上記した課題を解決するために、本発明者らは芯粒子全体の軟化に依存することなく樹脂微粒子の密着性を向上させようと試みた。その結果、高度な構造制御によって芯粒子の表面のみを軟化させることで、樹脂微粒子の密着性を大幅に向上させつつ、充分な耐熱保存性を得ることが出来ることを見出した。
本発明においては、非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルを少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で重合した芯粒子によって、上記した構造制御を可能としている。
以下に詳細を説明する。
結晶性ポリエステルは融解や溶解によって結晶が崩れて非晶化及び液化することで、非晶性の樹脂と一部相溶する。結晶性ポリエステルが相溶することで、非晶性の樹脂は可塑され、非晶性の樹脂のガラス転移温度Tg(℃)は大幅に低下する。本発明における芯粒子の構成では、結晶性ポリエステルは、重合性単量体を重合して得られる結着樹脂よりも、非晶性ポリエステルに対して相溶しやすい性質を持っている。
一方、本発明において極性を有する非晶性ポリエステルは、水系媒体中で重合性単量体の重合が進むにつれて、芯粒子の表面に偏析する。よって、該芯粒子の製造工程では、まず始めに重合性単量体組成物中において結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルが高度に相溶され、非晶性ポリエステルが均一に可塑される。その後、該芯粒子の造粒工程で液滴が形成され、重合が進む過程で、上記した可塑された非晶性ポリエステルが芯粒子表面に移行し、偏析する。結果として、本発明における芯粒子の構成では、結晶性ポリエステルに可塑された非晶性ポリエステルが芯粒子表面に偏析する事により、芯粒子表面のみが軟化され、所望の構造制御が可能となる。
このとき、非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルを混合した樹脂のガラス転移温度の変化が、後述した範囲にあることで、芯粒子表面の軟化状態が決定する。また、軟化した層の厚さは、外殻を形成するための樹脂微粒子が埋め込まれない程度の厚さであればよく、非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルの添加量及び表面移行性を充分に制御することで所望の状態が得られる。
上記した構造制御により得られた、表面のみが軟化した芯粒子に樹脂微粒子を固着させる事で、芯粒子と樹脂微粒子の密着性は飛躍的に向上する。さらに、芯粒子の表面のみが軟化しているため、樹脂微粒子が過度に埋め込まれることはなく、優れた耐熱保存性を同時に得ることが出来る。
本発明においては、添加した結晶性ポリエステルの全量が、非晶性ポリエステルの可塑に使用される必要はない。非晶性ポリエステルの可塑に使用されなかった結晶性ポリエステルは、芯粒子中に結晶状態で存在し、定着時に芯粒子を瞬時に可塑させ、低温定着性を向上させる効果を持つ。
また、非晶性ポリエステルに相溶した結晶性ポリエステルを再結晶化させ、相分離させることで、低下していた非晶性ポリステルのガラス転移温度Tg(℃)を、元のガラス転移温度Tg(℃)に近づけることが出来る。このことにより、樹脂微粒子を固着させた後には、非晶性ポリエステルのガラス転移温度Tg(℃)が元のガラス転移温度Tg(℃)に戻ることになり、より優れた耐熱保存性を得ることが出来る。また、再結晶化された結晶性ポリエステルは芯粒子表面近傍に存在するため、定着時に非晶性ポリエステル及び樹脂微粒子を瞬時に可塑させ、低温定着性を飛躍的に向上させることが出来ると考えられる。
上記したように、本発明における構造制御は、単なる製造条件やガラス転移温度の制御の如き従来の方法では決して可能なものではなく、高度なものであると言える。さらに、該構造制御を行うことで得られる効果によってこそ、上記した課題を解決可能であると言え、従来の思想では到底到達できるものではなかった。
以上により本発明のトナーは、重合性単量体、着色剤、非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルを少なくとも含有する重合性単量体組成物を、水系媒体中で重合することにより得られる芯粒子と、該芯粒子の表面に樹脂微粒子を固着させて形成した外殻から構成される。
さらに、該非晶性ポリエステルの量をA、該結晶性ポリエステルの量をBとして、下記式
0.05≦B/(A+B)≦0.90
を満たす条件で、該非晶性ポリエステルと該結晶性ポリエステルを混合した樹脂の、DSC曲線における、1回目の走査で測定されるガラス転移温度Tg1(℃)と、2回目の走査で測定されるガラス転移温度Tg2(℃)との差(Tg1−Tg2)(℃)が8℃以上40℃以下であることで、上記した構造制御による効果を得ることが出来る。該混合した樹脂は、重合性単量体組成物中の非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルの相溶状態を擬似的に示したものであり、同時に芯粒子表面の軟化状態を示す。該(Tg1−Tg2)(℃)が8℃以上40℃以下であることで、芯粒子表面は充分に軟化され、かつ樹脂微粒子を固着させたときに過度に埋め込まれたり相溶したりするのを防ぐことが出来る。結果として前述したように、芯粒子と樹脂微粒子を密着させつつ、樹脂微粒子の埋め込みや芯粒子の染み出しを抑えることが可能となり、現像性、耐熱保存性、低温定着性を両立できる。
該(Tg1−Tg2)(℃)は、非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)や、酸価及び水酸基価の如き相溶性を制御する物性によって制御することが出来る。尚、該Tg1(℃)、該Tg2(℃)及び(Tg1−Tg2)(℃)の測定方法については後述する。
本発明における構造制御を充分に活用するには、該結晶性ポリエステルの酸価が1.0mgKOH/g以上80.0mgKOH/g以下であることが好ましい。上記した範囲にあることで、非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルの相溶性が充分なものになり、芯粒子表面の非晶性ポリエステルが充分に軟化される。また、結晶性ポリエステル自体も芯粒子表面に移行しやすくなるため、定着時には樹脂微粒子で形成された被覆層に速やかに相溶し、可塑させることで優れた低温定着性を得ることが出来る。結果として、芯粒子と樹脂微粒子の密着性が向上し、部材汚染やキャリア汚染が起こりにくく現像性に優れ、かつ低温定着性に優れたトナーを得ることが出来る。
該結晶性ポリエステルの酸価は3.0mgKOH/g以上75.0mgKOH/g以下であることが好ましく、5.0mgKOH/g以上65.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。
また、該結晶性ポリエステルは、非晶性ポリエステルとの相溶性及び芯粒子表面への移行性という観点から、水酸基価を有していてもよい。好ましい水酸基価としては1.0mgKOH/g以上80.0mgKOH/g以下であり、より好ましくは5.0mgKOH/g以上65.0mgKOH/g以下である。
