JP5541783B2 - 水溶性フェノール樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

水溶性フェノール樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋳型を製造する際に、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子、及びエステル化合物系硬化剤と共に用いられる水溶性フェノール樹脂組成物、その製造方法、鋳型用組成物、並びに鋳型の製造方法に関する。
粘結剤を用いて主型や中子のような鋳型を製造する造型法として、自硬性鋳型造型法が知られている。上記自硬性鋳型造型法としては、粘結剤である水溶性フェノール樹脂をエステル化合物系硬化剤で硬化せしめる鋳型造型法が知られている。
鋳型の造型に用いられる耐火性粒子としては、珪砂、ジルコン砂、クロマイト砂、オリビン砂等が従来から広く用いられてきたが、近年は、下記特許文献1に示すように、アルミナケイ酸塩を主体とする焼結法による人工合成ムライト砂が、耐火度、熱膨張性、耐摩耗性、耐破砕性に優れることから、徐々に使用されつつある。更に最近では、高強度かつ表面が平滑な鋳型を製造するために、溶融法により製造された人工砂が使用されつつある(下記特許文献2等)。
他方、下記特許文献3には、水溶性フェノール樹脂用硬化剤の引火点を高めることを目的として、エステル類と、アルコール類および水のいずれか一方または両方とを含有してなる水溶性フェノール樹脂用硬化剤が開示されている。しかし、特許文献3には、水溶性フェノール樹脂溶液を調製する際に、アルコール類を共存させる記載はない。
特開2000−153337号公報 特開2004−202577号公報 特開2002−3697号公報
溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を耐火性粒子として用い、水溶性フェノール樹脂をエステル化合物系硬化剤で硬化せしめて鋳型を造型する場合は、新砂を用いた場合と比較して混練砂の流動性が著しく低下するため、作業性が悪化していた。また、混練砂の流動性が低下することにより、混練砂の原型への充填性が低下し、鋳型強度が低下していた。
本発明は、混練砂の流動性低下を防止できる水溶性フェノール樹脂組成物及びその製造方法と、鋳型用組成物と、鋳型の製造方法を提供する。
本発明の水溶性フェノール樹脂組成物の製造方法は、鋳型を製造する際に、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子及びエステル化合物系硬化剤と共に用いられる水溶性フェノール樹脂組成物の製造方法であって、アルコール類及びアルカリ性触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類を重縮合反応させる工程を有する、水溶性フェノール樹脂組成物の製造方法である。
本発明の水溶性フェノール樹脂組成物は、鋳型を製造する際に、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子及びエステル化合物系硬化剤と共に用いられる水溶性フェノール樹脂組成物であって、上記本発明の製造方法で得られる、水溶性フェノール樹脂組成物である。
本発明の鋳型用組成物は、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子と、上記本発明の水溶性フェノール樹脂組成物と、エステル化合物系硬化剤とを含有する鋳型用組成物である。
本発明の鋳型の製造方法は、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子、上記本発明の水溶性フェノール樹脂組成物、及びエステル化合物系硬化剤を混練して、混練砂を得る工程と、前記混練砂を型込めして造型する工程とを有する鋳型の製造方法である。
本発明の水溶性フェノール樹脂組成物及びその製造方法によれば、混練砂の流動性低下を防止できる水溶性フェノール樹脂組成物を提供できる。また、本発明の鋳型用組成物及び鋳型の製造方法によれば、前記本発明の水溶性フェノール樹脂組成物を用いるため、造型作業性が良好となる上、鋳型強度の低下を防止できる。
本発明の水溶性フェノール樹脂組成物は、鋳型を製造する際に、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子、及びエステル化合物系硬化剤と共に用いられる水溶性フェノール樹脂組成物を対象とする。
