JP5540003B2 - ボタン取付用上金型 - Google Patents

Description

本発明は、ボタン取付用上金型に関し、更に詳しくは、スナップボタンの雌スナップ、飾りボタン等をボタン取付部材を用いて生地等に取り付ける際に、生地等を貫通しボタンの取付用開口を通ったボタン取付部材の軸部を加締めるための上金型に関する。

雌スナップ等のボタンを生地に取り付ける場合、一般に、水平にした生地の上方にボタンを配置し、生地の下方においてボタン取付部材を下金型に支持させ、ボタン取付部材の軸部を生地に貫通させ、次いでボタンの取付用開口に通した後、プレス機に連結した上金型を下金型に対して降下させることにより、上金型の底部で軸部を押し潰して加締めるようにしている。従来の上金型の例は特公昭６１−４３４４３号公報、実公平４−２９７９号公報等に開示される。

しかしながら、従来の上金型の場合、ボタン取付時にボタン取付部材の軸部を押し潰すと、軸部は周方向全域において半径方向外側へと拡張変形する。そのため、例えば生地が厚いと、軸部の半径方向外側への拡張が不足し、十分なボタン取付力が確保できない場合があった。また、生地が薄い場合、軸部が必要以上に半径方向外側に膨出するため、確実にボタンを取り付けるために加締め力を高める必要があり、この場合、プレス機の負荷が大きくなり過ぎる。

特公昭６１−４３４４３号公報 実公平４−２９７９号公報

本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、生地等の厚さにかかわらず、ボタンを生地等に確実に取り付けるようにボタン取付部材の軸部を加締めることができるボタン取付用上金型を提供することにある。

本発明によれば、上記課題を解決するため、ボタン（雌スナップ、雄スナップ等）をボタン取付部材によってシート体（生地の他、皮や樹脂製シートを含む）に取り付ける際に、シート体の上方にあるボタンに対しシート体の下方からシート体を貫通させ次いでボタンの取付用開口に通したボタン取付部材の軸部を加締めるためのボタン取付用上金型であって、ボタン取付部材の軸部を加締めるために該軸部に押し付ける、外周が円形の作用底部を備え、該作用底部は、加締め時に軸部の半径方向外側への拡張を許容する上方に凹となる凹部と、半径方向外側への拡張を制限する下方に凸となる凸部（拡張制限凸部）とを周方向に交互に有するボタン取付用上金型が提供される。

本発明では、シート体及びボタンのボタン取付部材の開口を突き抜けたボタン取付部材の軸部をボタン取付用金型の作用底部で押し潰すと、軸部は、作用底部に周方向に交互に設けた凹部と凸部のうちの凹部において半径方向外側へと拡張変形し、凸部において半径方向外側への拡張が制限される。そのため、変形後の軸部は、半径方向外側に比較的大きく拡張する部分（大拡張部）と、半径方向外側への拡張が制限される部分とが周方向に交互になって、平面が花びら形状となるため、ボタンの表側から見える加締めた軸部の意匠性を高めることができる。このように、軸部の変形を凹部に対応する大拡張部に集中させることにより、例えば、生地厚が厚い場合でも強固なボタン取付力を確保することができ、また、軸部の押潰しに必要な力を低減することができる。

本発明において、ボタン取付部材は、一般に樹脂製であり、具体例としては、ポリアミド（ＰＡ）、ポリアセタール（ＰＯＭ）、ポリカーボネート（ＰＣ）、変性ポリフェニレンエーテル（ｍ−ＰＰＥ）、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＴ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート（ＧＦ−ＰＥＴ）、環状ポリオレフィン（ＣＯＰ）等を挙げることができるが、真鍮、アルミニウム合金等の金属製であってもよい。

本発明の一実施形態において、前記凸部は、頂角が作用底部の中心を向く三角形状の水平断面を有する。これにより、加締め時に半径方向外側へと拡張するボタン取付部材の軸部が凸部を避けやすくなる。

本発明において、前記凸部の設置数は三つから八つが好ましいが、これに限定されるものではない。凸部（又は凹部）の数により、上述した変形後の軸部の花びら形状の花びら片の数が変わるため、花びら形状を所望にデザインすることができる。また、凸部の数等により、軸部の半径方向外側への変形量が変わるため、生地厚に応じて、最適な数の凸部を設定するなどして、ボタン取付力あるいは加締め力を調整することができる。なお、凸部が三つの場合、周方向に１２０度間隔となり、八つの場合は４５度間隔となる。

