以下、本発明について詳細に説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明は、感活性光線性または感放射線性樹脂組成物に有用な、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する新規な化合物(光酸発生剤)(以下、「光酸発生剤(A1)」ともいう)を見出したことに基づくものである。
光酸発生剤(A1)を含有してなる本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、一態様において、ポジ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物であり、他の態様において、ネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物であり、他の態様において、インクジェット記録用等に好適な感活性光線性または感放射線性樹脂組成物(硬化性組成物)である。
本発明のポジ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物(より好ましくはポジ型レジスト組成物)は、光酸発生剤(A1)及び、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂(B)を含有し得る。
本発明のネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物(より好ましくはネガ型レジスト組成物)は、光酸発生剤(A1)、アルカリ現像液に可溶な樹脂(C)及び、酸の作用により、該アルカリ現像液に可溶な樹脂と架橋する酸架橋剤(D)を含有し得る。
本発明のインクジェット記録用等に好適な感活性光線性または感放射線性樹脂組成物(硬化性組成物)は、光酸発生剤(A1)、重合性化合物、及び増感剤を含有し得る。
〔1〕活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤(A1))
本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物に含有される光酸発生剤(A1)は、少なくとも一つのアルコキシアルキル基又はシクロアルコキシアルキル基が置換したアリール基を有するスルホニウム塩である。この酸発生剤(A1)は、現像液又は溶媒に対する溶解性が良好であり、光分解効率も高く、また揮発する低分子成分も発生しにくい。
本発明の光酸発生剤(A1)は、下記一般式(I)で表される化合物であることが好ましい。
式中、
Ar1は、芳香環を表し、−(A−OR1)基以外に更に置換基を有してもよい。
Aは、アルキレン基を表す。
R1は、直鎖状又は分岐状のアルキル基、もしくはシクロアルキル基を表す。
R2は、置換基を有してもよい、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
lは1〜5の整数を表す。
mは1〜3の整数であり、nは0〜2の整数であり、m+n=3を満たす。
m個のAr1及びn個のR2の中から選択される2つが結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
X-は、アニオンを表す。
一般式(I)について詳細に説明する。
一般式(I)中、Ar1における芳香環としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
Ar1は、−(A−OR)基以外に更に置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン基;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオキシ基、エチルチオキシ基及びtert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基;フェニルチオキシ基及びp−トリルチオキシ基等のアリールチオオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基及びp−トリルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;アセトキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基及び2−エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;アセチレン基;プロピニル基及びヘキシニル基等のアルキニル基;シクロアルキル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;並びにスルホン酸基が挙げられる。中でも、ラフネス改良の観点から、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)中、Aにより表されるアルキレン基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜4個の直鎖状あるいは分岐状アルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基等を挙げることができる。
これらのアルキレン基は置換基を有してもよく、例えば、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基、ウレイド基等が挙げられる。
一般式(I)中、R1としての直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等を挙げることができる。R1のシクロアルキル基としては、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数5〜15のシクロアルキル基であり、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等を挙げることができる。
一般式(I)中、R2としてのアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
R2のアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、等を挙げることができる。
R2のシクロアルキル基としては、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数5〜15のシクロアルキル基であり、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等を挙げることができる。
R2は置換基を有しても良く、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基、ウレイド基等が挙げられる。
一般式(I)中、m=1、n=2の場合、2つのR2は結合して環構造を形成しても良く、環内に式中の硫黄原子以外に更に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでも良い。また、好ましい一形態として、2つのR2が結合してアルキレン基を形成し、式中の硫黄原子と共に、5〜6員環(即ち、テトラヒドロチオフェン環又はテトラヒドロチオピラン環)を形成する構造が挙げられる。
また、m=2、n=1の場合、もしくはm=3、n=0の場合、2つのAr1、もしくはAr1とR2とが結合して環構造を形成してもよい。形成される環は式中の硫黄原子以外に更に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでもいてもよく、単環でも多環でもよく、さらに縮合環を形成してもよい。好ましい一形態として、2つのAr1、もしくはAr1とR2がいずれもフェニル基であり、2つのフェニル基が組み合わされてジベンゾチオフェン環又はジベンゾチオピラン環を形成する構造が挙げられる。
一般式(I)中、X−のアニオンとしては、安定性の面から、スルホン酸アニオン(例えば、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオン)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、ベンゾイルギ酸アニオン、カルボン酸アニオン(例えば、アルキルカルボン酸アニオン、アリールカルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオン)、スルフィン酸アニオン、硫酸アニオン、ボレートアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン、ハロゲンアニオン、ポリマー型スルホン酸アニオン、ポリマー型カルボン酸アニオン、PF6 -、SbF6 -、BF4 -、ClO4 -が挙げられる。
さらに、アニオンとしては非求核性アニオンであることが好ましい。非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、PF6 -、SbF6 -、BF4 -、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン、テトラアリールボレートアニオン(例えば、B(C6F5)4 -)が好ましい。
スルホン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなどが挙げられる。 カルボン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなどが挙げられる。 脂肪族スルホン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基を挙げることができる。 芳香族スルホン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基の置換基としては、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。 芳香族スルホン酸アニオンとしては、下記式(BI)で表されるアリールスルホン酸を生じるアニオンも好ましい。
式(BI)中、
Arは、芳香族環を表し、A基以外に更に置換基を有してもよい。
pは、0以上の整数を表す。
Aは、炭素数3以上の炭化水素基を有する基を表す。
pが2以上のとき、複数のA基は同一でも異なっていてもよい。
一般式(BI)について更に詳細に説明する。
Arにより表される芳香族環としては、炭素数6〜30の芳香族環が好ましい。
具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、ペンタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、インデン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
上記芳香族環がA基以外に有し得る置換基としては、炭素原子数が1以上の炭化水素基を有する基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基等を挙げることができる。炭素原子数が1以上の炭化水素基を有する基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メチルチオキシ基、エチルチオキシ基、tert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基、フェニルチオキシ基、p−トリルチオキシ基等のアリールチオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基、2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基及び分岐アルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、アセチレン基、プロピニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンゾイル基、アセチル基、トリル基等のアシル基等が挙げられる。また、2以上の置換基を有する場合、少なくとも二つの置換基が互いに結合して環を形成してもよい。 Aにより表される、炭素原子数が3以上の炭化水素基を有する基における炭化水素基としては、非環式炭化水素基、又は環状脂肪族基が挙げられる。
A基としては、Arに隣接する炭素原子が3級若しくは4級の炭素原子であることが好ましい。
A基としての非環式炭化水素基としては、イソプロピル基、t―ブチル基、t―ペンチル基、ネオペンチル基、s−ブチル基、イソブチル基、イソヘキシル基、3,3−ジメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。非環式炭化水素基の有する炭素数の上限としては、好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。 A基としての環状脂肪族基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基、ピネニル基等が挙げられ、置換基を有していてもよい。環状脂肪族基の有する炭素数の上限としては、好ましくは15以下、更に好ましくは12以下である。 上記非環式炭化水素基又は環状脂肪族基が置換基を有している場合、その置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メチルチオキシ基、エチルチオキシ基、tert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基、フェニルチオキシ基、p−トリルチオキシ基等のアリールチオオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基、2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基、及び分岐アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、アセチレン基、プロピニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、カルボニル基、シアノ基等が挙げられる。
Aとしての環状脂肪族基又は非環式炭化水素基の具体例としては以下のものが挙げられる。
酸拡散抑制の観点から、上記の中でも下記構造がより好ましい。
pは0以上の整数を表し、その上限は化学的に可能な数であれば特に限定されない。酸の拡散抑制の観点から、pは通常0〜5、好ましくは1〜4、更に好ましくは2〜3、最も好ましくは3を表す。
A基は、酸拡散抑制の観点から、スルホン酸基の少なくとも1つのo位を置換していることが好ましく、2つのo位を置換している構造であることがより好ましい。
本発明の酸発生剤(B)は、一態様において、下記一般式(BII)で表される酸を発生する化合物である。
式中、Aは一般式(BI)におけるAと同様であり、二つのAは同一でも異なってもよい。R1〜R3は、各々独立に、水素原子、炭素原子数が1以上の炭化水素基を有する基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基又はニトロ基を表す。炭素原子数が1以上の炭化水素基の具体例としては、上記に例示した基と同様の基が挙げられる。
また、好ましいスルホン酸アニオンとして、下記一般式(I)で表される酸を生じるアニオンも挙げることができる。
式中、Xfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、及び、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基から選ばれる基を表し、複数存在する場合のR1、R2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Lは、単結合又は二価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。Aは、環状構造を有する基を表す。xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
一般式(I)について、更に詳細に説明する。
Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜4である。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的にはフッ素原子、CF3が好ましい。
R1、R2のアルキル基、並びに、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、CF3が好ましい。
yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。xは1〜8が好ましく、中でも1〜4が好ましい。zは0〜8が好ましく、中でも0〜4が好ましい。Lの2価の連結基としては特に限定されず、―COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S―、−SO―、―SO2−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基などがあげられる。このなかでも―COO−、−OCO−、−CO−、−O―、―SO2−が好ましく、―COO−、−OCO−、―SO2−がより好ましい。
Aの環状構造を有する基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環構造を有する基(芳香属性を有するものだけでなく、芳香属性を有さないものも含む)等が挙げられる。
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基の炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性を抑制でき、MEEF(マスクエラーエンハンスメントファクター)向上の観点から好ましい。
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環が挙げられる。中でも193nmにおける光吸光度の観点から低吸光度のナフタレンが好ましい。
複素環構造を有する基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環が挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環が好ましい。
上記環状構造を有する基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位としては、脂肪族スルホン酸アニオンおけるものと同様のアルキル基及びシクロアルキル基を挙げることができる。
芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、芳香族スルホン酸アニオンにおけるものと同様のアリール基を挙げることができる。
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の置換基としては、例えば、芳香族スルホン酸アニオンにおけるものと同様のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等を挙げることができる。
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
なお、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン中の2つのアルキル基は、同一のものであっても異なっていてもよい。同様に、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン中の複数のアルキル基は、同一のものであっても異なっていてもよい。
特に、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオンとしては、下記一般式(A3)又は(A4)で表されるアニオンを挙げることができる。
一般式(A3)及び(A4)中、