本発明の水溶性フェノール樹脂組成物は、アルコール類及びアルカリ性触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類を重縮合反応させて得られる。アルコール類の存在下で重縮合させることにより、水溶性フェノール樹脂組成物の粘度が低下するため、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子を含む混練砂を調製した際に、浸透促進により、前記再生砂に残存した残存硬化樹脂や硬化剤分解物等のLOI成分(強熱減量成分)の付着が原因と考えられる混練砂の流動性低下を防止できると推測される。これにより、混練砂の原型への充填性が良好となり、鋳型強度を向上させることができる。
アルコール類としては、特に限定されないが、水溶性フェノール樹脂組成物の粘度低減の観点から、炭素数2〜20のアルコール類が好ましく、炭素数2〜14のアルコール類がより好ましく、炭素数3〜10のアルコール類が更に好ましい。
なかでも水溶性フェノール樹脂組成物の粘度低減の観点から、アルコール類として、下記式1により表される炭素数7〜20の芳香族アルコール(以下、単に式1の芳香族アルコールという)、下記式2により表される炭素数3〜20の脂環式アルコール(以下、単に式2の脂環式アルコールという)、下記式3により表されるグリコール(以下、単に式3のグリコールという)、及び炭素数3〜10の鎖状アルコール(以下、単に本発明の鎖状アルコールという)から選ばれる1種以上を使用することが好ましい。同様の観点から、アルコール類として、式1の芳香族アルコール及び/又は式3のグリコールを使用することがより好ましく、式3のグリコールを使用することが更に好ましい。
Figure 0005541783
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式1において、Rはアルキレン基又はアルケニレン基を示し、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよい。Rの例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、プロペニレン基等が挙げられ、鋳型強度向上の観点から、メチレン基、エチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。また、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基又は水酸基を示し、アルキル基又はアルケニル基の場合は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよい。Rの例としては、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、1−プロペニル基等が挙げられ、鋳型強度向上の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基が好ましく、水素原子、tert−ブチル基がより好ましい。式1の芳香族アルコールの炭素数は7〜20であるが、水溶性フェノール樹脂組成物の粘度低減の観点から、炭素数は7〜14が好ましく、7〜10がより好ましい。
式2において、Rはアルキレン基又はアルケニレン基を示し、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよい。Rの例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、2,2−ジメチルエチレン基、トリメチレン基、プロペニレン基等が挙げられ、鋳型強度向上の観点から、メチレン基が好ましい。また、nは0又は1を示し、鋳型強度向上の観点から、0が好ましい。また、Xは脂環式炭化水素基を示し、鋳型強度向上の観点から、シクロヘプチル基、シクロヘキシル基が好ましく、シクロヘプチル基がより好ましい。式2の脂環式アルコールの炭素数は3〜20であるが、水溶性フェノール樹脂組成物の粘度低減の観点から、炭素数は5〜12が好ましく、6〜7がより好ましい。
式3において、mは1〜7の整数を示し、鋳型強度向上の観点から、1〜5が好ましく、2〜4がより好ましい。式3のグリコールの炭素数は2〜14であるが、水溶性フェノール樹脂組成物の粘度低減の観点から、炭素数は2〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
本発明の鎖状アルコールとしては、直鎖状のアルコールであっても、分岐鎖状のアルコールであってもよい。鋳型強度向上の観点から、本発明の鎖状アルコールは、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールが好ましく、n−ブチルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールがより好ましい。本発明の鎖状アルコールの炭素数は3〜10であるが、水溶性フェノール樹脂組成物の粘度低減の観点から、炭素数は3〜8が好ましく、4〜8がより好ましい。