本発明の一実施形態において、前記凹部は水平基準面から上方に凹となり、前記凸部は水平基準面よりも下方に突出する。ボタン取付部材の軸部の一部は加締め時に凸部の下方へと入り込み、これが変形後の軸部が成す上述した花びら形状の花びら片間に残って花びら形状を歪め得る。この花びら片間における軸部の変形部分は、凸部を水平基準面よりある程度下方に突出させることにより、減らすことができ、これにより花びら形状の美観が高まる。

本発明では、ボタン取付用上金型による加締め時にボタン取付部材の軸部が、作用底部の周方向における凹部に対応する部分で半径方向外側への拡張が許容され、凸部に対応する部分で半径方向外側への拡張が制限されるため、凹部において軸部を集中的に半径方向外側へと膨出させることができる。そのため、たとえシート体が厚くても、周方向所定間隔で形成される軸部の半径方向外側に比較的大きく拡張する部分により、十分なボタン取付力が確保でき、また、シート体が薄くても、軸部の半径方向外側への変形量を周方向に分散することができるため、加締め力やプレス機の負荷が大きくなり過ぎるようなことはない。

図１は、本発明の一実施形態に係るボタン取付用上金型を破断して示す斜視図である。 図２は、図１のボタン取付用上金型の底面図（作用底部の正面図）である。 図３は、図１のボタン取付用上金型の縦断面図である。 図４は、雌スナップ（ボタン）の生地への取付前における、上金型、雌スナップ、生地、ボタン取付部材、及び下金型の配置を示す断面説明図である。 図５は、ボタン取付時においてボタン取付部材の軸部が生地を貫通し雌スナップの取付用開口を通った状態を示す断面説明図である。 図６は、ボタン取付時においてボタン取付部材の軸部の先端が上金型に接した状態を示す部分拡大断面説明図である。 図７は、ボタン取付時において上金型がボタン取付部材の軸部を押し潰した状態を示す部分拡大断面説明図である。 図８は、図７のＡ−Ａ線に沿う断面説明図である。 図９は、押し潰された状態のボタン取付部材の軸部が表される、生地に固定された雌スナップの平面図である。 図１０は、拡張制限凸部の突出高さを図１のそれに比べ大きくしたボタン取付用上金型を破断して示す斜視図である。 図１１は、本発明の別の実施形態に係るボタン取付用上金型の底面図である。

以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。図１は、本発明の一実施形態に係るボタン取付用上金型（以下単に「上金型」ともいう）１０の下方部分を破断して示す斜視図であり、図示を省略した上金型１０の上方部分は後述するボタン取付時にプレス機の昇降部（図示せず）に連結される。図２及び３は上金型１０の底面図及び縦断面図である。上金型１０（の下方部分）は円柱形状であり、その外周が円形で鋼製の底部１１に、後述するボタン取付時にボタン取付部材３０の軸部３２に押し付ける作用底部１１が形成される。作用底部１１は、中心部において上方に凹となる中心凹部１２と、中心凹部１２の周囲において環状に上方に凹となる環状凹部１３と、中心凹部１２と環状凹部１３の境界において相対的に下方に凸となる環状凸部１４と、環状凹部１３と上金型１０の外周面１０’との間の周縁部１５と、環状凹部１３の半径方向外側半分の領域（外側凹部）１３ａにおいて一例として周方向６０度間隔で六つ設定した凸部（以下「拡張制限凸部」という）１６とを有する。そのため、環状凹部１３の半径方向外側半分の領域１３ａでは該外側凹部１３ａと拡張制限凸部１６とが周方向に交互となる。

作用底部１１において、環状凸部１４の頂端１４’と周縁部１５は同じ水平面内にあり、以下、この水平面を基準面Ｂ（図３参照）という。中心凹部１２と環状凹部１３の基準面Ｂから上方に凹となり、その深さは等しく、中心凹部１２の断面は略逆Ｕ字形状であり、環状凹部１３の（一つの半径に沿う）断面は略鈍角二等辺三角形状であり、その頂角が潰れて環状凹部１３の底端１３’は平坦になっている。また、環状凸部１４の頂端１４’はわずかに丸みが付けられる。更に、周縁部１５は基準面Ｂに沿う平坦面である。

