ところで、図12に示すように、一般的なカーブは、カーブ開始地点(カーブ入口)Ciからカーブ終了地点(カーブ出口)Cdに向けて順に、進入緩和曲線区間Zci(車両の進行に伴い曲率半径が徐々に小さくなる)、一定曲率半径区間Zit、及び退出緩和曲線区間Zcd(車両の進行に伴い曲率半径が徐々に大きくなる)から構成されている。緩和曲線は、例えば、クロソイド曲線で構成される。緩和曲線区間が設けられているのは、運転者に急激なステアリングホイール操作を要求することなく、運転者がステアリングホイールを徐々に切り込み、その後徐々に切り戻すことで車両がカーブを円滑に通過できるようにするためである。
緩和曲線区間Zci,Zcdを有するカーブを一定車速で車両が走行する場合、車両に作用する遠心力が、進入緩和曲線区間Zciでは徐々に増加し、一定曲率半径区間Zitにおいて最大で一定となり、そして、退出緩和曲線区間Zcdで徐々に減少する。このため、車両がカーブに差し掛かったとき、即ち、カーブ入口Ci付近においては、車両に作用する遠心力は未だ小さいから、運転者はサイドサポート制御の必要性を感じていない。
従って、上記文献に記載の装置のように、車両がカーブに差し掛かったときにサイドサポート制御が開始されると、運転者は違和感を覚える。また、進入緩和曲線区間Zciの距離が長い場合には、運転者はサイドサポート制御の開始タイミングが早いと感じる。逆に、進入緩和曲線区間Zciの距離が短い場合には、運転者はサイドサポート制御の開始タイミングが遅いと感じる。
本発明の目的は、サイドサポート制御の開始・終了のタイミングが適切に設定されて、運転者への違和感の少ないサイドサポート制御を達成し得る車両のシート制御装置を提供することにある。
本発明による車両のシート制御装置は、車両のシート(SHT)に着座している乗員の左右側部を支える前記シート(SHT)に備えられたサポート部材(BZ)のサポート量(Spt,Spa)を調整するサイドサポート制御を実行するサイドサポート制御手段と、前記車両の位置(Pvh)を取得する車両位置取得手段と、前記車両の前方にある緩和曲線区間と一定曲率半径区間とを含んで構成される1つのカーブの前記緩和曲線区間内におけるカーブ位置(Pc)、及び前記カーブ位置(Pc)に対応する前記カーブの曲率半径(Rc)を取得するカーブ情報取得手段と、前記車両の速度(Vx)を取得する車両速度取得手段と、を備える。具体的には、例えば、前記1つのカーブは、カーブ開始地点から始まる進入緩和曲線区間(車両の進行に伴い曲率半径が徐々に小さくなる)、及び、前記進入緩和曲線区間に続く一定曲率半径区間(曲率半径が一定)を含んで構成され得る。
ここにおいて、前記サポート部材の構成として、例えば、シート(乗員)に対する直線運動によりサポート部材の位置が調整される構成、シート(乗員)に対する回転運動によりサポート部材の位置(姿勢)が調整される構成、サポート部材の内部に形成された膨張・収縮可能なチャンバ内の流体の量の調整によりサポート部材の体積が調整される構成が挙げられる。
サポート部材の位置(姿勢)が調整される場合、サポート量は、サポート部材の基準位置(基準姿勢)からの移動距離(回転角度)である。サポート部材内のチャンバ内の流体の量(サポート部材の体積)が調整される場合、サポート量は、チャンバ内の流体の量の基準量からの変化量(サポート部材の体積の基準体積からの変化量)である。前記基準位置(基準姿勢)、基準量(基準体積)等(以下、「基準状態」とも総称する)は、シートに着座する乗員により調整可能でもよいし、調整不能でもよい。
また、前記カーブ情報取得手段は、前記車両の前方にある1つのカーブの緩和曲線区間内におけるカーブ位置(Pc)に対する前記カーブの曲率半径(Rc)の特性(連続的な変化特性、Rch)を取得するように構成されてもよい。
本発明によるシート制御装置の特徴は、前記サイドサポート制御手段が、前記車両位置(Pvh)、前記カーブ位置(Pc)、前記カーブ曲率半径(Rc)、及び前記車両の速度(Vx)に基づいて、前記サポート量(Spt,Spa)の調整を開始するように構成されたことにある。ここにおいて、前記カーブ位置(Pc)、カーブ位置に対するカーブ曲率半径の特性(Rch)、及び前記車両の速度(Vx)に基づいて、前記サポート量(Spt,Spa)の調整が開始されてもよい。
これによれば、上記文献に記載した装置のようにサイドサポート制御の開始タイミングがカーブ入口Ci付近に設定されるのではなく、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが、カーブの緩和曲線区間内において連続的に変化し得るカーブ曲率半径に基づいて決定され得る。従って、例えば、上述した緩和曲線区間Zci,Zcdを有するカーブを車両が走行する場合において、緩和曲線区間Zci,Zcdの長短にかかわらずサイドサポート制御の開始・終了のタイミングが適切に設定され得、運転者への違和感の少ないサイドサポート制御が達成され得る。
上記本発明によるシート制御装置においては、前記サイドサポート制御手段が、前記車両位置(Pvh)、前記カーブ位置(Pc)、及び前記カーブ曲率半径(Rc)に基づいて前記車両位置(Pvh)における前記カーブの曲率半径(Rvh)を演算し、前記車両位置における前記カーブ曲率半径(Rvh)、及び前記車両の(現在の)速度(Vx)に基づいて、前記サポート量(Spt,Spa)の調整を開始するように構成されることが好適である。ここにおいて、車両位置におけるカーブ曲率半径(Rvh)は、前記車両位置(Pvh)、及び前記カーブ位置に対するカーブ曲率半径の特性(Rch)に基づいて演算され得る。
より具体的には、この場合、前記車両位置における前記カーブ曲率半径(Rvh)、及び前記車両の(現在の)速度(Vx)に基づいて前記車両の第1横加速度(Gyc)が演算され、前記第1横加速度(Gyc)が増加しながら第1所定値(Gy1)に達する時点又は地点に基づいて前記サポート量(Spt,Spa)の(前記基準状態からの)増加が開始され得る(即ち、サイドサポート制御の開始タイミングが決定され得る)。同様に、前記第1横加速度(Gyc)が減少しながら第2所定値(Gy0)に達する時点又は地点に基づいて前記サポート量(Spt,Spa)の(前記基準状態以外の状態からの)減少が開始され得る(即ち、サイドサポート制御の終了タイミングが決定され得る)。
上記構成によれば、カーブの緩和曲線区間内において連続的に変化し得るカーブ曲率半径に基づいて決定され得る第1横加速度が連続した情報としてサイドサポート制御に精度良く反映され得る。従って、例えば、上述した緩和曲線区間Zci,Zcdを有するカーブを車両が走行する場合において、緩和曲線区間Zci,Zcdの長短に係らず、サイドサポート制御の開始・終了タイミングがより適切に設定され得る。
