JP2005048344A - 炭素繊維束、並びに熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン樹脂との良好な界面接着性を発現できる炭素繊維束を提供すること。
【解決手段】円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差が40nm以上となる複数の皺を表面に有する単繊維を、複数有する炭素繊維束であって、1〜20質量%の不飽和ジカルボン酸類で変性された、極限粘度[η]が0.02〜1.3dl/gのポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤で、該ポリプロピレン系樹脂(A)が全体の0.1〜5質量%となるようにサイジング処理された炭素繊維束とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂の補強材として用いられる炭素繊維束及びその製造方法に関するものである。また、これら炭素繊維束を用いた熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関するものである。
炭素繊維束とは、炭素からなる単繊維が複数まとまった形態をなしているものであり、熱可塑性樹脂等の補強材として用いられるものである。
熱可塑性樹脂の補強材として用いられる場合、一般に、炭素繊維束は、5〜15mm長に切断された形態で供される。この炭素繊維束と熱可塑性樹脂とを混練したペレットを製造するに当たっては、炭素繊維束が定量的に押出機内に供されることが必要であるが、そのためには炭素繊維束の形態安定性が重要である。形態が適切でないと、吐出斑の原因となり得る。また、一定の押出速度が得られなくなるため、ストランド切れが発生し、ペレットの生産性が大幅に低下する恐れもある。
さらに、長繊維ペレットといわれる材料も注目されており、その際は炭素繊維束は連続繊維の形態で、ペレット製造工程に投入されることになる。この場合、炭素繊維束には毛羽やフライが発生し易く、また、バラケ易く、その取り扱いが難しい。
さらに、炭素繊維束を織物にして熱可塑性樹脂を含浸させたシート材料として使用される場合もあり、炭素繊維束の製織性や製織後の織布の取り扱い性なども重要な特性となっている。
以上のような理由により、炭素繊維束の取り扱い性や、炭素繊維束を配合した材料の物性を向上させることを目的に、例えばエポキシ樹脂を主成分とするような、マトリックス樹脂に適合性のあるサイジング剤を、例えば2〜5質量%程度表面に付着させるサイジング処理により収束された炭素繊維束が、一般的に用いられている。
ここで、マトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂などがよく用いられるが、最近、リサイクル性、経済性の面からポリオレフィン系樹脂が用いられるケースが増えてきている。特にポリプロピレン樹脂は、近年注目されている樹脂である。
ポリオレフィン系樹脂は、基本的に無極性であることから、炭素繊維やガラス繊維との界面接着性が非常に悪く、補強材としての機械特性の向上効果が十分に発現しないことが多い。そのため、マトリックス樹脂に酸変性ポリオレフィン系樹脂を添加して接着性を向上させる方法、ポリオレフィン系樹脂とシランカップリング剤より構成するサイジング剤で炭素繊維やガラス繊維をサイジング処理する方法などが知られている。さらには、特開平6−107442号公報(特許文献1)にあるように、酸変性ポリプロピレンを必須成分とするサイジング剤で炭素繊維やガラス繊維などをサイジング処理する方法が知られている。
しかしながら、マトリックス樹脂に酸変性ポリオレフィン系樹脂を添加する方法では、酸変性ポリオレフィン系樹脂を多量に添加する必要があり、リサイクル性、経済性において優れたものとはならない。また、シランカップリング剤を含むサイジング剤でサイジング処理する方法では、炭素繊維の場合は、ガラス繊維に比べて表面に存在する水酸基がそれほど多くないため、界面接着性を向上させる効果がかなり低かった。
また、特許文献1に記載されている酸変性ポリプロピレンを必須成分とするサイジング剤でサイジング処理する方法は、ポリオレフィン系樹脂との比較的良好な界面接着性を実現するが、炭素繊維の場合におけるその効果は十分ではなかった。
特開平6−107442号公報
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン樹脂との良好な界面接着性を発現できる炭素繊維束を提供することを目的とする。
本発明は、
円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差が40nm以上となる複数の皺を表面に有する単繊維を、複数有する炭素繊維束であって、
1〜20質量%の不飽和ジカルボン酸類で変性された、極限粘度[η]が0.02〜1.3dl/gのポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤で、該ポリプロピレン系樹脂(A)が全体の0.1〜5質量%となるようにサイジング処理された炭素繊維束である。
このような本発明の炭素繊維束は、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン樹脂との良好な界面接着性を発現することができる。
また、本発明は、
熱可塑性樹脂と前記炭素繊維束とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記炭素繊維束の含有量が3〜60質量%である熱可塑性樹脂組成物である。
また、本発明は、
前記熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品である。