各拡張制限凸部１６は、環状凹部１３の底端１３’から半径方向外側の周縁部１５へと下方に傾斜する外側傾斜面１３”（図３参照）及び周縁部１５から下方に突出する。各拡張制限凸部１６は、頂角１６ｃが作用底部１１の中心を向く略鋭角二等辺三角形状の水平断面を有する。更に詳しくは、各拡張制限凸部１６は、上金型１０の外周面１０’を底辺としかつ頂角１６ｃが作用底部１１の中心を向く（頂角の二等分線が半径方向に沿う）略鋭角二等辺三角形状の凸部底面１６ａと、凸部底面１６ａの長さが等しい二つの辺から上方の環状凹部１３の外側傾斜面１３”及び周縁部１５へと垂直に延びる略直角三角形状の二つの凸部側面１６ｂ、１６ｂとを有する。凸部底面１６ａは、基準面Ｂよりも若干下方に突出しかつ基準面Ｂと平行すなわち水平である。拡張制限凸部１６の半径方向外側は上金型１０の外周面１０’と面一となっている。なお、本実施形態では、周方向に隣り合う二つの拡張制限凸部１６において互いに向かい合う凸部側面１６ｂは平行であるが、この向かい合う凸部側面１６ｂが半径方向外側へと次第に近付くようになっていてもよい。

図４は、ボタンの一例である雌スナップ２０をシート体の一例である生地１に取り付ける直前の主要構成の上下方向（軸方向）の配置状態を示し、上から、ボタン取付用上金型１０、雌スナップ２０、生地１、ボタン取付部材３０、及び、ボタン取付部材３０を支持させる下金型４０の順となる。ボタン取付部材３０は、アセタール樹脂製であり、略円板状の基部３１と、基部３１の中心から上方に延びて先細りする軸部３２とを有する。また、雌スナップ２０は、図示しない雄スナップの係合凸部を着脱自在に受け入れる係合凹部２１を規定する円筒状の側部２２及び円板状の底部２３を含み、底部２３の中央にボタン取付部材３０の軸部３２がボタン取付時に通される開口２４が設けられる。更に、下金型４０は、その上面に、ボタン取付部材３０の基部３１を受け入れ可能な支持凹部４１を有し、この支持凹部４１にボタン取付部材３０を載置すると、ボタン取付部材３０の軸部３２の軸線が上金型１０の軸線と合致するようになっている。

次に、ボタン取付用上金型１０を使用しての雌スナップ２０の生地１への取付工程を説明する。図５の取付初期段階において、ボタン取付部材３０の軸部３２が下方から生地１を貫通した後、雌スナップ２０の開口２４を通って、上方の雌スナップ２０の係合凹部２１側へと突き抜けている。次いで、図６に示すように、上金型１０が降下して（下金型４０が上昇する場合もある）その作用底部１１の中心凹部１２にボタン取付部材３０の軸部３２の先端が入り込む。これにより、ボタン取付部材３０の調心が自動的に行われる。ここから上金型１０が更に降下すると、作用底部１１の環状凸部１４が軸部３２へ食い込み、これを先頭に作用底部１１が軸部３２を図７に示すように雌スナップ２０の底部２３の上面（底面）２３’に対して押し潰し（加締め変形後の軸部を３２’で示す）、これにより、雌スナップ２０が生地１上に固定される。図８は、図７のＡ−Ａに沿う変形後の軸部３２’の断面である。この軸部３２の加締め時において、軸部３２は雌スナップ２０の底面２３’上において開口２４を超えて半径方向外側へと拡張し、この外側拡張部分を環状凹部１３が受け入れつつ押し潰すが、この軸部３２’の半径方向外側への拡張は、六つの拡張制限凸部１６の頂角１６ｃに突き当たって、周方向で隣り合う二つの拡張制限凸部１６間の外側凹部１３ａにおいてより大きく半径方向外側に膨出する。なお、拡張制限凸部１６の水平断面が１６ｃを頂角とする略鋭角二等辺三角形状であるため、拡張制限凸部１６の存在が軸部３２の半径方向外側への変形の抵抗にはほとんどならない。また、軸部３２’の上部の形状は作用底部１１の凹凸形状に合致する。このように、加締め後の軸部３２’は外側凹部１３ａに対応する半径方向外側への拡張が大きい部分（３２”）と拡張制限凸部１６に対応する拡張が大きい小さい部分とが周方向に交互になり、その水平断面は六つの花びら片３２”を有する花びら形状となる。従って、例えば、生地１が厚い場合でも、ボタン取付部材３０の軸部３２を各拡張制限凸部１６間に集めて半径方向外側に比較的大きく変形させることができるため、必要なボタン取付力を確保でき、また、生地１が薄い場合でも、軸部３２の半径方向外側への変形が周方向に分散され、加締めに要する力が小さくて済むため、プレス機の負荷が大きくなり過ぎるようなことはない。