また、サイドサポート制御の開始・終了タイミングは、ステアリングホイールの操作角度や横加速度センサの出力信号に基づいて決定することもできる。しかしながら、この場合、運転者のステアリング操作により車両が車幅方向にふらつくような事態が発生すると、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得ない。これに対し、上記構成によれば、カーブ情報(具体的には、カーブ位置に対するカーブ曲率半径の特性(Rch))に基づいてサイドサポート制御の開始、終了タイミングが決定されるから、車両が車幅方向にふらつくような場合であってもサイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得る。
更には、カーブ情報は予め得られるため、サイドサポート制御手段の応答性(サポート部材を駆動する駆動手段の応答性、応答遅れ)を考慮した上で滑らかで乗員に違和感の少ないサイドサポート制御が実行され得る。具体的には、サイドサポート制御手段の応答性を考慮して、前記第1横加速度(Gyc)が増加しながら第1所定値(Gy1)に達する時点又は地点よりも所定時間又は所定距離だけ前の時点又は地点において前記サポート量(Spt,Spa)の(前記基準状態からの)増加が開始され得る。同様に、サイドサポート制御の応答性を考慮して、前記第1横加速度(Gyc)が減少しながら第2所定値(Gy0)に達する時点又は地点よりも所定時間又は所定距離だけ前の時点又は地点において前記サポート量(Spt,Spa)の(前記基準状態以外の状態からの)減少が開始され得る。なお、この場合、カーブ内における将来の第1横加速度を予測する必要があり、このためには、カーブ内における将来の車速を予測する必要がある。カーブ内における将来の車速は、現在の車速から所定の勾配をもって減少する特性を利用して予測され得る。また、運転者の加速・減速の操作と、現在の車速とに基づいて将来の車速が予測され得る。或いは、後述する車速制御(即ち、協調制御)が実行される場合、カーブ情報から予め設定される目標車速を利用して将来の車速が予測され得る。
また、上記本発明によるシート制御装置においては、前記サイドサポート制御手段が、前記カーブ位置(Pc)、前記カーブ曲率半径(Rc)、及び前記車両の(現在の)速度(Vx)に基づいて前記カーブ位置(Pc)に対する前記車両の第2横加速度(Gye)の特性(Gch)を演算し、前記カーブ位置に対する第2横加速度の特性(Gch)に基づいて前記カーブ内に制御地点(Pc1,Pc0)を設定する地点設定手段を備え、前記制御地点(Pc1,Pc0)、及び前記車両位置(Pvh)に基づいて、前記サポート量(Spt,Spa)の調整を開始するように構成されることが好適である。ここにおいて、カーブ位置に対する第2横加速度の特性(Gch)は、前記カーブ位置に対するカーブ曲率半径の特性(Rch)、及び前記車両の速度(Vx)に基づいて演算され得る。
より具体的には、この場合、前記制御地点として、前記カーブ位置に対する第2横加速度の特性(Gch)から得られる前記第2横加速度(Gye)が増加しながら第3所定値(Gye1)に達する第1制御地点(Pc1)が前記カーブ内に設定され、前記車両位置(Pvh)が前記第1制御地点(Pc1)を通過する時点又は地点に基づいて前記サポート量(Spt,Spa)の(前記基準状態からの)増加が開始され得る(即ち、サイドサポート制御の開始タイミングが決定され得る)。同様に、前記制御地点として、前記カーブ位置に対する第2横加速度の特性(Gch)から得られる前記第2横加速度(Gye)が減少しながら第4所定値(Gye0)に達する第2制御地点(Pc0)が前記カーブ内に設定され、前記車両位置(Pvh)が前記第2制御地点(Pc0)を通過する時点又は地点に基づいて前記サポート量(Spt,Spa)の(前記基準状態以外の状態からの)減少が開始され得る(即ち、サイドサポート制御の終了タイミングが決定され得る)。
上記構成によれば、カーブ位置に対する第2横加速度の特性が連続した情報としてサイドサポート制御に精度良く反映され得る。従って、この構成によっても、緩和曲線区間Zci,Zcdの長短に係らず、サイドサポート制御の開始・終了タイミングがより適切に設定され得る。同様に、この構成によっても、カーブ情報(具体的には、カーブ位置に対する第2横加速度の特性(Gch))に基づいてサイドサポート制御の開始、終了タイミングが決定されるから、車両が車幅方向にふらつくような場合であってもサイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得る。
更には、この構成によっても、サイドサポート制御手段の応答性を考慮した上で滑らかで乗員に違和感の少ないサイドサポート制御が実行され得る。具体的には、サイドサポート制御手段の応答性を考慮して、前記車両位置(Pvh)が前記第1制御地点(Pc1)を通過する時点又は地点よりも所定時間又は所定距離だけ前の時点又は地点において前記サポート量(Spt,Spa)の(前記基準状態からの)増加が開始され得る。同様に、サイドサポート制御の応答性を考慮して、前記車両位置(Pvh)が前記第2制御地点(Pc0)を通過する時点又は地点よりも所定時間又は所定距離だけ前の時点又は地点において前記サポート量(Spt,Spa)の(前記基準状態以外の状態からの)減少が開始され得る。なお、この場合も、上述と同様、カーブ位置に対する第2横加速度の将来の特性を予測する必要があり、このためには、カーブ内における将来の車速を予測する必要がある。
また、上述した本発明によるシート制御装置に対して、前記カーブ位置(Pc)、前記カーブの曲率半径(Rc)、及び前記車両位置(Pvh)に基づいて、前記車両が前記1つのカーブを安定して通過するための前記車両の速度(Vx)の目標である目標車速(Vt)を演算する目標車速演算手段と、前記目標車速(Vt)、及び前記車両の速度(Vx)に基づいて、前記車両の速度(Vx)を制御する車速制御手段とを組み合わせて、サイドサポート制御と車速制御とを協調して行うように構成することもできる。
このシート制御装置の場合、前記サイドサポート制御手段は、前記緩和曲線区間内における前記カーブ位置(Pc)及び前記カーブ曲率半径(Rc)、前記車両位置(Pvh)、及び前記目標車速(Vt)に基づいて、前記サポート量(Spt,Spa)の調整を開始するように構成されることが好適である。即ち、車両の実際の車速(Vx)に代えて車速制御の目標車速(Vt)に基づいてサイドサポート制御を行うことが好適である。
車速制御中は、実際の車速は目標車速に追従させられる制御対象であるため、実際の車速は目標車速の近傍にて微小変動しながら(揺らぎながら)推移する場合がある。この場合、実際の車速(Vx)に基づいてサイドサポート制御を行うと、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得ない。これに対し、値が安定した(揺らがない)車速制御の目標車速(Vt)に基づいてサイドサポート制御を行うことで、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得る。
