JP2020158921A - 強化繊維束及び成形材料 - Google Patents

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舜也 水野
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真子 吉田
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Yuichi Ito
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Abstract

【課題】積層化した際の層間強度及び毛羽立ちの抑制の点で優れた成形材料を提供し得る強化繊維束、この強化繊維束とマトリックス樹脂を含む成形材料、及び、この成形材料を含む成形体を提供する。【解決手段】プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、強化繊維(C)と、脂肪族カルボン酸塩(F)と、脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤、高級脂肪酸、天然油脂、鉱物油及びSi含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(G)とを含み、プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量がプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量よりも高い強化繊維束、この強化繊維束とマトリックス樹脂を含む成形材料、及び、この成形材料を含む成形体この強化繊維束の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、積層化した際の層間強度及び毛羽立ちの抑制の点で優れた成形材料を提供し得る強化繊維束、この強化繊維束とマトリックス樹脂を含む積層化した際の層間強度及び毛羽立ちの抑制の点で優れた成形材料、及び、この成形材料を含む成形体に関する。
強化繊維を熱可塑性樹脂と複合させた繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、力学特性や寸法安定性に優れる。したがって、例えばパイプ、圧力容器、自動車、航空機、電気・電子機器、玩具、家電製品などの幅広い分野で使用されている。強化繊維の一種である炭素繊維は、軽量、高強度、高剛性であることから最近注目されている。
一方、炭化水素系の樹脂であるポリオレフィン系樹脂は、一般的に安価であり、加工性や耐薬品性に優れ、焼却しても有害ガスを発生させ難い、リサイクル性に優れる等の優れた特性を持つ。したがって、ポリオレフィン系樹脂は繊維強化樹脂のマトリックス樹脂として注目されている。中でも、安価で、比重が小さく、耐熱性が比較的高く、成形性、耐薬品性などの特性にも優れるポリプロピレン樹脂が注目されている。
ところで、炭素繊維を含む樹脂組成物をテープワインディング成形法に用いた例は少ない。テープワインディング成形法は、比較的複雑な形状の成形体にも適用できるので、例えばパイプや圧力容器の外部補強層の形成に有用である(例えば特許文献1参照)。特に形状の自由度の高いテープワインディング成形法として、レーザー融着法を用いた成形法がある。
例えば特許文献2には、レーザー融着法を用いたテープワインディング成形法に適した繊維強化樹脂組成物が開示されている。この成形材料は、特定のプロピレン系樹脂を含む繊維処理剤により処理された強化繊維束を含む繊維強化樹脂組成物であり、機械物性及び取扱い性に優れている。
特開平9−257193号公報 国際公開第2017/183672号
テープワインディング成形法においては、繊維強化樹脂組成物からなるテープを複数積層して所望形状の成形体を得るのが一般的である。また、テープワインディング成形法以外の各種成形法においても、繊維強化樹脂組成物からなる複数のテープやシートを積層化する場合がある。そして、先に説明した特許文献2に記載の繊維強化樹脂組成物は、他の従来の繊維強化樹脂組成物と比較して積層化した際の層間強度にも優れているが、本発明者らは積層化した際の層間強度をさらに向上する必要性に着目した。
また、従来の繊維強化樹脂組成物からなるテープは、切断加工した際又は引き裂かれた際にその切断端面から強化繊維が飛び出して毛羽が発生する場合がある。そして、先に説明した特許文献2に記載の繊維強化樹脂組成物は、他の従来の繊維強化樹脂組成物と比較して毛羽立ちの抑制の点でも優れているが、本発明者らは毛羽立ちをさらに抑制する必要性にも着目した。
すなわち本発明の目的は、積層化した際の層間強度及び毛羽立ちの抑制の点で優れた成形材料を提供し得る強化繊維束、この強化繊維束とマトリックス樹脂を含む成形材料、及び、この成形材料を含む成形体を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、繊維処理剤に特定の化合物を添加することが非常に効果的であることを見出し、本発明を完成した。即ち本発明は以下の事項により特定される。
[1]プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、強化繊維(C)と、脂肪族カルボン酸塩(F)と、脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤、高級脂肪酸、天然油脂、鉱物油及びSi含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(G)とを含み、
プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量がプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量よりも高い強化繊維束。
[2]脂肪族カルボン酸塩(F)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜60質量部である[1]に記載の強化繊維束。
[3]化合物(G)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部である[1]又は[2]に記載の強化繊維束。
[4]化合物(G)がスルホコハク酸塩を含む[1]〜[3]の何れかに記載の強化繊維束。
[5]化合物(G)がSi含有化合物を含む[1]〜[3]の何れかに記載の強化繊維束。
[6]プロピレン系樹脂(A)は、重量平均分子量が15万以上の成分(A−1)70質量%を超え100質量%以下と、重量平均分子量が15万未満の成分(A−2)30質量%未満と(但し、成分(A−1)及び(A−2)の合計は100質量%である。)を含み、
プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して、プロピレン系樹脂(B)の量は3〜50質量部であり、
プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は強化繊維束全体の0.3〜5質量%である[1]〜[5]5の何れかに記載の強化繊維束。
[7]成分(A−1)が、周期律表の15〜17族元素を0.0003〜5質量%含む[6]に記載の強化繊維束。
[8]成分(A−1)が無水マレイン酸構造を含む[6]又は[7]に記載の強化繊維束。
[9]プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は強化繊維束全体の0.3〜3質量%である[1]〜[8]の何れかに記載の強化繊維束。
[10]プロピレン系樹脂(A)のショアA硬度が60〜90であるか、又は、ショアD硬度が45〜65である[1]〜[9]の何れかに記載の強化繊維束。