Yは少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。アルキレン鎖中に酸素原子を含有していてもよい。更に好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基であり、最も好ましくはテトラフロロエチレン基、ヘキサフロロプロピレン基、オクタフロロブチレン基である。
式(A4)におけるRは、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。なお、アルキル基又はシクロアルキル基中のアルキレン鎖中に酸素原子を含有していてもよい。
一般式(A3)又は(A4)で表されるアニオンを有する化合物としては、特開2005−221721号公報に記載されている具体例などを挙げることができる。
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、弗素化燐、弗素化硼素、弗素化アンチモン等を挙げることができる。
Z−の非求核性アニオンとしては、スルホン酸のα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくは炭素数4〜8のパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
本発明の組成物がポジ型又はネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物の場合、X−のアニオンとしては、特にスルホン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンであることが好ましく、本発明の組成物がインクジェット記録用などに用いられる硬化性組成物である場合は、特にPF6 -、SbF6 -、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオンであることが好ましい。
一般式(I)で表されるスルホニウム塩(A1)として、一般式(II)で表されるスルホニウム塩化合物も好ましい。
式中、Ar1、A、R1、l、m、n及びX-は一般式(I)における各基と同義である。
Ar2は、置換基を有してもよい芳香環を表す。
一般式(II)中、Ar2における芳香環としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
Ar
2は置換基を有してもよく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン基;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオキシ基、エチルチオキシ基及びtert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基;フェニルチオキシ基及びp−トリルチオキシ基等のアリールチオオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基及びp−トリルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;アセトキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基及び2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基;分岐アルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;アセチレン基;プロピニル基及びヘキシニル基等のアルキニル基;シクロアルキル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;並びにスルホン酸基が挙げられる。中でも、ラフネス改良の観点から、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)で表されるスルホニウム塩(A1)の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
光酸発生剤(A1)は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
光酸発生剤(A1)の含有率は、本発明の組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。
〔その他の光酸発生剤〕
本発明においては、光酸発生剤(A1)と共に、他の酸発生剤を併用してもよい。そのような併用可能な光酸発生剤(以下において、「光酸発生剤(A2)」などという。)としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
〔2〕酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂
本発明のポジ型感活性光線性または感放射線性樹脂は、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂(B)を含んでいてもよい。この樹脂(B)は、典型的には、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、酸分解性基ともいう)を備えている。この樹脂は、酸分解性基を、樹脂の主鎖及び側鎖の一方に備えていてもよく、これらの両方に備えていてもよい。この樹脂は、酸分解性基を、側鎖に備えていることが好ましい。
酸分解性基としては、−COOH基及び−OH基等のアルカリ可溶性基の水素原子を、酸の作用により脱離する基で置換した基が好ましい。酸の作用により脱離する基としては、アセタール基又は3級エステル基が特に好ましい。
これら酸分解性基が側鎖として結合する場合の母体樹脂は、例えば、側鎖に−OH又は−COOH基を有するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。このようなアルカリ可溶性樹脂の例としては、後述するものが挙げられる。
これらアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、0.261Nテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)で測定(23℃)して、17nm/秒以上が好ましい。この速度は、特に好ましくは、33nm/秒以上である。
このような観点から、特に好ましいアルカリ可溶性樹脂としては、o−、m−及びp−ポリ(ヒドロキシスチレン)並びにこれらの共重合体、水素化ポリ(ヒドロキシスチレン)、ハロゲン又はアルキル置換ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(ヒドロキシスチレン)の一部O−アルキル化物又はO−アシル化物、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体及び水素化ノボラック樹脂等のヒドロキシスチレン構造単位を含んだ樹脂;並びに、(メタ)アクリル酸及びノルボルネンカルボン酸等のカルボキシル基を有する繰り返し単位を含んだ樹脂が挙げられる。
好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、1−アルコキシエトキシスチレン及び(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルが挙げられる。この繰り返し単位としては、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート又はジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂は、欧州特許254853号明細書、特開平2−25850号公報、同3−223860号公報及び同4−251259号公報等に開示されているように、例えば、樹脂に酸の作用により脱離する基の前駆体を反応させるか、又は、酸の作用により脱離する基の結合したアルカリ可溶性樹脂モノマーを種々のモノマーと共重合させることにより得られる。
本発明の組成物に、KrFエキシマレーザー光、電子線、X線又は波長50nm以下の高エネルギー光線(例えば、EUV)を照射する場合には、この樹脂は、ヒドロキシスチレン繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくは、この樹脂は、ヒドロキシスチレンと酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレンとの共重合体、又は、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルとの共重合体である。
このような樹脂としては、具体的には、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
式中、R01、R02及びR03は、各々独立に、例えば、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。Ar1は、例えば、芳香環基を表す。なお、R03とAr1とがアルキレン基であり、両者が互いに結合することにより、−C−C−鎖と共に、5員又は6員環を形成していてもよい。
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1〜4の整数を表し、1〜2が好ましく、1がより好ましい。
R01〜R03としてのアルキル基は、例えば、炭素数20以下のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基又はドデシル基である。より好ましくは、これらアルキル基は、炭素数8以下のアルキル基である。なお、これらアルキル基は、置換基を有していてもよい。
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R01〜R03におけるア
ルキル基と同様のものが好ましい。
シクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基が挙げられる。なお、これらシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子がより好ましい。
R03がアルキレン基を表す場合、このアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基等の炭素数1〜8のものが挙げられる。
Ar1としての芳香環基は、炭素数6〜14のものが好ましく、例えば、ベンゼン環、トルエン環及びナフタレン環が挙げられる。なお、これら芳香環基は、置換基を有していてもよい。
酸の作用により脱離する基Yとしては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)及び−CH(R36)(Ar)により表される基が挙げられる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
R01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
Arは、アリール基を表す。
R36〜R39、R01、又はR02としてのアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基及びオクチル基が挙げられる。
R36〜R39、R01、又はR02としてのシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基及びシクロオクチルが挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基及びアンドロスタニル基が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
R36〜R39、R01、R02、又はArとしてのアリール基は、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
R36〜R39、R01、又はR02としてのアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基であることが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が好ましい。
R36〜R39、R01、又はR02としてのアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びシクロへキセニル基が挙げられる。
R36とR37とが互いに結合して形成し得る環は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造及びシクロオクタン構造が挙げられる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造及びテトラシクロドデカン構造が挙げられる。なお、環構造中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
上記各基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。これら置換基は、炭素数が8以下であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基Yとしては、下記一般式(B)で表される構造がより好ましい。
式中、L1及びL2は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、環状脂肪族基、芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。なお、これら環状脂肪族基及び芳香環基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
なお、Q、M、L1の少なくとも2つが互いに結合して、5員又は6員環を形成していてもよい。
L1及びL2としてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
L1及びL2としてのシクロアルキル基は、例えば炭素数3〜15のシクロアルキル基であり、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
L1及びL2としてのアリール基は、例えば炭素数6〜15のアリール基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
L1及びL2としてのアラルキル基は、例えば炭素数6〜20のアラルキル基であり、具体的には、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
Mとしての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基又はブテニレン基)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基又はナフチレン基)、−S−、−O−、−CO−、−SO2−、−N(R0)−、又は、これらの2以上の組み合わせである。ここで、R0は、水素原子又はアルキル基である。R0としてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
Qとしてのアルキル基及びシクロアルキル基は、上述したL1及びL2としての各基と同様である。
Qとしての環状脂肪族基又は芳香環基としては、例えば、上述したL1及びL2としてのシクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。これらシクロアルキル基及びアリール基は、好ましくは、炭素数3〜15の基である。
Qとしてのヘテロ原子を含んだ環状脂肪族基又は芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール及びピロリドン等の複素環構造を有した基が挙げられる。但し、炭素とヘテロ原子とで形成される環、又は、ヘテロ原子のみによって形成される環であれば、これらに限定されない。
Q、M及びL1の少なくとも2つが互いに結合して形成し得る環構造としては、例えば、これらがプロピレン基又はブチレン基を形成してなる5員又は6員環構造が挙げられる。なお、この5員又は6員環構造は、酸素原子を含有している。
一般式(2)におけるL1、L2、M及びQで表される各基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。これら置換基は、炭素数が8以下であることが好ましい。
−(M−Q)で表される基としては、炭素数1〜30の基が好ましく、炭素数5〜20の基がより好ましい。特に、アウトガス抑制の観点からは、炭素数が6以上の基が好ましい。
他の好ましい樹脂として、下記一般式(X)で表される繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
一般式(X)中、
Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。 Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1〜Rx3は、各々独立に、直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキル基が挙げられる。なお、Rx1〜Rx3の少なくとも2つが互いに結合して、単環又は多環のシクロアルキル基を形成していてもよい。
Tとしての2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、−(COO−Rt)−基、及び−(O−Rt)−基が挙げられる。ここで、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−(COO−Rt)−基であることが好ましい。ここで、Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH2−基又は−(CH2)3−基がより好ましい。
Rx1〜Rx3としてのアルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基である。
Rx1〜Rx3としてのシクロアルキル基は、好ましくは、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基である。
Rx1〜Rx3の少なくとも2つが互いに結合して形成し得るシクロアルキル基としては、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
特には、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが互いに結合して、上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
一般式(X)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
樹脂中における一般式(X)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、好ましくは3〜90モル%の範囲内であり、より好ましくは5〜80モル%の範囲内であり、特に好ましくは7〜70モル%の範囲内である。
酸で分解し得る基の含有率は、樹脂中の酸で分解し得る基の数(B)と酸で脱離する基で保護されていないアルカリ可溶性基の数(S)とにより、式B/(B+S)によって計算される。この含有率は、好ましくは0.01〜0.7であり、より好ましくは0.05〜0.50であり、更に好ましくは0.05〜0.40である。
本発明の組成物にArFエキシマレーザー光を照射する場合には、この樹脂は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有していることが好ましい。なお、以下では、このような樹脂を「脂環炭化水素系酸分解性樹脂」と呼ぶ。
この脂環炭化水素系酸分解性樹脂としては、下記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含んだ部分構造を有する繰り返し単位、及び、下記一般式(II-AB)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1種を含んだ樹脂が好ましい。
一般式(pI)〜(pV)中、