以下、本発明による車両のシート制御装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るシート制御装置(以下、「本装置」と称呼する。)を搭載した車両の概略構成を示している。本装置は、車両の動力源であるエンジンEGと、自動変速機TMと、ブレーキアクチュエータBRKと、乗員用(特に、運転者用)のシートSHTと、電子制御ユニットECUと、ナビゲーション装置NAVとを備えている。
エンジンEGは、例えば、内燃機関である。即ち、運転者によるアクセルペダル(加速操作部材)APの操作に応じてスロットルアクチュエータTHによりスロットル弁TVの開度が調整される。スロットル弁TVの開度に応じて調整される吸入空気量に応じた量の燃料が燃料噴射アクチュエータFI(インジェクタ)により噴射される。これにより、運転者によるアクセルペダルAPの操作に応じた出力トルクが得られるようになっている。
自動変速機TMは、複数の変速段を有する多段自動変速機、或いは、変速段を有さない無段自動変速機である。自動変速機TMは、エンジンEGの運転状態、及びシフトレバー(変速操作部材)SFの位置に応じて、減速比(EG出力軸(=TM入力軸)の回転速度/TM出力軸の回転速度)を自動的に(運転者によるシフトレバーSFの操作によることなく)変更可能となっている。
ブレーキアクチュエータBRKは、複数の電磁弁、液圧ポンプ、モータ等を備えた周知の構成を有している。ブレーキアクチュエータBRKは、非制御時では、運転者によるブレーキペダル(制動操作部材)BPの操作に応じた制動圧力(ブレーキ液圧)を車輪WH**のホイールシリンダWC**にそれぞれ供給し、制御時では、ブレーキペダルBPの操作(及びアクセルペダルAPの操作)とは独立してホイールシリンダWC**内の制動圧力を車輪毎に調整できるようになっている。
なお、各種記号等の末尾に付された「**」は、各種記号等が何れの車輪に関するものであるかを示していて、「fl」は左前輪、「fr」は右前輪、「rl」は左後輪、「rr」は右後輪を示している。例えば、ホイールシリンダWC**は、左前輪ホイールシリンダWCfl, 右前輪ホイールシリンダWCfr, 左後輪ホイールシリンダWCrl, 右後輪ホイールシリンダWCrrを包括的に示している。
図2に示すように、乗員用(特に、運転者用)のシートSHTは、シートクッション部CS(シート座面部)、シートバック部BS(シート背面部)、及びヘッドレスト部HSから構成されている。このシートSHTにおけるシートクッション部CS、シートバック部BS、及びヘッドレスト部HSの少なくとも1つの両サイドの凸部にはそれぞれ、サポート部材BZ1、BZ2が内蔵されている。
より具体的には、例えば、図3、及び図4に示すように、シートバック部BSの右サイドの凸部には、サポート部材BZ1、及びサイドサポート制御手段SB1(駆動手段、及び動力伝達手段からなる)が内蔵されている。駆動手段である電気モータMT1によってスクリュSQ1が回転駆動されると、スクリュSQ1に螺合されたナットNT1に一体のサポート部材BZ1が、乗員の右側部に対して近づく方向(乗員に対して左方向、シートSHTの左右方向の中心に近づく方向)、或いは、離れる方向(乗員に対して右方向、シートSHTの左右方向の中心から離れる方向)に直線的に移動する。シートバック部BSの左サイドの凸部にも同様に、サポート部材BZ2、及びサイドサポート制御手段SB2(電気モータMT2、スクリュSQ2、及びナットNT2からなる)が内蔵されている。
乗員が手動スイッチMSWを操作することで、サイドサポート制御手段SB1、SB2が駆動されて、サポート部材BZ1,BZ2の基準位置(乗員の操作に応じた適正な位置)が調整され得る。本例では、手動スイッチMSWによる操作に対し、サポート部材BZ1、BZ2が、乗員の側部に対して共に近づく方向、或いは、共に離れる方向に同じ距離だけ移動可能となっている。サポート部材BZ1、BZ2が共に乗員に対して近づく方向に移動される場合、乗員の側部がサポート部材BZ1,BZ2により支えられ易くなり、サポート部材BZ1、BZ2が共に乗員から離れる方向に移動される場合、乗員の側部がサポート部材BZ1,BZ2により支えられ難くなる。
サイドサポート制御では、電子制御ユニットECUからの指令により(手動スイッチMSWの操作なしで)サイドサポート制御手段SB1、SB2が駆動されて、サポート部材BZ1,BZ2の位置が共に、基準位置から乗員に対して近づく方向の範囲内において同じ距離だけ移動・調整される。以下、サポート部材BZ1,BZ2の基準位置(基準状態)からの乗員に対して近づく方向の移動量を「サポート量」と称呼する。
上述のサイドサポート制御手段SB1,SB2と同様の構成を有するサイドサポート制御手段SH1,SH2,SC1,SC2が、ヘッドレスト部HS、及びシートクッション部CSに備えられていてもよい。また、上述の例では、サポート部材BZ1、BZ2の位置がシートSHTに対する直線運動により調整されるが、サポート部材BZ1、BZ2の位置がシートSHTに対する回転運動により調整される構成が採用されてもよい。或いは、サポート部材BZ1,BZ2の内部に形成された膨張・収縮可能なチャンバ内の流体(気体又は液体)の量の調整によりサポート部材BZ1,BZ2の体積が調整される構成が採用されてもよい。以下、サポート部材BZ1,BZ2を、単に「サポート部材BZ」と称呼することもある。
本装置は、車輪WH**の車輪速度を検出する車輪速度センサWS**と、ホイールシリンダWC**内の制動圧力を検出する制動圧力センサPW**と、ステアリングホイールSWの(中立位置からの)回転角度を検出するステアリングホイール角度センサSAと、前輪の舵角を検出する前輪舵角センサFSと、車体のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサYRと、車体前後方向の加速度(減速度)を検出する前後加速度センサGXと、車体横方向の加速度を検出する横加速度センサGYと、エンジンEGの出力軸の回転速度を検出するエンジン回転速度センサNEと、アクセルペダル(加速操作部材)APの操作量を検出する加速操作量センサASと、ブレーキペダルBPの操作量を検出する制動操作量センサBSと、シフトレバーSFの位置を検出するシフト位置センサHSと、スロットル弁TVの開度を検出するスロットル弁開度センサTSと、ステアリングホイールSWの操舵トルクを検出する操舵トルクセンサSTと、を備えている。
電子制御ユニットECUは、パワートレイン系、シャシー系、及びシートSHTを電子制御するマイクロコンピュータである。電子制御ユニットECUは、上述の各種アクチュエータ、上述の各種センサ、及び自動変速機TMと、電気的に接続され、又はネットワークで通信可能となっている。電子制御ユニットECUは、互いに通信バスCBで接続された複数の制御ユニット(ECU1〜ECU5)から構成される。