本発明の炭素繊維束によれば、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン樹脂との良好な界面接着性を発現することができる。
本発明における炭素繊維束は、円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差が40nm以上となる複数の皺を表面に有する単繊維を、複数有するものであり、後述するようなサイジング剤でサイジング処理されたものである。通常は、平均直径5〜8μm程度の単繊維が1000〜50000本程度まとまった形態をなしている。上記の円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差は、単繊維の直径の10%以下であることが好ましい。なお、原料として用いる炭素繊維束を構成する単繊維としては、アクリロニトリル重合体や、石油、石炭からとれるピッチ等を繊維化し炭素化することで得られるものであり、後述するようなサイジング剤でサイジング処理される前の炭素繊維束は、炭素化処理後のもの、湿式電解酸価処理して表面に酸素含有官能基を導入したものや、プレサイジング処理された状態のものも使用できる。
本発明における炭素繊維束の単繊維表面に存在する皺の深さは、円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差によって規定されるものである。単繊維の表面の皺とは、ある方向に1μm以上の長さを有する凹凸の形態を指すものである。またその方向には特に限定はなく、繊維軸方向に平行、あるいは垂直、あるいはある角度を有するものでもよい。炭素繊維束の一般的な製造方法から、通常の炭素繊維表面には繊維軸方向にほぼ平行な皺が存在する。高低差は、走査型原子間力顕微鏡(AFM)を用いて単繊維の表面を走査して得られる表面形状を基に、以下のようにして見積もることができる。
炭素繊維束の単繊維を数本試料台上にのせ、両端を固定し、さらに周囲にドータイトを塗り測定サンプルとする。原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ(株)製、SPI3700/SPA−300(商品名))によりシリコンナイトライド製のカンチレバーを使用し、AFMモードにて単繊維の円周方向に2〜7μmの範囲を、繊維軸方向長さ1μmに渡り少しづつづらしながら繰り返し走査し、得られた測定画像を二次元フーリエ変換にて低周波成分をカットしたのち逆変換を行う。そうして得られた単繊維の曲率を除去した断面の平面画像より、円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差を読み取る。
このような単繊維を複数有する炭素繊維束としては、例えば、三菱レイヨン(株)製TR50S、TR30L、MR35E(以上、商品名)などが挙げられる。
本発明における炭素繊維束の単繊維は、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.03〜1.20であることが好ましい。長径/短径が1.03より小さいと、サイジング処理後サイジング剤により、単繊維同士の接着が強く、樹脂との混合・含浸時の単繊維へのバラケ性が悪くなり、均一に分散した成型品が得られない場合があり、1.20より大きいと、単繊維同士の接着が弱く、バラケ易い繊維束となり、所定長さの切断工程の安定性、切断後の炭素繊維束の形態安定性が悪くなる場合がある。特に好ましくは、1.05〜1.15である。なお、上記の長径/短径の値は、下記のように測定することができる。
内径1mmの塩化ビニル樹脂製のチューブ内に測定用の炭素繊維束を通した後、これをナイフで輪切りにして試料とする。ついで、その試料を、断面が上を向くようにしてSEM試料台に接着し、さらにAuを約10nmの厚さにスパッタリングしてから、走査型電子顕微鏡(PHILIPS社製、XL20(商品名))により、加速電圧7.00kV、作動距離31mmの条件で断面を観察し、単繊維断面の長径および短径を測定する。
本発明における炭素繊維束の単繊維は、ICP発光分析法によって測定されるSi量が500ppm以下であることが好ましい。Si量が500ppmを超えると、マトリックス樹脂との濡れ性や界面接着性が悪くなる場合がある。特に好ましくは、350ppm以下である。なお、上記のSi量は下記のように測定することができる。
炭素繊維束を、風袋既知の白金るつぼに入れ600〜700℃マッフル炉で灰化し、その質量を測定して灰分を求める。次に炭酸ナトリウムを規定量加え、バーナーで溶融し、DI水(イオン交換水)で溶解しながら50mlポリメスフラスコに定容する。本試料をICP発光分析法によりSiの定量を行う。
炭素繊維束を、風袋既知の白金るつぼに入れ600〜700℃マッフル炉で灰化し、その質量を測定して灰分を求める。次に炭酸ナトリウムを規定量加え、バーナーで溶融し、DI水(イオン交換水)で溶解しながら50mlポリメスフラスコに定容する。本試料をICP発光分析法によりSiの定量を行う。
本発明における炭素繊維束は、上述の単繊維の表面に、1〜20質量%の不飽和ジカルボン酸類で変性された、極限粘度[η]が0.02〜1.3dl/gのポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤で、ポリプロピレン系樹脂(A)が全体の0.1〜5質量%付着するようにサイジング処理されたものである。
なお、本発明におけるサイジング処理とは、炭素繊維束にサイジング剤を付着させる処理のことである。このサイジング処理により、炭素繊維束の収束性を高めことが可能であり、同時に、炭素繊維束とマトリックス樹脂との親和性を高めることが可能である。