該非晶性ポリエステルの酸価は5.0mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下であることが好ましい。上記した範囲にあることで、該非晶性ポリエステルが芯粒子表面に積極的に移行する。また、結晶性ポリエステルとの相溶性や、芯粒子形成時の造粒安定性も充分なものが得られるため、樹脂微粒子の固着をより均一に行うことが出来る。結果として、キャリア汚染や部材汚染が起こりにくくなり、優れた現像性が得られる。該非晶性ポリエステルの酸価は5.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。
また、該非晶性ポリエステルは、上記した理由と同様の理由により水酸基価を有していてもよい。好ましい水酸基価の範囲としては5.0mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下であり、5.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。
該結晶性ポリエステル及び該非晶性ポリエステルの酸価及び水酸基価は、該結晶性ポリエステル及び該非晶性ポリエステルを構成するアルコール成分と酸成分の比率や、単量体の種類、ポリエステルの末端基処理によって制御可能である。
尚、該結晶性ポリエステル及び該非晶性ポリエステルの酸価及び水酸基価の測定方法に関しては後述する。
本発明において、該結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は2000以上20000以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が2000以上20000以下であることで、結晶性ポリエステルが非晶性ポリエステルに充分に相溶しながら、結着樹脂には相溶しにくい状態にすることが出来る。また、結晶性ポリエステルの再結晶化も速やかに行われ易くなる。以上により、トナー製造工程においては、芯粒子表面のみが充分に軟化されるため芯粒子と樹脂微粒子の密着性が向上し、かつトナーとして得られる時には結晶性ポリエステルが一部分再結晶化し、耐熱保存性と低温定着性に優れたトナーを得ることが出来る。結果として、耐熱保存性と低温定着性を維持しながら、より優れた現像性を得ることが出来る。該結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は3000以上15000以下であることがより好ましい。
また、該非晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は3000以上50000以下であることが好ましい。上記範囲にあることで、結晶性ポリエステルとの相溶性を所望のものにすることができるだけでなく、芯粒子の表面に偏析することで、芯粒子製造時の造粒性や、トナーとしての強度を向上させることが可能であり、優れた現像性を得ることが出来る。同時に、被覆層を形成させる時に、結晶性ポリエステルにより軟化された非晶性ポリエステルと樹脂微粒子が、過度に相溶されるのを防ぐ事が出来るため、安定して被覆層を形成することが出来る。該非晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は5000以上30000以下であることがより好ましい。
該結晶性ポリエステル及び非晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、該結晶性ポリエステル及び非晶性ポリエステルの種々の製造条件によって制御可能である。具体的には、反応温度及び反応時間により制御する事が簡便であり好ましい。
尚、該結晶性ポリエステル及び非晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)の測定方法に関しては後述する。
本発明において、芯粒子に対する該非晶性ポリエステルの含有量をCa(質量%)としたときに、Ca(質量%)が1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。上記した範囲にあることで、芯粒子表面に偏析する軟化された非晶性ポリエステル層の厚さを制御することが出来るため、芯粒子表面に固着する樹脂微粒子の固着状態を制御することが可能となる。結果として、芯粒子と樹脂微粒子を密着させながら、過度の埋め込みや芯粒子成分の染み出しの如き現象を防ぐ事が可能となる。該Ca(質量%)は2質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
また、芯粒子に対する該結晶性ポリエステルの含有量をCb(質量%)としたときに、該Ca(質量%)と該Cb(質量%)の和に対する該Cb(質量%)の含有割合Cb/(Ca+Cb)が0.05以上0.90以下であることが好ましい。該Cb/(Ca+Cb)が上記した範囲にあることで、非晶性ポリエステルが充分に軟化された状態で芯粒子表面に偏析する。本発明においては、酸価や重量平均分子量の如き物性によって結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルの相溶性が制御されているため、結晶性ポリエステルの量が少量であっても、非晶性ポリエステルは十分に可塑される。また、結晶性ポリエステルの量が非晶性ポリエステルに対して多く添加された場合には、非晶性ポリエステルの可塑に使用されなかった結晶性ポリエステルがトナーの低温定着性を向上させる。
尚、本発明において、該非晶性ポリエステル及び該結晶性ポリエステルの芯粒子に対する含有量Ca及びCbは、芯粒子作製時に添加した量が全量含有されていると仮定して、計算から求めた。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルは、融点のピーク温度が50℃以上100℃以下であり、該ピークにおける単位質量あたりの吸熱量が30.0J/g以上200.0J/g以下であることが好ましい。融点のピーク温度が上記範囲にあることで、芯粒子の製造中に非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルを充分に相溶させることが出来る。また、芯粒子表面に樹脂微粒子を固着させる際には、結晶性ポリエステルが樹脂微粒子を可塑させることなく固着させることが出来る。また、該ピークにおける単位質量あたりの吸熱量が上記範囲にあることで、定着時の結晶性ポリエステルによる吸熱を最小限に抑えながら、結晶性ポリエステルの結晶化度を充分に高める事が出来る。結果として、優れた低温定着性と耐久性を両立することが出来る。
該結晶性ポリエステルの融点のピーク温度は55℃以上95℃以下であることがより好ましく、該ピークにおける単位質量あたりの吸熱量は50.0J/g以上130.0J/g以下であることがより好ましい。
該結晶性ポリエステルの融点のピーク温度及び該ピークにおける単位質量あたりの吸熱量は、該結晶性ポリエステルを構成するアルコール成分、酸成分といった単量体の種類や比率、数量、結晶性ポリエステル製造時の製造条件によって制御することが出来る。
尚、該結晶性ポリエステルの融点のピーク温度及び該ピークにおける単位質量あたりの吸熱量の測定方法に関しては後述する。
本発明において、該非晶性ポリエステル中のキシレン不溶分が5.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であると更に好ましい。上記範囲を満たすことで、該非晶性ポリエステルに対して、該結晶性ポリエステルが相溶出来る量が充分大きなものとなる。また、芯粒子製造時の造粒性がより優れたものとなり、トナー中に存在する2μm以下の粒子数も減るため、樹脂微粒子による被覆をより均一に行うことが可能となり、耐久性に優れたトナーが得られる。該非晶性ポリエステル中のキシレン不溶分は、該非晶性ポリエステルに含有させる三官能酸モノマーの量や、該非晶性ポリエステル製造時の触媒の種類によって制御が可能だが、三官能酸モノマーの量で制御する事が容易である。
