JP5538032B2 - 繊維用集束剤 - Google Patents
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しかし、これら熱硬化性樹脂は、硬化後の物性に優れるものの、硬化・脱型に数分から数時間を要するため生産性が低い。
例えば、特許文献1では酸で変性されたポリオレフィンが集束剤に用いられている。この方法は一定の効果はあるものの、繊維と集束剤との親和性が十分ではないため複合材料の曲げ強度は満足できるものではなかった。
また、特許文献2ではポリアリルアミンが集束剤として用いられている。しかしながらこの方法では、ポリアリルアミンとポリオレフィンとの親和性が乏しいため、複合材料の曲げ強度は不十分であった。
すなわち、本発明は、プロピレンを必須成分とした重合体であって、アミノ基を分子内に1個以上有し、酸変性ポリプロピレン系重合体とポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、またはポリアルキレングリコールの末端アミノ基変性物と反応させて得られるポリオレフィン樹脂(A)および水性媒体を含有する水性溶液もしくは水性エマルジョン状であることを特徴とするオレフィン系熱可塑性樹脂強化用繊維の集束剤である。
その結果、複合材料からなる成形品を軽量化することができるので経済性に優れる。
アミノ基の導入量は、アミン価(JIS K7237記載の方法)を測定することにより求められる。
ポリオレフィン樹脂(A)のアミン価は通常、0.5〜500である。0.5未満であると、繊維との親和性が低くなり、500を超えると、マトリックス樹脂であるポリオレフィンとの親和性が低くなる。いずれも複合材料の曲げ強度が十分ではなくなる。アミン価として好ましくは、1〜450であり、さらに好ましくは5〜400である。_
(1)プロピレンを必須成分とする(共)重合体を一旦、窒素などの不活性ガス下で300〜400℃で30分程度、熱減成処理する方法、
(2)プロピレンを必須成分とする(共)重合体を熱減成せずに直接アミノ基を導入する方法が挙げられる。
(3)(1)の熱減成処理で得られる重合体に不飽和ジカルボン酸類を反応させた酸変性ポリプロピレン系重合体を経由する方法
などがある。
なお、(1)の熱減成処理で得られる重合体としては、三洋化成工業株式会社製「ビスコール330−P」、「ビスコール440−P」、「ビスコール550−P」、「ビスコール660−P」、「ビスコール770−P」や、これらの二種以上の混合物を使用することができる。
また、(3)の酸変性ポリプロピレン系重合体としては、三洋化成工業株式会社製「ユーメックス1001」、「ユーメックス1010」、「ユーメックス100TS」、「ユーメックス110TS」や、これら二種以上の混合物を使用することができる。
(1−1)熱減成プロピレン系重合体に活性ガス下、不飽和アミン(アリルアミン、アミノスチレンなど)を150〜250℃で1〜5時間反応させる方法
(1−2)熱減成プロピレン系重合体に不活性ガス下、アクリルアミドを150〜250℃で1〜5時間反応させ、アミド基を水素還元させる方法
(2−1)プロピレン系重合体に不活性ガス下、パーオキサイド存在下、不飽和アミンを150〜300℃で1〜5時間反応させる方法
(2−2)プロピレン系重合体に不活性ガス下、パーオキサイド存在下、アクリルアミドを150〜300℃で1〜5時間反応させ、アミド基を水素還元させる方法
(3−1)酸変性ポリプロピレン系重合体に不活性ガスをバブリングさせて多官能アミンを100〜200℃で1〜5時間反応させる方法
これらのうち、好ましいものは、繊維との親和性の観点から、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレングリコールの末端アミノ基変性物が好ましい。
なお、Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で下記の条件で測定することができる。
(1)装置:Water製AllianceGPCV2000
(2)分離カラム:PLgel10μmMIXED−B
(3)測定温度:135℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:215μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
乳化剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤などの公知の界面活性剤(特開2006−124877号公報、WO2003/37964号公報記載のもの)等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドの少なくとも一方を含む場合、ランダム付加物、ブロック付加物及びこれらの混合付加物が含まれる。
上記乳化剤のうち、非イオン界面活性剤が好ましく、さらに好ましくは高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物である。これら乳化剤は通常、(A)100に対して、0〜50の質量比であり、好ましくは0〜20の質量比であり、さらに好ましくは0〜5の質量比である。(A)100に対する乳化剤の質量比が50より大きいと繊維およびマトリックスとの親和性が低下し、複合材料の曲げ強度が低下する。
防腐剤としては、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類及び第4級アンモニウム塩類イミダゾール類等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール類(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等)、チオジプロピオネート類(ジラウリル 3,3’−チオジプロピオネート等)及びホスファイト類(トリフェニルホスファイト等)等が挙げられる。
マトリックス樹脂として用いられるオレフィン系熱可塑性樹脂としては、前記のプロピレン系重合体と同じ樹脂が用いられる。