[11][1]〜[10]の何れかに記載の強化繊維束1〜80質量部と、
熱可塑性であるマトリックス樹脂(M)20〜99質量部と
(但し、前記強化繊維束及びマトリックス樹脂(M)の合計は100質量部である。)
を含む成形材料。
[12][1]〜[10]の何れかに記載の強化繊維束10〜70質量部と、
プロピレン系樹脂(D)30〜90質量部と
(但し、前記強化繊維束及びプロピレン系樹脂(D)の合計は100質量部である。)
を含み、
プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)、プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mw(B)及びプロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量Mw(D)が、以下の関係を満たす成形材料。
Mw(A)>Mw(D)>Mw(B)
[13]波長が300〜3000μmの光を吸収する色素(P)5質量部以下(但し、成分(I)及び成分(C)の合計は100質量部である。)をさらに含む[11]又は[12]に記載の成形材料。
[14][1]〜[10]の何れかに記載の強化繊維束を含み、且つ、
炭素原子数2〜20のオレフィン由来単位を含み、融点及び/又はガラス転移温度が50〜300℃のカルボン酸基を有する重合体(I)20〜80質量部、及び
強化繊維(C)20〜80質量部
(但し、前記重合体(I)及び強化繊維(C)の合計は100質量部である。)
を含むテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物。
[15]波長が300〜3000μmの光を吸収する色素(P)5質量部以下(但し、成分(I)及び成分(C)の合計は100質量部である。)をさらに含む[14]に記載のテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物。
[16][11]〜[13]の何れかに記載の成形材料、若しくは、[14]又は[15]に記載のテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物を含む層を有する積層体。
[17]請求項16に記載の積層体を含むテープワインディング成形体。
[18]請求項11〜13の何れかに記載の成形材料、若しくは、請求項14又は15に記載のテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物を含むテープを用いたテープワインディング成形法。
[19]プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、脂肪族カルボン酸塩(F)とを混合して混合液(1)を得る工程、
前記混合液(1)に、脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤、高級脂肪酸、天然油脂、鉱物油及びSi含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(G)を混合して混合液(2)を得る工程、及び、
強化繊維(C)に前記混合液(2)を付着させる工程
を有する強化繊維束の製造方法。
本発明によれば、積層化した際の層間強度及び毛羽立ちの抑制の点で優れた成形材料を提供し得る強化繊維束、この強化繊維束とマトリックス樹脂を含む積層化した際の層間強度及び毛羽立ちの抑制の点で優れた成形材料、及び、この成形材料を含む成形体が提供される。
繊維強化樹脂組成物からなる複数のテープやシートを積層化する場合は、層間強度は重要な物性の一つである。そして一般的には、層間剥離は。強化繊維と樹脂との界面から生じる傾向にある。一方、本発明の強化繊維束においては、特定種類の樹脂成分と特定種類の添加成分を組み合わせて使用するので、強化繊維と樹脂が剥離しにくくなり、その結果として積層化した際の層間強度が著しく向上する。
さらに本発明の強化繊維束においては特定種類の添加成分を使用するので、繊維束自体の毛羽立ちが著しく抑制される。その結果、例えば成形材料として切断加工した場合、成形後の製品をさらに所望に応じて切断した場合、あるいは成形後の製品が裂傷した場合においても、毛羽立ちが生じにくく、その外観を良好に保つことができる。
<強化繊維束>
本発明の強化繊維束は、プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、強化繊維(C)と、脂肪族カルボン酸塩(F)と、脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤、高級脂肪酸、天然油脂、鉱物油及びSi含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(G)とを含む。プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量は、プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量よりも高い。
(強化繊維(C))
本発明の強化繊維束に用いる強化繊維(C)の種類は特に制限されないが、高強度で且つ高弾性率の繊維が好ましい。強化繊維の具体例としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維などの繊維が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。中でも炭素繊維が好ましく、力学特性の向上、成形品の軽量化効果の点から、PAN系、ピッチ系又はレーヨン系の炭素繊維がより好ましい。さらに、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの点から、PAN系炭素繊維が特に好ましい。導電性を付与した強化繊維、例えば、ニッケル、銅、イッテルビウムなどの金属を含む強化繊維も使用できる。金属は、強化繊維を被覆する形態で含まれることが好ましい。
X線光電子分光法により測定される炭素繊維の表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]は、好ましくは0.05〜0.5、より好ましくは0.08〜0.4、特に好ましくは0.1〜0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であると、炭素繊維表面の官能基量を十分確保でき、熱可塑性樹脂とより強固な接着を得ることができる。表面酸素濃度比の上限には特に制限されないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスの点から、0.5以下が一般的に好ましい。
炭素繊維の表面酸素濃度比[O/C]は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めることができる。まず、炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などの成分を溶剤で除去し、炭素繊維束を20mmにカットする。これを銅製の試料支持台に拡げて並べ、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。そして、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりC1sピーク面積を求める。また、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりO1sピーク面積を求める。このO1sピーク面積及びC1sピーク面積の比と装置固有の感度補正値を用いて、原子数比としての表面酸素濃度比[O/C]を算出する。X線光電子分光法装置としては、具体的には国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。