上記のポリプロピレン系樹脂(A)としては、例えば、数平均分子量500〜20,000の低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)を不飽和ジカルボン酸類(C)で変性したものを使用できる。
低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)としては、プロピレンの単独重合体、並びに、プロピレンと、エチレン、他のα−オレフィン、またはビニル化合物から選ばれる一種以上のモノマーとの共重合体が挙げられる。上記のα−オレフィンとしては、炭素数4〜18のα−オレフィン、例えば1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。また上記のビニル化合物としては、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸など]または(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基はメチル、エチル、ブチルなど)などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」の表現は、メタクリル酸またはアクリル酸を意味するものとする。
低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)の数平均分子量は、通常500〜20,000、好ましくは900〜18,000である。500未満では、前述のポリプロピレン系樹脂(A)が単繊維の表面に付着した炭素繊維束を熱可塑性樹脂に配合した成型品とした場合、そのポリプロピレン系樹脂(A)が成型品表面に浮き出て表面の性質を損なうことがある。また、20,000を超えると、得られる成型品の物性等が不十分な場合がある。
低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)の末端炭素−炭素二重結合の数は、低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)中の炭素原子1000個当たりの平均で、通常0.6〜20個、好ましくは1〜10個である。0.6個未満では、ポリプロピレン系樹脂(A)を水に溶解あるいは分散させた水系サイジング剤溶液の静置安定性が不十分となることがある。20個を越えると、マトリックス樹脂と炭素繊維束の親和性が低下し、成型品の強度が低下することがある。
低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)の製法を例示すると、数平均分子量が50,000〜150,000の高分子量ポリプロピレン系樹脂を、不活性ガス中、300〜450℃で0.5〜10時間熱減成する方法などが挙げられる。
低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)の具体例としては、三洋化成工業(株)製:ビスコール770−P、ビスコール660−P、ビスコール550−P、ビスコール440−P、ビスコール330−P(以上、商品名)等の各製品があげられ、これらの二種以上を用いることもできる。
上記の不飽和ジカルボン酸類としては特に限定されないが、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸、並びに無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸メチルなどのエステル形成性誘導体があげられ、これらの二種以上を用いることもできる。これらのうち好ましいものは無水マレイン酸である。
上記のポリプロピレン系樹脂(A)は、アゾ系ラジカル開始剤(D)の存在下で、上記の低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)中の末端炭素−炭素二重結合に不飽和時カルボン酸類を付加させたものであることが好ましい。このアゾ系ラジカル開始剤としては特に限定されないが、100℃における半減期が1分以上のものが好ましい。具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)、4,4’−アゾビス(シアノバレロ酸)等のものが挙げられる。
低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)と不飽和ジカルボン酸類との反応は、溶液法でも溶融法でも行うことができる。
溶液法の場合は、低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)と不飽和ジカルボン酸類を有機溶媒に加熱溶解し、アゾ系ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより、ポリプロピレン系樹脂(A)を得ることができる。使用する有機溶媒としては炭素数6〜12の炭化水素、ハロゲン化炭化水素などを用いることができる。また反応温度は使用される成分が溶解する温度であればよく、通常は110〜200℃である。
溶融法の場合は、低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)と不飽和ジカルボン酸類をアゾ系ラジカル開始剤と混合し、次いで溶融条件下で混練して反応させることによって、ポリプロピレン系樹脂(A)を得ることができる。この混練の方法は押し出し機、ブラベンダー、ニーダーあるいはバンバリーミキサーなどの各種混練機で行うことができる。混練温度は、使用される低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)の融点以上300℃以下の範囲が好ましい。
