JP2021025033A - 水性分散体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 集束性に優れる水性分散体を提供する。【解決手段】 水性媒体と、酸変性ポリオレフィン(X)と塩基(C)との(部分)中和物(XC)とを含有してなる水性分散体であって、前記(X)が、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを構成原料として含み、前記(A)がエチレンとα−オレフィン(炭素数3〜8)とを構成単量体として含み、前記エチレンとα−オレフィンとの重量比[エチレン/α−オレフィン]が3/97〜50/50である水性分散体(D)。該酸変性ポリオレフィン(X)の数平均分子量(Mn)は1,000〜60,000であることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、水性分散体に関する。
酸変性ポリオレフィン水性エマルションは、例えば、炭素繊維用集束剤として開発がなされている(例えば、特許文献1)。
特開2015−131889号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術であっても、集束性について十分に満足できるものではなく、改良が求められていた。本発明は、集束性に優れる水性分散体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、水性媒体と、酸変性ポリオレフィン(X)と塩基(C)との(部分)中和物(XC)とを含有してなる水性分散体であって、前記(X)が、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを構成原料として含み、前記(A)がエチレンとα−オレフィン(炭素数3〜8)とを構成単量体として含み、前記エチレンとα−オレフィンとの重量比[エチレン/α−オレフィン]が3/97〜50/50である水性分散体(D);無機繊維を、前記水性分散体で処理した無機繊維束;前記無機繊維束とマトリックス樹脂とを含有してなる複合中間体;前記複合中間体を成形した繊維強化複合材料である。
本発明の水性分散体(D)は、以下の効果を奏する。
(1)本発明の水性分散体は、貯蔵安定性に優れる。
(2)本発明の水性分散体で処理した無機繊維は、集束性に優れる。
(3)本発明の水性分散体を用いて得た無機繊維束は毛羽の発生が少ない。
(4)繊維強化複合材料に優れた機械的強度を与える。
本発明の水性分散体は、水性媒体と、酸変性ポリオレフィン(X)と塩基(C)との(部分)中和物(XC)とを含有してなる水性分散体であって、前記(X)が、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを構成原料として含み、前記(A)がエチレンとα−オレフィン(炭素数3〜8)とを構成単量体として含み、前記エチレンとα−オレフィンとの重量比[エチレン/α−オレフィン]が3/97〜50/50である水性分散体(D)である。
なお、本発明において、「(部分)中和物」は「中和物又は部分中和物」を意味し、一部中和されているものであってもよく、100%中和されているものであってもよいことを意味する。また、「不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)」は、「不飽和モノカルボン酸、不飽和ポリカルボン酸及び不飽和ポリカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種」を意味する。
<炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)>
本発明における炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)は、エチレンとα−オレフィン(炭素数3〜8)とを構成単量体として含む。
前記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン及び1−オクテンが挙げられる。
なお、α−オレフィンは2種又はそれ以上を併用してもよいが、1種が好ましい。
上記α−オレフィンのうち、機械的強度及び工業上の観点から、好ましいのはプロピレンである。
炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の構成単量体であるエチレンとα−オレフィン(炭素数3〜8)との重量比[エチレン/α−オレフィン]は、3/97〜50/50であり、好ましくは5/95〜40/60、さらに好ましくは10/90〜30/70である。
重量比[エチレン/α−オレフィン]が、3/97未満の場合、集束性に劣り、50/50を超えると機械的強度に劣る。
上記重量比[エチレン/α−オレフィン]は、例えば、H−MNRにより算出できる。また、(A)のエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの重量比は、後述する原料となる高分子量ポリオレフィン(A0)のエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの重量比により調整することができる。
前記(A)は、エチレン、α−オレフィン以外にその他の単量体を構成単量体としてもよい。その場合、(A)を構成する全単量体の重量に基づいて、その他の単量体の重量は、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、とくに好ましくは1重量%以下である。