電子制御ユニットECU内のECU1は、車輪ブレーキ制御ユニットであり、車輪速度センサWS**、前後加速度センサGX、横加速度センサGY、ヨーレイトセンサYR等からの信号に基づいてブレーキアクチュエータBRKを制御することで、周知の車両安定化制御(ESC制御)、アンチスキッド制御(ABS制御)、トラクション制御(TCS制御)等の制動圧力制御(車輪ブレーキ制御)を実行するようになっている。また、ECU1は、車輪速度センサWS**の検出結果(車輪速度Vw**)に基づいて車両速度(車速)Vxを演算するようになっている。
電子制御ユニットECU内のECU2は、エンジン制御ユニットであり、加速操作量センサAS等からの信号に基づいてスロットルアクチュエータTH及び燃料噴射アクチュエータFIを制御することでエンジンEGの出力トルク制御(エンジン制御)を実行するようになっている。
電子制御ユニットECU内のECU3は、自動変速機制御ユニットであり、シフト位置センサHS等からの信号に基づいて自動変速機TMを制御することで減速比制御(変速機制御)を実行するようになっている。
電子制御ユニットECU内のECU4は、電動パワーステアリング制御ユニットであり、操舵トルクセンサST等からの信号に基づいて電動パワーステアリング装置EPSを制御することでパワーステアリング制御を実行するようになっている。
電子制御ユニットECU内のECU5は、シート制御ユニットであり、後述するナビゲーション装置NAV、ECU1等からの信号に基づいてサイドサポート制御手段SB1,SB2を駆動することで、サポート部材BZ1、BZ2のサポート量を制御する(即ち、サイドサポート制御を実行する)ようになっている。
ナビゲーション装置NAVは、ナビゲーション処理装置PRCを備えていて、ナビゲーション処理装置PRCは、車両位置検出手段(グローバル・ポジショニング・システム)GPS、ヨーレイトジャイロGYR、入力部INP、記憶部MAP、及び表示部(ディスプレー)MTRと電気的に接続されている。ナビゲーション装置NAVは、電子制御ユニットECUと、電気的に接続され、又は無線で通信可能となっている。
車両位置検出手段GPSは、人工衛星からの測位信号を利用した周知の手法の一つにより車両の位置(緯度、経度等)を検出可能となっている。ヨーレイトジャイロGYRは、車体の角速度(ヨーレイト)を検出可能となっている。入力部INPは、運転者によるナビゲーション機能に係わる操作を入力するようになっている。記憶部MAPは、地図情報、道路情報等の各種情報を記憶している。
ナビゲーション処理装置PRCは、車両位置検出手段GPS、ヨーレイトジャイロGYR、入力部INP、及び記憶部MAPからの信号を総合的に処理し、その処理結果(ナビゲーション機能に係わる情報)を表示部MTRに表示するようになっている。
(本装置によるサイドサポート制御)
次に、図5を参照しながら、上記のように構成された本装置によるサイドサポート制御の詳細について説明する。以下、車両が通過するカーブとして、図12に示す形状を有するカーブを想定する。
先ず、カーブ情報取得手段A1では、車両の前方にあるカーブの情報Rc,Pc(位置Pcと、その位置に対応するカーブ曲率半径Rc)が取得される。カーブ情報Rc,Pcは、上記記憶部MAPの地図情報のデータベースに記憶されている。カーブ情報には、緩和曲線区間Zci,Zcd、及び、一定曲率半径区間Zitにおける位置Pc(例えば、緯度・経度の情報)と、その位置Pcに対応する曲率半径Rcとが、位置Pcと曲率半径Rcとの組で記憶される。また、位置Pc、及び曲率半径Rcが演算できる書式(例えば、演算式と係数)によって、位置Pc、及び曲率半径Rcを上記データベースに記憶することもできる。
車両位置取得手段A2では、車両の現在位置Pvhが取得される。車両位置Pvhは、グローバル・ポジショニング・システムGPSを用いて検出される。車速取得手段A3では、車両の現在の車速Vxが取得される。
曲率半径演算ブロックB1では、カーブ情報Rc,Pcと、車両の現在位置Pvhとに基づいて、車両前方のカーブの最小曲率半径Rm、及び、車両位置Pvhにおける曲率半径Rvhが演算される。
具体的には、先ず、カーブ情報Rc,Pcに基づいて、緩和曲線区間Zci,Zcd、及び、一定曲率半径区間Zitで構成される1つのカーブ内における位置Pcと曲率半径Rcとの関係(カーブ位置Rcに対する曲率半径Rcの連続的な変化特性、曲率半径演算特性)Rchが演算される。曲率半径演算特性Rchは、予め記憶された道路上の複数の点(ノード点)の位置を幾何学的に滑らかに繋いで得られる曲線に基づいて推定することができる(例えば、特許3378490号公報を参照)。或いは、曲率半径演算特性Rchは、緩和曲線(例えば、クロソイド曲線)を表す関数、及びパラメータ等を用いて地図情報のデータベース内に記憶することができる。更には、曲率半径演算特性Rchは、カーブ位置Pcとカーブ曲率半径Rcとの複数の組として演算され得る。
そして、この曲率半径演算特性Rchに基づいて、カーブ内の最小曲率半径Rmが演算される。また、この最小曲率半径Rmがカーブに対応づけられて地図情報のデータベース内に記憶され得る。更には、緩和曲線区間内の曲率半径の変化特性を含む曲率半径演算特性Rchに基づいて、車両位置Pvhにおける曲率半径Rvhが演算される。即ち、位置と曲率半径との関係で定義される曲率半径演算特性Rchに車両位置Pvhを入力することで、車両位置Pvhにおける曲率半径Rvhが演算される。
サポート設定値演算ブロックB2では、最小曲率半径Rmに基づいて、サポート設定値Sp1(サイドサポート制御におけるサポート量の最大値、最終目標値)が演算される。具体的には、最小曲率半径Rmが所定値Rm1以下では、サポート設定値Sp1が所定値Spm(サポート設定値の最大値)に演算され、RmのRm1からの増加に従ってSp1がSpmから減少するように演算され、Rmが所定値Rm2以上ではSp1は「0(非制御)」に演算される。これは、カーブの最小曲率半径Rmが小さいほど、乗員に作用する遠心力がより大きくなって乗員の側部をより確実に支える必要があるためである。ここで、サポート設定値Sp1は予め設定された所定値で一定とされ得る。
横加速度演算ブロックB3では、車両位置曲率半径Rvhと現在の車速Vxとに基づいて、車両位置Pvhにおける横加速度Gyc(=Vx2/Rvh)が演算される。この横加速度Gycが前記「第1横加速度」に対応する。
サイドサポート制御演算ブロックB4では、サポート設定値Sp1と横加速度Gycとに基づいて、目標サポート量Sptが演算される。これにより、サポート設定値Sp1に基づいてサポート量の大きさ(最終目標値)が決定され、横加速度Gycに基づいてサイドサポート制御の開始・終了タイミングが決定される。