R11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子と共にシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
R12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又はシクロアルキル基を表す。但し、R12〜R14のうちの少なくとも1つは、シクロアルキル基を表す。また、R15及びR16の何れかは、シクロアルキル基を表す。
R
17〜R
21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又はシクロアルキル基を表す。但し、R
17〜R
21のうちの少なくとも1つは、シクロアルキル基を表す。また、R
19及びR
21の何れかは、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R
22〜R
25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又はシクロアルキル基を表す。但し、R
22〜R
25のうちの少なくとも1つは、シクロアルキル基を表す。なお、R
23とR
24とは、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
一般式(II−AB)中、
R
11’及びR
12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z’は、結合した2つの炭素原子(C−C)と共に脂環式構造を形成するために必要な原子団を表す。
また、上記一般式(II−AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが更に好ましい。
一般式(II−AB1)及び(II−AB2)中、
R13’〜R16’は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、−COOH、−COOR5、酸の作用により分解する基、−C(=O)−X−A'−R17’、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。ここで、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO2−又は−NHSO2NH−を表す。A'は、単結合又は2価の連結基を表す。R17’は、−COOH、−COOR5、−CN、水酸基、アルコキシ基、−CO−NH−R6、−CO−NH−SO2−R6又はラクトン構造を有する基を表す。ここで、R6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。なお、R13’〜R16’のうち少なくとも2つが互いに結合して、環構造を形成してもよい。
nは、0又は1を表す。
一般式(pI)〜(pV)において、R12〜R25におけるアルキル基は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基及びt−ブチル基が挙げられる。
R12〜R25におけるシクロアルキル基、又は、Zと炭素原子とが形成するシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ及びテトラシクロ構造を有する基が挙げられる。その炭素数は6〜30が好ましく、7〜25が特に好ましい。
好ましいシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基及びシクロドデカニル基が挙げられる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基及びトリシクロデカニル基が挙げられる。
これらアルキル基及びシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基及びアルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。これら置換基は、更なる置換基を有していてもよい。この更なる置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基が挙げられる。
一般式(pI)〜(pV)で表される構造は、アルカリ可溶性基の保護に用いることができる。このアルカリ可溶性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
具体的には、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基及びチオール基等の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造によって置換された構造が挙げられる。好ましくは、カルボン酸基又はスルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造である。
一般式(pI)〜(pV)で表される構造によって保護されたアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(pA)で表される繰り返し単位が好ましい。
一般式(pA)中、
Rは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。複数のRの各々は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、ウレア基、及びこれらの2以上の組み合わせからなる群より選択され、好ましくは単結合である。
Rp1は、上記一般式(pI)〜(pV)の何れかにより表される基である。
一般式(pA)で表される繰り返し単位は、最も好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート又はジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
以下、一般式(pA)で示される繰り返し単位の具体例を示す。
上記各構造式において、Rxは、H、CH3、CF3又はCH2OHを表し、Rxa及びRxbは、各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
一般式(II−AB)におけるR11’又はR12’としてのハロゲン原子は、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子又はヨウ素原子である。
R11’又はR12’としてのアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、並びに、直鎖若しくは分岐のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びヘプチル基が挙げられる。
上記Z’で表される原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素の繰り返し単位を、樹脂中に形成する原子団である。この原子団としては、有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成するものが好ましい。
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pVI)におけるR12〜R25のシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
上記脂環式炭化水素の骨格は、置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、例えば、上記一般式(II−AB1)及び(II−AB2)におけるR13’〜R16’が挙げられる。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂において、酸の作用により分解する基は、上記一般式(pI)〜一般式(pV)で表される脂環式炭化水素を含んだ部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、及び、後述する共重合成分の繰り返し単位のうちの少なくとも1つに含有させることができる。
上記一般式(II−AB1)及び(II−AB2)におけるR
13’〜R
16’の各置換基は、上記一般式(II−AB)における脂環式構造又は有橋式脂環式構造を形成するための原子団Z’の置換基ともなり得る。
上記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)で表される繰り返し単位として、下記具体例を挙げるが、本発明は、これらの例に限定されない。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、ラクトン基を含んだ繰り返し単位を有することが好ましい。このラクトン基は、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を有する基であり、特には、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造又はスピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。
この脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、より好ましくは、下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の何れかで表されるラクトン構造を含んだ基を有する繰り返し単位を含んでいる。なお、ラクトン構造を有する基は、主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては、(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)及び(LC1−17)が挙げられる。特定のラクトン構造を用いることにより、ラインエッジラフネス及び現像欠陥を更に減少させ得る。
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していてもよく、有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基及び酸分解性基が挙げられる。
n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の整数である場合、複数存在するRb2は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、この場合、複数存在するRb2同士が互いに結合して、環構造を形成してもよい。
一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の何れかで表されるラクトン構造を含んだ基を有する繰り返し単位としては、例えば、上記一般式(II−AB1)及び(II−AB2)中のR
13’〜R
16’のうちの少なくとも1つが一般式(LC1−1)〜(LC1−17)で表される基を有するもの、及び、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が挙げられる。なお、前者の例としては、−COOR
5のR
5が一般式(LC1−1)〜(LC1−17)で表される基である構造が挙げられる。
一般式(AI)中、Rb0は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Rb0としてのアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基又はt−ブチル基である。これらアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、水酸基及びハロゲン原子が挙げられる。
Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
Rb0は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
Abは、アルキレン基、単環若しくは多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、単結合、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせを表す。Abは、好ましくは、単結合又は−Ab1−CO2−で表される連結基である。
Ab1は、直鎖若しくは分岐アルキレン基、又は、単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、好ましくは、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基又はノルボルニレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−17)の何れかにより表される基である。
なお、ラクトン構造を有する繰り返し単位には、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度が90%ee以上のものが好ましく、95%ee以上のものがより好ましい。
特に好ましいラクトン基を有する繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン基を選択することにより、パターンプロファイル、疎密依存性が良好となる。式中、Rx及びRは、H、CH
3、CH
2OH又はCF
3を表す。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、ラクトン基を含んだ繰り返し単位を複数含有していてもよい。この場合、(1)一般式(AI)においてAbが単結合であるものと−Ab1−CO2−であるものを1種ずつ用いる、(2)一般式(AI)においてAbが−Ab1−CO2−であるものを2種併用する、のいずれかが好ましい。
ラクトン基を含んだ繰り返し単位は、(複数のラクトン基を含んだ繰り返し単位がある場合、それらの総和として)樹脂(B)の全繰り返し単位中、10〜70モル%であることが好ましく、20〜60モル%であることがより好ましい。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、極性基で置換された脂環炭化水素構造を含んだ繰り返し単位を有していることが好ましい。これにより、基板密着性及び現像液親和性を向上させ得る。この極性基としては、水酸基又はシアノ基が好ましい。なお、極性基としての水酸基は、アルコール性水酸基を形成する。
極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、例えば、下記一般式(VIIa)又は(VIIb)で表される構造が挙げられる。
一般式(VIIa)中、R2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。但し、R2c〜R4cのうちの少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c〜R4cのうちの1つ又は2つが水酸基であり、残りが水素原子である。更に好ましくは、R2c〜R4cのうちの2つが水酸基であり、残りの1つが水素原子である。
一般式(VIIa)で表される基は、好ましくはジヒドロキシ体又はモノヒドロキシ体であり、より好ましくはジヒドロキシ体である。
一般式(VIIa)又は(VIIb)で表される基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR
13’〜R
16’のうちの少なくとも1つが上記一般式(VIIa)又は(VIIb)で表される基を有するもの、及び、下記一般式(AIIa)又は(AIIb)で表される繰り返し単位が挙げられる。前者の例としては、−COOR
5のR
5が一般式(VIIa)又は(VIIb)で表される基である構造が挙げられる。
一般式(AIIa)、(AIIb)中、
R
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキメチル基を表す。
R
2c〜R
4cは、一般式(VIIa)におけるR
2c〜R
4cと同義である。
一般式(AIIa)又は(AIIb)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
上記繰り返し単位は、(該当する複数の繰り返し単位がある場合、それらの総和として)樹脂(B)の全繰り返し単位中、3〜30モル%であることが好ましく、5〜25モル%であることがより好ましい。
本発明の樹脂は、上記繰り返し単位の他に、ヒドロキシル基やシアノ基を有さず、酸に対して安定な繰り返し単位を有してもよい。
この単位としてより具体的には、一般式として以下に例示されるような、アクリル構造の側鎖に、非酸分解性のアリール構造やシクロアルキル構造を有する繰り返し単位が挙げられる。この構造を有することにより、コントラストの調節、エッチング耐性の向上などが期待できる。
この繰り返し単位は、前述のヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する樹脂に導入されていても、脂環炭化水素系酸分解性樹脂に導入されていてもよいが、脂環炭化水素系酸分解性樹脂に導入される場合は、193nm光の吸収の観点から、芳香環構造を含有しないことが好ましい。
一般式(III)中、R5は炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基(メチル基が好ましい)、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基が好ましい)、またはトリフルオロメチル基を表す。式中、Ra2は、水素
原子、アルキル基又はアシル基を表す。
R5の炭化水素基は、その中に環状構造を有することが好ましい。環状構造を有する場合の具体例として、単環又は多環のシクロアルキル基(炭素数3〜12が好ましく、より好ましくは炭素数3〜7)、単環又は多環のシクロアルケニル基(炭素数3〜12が好ましい)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜12)などが挙げられる。
シクロアルキル基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、架橋環式炭化水素環としては、2環式炭化水素環、3環式炭化水素環、4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、例えば5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5、2、1、02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
アリール基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられ、アラルキル基の好ましい例としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
これらの炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基はさらに置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基を挙げることができる。
保護基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
一般式(III)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に
対し、0〜40モル%が好ましく、より好ましくは0〜20モル%である。
一般式(III)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに
限定されない。式中、Raは、H、CH
3、CH
2OH、又はCF
3を表す。
上記繰り返し単位は、(該当する複数の繰り返し単位がある場合、それらの総和として)樹脂の全繰り返し単位中、0〜30モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましい。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有してもよい。