炭素繊維の表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する方法は、特に制限されない。例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理、気相酸化処理などの方法により制御できる。中でも、電解酸化処理が好ましい。
強化繊維(C)の平均繊維径は特に制限されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の点から、好ましくは1〜20μm、より好ましく3〜15μmである。強化繊維束の単糸数は特に制限されないが、通常は100〜350,000本、好ましくは1,000〜250,000本、より好ましくは5,000〜220,000本である。さらに、本発明では後述するプロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)を用いるので、繊維数40,000以上の繊維束(ラージトウ)にも優れた効果を示すことも期待される。
(プロピレン系樹脂(A))
本発明の強化繊維束に用いるプロピレン系樹脂(A)は、重量平均分子量が15万以上の成分(A−1)70質量%を超え100質量%以下と、重量平均分子量が15万未満の成分(A−2)30質量%未満と(但し、成分(A−1)及び(A−2)の合計は100質量%である。)を含むことが好ましい。
プロピレン系樹脂(A)中の成分(A−1)[以下「プロピレン系樹脂成分(A−1)」とも言う]の重量平均分子量は15万以上であり、好ましくは15万を超え、より好ましくは20万以上、特に好ましくは25万以上、最も好ましくは28万以上である。プロピレン系樹脂成分(A−1)の重量平均分子量の上限値は特に制限されないが、成形時の溶融流動性や成形体の外観の点から、好ましくは70万以下、より好ましくは50万以下、特に好ましくは45万以下、最も好ましくは40万以下である。
成分(A−1)及び後述する成分(A−2)の合計を100質量%とする場合、プロピレン系樹脂成分(A−1)の量は70質量%を超え100質量%以下であり、好ましくは73〜100質量%である。
プロピレン系樹脂(A)中に必要に応じて含まれる成分(A−2)[以下「プロピレン系樹脂成分(A−2)」とも言う]の重量平均分子量は15万未満であり、好ましくは12万以下、より好ましくは10万以下である。プロピレン系樹脂成分(A−2)の重量平均分子量の下限値は特に制限されないが、強化繊維束の強度や取扱い性(ベタ付きなど)の点から、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上、特に好ましくは4万以上、最も好ましくは5万以上である。
成分(A−1)及び成分(A−2)の合計を100質量%とする場合、プロピレン系樹脂成分(A−2)の量は30質量%未満である。プロピレン系樹脂成分(A−2)を含む場合は、好ましくは3質量%以上30質量%未満である。
プロピレン系樹脂成分(A−1)の重量平均分子量と、プロピレン系樹脂成分(A−2)の重量平均分子量との差は、好ましくは10万〜30万、より好ましくは10万〜20万、特に好ましくは13万〜20万である。
プロピレン系樹脂(A)は、以上説明した特定の重量平均分子量のプロピレン系樹脂成分(A−1)を特定量含むので、強化繊維束に用いるプロピレン系樹脂(A)の量が比較的少なくても、毛羽立ちの問題や、衝撃等の要因による崩壊、剥がれ、折れ等の形状変化の問題や、それらに起因する微粉の発生の問題が生じにくい傾向にある。この場合、比較的高い分子量のプロピレン系樹脂成分(A−1)が比較的多く含まれ、その分子鎖の絡み合いの効果により、これらの問題を抑制していると推測される。なお、特にフィラメント数の多い繊維は毛羽立ちが起こり易い傾向があるので、フィラメント数の多い繊維においても改善が期待される。
プロピレン系樹脂(A)はプロピレン由来の構造単位を有する樹脂であり、プロピレン由来の構造単位の量は好ましくは50モル%以上である。特に、プロピレン由来の構造単位と共に、α−オレフィン、共役ジエン及び非共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種のオレフィン(プロピレンを除く)やポリエン由来の構造単位が含まれる共重合体が好ましい。
α−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等のプロピレンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。中でも、1−ブテン、エチレン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンが好ましく、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンがより好ましい。
共役ジエン及び非共役ジエンの具体例としては、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエンが挙げられる。
以上のα−オレフィン、共役ジエン及び非共役ジエンは2種以上を併用しても良い。
プロピレン系樹脂(A)は、プロピレンと前記のオレフィンやポリエン化合物とのランダム又はブロック共重合体であることが好ましい。本願の目的を損なわない範囲内であれば、プロピレン系樹脂(A)と共に他の熱可塑性重合体を併用することも出来る。他の熱可塑性重合体としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体が好ましい。
プロピレン系樹脂(A)のプロピレン由来の構造単位の割合は、後述するマトリックス樹脂(M)やプロピレン系樹脂(B)との親和性を高める点から、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは50〜99モル%、特に好ましくは55〜98モル%、最も好ましくは60〜97モル%である。
プロピレン系樹脂(A)における単量体繰り返し単位の同定には、一般に13CNMR法が用いられる。質量分析及び元素分析が用いられることもある。また、NMR法で組成を決定した組成の異なる複数種の共重合体のIR分析を行い、特定波数の吸収や検体の厚さ等の情報から検量線を作成して組成を決定する方法を用いることも出来る。IR法は工程分析に好ましく用いられる。
プロピレン系樹脂(A)は、そのショアA硬度が60〜90であるか、又はショアD硬度が45〜65であることが好ましい。ショアA硬度のより好ましい範囲は65〜88であり、特に好ましい範囲は70〜85である。ショアD硬度のより好ましい範囲は48〜63であり。特に好ましい範囲は50〜60である。プロピレン系樹脂(A)のショアA硬度又はショアD硬度がこれらの範囲内であると、強化繊維への追従性が良く、部分的な割れが発生し難く、安定した形状の強化繊維束を形成し易い。また後述するマトリックス樹脂(M)と組み合わせた組成物の強度を高める上で有利な傾向がある。これはプロピレン系樹脂(A)とマトリックス樹脂(M)とが良好な分子鎖の絡み合い構造を取るためと推測される。
プロピレン系樹脂(A)は、例えば周期律表の15〜17族元素を含む態様が好ましい場合がある。周期律表の15〜17族元素を含む好ましい構成は、無水カルボン酸基やカルボン酸基、アミノ基、酸アミド基、ハロゲン基などの、所謂官能基を有する構成である。このような構成は、ラジカルグラフト反応などの公知の方法で導入することが可能である。17族元素の例としては、ハロゲン、より具体的には塩素を挙げることができる。16族元素としては、酸素、硫黄を代表例として挙げることができ、好ましくは酸素である。15族元素の代表例は、窒素である。これらの中でも酸素が特に好ましい。また、好ましい官能基の構造はカルボン酸基、無水カルボン酸基である。特に無水マレイン酸構造を有する基であることが好ましい。また特に、プロピレン系樹脂成分(A−1)が上記の構成であることが好ましい。