具体的には、目標サポート量Sptが現在「0」(サイドサポート制御が非実行であるときのサポート量の基準状態)である場合において、Gycが所定値Gy1以下ではSptが「0(非制御)」に維持される。Gycが増加しながら所定値Gy1に達すると、以降、GycのGy1からの増加に従ってSptが「0」からサポート設定値Sp1まで増大するように演算される。SptがSp1に一旦演算されると、以降、Gycが所定値Gy0(<Gy1)以上ではSptがSp1に維持される。Gycが減少しながら所定値Gy0に達すると、以降、GycのGy0からの減少に従ってSptがSp1から「0」まで減少するように演算される。この所定値Gy1,Gy0がそれぞれ、前記「第1所定値」、「第2所定値」に対応する。
サイドサポート制御手段A4では、目標サポート量Sptに基づいてサイドサポート手段(サポート部材BZ)A5の位置が(手動スイッチMSWの操作なしで)調整される。具体的には、サポート部材BZの位置を検出するセンサSPにより、サポート部材BZの実際のサポート量Spaが検出され、目標サポート量Spt及び実サポート量Spaに基づいて(例えば、SpaがSptに一致するように)サポート部材BZの位置がフィードバック制御される。
これにより、サイドサポート制御が達成される。即ち、横加速度Gycが増加しながらGy1に達する時点又は地点にて、サポート部材BZのサポート量の増加が開始され(即ち、その時点又は地点がサイドサポート制御の開始タイミングとなり)、サポート量がサポート設定値Sp1まで増大され得る。その後、横加速度Gycが減少しながらGy0(<Gy1)に達する時点又は地点にて、サポート部材BZのサポート量の減少が開始される(即ち、その時点又は地点がサイドサポート制御の終了タイミングとなる)。
以上、本発明の第1実施形態に係る車両のシート制御装置によれば、カーブ情報Pc,Rcと車両位置Pvhとから得られる「車両位置におけるカーブ曲率半径Rvh」と、車速Vxとに基づいて車両の第1横加速度Gycが演算され、Gycが増加しながら第1所定値Gy1に達する時点又は地点に基づいてサイドサポート制御の開始タイミングが決定される。サイドサポート制御が開始された後、第1横加速度Gycが減少しながら第2所定値Gy0に達する時点又は地点に基づいてサイドサポート制御の終了タイミングが決定される。
この第1実施形態によれば、カーブの緩和曲線区間内において連続的に変化し得るカーブ曲率半径Rcに基づいて決定される第1横加速度Gycが連続した情報としてサイドサポート制御に精度良く反映されて、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが決定される。従って、緩和曲線区間Zci,Zcdを有するカーブを車両が走行する場合において、緩和曲線区間Zci,Zcdの長短に係らず、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが適切に設定され得、この結果、運転者への違和感の少ないサイドサポート制御が達成され得る。
また、サイドサポート制御の開始・終了タイミングがステアリングホイールの操作角度や横加速度センサの出力信号に基づいて決定される場合と異なり、カーブ内において車両が車幅方向にふらつくような場合(例えば、所謂アウト・イン・アウト走行がなされる場合)であってもサイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得る。
本発明は上記第1実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第1実施形態では、図5のブロックB2にて、最小曲率半径Rmにのみ基づいてサポート設定値Sp1が演算されているが、図6に示すブロックB5にて、最小曲率半径Rmに加えて車速Vxが考慮されてサポート設定値Sp1が演算されてもよい。
この場合、最小曲率半径Rm、及び車速Vxに基づいてカーブ内を走行したときに発生すると予測される最大横加速度Gymが演算され、この最大横加速度Gymに基づいてサポート設定値Sp1が演算される。具体的には、Gym≦Gm1(所定値)では、サポート設定値Sp1が「0(非制御)」に演算され、Gm1(所定値)<Gym<Gm2(所定値)では、GymのGm1からの増加に従ってSp1が「0」から増加するように演算され、Gym≧Gm2(所定値)では、Sp1が所定値Spm(サポート設定値の最大値)に演算される。このように、カーブ内で作用する最大の遠心力に対応する最大横加速度Gymに基づいてサイドサポート制御のサポート設定値Sp1が演算され得る。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るシート制御装置について説明する。第2実施形態は、目標サポート量Sptの演算において上記第1実施形態と異なる。以下、係る相違点について図7を参照しながら説明する。
図7に示すように、第2実施形態では、制御開始・終了位置演算ブロックB6にて、カーブ情報Rc,Pc(より具体的には、「カーブ位置に対するカーブ曲率半径の特性Rch」、図5に示したカーブ情報取得手段A1から得られる)、及び、車速Vx(図5に示した車速取得手段A3から得られる)に基づいて、カーブ位置に対する車両の横加速度(第2横加速度)Gyeの特性Gch(連続的な変化特性)が演算される。
このカーブ位置に対する第2横加速度の特性Gchから得られる第2横加速度Gyeが増加しながら制御開始しきい値Gye1に達する制御地点Pc1と、Gyeが減少しながら制御終了しきい値Gye0に達する制御地点Pc0とが演算される。このGye1,Gye0がそれぞれ、前記「第3所定値」、「第4所定値」に対応し、Pc1,Pc0がそれぞれ、前記「第1制御地点」、「第2制御地点」に対応する。
サイドサポート制御演算ブロックB7では、車両位置Pvh(図5に示した車両位置取得手段A2から得られる)と、サポート設定値Sp1(図5に示したブロックB2、又は図6に示したブロックB5から得られる)とに基づいて、目標サポート量Sptが演算される。これにより、サポート設定値Sp1に基づいてサポート量の大きさ(最終目標値)が決定され、車両位置Pvhに基づいてサイドサポート制御の開始・終了タイミングが決定される。
具体的には、目標サポート量Sptが現在「0」(サイドサポート制御が非実行であるときのサポート量の基準状態)である場合において、車両(車両位置Pvh)が制御地点Pc1を通過するまでは、Sptが「0」に維持される。車両(車両位置Pvh)が制御地点Pc1を通過すると、以降、車両位置Pvhの進行に従ってSptが「0」からサポート設定値Sp1まで増大するように演算され、その後、SptはSp1に維持される。車両(車両位置)がPc0を通過すると、以降、車両位置Pvhの進行に従ってSptがSp1から「0」まで減少するように演算される。
このように演算される目標サポート量Sptは、図5に示したサイドサポート制御手段A4にて使用される。これにより、サイドサポート制御が達成される。即ち、車両(車両位置Pvh)が制御地点Pc1を通過する地点にて、サポート部材BZのサポート量の増加が開始され(即ち、その地点がサイドサポート制御の開始タイミングとなり)、サポート量がサポート設定値Sp1まで増大され得る。その後、車両(車両位置Pvh)が制御地点Pc0を通過する地点にて、サポート部材BZのサポート量の減少が開始される(即ち、その地点がサイドサポート制御の終了タイミングとなる)。