これらの製法を用いることで、低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)中の末端炭素−炭素二重結合1個当たり、不飽和ジカルボン酸類が平均1〜2個選択的に付加した、ポリプロピレン系樹脂(A)が得られる。
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(A)の極限粘度[η]は、0.02〜1.3dl/gである。なお、ここで言う極限粘度は、デカリン溶媒中135℃で測定した値である。極限粘度[η]が0.02dl/gより低いと、炭素繊維とマトリックス樹脂の各表面を結ぶカップリング効果の作用が十分でなく、その結果界面接着性の向上が不十分となり、1.3dl/gより高いと、界面相近傍でのポリプロピレン系樹脂(A)のモビリティが小さくなり、カップリング効果の作用が弱くなる。0.03〜1.1dl/gが好ましく、0.05〜1.0dl/gがより好ましい。
本発明におけるサイジング剤は、ポリプロピレン系樹脂(A)が40質量%以上、好ましくは60質量%以上含まれるものである。
本発明の炭素繊維束は、上述のようなポリプロピレン系樹脂(A)が全体の0.1〜5質量%付着したものである。0.1質量%未満では、サイジング剤成分が不足となり、期待される性能が発揮しなくなり、5質量%より多いと、界面相に過剰な樹脂(A)が存在し、カップリング効果が働かなくなり、さらに収束過剰のため、マトリックス樹脂との濡れ性も低下することになる。0.4〜4.5質量%が好ましく、0.8〜4質量%がより好ましい。
このようなポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤で炭素繊維束をサイジング処理する際、通常、ポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤が水に溶解あるいは分散した状態の水系サイジング剤溶液を用いて、炭素繊維束をサイジング処理する。工業的な生産を考えると、安全面、経済面から、ポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤が水に分散した水性エマルションを用いて処理することが好ましい。その場合、構成成分を水に均一に分散させる目的で、界面活性剤が乳化剤として用いられる。この時の乳化剤としては、特に限定されるものではなく、アニオン系、カチオン系、ノニオン系乳化剤等を用いることができる。中でも、アニオン系又はノニオン系乳化剤が、乳化性能と低価格のため好ましい。また、後述するように、水性エマルションにシランカップリング剤を添加する場合、シランカップリング剤の水中での安定性、更に成形品の物性安定性の点からノニオン系乳化剤が特に好ましい。
ノニオン系乳化剤としては、ポリエチレングリコール型(高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物など)、多価アルコール型(グリセリンの脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドなど)などの乳化剤が挙げられる。ただし、ノニオン系乳化剤のHLBは通常8〜20のものを用いる。HLBがこの範囲外のノニオン系乳化剤を用いると、安定な水性エマルションが得られないことがある。
アニオン系乳化剤としては、カルボン酸塩型(オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウムなど)、スルホン酸塩型(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなど)、硫酸エステル塩型(ラウリル硫酸ナトリウムなど)などが挙げられる。中和剤としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、モノラウリルアミン、トリメチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、アンモニアなどが挙げられる。還元剤としては、亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
乳化方法としては、攪拌翼を備えたバッチを用いる方法、ボールミルを用いる方法、振盪器を用いる方法、ガウリンホモジナイザなどの高せん断乳化機を用いる方法などが挙げられる。乳化温度は、用いるポリプロピレン系樹脂(A)の軟化温度より高く設定することで、十分な安定性を有する水性エマルションが得られる。乳化に要する時間は、通常数分〜2時間である。乳化後は、室温まで冷却を行うことにより、水性エマルションが得られる。水性エマルションの濃度は特に限定はないが、ポリプロピレン系樹脂(A)の濃度で5〜60質量%となるように水で希釈される。
ポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤が分散した水性エマルションには、必要に応じて、他のサイジング剤(例えば、酢酸ビニル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルションなど)や、シランカップリング剤、帯電防止剤と併用することができ、さらに潤滑剤や平滑剤とも併用することができる。
