア
ルキル基と同様のものが好ましい。
シクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基が挙げられる。なお、これらシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子がより好ましい。
R03がアルキレン基を表す場合、このアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基等の炭素数1〜8のものが挙げられる。
Ar1としての芳香環基は、炭素数6〜14のものが好ましく、例えば、ベンゼン環、トルエン環及びナフタレン環が挙げられる。なお、これら芳香環基は、置換基を有していてもよい。
酸の作用により脱離する基Yとしては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)及び−CH(R36)(Ar)により表される基が挙げられる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
R01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
Arは、アリール基を表す。
R36〜R39、R01又はR02としてのアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基及びオクチル基が挙げられる。
R36〜R39、R01又はR02としてのシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基及びシクロオクチルが挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基及びアンドロスタニル基が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
R36〜R39、R01、R02又はArとしてのアリール基は、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
R36〜R39、R01又はR02としてのアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基であることが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が好ましい。
R36〜R39、R01又はR02としてのアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びシクロへキセニル基が挙げられる。
R36とR37とが互いに結合して形成し得る環は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造及びシクロオクタン構造が挙げられる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造及びテトラシクロドデカン構造が挙げられる。なお、環構造中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
上記各基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。これら置換基は、炭素数が8以下であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基Yとしては、下記一般式(B)により表される構造がより好ましい。
式中、L1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、環状脂肪族基、芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。なお、これら環状脂肪族基及び芳香環基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
なお、Q、M、L1の少なくとも2つが互いに結合して、5員又は6員環を形成していてもよい。
L1及びL2としてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
L1及びL2としてのシクロアルキル基は、例えば炭素数3〜15のシクロアルキル基であり、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
L1及びL2としてのアリール基は、例えば炭素数6〜15のアリール基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
L1及びL2としてのアラルキル基は、例えば炭素数6〜20のアラルキル基であり、具体的には、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
Mとしての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基又はブテニレン基)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基又はナフチレン基)、−S−、−O−、−CO−、−SO2−、−N(R0)−、又は、これらの2以上の組み合わせである。ここで、R0は、水素原子又はアルキル基である。R0としてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
Qとしてのアルキル基及びシクロアルキル基は、上述したL1及びL2としての各基と同様である。
Qにより表される環状脂肪族基又は芳香環基としては、例えば、上述したL1及びL2としてのシクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。これらシクロアルキル基及びアリール基は、好ましくは、炭素数3〜15の基である。
Qにより表されるヘテロ原子を含んだ環状脂肪族基又は芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール及びピロリドン等の複素環構造を有した基が挙げられる。但し、炭素とヘテロ原子とで形成される環、又は、ヘテロ原子のみによって形成される環であれば、これらに限定されない。
Q、M及びL1の少なくとも2つが互いに結合して形成し得る環構造としては、例えば、これらがプロピレン基又はブチレン基を形成してなる5員又は6員環構造が挙げられる。なお、この5員又は6員環構造は、酸素原子を含有している。
一般式(2)におけるL1、L2、M及びQにより表される各基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。これら置換基は、炭素数が8以下であることが好ましい。
−(M−Q)により表される基としては、炭素数1〜30の基が好ましく、炭素数5〜20の基がより好ましい。特に、アウトガス抑制の観点からは、炭素数が6以上の基が好ましい。
他の好ましい樹脂として、下記一般式(X)により表される繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
一般式(X)中、
Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1〜Rx3は、各々独立に、直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキル基が挙げられる。なお、Rx1〜Rx3の少なくとも2つが互いに結合して、単環又は多環のシクロアルキル基を形成していてもよい。
Tとしての2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、−(COO−Rt)−基、及び−(O−Rt)−基が挙げられる。ここで、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−(COO−Rt)−基であることが好ましい。ここで、Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH2−基又は−(CH2)3−基がより好ましい。
Rx1〜Rx3としてのアルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基である。
Rx1〜Rx3としてのシクロアルキル基は、好ましくは、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基である。
Rx1〜Rx3の少なくとも2つが互いに結合して形成し得るシクロアルキル基としては、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
特には、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが互いに結合して、上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
一般式(X)により表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
樹脂中における一般式(X)により表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、好ましくは3〜90モル%の範囲内であり、より好ましくは5〜80モル%の範囲内であり、特に好ましくは7〜70モル%の範囲内である。
以上において説明した樹脂の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
上記具体例において、tBuは、t−ブチル基を表す。
酸で分解し得る基の含有率は、樹脂中の酸で分解し得る基の数(B)と酸で脱離する基で保護されていないアルカリ可溶性基の数(S)とにより、式B/(B+S)によって計算される。この含有率は、好ましくは0.01〜0.7であり、より好ましくは0.05〜0.50であり、更に好ましくは0.05〜0.40である。
本発明の組成物にArFエキシマレーザー光を照射する場合には、この樹脂は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有していることが好ましい。なお、以下では、このような樹脂を「脂環炭化水素系酸分解性樹脂」と呼ぶ。
この脂環炭化水素系酸分解性樹脂としては、下記一般式(pI)〜(pV)により表される脂環式炭化水素を含んだ部分構造を有する繰り返し単位、及び、下記一般式(II-AB)により表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1種を含んだ樹脂が好ましい。
一般式(pI)〜(pV)中、
R11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子と共にシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
R12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又はシクロアルキル基を表す。但し、R12〜R14のうちの少なくとも1つは、シクロアルキル基を表す。また、R15及びR16の何れかは、シクロアルキル基を表す。
R17〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又はシクロアルキル基を表す。但し、R17〜R21のうちの少なくとも1つは、シクロアルキル基を表す。また、R19及びR21の何れかは、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R22〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又はシクロアルキル基を表す。但し、R22〜R25のうちの少なくとも1つは、シクロアルキル基を表す。なお、R23とR24とは、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
一般式(II-AB)中、
R11’及びR12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z’は、結合した2つの炭素原子(C−C)と共に脂環式構造を形成するために必要な原子団を表す。
また、上記一般式(II-AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが更に好ましい。
一般式(II−AB1)及び(II−AB2)中、
R13’〜R16’は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、−COOH、−COOR5、酸の作用により分解する基、−C(=O)−X−A'−R17’、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。ここで、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO2−又は−NHSO2NH−を表す。A'は、単結合又は2価の連結基を表す。R17’は、−COOH、−COOR5、−CN、ヒドロキシ基、アルコキシ基、−CO−NH−R6、−CO−NH−SO2−R6又はラクトン構造を有する基を表す。ここで、R6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。なお、R13’〜R16’のうち少なくとも2つが互いに結合して、環構造を形成してもよい。
nは、0又は1を表す。
一般式(pI)〜(pV)において、R12〜R25におけるアルキル基は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基及びt−ブチル基が挙げられる。
R12〜R25におけるシクロアルキル基、又は、Zと炭素原子とが形成するシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ及びテトラシクロ構造を有する基が挙げられる。その炭素数は6〜30が好ましく、7〜25が特に好ましい。
好ましいシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基及びシクロドデカニル基が挙げられる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基及びトリシクロデカニル基が挙げられる。
これらアルキル基及びシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシ基及びアルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。これら置換基は、更なる置換基を有していてもよい。この更なる置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン原子及びアルコキシ基が挙げられる。
一般式(pI)〜(pV)により表される構造は、アルカリ可溶性基の保護に用いることができる。このアルカリ可溶性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
具体的には、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基及びチオール基等の水素原子が一般式(pI)〜(pV)により表される構造によって置換された構造が挙げられる。好ましくは、カルボン酸基又はスルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)により表される構造で置換された構造である。
一般式(pI)〜(pV)により表される構造によって保護されたアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(pA)により表される繰り返し単位が好ましい。
一般式(pA)中、
Rは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。複数のRの各々は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、ウレア基、及びこれらの2以上の組み合わせからなる群より選択され、好ましくは単結合である。
Rp1は、上記一般式(pI)〜(pV)の何れかにより表される基である。
一般式(pA)により表される繰り返し単位は、最も好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート又はジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
以下、一般式(pA)で示される繰り返し単位の具体例を示す。
上記各構造式において、Rxは、H、CH3、CF3又はCH2OHを表し、Rxa及びRxbは、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
一般式(II−AB)におけるR11’又はR12’としてのハロゲン原子は、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子又はヨウ素原子である。
R11’又はR12’としてのアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、並びに、直鎖若しくは分岐のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びヘプチル基が挙げられる。
上記Z’により表される原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素の繰り返し単位を、樹脂中に形成する原子団である。この原子団としては、有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成するものが好ましい。
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pVI)におけるR12〜R25のシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
上記脂環式炭化水素の骨格は、置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、上記一般式(II−AB1)及び(II−AB2)におけるR13’〜R16’が挙げられる。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂において、酸の作用により分解する基は、上記一般式(pI)〜一般式(pV)により表される脂環式炭化水素を含んだ部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II-AB)により表される繰り返し単位、及び、後述する共重合成分の繰り返し単位のうちの少なくとも1つに含有させることができる。
上記一般式(II−AB1)及び(II−AB2)におけるR13’〜R16’の各置換基は、上記一般式(II−AB)における脂環式構造又は有橋式脂環式構造を形成するための原子団Z’の置換基ともなり得る。
上記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)により表される繰り返し単位として、下記具体例を挙げるが、本発明は、これらの例に限定されない。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、ラクトン基を含んだ繰り返し単位を有することが好ましい。このラクトン基は、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を有する基であり、特には、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。
この脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、より好ましくは、下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の何れかにより表されるラクトン構造を含んだ基を有する繰り返し単位を含んでいる。なお、ラクトン構造を有する基は、主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては、(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)及び(LC1−17)が挙げられる。特定のラクトン構造を用いることにより、ラインエッジラフネス及び現像欠陥を更に減少させ得る。
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していてもよく、有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基及び酸分解性基が挙げられる。
n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の整数である場合、複数存在するRb2は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、この場合、複数存在するRb2同士が互いに結合して、環構造を形成してもよい。