一般式(VIII)中、Z
2は、−O−又は−N(R
41)−を表す。R
41は、水素原子、水酸基、アルキル基又は−OSO
2−R
42を表す。ここでR
42は、アルキル基、シクロアルキル基又は樟脳残基を表す。R
41又はR
42としてのアルキル基は、ハロゲン原子等により置換されていてもよい。この場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
一般式(VIII)で表される繰り返し単位として、以下の具体例が挙げられるが、本発明は、これらに限定されない。
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、アルカリ可溶性基を含んだ繰り返し単位を有することが好ましく、カルボキシル基を含んだ繰り返し単位を有することがより好ましい。これにより、コンタクトホール用途での解像度を向上させ得る。
カルボキシル基を含んだ繰り返し単位としては、樹脂の主鎖に直接カルボキシル基が結合している繰り返し単位、及び、連結基を介して樹脂の主鎖にカルボキシル基が結合している繰り返し単位のいずれも好ましい。
前者の例としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が挙げられる。また、後者における連結基は、単環又は多環のシクロアルキル構造を有していてもよい。
カルボキシル基を含んだ繰り返し単位としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が最も好ましい。
酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂の重量平均分子量は、GPC法によって求めたポリスチレン換算値として、好ましくは、2,000〜200,000の範囲内である。重量平均分子量を2,000以上とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性を特に向上させ得る。重量平均分子量を200,000以下とすることにより、現像性を特に向上させ得ると共に、組成物の粘度の低下に起因して、その製膜性をも向上させ得る。
より好ましい分子量は、2,500〜50,000の範囲内であり、更に好ましくは、3,000〜20,000の範囲内である。また、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー線(例えば、EUV)を利用した微細パターン形成では、重量平均分子量を3,000〜10,000の範囲内とすることが最も好ましい。分子量を調整することにより、組成物の耐熱性及び解像力の向上並びに現像欠陥の減少等を同時に達成し得る。
酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0が好ましく、1.2〜2.5がより好ましく、1.2〜1.6が更に好ましい。この分散度を調整することにより、例えば、ラインエッジラフネス性能を向上させ得る。
以上において説明した樹脂の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
上記具体例において、tBuはt−ブチル基を表す。
本発明に係る組成物に占めるこの樹脂(B)の配合率は、全固形分中を基準として、5〜99.9質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、60〜93質量%がより好ましい。
〔3〕アルカリ現像液に可溶な樹脂(以下、「アルカリ可溶性樹脂」ともいう)
本発明のネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(C)と更に必要に応じて架橋剤(D)を含んでいてもよい。このアルカリ可溶性樹脂(C)のアルカリ溶解速度は、0.261Nテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて測定(23℃)して、2nm/秒以上が好ましい。特に好ましくは、この速度は、20nm/秒以上である。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、水素化ノボラック樹脂、アセトン−ピロガロール樹脂、o−ポリヒドロキシスチレン、m−ポリヒドロキシスチレン、p−ポリヒドロキシスチレン、水素化ポリヒドロキシスチレン、ハロゲン又はアルキル置換ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、o/p−及びm/p−ヒドロキシスチレン共重合体、ポリヒドロキシスチレンの水酸基に対する一部O−アルキル化物(例えば、5〜30モル%のO−メチル化物、O−(1−メトキシ)エチル化物、O−(1−エトキシ)エチル化物、O−2−テトラヒドロピラニル化物又はO−(t−ブトキシカルボニル)メチル化物)又はO−アシル化物(例えば、5〜30モル%のO−アセチル化物又はO−(t−ブトキシ)カルボニル化物)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、カルボキシル基含有メタクリル系樹脂及びその誘導体、並びに、ポリビニルアルコール誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
好ましいアルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂、o−ポリヒドロキシスチレン、m−ポリヒドロキシスチレン、p−ポリヒドロキシスチレン及びこれらの共重合体、アルキル置換ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの一部O−アルキル化又はO−アシル化物、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、並びにα−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体が挙げられる。
特に本発明では、ヒドロキシスチレン構造を有する樹脂が好ましい。また、ヒドロキシスチレン構造の中でも、m−ヒドロキシスチレン構造が特に好ましい。
上記のノボラック樹脂は、所定のモノマーを主成分として、酸性触媒の存在下、アルデヒド類と付加縮合させることにより得られる。
また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、2000以上であり、好ましくは5000〜200000であり、より好ましくは5000〜100000である。ここで、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたポリスチレン換算値で定義される。
本発明におけるこれらのアルカリ可溶性樹脂(C)は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
アルカリ可溶性樹脂(C)の配合率は、組成物中の全固形分を基準として、例えば40〜97質量%であり、好ましくは60〜90質量%である。
〔4〕酸の作用によりアルカリ可溶性樹脂と架橋する酸架橋剤
本発明のネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、更に、酸架橋剤(D)を含んでいてもよい。
酸架橋剤(D)としては、酸の作用により上記アルカリ可溶性樹脂(C)を架橋する化合物であればいずれも用いることができるが、以下の(1)〜(3)が好ましい。
(1)フェノール誘導体のヒドロキシメチル体、アルコキシメチル体、アシルオキシメチル体。
(2)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、N−アシルオキシメチル基を有する化合物。
(3)エポキシ基を有する化合物。
アルコキシメチル基としては炭素数6個以下、アシルオキシメチル基としては炭素数6個以下が好ましい。
これらの架橋剤の内、特に好ましいものを以下に挙げる。
式中、L1〜L8は、同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基(好ましくはメトキシメチル基、エトキシメチル基)、又は炭素数1〜6個のアルキル基を示す。
架橋剤は、感活性光線性または感放射線性樹脂組成物の全固形分中、通常3〜70質量%、好ましくは5〜50質量%の添加量で用いられる。
〔5〕酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物
本発明のポジ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、更に、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)を含有し得る。この溶解阻止化合物としては、220nm以下の透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE, 2724, 355 (1996) に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体等の、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。この酸分解性基としては、例えば、先に酸分解性単位について説明したのと同様のものが挙げられる。
なお、本発明に係る組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか又は電子線で照射する場合には、溶解阻止化合物としては、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含んだ化合物が好ましい。フェノール化合物としては、フェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、2〜6個含有するものが更に好ましい。
溶解阻止化合物の添加量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%である。
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
〔6〕その他の成分
本発明に係るポジ型又はネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、塩基性化合物、有機溶剤、界面活性剤、染料、可塑剤、光増感剤、現像液に対する溶解促進性化合物、及びプロトンアクセプター性官能基を有する化合物等を更に含んでいてもよい。
(塩基性化合物)
本発明に係る組成物は、塩基性化合物を更に含んでいてもよい。塩基性化合物を更に含有させると、露光と加熱(ポストベーク)との間における性能の経時変化を更に低減することが可能となる。また、こうすると、露光によって発生した酸の膜中拡散性を制御することが可能となる。
この塩基性化合物は、含窒素有機化合物であることが好ましい。使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(4)に分類される化合物を用いることができる。
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子又は有機基を表す。但し、3つのRのうち少なくとも1つは有機基である。この有機基は、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
Rとしてのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常3〜20であり、好ましくは5〜15である。
Rとしてのアリール基の炭素数は、特に限定されないが、通常6〜20であり、好ましくは6〜10である。具体的には、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
Rとしてのアラルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常7〜20であり、好ましくは7〜11である。具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
なお、一般式(BS−1)により表される化合物では、Rのうち少なくとも2つが有機基であることが好ましい。
一般式(BS−1)により表される化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、及び2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンが挙げられる。
また、一般式(BS−1)により表される好ましい塩基性化合物として、少なくとも1つのRがヒドロキシル基で置換されたアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン及びN,N−ジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
なお、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に酸素原子を有していてもよい。即ち、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては、−CH2CH2O−が好ましい。具体的には、例えば、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン、及び、US6040112号明細書のカラム3の60行目以降に例示されている化合物が挙げられる。
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
この含窒素複素環は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよい。さらに、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、例えば、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物〔N−ヒドロキシエチルピペリジン及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど〕、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、並びにアンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン及びヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンが挙げられる。
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物が含んでいるアルキル基のN原子と反対側の末端にフェノキシ基を備えた化合物である。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基及びアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
この化合物は、より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有している。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CH2CH2O−が特に好ましい。
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミン、及び、US2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1-1)〜(C3-3)が挙げられる。
(4)アンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いることができる。このアンモニウム塩は、好ましくは、ヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的には、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
その他、本発明に係るポジ型又はネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物に使用可能なものとして、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、及び特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物等が挙げられる。
また、塩基性化合物として、感光性の塩基性化合物を用いてもよい。感光性の塩基性化合物としては、例えば、特表2003−524799号公報、及びJ.Photopolym.Sci&Tech. Vol.8,P.543−553(1995)等に記載の化合物を用いることができる。
塩基性化合物の分子量は、250〜2000であることが好ましく、400〜1000であることが更に好ましい。
これらの塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
塩基性化合物の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.01〜8.0質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましく、0.2〜4.0質量%であることが特に好ましい。
(界面活性剤)
本発明に係る組成物は、界面活性剤を更に含有してもよい。この界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が特に好ましい。
この界面活性剤としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF176及びメガファックR08、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、トロイケミカル(株)製のトロイゾルS−366、住友スリーエム(株)製のフロラードFC430、並びに、信越化学工業(株)製のポリシロキサンポリマーKP−341が挙げられる。
また、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の界面活性剤を使用することもできる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類及びポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類等が挙げられる。
その他、公知の界面活性剤が適宜使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、米国特許2008/0248425A1号明細書の[0273]以降に記載の界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0〜2質量%であり、より好ましくは0.0001〜2質量%であり、更に好ましくは0.001〜1質量%である。
(溶剤)
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル及び乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、及びアルコキシ酢酸アルキル(好ましくはエトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、US2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
上記の溶剤のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、及び乳酸エチルが特に好ましい。
これら溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、通常1/99〜99/1であり、好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは20/80〜60/40である。
水酸基を有する溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテル又は乳酸アルキルエステルが好ましく、水酸基を有しない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。