シランカップリング剤としては、分子中にエポキシ基、ビニル基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基、直鎖アルキル基を有するシランカップリング剤などが使用できる。シランカップリング剤は1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。シランカップリング剤の中でも、特に、分子中にエポキシ基、アミノ基、直鎖アルキル基を有するエポキシシラン系、アミノシラン系、直鎖アルキルシラン系が好適である。エポキシシラン系シランカップリング剤のエポキシ基としては、グリシジル基、脂環式エポキシ基等が好適であり、かかるシランカップリング剤としては、日本ユニカー(株)製A−186、A−187、AZ−6137、AZ−6165(以上、商品名)等が具体的に挙げられる。アミノシラン系シランカップリング剤としては、1級アミン、2級アミン或いはその双方を有するものが挙げられ、日本ユニカー(株)製A−1100、A−1110、A−1120、Y−9669、A―1160(以上、商品名)等が具体的に挙げられる。また、直鎖アルキルシラン系としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基を有するものが挙げられ、日本ユニカー(株)製AZ−6171、AZ―6177(以上、商品名)、信越シリコーン(株)製KBM−3103C(商品名)等が具体的に挙げられる。
シランカップリング剤の量は、ポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤が分散した水性エマルションの水以外の総成分量(総固形分量)100質量%に対して、5質量%以下、好ましくは4質量%以下であることが望ましい。添加量が5質量%を超えると、シランカップリング剤の架橋が進行し、炭素繊維束が硬く脆弱となり、縦割れが発生しやすくなり、更に界面接着性を低下させる原因となる恐れがある。
上記のような、ポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤が水に溶解あるいは分散した状態の水系サイジング剤溶液を用いて、サイジング処理する方法としては、例えば、水系サイジング剤溶液中にロールの一部を浸漬させ表面転写した後、このロールに単繊維からなる炭素繊維束を接触させて水系サイジング剤溶液を付着させるタッチロール方式、単繊維からなる炭素繊維束を直接水系サイジング剤溶液中に浸漬させ、その後必要に応じてニップロールを通過させて水系サイジング剤溶液の付着量を制御する浸漬方式などが挙げられる。中でもタッチロール方式が好適であり、さらに炭素繊維束を複数のタッチロールに接触させ複数段階で水系サイジング剤溶液を付着させる方式が、ポリプロピレン系樹脂(A)の付着量や束幅制御の観点から特に好適である。その後、必要に応じて、予備乾燥、熱処理を行う。詳細な条件は、詳細な条件は、炭素繊維束が所望の特性を発現するように、適宜選択すれば良い。
以上のような本発明の炭素繊維束は、連続繊維の状態でも、所定の長さに切断された状態でも良い。
また、所定の長さに切断された状態の炭素繊維束は、目付が0.4〜15g/mであることが好ましい。炭素繊維束の目付が0.4g/m未満では、経済的に不都合であり、更にペレット製造工程での炭素繊維束の導入工程通過性を悪化させる場合がある。一方、15g/mを越える場合は、水系サイジング剤溶液の炭素繊維束への浸透が完全に行わせることが難しくなり、形状の安定した炭素繊維束を製造することが難しい場合がある。より好ましくは0.6〜10g/m、特に好ましくは0.8〜8g/mである。
炭素繊維束の切断方式としては、特に制限はないが、ロータリーカッター方式等が好適である。また、切断長(炭素繊維束の長さ)は、2〜30mm、好ましくは4〜24mm、より好ましくは6〜20mmとすることが望ましい。ロータリーカッター方式では、用いる装置の歯先間隔を調節することにより切断長を調整することができる。
ロータリーカッター方式での切断に際しては、炭素繊維束厚みが厚くなり過ぎると切り損じを生じたり、ロータに炭素繊維束が巻き付いて操作不能になったり、切断後の形状不良が生じたりするので、炭素繊維束厚みは薄い方が有利である。また、炭素繊維束の目付が1.5g/mを超える太目付の炭素繊維束の場合、炭素繊維束をできるだけ開繊させ、炭素繊維束内部まで水系サイジング剤溶液を均一に付着させることが重要である。従って、ガイドロール、コームガイド、スプレッダーバー等を用いて、炭素繊維束の幅/厚みが大きくなるように制御しながら、かつ炭素繊維束には実質的に撚りの無いように走行させることが好ましい。
ただし、所定長さに切断された炭素繊維束は、幅が広くなると繊維配向方向に沿って縦割れし易くなり、製造中や製造後の使用時にその形態を維持することが困難な傾向にある。このことは特に太目付の炭素繊維束において顕著である。したがって、幅/厚みが3〜10になるように、ロータリーカッターに付随するガイドの幅を調節し、炭素繊維束の幅を制御することが好ましい。幅/厚みが3以上であると、ロータリーカッターでの切断工程でのミスカットの発生を抑制することできる。また、幅/厚みが10を超えると、切断時のミスカットが発生し難くなるものの、厚みが薄くなりすぎて切断後に炭素繊維束の縦割れが生じ易くなり、後の工程通過性が悪化する恐れがある。また、太目付の炭素繊維束を汎用タイプ並みに薄く広げて切断するには、同時に処理可能な炭素繊維本数が減少し、その減少分を補うためにカッターの幅広化或いは処理速度の高速化等必要となり、設備面の負荷や生産効率の低下を招く恐れがある。
この切断は、炭素繊維束に水系サイジング剤溶液を付着させた後、湿潤状態にある炭素繊維束に対して行うのが好ましい。これは、水系サイジング剤溶液の表面張力による収束効果と、切断時の衝撃性のせん断力を湿潤状態の柔軟な状態で吸収して繊維割れを防ぐことを利用したものである。この切断時においては、炭素繊維束の含水率が20〜60質量%、特に25〜50質量%の湿潤状態であると好ましい。含水率が20質量%未満では、切断時に繊維割れや毛羽が発生しやすくなる恐れがある。また、含水率が60質量%を超えると、単繊維表面に水が過剰に付着した状態となるため、水の表面張力により単繊維が丸く収束し、切断時にミスカットや刃の目詰まりの発生頻度が高くなる恐れがある。また、必要に応じて、含水率を調整するために、切断前に水や水系サイジング剤溶液を用いて、追加処理を行ってもよい。