上記その他の単量体としては、例えば、炭素数[Cと略記することがある]9〜30のα−オレフィン(例えば、1−デセン及び1−ドデセン等)、α−オレフィン以外のC4〜30の不飽和単量体(例えば、2−ブテン、イソブテン等のオレフィン並びにスチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド及び酢酸ビニル等のビニル単量体)等が挙げられる。
炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の数平均分子量(Mn)は、機械的強度及び貯蔵安定性の観点から、好ましくは800〜50,000であり、さらに好ましくは1,500〜40,000、とくに好ましくは2,000〜30,000である。
本発明におけるGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)によるMn、重量平均分子量(Mw)の測定条件は以下のとおりである。
装置 :高温ゲルパーミエイションクロマトグラフ
[「Alliance GPC V2000」、Waters(株)製]
検出装置 :屈折率検出器
溶媒 :オルトジクロロベンゼン
基準物質 :ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED−B 2本直列
[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
カラム温度 :135℃
炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)は、炭素数1000個当たりの二重結合数[(A)の分子末端及び/又は分子鎖中の炭素−炭素の二重結合数]は、後述の不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)との反応性及び生産性の観点から、好ましくは0.5〜20個であり、さらに好ましくは1.5〜18個、とくに好ましくは2〜15個である。
ここにおいて、該二重結合数は、(A)のH−NMR(核磁気共鳴)分光法のスペクトルから求めることができる。すなわち、該スペクトル中のピークを帰属し、(A)の4.5〜6ppmにおける二重結合由来の積分値及び(A)由来の積分値から、(A)の二重結合数と(A)の炭素数の相対値を求め、(A)の炭素1,000個当たりの該分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数を算出する。後述の実施例における二重結合数は該方法に従った。
炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)のα−オレフィン単位連鎖部分のアイソタクティシティーは、毛羽及び集束性の観点から、好ましくは1〜50%であり、さらに好ましくは5〜45%であり、とくに好ましくは10〜40%である。
なお、本発明において、α−オレフィン単位連鎖部分とは、α−オレフィンから構成された連鎖を意味する。
上記炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)のα−オレフィン単位連鎖部分のアイソタクティシティーは、後述の酸変性ポリオレフィン(X)のα−オレフィン単位連鎖部分のアイソタクティシティーに、そのまま反映される傾向がある。
上記アイソタクティシティーは、例えば、13C−NMR(核磁気共鳴分光法)を用いて算出することができる。一般的に、側鎖メチル基は両隣(三連子、トリアッド)、その三連子の両隣(五連子、ペンタッド)、更にその五連子の両隣(七連子、ヘプタッド)程度までのメチル基との立体配置(メソ又はラセモ)の影響を受け、異なる化学シフトにピークが観測されることが知られており、立体規則性の評価はペンタッドについて行うことが一般的であり、本発明におけるアイソタクティシティーも、ペンタッドの評価に基づいて算出することができる。
即ち、α−オレフィンがプロピレンの場合、13C−NMRで得られるプロピレン中の側鎖メチル基由来の炭素ピークについて、ペンタッド各ピーク(H)、ペンタッドがメソ構造のみで形成されるアイソタクティックのプロピレン中のメチル基由来のピーク(Ha)とした場合、アイソタクティシティ−は、以下の式で算出される。
アイソタクティシティー(%)=[(Ha)/Σ(H)]×100 (1)
但し、式中、Haはアイソタクチック(ペンタッドがメソ構造のみで形成される)の信号のピーク高さ、Hはペンタッドの各ピーク高さである。
なお、後述の(X)のα−オレフィン単位連鎖部分のアイソタクティシティーについても上記同様に測定できる。
本発明における炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の製造方法は、例えば、高分子量(好ましくはMnが60,000〜400,000、さらに好ましくはMnが80,000〜250,000)ポリオレフィン(A0)を熱減成する方法が挙げられる。
熱減成法には、前記高分子量ポリオレフィン(A0)を(1)有機過酸化物不存在下、例えば300〜450℃で0.5〜10時間、熱減成する方法、及び(2)有機過酸化物[例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン]存在下、例えば180〜300℃で0.5〜10時間、熱減成する方法等が含まれる。
これらのうち工業的な観点及び改質特性の観点から、好ましいのは分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数のより多いものが得やすい(1)の方法である。