一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の何れかにより表されるラクトン構造を含んだ基を有する繰り返し単位としては、例えば、上記一般式(II−AB1)及び(II−AB2)中のR13’〜R16’のうちの少なくとも1つが一般式(LC1−1)〜(LC1−17)により表される基を有するもの、及び、下記一般式(AI)により表される繰り返し単位が挙げられる。なお、前者の例としては、−COOR5のR5が一般式(LC1−1)〜(LC1−17)により表される基である構造が挙げられる。
一般式(AI)中、Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Rb0としてのアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基又はt−ブチル基である。これらアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
Rb0は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
Abは、アルキレン基、単環若しくは多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、単結合、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシ基、又はこれらの組み合わせを表す。Abは、好ましくは、単結合又は−Ab1−CO2−により表される連結基である。
Ab1は、直鎖若しくは分岐アルキレン基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、好ましくは、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基又はノルボルニレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の何れかにより表される基である。
なお、ラクトン構造を有する繰り返し単位には、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度が90%ee以上のものが好ましく、95%ee以上のものがより好ましい。
特に好ましいラクトン基を有する繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン基を選択することにより、パターンプロファイル、疎密依存性が良好となる。式中、Rx及びRは、H、CH3、CH2OH又はCF3を表す。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、極性基で置換された脂環炭化水素構造を含んだ繰り返し単位を有していることが好ましい。これにより、基板密着性及び現像液親和性を向上させ得る。この極性基としては、ヒドロキシ基又はシアノ基が好ましい。なお、極性基としてのヒドロキシ基は、アルコール性ヒドロキシ基を形成する。
極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、例えば、下記一般式(VIIa)又は(VIIb)により表される構造が挙げられる。
一般式(VIIa)中、R2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、ヒドロキシ基又はシアノ基を表す。但し、R2c〜R4cのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシ基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c〜R4cのうちの1つ又は2つがヒドロキシ基であり、残りが水素原子である。更に好ましくは、R2c〜R4cのうちの2つがヒドロキシ基であり、残りの1つが水素原子である。
一般式(VIIa)により表される基は、好ましくはジヒドロキシ体又はモノヒドロキシ体であり、より好ましくはジヒドロキシ体である。
一般式(VIIa)又は(VIIb)により表される基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13’〜R16’のうちの少なくとも1つが上記一般式(VIIa)又は(VIIb)により表される基を有するもの、及び、下記一般式(AIIa)又は(AIIb)により表される繰り返し単位が挙げられる。前者の例としては、−COOR5のR5が一般式(VIIa)又は(VIIb)により表される基である構造が挙げられる。
一般式(AIIa)、(AIIb)中、
R1cは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキメチル基を表す。
R2c〜R4cは、一般式(VIIa)におけるR2c〜R4cと同義である。
一般式(AIIa)又は(AIIb)により表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、下記一般式(VIII)により表される繰り返し単位を有してもよい。
一般式(VIII)中、Z2は、−O−又は−N(R41)−を表す。R41は、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基又は−OSO2−R42を表す。ここでR42は、アルキル基、シクロアルキル基又は樟脳残基を表す。R41又はR42としてのアルキル基は、ハロゲン原子等により置換されていてもよい。この場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
一般式(VIII)により表される繰り返し単位として、以下の具体例が挙げられるが、本発明は、これらに限定されない。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、アルカリ可溶性基を含んだ繰り返し単位を有することが好ましく、カルボキシ基を含んだ繰り返し単位を有することがより好ましい。これにより、コンタクトホール用途での解像度を向上させ得る。
カルボキシ基を含んだ繰り返し単位としては、樹脂の主鎖に直接カルボキシ基が結合している繰り返し単位、及び、連結基を介して樹脂の主鎖にカルボキシ基が結合している繰り返し単位のいずれも好ましい。
前者の例としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が挙げられる。また、後者における連結基は、単環又は多環のシクロアルキル構造を有していてもよい。
カルボキシ基を含んだ繰り返し単位としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が最も好ましい。
繰り返し単位(A)を含んだ樹脂は、極性基を有していない脂環炭化水素構造を備え且つ酸分解性を示さない繰り返し単位を更に含んでいてもよい。このような繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(IV)により表される繰り返し単位が挙げられる。
一般式(IV)中、R5は、少なくとも1つの環状構造を備え且つヒドロキシ基及びシアノ基の何れも有していない炭化水素基を表す。
Raは、水素原子、アルキル基、又は−CH2−O−Ra2により表される基を表す。ここで、Ra2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
R5が備えている環状構造としては、例えば、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が挙げられる。
単環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基及びシクロオクチル基等の炭素数が3〜12のシクロアルキル基、並びに、シクロへキセニル基等の炭素数が3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数が3〜7のものが挙げられる。このような単環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
多環式炭化水素基には、環集合炭化水素基及び架橋環式炭化水素基が含まれる。
環集合炭化水素基としては、例えば、ビシクロヘキシル基及びパーヒドロナフタレニル基が挙げられる。
架橋環式炭化水素基としては、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、及びビシクロオクタン環(例えば、ビシクロ[2.2.2]オクタン環又はビシクロ[3.2.1]オクタン環)等の2環式炭化水素基、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン及びトリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環等のの3環式炭化水素基、並びに、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン及びパーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環等の4環式炭化水素基が挙げられる。
架橋環式炭化水素基には、縮合環式炭化水素基も含まれる。この縮合環式炭化水素基としては、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、及びパーヒドロフェナレン環等の5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合してなる基が挙げられる。
好ましい架橋環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基及びトリシクロ[5、2、1、02,6]デカニル基が挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素基としては、例えば、ノルボニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
これらの脂環式炭化水素基は、置換基を更に有していてもよい。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシ基、及び保護基で保護されたアミノ基が挙げられる。
好ましいハロゲン原子としては、臭素、塩素及びフッ素原子が挙げられる。
好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、ブチル及びt−ブチル基が挙げられる。このアルキル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシ基、及び保護基で保護されたアミノ基が挙げられる。
上記の保護基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、及びアラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数が1〜4のものが挙げられる。好ましい置換メチル基としては、メトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル及び2−メトキシエトキシメチル基が挙げられる。好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル及び1−メチル−1−メトキシエチル基が挙げられる。好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル及びピバロイル基等の炭素数が1〜6の脂肪族アシル基が挙げられる。好ましいアルコキシカルボニル基としては、炭素数が1〜4のものが挙げられる。
以下に、極性基を有していない脂環炭化水素構造を備え且つ酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を挙げる。これら具体例中、Raは、H、CH3、CH2OH又はCF3を表す。
極性基を有していない脂環炭化水素構造を備え且つ酸分解性を示さない繰り返し単位の含有量は、樹脂中の全繰り返し単位に対して、0〜40モル%であることが好ましく、5〜20モル%であることがより好ましい。
KrF、EB及びEUVなどに好適な樹脂は、先に説明した繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。このような繰り返し単位としては、例えば、酸の作用に対して安定な繰り返し単位が挙げられる。
酸の作用に対して安定な繰り返し単位としては、例えば、先に説明した一般式(IV)により表される繰り返し単位等の、アクリル構造の側鎖に非酸分解性のアリール構造又はシクロアルキル構造を有する繰り返し単位が挙げられる。なお、一般式(IV)により表される繰り返し単位中、R5は、炭化水素基であり且つその中に環状構造を有することが好ましい。環状構造を有する場合の具体例としては、単環又は多環のシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜12、より好ましくは炭素数3〜7、特に好ましくはシクロヘキシル基)、単環又は多環のシクロアルケニル基(炭素数3〜12が好ましい)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12、特に好ましくはフェニル基又はナフチル基)、及びアラルキル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜12、特に好ましくはベンジル基)が挙げられる。このような構造を有することにより、コントラストの調節及びエッチング耐性の向上などが期待できる。
酸の作用に対して安定な繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂中の全繰り返し単位に対して、0〜40モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましい。
酸の作用に対して安定な繰り返し単位の具体例としては、先に挙げた一般式(IV)により表される繰り返し単位の具体例に加えて、以下のものを挙げることができる。式中、Raは、H、CH3、CH2OH、又はCF3を表す。
酸分解性樹脂の重量平均分子量は、GPC法によって求めたポリスチレン換算値として、好ましくは、2,000〜200,000の範囲内である。重量平均分子量を2,000以上とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性を特に向上させ得る。重量平均分子量を200,000以下とすることにより、現像性を特に向上させ得ると共に、組成物の粘度の低下に起因して、その製膜性をも向上させ得る。
より好ましい分子量は、2,500〜50,000の範囲内であり、更に好ましくは、3,000〜20,000の範囲内である。また、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー線(例えば、EUV)を利用した微細パターン形成では、重量平均分子量を3,000〜10,000の範囲内とすることが最も好ましい。分子量を調整することにより、組成物の耐熱性及び解像力の向上並びに現像欠陥の減少等を同時に達成し得る。
酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0が好ましく、1.2〜2.5がより好ましく、1.2〜1.6が更に好ましい。この分散度を調整することにより、例えば、ラインエッジラフネス性能を向上させ得る。
本発明に係る組成物に占めるこの樹脂の配合率は、全固形分中を基準として、0〜99.9質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、60〜93質量%がより好ましい。
〔A2〕アルカリ可溶性樹脂
アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、0.261Nテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて測定(23℃)して、2nm/秒以上が好ましい。特に好ましくは、この速度は、20nm/秒以上である。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、水素化ノボラック樹脂、アセトン−ピロガロール樹脂、o−ポリヒドロキシスチレン、m−ポリヒドロキシスチレン、p−ポリヒドロキシスチレン、水素化ポリヒドロキシスチレン、ハロゲン又はアルキル置換ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、o/p−及びm/p−ヒドロキシスチレン共重合体、ポリヒドロキシスチレンのヒドロキシ基に対する一部O−アルキル化物(例えば、5〜30モル%のO−メチル化物、O−(1−メトキシ)エチル化物、O−(1−エトキシ)エチル化物、O−2−テトラヒドロピラニル化物又はO−(t−ブトキシカルボニル)メチル化物)又はO−アシル化物(例えば、5〜30モル%のO−アセチル化物又はO−(t−ブトキシ)カルボニル化物)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、カルボキシ基含有メタクリル系樹脂及びその誘導体、並びに、ポリビニルアルコール誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
好ましいアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、o−ポリヒドロキシスチレン、m−ポリヒドロキシスチレン、p−ポリヒドロキシスチレン及びこれらの共重合体、アルキル置換ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの一部O−アルキル化又はO−アシル化物、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、並びにα−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体が挙げられる。
特には、ヒドロキシスチレン構造を有する樹脂が好ましい。また、ヒドロキシスチレン構造の中でも、m−ヒドロキシスチレン構造が特に好ましい。
上記のノボラック樹脂は、例えば、所定のモノマーを主成分として、酸性触媒の存在下、アルデヒド類と付加縮合させることにより得られる。
また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、2000以上であり、好ましくは5000〜200000であり、より好ましくは5000〜100000である。ここで、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたポリスチレン換算値で定義される。
これらアルカリ可溶性樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
アルカリ可溶性樹脂の使用量は、組成物中の全固形分を基準として、例えば40〜97質量%とし、好ましくは60〜90質量%とする。
〔A3〕溶解阻止化合物
溶解阻止化合物としては、220nm以下における透過性を低下させないため、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、Proceeding of SPIE, 2724, 355 (1996) に記載されている酸分解性基を含んだコール酸誘導体が挙げられる。なお、これら脂環式構造及び酸分解性基としては、上記脂環炭化水素系酸分解性樹脂について説明したのと同様のものが挙げられる。
本発明に係る組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか又は電子線で照射する場合には、溶解阻止化合物は、フェノール化合物におけるフェノール性ヒドロキシ基を酸分解基で置換した構造を含んでいることが好ましい。このフェノール化合物としては、フェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、2〜6個含有するものが更に好ましい。
溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、300〜3000が好ましく、500〜2500が更に好ましい。
溶解阻止化合物の添加量は、組成物中の全固形分を基準として、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%である。
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
〔A4〕酸架橋剤
酸架橋剤としては、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶な樹脂を架橋する化合物であれば何れも用いることができるが、以下の(1)〜(3)が好ましい。
(1)フェノール誘導体のヒドロキシメチル体、アルコキシメチル体又はアシルオキシメチル体。
(2)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基又はN−アシルオキシメチル基を有する化合物。