図９は、生地１への取付けが完了した雌スナップ２０の平面図であり、該図に示すように、加締められた軸部３２’は雌スナップ２０の底面２３’上において上述したように花びら形状となるが、各花びら片３２”間に多少の軸部３２の変形部分３３が残る。これは、拡張制限凸部１６の底面１６ａが雌スナップ２０の底面２３’に接する直前に軸部３２の変形部分がこれら底面１６ａ、２３’間に入り込むからである。なお、このような花びら片３２”間の変形部分３３を極力小さくするため、図１０に示すように、ボタン取付用上金型５０の拡張制限凸部５６の基準面Ｂから下方への突出高さを図１の上金型１０よりも大きく設定することができる。図１０の上金型５０は拡張制限凸部５６の突出高さ以外は上金型１０と共通する。

図１１は、本発明に係るボタン取付用上金型の別の実施形態を示し、この上金型６０は、環状凹部６３を有し、環状凹部６３の半径方向外側半分の領域に周方向９０度間隔で四つの拡張制限凸部６６と、各拡張制限凸部６６間の四つの外側凹部６３ａとが設けられる。この上金型６０では、図示はしないが、加締め後のボタン取付部材の軸部の花びら形状の花びら片は四つとなる。

以上の実施形態では、上金型１０、５０、６０の作用底部１１が中心部に中心凹部１２（及び環状凸部１４）を有する例を挙げたが、他の実施形態として、作用底部１１の平坦状の中心部に例えばメッシュ状の微細な凹凸を設ける等して、中心部を粗面としたものを挙げることができる。このような中心部の場合、ボタン取付時にボタン取付部材（３０）の軸部（３２）の先端が該中心部に接した際、該先端を滑らないように保持しつつ該先端を潰すことができる。

１ 生地（シート体）
１０、５０、６０ ボタン取付用上金型
１１ 作用底部
１２ 中央凹部
１３、６３ 環状凹部
１３ａ、６３ａ 外側凹部（凹部）
１６、５６、６６ 拡張制限凸部（凸部）
２０ 雌スナップ（ボタン）
２３’ 雌スナップの底面（底部２３の上面）
２４ 開口
３０ ボタン取付部材
３２ 軸部
３２’ 変形後の軸部

Claims (3)

1. ボタン（２０）をボタン取付部材（３０）によってシート体（１）に取り付ける際に、シート体（１）の上方にあるボタン（２０）に対しシート体（１）の下方からシート体（１）を貫通させ次いでボタン（２０）の取付用開口（２４）に通したボタン取付部材（３０）の軸部（３２）を加締めるためのボタン取付用上金型（１０、５０、６０）であって、
   ボタン取付部材（３０）の軸部（３２）を加締めるために該軸部（３２）に押し付ける、外周が円形の作用底部（１１）を備え、
   該作用底部（１１）は、加締め時に軸部（３２）の半径方向外側への拡張を許容する上方に凹となる凹部（１３ａ、６３ａ）と、半径方向外側への拡張を制限する下方に凸となる凸部（１６、５６、６６）とを周方向に交互に有し、前記作用底部（１１）は周縁部（１５）を有し、前記凹部（１３ａ、６３ａ）は、前記周縁部（１５）に沿う水平基準面（Ｂ）から上方に凹となり、前記凸部（１６、５６、６６)は水平基準面（Ｂ）よりも下方に突出するボタン取付用上金型。
2. 前記凸部（１６、５６、６６）は、頂角（１６ｃ）が作用底部（１１）の中心を向く三角形状の水平断面を有する請求項１のボタン取付用上金型。
3. 前記凸部（１６、５６、６６)を三つから八つ設けた請求項１又は２のボタン取付用上金型。

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