溶剤の使用量は特に限定されないが、組成物の全固形分濃度が、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1.0〜10質量%となるように調製される。特に、本発明の組成物を用いて電子線またはEUVリソグラフィーを行う場合は、好ましくは2.0〜6.0質量%、より好ましくは2.0〜4.5質量%となるようにする。
(その他の添加剤)
本発明に係るポジ型又はネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び現像液に対する溶解を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、又は、カルボキシ基を有する脂環族若しくは脂肪族化合物)等を更に含有させることができる。また、特開2006−208781号公報及び特開2007−286574号公報等に記載されているプロトンアクセプター性官能基を備えた化合物も好適に用いることができる。
〔7〕パターン形成方法
本発明に係るポジ型又はネガ型感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、典型的には、以下のようにして用いられる。即ち、本発明に係る組成物は、典型的には、基板等の支持体上に塗布されて、膜を形成する。この膜の厚みは、0.02〜0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
例えば、この組成物は、精密集積回路素子の製造等に使用される基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆、窒化シリコン及びクロム蒸着された石英基板など)上に、スピナー及びコーター等の適当な塗布方法により塗布される。その後、これを乾燥して、感活性光線性または感放射線性の膜(以下、感光性膜ともいう)を得る。なお、公知の反射防止膜を予め塗設することもできる。
次いで、感光性膜に活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行った後、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。なお、ベーク温度は、感度及び安定性の観点から、80℃〜150℃とすることが好ましく、90℃〜130℃とすることがより好ましい。
活性光線又は放射線としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、及び電子線が挙げられる。これら活性光線又は放射線としては、例えば250nm以下、特には220nm以下の波長を有したものがより好ましい。このような活性光線又は放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、及び電子ビームが挙げられる。特に好ましい活性光線又は放射線としては、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)及び電子ビームが挙げられる。
なお、活性光線又は放射線の照射時に、感光性膜とレンズとの間に空気よりも屈折率の高い液体(純水など)を満たしての露光、即ち、液浸露光を行ってもよい。これにより、解像度を高めることができる。この場合、膜と液浸液との間には、膜と液浸液との接触を避けるために、膜の上に液浸液難溶性膜(「トップコート」ともいう)を設けてもよい。また、膜と液浸液との接触を避けるための別の手段として、前述の組成物に予め疎水性樹脂(HR)を添加しておいてもよい。
この疎水性樹脂(HR)具体的に述べる。
本発明の組成物からなる膜を、液浸媒体を介して露光する場合には、必要に応じてさらに疎水性樹脂(HR)を添加することができる。これにより、膜表層に疎水性樹脂(HR)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、膜とした際の水に対するレジスト膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性を向上させることができる。疎水性樹脂(HR)が添加されることにより、表面の後退接触角が向上する。膜の後退接触角は60°〜90°が好ましく、更に好ましくは70°以上である。疎水性樹脂(HR)は前述のように界面に偏在するものであるが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
後退接触角とは、液滴−基板界面での接触線が後退する際に測定される接触角であり、動的な状態での液滴の移動しやすさをシミュレートする際に有用であることが一般に知られている。簡易的には、針先端から吐出した液滴を基板上に着滴させた後、その液滴を再び針へと吸い込んだときの、液滴の界面が後退するときの接触角として定義でき、一般に拡張収縮法と呼ばれる接触角の測定方法を用いて測定することができる。
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態に於けるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能がレジストには求められる。
疎水性樹脂(HR)は、膜表面に偏在するために、フッ素原子または珪素原子を含有することが好ましい。疎水性樹脂(HR)に於けるフッ素原子又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
疎水性樹脂(HR)は、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環または多環のシクロアルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
一般式(F2)〜(F4)中、
R57〜R68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61、R62〜R64およびR65〜R68の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。R57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CF3)2OH、−C(C2F5)2OH、−C(CF3)(CH3)OH、−CH(CF3)OH等が挙げられ、−C(CF3)2OHが好ましい。
以下、フッ素原子を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、X
1は、水素原子、−CH
3、−F又は−CF
3を表す。X
2は、−F又は−CF
3を表す。
疎水性樹脂(HR)が珪素原子を含有する場合、珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、または環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、または環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
R12〜R26は、各々独立に、直鎖もしくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)またはシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
L3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、またはウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。nは、好ましくは、2〜4の整数である。
以下、一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、具体例中、X
1は、水素原子、−CH
3、−F又は−CF
3を表す。
更に、疎水性樹脂(HR)は、下記(x)〜(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。
(x)アルカリ可溶性基、
(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基、
(z)酸の作用により分解する基。
(x)アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、ビス(カルボニル)メチレン基が挙げられる。
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位などが挙げられ、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入することもでき、いずれの場合も好ましい。
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜50mol%が好ましく、より好ましくは3〜35mol%、更に好ましくは5〜20mol%である。
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、例えば、ラクトン構造を有する基、酸無水物基、酸イミド基などが挙げられ、好ましくはラクトン構造を有する基である。
アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルによる繰り返し単位のように、樹脂の主鎖にアルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)が結合している繰り返し単位、あるいはアルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましい。
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜40mol%が好ましく、より好ましくは3〜30mol%、更に好ましくは5〜15mol%である。
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の具体例としては、(B)成分の樹脂で挙げたラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものを挙げることができる。
疎水性樹脂(HR)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂(B)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。疎水性樹脂(HR)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜80mol%が好ましく、より好ましくは10〜80mol%、更に好ましくは20〜60mol%である。
疎水性樹脂(HR)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
一般式(III)に於いて、
Rc31は、水素原子、アルキル基、またはフッ素で置換されていても良いアルキル基、シアノ基又は−CH2−O−Rac2基を表す。式中、Rac2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Rc31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
Rc32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する基を表す。これら基はフッ素原子、珪素原子で置換されていても良い。
Lc3は、単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(III)に於ける、Rc32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20のフェニル基、ナフチル基が好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
Rc32は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
Lc3の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基、フェニレン基、エステル結合(−COO−で表される基)が好ましい。
疎水性樹脂(HR)は、更に、下記一般式(CII−AB)で表される繰り返し単位を有することも好ましい。
式(CII-AB)中、
Rc11'及びRc12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Zc'は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
以下に一般式(III)、(CII−AB)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH
3、CH
2OH、CF
3又はCNを表す。
疎水性樹脂(HR)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂(HR)の分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、疎水性樹脂(HR)中10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(HR)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、疎水性樹脂(HR)の分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(HR)中10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(HR)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
疎水性樹脂(HR)の組成物中の含有率は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜8質量%がより好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
疎水性樹脂(HR)は、樹脂(B)と同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のないレジストが得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2の範囲である。
疎水性樹脂(HR)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のポジ型レジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)または水を含む溶媒が好ましい。
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、さらに好ましくは300〜1000質量部である。
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
尚、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
以下に疎水性樹脂(HR)の具体例を示す。また、下記表1に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。その添加剤としては水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(D2O)を用いてもよい。
本発明の組成物による膜と液浸液との間には、膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト上層部への塗布適正、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液難溶性である。トップコートは、レジストと混合せず、さらにレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、193nm透明性という観点からは、芳香族を豊富に含有しないポリマーが好ましく、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。前述の疎水性樹脂(HR)はトップコートとしても好適なものである。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染するという観点からは、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程が膜の現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性が好ましいが、膜との非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がない方が、解像力が向上する。ArFエキシマレーザー(波長:193nm)において、液浸液として水を用いる場合には、ArF液浸露光用トップコートは、液浸液の屈折率に近いことが好ましい。屈折率を液浸液に近くするという観点からは、トップコート中にフッ素原子を有することが好ましい。また、透明性・屈折率の観点から薄膜の方が好ましい。
トップコートは、膜と混合せず、さらに液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。さらに、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
次に現像工程について説明する。
現像工程では、通常アルカリ現像液を用いる。
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及びアンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン及びn−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン及びジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン及びメチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、又は、ピロール及びピヘリジン等の環状アミン類を含んだアルカリ性水溶液が挙げられる。
アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。
アルカリ現像液の濃度は、通常、0.1〜20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常、10.0〜15.0である。
なお、本発明に係る組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスの詳細については、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」等を参照されたい。
〔8〕硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、放射線により硬化可能であり、少なくとも上述した(a)スルホニウム塩(A1)、(b)カチオン重合性化合物、及び(c)増感剤を含有する。
本発明の硬化性組成物としては、活性光線または放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能な硬化性組成物が好ましい。
本発明の硬化性組成物は、様々な用途に使用可能であるが、インク組成物、クリアインク(無色インク組成物)、表面平滑性やガスバリア性、光沢性、耐スクラッチ性などを付与する塗布剤、平版印刷版、ホログラフィ、カラーフィルター、光ディスクの製造、IC等の半導体製造工程、液晶表示装置、サーマルヘッド等の回路基板の製造にも好適に使用することができ、三次元造形などの造形材料としても有用であり、また、塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料としても有用である。