本発明で用いられるアルコール類の具体例としては、ベンジルアルコール、3−フェニル−プロパン−1−オール、1,1−ジメチル−2−フェニルエタノール、シクロヘプタノール、n−ブチルアルコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ネオペンチルアルコール、シクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール等が挙げられ、好ましくはベンジルアルコール、3−フェニル−プロパン−1−オール、1,1−ジメチル−2−フェニルエタノール、トリエチレングリコール、シクロヘプタノール、シクロヘキシルメタノール等、より好ましくはトリエチレングリコール及びベンジルアルコールである。
水溶性フェノール樹脂組成物を調製する際に使用するフェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、イソプロペニルフェノール等のアルキルフェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン等の多価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類等が挙げられる。これらフェノール類は、単独又は2種以上混合してアルデヒド類と反応させても良い。
水溶性フェノール樹脂組成物を調製する際に使用するアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、グリオキザール等が挙げられる。これらアルデヒド類は、単独又は2種以上混合してフェノール類と反応させても良い。
水溶性フェノール樹脂組成物を調製する際に使用するアルカリ性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。これらアルカリ性触媒は、単独又は2種以上混合して使用しても良い。
水溶性フェノール樹脂組成物を調製する際のアルコール類の存在量は、水溶性フェノール樹脂組成物の粘度低減の観点から、フェノール類に対して0.01倍モル以上であることが好ましく、0.03倍モル以上であることがより好ましく、0.04倍モル以上であることが更に好ましい。また、鋳型強度が低下するのを防止する観点から、アルコール類の存在量は、フェノール類に対して0.10倍モル以下であることが好ましく、0.08倍モル以下であることがより好ましく、0.06倍モル以下であることが更に好ましい。上記観点を総合すると、アルコール類の存在量は、0.01〜0.10倍モルであることが好ましく、0.03〜0.08倍モルであることがより好ましく、0.04〜0.06倍モルであることが更に好ましい。
また、水溶性フェノール樹脂組成物を調製する際のアルコール類の仕込み量は、水溶性フェノール樹脂組成物の粘度低減の観点から、フェノール類に対して0.01倍モル以上であることが好ましく、0.03倍モル以上であることがより好ましく、0.04倍モル以上であることが更に好ましい。また、鋳型強度が低下するのを防止する観点から、アルコール類の仕込み量は、フェノール類に対して0.10倍モル以下であることが好ましく、0.08倍モル以下であることがより好ましく、0.06倍モル以下であることが更に好ましい。上記観点を総合すると、アルコール類の仕込み量は、0.01〜0.10倍モルであることが好ましく、0.03〜0.08倍モルであることがより好ましく、0.04〜0.06倍モルであることが更に好ましい。
水溶性フェノール樹脂組成物を調製する際のアルデヒド類の仕込み量は、相溶性の観点から、フェノール類に対して1.0〜6.0倍モルであることが好ましく、1.2〜5.0倍モルであることがより好ましく、1.5〜4.0倍モルであることが更に好ましい。また、水溶性フェノール樹脂組成物を調製する際のアルカリ性触媒の仕込み量は、相溶性の観点から、フェノール類に対して0.2〜5.0倍モルであることが好ましく、0.3〜4.5倍モルであることがより好ましく、0.5〜4.0倍モルであることが更に好ましい。
本発明において、水溶性フェノール樹脂組成物中の固形分重量(105℃で3時間乾燥後の固形重量)は、鋳型強度の観点から、25〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜85重量%である。また、水溶性フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は、鋳型強度の観点から、500〜8000が好ましく、より好ましくは800〜5000である。なお、上記重量平均分子量(Mw)は、以下の測定方法により測定する。
<水溶性フェノール樹脂の重量平均分子量の測定方法>