以上、本発明の第2実施形態に係る車両のシート制御装置によれば、「カーブ位置に対するカーブ曲率半径の特性Rch」と車速Vxとから「カーブ位置に対する第2横加速度の特性Gch」が得られ、この特性Gchから得られる第2横加速度Gyeが増加しながら制御開始しきい値Gye1(第3所定値)に達する制御地点Pc1(第1制御地点)と、Gyeが減少しながら制御終了しきい値Gye0(第4所定値)に達する制御地点Pc0(第2制御地点)とが演算される。車両(車両位置Pvh)が制御地点Pc1を通過する時点に基づいてサイドサポート制御の開始タイミングが決定される。サイドサポート制御が開始された後、車両(車両位置Pvh)が制御地点Pc0を通過する時点に基づいてサイドサポート制御の終了タイミングが決定される。
上記第2実施形態によれば、カーブ位置Pcに対する第2横加速度Gyeの特性Gchが連続した情報としてサイドサポート制御に精度良く反映され得る。従って、第2実施形態によっても、上記第1実施形態と同様、緩和曲線区間Zci,Zcdの長短に係らず、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが適切に設定され得る。また、上記第1実施形態と同様、上記第2実施形態によっても、車両が車幅方向にふらつくような場合であってもサイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得る。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るシート制御装置(サイドサポート制御とカーブ車速制御とを協調して行う装置)について説明する。第3実施形態は、上記第1実施形態に対して、カーブ車速制御の実行に係わる構成が追加された点、並びに、横加速度Gycの演算(従って、サイドサポート制御の実行)において実際の車速Vxに代えてカーブ車速制御に使用される目標車速Vxが使用される点においてのみ異なる。以下、係る相違点について図8、図9を参照しながら説明する。なお、カーブ車速制御とは、車両がカーブを安定して通過できるように、カーブ内で車両を減速する制御である。
図8に示すように、適正車速演算ブロックB8では、車両がカーブ(特に、一定曲率半径区間Zit)を適正に通過するための車速である適正車速Vqoが演算される。カーブ情報Rc,Pcに基づいて、カーブ内の曲率半径が一定となる区間(一定曲率半径区間Zit)の曲率半径Rm1を決定する。曲率半径Rm1に基づいて適正車速Vqoが演算される。適正車速Vqoは、カーブ内の最小曲率半径Rm(図5のブロックB1から得られる)に基づいて演算することもできる。
これらの曲率半径が大きいほど、適正車速Vqoはより大きい値に演算される。曲率半径に応じて概ね同一の横加速度をもって車両がカーブを通過できるように適正車速Vqoが決定される。
更に、適正車速Vqoは、登降坂勾配Kud、道幅(幅員)Wrd、前方の見通しMsk、及び、車速Vxのうちの少なくとも1つ以上に基づいて調整することができる。登降坂勾配Kudが降り坂の場合、平坦路の場合に比して適正車速Vqoがより小さい値に調整され、登り坂の場合、平坦路の場合に比して適正車速Vqoがより大きい値に調整される。道幅Wrdが狭い場合、道幅Wrdが広い場合に比して適正車速Vqoがより小さい値に調整され、道幅Wrdが広い場合、道幅Wrdが狭い場合に比して適正車速Vqoがより大きい値に調整される。前方の見通しMskが悪い場合、見通しMskが良い場合に比して適正車速Vqoがより小さい値に調整され、前方の見通しMskが良い場合、見通しMskが悪い場合に比して適正車速Vqoがより大きい値に調整される。車速Vxが高い場合、車速Vxが低い場合に比して適正車速Vqoがより小さい値に調整され、車速Vxが低い場合、車速Vxが高い場合に比して適正車速Vqoがより大きい値に調整される。
路面摩擦係数μmaxに基づいて、適正車速Vqoを調整することもできる。路面摩擦係数μmaxが大きい場合、適正車速Vqoがより大きい値に調整され、路面摩擦係数μmaxが小さい場合、適正車速Vqoがより小さい値に調整される。路面摩擦係数μmaxの演算は、車輪のセルフアライニングトルクに基づいて行われ得る。車輪の横力が増大していく過程において、セルフアライニングトルクも増大していく。この過程において、横力が飽和する状態(即ち、旋回限界状態)に達する前にセルフアライニングトルクが最大値となる。このため、車両の旋回が限界に達する前に路面摩擦係数μmaxを推定することができる。セルフアライニングトルクの検出については、例えば、特開2008−24073号公報、特開2007−245901号公報、特開2004−233331号公報等に記載された公知の手法の1つを用いることができる。また、セルフアライニングトルクに基づく路面摩擦係数μmaxの演算についても、例えば、特開2007−245901号公報等に記載された公知の手法の1つを利用することができる。
基準地点決定演算ブロックB9では、カーブ車速制御を行うための基準地点Pc#が決定される。ここで、添字「#」は各基準地点を意味し、「r」は減速制御の基準となる減速基準地点、「a」は車速維持制御の基準となる維持基準地点、「s」は加速抑制制御の基準となる加速基準地点を表す。以下、図9を参照しながら、図8に示した基準地点決定演算ブロックB9により実行される、基準地点Pc#の設定について詳細に説明する。
<減速基準地点Pcrの設定>
減速基準地点Pcrは、カーブ内の曲率半径が一定となる入口地点Cs(一定曲率半径区間において車両に最も近い地点)に設定することができる。また、カーブ内の曲率半径が最小となる地点Csを、基準地点Pcrとして設定することができる。地点Csは、カーブ形状Rc、及び、カーブ位置Pcに基づいて決定される。
地点Pcrは、一定曲率半径区間の入口地点Cs、或いは、曲率半径最小地点よりも距離Lprだけ車両に近い地点(車両に近い側のカーブへの進入部に当たる緩和曲線の終了部付近)に設定することができる。距離Lprは一定値とすることができる。
また、ブロックB11にて、距離Lprは適正車速Vqoに応じて演算することができる。具体的には、適正車速Vqoが所定値Vq1以下では距離Lprが「0」とされ(即ち、地点PcrがCsと一致し)、Vqo>Vq1(所定値)では、適正車速VqoのVq1からの増加に従って距離Lprが「0」から増大するように距離Lprが決定され得る。
この場合、ブロックB12にて、地点Pcrは、地点Csから距離Lprだけカーブ開始地点Ciに近いカーブ上の地点に設定される。即ち、地点Pcrは、距離Lpr、カーブ形状Rc、及び、地点Cs(カーブ位置Pc)に基づいて設定される。