上記の元素や官能基は、単独で用いることも2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
プロピレン系樹脂(A)が周期律表の15〜17族元素を含む態様の場合、その元素の含有率は、好ましくは0.0003〜5質量%である(但し、プロピレン系樹脂(A)全体を100質量%とする)。また、プロピレン系樹脂成分(A−1)中の元素の含有率は、好ましくは0.0003〜5質量%である(但し、プロピレン系樹脂成分(A−1)全体を100質量%とする)。これらの上限値は何れも、より好ましくは4.5質量%、特に好ましくは4.3質量%、最も好ましくは4質量%である。これらの下限値は何れも、より好ましくは0.0005質量%、特に好ましくは0.0008質量%、最も好ましくは0.001質量%である。上記の上限値以下であれば、さらに毛羽立ちが防止され、十分に高い分子量のプロピレン系樹脂を得易い場合がある。一方、特に後述するテープワインディング法による積層体とした場合の剥離強度を重視する場合は、上記の下限値を上回る条件であることが好ましい。これらの含有率は、例えば前記のグラフト反応における各成分の構造と仕込比から算出できる。また、元素分析装置(例えば、varioELIII型:エレメンタール社製)等の元素分析装置にて特定することも可能である。
上記のような元素を含んでいれば、後述するプロピレン系樹脂(B)や強化繊維(C)との相互作用を強化する上で有利な傾向がある。
ただし、プロピレン系樹脂(A)は、カルボン酸基やカルボン酸エステル基等を含む化合物で変性されていても良いし、未変性体であっても良い。好ましくは、カルボン酸基やカルボン酸エステル基等を含む化合物で変性されたプロピレン系樹脂である。プロピレン系樹脂(A)が変性体である場合、その変性量は−C(=O)−O−で表される基換算で、好ましくは2.0ミリモル当量未満、より好ましくは1.0ミリモル当量以下、特に好ましくは0.5ミリモル当量以下である。好ましい下限値は、0.005ミリモル当量であり、より好ましくは0.008ミリモル当量である。
一方、用いる用途によってはプロピレン系樹脂(A)は、実質的に未変性体であることが好ましい場合もある。ここで、実質的に未変性とは、望ましくは全く変性されていないことであるが、変性されたとしても前記目的を損なわない範囲である、その変性量は−C(=O)−O−で表される基換算で、望ましくは0.05ミリモル当量未満、好ましくは0.01ミリモル当量以下、より好ましくは0.005ミリモル当量以下、特に好ましくは0.001ミリモル当量以下、最も好ましくは0.0001ミリモル当量以下である。
(プロピレン系樹脂(B))
本発明の強化繊維束に用いるプロピレン系樹脂(B)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂である。このカルボン酸塩は、強化繊維(C)との相互作用を高める点で効果的である。
プロピレン系樹脂(B)の原料のうち、プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体;エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体で代表される、プロピレンとα−オレフィンの単独又は2種類以上との共重合体が挙げられる。原料のうち、カルボン酸構造を有する単量体としては、例えば、中和されている又は中和されていないカルボン酸基を有する単量体、ケン化されている又はケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体が挙げられる。このようなプロピレン系重合体とカルボン酸構造を有する単量体とをラジカルグラフト重合するのが、プロピレン系樹脂(B)を製造する代表的な方法である。プロピレン系重合体に用いられるオレフィンの具体例は、プロピレン系樹脂(A)に用いられるオレフィンと同様である。
特殊な触媒を用いることにより、プロピレンとカルボン酸エステルを有する単量体とを直接重合してプロピレン系樹脂(B)を得たり、エチレンが多く含まれる重合体であればエチレン及びプロピレンとカルボン酸構造を有する単量体とを高圧ラジカル重合してプロピレン系樹脂(B)を得ることが出来る可能性もある。
中和されている又は中和されていないカルボン酸基を有する単量体、及び、ケン化されている又はケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体としては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物、そのエステル;オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物が挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸の具体例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸が挙げられる。酸無水物の具体例としては、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸が挙げられる。
オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類;ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類;モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類;が挙げられる。
以上の単量体は2種類以上を併用しても良い。中でも、酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
プロピレン系樹脂(B)は、先に述べたように種々の方法で得ることができる。より具体的には、例えば、有機溶剤中でプロピレン系重合体と不飽和ビニル基を有するエチレン系不飽和カルボン酸又はオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体とを重合開始剤の存在下で反応させ、その後脱溶剤する方法;プロピレン系重合体を加熱溶融して得た溶融物と不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤とを攪拌下で反応させる方法;プロピレン系重合体と不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤との混合物を押出機に供給して加熱混練しながら反応させ、その後中和やケン化などの方法でカルボン酸塩とする方法が挙げられる。
重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等の各種パーオキサイド化合物が挙げられる。また、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用いても良い。重合開始剤は2種以上を併用しても良い。
有機溶剤の具体例としては、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソオクタン、イソデカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;が挙げられる。2種以上の有機溶剤の混合物を用いても良い。中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素が好ましく、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素がより好ましい。