上記炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)を構成する単量体であるエチレンとα−オレフィンとの重量比[エチレン/α−オレフィン]は、高分子量ポリオレフィン(A0)の重量比[エチレン/α−オレフィン]が、そのまま維持される傾向がある。
また、熱減成温度が高い、熱減成時間が長いほど、炭素数1000個当たりの二重結合数は、大となる傾向がある。
さらに、高分子量ポリオレフィン(A0)のMnが大、熱減成温度が高い、熱減成時間が長いほど、(A)のMnは小となる傾向がある。
また、高分子量ポリオレフィン(A0)のアイソタクティシティーが大であるほど、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)のアイソタクティシティーが大である傾向がある。
<不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)>
本発明における不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)は、重合性不飽和基を1個有する炭素数[以下、Cと略記することがある]3〜30の(ポリ)カルボン酸(無水物)を含まれる。
該不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)のうち、不飽和モノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸(C3〜24、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸)、脂環含有モノカルボン酸(C6〜24、例えばシクロヘキセンカルボン酸);不飽和ポリ(2〜3又はそれ以上)カルボン酸(無水物)としては、不飽和ジカルボン酸(無水物)[脂肪族ジカルボン酸(無水物)(C4〜24、例えばマレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びこれらの無水物)、脂環含有ジカルボン酸(無水物)(C8〜24、例えばシクロへキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、ビシクロヘプテンジカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸、及びこれらの無水物)等]、不飽和トリカルボン酸(無水物)[脂肪族トリカルボン酸(無水物)(C5〜24、例えばアコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸、及びこれらの無水物)、脂環含有トリカルボン酸(無水物)(C9〜24、例えば4−シクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、4−シクロヘプテン−1,2,3−トリカルボン酸及びこれらの無水物)等]等が挙げられる。(B)は1種単独でも、2種以上併用してもいずれでもよい。
上記(B)のうち、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)との反応性、貯蔵安定性及び機械的強度の観点から好ましいのは、不飽和ジカルボン酸無水物、さらに好ましいのは無水マレイン酸である。
<酸変性ポリオレフィン(X)>
本発明における酸変性ポリオレフィン(X)は、前記炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを構成原料として含む。好ましくは、前記炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを、ラジカル開始剤の不存在下又は存在下で反応させてなる。
炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)との重量比[(A)/(B)]は、集束性及び貯蔵安定性のバランスの観点から、好ましくは80/20〜99.5/0.5、さらに好ましくは90/10〜99/1で反応させてなる。
酸変性ポリオレフィン(X)は、好ましくは、ラジカル開始剤(f)の存在下で、前記炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)及び不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)に、必要により適当な有機溶媒[C3〜18、例えば炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(ジ−、トリ−、及びテトラクロロエタン、ジクロロブタン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジ−t−ブチルケトン等)、エーテル(エチル−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、ジオキサン等)]を加え反応させて製造することができる。
なお、上記ラジカル開始剤(f)は、公知のもの、例えば、アゾ開始剤(アゾビスイソブチロニトリル等)、過酸化物開始剤(ジクミルパーオキサイド等)が挙げられる。
上記ラジカル開始剤(f)のうち、過酸化物開始剤が好ましい。