地点Pcrは車速を適正車速Vqoまで減速するための目標とする地点である。ここで、地図情報等には誤差が含まれる場合がある。上記のように地点Pcrを地点Csよりもカーブ入口Ciに距離Lprだけ近い地点に設定することで、その誤差が吸収され得る。即ち、カーブ内にて車速制御が早めに開始されて、地点Pcrよりカーブ入口Ciに近い側のカーブ上の地点にて車速を適正車速Vqoまで確実に減速させることができる。
<維持基準地点Pcaの設定>
車速維持基準地点Pcaは、カーブ内の曲率半径が一定となる出口地点Ce(一定曲率半径区間で、車両に最も遠い地点)に設定することができる。地点Ceは、カーブ形状Rc、及び、カーブ位置Pcに基づいて決定される。
地点Pcaは、一定曲率半径区間の出口地点Ceに基づいて、地点Ceよりも距離Lpaだけ車両に近い地点(一定曲率半径区間の終了部付近)に設定することができる。距離Lpaは一定値とすることができる。
また、ブロックB13にて、距離Lpaは、一定曲率半径区間の距離Lit及び適正車速Vqoのうちの少なくとも何れか一方に応じて演算することができる。具体的には、距離Litが所定値Li1以下では距離Lpaが「0」とされ(即ち、地点Pcaが地点Ceと一致し)、Lit>Li1(所定値)では、距離LitのLi1からの増加に従って距離Lpaが「0」から増大するように距離Lpaが決定される。また、適正車速Vqoが大きくなるほど距離Lpaがより小さい値に演算され得る。
この場合、ブロックB14にて、地点Pcaは、地点Ceよりも距離Lpaだけカーブ入口Ciに近い側のカーブ上の地点に設定される。即ち、地点Pcaは、距離Lpa、カーブ形状Rc、及び、地点Ce(カーブ位置Pc)に基づいて設定される。
カーブ車速制御では、地点Pcrと地点Pcaとの間で車速Vxが適正車速Vqo以下で推移するように車速Vxが制御(制限)される。上記のように、地点Pcaが点Ceよりも距離Lpaだけカーブ入口Ciに近い側のカーブ上の地点に設定されるのは、車速Vxが適正車速Vqo以下に制御されている状態において運転者のカーブ出口に向けて早目に加速したいという意志を反映するためである。また、車両の安定した走行を確保するため、車速が大きいほど距離Lpaをより小さい値に演算することができる。これにより、車速維持が早めに解除(加速が許可)されることを防止できる。
<加速基準地点Pcsの設定>
加速基準地点Pcsは、一定曲率半径区間の出口地点Ceに基づいて、地点Ceよりも距離Lpsだけ車両に遠い地点に設定することができる。距離Lpsは一定値とすることができる。
また、ブロックB15にて、距離Lpsは、適正車速Vqo及び退出緩和曲線区間の距離Ledのうちの少なくとも何れか一方に応じて演算することができる。具体的には、適正車速Vqoが大きいほど距離Lpsがより大きい値に演算され得る。また、距離Ledが大きいほど距離Lpsがより大きい値に演算され得る。
この場合、ブロックB16にて、地点Pcsは、地点Ceよりも距離Lpaだけカーブ出口Cdに近い側のカーブ上の地点に設定される。即ち、地点Pcsは、距離Lps、カーブ形状Rc、及び、地点Ce(カーブ位置Pc)に基づいて設定される。
カーブ車速制御では、地点Pcaと地点Pcsとの間で車両の加速が制限される。即ち、運転者の加速操作に対する車両の加速度が、カーブ車速制御が実行されていない通常の場合に比して、より低い値に制限される。上記のように、適正車速Vqoが大きいほど距離Lpsをより大きい値に演算するのは、車速が大きい場合において加速が制限される距離を長くして安定した走行を確保するためである。また、距離Ledが大きいほど距離Lpsをより大きい値に演算するのは、退出緩和曲線区間の長さにかかわらず退出緩和曲線区間における入口側の一定割合の区間にて加速制限を実行して安定した走行を確保するためである。
再び、図8を参照すると、目標車速演算ブロックB10では、目標車速Vtが演算される。基準地点Pc#、及び、適正車速Vqoに基づいて、車両位置Pvhにおける目標車速Vtを演算するための目標車速演算特性Vtchが決定される。具体的には、カーブ入口側から基準地点Pcr(点A)まで車速が減速度Gi(例えば、予め設定された定数)をもって減少していき、基準地点Pcr(点A)で車速が適正車速Vqoとなる特性、基準地点Pcr(点A)から基準地点Pca(点B)まで車速が適正車速Vqoに維持される特性、及び、基準地点Pca(点B)で車速が適正車速Vqoとなり、基準地点Pca(点B)からカーブ出口に向けて基準地点Pcs(点C)まで車速が加速度Go(例えば、予め設定された定数)をもって増大していく特性、を組み合わせて、目標車速演算特性Vtchが決定される。
減速度Gi、及び、加速度Goのうちの少なくとも一方は、路面摩擦係数μmaxに基づいて調整することができる。路面摩擦係数μmaxが大きい場合、減速度Gi、或いは、加速度Goをより大きい値に調整し、路面摩擦係数μmaxが小さい場合、減速度Gi、或いは、加速度Goをより小さい値に調整することができる。
このように基準地点Pc#、及び、適正車速Vqoに基づいて決定された目標車速演算特性Vtchに、車両位置Pvhを入力することで、車両位置Pvhにおける目標車速Vtが演算される。
車速制御手段A6では、上述のようにブロックB10にて演算される「車両位置Pvhにおける目標車速Vt」と、車速取得手段A3にて取得される現在の車速Vxとに基づいてカーブ車速制御が達成される。
具体的に述べると、先ず、比較手段A61では、現在の実際の車速Vxと、ブロックB10にて得られる「車両位置Pvhにおける目標車速Vt」との偏差ΔVx(=Vx−Vt)が演算される。
車速制御量演算ブロックA62では、車速偏差ΔVxに基づいて車速制御量Gstが演算される。車速制御量Gstは、偏差ΔVxが負のときは「0」に、偏差ΔVxが正のときは偏差ΔVxが大きいほどより大きい値に演算される。車速制御量Gstは、路面摩擦係数μmaxに基づいて調整することができる。この場合、路面摩擦係数μmaxが大きいほど車速制御量Gstがより大きい値に調整され得る。
この車速制御量Gstに基づいて、実際の車速Vxが目標車速Vtを超えないように、エンジン出力低減手段A63によるエンジン出力の低減(スロットル開度の低減、点火時期の遅角、及び燃料噴射量の低減のうちで少なくとも1つが実行される)、変速機制御手段A64による変速機制御(シフトダウンによって減速比が増大される)によるエンジンブレーキの増大、及び車輪ブレーキ制御手段A65による制動トルク(制動圧力)の付与のうちの少なくとも1つが実行される。これにより、カーブ車速制御が実行されて、車速制御量Gstに応じて車両が減速される。
運転者によって制動操作部材(ブレーキペダルBP)が操作される場合、車輪ブレーキ制御手段A65による制動トルク(制動圧力)と、ブレーキ入力手段A66により得られる制動操作部材の操作量に対応する制動トルク(制動圧力)とのうちで大きい方の制動トルク(制動圧力)が、最大値選択手段A67により選択される。この選択された制動トルク(制動圧力)が車輪ブレーキ手段A68(例えば、ブレーキディスク及びキャリパ)を用いて所定の車輪に与えられる。これにより、カーブ車速制御中において、運転者の制動操作に基づく制動トルクのオーバライドが可能となる。