本発明の硬化性組成物を無色のクリアインキとして使用する場合には、点字シールや点字表示物などに利用可能である。さらに、本発明の硬化性組成物は、画像形成にとらわれず、広く応用的な利用が可能であり、例えば表面平滑性付与などにも利用可能である。具体的には、インクジェットインクで画像を形成した被記録材表面の平滑性を向上させるために、本発明の硬化性組成物を塗布し、これを硬化させることで、その凹凸を埋め、表面を平滑化することが可能である。
本発明の硬化性組成物は、これらの用途の中でも、クリアインク又はインク組成物として使用することが好ましく、インク組成物として使用することが特に好ましい。また、インク組成物として使用する場合には、(d)着色剤を含有することが好ましい。
(b)重合性化合物
本発明において、重合性化合物としては、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物のいずれも使用することができる。また、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物を併用することもできる。また、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物は、それぞれ1種単独で使用することもでき、また、複数の種類を組み合わせて使用することもできる。
これらの中でもカチオン重合性化合物を使用することが好ましい。また、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物を併用することもできる。カチオン重合性化合物を使用すると酸素阻害が少なく、高感度であるので好ましい。
カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物を併用する場合、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物の重量比は10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましい。重量比が上記範囲内であると高い膜強度が得られるので好ましい。
以下、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物についてそれぞれ説明する。
(b−1)カチオン重合性化合物
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物としては、カチオン重合開始剤から発生するカチオン重合開始種により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。また、カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では400nm以上の可視光波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂も、例えば特開平6−43633号、特開平8−324137号の各公報等に公開されている。
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、脂肪族エポキシドなどが挙げられ、芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン環又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、例えば、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
また、多官能エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキセニル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキセンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,13−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
また、多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性の観点から好ましく、さらに本発明の硬化性組成物をインク組成物に使用した場合、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
本発明に用いることのできるオキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明の硬化性組成物に用いることができるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物であることが好ましい。このような化合物を使用することで、硬化性組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、特にインク組成物に使用した場合には硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができるので好ましい。
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、例えば、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
Ra1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
Ra2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していても良く、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
R
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
R
a3が上記多価基である場合、R
a4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
R
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO
2、C(CF
3)
2、又は、C(CH
3)
2を表す。
R
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。R
a7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、R
a8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
式(1)で表される化合物として、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、例えば、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株))が挙げられる。
分子内に3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、例えば、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
式(4)において、R
a1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、多価連結基であるR
a9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
上記Aにおいて、R
a1及びR
a10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
また、本発明に好適に用いることができるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
式(5)において、Ra1及びRa8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号0021ないし0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に用いることができる。また、特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に用いることができる。段落番号0022ないし0058に詳細に記載されている。
本発明で使用するオキセタン化合物のなかでも、硬化性組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
本発明に用いることのできるカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、硬化性組成物の硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
(b−2)ラジカル重合性化合物
本発明において、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を使用することもできる。
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合開始剤の存在下、活性放射線照射により高分子化又は架橋反応するラジカル重合性有機化合物であり、好ましくは1分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。
ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−80675号等の各公報に記載されている光重合性組成物を用いた光硬化型材料が知られている。
かかる化合物としては、例えば、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、アリルウレタン化合物、不飽和ポリエステル化合物、スチレン系化合物等が好ましく挙げられる。
かかるラジカル重合性化合物の中でも(メタ)アクリル基を有する化合物は、合成、入手が容易で、かつ取り扱いも容易であるため好ましい。例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸、又は、その混合物であることを表し、(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタクリレート、又は、その混合物であることを表す。
ここで、エポキシ(メタ)アクリレートとは、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などと、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
これらのエポキシアクリレートのうち、特に好ましいものは、芳香族エポキシ樹脂のアクリレートであり、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレートである。例えば、ビスフェノールA、又はそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルを、(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応して得られる(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとして好ましいものは、1種又は2種以上の水酸基含有ポリエステルや水酸基含有ポリエーテルに水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られる(メタ)アクリレートや、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られる(メタ)アクリレート等である。
ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種又は2種以上の多価アルコールと、1種又は2種以上の多塩基酸との反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、例えば1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。
水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。
かかる水酸基含有(メタ)アクリル酸のうち、二価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは特に好ましく、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
イソシアネート類としては、分子中に少なくとも1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
ポリエステル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。
ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種又は2種以上の多価アルコールと、1種又は2種以上の1塩基酸、多塩基酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。1塩基酸としては、例えばギ酸、酢酸、酪酸、安息香酸が挙げられる。多塩基酸としては、例えばアジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸が挙げられる。
ポリエーテル(メタ)アクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエーテルと、メタ(アクリル)酸とを反応させて得られるポリエーテル(メタ)アクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、多価アルコールとしては、前述した化合物と同様のものが例示できる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられる。
アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとして好ましいものは、分子中に少なくとも1個の水酸基を持つ芳香族又は脂肪族アルコール、及びそのアルキレンオキサイド付加体と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートであり、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのラジカル重合性化合物は、1種或いは2種以上を所望の性能に応じて配合して使用することができる。
ラジカル重合性化合物100重量部のうち50重量部以上が、分子中に(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。
(c)増感剤
本発明において、硬化性組成物は、光酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有することが好ましい。増感剤としては、光酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9.10−ジアルコキシアントラセン)、トリフェニルアミン類、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリジンオレンジ、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等が挙げられ、さらに欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、同5,227,227号明細書、特開2001−125255号公報、特開平11−271969号公報等に記載の化合物等などが挙げられる。
中でも本発明におけるスルホニウム塩(A1)には、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9.10−ジアルコキシアントラセン)、チオキサントン類、ジスチリルベンゼン類、スチリルベンゼン類、ジフェニルブタジエン類と組み合わせるのが開始効率の観点で好ましく、多核芳香族類、ジスチリルベンゼン類、スチリルベンゼン類、ジフェニルブタジエン類と組み合わせることが特に好ましい。
以下に、本発明で好ましく使用できる増感剤を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明において、硬化性組成物における(c)増感剤の含有量は、硬化性組成物又はインク組成物の着色性等の観点から、硬化性組成物又はインク組成物の全重量に対し、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。
(c)増感剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
〔インク組成物〕
本発明の硬化性組成物は、インク組成物に好適に使用することができる。すなわち、本発明において、インク組成物は、(a)スルホニウム塩(A1)、(b)重合性化合物、及び(c)増感剤を含有し、必要に応じて(d)着色剤、(e)共増感剤、(g)重合開始剤、(h)その他の成分を含んでいてもよい。
インク組成物として使用する場合、スルホニウム塩(A1)の含量は、インク組成物の全質量を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜7質量%である。
また、インク組成物中の(b)重合性化合物の含量は、インク組成物の全質量に対し、10〜95質量%が好ましく、より好ましくは30〜90質量%、さらに好ましくは50〜85質量%の範囲である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
<光酸発生剤A1の合成>
(1)化合物A1−1の合成
4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gとマグネシウム4.4gとをTHF150mlを溶媒として常法により調製したGrignard試薬に、塩化チオニル5.1gを0℃で滴下した後、1時間攪拌した。次に、これにトリメチルシリルクロライド9.3gを0℃で滴下した後、室温まで昇温して2時間攪拌した。反応溶液を12%HBr水溶液100mlへ注ぎ入れ反応を停止した。得られた反応溶液にトルエン100mlを注入し、12%HBr水溶液50mlで2回抽出し、更にトルエン50mlで全水層を2回洗浄した後、クロロホルム50mlで3回抽出した。全クロロホルム層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去し、得られた液体をメタノール100ml溶解させ、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0g加え2時間攪拌した。溶媒を留去した後に、酢酸エチルを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、溶媒を除去することで、目的の白色固体の化合物(A1−1)22.5gを得た。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ=7.79(d, J = 8.1Hz, 6H), 7.55(d, J = 8.1Hz, 6H), 6.97(s, 2H), 4.55(s, 6H), 4.38-4.25(m, 2H), 3.58(q, J=6.6Hz, 6H), 2.43-2.32(m, 1H), 1.95-1.12(m, 30H) ,1.26(t, J=6.6Hz, 9H).
(2)化合物A1−2の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを4−メトキエメチルブロモベンゼン30.0gに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−2を20.8g得た。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ=7.77(d, J = 8.4Hz, 6H), 7.46(d, J = 8.4Hz, 6H), 6.98(s, 2H), 4.40-4.27(m, 2H), 3.61(t, J=6.6Hz, 6H), 3.33(s, 9H), 2.93(t, J = 6.6Hz, 6H), 2.50-1.35 (m, 1H), 2.00-1.12(m, 30H).