これらのうち、好ましいものは、ポリプロピレンまたはプロピレンとエチレンの共重合体である。
マトリックス樹脂/繊維束の重量比が90/10より大きいと十分な複合効果が出ず、曲げ強度が向上しない。また、50/50よりも小さいと成形性が悪化する。
Mn150,000のエチレン/プロピレン共重合体(モル比で78/22)を窒素通気下、有機過酸化物不存在下で、360℃×30分間熱減成してMn29,000、炭素原子1,000個当たりの二重結合数0.5個のポリオレフィンを得た。この98部を冷却管付き4ツ口ガラス反応装置に仕込み、窒素置換した後、窒素通気下に180℃まで加熱昇温し溶融させた。これに無水マレイン酸2部を加え、均一に混合した後、キシレン10部に溶解したジ−t−ブチルパーオキサイド0.3部を滴下し、180℃で3時間撹拌を続けた。その後、減圧下でキシレンを留去し、酸価11のエチレン/プロピレン共重合体の無水マレイン酸変性物を得た。
ここに分子量約1,800のポリエチレンイミン(日本触媒(株)製「エポミンSP−018」)50部を仕込み、窒素流通下、190℃で2時間反応させ、アミノ基で変性された全アミン価390のポリオレフィン樹脂(A−1)150部を得た。
窒素導入管、温度計、排ガス流出管および攪拌棒を備えた1Lの4ツ口ガラス反応装置に無水マレイン酸変性された酸価26のポリプロピレン樹脂(三洋化成工業(株)製「ユーメックス1001」)100部とポリエチレングリコール(Mn=4,000)の両末端アミノプロピルエーテル化物(三洋化成工業(株)製「ケミスタットY−400」)208部を仕込み、窒素流通下、190℃で2時間反応させ、1級アミノ基で変性された全アミン価7のポリオレフィン樹脂(A−2)300部を得た。
攪拌機を備えた1Lの耐圧容器に製造例1で得たポリオレフィン樹脂(A−1)100部と水400部を仕込み、150℃で1時間攪拌し、分散させた。常温まで冷却し、1級アミノ基で変性されたポリオレフィン樹脂の20%水性分散体(X−1)500部を得た。
(A−1)の代わりに(A−2)を使用した他は製造例3と同様にしてアミノ基で変性されたポリオレフィン樹脂の20%水性分散体(X−2)500部を得た。
攪拌機を備えた1Lの耐圧容器に、無水マレイン酸で変性された酸価26のポリプロピレン樹脂(三洋化成工業(株)製「ユーメックス1001」)(A’−1)97部と水酸化カリウム3部と水400部を仕込み、150℃で1時間攪拌し、分散させた。常温まで冷却し、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン樹脂の20%水性分散体(X’−1)500部を得た。
攪拌機を備えた1Lの4ツ口ガラス反応装置に、ポリアリルアミン (日東紡績(株)製、「PAA HCl 10S」、分子量約80,000) (A’−2)を50部、水450部を仕込み、50℃で3時間攪拌し、1級アミンで変性されたポリオレフィン樹脂の10%水性溶液(X’−2)500部を得た。
ポリプロピレン(サンアロマー(株)製「PM771M」)90部と製造例1で得たポリオレフィン樹脂10部を、ホットプレート上で220℃に加熱して溶融混合させ、広げた離型紙上に100μm厚みで流し入れ、冷却することによりシートを作成した。このシートの外観により、ポリプロピレンとの相溶性を判断した。
製造例2で得た(A−2)、比較製造例1で用いた「ユーメックス1001」(A’−1)_、比較製造例2で用いた「PAA HCl 10S」(A’−2)も同様にしてポリプロピレンと溶融混合し、シートの外観で判定した。
○:相分離なし
×:相分離あり
本発明の集束剤(X−1)、(X−2)、および比較製造例1、2で作成した比較のためのアミン価0の集束剤(X’−1)と、アミン価980の集束剤(X’−2)を用いて、これらの集束剤中のポリオレフィン樹脂の含有濃度が1.5重量%になるように水で希釈し、炭素繊維(繊度800tex、フィラメント数12000本)を浸漬して集束剤を含浸させた。これを、150℃で3分間熱風乾燥させて炭素繊維束を作成した。
上記の方法で作成した炭素繊維束100gを、80℃に加熱したキシレン500ml中に30分間浸漬させた後取り出して、25℃のキシレン100mlで洗浄した。この操作を3回繰り返した。この繊維束を105℃で1時間乾燥させ、糸の重量を測定した。
炭素繊維との親和性は以下の式に基づき、炭素繊維表面に残存した集束剤の割合(%)として求めた。炭素繊維表面への集束剤残存率が高いほど炭素繊維との親和性が高い。
但し、Wa:洗浄後の炭素繊維束の重量、Wb:洗浄前の炭素繊維束の重量
集束剤処理した炭素繊維束を250℃で溶融させたポリプロピレン(サンアロマー(株)製 PM771M)に浸漬させ、冷却後長さ30mmに切断した。得られたペレットの炭素繊維/ポリプロピレンの重量比率は、20/80であった。このペレットを熱プレス機を用いて厚さ2mmのシート状に加工し、JIS K7017「繊維強化プラスチック−曲げ特性の求め方」に準じて曲げ強度を測定した。
Claims (4)
- プロピレンを必須成分とした重合体であって、アミノ基を分子内に1個以上有し、酸変性ポリプロピレン系重合体とポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、またはポリアルキレングリコールの末端アミノ基変性物と反応させて得られるポリオレフィン樹脂(A)および水性媒体を含有する水性溶液もしくは水性エマルジョン状であることを特徴とするオレフィン系熱可塑性樹脂強化用繊維の集束剤。
- 該ポリオレフィン樹脂(A)のアミン価が0.5〜500である請求項1記載の集束剤。
- 炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維およびスラッグ繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維を、請求項1または2_に記載の集束剤で処理して得られる繊維束。
- 請求項3に記載の繊維束にマトリックス樹脂を含浸させた後、切断して得られる複合中間体。
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