該非晶性ポリエステル中のキシレン不溶分の測定方法に関しては後述する。
本発明で得られるトナーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の分子量分布において、2000以上50000以下に極大値(Mp)を有することが好ましい。上記範囲にMpを有することで、トナーの製造工程において結晶性ポリエステルがトナー全体に過度に相溶するのを防ぎながら、定着時には溶融した結晶性ポリエステルが速やかにトナーを可塑させるため、充分な低温定着性を得ることが出来る。
該Mpは5000以上40000以下であることがより好ましい。
該Mpは、主にトナーの製造条件で決定する。具体的にはトナーに用いる重合性単量体、架橋剤、連鎖移動剤、開始剤、またトナー製造時の重合温度によって制御可能である。尚、該トナーのMpの測定方法に関しては後述する。
また、本発明において、トナーの個数分布における2.0μm以下の粒子の含有量が10個数%以下であることが好ましい。該粒子の含有量が10個数%を超える場合、芯粒子表面に樹脂微粒子を固着させる際に、該粒子も同時に固着してしまう場合があり、トナーとしての耐久性や耐熱性が低下する場合がある。また、本発明において、該粒子は結晶性ポリエステルを含有するため、現像器内において該粒子が帯電部材に蓄積された場合、部材汚染の如き現象が起こる場合があり、現像安定性が低下しやすくなる。該粒子の含有量は5個数%以下であることがより好ましい。
トナーの個数分布における2.0μm以下の粒子の含有量は、前述した該非晶性ポリエステルや該結晶性ポリエステルの酸価及び水酸基価や、トナーを製造する際の温度や分散安定剤の量の如き製造条件によって制御可能である。尚、該トナーの個数分布における2.0μm以下の粒子の含有量の測定方法に関しては後述する。
次に、本発明におけるトナーの具体的な製法及び用いることができる材料を説明する。
始めに、懸濁重合法による芯粒子の具体的な製造方法を説明する。
まず、芯粒子の主構成材料となる重合性単量体に、少なくとも着色剤、非晶性ポリエステル、結晶性ポリエステルを加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を調製する。このとき、上記重合性単量体組成物中には、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また荷電制御剤や可塑剤、離型剤、さらに他の添加剤(例えば、顔料分散剤や離型剤分散剤)を適宜加えることが出来る。
次いで、上記重合性単量体組成物を、予め用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機もしくは超音波分散機の如き高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることも出来る。
造粒後の懸濁液を加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、且つ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら重合反応を行い、完結させることで芯粒子が形成される。
該芯粒子の表面に樹脂微粒子を固着させる方法としては、公知である種々の方法が利用できる。具体的には、芯粒子と樹脂微粒子を乾式で混合し、機械的処理によって固着させる方法や、水系媒体中に芯粒子と樹脂微粒子を分散させて、加熱したり凝集剤を添加したりする方法が挙げられる。本発明においては、芯粒子表面に樹脂微粒子を均一に固着させ、その密着性と埋め込まれ具合を制御するために、水系媒体中で加熱することにより芯粒子表面に樹脂微粒子を固着させることが好ましい。
該非晶性ポリエステル及び該結晶性ポリエステルは、2価以上の多価カルボン酸とジオールの反応により得ることができる。該結晶性ポリエステルの場合は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を主成分とするポリエステルが、結晶化度が高く好ましい。
このような非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルを得るためのアルコール単量体としては公知のアルコール単量体が使用できる。具体的には、例えば以下のものが使用できる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールの如きアルコール単量体;ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、の如き2価のアルコール;1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール、ペンタエリスリトールの如き3価のアルコール。
該非晶性ポリエステル及び該結晶性ポリエステルを得るためのカルボン酸単量体としては公知のカルボン酸単量体が使用できる。具体的には、例えば以下のものが使用できる。シュウ酸、セバシン酸の如きジカルボン酸及びこれらの酸の無水物または低級アルキルエステル;トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパンの如き3価以上の多価カルボン酸成分及びこれらの酸無水物または低級アルキルエステル等の誘導体。
該非晶性ポリエステル及び該結晶性ポリエステルは、公知のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジアルコ−ル成分をエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させて非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルを得る。
エステル化またはエステル交換反応の時には必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、テトラブチルチタネートの如き通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、通常の重合触媒例えば、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、2硫化スズ、3酸化アンチモン、2酸化ゲルマニウムの如き公知のものを使用することができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
また、ポリマー末端のカルボキシル基を封止することで非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルの酸価を制御することも出来る。
末端封止にはモノカルボン酸、モノアルコールを用いることが出来る。モノカルボン酸としては例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。また、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及び、高級アルコールが使用可能である。
本発明における該樹脂微粒子の製造方法としては、公知の方法を用いることが出来る。
具体的には、乳化重合法やソープフリー乳化重合法、転相乳化法の如き方法によって製造されたものを用いることができる。これらの製法の中でも、転相乳化法は小粒径かつ粒度分布の狭い樹脂微粒子が容易に得られるため、特に好適である。