反応温度は炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)との反応性及び生産性の観点から、好ましくは100〜270℃、さらに好ましくは120〜250℃、とくに好ましくは130〜240℃である。
前記酸変性ポリオレフィン(X)は、好ましくは下記要件(1)〜(3)を満たす。
(1)酸価が、1〜100mgKOH/g
(2)数平均分子量(Mn)が1,000〜60,000
(3)α−オレフィン単位連鎖部分のアイソタクティシティーが1〜50%
要件(1):
酸変性ポリオレフィン(X)の酸価は、貯蔵安定性及び酸変性ポリオレフィン(X)の生産性の観点から、好ましくは1〜100mgKOH/g(以下数値のみを示す)、さらに好ましくは3〜75、とくに好ましくは5〜50である。
ここにおける酸価は、JIS K0070に準じて以下の(i)〜(iii)の手順で測定して得られる値である。
(i)100℃に温度調整したキシレン100gに(X)1gを溶解させる。
(ii)同温度でフェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液[商品名「0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液」、和光純薬(株)製]で滴定を行う。
(iii)滴定に要した水酸化カリウム量をmgに換算して酸価(単位:mgKOH/g)を算出する。
なお、上記測定では1個の酸無水物基は1個のカルボキシル基と等価になる結果が得られる。後述の実施例における酸価は該方法に従った。
また、上記酸価は、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の有する二重結合数、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)の重量、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)の種類及び重量で適宜、調整可能である。
要件(2):
酸変性ポリオレフィン(X)のMnは、機械的強度及び集束性の観点から、好ましくは1,000〜60,000、さらに好ましくは2,000〜50,000、とくに好ましくは3,000〜40,000である。
また、上記酸変性ポリオレフィン(X)のMnは、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)のMn、不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)の種類及び重量、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)との反応の制御により、適宜、調整可能である。
要件(3):
酸変性ポリオレフィン(X)のα−オレフィン単位連鎖部分のアイソタクティシティーは、集束性及び貯蔵安定性の観点から、好ましくは1〜50%であり、さらに好ましくは5〜45%、とくに好ましくは10〜40%である。
また、酸変性ポリオレフィン(X)のα−オレフィン単位連鎖部分のアイソタクティシティーは、前記のとおり、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)、高分子量ポリオレフィン(A0)のアイソタクティシティーにより、適宜、調整可能である。
<(部分)中和物(XC)>
本発明における(部分)中和物(XC)は、前記酸変性ポリオレフィン(X)と後述の塩基(C)との(部分)中和物である。
中和物(XC)の中和率(%)は、貯蔵安定性及び機械的強度の観点から、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは20〜90%、とくに好ましくは30〜80%である。
上記中和率(%)は、酸変性ポリオレフィン(X)のカルボキシル基のモル数に対する塩基(C)のモル数(モル%)を意味し、酸変性ポリオレフィン(X)の酸価とその重量、塩基(C)の塩基価(アルカリ価)(mgKOH/g)とその重量により算出できる。なお、前記酸価は、酸基がカルボン酸無水物基の場合、1個の酸無水物基は1個のカルボキシル基と等価なものとして測定されるため、得られた酸価を2倍して中和率を算出する。
<塩基(C)>
本発明における塩基(C)としては、好ましくは1価の塩基、例えば、モノアミン{例えば、アルキル基の炭素数が1〜10のモノアルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン等)、アルキル基の炭素数がそれぞれ独立に1〜10のジアルキルアミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン等)、アルキル基の炭素数がそれぞれ独立に1〜10のトリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルブチルアミン等)、炭素数1〜30のアミノアルコール(例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノプロパノール等)、複素環式アミン(例えば、モルホリン等)等}、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)挙げられる。
上記塩基(C)のうち、集束性の観点から、好ましいのはモノアミン、さらに好ましいのはトリアルキル(アルキルの炭素数がそれぞれ独立に1〜4)アミン、とくに好ましいのはトリエチルアミンである。
<水性分散体(D)>