プロピレン系樹脂(B)の周期律表の15〜17族元素の含有率は、前述のプロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂成分(A−1)、プロピレン系樹脂成分(A−2)の何れよりも高いことが好ましい。より具体的には、プロピレン系樹脂(B)の周期律表の15〜17族元素の含有率は、前述のプロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂成分(A−1)、プロピレン系樹脂成分(A−2)の何れよりも、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは0.7質量%以上という高い条件を満たすと、安定したエマルションを得ることが出来る傾向にあり、また強化繊維(C)と強い相互作用を得る上で有利である。
プロピレン系樹脂(B)のカルボン酸基の含有率は、後述するNMRやIR測定で決定出来ることは公知である。またカルボン酸基の含有率を酸価で特定することも出来る。プロピレン系樹脂(B)の酸価は、好ましくは10〜100mg−KOH/g、より好ましくは20〜80mg−KOH/g、特に好ましくは25〜70mg−KOH/g、最も好ましくは25〜65mg−KOH/gである。
プロピレン系樹脂(B)を中和又はケン化工程を経て得る方法は、プロピレン系樹脂(B)の原料を水分散体にして処理することが容易となるので、実用的で好ましい方法である。
水分散体の中和又はケン化に用いる塩基性物質の具体例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はその他の金属類;ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウム等の無機アミン;アンモニア、(トリ)メチルアミン、(トリ)エタノールアミン、(トリ)エチルアミン、ジメチルエタノールアミン、モルフォリン等の有機アミン;酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム等の亜鉛等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はその他の金属類の酸化物、水酸化物又は水素化物;炭酸ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はその他の金属類の弱酸塩;が挙られる。塩基物質により中和又はケン化されたカルボン酸塩又はカルボン酸エステルとしては、特に、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩;カルボン酸アンモニウムが好適である。
中和度又はケン化度、すなわちプロピレン系樹脂(B)の原料が有するカルボン酸基の金属塩又はアンモニウム塩等のカルボン酸塩への転化率は、水分散体の安定性と繊維との接着性の点から、通常50〜100%、好ましくは70〜100%、より好ましくは85〜100%である。プロピレン系樹脂(B)におけるカルボン酸基は、塩基物質により全て中和又はケン化されていることが好ましいが、カルボン酸基の一部が中和又はケン化されず残存していても良い。
カルボン酸基の塩成分を分析する方法としては、例えば、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を行う方法、IR、NMR、質量分析又は元素分析を用いて酸基の塩の構造を同定する方法がある。
カルボン酸基の中和塩への転化率を算出する方法としては、例えば、加熱トルエン中にプロピレン系樹脂(B)を溶解し、0.1規定の水酸化カリウム−エタノール標準液で滴定し、プロピレン系樹脂(B)の酸価を下式により求め、元のカルボン酸基の総モル数と比較して算出する方法がある。
酸価=(5.611×A×F)/B(mg-KOH/g)
A:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)
F:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター
B:試料採取量(g)
次に、以上の方法で算出した酸価を下式により中和されていないカルボン酸基のモル数に換算する。
中和されていないカルボン酸基のモル数=酸価×1000/56(モル/g)
そして、別途IR、NMR、元素分析等の方法によりカルボン酸基のカルボニル炭素の定量を行って算出したカルボン酸基の総モル数(モル/g)を用いて、下式よりカルボン酸基の中和塩への転化率を算出する。
転化率%=(1−r)×100(%)
r:中和されていないカルボン酸基のモル数/カルボン酸基の総モル数
強化繊維(C)との相互作用を高める観点から、プロピレン系樹脂(B)の重合体鎖に結合したカルボン酸塩の含有量は、プロピレン系樹脂(B)1g当たり、−C(=O)−O−で表される基換算で総量0.05〜5ミリモル当量であることが好ましい。より好ましくは0.1〜4ミリモル当量、特に好ましくは0.3〜3ミリモル当量である。上記のようなカルボン酸塩の含有量を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を定量的に行う方法や、IR、NMR及び元素分析等を用いてカルボン酸塩のカルボニル炭素の定量をおこなう方法が挙げられる。カルボン酸骨格の含有率のより具体的な測定方法は以下の方法を例示できる。試料を100MHz以上の条件で120℃以上の高温溶液条件で、13C NMR法によりカルボン酸骨格の含有率を常法により特定することが出来る。また、カルボニル骨格の含有率の異なる複数の試料を前記13C NMRで測定してカルボン酸骨格の含有率を特定した後、同じ試料のIR測定を行い、カルボニルなどの特徴的な吸収と試料厚みや他の代表的な吸収との比とカルボン酸骨格の含有率との検量線を作成することで、IR測定により、カルボン酸骨格の導入率を特定する方法も知られている。
(プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B))
本発明においては、プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量がプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量よりも高いことが重要な構成の一つである。これにより、プロピレン系樹脂(B)が成形時に移動し易く、強化繊維(C)とプロピレン系樹脂(B)との相互作用が強くなることが期待される。プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量と、プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量との差は、好ましくは1万〜38万、より好ましくは12万〜38万、特に好ましくは13万〜38万である。
プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量は、上記の相互作用の点、及びプロピレン系樹脂(A)との相溶性、好ましくはプロピレン系樹脂成分(A−2)との相溶性の点から、好ましくは1,000〜10万、より好ましくは2,000〜8万、特に好ましくは5,000〜5万、最も好ましくは5,000〜3万である。