切断後に炭素繊維束を乾燥する方法としては、熱風乾燥法等が挙げられる。また、熱風乾燥法を採用する場合、水分の蒸発効率を向上させると共に、炭素繊維束同士の接着を防止するために、振動させた状態で移送しながら乾燥を行うことが好ましい。なお、乾燥時の振動が強すぎると、繊維割れが発生し易くなり、束幅/厚みが3未満の炭素繊維束の割合が多くなる。また、振動が弱すぎると、繊維同士の擬似接着が起こり、団子状になってしまう。従って、適切な振動条件に設定する必要がある。また、細分化された炭素繊維束を振るい落とすだけでなく、熱風の通りをよくするために、メッシュ振動板上を移送させながら、振動乾燥することがより好ましい。また、乾燥効率を向上させるために、赤外線放射等の補助手段を併用することもできる。
上記のような本発明の炭素繊維束は、マトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂とを混練することにより、熱可塑性樹脂組成物とすることができる。炭素繊維束の熱可塑性樹脂への混練に際しては、連続あるいは所定の長さに切断された状態の炭素繊維束を押出機に供給し、熱可塑性樹脂と混練してペレットとすることが好ましい。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法等の公知の成形法により成形することにより、任意の形状の成形品(炭素繊維強化複合成形品)を提供することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を調製するに当たっては、本発明の炭素繊維束を好ましくは3〜60質量%、より好ましくは5〜50質量%配合する。炭素繊維束を3質量%以上配合することにより成形品の機械物性向上効果が顕著に発現する。また、60質量%を超えると、それ以上の著しい向上効果が得られないと共に、ペレット製造時の工程安定性が低下し、またペレットに斑等が生じ、成形品の品質安定性が悪化する恐れがある。
本発明でマトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、炭素繊維束の単繊維表面に付着したポリプロピレン系樹脂(A)との親和性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が最適であり、他にはポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリエーテルサルフィン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらのアロイ系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特にポリオレフィン系樹脂をマトリックス樹脂として用いる場合、機械特性をより向上させる目的で、各種の変性ポリオレフィン樹脂を少量添加してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品は、機械物性に優れると共に、生産性、経済性に優れる。このような成型品は、車輌用部品、携帯用電化製品のハウジング部品、一般家電製品のハウジング部品等に好適である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、本実施例における各種特性の測定、評価は、以下の方法により行った。
「炭素繊維束の単繊維表面の皺の深さ」
本発明における炭素繊維束の単繊維表面に存在する皺の深さは、円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差によって規定される。高低差は、走査型原子間力顕微鏡(AFM)を用いて単繊維の表面を走査して得られる表面形状を基に測定した。具体的には以下の通りである。
炭素繊維束の単繊維を数本試料台上にのせ、両端を固定し、さらに周囲にドータイトを塗り測定サンプルとする。原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製、SPI3700/SPA−300(商品名))によりシリコンナイトライド製のカンチレバーを使用し、AFMモードにて単繊維の円周方向に2〜7μmの範囲を、繊維軸方向長さ1μmに渡り少しづつづらしながら繰り返し走査し、得られた測定画像を二次元フーリエ変換にて低周波成分をカットしたのち逆変換を行う。そうして得られた単繊維の曲率を除去した断面の平面画像より、円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差を読み取って評価した。
「炭素繊維束の単繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)」
内径1mmの塩化ビニル樹脂製のチューブ内に測定用の炭素繊維束を通した後、これをナイフで輪切りにして試料とする。ついで、その試料を、断面が上を向くようにしてSEM試料台に接着し、さらにAuを約10nmの厚さにスパッタリングしてから、走査型電子顕微鏡(PHILIPS社製、XL20(商品名))により、加速電圧7.00kV、作動距離31mmの条件で断面を観察し、単繊維断面の長径および短径を測定することで評価した。
「ストランド強度、弾性率」
JIS R7601に準拠して評価した。
「プレサイジング剤の付着量」
JIS R7601に準拠して、メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法によりプレサイジング処理後の炭素繊維束のサイジング剤付着量を測定した。
「サイジング剤、ポリプロピレン系樹脂(A)の付着量」