(3)エポキシ基を有する化合物。
ここで、アルコキシメチル基としては、炭素数6以下のものが好ましい。また、アシルオキシメチル基としては、炭素数6以下のものが好ましい。
これらの酸架橋剤のうち、特に好ましいものを以下に挙げる。
式中、L1〜L8は、各々独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
酸架橋剤の添加量は、組成物の全固形分を基準として、例えば3〜70質量%とし、好ましくは5〜50質量%とする。
〔A5〕塩基性化合物
本発明に係る組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。塩基性化合物は、露光により発生した酸による脱保護反応をクエンチする役割を果たし、その拡散性及び塩基性度等が、酸の実効的な拡散性に影響し得る。
好ましい塩基性化合物として、下記式(A)により表されるアンモニウム塩、及び、式(B)〜(E)により表される構造を有する塩基性の化合物が挙げられる。
式(A)中、R250、R251及びR252は、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜20)を表す。なお、R250とR251とは、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。また、これら基は、置換基を有していてもよい。
置換基を有するアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数3〜20のアミノシクロアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数3〜20のヒドロキシシクロアルキル基が好ましい。
また、これらはアルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含んでいてもよい。
式(E)中、R253乃至R256は、各々独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜6)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜6)を表す。
好ましい化合物としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン及びピペリジンが挙げられる。これら化合物は、置換基を有していてもよい。
更に好ましい化合物としては、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、ヒドロキシ基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、並びに、ヒドロキシ基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体が挙げられる。
イミダゾール構造を有する化合物としては、例えば、イミダゾール;2,4,5−トリフェニルイミダゾール;及びベンズイミダゾールが挙げられる。
ジアザビシクロ構造を有する化合物としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン;1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン;及び1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンが挙げられる。
オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、及び2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシドが挙げられる。具体的には、例えば、トリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、及び2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシドが挙げられる。
オニウムカルボキシレート構造を有する化合物は、オニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えば、アセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、及びパーフルオロアルキルカルボキシレートが挙げられる。
トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、例えば、トリ(n−ブチル)アミン及びトリ(n−オクチル)アミンが挙げられる。
アニリン化合物としては、例えば、2,6−ジイソプロピルアニリン及びN,N−ジメチルアニリンが挙げられる。
ヒドロキシ基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びトリス(メトキシエトキシエチル)アミンが挙げられる。
ヒドロキシ基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、例えば、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等が挙げられる。
他の塩基性化合物としては、フェノキシ基を有するアミン化合物及びフェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種類の含窒素化合物が挙げられる。
アミン化合物としては、1級、2級又は3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。また、アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。
また、アミン化合物は、アルキル鎖中に酸素原子を含み、1つ以上のオキシアルキレン基を有していることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、好ましくは3〜9個であり、さらに好ましくは4〜6個である。このオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基(−CH2CH2O−)又はオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−若しくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、オキシエチレン基が更に好ましい。
アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。
アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に酸素原子を含み、1つ以上のオキシアルキレン基を有していてもよい。オキシアルキレン基の数は、好ましくは3〜9個であり、さらに好ましくは4〜6個である。このオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基(−CH2CH2O−)又はオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−若しくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、オキシエチレン基が更に好ましい。
アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハライド、スルホネート、ボレート、フォスフェート及びハイドロキサイド等が挙げられるが、中でも、ハイドロキサイドが好ましい。
ハライドとしては、クロライド、ブロマイド又はアイオダイドが特に好ましい。
フェノキシ基を有するアミン化合物は、例えば、フェノキシ基を有する1級又は2級アミンとハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得られる。また、フェノキシ基を有するアミン化合物は、1級又は2級アミンと、末端にフェノキシ基を有するハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することによって得ることもできる。
感度、ラフネス及び安定性等の観点から、塩基性化合物としてアンモニウム塩化合物を用いることが特に好ましく、4級のアンモニウム塩化合物のハイドロキサイドを用いることが最も好ましい。
これらの塩基性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基性化合物の分子量は、250〜1000であることが好ましく、250〜800であることがより好ましく、400〜800であることが特に好ましい。
塩基性化合物の含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは1.0〜8.0質量%であり、より好ましくは1.5〜5.0質量%であり、更に好ましくは2.0〜4.0質量%である。
〔A6〕フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤
本発明に係る組成物は、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を更に含有していてもよい。フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子とケイ素原子との両方を含有する界面活性剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
本発明に係る組成物にフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤を含有させることにより、250nm以下、特には220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを与えることが可能となる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えば、エフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファッ
クF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、及びトロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤が挙げられる。また、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を含んだものを用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、例えば、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基及びポリ(オキシブチレン)基が挙げられる。また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)及びポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等の、同じ鎖内に異なる鎖長のアルキレンを有するユニットであってもよい。
さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体は、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー及び異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート等を同時に共重合してなる3元系以上の共重合体であってもよい。
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476及びF−472(大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。さらに、C6F13基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C6F13基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C8F17基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、及び、C8F17基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤の使用量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.0001〜2質量%であり、より好ましくは0.001〜1質量%である。
〔A7〕疎水性樹脂
本発明に係る組成物は、上述したように、疎水性樹脂を更に含んでいてもよい。疎水性樹脂を更に含有させると、この組成物を用いて形成した膜の表層に疎水性樹脂が偏在化し、液浸液として水を使用した場合の液浸液に対する膜の後退接触角を向上させることが可能となる。これにより、膜の液浸液追随性を向上させることができる。
疎水性樹脂は、典型的には、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含んでいる。これらフッ素原子及び/又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
疎水性樹脂がフッ素原子を含んでいる場合、この樹脂は、フッ素原子を含んだ部分構造として、フッ素原子を含んだアルキル基、フッ素原子を含んだシクロアルキル基、又はフッ素原子を含んだアリール基を備えていることが好ましい。
フッ素原子を含んだアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐鎖アルキル基である。このアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましい。このフッ素原子を含んだアルキル基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
フッ素原子を含んだシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環式又は多環式のシクロアルキル基である。このフッ素原子を含んだシクロアルキル基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
フッ素原子を含んだアリール基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアリール基である。このアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。このフッ素原子を含んだアリール基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
フッ素原子を含んだアルキル基、フッ素原子を含んだシクロアルキル基及びフッ素原子を含んだアリール基の好ましい例として、下記一般式(F2)〜(F4)により表される基が挙げられる。
一般式(F2)〜(F4)中、R57〜R68は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R62〜R64のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R65〜R68のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。これらアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましい。
R57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。
R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。なお、R62とR63とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
一般式(F2)により表される基としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基が挙げられる。
一般式(F3)により表される基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル基、及びパーフルオロシクロヘキシル基が挙げられる。これらのうち、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基又はパーフルオロイソペンチル基がより好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基又はヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)により表される基としては、例えば、−C(CF3)2OH、−C(C2F5)2OH、−C(CF3)(CH3)OH、及び−CH(CF3)OHが挙げられる。これらのうち、−C(CF3)2OHが特に好ましい。
以下に、フッ素原子を含んだ繰り返し単位の具体例を示す。
具体例中、X1は、水素原子、−CH3、−F又は−CF3を表す。X2は、−F又は−CF3を表す。
疎水性樹脂がケイ素原子を含んでいる場合、この樹脂は、ケイ素原子を含んだ部分構造として、アルキルシリル構造又は環状シロキサン構造を備えていることが好ましい。このアリキルシリル構造は、好ましくは、トリアルキルシリル基を含んだ構造である。
アルキルシリル構造及び環状シロキサン構造の好ましい例として、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)により表される基が挙げられる。
一般式(CS−1)〜(CS−3)中、R12〜R26は、各々独立に、直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はシクロアルキル基を表す。このアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましい。このシクロアルキル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
L3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、フェニレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、又はこれらの組合せが挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。nは、好ましくは、2〜4の整数である。
以下に、一般式(CS−1)〜(CS−3)により表される基を備えた繰り返し単位の具体例を挙げる。具体例中、X1は、水素原子、−CH3、−F又は−CF3を表す。
疎水性樹脂は、下記(x)乃至(z)からなる群より選択される少なくとも1つの基を更に含んでいてもよい。
(x)アルカリ可溶性基;
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基;
(z)酸分解性基。
(x)アルカリ可溶性基としては、例えば、フェノール性ヒドロキシ基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基が挙げられる。好ましいアルカリ可溶性基としては、フッ素化アルコール基、スルホンイミド基及びビス(カルボニル)メチレン基が挙げられる。好ましいフッ素化アルコール基としては、ヘキサフルオロイソプロパノール基が挙げられる。
アルカリ可溶性基を備えた繰り返し単位は、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸による繰り返し単位等の、樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位である。或いは、この繰り返し単位は、アルカリ可溶性基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合している繰り返し単位であってもよい。或いは、この繰り返し単位は、アルカリ可溶性基を備えた重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
アルカリ可溶性基を備えた繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜50モル%であることが好ましく、3〜35モル%であることがより好ましく、5〜20モル%であることが更に好ましい。
以下に、アルカリ可溶性基を備えた繰り返し単位の具体例を示す。
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、例えば、ラクトン構造を備えた基、酸無水物基、及び酸イミド基が挙げられる。これらのうち、ラクトン構造を備えた基が特に好ましい。