本発明の水性分散体(D)は、水性媒体と、酸変性ポリオレフィン(X)と塩基(C)との(部分)中和物(XC)とを含有してなる。すなわち、水性媒体中に、前記(部分)中和物(XC)が分散してなる。すなわち、前記(部分)中和物である変性ポリオレフィンが分散してなる変性ポリオレフィン水性分散体である。水性分散体(D)は、種々の用途に使用可能であるが、とりわけ無機繊維集束剤として、さらには炭素繊維用集束剤として好適に使用できる。
該水性媒体としては、水、水性溶剤(25℃での水への溶解度が10g以上/100g水)が含まれる。
水性溶剤としては、例えばケトン(アセトン、メチルエチルケトン(以下MEKと略記)、ジエチルケトン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)等が挙げられ、水性分散体(D)の生産性の観点から好ましいのはアセトン、MEK及びイソプロパノールである。水性溶剤は1種又は2種以上で使用することができる。
上記水性媒体のうち、作業環境の観点から、好ましいのは水が70%重量以上、さらに好ましいのは水が90重量%以上、とくに好ましいのは水である。
水性分散体(D)は、例えば、以下の方法により製造できる。
(1)酸変性ポリオレフィン(X)、塩基(C)、水性溶剤を仕込み、混合後、撹拌しながら、水を仕込み、転相乳化し、さらに必要により、水性溶剤を留去して水性分散体を得る。
(2)酸変性ポリオレフィン(X)、塩基(C)、水を仕込み、混合した混合物と、水性媒体とを、分散機により分散し、水性分散体を得る。
上記(1)〜(2)のうち、工業上及び貯蔵安定性の観点から、好ましいのは(1)である。
また、上記水性分散体を得る工程において、酸変性ポリオレフィン(X)、塩基(C)以外に、必要により、公知(例えば、特開2015−131889号公報に記載の乳化剤(F)等)のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン界面活性剤を用いてもよい。
水性分散体(D)の重量に基づく(部分)中和物(XC)の重量は、工業上及び貯蔵安定性の観点から、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜45重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。
本発明の水性分散体(D)は、コスト等の観点から、流通時は上記のような高濃度であって、無機繊維束の製造時は低濃度(例えば0.05〜5重量%等)であることが好ましい。すなわち、高濃度で流通することで輸送コスト及び保管コスト等を低下させ、低濃度で繊維を処理することで、優れた成形体強度を与える無機繊維束を製造できる。
また、水性分散体(D)中の(部分)中和物(XC)の体積基準のメジアン径(メジアン粒子径)は、貯蔵安定性及び集束性の観点から、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。該メジアン径は、レーザー回折式粒度分布測定器により測定できる。
<無機繊維束>
本発明の無機繊維束は、無機繊維を、無機繊維集束剤[前記本発明の水性分散体(D)]で処理して得られる。好ましい形態としては、炭素繊維を、炭素繊維集束剤[前記本発明の水性分散体(D)]で処理して得られる炭素繊維束である。
無機繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維等の公知の繊維(国際公開第2003/47830号に記載のもの等)等が挙げられ、成形体強度の観点から、好ましいのは炭素繊維である。これらの繊維は2種以上を併用してもよい。
本発明の無機繊維束は、前記無機繊維を本発明の水性分散体(D)を無機繊維集束剤として用いて処理して得られるものであり、好ましくは無機繊維を3,000〜5万本程度束ねた無機繊維束である。
例えば、炭素繊維束では、炭素繊維を本発明の水性分散体(D)を炭素繊維集束剤として用いて処理して得られるものであり、好ましくは、炭素繊維を3,000〜5万本程度を束ねた炭素繊維束である。
無機繊維の処理方法としては、スプレー法又は浸漬法等が挙げられる。
具体的には、無機繊維集束剤を水性媒体に希釈して、固形分の重量割合が0.05〜5重量%の無機繊維集束剤水性希釈液(S)を調整し、(S)を無機繊維にスプレー又は(S)に無機繊維を浸漬し、乾燥させることで固形分を付着させる方法等が挙げられる。
無機繊維上への水性分散体(D)が含有する固形分の重量である付着量は、無機繊維の重量に基づいて、0.05〜5重量%が好ましく、更に好ましくは0.2〜3.0重量%である。この範囲であると、成形体強度が向上するため好ましい。
ここで、固形分とは、試料1gを130℃45分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
<複合中間体>
本発明の複合中間体は、前記本発明の無機繊維束とマトリックス樹脂とを含有する。マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等)及び熱硬化性樹脂[エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(例えば、特許第3723462号に記載のもの等)、ビニルエステル樹脂及びフェノール樹脂(例えば、特許第3723462号に記載のもの等)等]が挙げられ、好ましいのはポリオレフィン樹脂、好ましいのはポリプロピレン樹脂である。
本発明の複合中間体は、必要により改質剤を含有してもよい。改質剤を含有すると、成形体強度が更に優れる。改質剤としては、酸変性ポリオレフィン(例えば、製品名「ユーメックス1001」三洋化成工業(株)製等)等が挙げられる。