SACMA法 SRM14−90に準拠し熱分解法により、サイジング処理後における炭素繊維束のサイジング剤合計の付着量を測定し、プレサイジング剤の付着量に対する増加分をサイジング剤の付着量として算出した。ポリプロピレン系樹脂(A)の付着量は、サイジング剤の付着量と、サイジング剤に含まれるポリプロピレン系樹脂(A)の含有量より計算より求めた。
「含水量」
所定長さに切断された炭素繊維束を、110℃1時間乾燥させ、その乾燥前後の質量変化分を含水量とした。
「Si量」
炭素繊維束を、風袋既知の白金るつぼに入れ600〜700℃マッフル炉で灰化し、その質量を測定して灰分を求める。次に炭酸ナトリウムを規定量加え、バーナーで溶融し、DI水(イオン交換水)で溶解しながら50mlポリメスフラスコに定容する。本試料をICP発光分析法によりSiの定量を行う。
「成型品の機械特性の評価」
引張り破断強度はJIS K7113、曲げ強さ、弾性率はJIS K7203、アイゾット強度(1/8”ノッチ、1/8”反ノッチ)はASTM D256に準拠し評価した。なお、これらの測定は室温で行った。
「極限粘度[η]の測定」
デカリン溶媒中135℃で測定した。
(炭素繊維束(原料)の調製)
アクリロニトリル系重合体をジメチルアセトアミドに溶解した紡糸原液を、濃度50〜70質量%、温度30〜50℃のジメチルアセトアミド水溶液からなる第1凝固浴中に吐出して凝固糸とした。次いで、その凝固糸を濃度50〜70質量%、温度30〜50℃のジメチルアセトアミド水溶液からなる第2凝固浴中にて所定量の延伸を施し、さらに4倍以上の湿熱延伸を行い、炭素繊維前駆体繊維束を得た。炭素繊維前駆体繊維束の断面の長径と短径との比、表面に形成される皺の深さは、第2凝固浴の濃度および温度、さらに延伸条件を変更することにより調整することができる。その後、炭素繊維前駆体繊維束の安定性維持を目的に、シリコン系の油剤を付着させた。
ついで、複数の炭素繊維前駆体繊維束を平行に揃えた状態で耐炎化炉に導入し、200〜300℃に加熱された空気などの酸化性気体を炭素繊維前駆体繊維束に吹き付けることによって、炭素繊維前駆体繊維束を耐炎化して耐炎繊維束を得る。ついで、この耐炎繊維束を炭素化炉に導入し、不活性雰囲気中、1200〜2000℃の温度で炭素化して炭素繊維束(原料)を得た。その後、樹脂との親和性を向上させる目的で、湿式電解酸化処理により炭素繊維束(原料)の表面に酸素含有官能基を導入した。
さらに、エポキシ樹脂からなるサイジング剤によりプレサイジング処理を施した。
製造した炭素繊維束(原料)の特性を表1に示した。
Figure 2005048344
(酸変性されたポリプロピレン系樹脂(A)[水性エマルション]の調製)
窒素導入管、温度計、排ガス流出管および攪拌棒を備えた3Lの4ツ口コルベンにポリプロピレン樹脂(ホモポリマー)1,500gを窒素雰囲気下で仕込んだ。以降熱減成終了時までコルベン内に窒素は通気し続けた。次にマントルヒーターにて加熱・昇温し攪拌しながら350℃で1.5時間熱減成を行い、200℃まで冷却後コルベンから取り出した。得られた低分子量ポリプロピレン樹脂(B)の数平均分子量は5,000であった。また、得られた低分子量ポリプロピレン樹脂(B)の分子内末端二重結合数の平均を、核磁気共鳴スペクトル法(1H−NMR法)における水素の積分比から求めた結果、炭素原子1000個あたりの平均値で1.4個であった。
その後、低分子量ポリプロピレン樹脂(B)400gと無水マレイン酸9.4gを窒素導入管、滴下ロート、温度計、冷却管および攪拌棒を備えた1Lの4ツ口コルベンに仕込んだ。コルベン内に窒素を通気しながらマントルヒーターで加熱・昇温したところ、195℃で融解した。次いで、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)1.41gを滴下ロートより添加し1時間反応させた。反応後温度を195℃に保持した状態で系内を減圧にし、5mmHg減圧下で1時間脱気処理し、160℃まで冷却後、酸変性されたポリプロピレン系樹脂(A)を取り出した。得られた酸変性されたポリプロピレン系樹脂(A)は、核磁気共鳴スペクトル法(1H−NMR法)により測定した結果、末端二重結合に無水マレイン酸を2モル有していた。また、得られた酸変性されたポリプロピレン系樹脂(A)には、核磁気共鳴スペクトル法(13C−NMR法)により無水マレイン酸が末端に選択的に付加していることが確認できた。また、酸変性されたポリプロピレン系樹脂(A)の極限粘度[η]は、0.17dl/gであった。
2Lのオートクレーブに上記の酸変性されたポリプロピレン系樹脂(A)560g、ノニルフェノールエチレンオキサイド(EO)11モル付加物(HLB:14)151g、48%水酸化カリウム水溶液60g、亜硫酸ナトリウム8.5g、水720gを入れ、150℃に昇温し、1時間攪拌を行った。次に、室温まで冷却した後、乳液固形成分を測定し、必要量の水を加えることで、固形分40質量%の水性エマルションとなる酸変成されたポリプロピレン系樹脂(A)を得た。
<炭素繊維束I〜IXの製造>
表4、5に示す炭素繊維束(原料)を開繊バーと炭素繊維幅規制バーとを複数回交互に通過させ、所定の炭素繊維幅とした後、所定のサイジング剤でのサイジング処理を行った。サイジング剤としては、上記の酸変成されたポリプロピレン系樹脂(A)の水性エマルジョン、あるいは表2に示す化合物を用いて表3に示す割合で配合して調製したサイジング剤A〜Dのうち、表4、5に示すものを用いた。なお、水の量を調整し、サイジング剤濃度を表4、5に示すように調整した水系エマルションを使用した。また、水系エマルションを付着させる方式としては、下記のタッチロール方式を採用した。
タッチロール方式
水系エマルションの槽にタッチロールの一部を浸漬し、タッチロール表面に転写した後、タッチロール表面に炭素繊維束(原料)を接触させることにより水系エマルションを付着させた。なお、2個のタッチロールを用い、炭素繊維束(原料)の表裏2面に対して実施した。