この基を含んだ繰り返し単位は、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等の、樹脂の主鎖に直接この基が結合している繰り返し単位である。或いは、この繰り返し単位は、この基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合している繰り返し単位であってもよい。或いは、この繰り返し単位は、この基を備えた重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を備えた繰り返し単位としては、例えば、先に[1]樹脂の項で説明したラクトン構造を備えた繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を備えた繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜40モル%であることが好ましく、3〜30モル%であることがより好ましく、5〜15モル%であることが更に好ましい。
(z)酸分解性基としては、例えば、先に[1]樹脂の項で説明したのと同様のものが挙げられる。
酸分解性基を備えた繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜80モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることがより好ましく、20〜60モル%であることが更に好ましい。
疎水性樹脂は、下記一般式(III)により表される繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
一般式(III)中、Rc31は、水素原子、アルキル基、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基、シアノ基又は−CH2−O−Rac2基を表す。ここで、Rac2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
Rc31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
Rc32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を含んだ基を表す。これら基は、フッ素原子及び/又はケイ素原子で置換されていてもよい。
Rc32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であることが好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
アルケニル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数が3〜20であるシクロアルケニル基が好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20のフェニル基、ナフチル基が好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
Rc32は、無置換のアルキル基又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましい。
Lc3は、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、例えば、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基、フェニレン基、及びエステル結合(−COO−により表される基)が挙げられる。
疎水性樹脂は、下記一般式(CII−AB)により表される繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
式(CII−AB)中、
Rc11'及びRc12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。Zc’は、Rc11'及びRc12'が結合している2つの炭素原子(C−C)と共に脂環式構造を形成するために必要な原子団を表す。
以下に、一般式(III)又は(CII−AB)により表される繰り返し単位の具体例を挙げる。具体例中、Raは、H、CH3、CH2OH、CF3又はCNを表す。
以下に、疎水性樹脂の具体例を挙げる。また、下記表1に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、及び分散度を纏める。
〔A8〕有機溶剤
本発明に係る組成物は、典型的には、上記の成分を溶解する所定の有機溶剤を更に含んでいる。
使用し得る有機溶剤としては、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン及びテトラヒドロフランが挙げられる。
ケトン構造を有する溶剤としては、例えば、鎖状ケトン溶剤及び環状ケトン溶剤が挙げられる。塗布性の観点から、合計炭素数5〜8のものが特に好ましい。
鎖状ケトン溶剤としては、例えば、2−ヘプタノン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが挙げられる。これらのうち、2−ヘプタノンが特に好ましい。
環状ケトン溶剤としては、例えば、シクロペンタノン、3−メチル−2−シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン及びイソホロンが挙げられる。これらのうち、シクロヘキサノン及びシクロヘプタノンが特に好ましい。
有機溶剤としては、ケトン構造を有する溶剤を単独で用いるか、又は、ケトン構造を有する溶剤と他の溶剤との混合溶剤を用いることが好ましい。
ケトン構造を有する溶剤と混合する他の溶剤(併用溶剤)としては、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、乳酸アルキル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、アルコキシプロピオン酸アルキル及びラクトン化合物が挙げられる。
プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
乳酸アルキルとしては、例えば、乳酸メチル及び乳酸エチルが挙げられる。
プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル及びエトキシプロピオン酸エチルが挙げられる。
ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトンが挙げられる。
好ましい併用溶剤としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、乳酸アルキル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。より好ましい併用溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
また、膜厚均一性及び現像欠陥性能の観点から、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート等の沸点200℃以上の高沸点溶剤を混合してもよい。
これら高沸点溶剤の添加量は、通常は全溶剤中の0.1〜15質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%であり、更に好ましくは1〜5質量%である。
本発明では、典型的には、有機溶剤を用いて、好ましくは2種類以上の混合溶剤を用いて、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する。
この組成物の固形分濃度は、通常は1〜25質量%とし、好ましくは2〜20質量%とし、より好ましくは2.5〜10質量%とする。特に、電子線、EUV光又はArF光によりパターン形成を行う場合には、この固形分濃度は、2.5〜4.5質量%とすることが好ましい。
〔A9〕その他の添加剤
本発明に係る組成物には、必要に応じて、染料、可塑剤、先に挙げたフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の界面活性剤、光増感剤、及び、現像液に対する溶解性を促進させる化合物等の添加剤を更に含有させてもよい。
現像液に対する溶解性を促進させる化合物(溶解促進性化合物)は、例えば、フェノール性OH基を2個以上又はカルボキシ基を1個以上有する、分子量1,000以下の低分子化合物である。カルボキシ基を有する場合は、脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。
これら溶解促進性化合物の添加量は、好ましくは、上述した樹脂に対して2〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜30質量%である。現像残渣の抑制及び現像時のパターン変形防止の観点から、この添加量は、50質量%以下が好ましい。
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号及び欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、容易に合成することができる。
カルボキシ基を有する脂環族又は脂肪族化合物の具体例としては、コール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸等のステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪族エステル類、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル類等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で添加してもよく、2種以上を組み合わせて添加してもよい。
〔パターン形成方法〕
以下、本発明に係る組成物を用いたパターン形成方法について説明する。
本発明に係る組成物は、典型的には、所定の有機溶剤、好ましくは上記の混合溶剤に溶解し、所定の支持体上に塗布して用いる。例えば、この組成物は、精密集積回路素子やインプリント用モールド構造体の製造等に使用される基板(例:シリコン、シリコン/二酸化シリコン被覆、窒化シリコン、Cr層を有する石英など)上に、スピナー及びコーター等の適当な塗布方法により塗布される。その後、これを乾燥して、感活性光線性又は感放射線性の膜(以下、感光性膜ともいう)を得る。また、乾燥温度は60〜150℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。なお、予め公知の反射防止膜を塗設することもできる。
次いで、感光性膜に活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行った後、現像する。ベーク温度は、感度及び安定性の観点から80℃から150℃が好ましく、90〜130℃がより好ましい。これにより良好なパターンを得ることができる。
活性光線又は放射線としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、及び電子線が挙げられる。これら活性光線又は放射線としては、例えば250nm以下、特には220nm以下の波長を有したものがより好ましい。このような活性光線又は放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、及び電子ビームが挙げられる。特に好ましい活性光線又は放射線としては、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)及び電子ビームが挙げられる。
なお、感光性膜とレンズとの間に空気よりも屈折率の高い液体(純水など)を満たして露光を行ってもよい。即ち、液浸露光を行ってもよい。これにより、解像度を更に高めることができる。この場合、レジスト膜と液浸液との間には、レジスト膜と液浸液との接触を避けるために、レジスト膜の上に液浸液難溶性膜(「トップコート」ともいう)を設けてもよい。また、レジスト膜と液浸液との接触を避けるための別の手段として、前述の組成物に予め疎水性樹脂(HR)を添加しておいてもよい。この疎水性樹脂(HR)として具体的には、US2008/0305432A1号明細書の段落0172〜0253で説明されている樹脂などが挙げられる。
現像工程では、通常、アルカリ現像液を用いる。
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及びアンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン及びn−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン及びジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン及びメチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、又は、ピロール及びピヘリジン等の環状アミン類を含んだアルカリ性水溶液が挙げられる。
アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1〜20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常、10.0〜15.0である。
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスの詳細については、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」等を参照されたい。
<硬化性組成物>
本発明に係る組成物は、硬化性組成物であってもよい。この硬化性組成物は、感活性光線性又は感放射線性であってもよく、感熱性であってもよい。即ち、この硬化性組成物は、〔2〕光酸発生剤を含んでいてもよく、〔3〕熱酸発生剤を含んでいてもよい。或いは、この硬化性組成物は、〔2〕光酸発生剤と〔3〕熱酸発生剤との双方を含んでいてもよい。
この場合、本発明に係る組成物は、典型的には、〔B1〕カチオン重合性化合物、又は〔B2〕酸架橋剤を含んでいる。また、この組成物は、〔B3〕増感剤、〔B4〕ラジカル重合性化合物、〔B5〕着色剤、〔B6〕共増感剤、〔B7〕重合開始剤、及び〔B8〕その他の成分を更に含んでいてもよい。
なお、本発明に係る硬化性組成物は、例えば、インクとして使用する。即ち、この硬化性組成物は、例えば、インク組成物である。
〔B1〕カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物としては、カチオン重合開始剤から発生するカチオン重合開始種により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はない。このような化合物としては、例えば、光カチオン重合性モノマーとして知られる公知のカチオン重合性モノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、及び同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、及びオキセタン化合物が挙げられる。また、カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では、400nm以上の可視光波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂も、例えば、特開平6−43633号及び特開平8−324137号の各公報に公開されている。
エポキシ化合物としては、例えば、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、及び脂肪族エポキシドが挙げられる。芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられる。このような化合物としては、例えば、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、及びノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが挙げられる。
脂環式エポキシドは、例えば、少なくとも1個のシクロアルケン環を有する化合物を、過酸化水素及び過酸等の酸化剤でエポキシ化することによって得られる。このシクロアルケン環としては、例えば、シクロへキセン環及びシクロペンテン環が挙げられる。好ましい脂環式エポキシドとしては、例えば、シクロヘキセンオキサイド及びシクロペンテンオキサイドを含んだ化合物が挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられる。その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、及び1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテルが挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが挙げられる。
以下に、単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、及び4−ビニルシクロヘキセンオキサイドが挙げられる。
多官能エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF ジグリシジルエーテル、ビスフェノールS ジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールA ジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールF ジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールS ジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールA ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールF ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールS ジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキセニル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキセンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,13−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、及び1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタンが挙げられる。
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化
速度に優れるという観点から好ましい。特には、脂環式エポキシドが好ましい。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、及びトリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、並びに、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2 − エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物が挙げられる。
以下に、単官能ビニルエーテル及び多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2 − ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが挙げられる。
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールA アルキレンオキサイドジビニルエーテル、及びビスフェノールF アルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;並びに、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、及びプロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、硬化性の観点から、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。また、ビニルエーテル化合物をインク組成物の一成分として用いる場合、被記録媒体との密着性及び形成された画像の表面硬度などの観点から、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。特には、ジビニルエーテル化合物が好ましい。
オキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物を意味している。このオキセタン化合物としては、例えば、特開2001−220526号、同2001−310937号、及び同2003−341217号の各公報に記載されたものが挙げられる。