(a)サンプル調製:試料に同重量のイオン交換水を加え、0.1重量%のH2SO4を加えて中和し、生成した沈殿を濾過分離し、水洗し、乾燥する。これをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、GPC用のサンプルを調製する。
(b)カラム:ガードカラムTSX(東洋曹達工業社製)HXL(6.5mmφ×4cm)1本と、TSK3000HXL(7.8mmφ×30cm)1本と、TSK2500HXL(7.8mmφ×30cm)1本を使用する。注入口側よりガードカラム−3000HXL−2500HXLの順に接続する。
(c)標準物質:ポリスチレン(東洋曹達工業社製)
(d)溶出液:THF(流速:1cm3/min)
(e)カラム温度:25℃
(f)検出器:紫外分光光度計(フェノールの紫外吸収の最大ピークの波長において定量)
(g)分子量計算の為の分割法:時間分割(2sec)
本発明の水溶性フェノール樹脂組成物は、従来公知の製造条件で製造する際に、アルコール類の存在下で重縮合させることに特徴がある。なお、重縮合反応の際に、尿素、メラミン、シクロヘキサノン等のアルデヒド類と縮合が可能なモノマーや、水溶性高分子のポリアクリル酸塩や、セルロース誘導体高分子、リグニン誘導体などを混合しても差し支えない。
本発明の水溶性フェノール樹脂組成物は、例えば粘度が10〜50mPa・s程度、好ましくは15〜45mPa・s、より好ましくは25〜40mPa・sであり、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子を含む混練砂を調製した際に、混練砂の流動性低下を防止できる。水溶性フェノール樹脂組成物の粘度は、アルコール類の存在量(例えば仕込み量)や、フェノール類とアルデヒド類との重縮合反応条件(反応温度・反応時間)等により制御できる。なお、上記粘度は、実施例に記載の方法で測定する。
本発明の水溶性フェノール樹脂組成物は、鋳型を製造するための鋳型用組成物に好適に使用できる。即ち、本発明の鋳型用組成物は、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子と、上記本発明の水溶性フェノール樹脂組成物と、エステル化合物系硬化剤とを含有する鋳型用組成物である。
次に、本発明の鋳型の製造方法について説明する。本発明の鋳型の製造方法は、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子に、上述した本発明の水溶性フェノール樹脂組成物と、エステル化合物系硬化剤とを添加した鋳型用組成物(混練砂)から鋳型を製造する。即ち、本発明の鋳型の製造方法は、耐火性粒子、本発明の水溶性フェノール樹脂組成物及びエステル化合物系硬化剤を混練して、混練砂を得る工程、及び前記混練砂を型込めして造型する工程を有する鋳型の製造方法であって、前記耐火性粒子が、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有している。以下、本発明の鋳型の製造方法で使用される混練砂の含有成分について説明する。なお、上述した本発明の水溶性フェノール樹脂組成物と重複する説明については省略する。
<エステル化合物系硬化剤>
エステル化合物系硬化剤には、水溶性フェノール樹脂を硬化させる成分として、エステル化合物が含有される。エステル化合物としては、水溶性フェノール樹脂の硬化剤として使用できる従来公知のエステル化合物が使用できるが、水溶性フェノール樹脂の硬化性の観点から、分子内にエステル結合を1〜5個有するエステル化合物が好ましい。例えば、ラクトン類、又は炭素数1〜10の一価若しくは多価アルコールと炭素数1〜10の有機カルボン酸とから導かれる有機エステルや、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の無機エステルが挙げられる。なかでも、鋳型強度の観点から有機エステル及び炭酸プロピレンが好ましい。有機エステルはカルボン酸由来部分が直鎖であっても、分岐であってもよく、分岐はα−位の分岐が好ましい。有機エステルの具体例としては、γ−ブチロラクトン、ギ酸エチル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリアセチン、アセト酢酸エチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、2−エチルコハク酸ジメチル、2−メチルグルタル酸ジメチル、2−メチルアジピン酸ジメチル、2−エチルヘキサン酸メチル、2−エチルヘキサン酸エチル、2−メチルセバシン酸ジメチル、2−エチルアゼライン酸ジメチル、2−エチルグルタル酸ジエチル、2−(n−プロピル)グルタル酸ジメチル、2−(n−ブチル)コハク酸ジエチル、2−(n−ブチル)コハク酸ジメチル、2−メチルピメリン酸ジエチル、2−メチルスベリン酸ジメチル等が挙げられる。