車輪ブレーキ制御手段A65では、制動トルクの時間に対する増加勾配を所定値に制限する制限手段が備えられる。これは、何らかの原因で車速制御量Gstが急増して車両が急減速することを抑制するためである。或いは、何らかの原因で車速制御量Gstが急減して車両の減速度が急に減少することを抑制するためである。
以上のように、第3実施形態では、車両がカーブに差し掛かり、車速Vxが「車両位置Pvhにおける目標車速Vt」を超えると、カーブ車速制御が開始される。カーブ車速制御では、現在の車速VxがブロックB10にて演算される目標車速演算特性Vtchから得られる「車両位置Pvhにおける目標車速Vt」を超えないように車速制御量Gstに応じて車両が減速される。
加えて、この第3実施形態では、上記第1実施形態について図5を参照しながら説明したサイドサポート制御が実行される。ただし、横加速度演算ブロックB3における横加速度Gycの演算において、図5に示したブロックB3に代えて図8に示したブロックB3が使用される。即ち、車両位置曲率半径Rvhと現在の車速Vxとではなく、車両位置曲率半径Rvhと「車両位置Pvhにおける目標車速Vt」とに基づいて、車両位置Pvhにおける横加速度Gyc(=Vx2/Rvh)が演算される。Rvhは、図5のブロックB1から得られる。Vtは、図8のブロックB10から得られる。
このように、第3実施形態では、車両の実際の車速Vxに代えて、カーブ車速制御に使用される目標車速Vtに基づいて横加速度Gycが演算され、このGycとGy1,Gy0との比較結果に基づいてサイドサポート制御が行われる(図5のブロックB4等を参照)。これは以下の理由に基づく。
即ち、カーブ車速制御中では、実際の車速Vxは目標車速Vtに追従させられる制御対象となる。これに起因して、カーブ車速制御中では、実際の車速Vxが目標車速Vtの近傍にて微小変動しながら(揺らぎながら)推移する場合がある。この場合、実際の車速Vxに基づいてサイドサポート制御が行われると、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得ない。これに対し、第3実施形態では、値が安定した(揺らがない)カーブ車速制御の目標車速Vtに基づいてサイドサポート制御が行われる。この結果、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得る。
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第3実施形態では、車両の実際の車速Vxに代えてカーブ車速制御に使用される目標車速Vtに基づいて、上記第1実施形態にて説明したサイドサポート制御が行われているが、車両の実際の車速Vxに代えてカーブ車速制御に使用される目標車速Vtに基づいて、上記第2実施形態にて説明したサイドサポート制御が行われてもよい。
具体的には、この場合、制御開始・終了位置演算ブロックB6における「カーブ位置に対する第2横加速度Gyeの特性Gch」の演算において、図7に示したブロックB6に代えて図10に示したブロックB6が使用される。即ち、カーブ情報Rc,Pcと現在の車速Vxとではなく、カーブ情報Rc,Pcと「車両位置Pvhにおける目標車速Vt」とに基づいて、「カーブ位置に対する第2横加速度Gyeの特性Gch」が演算される。そして、この特性Gchに基づいて制御地点Pc1,Pc0が演算され、車両位置Pchが制御地点Pc1,Pc0を通過したか否かに基づいてサイドサポート制御が行われる。
これによっても、上記第3実施形態と同様、値が安定した(揺らがない)カーブ車速制御の目標車速Vtに基づいてサイドサポート制御が行われる。この結果、サイドサポート制御の開始・終了タイミングが安定し得る。
また、上記第1実施形態では、現在の車速Vxから得られる第1横加速度Gycが増加しながら第1所定値Gy1に達する時点又は地点がサイドサポート制御の開始タイミングとされ、現在の車速Vxから得られる第1横加速度Gycが減少しながら第2所定値Gy0に達する時点又は地点がサイドサポート制御の終了タイミングとされている。これに対し、サイドサポート制御手段SB1の応答性(サポート部材BZを駆動する駆動手段MTの応答性、応答遅れ)に基づいてサイドサポート制御の開始・終了タイミングが調整され得る。
シートのサポート部材BZは、シートに着座している乗員に直接的に触れ得る部分であるため、サポート部材BZを急速に動かすことは乗員への違和感となる。ここで、将来の車速から将来のGycを予測することで、将来のGycが値Gy1,Gy0に達する時点又は地点が、カーブ情報Rc,Pcに基づいて予測され得る。このようにして、将来のGycが値Gy1,Gy0に達する時点又は地点を予測し、予測した時点又は地点に基づいて、その時点又は地点よりも所定時間又は所定距離だけ前の時点又は地点をサイドサポート制御の開始・終了タイミングとすることができる。
なお、将来のGycを予測するためには、将来の車速を予測する必要がある。カーブ内における将来の車速は、例えば、現在の車速から所定の勾配をもって減少する特性を利用して予測され得る。また、現在の車速に基づいて、制動操作量センサBSからの信号Bs(制動操作量)、及び、加速操作量センサASからの信号As(加速操作量)のうちの少なくとも一方を考慮して将来の車速が予測され得る。或いは、上述したカーブ車速制御(即ち、協調制御)が実行される場合、カーブ情報Pc,Rcから予め設定される目標車速演算特性Vtch(図8のブロックB10を参照)を利用して将来の車速が予測され得る。
同様に、上記第2実施形態では、車両の現在位置Pvhが現在の車速Vxに基づく第2横加速度の特性Gchから得られる制御地点Pc1を通過した時点又は地点がサイドサポート制御の開始タイミングとされ、車両の現在位置Pvhが現在の車速Vxに基づく第2横加速度の特性Gchから得られる制御地点Pc0を通過した時点又は地点がサイドサポート制御の終了タイミングとされている。これに対し、サイドサポート制御手段SB1の応答性(サポート部材BZを駆動する駆動手段MTの応答性、応答遅れ)に基づいてサイドサポート制御の開始・終了タイミングが調整され得る。
具体的には、将来の車速から第2横加速度の将来の特性Gchを予測することで、将来の特性Gchに基づいて将来の制御地点Pc1x,Pc0xが予測され得る。このようにして、将来の制御地点Pc1x,Pc0xを予測し、図11に示すように、予測した将来の制御地点Pc1x,Pc0xに基づいて、その地点Pc1x,Pc0xよりも所定距離だけ前の地点が制御地点Pc1,Pc0として使用され得る。そして、車両の現在位置Pvhがこの制御地点Pc1,Pc0を通過した時点がサイドサポート制御の開始・終了タイミングとされ得る。なお、将来の第2横加速度の将来の特性Gchを予測するためには、上述と同様、将来の車速が予測され得る。