オキセタン化合物としては、その構造中にオキセタン環を1〜4個有するものが好ましい。このような化合物を使用すると、硬化性組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となる。また、特にインク組成物に使用した場合には、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることが可能となる。
分子内に1又は2個のオキセタン環を有する化合物としては、例えば、下記式(1)〜(3)の何れかにより表される化合物が挙げられる。
式中、Ra1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは互いに同一であってもよく、互いに異なるものであってもよい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基が挙げられる。フルオロアルキル基としては、例えば、これらアルキル基の水素原子の何れかがフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
Ra2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、又は炭素数2〜6のN−アルキルカルバモイル基を表す。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基が挙げられる。アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、及び3−ブテニル基が挙げられる。芳香環を有する基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、及びフェノキシエチル基が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、例えば、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、及びブチルカルボニル基が挙げられる。アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、及びブトキシカルボニル基が挙げられる。N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、及びペンチルカルバモイル基が挙げられる。
Ra2は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基又はフッ素原子が挙げられる。
Ra3は、線状若しくは分枝状アルキレン基、線状若しくは分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状若しくは分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基若しくはカルボニル基を含んだアルキレン基、カルボキシ基を含んだアルキレン基、カルバモイル基を含んだアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基が挙げられる。ポリ(アルキレンオキシ)基としては、例えば、ポリ(エチレンオキシ)基、及びポリ(プロピレンオキシ)基が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、例えば、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、及びブテニレン基が挙げられる。
式中、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルカルボキシ基、カルボキシ基、又はカルバモイル基を表す。
Ra5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF3)2、又は、C(CH3)2を表す。
Ra6は、炭素数1〜4のアルキル基、又は、アリール基を表す。
nは、0〜2000の整数を表す。
Ra7は、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は、炭素数1〜4のアルキル基、又はアリール基である。mは、0〜100の整数である。
式(1)により表される化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101;東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212;東亞合成(株)製)、及び、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211;東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)により表される化合物としては、例えば、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121;東亞合成(株)製)が挙げられる。また、式(3)により表される化合物としては、例えば、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221;東亞合成(株))が挙げられる。
分子内に3又は4個のオキセタン環を有する化合物としては、例えば、下記式(4)により表される化合物が挙げられる。
式(4)中、Ra1は、上記式(1)におけるものと同義である。また、多価連結基であるRa9としては、例えば、下記式A〜Cにより表される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記式Dにより表される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、下記Eにより表される基等の分枝状ポリシロキシ基が挙げられる。jは、3又は4である。
式中、Ra10は、メチル基、エチル基又はプロピル基を表す。pは、1〜10の整数を表す。
また、好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)により表される化合物が挙げられる。
式(5)中、Ra1及びRa8は、上式における各々と同義である。Ra11は、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基である。rは、1〜4の整数である。
オキセタン環を有する化合物については、例えば、先に挙げた特開2003−341217号公報の[0021]乃至[0084]に詳細に記載されている。ここに記載の化合物は、本発明に係る組成物にも好適に使用し得る。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も、本発明に係る組成物に併用することができる。当該化合物は、例えば、同公報の段落番号[0022]乃至[0058]に詳細に記載されている。
本発明に併用される他のオキセタン化合物のなかでも、組成物の粘度及び粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
カチオン重合性化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。硬化性組成物の硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物及び/又はエポキシ化合物とビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
このカチオン重合性化合物の含量は、組成物の全固形分を基準として、30〜100質量%の範囲であることが好ましく、50〜95質量%の範囲であることがより好ましい。
〔B2〕酸架橋剤
硬化性組成物が含有し得る酸架橋剤としては、例えば、先に〔A4〕酸架橋剤の項で説明したのと同様のものが挙げられる。
〔B3〕増感剤
本発明に係る硬化性組成物が光酸発生剤を含んでいる場合、この組成物は、光酸発生剤の酸発生効率の向上及び感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含んでいることが好ましい。この増感剤としては、光酸発生剤を、電子移動機構又はエネルギー移動機構に基づいて増感させるものが好ましい。
好ましい増感剤の例としては、例えば、以下の化合物類に属しており且つ350nm乃至450nm域に吸収波長を有するものが挙げられる。
このような増感剤としては、例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、及び9,10−ジアルコキシアントラセン等の多核芳香族類;トリフェニルアミン類;フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、及びローズベンガル等のキサンテン類;イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、及びクロロチオキサントン等のチオキサントン類;チアカルボシアニン及びオキサカルボシアニン等のシアニン類;メロシアニン及びカルボメロシアニン等のメロシアニン類;フタロシアニン類;チオニン、メチレンブルー及びトルイジンブルー等のチアジン類;アクリジンオレンジ、クロロフラビン及びアクリフラビン等のアクリジン類;アントラキノン等のアントラキノン類;スクアリウム等のスクアリウム類;アクリジンオレンジ;7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン類;ケトクマリン;フェノチアジン類;フェナジン類;スチリルベンゼン類;アゾ化合物;ジフェニルメタン;トリフェニルメタン;ジスチリルベンゼン類;カルバゾール類;ポルフィリン;スピロ化合物;キナクリドン;インジゴ;スチリル;ピリリウム化合物;ピロメテン化合物;ピラゾロトリアゾール化合物;ベンゾチアゾール化合物;バルビツール酸誘導体;及びチオバルビツール酸誘導体が挙げられる。更には、欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、同5,227,227号明細書、及び特開2001−125255号公報、特開平11−271969号公報等に記載の化合物が挙げられる。
以下に、増感剤の具体例を示す。
増感剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化性組成物に占める増感剤の含有量は、硬化性組成物の着色性等の観点から、その全
質量を基準として、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜15質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることが更に好ましい。
〔B4〕ラジカル重合性化合物
本発明に係る硬化性組成物は、ラジカル重合性化合物を更に含んでいてもよい。ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合開始剤の存在下、典型的には活性光線又は放射線の照射により高分子化又は架橋反応するラジカル重合性有機化合物である。このラジカル重合性化合物は、好ましくは、1分子中に少なくとも1つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。
ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、及び特開平9−80675号等の各公報に記載されている光重合性組成物を用いた光硬化型材料が知られている。
このような化合物としては、例えば、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、アリルウレタン化合物、不飽和ポリエステル化合物、及びスチレン系化合物が挙げられる。
これらラジカル重合性化合物の中でも、(メタ)アクリル基を有する化合物は、合成及び入手が容易であり且つ取り扱いも容易であるため好ましい。このような化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、及び、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又は、それらの混合物を表す。「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又は、それらの混合物を表す。
エポキシ(メタ)アクリレートとは、例えば、公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
これらのうち、芳香族エポキシ樹脂のアクリレートがより好ましい。特には、少なくとも1つの芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレートが特に好ましい。このような(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA又はそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応して得られる(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、1種又は2種以上のヒドロキシ基含有ポリエステル及び/又はヒドロキシ基含有ポリエーテルに、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、並びに、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類とを反応させて得られる(メタ)アクリレートが挙げられる。
好ましいヒドロキシ基含有ポリエステルとしては、例えば、1種又は2種以上の多価アルコールと、1種又は2種以上の多塩基酸との反応によって得られるものが挙げられる。好ましい脂肪族多価アルコールとしては、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールが挙げられる。多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、及びトリメリット酸が挙げられる。
好ましいヒドロキシ基含有ポリエーテルとしては、例えば、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるものが挙げられる。好ましい多価アルコールとしては、先に挙げた化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドが挙げられる。
好ましいヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られるものが挙げられる。多価アルコールとしては、先に挙げた化合物と同様のものが例示できる。
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸としては、2価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られるものが特に好ましい。このようなヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
イソシアネート類としては、分子中に少なくとも1つのイソシアネート基を備えた化合物が好ましい。特には、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等の2価のイソシアネート化合物が好ましい。
好ましいポリエステル(メタ)アクリレートとしては、好ましくは、ヒドロキシ基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
好ましいヒドロキシ基含有ポリエステルとしては、例えば、1種又は2種以上の多価アルコールと、1種又は2種以上の1塩基酸及び/又は多塩基酸とのエステル化反応によって得られるものが挙げられる。多価アルコールとしては、先に挙げた化合物と同様のものが例示できる。1塩基酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、酪酸、及び安息香酸が挙げられる。多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、及びトリメリット酸が挙げられる。
好ましいポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシ基含有ポリエーテルと、メタ(アクリル)酸とを反応させて得られるものが挙げられる。
好ましいヒドロキシ基含有ポリエーテルとしては、例えば、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるものが挙げられる。多価アルコールとしては、先に挙げた化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドが挙げられる。
アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、分子中に少なくとも1個のヒドロキシ基を備えた芳香族又は脂肪族アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加体と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるものが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及び、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらラジカル重合性化合物は、所望の性能に応じて、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
100質量部のラジカル重合性化合物のうち50質量部以上が、分子中に(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。
カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物とを併用する場合、カチオン重合性化合
物とラジカル重合性化合物との質量比は、10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましい。
〔B5〕着色剤
本発明に係る硬化性組成物には、その用途に応じて、着色剤を更に含有させてもよい。この着色剤には、特に制限はないが、耐候性に優れ且つ色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明に係る硬化性組成物をインク組成物として使用する場合、着色剤を併用することにより、有色のインク組成物が得られる。
本発明に係る硬化性組成物に用いる着色剤としては、硬化反応である重合反応において、重合禁止剤として機能しないものを選択して用いることが好ましい。これは、活性光線又は放射線による硬化反応の感度を低下させないためである。
以下、着色剤として用い得る各成分について説明する。具体的には、顔料及び染料について説明する。
<顔料>
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料を適宜選択して用いることができる。さらに、表面処理顔料などの加工顔料を使用することもできる。
例えば、分散媒としての不溶性の樹脂等に顔料を分散させた顔料−樹脂複合体、顔料表面を樹脂で被覆したもの、又は、顔料表面に樹脂をグラフト化して導入したものを用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色した着色樹脂粒子も、顔料と同様に用いることができる。
これら顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、及び特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
有機顔料及び無機顔料の具体例としては、以下のものが挙げられる。
例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、及びC.I.ピグメントイエロー74などのモノアゾ顔料;C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、及びC.I.ピグメントイエロー17などのジスアゾ顔料;C.I.ピグメントイエロー180及びC.I.ピグメントイエロー120などの非ベンジジン系のアゾ顔料;C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)などのアゾレーキ顔料;C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)などの縮合アゾ顔料;C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)などの酸性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)などの塩基性染料レーキ顔料;フラバントロンイエロー(Y−24)などのアントラキノン系顔料;イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)などのイソインドリノン顔料;キノフタロンイエロー(Y−138)などのキノフタロン顔料;イソインドリンイエロー(Y−139)などのイソインドリン顔料;C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)などのニトロソ顔料;並びに、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)などの金属錯塩アゾメチン顔料が挙げられる。