転相乳化法による樹脂微粒子分散液の製造方法を具体的に説明する。予め製造した所望の物性の樹脂を、該樹脂が溶解し得る有機溶剤に溶解し、必要に応じて界面活性剤、中和剤を加え、撹拌しながら水系媒体と混合すると、上記樹脂の溶解液が転相乳化を起こして微小な粒子を形成する。該有機溶剤は、転相乳化後に加熱、減圧の如き方法を用いて除去する。以上のようにして、小粒径かつ粒度分布の狭い、安定した樹脂微粒子の水系分散体を得ることが出来る。
該樹脂微粒子を構成する樹脂の材質としては、トナーの結着樹脂として使用し得るものであればよく、具体的にはビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。本発明においては、芯粒子と樹脂微粒子の密着性という観点から、ポリエステル樹脂であることがより好ましい。
また、本発明における該樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移温度Tg1(℃)は、芯粒子のガラス転移温度をTg2(℃)としたときに、
Tg2≦Tg1≦Tg2+30
を満たす事が好ましい。上記範囲を満たす事で、耐熱保存性と低温定着性の両立が可能になるだけでなく、本発明における構造制御を達成しつつ、該樹脂微粒子と芯粒子の密着性を充分なものにする事が出来る。
該樹脂微粒子を構成する樹脂中のキシレン不溶分は1.0質量%以上25.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。上記した範囲にあることで、芯粒子の表面に樹脂微粒子を固着させる際に、樹脂微粒子と芯粒子が過度に相溶することを防ぐ事が出来る。また、芯粒子に含有される結晶性ポリエステルによって該樹脂微粒子が可塑されることを防ぐ事が可能であり、優れた耐熱保存性を得ることが可能である。
該樹脂微粒子は、体積基準のメジアン径(D50)で10nm以上200nm以下であることが好ましい。上記範囲にあることで、本発明における構造制御を充分に活用する事が可能であり、優れた耐熱保存性と低温定着性を両立する事が可能である。該樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(D50)のより好ましい範囲としては20nm以上150nm以下である。該樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(D50)の測定方法については後述する。
前述した芯粒子の製造に用いる事が出来る重合性単量体としては、公知のラジカル重合性単量体が使用可能である。具体的には、例えば以下のものを挙げることができる。
スチレン、α−メチルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;酢酸ビニルの如きビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシルの如きアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルの如きメタクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテルの如きビニルエーテル類;マレイン酸の如き不飽和二塩基酸またはその無水物。
本発明に用いることのできる離型剤としては特に制限はなく公知のものが利用できる。例えば、以下の化合物が挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、エステルワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
また、本発明のトナーは、荷電制御剤を使用しても良い。
トナー粒子を負荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物及びその誘導体が挙げられる。また、スルホン酸基、スルホン酸塩基、或いは、スルホン酸エステル基を有するスルホン酸樹脂は好ましく用いることができる。
トナー粒子を正荷電性に制御する荷電制御剤としては、例えば、以下に示す荷電制御剤を用いることができる。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;。これらを単独或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。
上記荷電制御剤は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部当り、0.01質量部以上20.00質量部以下、より好ましくは0.10質量部以上10.00質量部以下となる様に含有させるのが、トナーの低温定着性と耐久性の点で良い。
また、上記した懸濁重合法によるトナー粒子の製造においては、耐高温オフセット性の改善を目的として、少量の多官能性単量体を併用することができる。尚、高温オフセットとは、定着時において溶融したトナーの一部が上述した熱ローラーや定着フィルムの表面に付着し、これが後続の被定着シートを汚染する現象をいう。多官能性単量体としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンの如き芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、の如き二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンの如きジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物。
これらの多官能性単量体は必ずしも使用する必要はないが、使用する場合の好ましい添加量は、重合性単量体100質量部に対して0.01質量部以上1.00質量部以下である。
本発明のトナーは、着色剤を含有している。従来知られている種々の染料や顔料等、公知の着色剤を用いることが出来る。黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、又は以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー用の着色剤として、例えば、以下に示す着色剤を用いることができる。
イエロー着色剤としては、顔料系としては、モノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー74,93,95,109,111,128,155,174,180,185が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的にはC.I.ピグメントレッド2,3,5,6,7,23,48:2,48:3,48:4,57:1,81:1,122,144,146,150,166,169,177,184,185,202,206,220,221,238,254,269、C.I.ピグメントバイオレッド19等が例示できる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