マトリックス樹脂と繊維束との重量比(マトリックス樹脂/繊維束)は、成形体強度等の観点から、10/90〜90/10が好ましく、更に好ましくは20/80〜50/50、特に好ましくは20/80〜40/60である。改質剤を含有する場合、改質剤の含有量(重量%)は、成形体強度等の観点から、マトリックス樹脂に対して0.1〜50が好ましく、更に好ましくは1〜20、特に好ましくは3〜10である。
複合中間体は、熱溶融(好ましい溶融温度:60〜350℃)したマトリックス樹脂、又は溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン及び酢酸エチル等)で希釈したマトリックス樹脂を、無機繊維束に含浸させることで製造できる。溶剤を使用した場合、複合中間体を乾燥させて溶剤を除去することが好ましい。
<繊維強化複合材料>
本発明の繊維強化複合材料は、前記複合中間体を成形して得られる。マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合、複合中間体を加熱成形し、常温で固化することで成形体とすることができる。加熱成形の方法は特に限定されず、例えばフィラメントワイディング成形法(回転するマンドレルに張力をかけながら巻き付け、加熱成形する方法)、プレス成型法(複合中間体シートを積層して加熱成形する方法)、オートクレーブ法(複合中間体シートを型に圧力をかけ押しつけて加熱成形する方法)及びチョップドファイバー又はミルドファイバーをマトリックス樹脂と混合して射出成形する方法等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
<製造例1>
反応容器に、プロピレン85%、エチレン15%を構成単量体とするポリオレフィン(A0−1)[商品名「Vistamaxx6202」、Exxonmobil社製、以下同じ。]1000gを仕込み、液相に窒素通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら380℃で50分間の条件で、熱減成を行い、ポリオレフィン(A−1)を得た。
ポリオレフィン(A−1)のMnは3,900、炭素1,000個当たりの分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数は7.4個、アイソタクティシティーは17%であった。
<製造例2〜6、比較製造例1〜2>
製造例1において、表1にしたがった以外は、製造例1と同様に行い、各炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A−2)〜(A−6)及び(比A−1)を得た。結果を表1に示す。
<製造例11>
反応容器に(A−1)100部、無水マレイン酸(B−1)5部を仕込み、窒素置換後、窒素通気下に180℃まで加熱昇温して均一に溶解させた。ここにラジカル開始剤[ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」、日油(株)製](f−1)2部をキシレン5部に溶解させた溶液を5分間で滴下した後、キシレン還流下1時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)で未反応の無水マレイン酸を留去して、酸変性ポリオレフィン(X−1)を得た。
なお、(X−1)は、酸価は26、Mnは4,500、アイソタクティシティーは14%であった。
<製造例12〜21、比較製造例3〜4>
製造例11において、表2にしたがった以外は、製造例11と同様に行い、各酸変性ポリオレフィン(X−2)〜(X−11)及び(比X−1)〜(比X−2)を得た。結果を表2に示す。
Figure 2021025033
Figure 2021025033
<実施例1>
撹拌装置、加熱冷却装置及び温度計を備えた反応容器に(X−1)100部、トリエチルアミン(C−1)[東京化成工業(株)製]4.5部、テトラヒドロフラン80部を仕込み、攪拌下60℃に温調して均一に溶解させた。水233部を5時間かけて少しずつ投入し、転相乳化を行った。
室温まで冷却後、減圧下でテトラヒドロフランを除去し、固形分が30.0重量%となるように水を加えて、(部分)中和物(XC−1)を含有してなる水性分散体(D−1)を得た。
<実施例2〜14、比較例1〜2>
実施例1において、表3の原料組成(部)にしたがった以外は、実施例1と同様にして、各(部分)中和物(XC)を含有してなる各水性分散体(D)を得た。
得られた各水性分散体(D)について、後述の評価方法によって評価を行った。結果を表3に示す。
なお、平均粒子径(メジアン径)は、レーザー回折式粒度分布測定器「LA−750」[(株)堀場製作所製]を用いて、測定を行った。
<1>水性分散体の貯蔵安定性(40℃)
水性分散体(D)30gを、スクリュー菅瓶[50mL(胴径35mm×高さ78mm)]に入れて、40℃で14日間貯蔵した。貯蔵前後のメジアン径(μm)の測定結果から、下記の算出式により(40℃での貯蔵安定性)を求め、以下の評価基準で評価した。
(40℃での貯蔵安定性)(%)=
(貯蔵後のメジアン径)×100/(貯蔵前のメジアン径)
<評価基準>
☆:105%未満
◎:105%以上、110%未満
○:110%以上、115%未満
△:115%以上、120%未満
×:120%以上
<2>水性分散体の貯蔵安定性(5℃)
水性分散体(D)30gを、スクリュー菅瓶[50mL(胴径35mm×高さ78mm)]に入れて、5℃で14日間貯蔵した。貯蔵前後のメジアン径(μm)の測定結果から、下記の算出式により(5℃での貯蔵安定性)を求め、以下の評価基準で評価した。