赤又はマゼンタ色を呈するものとしては、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)などのモノアゾ系顔料;C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)などのジスアゾ顔料;C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)及びC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)などのアゾレーキ顔料;C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)などの縮合アゾ顔料;C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)などの酸性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)などの塩基性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)などのアントラキノン系顔料;C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)などのチオインジゴ顔料;C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)などのペリノン顔料;C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)などのペリレン顔料;C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)及びC.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)などのキナクリドン顔料;C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)などのイソインドリノン顔料;並びに、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)などのアリザリンレーキ顔料が挙げられる。
青又はシアン色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)などのジスアゾ系顔料;C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)などのフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)などの酸性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)などの塩基性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)などのアントラキノン系顔料;並びに、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)などのアルカリブルー顔料が挙げられる。
緑色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、及びC.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)などのフタロシアニン顔料;並びに、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)などのアゾ金属錯体顔料が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)などのイソインドリン系顔料、及び、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)などのアントラキノン系顔料が挙げられる。
黒色を呈する顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、及びアニリンブラックが挙げられる。
白色顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、及びチタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)を利用することができる。
ここで、酸化チタンは、他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく、化学的及び物理的に安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きい。また、酸化チタンは、酸、アルカリ及びその他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては、酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて、他の白色顔料を使用してもよい。他の白色顔料としては、先に列挙した以外のものを使用してもよい。
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、及び湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際には、分散剤を添加してもよい。この分散剤としては、例えば、ヒドロキシ基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルとの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、及び顔料誘導体が挙げられる。また、Noveon社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、100質量部の顔料に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
本発明に係る組成物をインク用途に使用する場合、顔料等の諸成分の分散媒として、溶剤を添加してもよい。或いは、溶剤を用いることなしに、低分子量成分であるカチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよい。本発明に係るインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、速やかに硬化させることが必要である。それゆえ、分散媒として溶剤を用いない態様がより好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、画像の耐溶剤性の劣化、画像の不均一性、及び表面のべとつきなどを生じる可能性があるためである。このような観点から、分散媒としては、カチオン重合性化合物を用いることが好ましい。特には、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択して用いることが、分散適性及びインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
顔料の平均粒径は、0.02〜0.9μmとすることが好ましく、0.05〜0.8μmとすることがより好ましく、0.06〜0.6μmとすることが更に好ましい。
典型的には、顔料粒子の平均粒径が上記の範囲内となるように、顔料、分散剤及び分散媒の選定、並びに、分散条件及びろ過条件の設定を行う。この粒径管理によって、本発明に係る組成物をインク組成物として用いる場合、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。また、これをインクジェット記録用インクとして用いた場合に、ヘッドノズルの詰まりを効果的に抑制しうる。
<染料>
着色剤として用いる染料は、油溶性であることが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であることが好ましい。この溶解度は、0.5g以下であることがより好ましく、0.1g以下であることが更に好ましい。従って、水に不溶性の油溶性染料を用いることが好ましい。
この染料は、組成物に必要量溶解させるために、上記の染料の母核に対して油溶化基を導入したものであってもよい。
油溶化基としては、例えば、長鎖又は分岐アルキル基、長鎖又は分岐アルコキシ基、長鎖又は分岐アルキルチオ基、長鎖又は分岐アルキルスルホニル基、長鎖又は分岐アシルオキシ基、長鎖又は分岐アルコキシカルボニル基、長鎖又は分岐アシル基、長鎖又は分岐アシルアミノ基、長鎖又は分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖又は分岐アルキルアミノスルホニル基、及びこれら長鎖又は分岐置換基を備えたアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、並びに、アリールスルホニルアミノ基が挙げられる。
また、カルボン酸又はスルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖又は分岐アルコール、アミン、フェノール又はアニリン誘導体を用いて、油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基又はアリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vs SCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化
電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vs SCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vs SCE)以上のものが特に好ましい。
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報に記載されている一般式(Y−I)により表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)により表される染料である。その具体例としては、同公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。なお、同公報に記載されている一般式(Y−I)の油溶性染料は、イエローのみでなく、ブラックインク及びレッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)又は(4)により表される構造の化合物が好ましい。その具体例としては、同公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)又は(M−2)により表されるアゾ染料である。その具体例としては、同公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。なお、同公報に記載されている一般式(3)、(4)、(M−1)又は(M−2)の油溶性染料は、マゼンタのみでなく、ブラックインク及びレッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
シアン色の染料としては、例えば、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)により表される染料、及び特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)により表される染料が挙げられる。これらの具体例としては、特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、及び、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)により表されるフタロシアニン染料であり、一般式(C−II)により表されるフタロシアニン染料がより好ましい。その具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。なお、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)又は(C−II)の油溶性染料は、シアンのみでなく、ブラックインク及びグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
−酸化電位−
染料の酸化電位の値(Eox)は、当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えば、P.Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年,Interscience Publishers社刊)、A.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley & Sons社刊)、及び、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
具体的には、酸化電位は、過塩素酸ナトリウム及び過塩素酸テトラプロピルアンモニウム等の支持電解質を含んだジメチルホルムアミド及びアセトニトリルなどの溶媒中に、被験試料を1×10−2〜1×10−6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリー又は直流ポーラログラフィー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて、酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)とにより作られる線分の中間電位値を、SCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については、例えば、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年;技報堂出版社刊)101〜118ページに記載されている。
これらの着色剤は、組成物中、固形分換算で1〜30質量%添加されることが好ましく、2〜25質量%添加されることがより好ましい。
〔B6〕共増感剤
本発明に係る硬化性組成物は、共増感剤を更に含んでいてもよい。共増感剤は、増感剤の活性光線又は放射線に対する感度を一層向上させる、及び/又は、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような共増感剤の例としては、例えば、アミン類が挙げられる。共増感剤として採用可能なアミン類としては、例えば、M.R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、及び、Research Disclosure33825号に記載されている化合物が挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、及びp−メチルチオジメチルアニリンが挙げられる。
共増感剤の他の例としては、チオール及びスルフィド類が挙げられる。共増感剤として採用可能なチオール及びスルフィド類としては、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報及び特開平5−142772号公報に記載されているチオール化合物、並びに、特開昭56−75643号公報に記載されているジスルフィド化合物が挙げられる。具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、及びβ−メルカプトナフタレンが挙げられる。
他の例としては、N−フェニルグリシン等のアミノ酸化合物、特公昭48−42965号公報に記載されているトリブチル錫アセテート等の有機金属化合物、特公昭55−34414号公報に記載されている水素供与体、特開平6−308727号公報に記載されているトリチアン等のイオウ化合物、特開平6−250387号公報に記載されているジエチルホスファイト等のリン化合物、並びに、特願平6−191605号に記載されているSi−H又はGe−H化合物が挙げられる。
本発明に係る組成物が共増感剤を含んでいる場合、その含量は、組成物の全固形分を基準として、0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜20質量%であることがより好ましい。
〔B7〕重合開始剤
本発明に係る硬化性組成物は、重合開始剤を更に含んでいてもよい。この重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤が挙げられる。この重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせで使用してもよい。
ラジカル重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性光線又は放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性光線又は放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、及び赤外線が例示できる。重合開始剤は、活性光線又は放射線に感応する放射線感応型ラジカル重合開始剤、いわゆる光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
好ましいラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)有機過酸化物、(c)チオ化合物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(k)アルキルアミン化合物が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、上記(a)〜(k)の化合物を単独で用いてもよく、これらの2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る組成物が重合開始剤を含んでいる場合、その含量は、組成物の全固形分を基準として、0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、0.5質量%〜20質量%であることがより好ましい。
〔B8〕その他の成分
本発明に係る硬化性組成物は、塩基性化合物、重合禁止剤、及び溶剤等の他の成分を更に含んでいてもよい。
<塩基性化合物>
塩基性化合物は、硬化性組成物の保存安定性を向上させる観点から、添加することが好ましい。この塩基性化合物としては、例えば、公知の塩基性化合物を用いることができる。例えば、無機塩等の塩基性無機化合物、及び/又は、アミン類等の塩基性有機化合物を好ましく用いることができる。
本発明に係る組成物が塩基性化合物を含んでいる場合、その含量は、組成物の全固形分を基準として、0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、0.5質量%〜20質量%であることがより好ましい。
<重合禁止剤>
重合禁止剤は、保存性を高める観点から、添加することが好ましい。また、本発明に係る組成物をインクジェト記録用のインク組成物として使用する場合には、40〜80℃の範囲で加熱及び低粘度化して吐出することが好ましい。それゆえ、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は、組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、及びクペロンAlが挙げられる。
インク組成物及びインクジェット記録用インク組成物が放射線硬化型インク組成物である場合、インク組成物は、着弾直後に速やかに反応しかつ硬化し得るように、溶剤を含まないことが好ましい。しかしながら、インク組成物は、その硬化速度等に影響がない限り、所定の溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、例えば、有機溶剤又は水を使用することができる。特に、有機溶剤は、被記録媒体(紙などの支持体)との密着性を改良するために添加され得る。有機溶剤を添加すると、揮発性有機化合物(VOC)の問題が回避できるので有効である。有機溶剤の量は、組成物全体の質量に対し、例えば0.1〜5質量%とし、好ましくは0.1〜3質量%とする。