これらの着色剤は単独または混合し、更には固溶体の状態で用いることができる。黒色着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量は重合性単量体100質量部に対して40質量部以上150質量部以下であることが好ましい。黒色着色剤としてカーボンブラックを用いる場合、その添加量は重合性単量体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。また、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択され、その好ましい添加量は、重合性単量体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である。
さらに本発明のトナー粒子は磁性体を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。本発明において、該磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属が挙げられる。或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属との合金及びその混合物が挙げられる。
本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、ケイ酸微粉体、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好適に用いられる。これら無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
さらに、本発明のトナーは、必要に応じて流動性向上剤以外の外部添加剤をトナー粒子に混合されていてもよい。
上記の如き外部添加剤は、トナー100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下使用するのが好ましい。
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。二成分系現像剤として用いる場合、混合するキャリアの平均粒径は、10μm以上100μm以下であることが好ましく、現像剤中のトナー濃度は、2質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
以下に、本発明で用いる測定方法について列挙する。
(ガラス転移温度Tg1、Tg2及び結晶性ポリエステルの融点、吸熱量)
ガラス転移温度Tg1、Tg2及び結晶性ポリエステルの融点、吸熱量は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
Tg1及びTg2の測定には、専用のサンプルを作製した。手順は以下の通りである。
まず、非晶性ポリエステルの量をA、結晶性ポリエステルの量をBとしたときに、B/(A+B)が0.05、0.50、0.90となるように各サンプルを秤量した。秤量した各非晶性ポリエステルと各結晶性ポリエステルを室温にて、均一になるまで粉砕混合しサンプルを得た。各混合サンプルに対して、下記の方法に従ってTg1及びTg2を測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、上記した混合サンプル3mgまたは結晶性ポリエステル1mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲20℃から120℃の間で、昇温速度1℃/min、振幅温度幅±0.318℃/minの設定でモジュレーション測定を行う。この昇温過程で、温度20℃から120℃の範囲において比熱変化が得られる。該測定により得られた、可逆比熱変化曲線の比熱変化が出る前と出た後の、ベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点とし、これをTg1とする。また、結晶性ポリエステルの融点と吸熱量は、該測定により得られた、比熱変化曲線における最大吸熱ピーク温度と、該吸熱ピークにおける吸熱量とする。さらに、温度120℃から20℃の間で、昇温速度10℃/minで降温させ、20℃で10分間保持する。その後、再び測定範囲20℃から120℃の間で、昇温速度1℃/min、振幅温度幅±0.318℃/minの設定で同様に測定し、Tg1と同様の方法でTg2を定める。
(結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステル、樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価)
結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステル、樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価はJIS K1557−1970に準じて測定される。具体的な測定方法を以下に示す。試料の粉砕品2gを精秤する(W(g))。200mlの三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間溶解する。指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加える。0.1規定のKOHもアルコール溶液を用いて上記溶液をビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS(ml)とする。ブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(ml)とする。
次式により酸価を計算する。
酸価=〔(S−B)×f×5.61〕/W
(f:KOH溶液のファクター)
(結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステル、樹脂微粒子を構成する樹脂の水酸基価)
水酸基価とは,試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。結着樹脂の水酸基価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス等に触れないように、褐色びんにて保存する。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム35gを20mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.5モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料1.0gを200ml丸底フラスコに精秤し、これに前記のアセチル化試薬5.0mlをホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。
フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗う。
指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:試料の酸価(mgKOH/g)である。
(結晶性ポリエステルの重量平均分子量)
結晶性ポリエステル0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散して溶解後、135℃において24時間振投機で振とうを行い、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用い、下記の条件にて分析を行う。
[分析条件]
分離カラム:Shodex(TSK GMHHR−H HT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/min.