次に、ロータリーカッターを用いて炭素繊維束を所定長さ(6mm)に切断し、最後に、150℃に設定された床振動式熱風乾燥炉に連続的に投入し乾燥させることにより、炭素繊維束I〜IXを得た。
なお、用いた水系エマルションはいずれも乳化安定性が良好であり、サイジング処理時の炭素繊維束の通過性および切断工程とも良好であった。乾燥後、いずれの炭素繊維束にも割れは発生しなかった。製造した炭素繊維束I〜IXの評価結果を表4、5に示す。
Figure 2005048344
Figure 2005048344
なお、表3中の数字は、各成分中の水を除いた成分としての質量%を示す。
Figure 2005048344
Figure 2005048344
(実施例1〜5、比較例1〜4)
<熱可塑性樹脂組成物のペレット及び成形品の製造>
ポリプロピレン樹脂(EPR共重合ポリプロピレン、商品名:J−5051HP、出光石油化学(株)製)68質量部と、変成ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸共重合ポリプロピレンマスターバッチP503、三菱化学(株)製)12質量部とを250℃に加熱した二軸押出機に供給し、サイドフィーダーより表6、7に示した炭素繊維束20質量部を供給し混練して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。なお、いずれにおいても、二軸押出機内での滞留はみられなかった。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを20mmφ、35オンスのスクリューインライン成形機で、シリンダー温度250℃、金型温度60℃の条件で成型品を作製した。得られた成形品の機械特性を表6、7に示す。実施例1〜5の成型品は比較例1〜4の成型品に比べて、引張り破断強度、曲げ強さ、アイゾット強度に優れており、本発明の炭素繊維束は良好な界面接着性を有していることが分かった。
Figure 2005048344
Figure 2005048344
(実施例6、比較例5、6)
<熱可塑性樹脂組成物のペレット及び成形品の製造>
ポリプロピレン樹脂(EPR共重合ポリプロピレン、商品名:J−5051HP、出光石油化学(株)製)80質量部を250℃に加熱した二軸押出機に供給し、サイドフィーダーより表8に示した炭素繊維束20質量部を供給し混練して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。なお、いずれにおいても、二軸押出機内での滞留はみられなかった。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを20mmφ、35オンスのスクリューインライン成形機で、シリンダー温度250℃、金型温度60℃の条件で成型品を作製した。得られた成形品の機械特性を表8に示す。実施例6の成型品は比較例5、6の成型品に比べて、引張り破断強度、曲げ強さ、アイゾット強度に優れており、本発明の炭素繊維束は良好な界面接着性を有していることが分かった。
Figure 2005048344

Claims (8)

  1. 円周長さ2μm×繊維軸方向長さ1μmの領域での最高部と最低部の高低差が40nm以上となる複数の皺を表面に有する単繊維を、複数有する炭素繊維束であって、
    1〜20質量%の不飽和ジカルボン酸類で変性された、極限粘度[η]が0.02〜1.3dl/gのポリプロピレン系樹脂(A)を含むサイジング剤で、該ポリプロピレン系樹脂(A)が全体の0.1〜5質量%となるようにサイジング処理された炭素繊維束。
  2. 前記単繊維の、断面の長径と短径との比が1.03〜1.20、かつ、ICP発光分析法によって測定されるSi量が500ppm以下である請求項1に記載の炭素繊維束。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂(A)が、数平均分子量が500〜20,000の低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)中の末端炭素−炭素二重結合に不飽和ジカルボン酸類を付加させたものである請求項1または2に記載の炭素繊維束。
  4. 前記低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)中の末端炭素−炭素二重結合の数が、前記低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)中の炭素原子1000個当たりの平均値で0.6〜20個である請求項3に記載の炭素繊維束。
  5. 前記ポリプロピレン系樹脂(A)が、アゾ系ラジカル開始剤の存在下で、前記低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)中の末端炭素−炭素二重結合に不飽和ジカルボン酸類を付加させたものである請求項3または4に記載の炭素繊維束。
  6. 熱可塑性樹脂と、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維束とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記炭素繊維束の含有量が3〜60質量%である熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 請求項6または7に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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