着色剤の遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、カチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤との組み合わせ、及び、ラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤との組み合わせの他、これらの重合性化合物及び重合開始剤を併用したラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとしてもよい。
本発明に係る硬化性組成物は、この他に、必要に応じて、公知の化合物を更に含んでいてもよい。例えば、この組成物は、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、及び/又はワックス類を更に含んでいてもよい。また、ポリオレフィン及びPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、例えば、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)、及び、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂が挙げられる。
本発明に係る組成物をインクジェット記録用のインク組成物として用いる場合には、、吐出性の観点から、吐出時の温度(例えば、40〜80℃、好ましくは25〜30℃)における組成物の粘度が7〜30mPa・sであることが好ましく、7〜20mPa・sであることがより好ましい。例えば、本発明に係る組成物の室温(25〜30℃)での粘度は、好ましくは35〜500mPa・sであり、より好ましくは35〜200mPa・sである。本発明に係る組成物では、粘度が上記範囲になるように、適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質の被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減及び臭気の低減が可能となる。さらにインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。
記録材料としては、通常の非コート紙及びコート紙などのほか、いわゆる軟包装に用いられる非吸収性のプラスチック及びそのフィルムを用いることもできる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、及びトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが挙げられる。その他のプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、及びゴム類が挙げられる。また、金属類及びガラス類にも適用可能である。
これらプラスチックフィルムの表面エネルギーは、素材の特性により大きく異なる。そのため、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。これに対し、本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム及びOPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
本発明に係る組成物の表面張力は、好ましくは20〜30mN/mであり、より好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙及び非コート紙などの様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点からは、30mN/m以下が好ましい。
本発明に係るインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。インクジェット記録用インクとして用いる場合には、インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に射出し、その後、射出されたインク組成物に放射線を照射して硬化して記録を行う。
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインク組成物が好適に適用されるインクジェット記録方法(本発明のインクジェット記録方法)について、以下説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体上に上述したインク組成物を吐出することと、吐出された組成物に活性光線又は放射線を照射して組成物を硬化させることとを含んでいる。硬化したインク組成物は、被記録媒体上に画像を形成する。
被記録媒体としては、例えば、支持体又は記録材料を使用する。この被記録媒体には特に制限はなく、通常の非コート紙及びコート紙などの紙類、又はいわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料若しくはそれをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム及びTACフィルムが挙げられる。その他、被記録媒体の材料として使用しうるプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA及びゴム類が挙げられる。また、金属類及びガラス類も、被記録媒体として使用可能である。
また、本発明のインク組成物は、硬化時の熱収縮が少なく、被記録媒体との密着性に優れている。そのため、インクの硬化収縮及び硬化反応時の発熱等により、フィルムのカール及び変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム及びPVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成できるという利点を有している。
本発明のインクジェット記録方法に適用される活性光線又は放射線としては、例えば、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、及び電子線が挙げられる。活性光線又は放射線のピーク波長は、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。また、活性光線又は放射線の出力は、2,000mJ/cm2以下であることが好ましく、10〜2,000mJ/cm2であることがより好ましく、20〜1,000mJ/cm2であることが更に好ましく、50〜800mJ/cm2であることが特に好ましい。
特に、本発明のインクジェット記録方法では、活性光線又は放射線が、発光波長ピークが350〜420nmであり且つ前記被記録媒体表面での最高照度が10〜1,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオード、蛍光管又は水銀ランプから照射されることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法によれば、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対して、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質を向上させることができる。なお、この方法によりカラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、及び密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
放射線硬化型のインク組成物は、概して、通常のインク組成物又はインクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、延いては、画質の劣化を引き起こす。従って、吐出時のインクの温度は、できるだけ一定に保つことが必要である。よって、温度の制御幅は、設定温度の±5℃、好ましくは設定温度の±2℃、より好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
〔インクジェット記録装置〕
本発明に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。即ち、本発明においては、市販のインクジェット記録装置を用いて被記録媒体へ記録することができる。
インクジェット記録装置は、例えば、インク供給系と、温度センサーと、活性光線又は放射線源とを含んでいる。
インク供給系は、例えば、インク組成物を貯蔵するタンクと、供給配管と、インクジェットヘッド直前のインク供給タンクと、フィルターと、ピエゾ型のインクジェットヘッドとを含んでいる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを、例えば320×320〜4000×4000dpi、好ましくは400×400〜1600×1600dpi、より好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、ここで「dpi」とは、2.54cm当たりのドット数を表す。
上述したように、放射線硬化型インクを用いる場合、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましい。そのため、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱および加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量及び環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
〔吐出されたインク組成物に活性光線又は放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を被記録媒体上に形成する工程〕
支持体の表面上に吐出されたインク組成物は、典型的には、活性光線又は放射線を照射することによって硬化する。このとき、インク組成物中に、重合開始剤(光開始剤)とともに、増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性光線又は放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度な硬化反応を達成できる。
ここで、活性光線又は放射線としては、例えば、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光が使用される。活性光線又は放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜420nmであることが適当である。また、本発明では、重合開始系は、低出力の活性光線又は放射線であっても充分な感度を有するものである。従って、活性光線又は放射線の出力は、例えば2,000mJ/cm2以下、好ましくは10〜2,000mJ/cm2、より好ましくは20〜1,000mJ/cm2、さらに好ましくは50〜800mJ/cm2の照射エネルギーであることが適当である。また、活性光線又は放射線は、露光面照度が、例えば10〜2,000mW/cm2、好ましくは20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
活性光線又は放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは、産業的にも環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は、小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
本発明においては、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性光線又は放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性光線又は放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性光線又は放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
インク組成物は、このような活性光線又は放射線に、例えば0.01〜120秒間、好ましくは0.1〜90秒間に亘って照射されることが適当である。
活性光線又は放射線の照射条件及び基本的な照射方法としては、例えば、特開昭60−132767号公報に開示されている内容が適用できる。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性光線又は放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば0.01〜0.5秒間、好ましくは0.01〜0.3秒間、より好ましくは0.01〜0.15秒間)をおいて行われる。このように、インク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容はこれにより限定されるものではない。
(酸増殖剤)
[合成]
酸増殖剤として、下記表2に示す化合物1〜17を、以下のようにして合成した。また、対照のため、比較化合物1〜5を、以下のようにして合成した。
<化合物1の合成>
下式により表されるアミンX(15.0g、77.6mmol)と、クロロホルム150ml及びトリエチルアミン(23.6g、233mmol)とを混合した。
次に、得られた混合溶液を氷水で冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(24.0g、85.1mmol)をゆっくり滴下して加え、室温に昇温後2時間攪拌した。続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlを加え、クロロホルム100mlで有機層を抽出し、更に有機層を水50mlで3回洗浄した。飽和塩化ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧留去し、化合物Yを9.5g得た。
化合物Y(9.5、29.0mmol)をジエチルエーテル50mlに溶解し、氷水で冷却した。。混合溶液に水素化ナトリウム(約50w%ミネラルオイル含有)(2.1g)を加え、氷水下、30分間に亘って攪拌した。続いてトリフルオロメタンスルホン酸無水物(8.2g、29.2mmol)をゆっくり滴下して加え、室温まで昇温させた後、2時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、クロロホルム100mlで有機層を抽出し、更に有機層を水50mlで3回洗浄した。飽和塩化ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧留去し、溶媒を除去した。更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物1を4.81g得た。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ=7.46-7.35(m, 5H), 4.15(t, J = 7.8Hz, 2H), 4.02(t, J=3.3Hz, 2H), 3.79(t, J=3.3Hz, 2H), 2.40(t, J=7.8Hz, 2H)。
19F-NMR(300MHz, CDCl3) δ=-102.6 (s,6F)。
<化合物2の合成>
下式により表されるアミンZ(4.2g、32.2mmol)と、クロロホルム30ml及びトリエチルアミン(9.8g、96.8mmol)とを混合した。
次に、得られた混合溶液を氷水で冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(10.0g、35.4mmol)をゆっくり滴下して加え、室温に昇温後2時間攪拌した。続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、クロロホルム100mlで有機層を抽出し、更に有機層を水50mlで3回洗浄した。飽和塩化ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧留去し、化合物Wを4.1g得た。
化合物Y(4.1g、15.5mmol)をジエチルエーテル50mlに溶解し、氷水で冷却した。混合溶液に水素化ナトリウム(約50w%ミネラルオイル含有)(1.48g)を加え、氷水下30分攪拌した。続いて、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(4.4g、15.5mmol)をゆっくり滴下して加え、室温に昇温後2時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを加え、クロロホルム100mlで有機層を抽出し、更に有機層を水50mlで3回洗浄した。飽和塩化ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧留去し、溶媒を除去した。更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物2を3.0g得た。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ=4.08(t, J = 8.4Hz, 2H), 3.95(m, 4H), 2.20(t, J = 8.4Hz, 2H), 1.33(s, 3H)。
19F-NMR(300MHz, CDCl3) δ=-102.6 (s,6F)。
<化合物3〜17の合成>
化合物3〜17を、先に化合物1について述べたのと同様にして合成した。即ち、これら化合物を、対応するアミンとスルホン酸無水物又はスルホン酸クロライドとを塩基性条件下で反応させることにより合成した。
(光酸発生剤)
光酸発生剤としては、先に挙げた(z1)〜(z102)のうち少なくとも1つを用いた。
(塩基性化合物)
塩基性化合物としては、下記の化合物C−1〜C−3を用いた。
C−1:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
C−2:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
C−3:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、下記のW−1〜W−4を用いた。
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製;シリコン系)
W−4:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製;フッ素系)
(溶剤)
溶剤としては、下記のA1〜A4並びにB1及びB2を用いた。なお、これら溶剤は、適宜混合して用いた。
A1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
A2:2−ヘプタノン
A3:シクロヘキサノン
A4:γ−ブチロラクトン
B1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
B2:乳酸エチル。
<実施例A>
(実施例1A〜13A及び比較例1A〜6A)
(レジスト調製)
下記表3に示す成分を溶剤に溶解させて、固形分濃度4.0質量%の溶液を調製した。この溶液をポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターでろ過して、ポジ型レジスト溶液を得た。
(レジスト評価)
まず、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に、スピンコーターを用いて、ブリューワーサイエンス社製反射防止膜DUV−42を60nm均一に塗布し、100℃で90秒間ホットプレート上で乾燥した後、190℃で240秒間加熱乾燥を行った。その後、各ポジ型レジスト溶液をスピンコーターを用いて塗布し、120℃で90秒間乾燥を行い、0.12μmの膜厚を有したレジスト膜を形成した。
このレジスト膜に対し、マスクを通してArFエキシマレーザーステッパー(ASML社製;PAS5500/1100;NA0.75)で露光し、露光後直ぐに、120℃で90秒間ホットプレート上で加熱した。さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインパターンを得た。
〔感度、解像度(γ)〕
露光量を10〜40mJ/cm2の範囲で0.5mJずつ変えながら面露光を行い、さらに、110℃で90秒間ベークした。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、各露光量での溶解速度を測定し、感度曲線を得た。
この溶解速度曲線において、レジストの溶解速度が飽和するときの露光量を感度とし、また溶解速度曲線の直線部の勾配から解像度(γ値)を算出した。γ値が大きいほど、溶解コントラストに優れている。
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量で、150nmラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmに含まれる任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。