試料濃度 :0.3%
注入量 :300μl
検出器 :示差屈折率検出器 Shodex RI−71
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
(非晶性ポリエステルの重量平均分子量、樹脂微粒子を構成する樹脂の重量平均分子量、トナーの分子量分布及びピーク分子量)
非晶性ポリエステルの重量平均分子量、樹脂微粒子を構成する樹脂の重量平均分子量、トナーの分子量分布及びピーク分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、サンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
(非晶性ポリエステル及び樹脂微粒子を構成する樹脂中のキシレン不溶分)
サンプル作製としては、樹脂10.0gをキシレン1000.0gに分散し、72時間静置したものを遠心分離機により、遠心分離を行い、上澄み液を除去した後、減圧乾燥し、キシレン不溶分を得た。
該非晶性ポリエステル中のキシレン不溶分の割合=(得られたキシレン不溶分の質量/10.00)×100(質量%)
として算出した。
遠心分離の条件は以下の通りである。
・遠心分離条件
遠心分離機:H−9R(株式会社コクサン製)
回転速度:15000rpm
回転時間:10分
温度 :15℃
(トナーの2.0μm以下の粒子の含有量)
トナーの2.0μm以下の粒子の含有量は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.2ml加える。更に測定試料を0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを2ml添加する。
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナーの2.0μm以下の粒子の含有量を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
(樹脂微粒子の体積基準のD50)
樹脂微粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、レーザー回折/散乱式粒径分布測定装置を用いて測定した。具体的にはJIS Z8825−1(2001年)に準じて測定される。
測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、LA−920に付属の専用ソフト「HORIBA LA−920 for Windows(登録商標) WET(LA−920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。
測定手順は、以下の通りである。
(1)バッチ式セルホルダーをLA−920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、相対屈折率を1.20に設定する。
(5)「表示条件設定」画面において、粒径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
(7)ガラス製の100ml平底ビーカーに合成例で作製した樹脂微粒子分散液を約3ml入れる。さらに約57mlのイオン交換水を入れて樹脂微粒子分散液を希釈する。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)60秒間超音波分散処理を継続する。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した樹脂微粒子分散液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%〜95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元にD50を算出する。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例中で使用する部は全て質量部を示す。
<合成例1:結晶性ポリエステル1の製造>
撹拌機、温度計、流出用冷却機を備えた反応装置にセバシン酸180.0部と、エチレングリコール63.3部、テトラブチルチタネート0.4部を入れ、190℃で5時間エステル化反応を行った。その後、220℃に昇温すると共に系内を徐々に減圧し、150Paで2時間重縮合反応を行った。常圧に戻した後、安息香酸24.4部とトリメリット酸10.5部を添加し、さらに220℃で3時間反応させて結晶性ポリエステル1を得た。
<合成例2乃至11:結晶性ポリエステル2乃至11の製造>
合成例1において、単量体の仕込み量及び、常圧に戻した後の重縮合反応条件を表1に示すように変更した以外は、合成例1と同様にして反応を行い、結晶性ポリエステル2乃至11を得た。
得られた結晶性ポリエステル1乃至11の物性をまとめて表2に示した。
<合成例12:非晶性ポリエステル1の製造>
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレープ中にテレフタル酸12.0部と、イソフタル酸48.0部、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド(BPA−PO)2モル付加物87.5部、BPA−PO3モル付加物:37.0部、ジブチル錫オキサイド0.03部を仕込み、窒素雰囲気下、常圧下で200℃で15時間反応を行い、更に10乃至20mmHgの減圧下で1時間反応させた。その後、170℃に降温し、無水トリメリット酸を0.15部添加して、170℃で1.0時間反応させ、非晶性ポリエステル1を得た。
<合成例13乃至19:非晶性ポリエステル2乃至7の製造>
合成例12において、単量体の仕込み量及び、窒素雰囲気下、常圧下での重縮合反応条件を表3に示すように変更した以外は、合成例12と同様にして反応を行い、非晶性ポリエステル2乃至7を得た。
得られた非晶性ポリエステル1乃至7の物性をまとめて表4に示した。
<合成例20:樹脂微粒子分散液Aの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03部を添加し、窒素雰囲気下、温度220℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
テレフタル酸:22.4部
イソフタル酸:15.2部
トリメリット酸:5.2部
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:49.6部
エチレングリコール:8.9部
次いで、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、樹脂微粒子を構成する樹脂を得た。該樹脂微粒子を構成する樹脂の一部を抜き取り、各物性を測定したところ、酸価は8.0mgKOH/g、ガラス転移温度は62℃、キシレン不溶分は10.2質量%であった。
さらに、撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られた該樹脂100.0部とメチルエチルケトン45.0部、テトラヒドロフラン45.0部、ジエチルアミノエタノール2.0部を仕込み、温度80℃に加熱して溶解した。
次いで、撹拌下、温度80℃のイオン交換水300.0部を緩やかに添加して転相乳化させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液Aとした。該樹脂微粒子分散液Aの一部を抜き取り、体積基準のメジアン径(D50)を測定したところ、120nmであった。
<合成例21:樹脂微粒子分散液Bの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03部を添加し、窒素雰囲気下、温度220℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
テレフタル酸:22.4部