(3)化合物A1−3の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを4−シクロヘキシルオキシメチルブロモベンゼン5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gを2.4.6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0gに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−3を3.8g得た。
(4)化合物A1−4の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを4−メトキシメチルブロモベンゼン5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gをビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸ナトリウム2.0gに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−4を3.5g得た。
(5)化合物A1−5の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを4−エトキシメチルブロモベンゼン5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gを下記スルホン酸ナトリウムA2.0gに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−5を3.9g得た。
(6)化合物A1−6の合成
チオキサンテン-9-オン10gをトリフルオロ酢酸40ml中で攪拌し、氷冷下、30%過酸化水素水5.4mlとトリフルオロ酢酸10.8mlを混合した溶液をゆっくり添加した。その後、氷冷下30分攪拌後、室温で1時間攪拌を行った。さらに、反応液を水にあけ、析出した結晶をろ取した。得られた結晶をアセトニトリルで再結晶し、スルホキシド体4.0gを得た。スルホキシド体3gをエトキシメチルベンゼン10ml中で攪拌し、氷冷下、トリフルオロ酢酸無水物3.7mlとノナフルオロブタンスルホン酸2.2mlを添加した。反応液を徐々に室温まで昇温し、1時間攪拌した。反応液にジイソプロピルエーテルを添加し結晶を析出させ、酢酸エチルとジイソプロピルエーテルの混合溶媒で再結晶することにより、目的の白色固体の化合物(A1−6)2.5gを得た。
(7)化合物A1−7の合成
3,5−メチル−4−メトキシメチルブロモベンゼン10.0gとマグネシウム1.2gとをTHF50mlを溶媒として常法により調製したGrignard試薬に、ジフェニルスルホキシド10.0gを0℃で滴下した後、1時間攪拌した。次に、これにトリメチルシリルクロライド5.4gを0℃で滴下した後、室温まで昇温して2時間攪拌した。反応溶液を12%HBr水溶液50mlへ注ぎ入れ反応を停止した。得られた反応溶液にトルエン50mlを注入し、12%HBr水溶液10mlで2回抽出し、更にトルエン10mlで全水層を2回洗浄した後、クロロホルム30mlで3回抽出した。全クロロホルム層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を留去し、得られた液体をメタノール50ml溶解させ、下記スルホン酸ナトリウムB3.0g加え2時間攪拌した。溶媒を留去した後に、酢酸エチルを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、溶媒を除去することで、目的の白色固体の化合物(A1−7)2.5gを得た。
(8)化合物A1−8の合成
化合物A1−7の合成で、3,5−メチル−4−メトキシメチルブロモベンゼン10.0gをブロモベンゼン1.0gに変更し、ジフェニルスルホキシド10.0gをビス(3−メトキシメチルフェニル)スルホキシド10.0gに変更し、上記スルホン酸ナトリウムB3.0gを下記イミド酸ナトリウムC3.0gに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−8を3.1g得た。
(9)化合物A1−9の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを4−エトキシメチルブロモベンゼン5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gを下記スルホン酸ナトリウムD2.0gに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−9を2.9g得た。
(10)化合物A1−10の合成
1−メトキシメチルナフタレン10.0gをEaton試薬60gに溶解させた後、攪拌しながらテトラメチレンスルホキシド5.7gを滴下し、さらに3時間攪拌を行った。反応液を水100mlに注ぎ、下記スルホン酸ナトリウムE25g、クロロホルムを50g添加した。有機層を分離した後、水層からクロロホルム50gを用いてさらに2回抽出を行った。全有機層を水10mlで2回洗浄し、溶媒を留去し、得られた組成生物を酢酸エチル20gを用いて再結晶を行うことにより、目的の白色固体の化合物(A1−10)15.5gを得た。
(11)化合物A1−11の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gを0.5N KPF6溶液100mlに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−11を2.2g得た。
(12)化合物A1−12の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを4−メトキシメチルブロモベンゼン5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gを0.5N KPF6溶液100mlに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−12を2.5g得た。
(13)化合物A1−13の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gを0.5N KSbF6溶液100mlに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−13を2.5g得た。
(14)化合物A1−14の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを4−メトキシメチルブロモベンゼン5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gをビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸ナトリウム2.0gに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−14を1.9g得た。
(15)化合物A1−15の合成
化合物A1−1の合成で、4−エトキシメチルブロモベンゼン36.9gを4−シクロヘキシルオキシメチルブロモベンゼン5.0gに変更し、2.4.6−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0gを下記トリス(アルキルスルホニル)メチルリチウム2.0gに変更した以外は同様の方法で、化合物A1−15を2.8g得た。
上記合成方法等により得られた化合物A1−1〜A1−12及び比較化合物1〜6を以下に示す。
<実施例A>
〔実施例1A〜18A及び比較例1A〜5A〕
<レジスト調製>
下記表2に示す成分を溶剤に溶解させ固形分濃度4.0質量%の溶液を調製し、これを0.03μmのポアサイズを有するポリテトラフルオロエチレンフィルターでろ過してポジ型レジスト溶液を調製した。調製したポジ型レジスト溶液を下記の方法で評価し、結果を表2に示した。
<レジスト評価>
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その上に調製したポジ型レジスト組成物を塗布し、130℃で、60秒間ベークを行い、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。得られたウエハーArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75)を用い、75nm1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。その後130℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
〔感度、解像性(γ)〕
露光量を10〜40mJ/cm2の範囲で0.5mJずつ変えながら面露光を行い、さらに110℃で、90秒間ベークした。その後2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、各露光量での溶解速度を測定し、溶解度曲線を得た。
この溶解度曲線において、レジストの溶解速度が飽和するときの露光量を感度とし、また溶解度曲線の直線部の勾配から溶解コントラスト(γ値)を算出した。γ値が大きいほど溶解コントラストが良好で解像性に有利と考えられる。
〔LER(ラインエッジラフネス)〕
ラインエッジラフネス(nm)の測定は測長走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して線幅75nmのラインアンドスペース1/1のパターンを観察し、ラインパターンの長手方向のエッジが2μmの範囲についてエッジのあるべき基準線からの距離を測長SEM((株)日立製作所S−8840)により50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
〔パターンプロファイル〕
線幅75nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量におけるプロファイルを走査型顕微鏡(SEM)により観察した。
〔アウトガス性能:露光による膜厚変動率〕
上記の感度を与える照射量の2.0倍の照射量で電子線を照射し、露光後且つ後加熱前の膜厚を測定し、以下の式を用いて、未露光時の膜厚からの変動率を求めた。
膜厚変動率(%)=[(未露光時の膜厚−露光後の膜厚)/未露光時の膜厚]×100
〔経時安定性〕
レジスト組成物を室温で1ケ月保存した後、感度変動の度合いを下記判定基準に従って評価した。
(判定基準)
○:<1mJ/cm
2の感度変動が観察。
△:1mJ/cm
2以上3mJ/cm
2以下の感度変動が観察。
×:>3mJ/cm
2の感度変動が観察。
これらの測定結果を、下記表2に示す。
使用した各成分は、以下のとおりである。
〔光酸発生剤〕
本発明の光酸発生剤(A1)は、先に例示したものである。
併用した光酸発生剤(A2)は、下記の化合物Zである。
〔樹脂〕
樹脂としては、下記(RA−1)〜(RA−4)の何れかを使用した。なお、下式において、繰り返し単位の右側の数字は、モル比を表している。また、Mwは重量平均分子量を表し、Mw/Mnは分散度を表している。
<塩基性化合物>
塩基性化合物としては、下記の化合物C−1〜C−3を用いた。
C−1:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
C−2:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
C−3:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン
<界面活性剤>
界面活性剤としては、下記のW−1〜W−4を用いた。
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製;シリコン系)
W−4:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製;フッ素系)
<溶剤>
溶剤としては、下記のA1〜A4並びにB1及びB2を用いた。なお、これら溶剤は、適宜混合して用いた。
A1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
A2:2−ヘプタノン
A3:シクロヘキサノン
A4:γ−ブチロラクトン
B1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
B2:乳酸エチル
表2の結果から、ArF露光において本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、感度、解像性、LER、パターンプロファイル、アウトガス特性及び経時安定性のいずれにおいても優れていることが明らかである。
<実施例B>
実施例1Aの組成物に下記ポリマー0.06gを加えたこと以外は実施例Aと同様にしてレジスト溶液を調製し、塗設を行い、レジスト膜を得た。得られたレジスト膜に、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製XT1700i、NA1.2)を用いて、液浸液(純水)を介してパターン露光し、実施例Aと同様にパターンを形成した。そして、得られたパターンについて、感度、解像性、LER、パターンプロファイル、アウトガス特性及び経時安定性のいずれにおいても、同様の評価結果が得られることを確認した。
<実施例C>
〔実施例1C〜15C及び比較例1C〜5C〕
<レジスト調製>
下記表3に示した成分を溶剤に溶解させ、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して固形分濃度8質量%のポジ型レジスト溶液を調製した。
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で90秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行い、膜厚0.4μmのレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜に対し、KrFエキシマレーザーステッパー(NA=0.63)を用いラインアンドスペース用マスクを使用してパターン露光し、露光後すぐに110℃で90秒間ホットプレート上で加熱した。更に2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液で23℃において60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインパターンを形成した。
〔感度、解像性(γ)〕
露光量を10〜40mJ/cm2の範囲で0.5mJずつ変えながら面露光を行い、さらに110℃で、90秒間ベークした。その後2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、各露光量での溶解速度を測定し、溶解度曲線を得た。
この溶解度曲線において、レジストの溶解速度が飽和するときの露光量を感度とし、また溶解度曲線の直線部の勾配から溶解コントラスト(γ値)を算出した。γ値が大きいほど溶解コントラストが良好で解像性に有利と考えられる。
〔LER(ラインエッジラフネス)〕