〔パターン形状〕
線幅150nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量におけるプロファイルを走査型顕微鏡(SEM)により観察した。
〔経時安定性〕
各組成物を室温で1ヶ月間に亘って保存した。そして、保存前後の感度の変動の度合を評価した。この評価は、以下の判定基準に基づいて行った。
(判定基準)
○(Good):感度の変動が1mJ/cm2未満であった場合
△(Fair):感度の変動が1mJ/cm2以上且つ3mJ/cm2以下であった場合
×(Insufficient):感度の変動が3mJ/cm2より大きかった場合。
なお、光酸発生剤、酸増殖剤、塩基性化合物、界面活性剤及び溶剤については、先に示したものから適宜選択して用いた。
樹脂としては、下記(RA−1)、(RA−20)、(RA−23)及び(RA−25)の何れかを使用した。なお、下式において、繰り返し単位の右側の数字は、モル比を表している。また、Mwは重量平均分子量を表し、Mw/Mnは分散度を表している。
表3に示す結果から、本発明に係る組成物は、ArF露光において、感度、解像度、LER、パターン形状、及び経時安定性に優れていることが分かる。即ち、本発明の感光性組成物は、ArFエキシマレーザー露光におけるポジ型レジスト組成物として、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例B>
実施例1Aの組成物に下記ポリマー0.06gを加えたこと以外は実施例Aと同様にしてレジスト溶液を調製し、塗設を行い、レジスト膜を得た。得られたレジスト膜に、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製 XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.981、インナーシグマ0.895、XY偏向)を用いて、55nm1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。そして、得られたパターンについて、感度、解像度(γ)、LER、パターン形状、及び経時安定性の何れにおいても、同様の評価結果が得られることを確認した。
<実施例C>
(実施例1C〜20C及び比較例1C〜6C)
(レジスト調製)
下記表4に示した成分を溶剤に溶解させた後、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度4.5質量%のポジ型レジスト溶液を調製した。
(レジスト評価)
調製したポジ型レジスト溶液を、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に、スピンコーターを用いて均一に塗布し、100℃で90秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行い、0.4μmのレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜に対し、KrFエキシマレーザーステッパー(NA=0.63)を用いラインアンドスペース用マスクを使用してパターン露光し、露光後すぐに110℃で90秒間ホットプレート上で加熱した。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥させ、ラインパターンを形成した。
〔感度、解像度(γ)〕
実施例Aについて説明したのと同様にして、感度及び解像度(γ値)を求めた。
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量で、180nmラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmに含まれる任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。
〔パターン形状〕
線幅180nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量におけるプロファイルを走査型顕微鏡(SEM)により観察した。
〔経時安定性〕
実施例Aについて説明したのと同様にして、経時安定性を評価した。
なお、光酸発生剤、酸増殖剤、塩基性化合物、界面活性剤及び溶剤については、先に示したものから適宜選択して用いた。
樹脂としては、先に例示した(R―1)〜(R−27)から適宜選択して用いた。表4及び以下の各表に挙げられている(R−2)、(R−10)、(R−14)、(R−17)、(R−18)、(R−18(H))、(R−18(L))、(R−22)、(R−23)、及び(R−27)における各繰り返し単位のモル比及び重量平均分子量は、下記表5に示す通りである。
表4に示す結果から、本発明に係る組成物は、KrF露光において、感度、解像度、LER、パターン形状、及び経時安定性に優れていることが分かる。即ち、本発明の感光性組成物は、KrFエキシマレーザー露光におけるポジ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例D>
(実施例1D〜29D及び比較例1D〜6D)
(レジスト調製)
下記表6に示した成分を溶剤に溶解させた後、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度4.0質量%のポジ型レジスト溶液を調製した。
(レジスト評価)
調製したポジ型レジスト溶液を、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に、スピンコーターを用いて均一に塗布し、100℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.12μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜を、ニコン社製電子線プロジェクションリソグラフィー装置(加速電圧100keV)で照射し、照射後直ぐに110℃で90秒間ホットプレート上にて加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させ、ラインアンドスペースパターンを形成した。
〔感度〕
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて観察した。線幅0.10μmのラインアンドスペース(L/S=1/1)を解像するときの電子線照射量を感度(E0)とした。
〔解像力〕
上記の感度(E0)を示す露光量における1:1ラインスペースの限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力(密集)とした。
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
実施例Aについて説明したのと同様にして、LERを求めた。
〔パターン形状〕
線幅50nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量におけるプロファイルを走査型顕微鏡(SEM)により観察した。
〔アウトガス性能:露光による膜厚変動率〕
上記の感度を与える照射量の2.0倍の照射量で電子線を照射し、露光後且つ後加熱前の膜厚を測定し、以下の式を用いて、未露光時の膜厚からの変動率を求めた。
膜厚変動率(%)=[(未露光時の膜厚−露光後の膜厚)/未露光時の膜厚]×100
〔経時安定性〕
各組成物を室温で1ヶ月間に亘って保存した後、保存前後の感度の変動の度合を、目視により評価した。この評価は、以下の判定基準に基づいて行った。
(判定基準)
○(Good):感度の変動が1μC/cm2未満であった場合;
△(Fair):感度の変動が1μC/cm2以上且つ3μC/cm2以下であった場合;
×(Insufficient):感度の変動が3μC/cm2より大きかった場合。
表6に示す結果から、本発明に係る組成物は、電子線露光において、感度、解像度、LER、アウトガス性能、及び経時安定性に優れていることが分かる。即ち、本発明の感光性組成物は、電子線照射によるポジ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例E>
(実施例1E〜16E及び比較例1E〜6E)
(レジスト調製)
下記表7に示す成分を溶剤に溶解させた後、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度12質量%のネガ型レジスト溶液を調製した。
(レジスト評価)
調製したネガ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上において加熱乾燥を行って、0.3μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜を、ニコン社製電子線プロジェクションリソグラフィー装置(加速電圧100keV)で照射し、照射後直ぐに110℃で90秒間ホットプレート上において加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させ、ラインアンドスペースパターンを形成した。
評価は、実施例Dについて説明したのと同様にして行った。その結果を表7に示す。
以下に、アルカリ可溶性樹脂の構造、分子量及び分子量分布、並びに酸架橋剤の構造を示す。
表7に示す結果から、本発明に係る組成物は、電子線露光において、感度、解像度、LER、アウトガス性能、及び経時安定性に優れていることが分かる。即ち、本発明の感光性組成物は、電子線照射によるネガ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例F>
(実施例1F〜25F及び比較例1F〜6F)
(レジスト調製)
下記表8に示した成分を溶剤に溶解させ、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度8質量%のポジ型レジスト溶液を調した。
(レジスト評価)
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、100℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.12μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
〔感度〕
得られたレジスト膜に、EUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜10.0mJ/cm2の範囲で0.5mJ/cm2ずつ変えながら面露光を行った後、110℃で90秒間ベークした。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、各露光量での溶解速度を測定し、溶解速度曲線を得た。
〔パターン形状〕
線幅50nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量におけるプロファイルを走査型顕微鏡(SEM)により観察した。
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量で、50nmラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmに含まれる任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。
〔アウトガス性能:露光による膜厚変動率〕
実施例Dについて説明したのと同様にして、EUV露光による膜厚変動率を求めた。
〔経時安定性〕
実施例Aについて説明したのと同様にして、経時安定性を評価した。
表8に示す結果から、本発明に係る組成物は、EUV露光において、感度、解像度、LER、アウトガス性能、及び経時安定性に優れていることが分かる。即ち、本発明の感光性組成物は、EUV照射によるポジ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例G>
(実施例1G〜8G及び比較例1G〜6G)
(レジスト調製)
下記表9に示した成分を溶剤に溶解させ、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度8質量%のネガ型レジスト溶液を調製し、下記の通り評価を行った。
<レジスト評価>
調製したネガ型レジスト溶液を、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に、スピンコーターを用いて均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.15μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜について、実施例Fについて説明したのと同様の評価を行った。その結果を下記表9に示す。
表9に示す結果から、本発明に係る組成物は、EUV露光において、感度、解像度、LER、アウトガス性能、及び経時安定性に優れていることが分かる。即ち、本発明の感光性組成物は、EUV照射によるネガ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<UVインク評価>
[顔料分散物の調製]
下記に記載の方法に従って、イエローの顔料分散物1を調製した。なお、分散条件は、各顔料粒子の平均粒径が0.2〜0.3μmの範囲となるように、公知の分散装置を用いて、分散条件を適宜調整して行った。次いで、加熱下で、フィルター濾過を行った。
−イエロー顔料分散物1−
・C.I.ピグメントイエロー13 20質量部
・高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 20質量部
・OXT−221(東亞合成(株)製) 60質量部
(実施例1)
<イエローインク1>
以下の組成のインクを調製した。
イエロー顔料分散物1 5質量部
UVI−6992(ダウケミカル社製) 10質量部
増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン 3質量部
酸増殖剤:化合物1 3質量部
重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A;ダイセルユーシービー社製)
40質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221;東亞合成(株)製) 37質量部
界面活性剤:BYK307(BYK Chemie社製) 1質量部
オクチルアミン 1質量部
(実施例2)
<イエローインク2>
以下の組成のインクを調製した。
イエロー顔料分散物1 5質量部
UVI−6992(ダウケミカル社製) 10質量部
増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン 3質量部
酸増殖剤:化合物2 3質量部
重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A;ダイセルユーシービー社製)
40質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221;東亞合成(株)製) 37質量部
界面活性剤:BYK307(BYK Chemie社製) 1質量部
オクチルアミン 1質量部
(比較例1)
<イエローインク3>
以下の組成のインクを調製した。
イエロー顔料分散物1 5質量部
UVI−6992(ダウケミカル社製) 10質量部
増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン 3質量部
重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A;ダイセルユーシービー社製)
40質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221;東亞合成(株)製) 40質量部
界面活性剤:BYK307(BYK Chemie社製) 1質量部
オクチルアミン 1質量部。
(比較例2)
<イエローインク4>
以下の組成のインクを調製した。
イエロー顔料分散物1 5質量部
UVI−6992(ダウケミカル社製) 10質量部
増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン 3質量部
酸増殖剤:比較化合物1 3質量部
重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A;ダイセルユーシービー社製)
40質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221;東亞合成(株)製) 37質量部
界面活性剤:BYK307(BYK Chemie社製) 1質量部
オクチルアミン 1質量部。
以上のようにして調製したインクを、絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過した。このようにして、イエロー色のインク組成物を調製した。
(インク組成物の評価)
得られたイエロー色のインク組成物と、ピエゾ型インクジェットヘッド(東芝テック製のCA3ヘッド)を有するインクジェット記録装置とを用いて、ポリ塩化ビニル製のシート上に記録を行った。インク供給系は、タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター及びピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、ノズル部分が常に45℃±3℃となるよう、温度制御を行った(100%被覆画像を印刷)。インク組成物を吐出後、鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm2)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。
このとき、以下の評価を行った。得られた評価結果を、他の実施例及び比較例の評価結果と共に、下記表10に纏める。
<硬化感度>
硬化における露光エネルギーを、光量積算計(EIT社製 UV PowerMAP)により測定した。この数値が小さいほど、高感度で硬化することを意味している。その結果、実施例1のインク組成物は、シート上での紫外線の積算露光量は260mJ/cm2であり、高感度で硬化していることが確認された。
<硬化性>
硬化性は、シート上での紫外線の積算露光量を約600mJ/cm2として硬化を行い、硬化後の画像部を触診することにより評価した。硬化性は、硬化膜表面の粘着性の有無で評価する。その結果、実施例1のインク組成物は、硬化後の粘着性が完全に消失しており、硬化性に優れていることが確認された。
<被記録媒体との接着性>
被記録媒体との接着性は、クロスハッチテスト(EN ISO2409)により評価した。その結果を、ASTM法による表記5B〜1Bで表す。5Bが最も接着性に優れ、3B以上で実用上問題のないレベルであると評価する。実施例1のインク組成物は、高い接着性を有し、その値は、ASTM法による表記で4Bを示した。
<吐出安定性>
得られたインク組成物を、60℃で2週間、次いで−15℃で2週間に亘って保存した。その後、上記のピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行い、常温で1時間連続印字したときの、ドット抜け及びインクの飛び散りの有無を目視にて観察し、これを3回実施した結果の平均値を下記基準により評価した。結果を下記表1に示す。「A」及び「B」は実用上問題のないレベルであり、「C」及び「D」は実用上問題となるレベルである。
A:ドット抜け又はインクの飛び散りが発生しなかった場合;
B:ドット抜け又はインクの飛び散りが1箇所発生した場合;
C:ドット抜け又はインクの飛び散りが2箇所以上且つ5箇所以下発生した場合;
D:ドット抜け又はインクの飛び散りが6箇所以上発生した場合。
<熱硬化性試験>
(実施例1)
熱酸発生剤としての3質量部の下記化合物(1)と、3質量部の酸増殖剤(化合物1)と、100質量部の3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(カチオン重合性化合物;ダウ・ケミカル日本株式会社製、脂環式エポキシモノマー、製品名UVR−6110;以下、化合物(B)ともいう)とを混合し、熱硬化性組成物を作製した。この熱硬化性組成物をサンプル瓶に0.5g秤量し、150℃のオーブンに30分間放置した。30分後、硬化膜表面の粘着性の有無により熱硬化性を評価した。
(実施例2;比較例1及び2)
酸増殖剤として化合物1の代わりに下記表11に示す化合物を用いるか又は酸増殖剤を省略したことを除いては、実施例1と同様にして、熱硬化性試験を行った。その結果を表11に示す。なお、この試験の評価基準は、以下の通りとした。
○(Good):硬化した場合;
×(Insufficient):硬化しなかった場合。
表11に示すように、実施例1及び2に係る熱硬化性組成物は、所定の加熱により十分に硬化した。一方、比較例1及び2に係る熱硬化性組成物は、所定の加熱により硬化しなかった。