鋳型強度の観点から、気温や砂の温度が低い場合あるいは作業時間が短い場合はγ−ブチロラクトン、炭酸プロピレンが好ましく、気温や砂の温度が高い場合あるいは作業時間が長い場合は、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、トリエチレングリコールジアセテート、2−エチルコハク酸ジメチル、2−メチルグルタル酸ジメチル、2−メチルアジピン酸ジメチルが好ましい。気温や砂温度が高くも低くもない場合、あるいは作業時間が長くも短くもない場合には、トリアセチン、エチレングリコールジアセテートが好ましい。本発明では、これらのエステル化合物を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
エステル化合物系硬化剤中のエステル化合物の含有量は、鋳型強度の観点から、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることが更に好ましい。なお、エステル化合物系硬化剤としては、エステル化合物単独成分からなるものを使用してもよいし、エステル化合物以外の成分が含まれていてもよい。エステル化合物以外の成分としては、鋳型強度の向上のためのフェノール化合物単量体や、香料、界面活性剤等が例示できる。フェノール化合物単量体としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、クミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、エチルフェノール、オクチルフェノール、アミルフェノール、ナフトール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログリシンや、これらの混合物等が挙げられる。これら添加剤の添加量は、エステル化合物100重量部に対して、0.001〜20重量部が好ましい。
<耐火性粒子>
本発明では、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子を使用する。なお、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂以外の耐火性粒子として、珪砂、ジルコン砂、クロマイト砂、オリビン砂、セメント砂等が含有されてもよい。また、焼結法で製造された人工砂が含有されてもよい。
上述した本発明の効果(混練砂の流動性低下の防止)をより有効に発揮させるには、本発明で使用される耐火性粒子が、前記再生砂を略100重量%の含有率で含有することが好ましい、なお、「前記再生砂を略100重量%の含有率で含有する」とは、前記再生砂以外の耐火性粒子であっても、不可避的に含まれる場合は、その含有率が2重量%以下であれば含有されてもよいことを意味する。
溶融法で製造された人工砂とは、例えばアルミナとシリカを含む出発原料を用い、熱などにより溶融させ、粒化して得られた人工砂をさす。特に、耐火性及び生産性の観点から、アルミナを40重量%以上含有するアルミナ砂が好ましく、アルミナを55〜90重量%含有するアルミナ砂がより好ましく、アルミナを67〜90重量%含有するアルミナ砂が更に好ましい。
出発原料の溶融物を粒化させる方法は、該溶融物を噴霧する方法や、該溶融物にエアーを吹き付ける方法等が挙げられる。つまり、溶融物は空気中で所定の粒度分布の粒子に溶融状態で風砕され、風砕後、溶融粒子自体の表面張力によって、所定の表面積の鋳物砂(耐火性粒子)となる。溶融方法は特に限定されず、アーク炉、るつぼ炉、誘導電気炉(高周波炉、低周波炉等)、抵抗式電気炉、反射炉、回転炉、真空溶解炉、キュポラ炉等により溶融させることができる。あるいは、出発原料を火炎中で溶融して球状化する方法(火炎溶融法)を用いてもよい。
人工砂の出発原料は、例えば、耐火性を有する鉱産原料や合成原料から選ぶことができる。例えば、アルミナ源としては、ボーキサイト、バン土頁岩、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができる。また、シリカ源としては、珪石、珪砂、石英、クリストバライト、非晶質シリカ、長石、パイロフィライト等を挙げることができる。また、アルミナ源かつシリカ源としては、カオリン、バン土頁岩、ボーキサイト、雲母、シリマナイト、アンダルサイト、ムライト、ゼオライト、モンモリロナイト、ハイロサイト等を挙げることができる。これらの出発原料は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明に使用できる再生砂は、水溶性フェノール樹脂を用いて造型した鋳型により鋳物を製造した後にばらした砂を、一般的な再生方法(湿式、乾式、熱式等)により1回以上再生処理した砂であるが、乾式(特に磨耗式)で再生されたものが収率も高く、経済的に優れ好ましい。また、これらの再生方法を組み合わせて再生しても良い。