ラインエッジラフネス(nm)の測定は測長走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して線幅0.2μmのラインアンドスペース1/1のパターンを観察し、ラインパターンの長手方向のエッジが5μmの範囲についてエッジのあるべき基準線からの距離を測長SEM((株)日立製作所S−8840)により50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
〔パターンプロファイル〕
線幅0.20μmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、最適露光量におけるプロファイルを走査型顕微鏡(SEM)により観察した。
〔アウトガス性能:露光による膜厚変動率〕
上記の感度を与える照射量の2.0倍の照射量で電子線を照射し、露光後且つ後加熱前の膜厚を測定し、以下の式を用いて、未露光時の膜厚からの変動率を求めた。
膜厚変動率(%)=[(未露光時の膜厚−露光後の膜厚)/未露光時の膜厚]×100
〔経時安定性〕
レジスト組成物を室温で1ケ月保存した後、感度変動の度合いを下記判定基準に従って目視により評価した。
(判定基準)
○:<1mJ/cm2の感度変動が観察。
△:1mJ/cm2以上3mJ/cm2以下の感度変動が観察。
×:>3mJ/cm
2の感度変動が観察。
これらの評価結果を、下記表3に示す。
なお、光酸発生剤(A1)及び(A2)、塩基性化合物、界面活性剤及び溶剤については、先に示したものから適宜選択して用いた。
樹脂としては、先に例示した(R―1)〜(R−27)から適宜選択して用いた。表2及び以下の各表に挙げられている(R−8)、(R−14)、(R−17)、(R−18)及び(R−19)における各繰り返し単位のモル比及び重量平均分子量は、下記表4に示す通りである。
表3に示す結果から、本発明に係る組成物は、KrF露光において、感度、解像性、LER、パターン形状、及び経時安定性に優れていることが分かる。即ち、本発明の組成物は、KrFエキシマレーザー露光におけるポジ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例D>
(実施例1D〜19D及び比較例1D〜4D)
<レジスト調製>
下記表5に示した成分を溶剤に溶解させた後、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度4質量%のポジ型レジスト溶液を調製した。
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.12μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜を、ニコン社製電子線プロジェクションリソグラフィー装置(加速電圧100keV)で照射し、照射後直ぐに110℃で90秒間ホットプレート上にて加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させ、ラインアンドスペースパターンを形成した。
〔感度〕
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて観察した。0.10μm(ライン:スペース=1:1)を解像するときの電子線照射量を感度(E0)とした。
〔解像度〕
上記の感度を示す露光量における1:1ラインスペースの限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像度(密集)とした。
〔LER(ラインエッジラフネス)〕
実施例AにおけるLERの評価方法と同様にしてLERを求めた。
〔アウトガス性能:露光による膜厚変動率〕
実施例Aにおける経時安定性の評価方法と同様にして、経時安定性を評価した。
〔経時安定性〕
実施例Aにおける経時安定性の評価方法と同様にして、経時安定性を評価した。
これらの評価結果を、下記表5に示す。
表5に示す結果から、本発明に係る組成物は、電子線露光において、感度、解像性、LER、パターンプロファイル、アウトガス特性及び経時安定性のいずれにおいても、優れていることが分かる。即ち、本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、電子線照射によるポジ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例E>
(実施例1E〜6E及び比較例1E〜3E)
(レジスト調製)
下記表6に示す成分を溶剤に溶解させた後、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度4質量%のネガ型レジスト溶液を調製した。
<レジスト評価>
調製したネガ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上において加熱乾燥を行って、0.12μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜を、ニコン社製電子線プロジェクションリソグラフィー装置(加速電圧100keV)で照射し、照射後直ぐに110℃で90秒間ホットプレート上において加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させ、ラインアンドスペースパターンを形成した。
評価は、実施例Dについて説明したのと同様にして行った。その結果を表6に示す。
以下に、アルカリ可溶性樹脂(C)の構造、分子量及び分子量分布、並びに酸架橋剤の構造を示す。
表6に示す結果から、本発明に係る組成物は、電子線露光において、感度、解像度、LER、アウトガス性能及び経時安定性のいずれにおいても優れていることが分かる。即ち、本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、電子線照射によるネガ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例F>
(実施例1F〜4F及び比較例1F〜2F)
<レジスト調製>
下記表7に示した成分を溶剤に溶解させ、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度4質量%のポジ型レジスト溶液を調した。
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.12μmの膜厚を有するレジスト膜を形成させた。
レジスト膜を、EUV露光装置(波長13nm)で照射し、照射後直ぐに110℃で90秒間ホットプレート上で加熱した。更に濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて23℃で60秒間現像し、30秒間純水にてリンスした後、乾燥し、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)を形成し、得られたパターンを下記方法で評価した。
〔感度〕
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(日立社製S−9220)を用いて観察した。0.10μm(ライン:スペース=1:1)を解像するときの電子線照射量を感度(E0)とした。
〔LER(ラインエッジラフネス)〕
上記の感度を示す照射量で、50nmラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmに含まれる任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。
〔アウトガス性能:露光による膜厚変動率〕
実施例Dにおけるアウトガス性能の評価方法と同様にして、EUV露光による膜厚変動率を求めた。
〔経時安定性〕
実施例Aにおける経時安定性の評価方法と同様にして、経時安定性を評価した。
これらの評価結果を下記表7に示す。
表7に示す結果から、本発明に係る組成物は、EUV露光において、感度、LER、アウトガス性能及び経時安定性のいずれにおいても優れていることが分かる。即ち、本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、EUV照射によるポジ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例G>
(実施例1G〜5G及び比較例1G〜2G)
<レジスト調製>
下記表8に示した成分を溶剤に溶解させ、これをポアサイズ0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、固形分濃度4質量%のネガ型レジスト溶液を調製し、下記の通り評価を行った。
<レジスト評価>
調製したネガ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、120℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.12μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
このレジスト膜について、実施例Fについて説明したのと同様の評価を行った。その結果を下記表8に示す。
表8に示す結果から、本発明に係る組成物は、EUV露光において、感度、LER、アウトガス性能及び経時安定性のいずれにおいても優れていることが分かる。即ち、本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物は、EUV照射によるネガ型レジスト組成物としても、優れた性能を有していることが分かる。
<実施例H>
(実施例1H〜5H及び比較例1H〜3H)
<顔料分散物の調製>
下記に記載の方法に従って、白の各顔料分散物1を調製した。なお、分散条件は、各顔料粒子の平均粒径が0.2〜0.3μmの範囲となるように、公知の分散装置を用いて、分散条件を適宜調整して行い、次いで加熱下でフィルター濾過を行って顔料分散物を調製した。
白色顔料分散物1
・酸化チタン(平均粒径0.15μm、屈折率2.52) 25質量部
・中性高分子分散剤PB822(味の素ファインテクノ社製) 14質量部
・OXT−221(東亞合成(株)製) 60質量部
(実施例1H:白インク1)
<白インク1>
白色顔料分散物1 5質量部
スルホニウム塩(A−11) 6質量部
増感剤:Z1 3質量部
重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製)
40質量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製)
45質量部
界面活性剤:BYK307(BYK Chemie社製) 1質量部。
(実施例2H:白インク2)
<白インク2>
白インク2は、スルホニウム塩(A−11)の代わりに、スルホニウム塩(A−12)を用いた以外は、白インク1と同様に調製した。
(比較例1H:白インク6)
<白インク3>
白インク3は、スルホニウム塩(A−11)の代わりに、スルホニウム塩(比較化合物6)を用いた以外は、白インク1と同様に調製した。
(比較例2H:白インク7)
<白インク7>
白インク7は、スルホニウム塩(A−11)の代わりに、スルホニウム塩(比較化合物7)を用いた以外は、白インク1と同様に調製した。
(比較例3H:白インク8)
<白インク8>
白インク8は、スルホニウム塩(A−11)の代わりに、スルホニウム塩(比較化合物8)を用いた以外は、白インク1と同様に調製した。
以上の様にして調製したインク組成物を絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、白インク1〜8とした。
≪インクジェット画像記録≫
次に、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度100mW/cm2に集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
上記調製した各色インクを用い、環境温度25℃にて射出し、Integration Technology社製メタルハライドランプVzero085により紫外線を1色毎に照射した。触診で粘着性が無くなる様、完全に硬化するエネルギーとして、1色あたりのトータル露光エネルギーが一律100mJ/cm2で露光した。被記録媒体としては、砂目立てしたアルミニウム支持体、印刷適性を持たせた表面処理済みの透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム、軟質塩化ビニルシート、キャストコート紙、市販の再生紙に各カラー画像を記録したところ、いずれもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。さらに、上質紙においてもインクが裏周りすることなく、十分にインクが硬化し、未反応モノマーによる臭気が殆どしなかった。また、フィルムに記録したインクには十分な可とう性があり、折り曲げてもインクにクラックが入ることは無く、セロテープ(登録商標)剥離による密着性テストにおいても問題無かった。
≪インクジェット画像の評価≫
次いで、各形成した画像について、下記に記載の方法に準じて、硬化に必要な感度、保存安定性、耐刷性の評価を行った。
1.硬化感度の測定
露光直後の印字サンプルに上質紙を重ね、圧力ローラー(50kg/cm2)を通したときの色材の上質紙への転写性を評価し、転写が無くなる露光エネルギー量(mJ/cm2)を硬化感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
なお、硬化感度の測定に際して、被記録媒体として、砂目立てしたアルミニウム支持体を用いた。
2.保存安定性の評価
作製したインクを75%RH、60℃で3日保存した後、射出温度でのインク粘度を測定し、インク粘度の増加分を、保存後/保存前の粘度比で表した。粘度が変化せず1.0に近いほうが保存安定性が良好であり、1.5を超えると射出時に目詰まりを起こす場合があり好ましくない。
3.耐刷性の評価
上記で作成した砂目立てしたアルミニウム支持体上に印字した画像を印刷版として、ハイデルKOR−D機で印刷後、刷了枚数を耐刷性の指標として相対比較した(実施例1を100とした)。数値が大きいものほど高耐刷であり好ましい。
4.吐出安定性の評価
上記プリンターによりインクの連続射出を行い、下記の基準に則り吐出安定性の評価を行った。下記評価ランクにおいて、○であれば実用上問題ないと判断した。
○:連続射出2時間以上でもノズル欠が発生しない
△:連続射出30分以上、2時間未満でノズル欠が発生しない
×:連続射出30分未満で、ノズル欠が発生する
5.着色性評価
白インクをPET基板上に印字した後、白色台紙の上に重ね、各試料について、10人のモニターによる目視評価で3段階評価による得点の平均点を算出した。なお、点数は平均点の小数点以下を四捨五入した値を算出した。
3点:全く黄色味が無い
2点:若干黄色味を帯びている
1点:強く黄色味が出ている
6.ベンゼン発生量の評価
白インク1mlを157cm
2のPET基板上に塗布し、6.1Lの透明密閉容器に入れ、30℃に加熱した状態で、高圧水銀灯を用いて照射エネルギー10mJ/cm
2にて20秒間照射を行った。次いで、密閉容器内のガスを捕集し、ガスクロマトグラフィーによりベンゼンを定量した。ベンゼンの同定はGC−MSにて行い、ベンゼンの定量は、一定量のベンゼンをガスクロマトグラフィーにて分析して作成した検量線を用いて行い、検出量を密閉容器体積1m
2当たりの発生量(μg)で示した。
これらの評価結果を下記表9に示す。