本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して、プロピレン系樹脂(B)の量は通常3〜50質量部であり、好ましくは3〜45質量部、より好ましくは5〜45質量部、特に好ましくは7〜40質量部、最も好ましくは10〜40質量部である。この範囲内であれば、プロピレン系樹脂(A)に由来する強度や形状などに関する特性と、強化繊維(C)との親和性とを高いレベルで両立させることが可能となる。プロピレン系樹脂(B)が3質量部より少ないと、強化繊維(C)との親和性が低下し、接着特性に劣る可能性がある。またプロピレン系樹脂(B)が50質量部よりも多いと、混合物自体の強度が低下したり、毛羽立ちが増大する場合があり、強固な接着特性を維持出来ない可能性がある。
プロピレン系樹脂(A)及び(B)の分子量や含有率を先に説明した範囲内にすることで、プロピレン系樹脂(A)及び(B)が効果的に強化繊維(C)及びマトリックス樹脂(M)と相互作用を奏し、相溶性が比較的高くなり、接着性を向上させることが期待される。
プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は、好ましくは強化繊維束全体の0.3〜5質量%である。本発明においては、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計の含有率が比較的少なくても、本発明の効果を得ることができる。この含有率が0.3質量%以上であると、強化繊維がむき出しの部分が少なくなり、これにより得られる製品の強度低下を抑制でき、強化繊維束の取り扱い性も向上する。ここでいう取り扱い性とは、例えば、繊維束をボビンに巻き取る際の繊維束の硬さやさばけ易さである。また例えば、繊維束をカットしたチョップド繊維束の集束性である。一方、この含有率が5質量以下であると、成形体の力学特性低下を抑制でき、繊維束が極端に硬くなりボビンに巻けなくなるなどの不具合が生じにくくなる。この含有率の下限値については、接着性と強化繊維束の取り扱い性とのバランスの点から、より好ましくは0.4質量%以上である。一方、上限値については、より好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
プロピレン系樹脂(A)及び(B)は、様々な形態で強化繊維(C)と接触させることが出来る。例えば、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)をそのまま、又は耐熱安定剤を併用して溶融させ、強化繊維(C)と接触させても良いし、プロピレン系樹脂(A)及び(B)をエマルションやサスペンション状態で強化繊維(C)と接触させても良い。接触工程の後に、熱処理を行っても良い。強化繊維(C)と効率的に接触させる点からは、プロピレン系樹脂(A)及び(B)は、エマルション状態で強化繊維(C)と接触させることが好ましい。
(脂肪族カルボン酸塩(F))
本発明の強化繊維束に用いる脂肪族カルボン酸塩(F)は、カルボン酸基を有する脂肪族酸の塩である。脂肪族カルボン酸塩(F)のアニオン部分を構成する脂肪酸の炭素原子数は、好ましくは6〜60、より好ましくは8〜40、特に好ましくは12〜30である。脂肪族カルボン酸塩(F)のカチオン部分は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分であることが好ましい。中でも、アルカリ金属がより好ましい。
脂肪族カルボン酸塩(F)の具体例としては、オレイン酸カリウム、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、オクタン酸カリウム、デカン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、モンタン酸カリウムが挙げられる。
脂肪族カルボン酸塩(F)は、例えば、脂肪酸の中和や脂肪酸エステルのケン化により製造できる。
脂肪族カルボン酸塩(F)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜60質量部、より好ましくは1〜40質量部である。含有量がこれら範囲内であると、毛羽立ちの抑制効果がより向上する傾向にある。
(化合物(G))
本発明の強化繊維束に用いる化合物(G)は、脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤、高級脂肪酸、天然油脂、鉱物油及びSi含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。以下、各化合物について説明する。
(1)脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤
脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤は、脂肪族カルボン酸塩以外のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れでも良い。
脂肪族カルボン酸塩以外のアニオン性界面活性剤において、そのアニオン部分を構成する成分は、例えば、スルホン酸、硫酸、リン酸である。また、カチオン部分は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分であることが好ましい。中でも、アルカリ金属がより好ましい。脂肪族カルボン酸塩以外のアニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等の炭素原子数が10〜20の飽和又は不飽和のアルキル鎖を含むスルホン酸塩又はスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の炭素原子数が10〜20の飽和又は不飽和のアルキル鎖を含む硫酸塩;ラウリルリン酸ナトリウム等の炭素原子数が10〜20の飽和又は不飽和のアルキル鎖を含むリン酸塩が挙げられる。より具体的には、後述する実施例に使用した化合物、すなわちジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、β−ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムが挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド等の4級アンモニウム塩又はアルキルアミン塩、若しくはこれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、アセチレニックグリコール誘導体のポリオキシエチレンエーテルが挙げられる。
(2)高級脂肪酸
高級脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の炭素原子数が8〜24の直鎖又は分岐鎖飽和脂肪酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ガトレン酸、アラキドン酸、エルカ酸などの炭素原子数が8〜24の直鎖又は分岐鎖不飽和脂肪酸が挙げられる。
(3)天然油脂
天然油脂の具体例としては、植物油(例えば綿実油、あまに油、ひまし油、やし油、パーム油)、動物油(例えば牛脂、豚脂、馬脂、鶏脂)、魚油(例えばニシン油、カレイ油、タラ油)が挙げられる。
(4)鉱物油
鉱物油の具体例としては、パラフィン(例えばノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン)、ナフテン性油、プロセスオイル、エキステンダーが挙げられる。
(5)Si含有化合物