イソフタル酸:18.2部
トリメリット酸:7.2部
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:44.6部
エチレングリコール:8.9部
次いで、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、樹脂微粒子を構成する樹脂を得た。該樹脂微粒子を構成する樹脂の一部を抜き取り、各物性を測定したところ、酸価は16.2mgKOH/g、ガラス転移温度は71℃、キシレン不溶分は20.2質量%であった。
さらに、撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られた該樹脂100.0部とメチルエチルケトン45.0部、テトラヒドロフラン45.0部、ジエチルアミノエタノール2.0部を仕込み、温度80℃に加熱して溶解した。
次いで、撹拌下、温度80℃のイオン交換水300.0部を緩やかに添加して転相乳化させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液Bとした。該樹脂微粒子分散液Bの一部を抜き取り、体積基準のメジアン径(D50)を測定したところ、18nmであった。
<合成例22:樹脂微粒子分散液Cの製造>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03部を添加し、窒素雰囲気下、温度220℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
テレフタル酸:24.4部
イソフタル酸:22.2部
トリメリット酸:1.2部
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:44.6部
エチレングリコール:8.9部
次いで、反応容器内を5乃至20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、樹脂微粒子を構成する樹脂を得た。該樹脂微粒子を構成する樹脂の一部を抜き取り、各物性を測定したところ、酸価は12.2mgKOH/g、ガラス転移温度は58℃、キシレン不溶分は3.4質量%であった。
さらに、撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られた該樹脂100.0部とメチルエチルケトン45.0部、テトラヒドロフラン45.0部、ジエチルアミノエタノール2.0部を仕込み、温度80℃に加熱して溶解した。
次いで、撹拌下、温度80℃のイオン交換水300.0部を緩やかに添加して転相乳化させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子分散液Cとした。該樹脂微粒子分散液Cの一部を抜き取り、体積基準のメジアン径(D50)を測定したところ、130nmであった。
<実施例1>
(トナー粒子1の作製)
・スチレン:75.0部
・n−ブチルアクリレート:25.0部
・ピグメントブルー15:3:6.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物:1.0部
(ボントロンE−88:オリエント化学社製)
・ジビニルベンゼン:0.02部
・離型剤 パラフィンワックス:9.0部
(HNP−51:日本精鑞製 融点74℃)
・非晶性ポリエステル1:5.0部
・結晶性ポリエステル1:10.0部
からなる単量体の混合物を調製した。これに15mmのセラミックビーズを入れ、アトライター(三井三池化工機製)を用いて2時間分散して、単量体組成物を得た。
高速撹拌装置TK−ホモミキサー(特殊機化工業製)を備えた容器に、イオン交換水800.0部とリン酸三カルシウム3.5部を添加し、回転数を12000回転/分に調整し、75℃に加温して分散媒系とした。
該単量体組成物に重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート7.0部を添加し、これを上記分散媒系に投入した。前記高速撹拌装置にて12000回転/分を維持しつつ3分間の造粒工程を行った。その後、高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根に撹拌機を代え、150回転/分で撹拌しながら75℃を保持して10時間重合を行った。
重合終了後、得られた重合体粒子の分散液を冷却し、イオン交換水を加えて分散液中の重合体粒子濃度が20%になるように調整し、芯粒子分散液を得た。
該芯粒子分散液500.0部(固形分100.0部)に、撹拌下、合成例20で得られた該樹脂微粒子分散液A25.0部(固形分5.0部)を緩やかに添加した。次いで、加熱用オイルバスの温度を上げて50℃を保持し、上記分散液のpHが緩やかに変化するように気をつけながら1モル/l塩酸を滴下し、上記分散液のpHを1.5とした後、2時間撹拌を続けた。その後、撹拌下、1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液を上記分散液のpHが7.2になるまで滴下した。
この分散液を、樹脂微粒子分散液Aを構成する樹脂のガラス転移温度である62℃に保持し、さらに1時間撹拌した。上記分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加えた。更に、イオン交換水で充分に洗浄した後、ろ過し、乾燥および分級してトナー粒子1を得た。前述の方法に従って、該トナー粒子1の分子量分布を測定し、ピーク分子量Mpを計算したところ25000であった。
(トナー1の作製)
シリカ微粉体100部を、10部のヘキサメチルジシラザンで処理し、さらに10部のシリコーンオイルで処理して、一次粒径12nm、BET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体を調製した。次いで、上記トナー粒子1を分級した後、100.0部を量り取り、該疎水性シリカ微粉体1.0部を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機製)を用いて混合し、トナー1を得た。
<実施例2乃至17、比較例1乃至4>
実施例1において、使用した非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルの種類、非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルの添加量、使用した樹脂微粒子分散液を表5に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子及びトナー2乃至21を得た。
<比較例5>
比較例1において使用した芯粒子分散液500.0部(固形分100.0部)に、撹拌下、トルエン10.0部を添加し、1時間攪拌を続けた。次いで、合成例20で得られた該樹脂微粒子分散液25.0部(固形分5.0部)を緩やかに添加し、2時間撹拌を続けた。その後、10乃至20mmHgの減圧下で2時間攪拌を続け、トルエンを揮発させた。更に、ろ過し、真空乾燥および分級してトナー粒子22を得た。
得られたトナー1乃至22の物性をまとめて表5に示した。また、各トナーに添加した非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルの組み合わせにおける、Tg1及びTg2についても表6にまとめて示した。
実施例1乃至17および比較例1乃至5で得られた各トナーについて、以下の方法に従って性能評価を行った。
<耐熱保存性>
トナー5gを容積100mlのポリカップに量り採り、これを内部温度55℃の恒温槽に入れて放置する。一日ごとに、恒温槽内のポリカップを取り出して、中のトナーの状態変化を目視にて評価する。判定基準は以下の通りである。
A:7日間放置しても変化なし(耐熱保存性が特に優れている)
B:3日間放置しても変化しないが、7日間放置すると凝集体が生じる(耐熱保存性が良好である)