本発明に使用できる再生砂は、鋳型の強度向上の観点から、その強熱減量(LOI)が0.1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜10重量%、更に好ましくは0.2〜5重量%、より更に好ましくは0.2〜2.0重量%である。なお、上記LOIは、空気中、500℃で2時間加熱したときの重量減少率をさす。
本発明では、従来の自硬性鋳型造型法のプロセスを利用して鋳型を製造することができる。型込めする際の混練砂の温度は、通常−10〜50℃程度であるが、可使時間を確保する観点から、−5〜40℃が好ましく、0〜35℃がより好ましい。
混練砂中の水溶性フェノール樹脂組成物の含有量は、鋳型強度、作業性、臭気、及びコストの観点から、その固形分の含有量として耐火性粒子100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。また、混練砂中のエステル化合物系硬化剤の含有量は、鋳型強度の観点から、耐火性粒子100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。なお、上記混練砂を得る方法としては、バッチミキサーにより各成分を添加して混合する方法や、連続ミキサーに各成分を供給して混合する方法が挙げられる。
また、本発明においては、水溶性フェノール樹脂組成物又は混練砂にシランカップリング剤や尿素などのその他の添加剤が含有されてもよい。シランカップリング剤の例としては、γ−(2−アミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、水溶性フェノール樹脂100重量部(固形分換算)に対して0.001〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜1重量部である。
本発明の鋳型の製造方法は、アルミニウム鋳物のような非鉄合金系鋳物や、鋳鋼系鋳物あるいは鋳鉄系鋳物等を製造するための鋳型の造型に好適であるが、特に鋳造に関する用途を限定されるものではない。
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。なお、混練砂を型込めする際の雰囲気温度、混練砂の流動性評価の際の雰囲気温度、及び圧縮強度評価の際の雰囲気温度は、いずれも25℃(55%RH)とした。
<実施例1,9の水溶性フェノール樹脂組成物の調製方法> フェノール10モルと、50重量%水酸化カリウム水溶液(フェノールに対して0.40倍モル)と、50重量%水酸化ナトリウム水溶液(フェノールに対して0.40倍モル)と、トリエチレングリコール(フェノールに対して0.04倍モル)とを混合した水溶液に、50重量%ホルムアルデヒド水溶液(フェノールに対して2.00倍モル)を加え、80℃で重縮合反応を行い、水溶性フェノール樹脂の重量平均分子量が3000に達するまで反応を継続した。次いで、反応溶液中の樹脂(固形分)の含有量が50重量%になるまで水を添加して調整し、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを反応溶液100重量部に対して0.5重量部添加して、水溶性フェノール樹脂組成物を得た。
<実施例2〜8の水溶性フェノール樹脂組成物の調製方法>
トリエチレングリコールの代わりに、表1に示すアルコール類を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で水溶性フェノール樹脂組成物を得た。
<実施例10〜12の水溶性フェノール樹脂組成物の調製方法>
トリエチレングリコールの仕込み量を表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水溶性フェノール樹脂組成物を得た。
<比較例1,2及び参考例1の水溶性フェノール樹脂組成物の調製方法>
トリエチレングリコールを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で水溶性フェノール樹脂組成物を得た。
<比較例3の水溶性フェノール樹脂組成物の調製方法>
比較例1で得られた樹脂組成物に、該樹脂組成物を製造するにあたって使用したフェノールの0.04倍モル量のトリエチレングリコールを配合し、水溶性フェノール樹脂組成物を得た。
<比較例4の水溶性フェノール樹脂組成物の調製方法>
比較例1で得られた樹脂組成物に、該樹脂組成物を製造するにあたって使用したフェノールの0.15倍モル量のトリエチレングリコールを配合し、水溶性フェノール樹脂組成物を得た。