Si含有化合物は、Si元素を構造中に含む化合物である。その具体的な構造は特に制限されないが、例えばシリコーンオイルやシランカップリング剤を使用できる。シリコーンオイルは、ポリシロキサン部位を有していれば良く、その具体的な構造は特に制限されない。シリコーンオイルの具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、シリコン変性ポリオキシエチレンエーテルが挙げられる。シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を制限なく使用できる。シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
以上説明した化合物(G)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)と(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、特に好ましくは3〜7質量部である。含有量がこれら範囲の下限値以上であると、強化繊維に対して均一に付着できる傾向にあり、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)と強化繊維(C)との接着強度が向上する傾向にある。また、含有量がこれら範囲の上限値以下であると、ブリードアウトが生じにくく、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)と強化繊維(C)との接着強度が優れる傾向にある。
<強化繊維束の製造方法>
以上説明した本発明の強化繊維束を製造する為の方法は特に制限されない。ただし、プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、脂肪族カルボン酸塩(F)とを混合して混合液(1)を得る工程、前記混合液(1)に、脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤、高級脂肪酸、天然油脂、鉱物油及びSi含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(G)を混合して混合液(2)を得る工程、及び、強化繊維(C)に前記混合液(2)を付着させる工程を有する方法が好ましい。
混合液(1)を得る工程、すなわち、プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、脂肪族カルボン酸塩(F)とを混合して混合液(1)を得る工程において、具体的な混合条件は特に制限されず、公知の方法に従って実施できる。その具体的な工程は、例えば、国際公開第2007/125924号、国際公開第2008/096682号、特開2008−144146号、国際公開第2017/183672号に記載されている。
混合液(2)を得る工程は、混合液(1)に対しさらに化合物(G)を混合する工程である。このように混合液(1)を調製した後に化合物(G)を添加すると、次の工程である強化繊維(C)に混合液(2)を付着させる工程において強化繊維(C)全体に化合物(G)が行きわたり、強化繊維束の内部まで繊維を集束することができ、毛羽立ちの抑制効果がさらに向上する。
強化繊維(C)に混合液(2)を付着させる工程において、付着の為の具体的な方法は特に制限されない。例えば、均一に単繊維間に付着させ易い点から、強化繊維(C)にエマルション状の混合液(2)を接触させ、その後乾燥させる方法が好ましい。エマルション状の混合液(2)を接触させる方法としては、例えば、ローラー浸漬法、ローラー転写法、スプレー法等の公知の方法を採用できる。
<成形材料(繊維強化樹脂組成物)>
本発明の強化繊維束とマトリックス樹脂(M)とを含む成形材料(繊維強化樹脂組成物と言うこともある)において、マトリックス樹脂(M)の種類は特に制限されない。マトリックス樹脂(M)の具体例としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリーレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、変性ポリオレフィン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、さらにはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルエーテルエラストマー、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリエステルアミドエラストマー、ポリエステルエステルエラストマーなどの各種エラストマー類が挙げられる。これらは2種以上を併用しても良い。特に、熱可塑性であるマトリックス樹脂が好ましい。マトリックス樹脂(M)としては公知の熱可塑性樹脂を制限なく用いることが出来るが、極性を有する樹脂として、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、極性の低い樹脂として、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。特に、コストや成形品の軽量化の点から、後述するプロピレン系樹脂(D)及びポリアミド樹脂(E)がより好ましい。即ち、強化繊維束含有プロピレン系樹脂組成物や強化繊維束含有ポリアミド樹脂組成物が、成形材料や成形体に好ましく用いられる。
本発明の成形材料(繊維強化樹脂組成物)中の強化繊維束の量は、通常1〜80質量部、好ましくは1〜70質量部、より好ましくは3〜68質量部、特に好ましくは5〜65質量部である。マトリックス樹脂(M)の量は、通常20〜99質量部、好ましくは30〜99質量部、より好ましくは32〜97質量部、特に好ましくは35〜95質量部である。これらは強化繊維束とマトリックス樹脂(M)の合計を100質量部とした場合の量である。
マトリックス樹脂(M)としてプロピレン系樹脂(D)を用いる場合、本発明の成形材料(繊維強化プロピレン系樹脂組成物)中の強化繊維束の量の下限値については、通常1質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上であり、上限値については、通常80質量部以下、好ましくは70質量部以下、より好ましくは68質量部以下、特に好ましくは65質量部以下である。プロピレン系樹脂(D)の量の下限値については、通常20質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは32質量部以上、特に好ましくは35質量部以上であり、上限値については、通常99質量部以下、好ましくは97質量部以下、より好ましくは95質量部以下、特に好ましくは90質量部以下である。但し、これらは強化繊維束とプロピレン系樹脂(D)の合計を100質量部とした場合の量である。
マトリックス樹脂(M)としてポリアミド樹脂(E)を用いる場合、本発明の成形材料(繊維強化ポリアミド系樹脂組成物)中の強化繊維束の量の下限値については、通常1質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、上限値については、通常80質量部以下、好ましくは75質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。ポリアミド樹脂(E)の量の下限値については、通常20質量部以上、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、上限値については、通常99質量部以下、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。但し、これらは強化繊維束とポリアミド樹脂(E)の合計を100質量部とした場合の量である。