C:1日間放置しても変化しないが、3日間放置すると凝集体が生じる(耐熱保存性が問題ないレベルである)
D:6時間放置しても変化しないが、1日間放置すると凝集体が生じる(耐熱保存性がやや劣る)
E:低温側開始点が140℃以上である(低温定着性能が劣る)
<定着性>
市販のカラーレーザープリンター(LBP−5400,キヤノン製)を使用し、シアンカートリッジのトナーを取り出して、これにトナーを充填し、該カートリッジをシアンステーションに装着した。次いで、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー 64g/m2)上に、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(0.6mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。次いで、市販のカラーレーザープリンター(LBP−5400,キヤノン製)から取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピード及び定着線圧が調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿下、プロセススピード200mm/s、定着線圧14.0kgfに設定し、初期温度を120℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行う。
本発明において、低温定着性は、低温オフセットが観察されず、且つ、得られた定着画像を4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で摺擦したときに、摺擦前後の濃度低下率が10%以下となる温度を低温側定着開始点とした。低温定着性能の評価基準は以下の通りである。
A:低温側開始点が120℃(低温定着性能が特に優れている)
B:低温側開始点が125℃(低温定着性能が良好である)
C:低温側開始点が130℃(低温定着性能が問題ないレベルである)
D:低温側開始点が135℃(低温定着性能がやや劣る)
E:低温側開始点が140℃以上である(低温定着性能が劣る)
また、定着ユニットの設定を、常温常湿下、プロセススピード200mm/s、定着線圧28.0kgfに設定し、初期温度を120℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行い、下記評価基準に従って耐高温オフセット性能を評価した。
A:高温オフセットが発生しない温度が、低温側開始点の温度+80℃以上である(耐高温オフセット性能が特に優れている)
B:高温オフセットが発生しない温度が、低温側開始点の温度+70℃以上+80℃未満である(耐高温オフセット性能が良好である)
C:高温オフセットが発生しない温度が、低温側開始点の温度+60℃以上+70℃未満である(耐高温オフセット性能が問題ないレベルである)
D:高温オフセットが発生しない温度が、低温側開始点の温度+50℃以上+60℃未満である(耐高温オフセット性能がやや劣る)
E:低温側開始点の温度+50℃未満の温度領域で高温オフセットが発生する(耐高温オフセット性能が劣る)
<耐久性>
トナー1乃至21について、それぞれのトナーとシリコーン樹脂で表面被覆した磁性微粒子分散型樹脂キャリア(数平均粒子径35μm)とを、トナー濃度が8.0質量%になるように混合し、二成分現像剤1乃至21を作製した。
それぞれの二成分現像剤450gを高温高湿下(30℃/80%)で7日間放置した後、常温常湿下(23℃/60%)でさらに3日間放置し初期混合による摩擦帯電をリセットした。それらを常温常湿環境(23℃/60%)で、カラー複写機CLC5500改造機(キヤノン製)にて画出し評価を行った。
各現像剤を現像器ユニットに仕込み、予備回転なしにベタ白のA4画像を10枚出力し、画像のベタ白部の反射率を測定した。さらに未使用の紙の反射率を測定し、上記画像のベタ白部の反射率から引いてかぶり濃度とした。出力した10枚の画像について測定したかぶり濃度の平均値を、以下の評価基準にしたがって評価した。尚、反射率はTC−6DS(東京電色製)で測定した。
A:かぶり濃度が0.6%未満(帯電性が特に優れている)
B:かぶり濃度が1.0%未満(帯電性が優れている)
C:かぶり濃度が1.5%未満(帯電性が良好である)
D:かぶり濃度が2.0%未満(帯電性がやや劣る)
E:かぶり濃度が2.5%以上(帯電性が劣る)
また、部材汚染及びキャリア汚染に関する評価は、常温低湿環境(23℃/5%)の環境下にて25000枚の複写テストを行い、現像剤の帯電量変化及び、キャリア表面の付着物の観察結果から評価した。帯電量変化の評価は、1000枚複写時の帯電量と終了時の帯電量の変化幅を%で表わし、以下の評価基準で行った。
A:帯電量の変化幅が0%乃至11%未満
B:帯電量の変化幅が11%乃至20%未満
C:帯電量の変化幅が21%乃至30%未満
D:帯電量の変化幅が31%乃至40%未満
E:帯電量の変化幅が40%以上
尚、キャリア表面の付着物の観察は電子顕微鏡を用いて行い、評価は、20個のキャリアを観察したときの、付着物が見られるキャリアの個数を以下の評価基準で行った。
A:付着物が見られるキャリアが1個以下(非常にキャリア汚染しにくい)
B:付着物が見られるキャリアが4個以下(キャリア汚染しにくい)
C:付着物が見られるキャリアが8個以下(キャリア汚染が問題ないレベルである)
D:付着物が見られるキャリアが12個以下(若干キャリア汚染しやすい)
E:付着物が見られるキャリアが13個以上(キャリア汚染しやすい)
さらに、トナーの割れ及び潰れに関する強度を評価するために、上記した25000枚の複写テストの後に、30H画像を形成し、この画像及び感光体表面を目視にて観察し、前記画像のベタ均一性の再現性について以下の指標で評価した。なお、30H画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hをベタ白とし、FFHをベタ画像とするときのハーフトーン画像である。
A:画像上にスジ・ムラがなく、感光体表面にも融着は無い(トナー強度が特に優れている)
B:画像上にスジ・ムラはないが、感光体表面に軽微な融着が見受けられる(トナー強度が優れている)
C:画像上に細いスジが1乃至3本見受けられ、感光体表面に融着が見受けられる(トナー強度が問題ないレベルである)
D:画像上に細いスジが4本以上見受けられ、顕著な感光体表面の融着が観察される(トナー強度が若干弱い)
E:画像上にスジ・ムラが多く、顕著な感光体表面の融着が観察される(トナー強度が弱い)
結果を表7に示した。
以上により、非晶性ポリエステル及び結晶性ポリエステルを含有した芯粒子と、該芯粒子に樹脂微粒子を固着させて形成した外殻から構成されるトナーにおいて、本発明に関わる構造制御を用いれば、樹脂微粒子が剥がれにくく、耐久性に優れるトナーが得られた。具体的には、本発明に規定する条件を満たす非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルを用いることで、樹脂微粒子が芯粒子に過度に埋没することなく密着させることが出来た。結果として部材汚染やキャリア汚染を非常に起こしにくく、該キャリア汚染の如き現象に起因する帯電量変動も起こしにくいトナーが得られた。また、芯粒子に内包された結晶性ポリエステルの一部の効果により、定着時には被覆層が該結晶性ポリエステルにより可塑され、低温定着性にも優れるトナーが得られた。
一方、比較例において、本発明の条件を満たさない非晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルを含有したトナーは著しく耐久性に劣り、キャリア汚染や帯電量変動といった問題が生じる結果となった。また、芯粒子に内包された結晶性ポリエステルの一部の効果を充分に活かす事が出来ない構成であった為、著しく耐熱保存性に劣ってしまったり、充分な定着性能が得られなかったりした。