(5℃での貯蔵安定性)(%)=
(貯蔵後のメジアン径)×100/(貯蔵前のメジアン径)
<評価基準>
☆:105%未満
◎:105%以上、110%未満
○:110%以上、115%未満
△:115%以上、120%未満
×:120%以上
<3>無機繊維の集束性
水性分散体(D)を固形分が3%となるように、水を加えて希釈して、希釈液を得た。この希釈液に、炭素繊維(フィラメント数=12,000本)を浸漬して含浸させた後、170℃で20秒間乾燥させて炭素繊維束(付着量:1重量%)を得た。炭素繊維束について、JIS L1096−1999(8.19.1A法、45度カンチレバー法)に準じて集束性を以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
☆:16cm以上
◎:15cm以上、16cm未満
○:14cm以上、15cm未満
△:13cm以上、14cm未満
×:13cm未満
<4>無機繊維束の毛羽
直径2mmのクロムめっきされたステンレス棒を、その表面を上記<3>で得られた
炭素繊維束が120°の接触角で接触しながら通過するように、ジグザクに15mm間隔で5本配置した。このステンレス棒間に炭素繊維束をジグザグにかけ、1kg重の張力をかけた。巻き取りロール直前で炭素繊維束を、1kg重の荷重をかけた10cm×10cmのウレタンフォーム2枚で挟み、1m/分の速度で5分間擦過させた。この間にスポンジに付着した毛羽の重量を測定して、以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
☆:0.05mg/m未満
◎:0.05mg/m以上、0.10mg/m未満
○:0.10mg/m以上、0.20mg/m未満
△:0.20mg/m以上、0.30mg/m未満
×:0.30mg/m以上
<5>繊維強化複合材料の曲げ強度
マトリックス樹脂として、「サンアロマーPL500A」[ポリプロピレン、サンアロマー(株)製]95重量部と「ユーメックス1001」[無水マレイン酸変性ポリプロピレン、酸価26、三洋化成工業(株)製]5重量部を溶融混練したものを用い、上記で得られた炭素繊維束が30重量%、マトリックス樹脂が70重量%になるように溶融含浸させ、ペレタイザーで炭素繊維束を5mmに切断した後、200℃で均一混合して、複合中間体得て、さらにプレス成形した繊維強化複合材料について、JIS K7074(炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法)に準じて曲げ強度を測定し、以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
☆:260MPa以上
◎:240MPa以上、260MPa未満
○:220MPa以上、240MPa未満
△:200MPa以上、220MPa未満
×:200MPa未満
Figure 2021025033
表1〜3の結果から、本発明の水性分散体(D)は、比較のものと比べて、貯蔵安定性に優れ、無機繊維の集束性、繊維束の毛羽の発生が少ない。また、繊維強化複合材料に優れた機械的強度を与えることが分かる。
本発明の水性分散体(D)は、種々の用途に使用可能であるが、とりわけ無機繊維集束剤として、さらには炭素繊維用集束剤として好適に使用できる。また、無機繊維集束剤として使用した場合、集束性に優れ、繊維強化複合材料に優れた機械的強度を与えるため、極めて有用である。

Claims (11)

  1. 水性媒体と、酸変性ポリオレフィン(X)と塩基(C)との(部分)中和物(XC)とを含有してなる水性分散体であって、前記(X)が、炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィン(A)と不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)(B)とを構成原料として含み、前記(A)がエチレンとα−オレフィン(炭素数3〜8)とを構成単量体として含み、前記エチレンとα−オレフィンとの重量比[エチレン/α−オレフィン]が3/97〜50/50である水性分散体(D)。
  2. ポリオレフィン(A)の炭素数1,000個当たり炭素−炭素二重結合数が0.5〜20個である請求項1記載の水性分散体。
  3. 酸変性ポリオレフィン(X)の酸価が、1〜100mgKOH/gである請求項1又は2記載の水性分散体。
  4. 酸変性ポリオレフィン(X)の数平均分子量(Mn)が1,000〜60,000である請求項1〜3のいずれか記載の水性分散体。
  5. ポリオレフィン(X)のα−オレフィン単位連鎖部分のアイソタクティシティーが1〜50%である請求項1〜4のいずれか記載の水性分散体。
  6. 塩基(C)が、トリアルキル(アルキルの炭素数がそれぞれ独立に1〜4)アミンである請求項1〜5のいずれか記載の水性分散体。
  7. (部分)中和物(XC)の中和率が10〜100%である請求項1〜6のいずれか記載の水性分散体。
  8. 無機繊維用集束剤である請求項1〜7のいずれか記載の水性分散体。
  9. 無機繊維を、請求項1〜8のいずれか記載の水性分散体(D)で、処理した無機繊維束。
  10. 請求項9記載の無機繊維束とマトリックス樹脂とを含有してなる複合中間体。
  11. 請求項10記載の複合中間体を成形した繊維強化複合材料。
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