<水溶性フェノール樹脂組成物の粘度の測定方法>
得られた水溶性フェノール樹脂組成物について、東機産業社製粘度計(RE80R型:1°34′コーン)を用いて、25℃の条件で粘度を測定した。結果を表1に示す。
<人工砂からなる再生砂の調製方法>
溶融法で製造された人工アルミナ砂(エスパール#40L、山川産業社製)の新砂100重量部に対し、水溶性フェノール樹脂(カオーステップ SH−8010、花王クエーカー社製)1.2重量部と、エステル化合物系硬化剤としてトリアセチン0.3重量部とを添加し、これらを混練して得られた混練砂を用いて鋳型を造型した。得られた鋳型を用いて、鋳物材質FC-250(S/M=4、ここでS/Mとは鋳型の重量(S)と鋳造物の重量(M)の比を表す)を鋳造し、回収した砂をクラッシャーにかけ、日本鋳造製M型ロータリーリクレーマーを用いて再生した。以上の再生工程を経て得られた再生砂を上記新砂に替えて同様に造型した後、鋳型から砂を同様に回収、再生し、第2世代の再生砂を得た。同様の工程を繰り返し、得られた第10世代の再生砂(LOI:0.6重量%)を以下に示す評価に用いた。なお、実施例9〜12及び比較例2〜4については、上記再生砂と、エスパール#40Lの新砂とを、再生砂:新砂=80:20の重量比で混合して用いた。また、参考例1については、上記再生砂と、エスパール#40Lの新砂とを、再生砂:新砂=60:40の重量比で混合して用いた。
<混練砂の流動性評価>
表1に示すアルミナ砂100重量部に対し、上記方法にて調製した水溶性フェノール樹脂組成物1.2重量部と、トリアセチン0.3重量部とを添加し、これらを混練して得られた混練砂を、3mm目の篩を通して、50mmφ×300mmの試験筒に上部から筒の上端部まですり切りで充填し、重量を測定した。そして、比較例1の重量を100として各実施例及び各比較例の相対値を求めた。即ち、値が高いほど混練砂の流動性が良好であることを示す。
<24時間後の圧縮強度>
表1に示すアルミナ砂100重量部に対し、上記方法にて調製した水溶性フェノール樹脂組成物1.2重量部と、トリアセチン0.3重量部とを添加し、これらを混練して混練砂を得た。そして、混練直後の混練砂を型込めし、テストピース(50mm×50mmφ)を成型した。次いで、25℃(55%RH)の条件下で成型から24時間経過した後のテストピースについて、JIS Z 2604−1976に記載された方法(圧縮速度5mm/sec)で、圧縮強度(鋳型強度)を測定した。なお、圧縮強度は、負荷した荷重をテストピースの断面積で除した値とした。
Figure 0005541783
表1に示すように、実施例1〜12は、いずれの評価項目も良好な値を示した。一方、比較例1〜4では、少なくとも1つの評価項目について、実施例1〜12に比べて明らかに劣る結果が得られた。また、参考例1については、新砂の比率が実施例1〜12よりも高かったため(再生砂:新砂=60:40)、混練砂の著しい流動性低下はみられなかった。

Claims (4)

  1. 鋳型を製造する際に、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子及びエステル化合物系硬化剤と共に用いられる水溶性フェノール樹脂組成物の製造方法であって、
    アルコール類及びアルカリ性触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類を重縮合反応させる工程を有し、
    前記重縮合反応時のアルコール類の存在量が、フェノール類に対して0.01〜0.10倍モルであり、
    前記アルコール類が、トリエチレングリコール、ベンジルアルコール、及び3−フェニルプロパン−1−オールからなる群より選ばれる1種以上である、水溶性フェノール樹脂組成物の製造方法。
  2. 鋳型を製造する際に、溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子及びエステル化合物系硬化剤と共に用いられる水溶性フェノール樹脂組成物であって、
    請求項1に記載の製造方法で得られる、水溶性フェノール樹脂組成物。
  3. 溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子と、請求項記載の水溶性フェノール樹脂組成物と、エステル化合物系硬化剤とを含有する鋳型用組成物。
  4. 溶融法で製造された人工砂からなる再生砂を70重量%以上の含有率で含有する耐火性粒子、請求項記載の水溶性フェノール樹脂組成物、及びエステル化合物系硬化剤を混練して、混練砂を得る工程と、
    前記混練砂を型込めして造型する工程とを有する鋳型の製造方法。
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