プロピレン系樹脂(D)は、未変性のプロピレン系樹脂であっても、変性などの方法でカルボン酸構造やカルボン酸塩構造を含むプロピレン系樹脂であっても良い。未変性樹脂とカルボン酸やカルボン酸塩構造を含むプロピレン系樹脂の両方を用いる場合、その好ましい質量比は、未変性体/変性体比で、99/1〜80/20であり、より好ましくは98/2〜85/15であり、更に好ましくは、97/3〜90/10である。前記のプロピレン系樹脂の組成としては、プロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)の説明で記載した単量体(オレフィンやカルボン酸エステル化合物など)由来の構造単位を含む一般的なプロピレン樹脂が好ましい態様である。例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、変性ポリプロピレンと言われるプロピレン重合体である。
プロピレン系樹脂(D)として好ましい態様は、未変性プロピレン系樹脂と酸変性プロピレン系樹脂を含む組成物である。このような態様であれば、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の両方と相互作用を持ちやすいので、強化繊維束とマトリックス樹脂との間に高い接着力は発現することが期待できる
プロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量Mw(D)は、強化繊維束のプロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)及びプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mw(B)と、以下の関係を満たすことが好ましい。
Mw(A)>Mw(D)>Mw(B)
プロピレン系樹脂(D)の具体的な重量平均分子量は、好ましくは5万〜35万、より好ましくは10万〜33万、特に好ましくは15万〜32万である。プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(D)との分子量の差は、好ましくは1万〜40万、より好ましくは2万〜20万、特に好ましくは2万〜10万である。
プロピレン系樹脂(D)は、強化繊維(C)、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)を含む強化繊維束の周りに接着する態様になっていることが好ましい。本発明においては、プロピレン系樹脂(A)は重量平均分子量が極めて高い成分を多く含むので、前述の通り強化繊維束は毛羽立ったりし難く、強度的には有利であり、プロピレン系樹脂(D)は相対的に流動性に優れているので、表面形状に優れた成形体材料や成形体を与えることが期待される。即ち、本発明の成形材料は、外観と強度とのバランスに優れている。
プロピレン系樹脂(D)は、公知の方法で製造することが出来る。その樹脂(重合体)の立体規則性はイソタクチックであっても、シンジオタクチックであっても、アタクチックであっても良い。立体規則性は、イソタクチックもしくはシンジオタクチックであることが好ましい。
上記のような樹脂(特に未変性の樹脂)の具体的な製造方法は、例えば、国際公開第2004/087775号、国際公開第2006/057361号、国際公開第2006/123759号、特開2007−308667号公報、国際公開第2005/103141号、特許4675629号公報、国際公開第2014/050817号、特開2013−237861号公報に記載されている。
ところで、マトリックス樹脂(M)としてポリオレフィン系樹脂を用いた繊維強化樹脂組成物(成形材料)は、金属に対する接着性が必ずしも十分ではない傾向にある。一方、マトリックス樹脂(M)としてポリアミド樹脂(E)を用いると、ポリオレフィン系樹脂と比較して金属に対する接着性が向上する。すなわち、金属に対する接着性が要求される用途においては、本発明の炭素繊維束はポリアミド樹脂用の炭素繊維束としても非常に有用である。ポリアミド樹脂(E)としては、公知のポリアミド樹脂を制限なく用いることが出来る。具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド11、芳香族系ポリアミドが挙げられる。中でも、ポリアミド6、ポリアミド12が好ましい。
本発明の強化繊維束を形成する単繊維は、より強い接着性を発揮するために、単繊維表面の60%以上(より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上)がプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とを含む混合物で被覆されていることが好ましい。被覆状態は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)又は繊維表面の元素分析でカルボン酸塩の金属元素をトレースする方法により評価できる。
本発明の強化繊維束の好ましい形状として、連続繊維であるロービングを所定の長さにカットしたチョップド強化繊維束や、粉砕したミルド糸が挙げられる。取扱い性の点から、チョップド強化繊維束が特に好ましい。チョップド強化繊維束における繊維長さは特に制限されないが、集束性を十分に発揮しカットされたあとの形状を十分に維持し、取扱いやすい点から、1〜30mmが好ましく、2〜15mmがより好ましい。チョップド強化繊維束の集束性が不足すると、チョップド強化繊維束を搬送する際などの擦過で毛羽立ちが発生し、ファイバーボールとなって取扱い性が悪くなる場合がある。特にコンパウンド用途への使用時には、ファイバーボール発生により押出機へのチョップド糸の供給性が悪くなり、生産性を低下させる可能性がある。集束性の指標としては、チョップド強化繊維束の嵩密度が挙げられる。嵩密度は一定重量のチョップド強化繊維束を容器に充填させてその占有体積を求め、重量を体積で除することで求められる。
本発明の強化繊維束を用いた成形方法は特に制限されず、例えば、(1)強化繊維束とマトリックス樹脂(M)を一度溶融混練して成形材料としたコンパウンドペレットを用いた成形方法、(2)強化繊維束をマトリックス樹脂(M)のペレットと混合してなる成形材料を直接成形機に供給し、又は強化繊維束とマトリックス樹脂(M)のペレットとを個別に直接成形機に供給し、成形型に注入し、冷却固化させる直接成形法、(3)強化繊維束をマトリックス樹脂で被覆して長繊維ペレットの成形材料を用いた成形方法がある。
本発明の強化繊維束を用いた別の成形方法としては、例えば、開繊された繊維束を引き揃え、溶融したマトリックス樹脂(M)と接触させることにより一方向性炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体(一方向性材)を得る方法がある。この一方向性材はそのまま使用することもできるし、複数積層して一体化することにより積層体を作製してそれを使用することもできる。また、適宜切断して、テープ形状にすることも出来る。
本発明の強化繊維束は、テープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物(テープワインディング成形用の成形材料)にも有用である。この場合のマトリックス樹脂(M)も特に制限されないが、プロピレン系樹脂(D)及びポリアミド樹脂(E)からなる群より選ばれる一種以上の樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂(D)がより好ましい。この場合の強化繊維束の量は、好ましくは25〜75質量部であり、樹脂の量は、好ましくは25〜75質量部である。但し、これらは強化繊維束と樹脂の合計を100質量部とした時の量である。
本発明において、テープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物は、本発明の強化繊維束を含み、且つ炭素原子数2〜20のオレフィン由来単位を含み、融点及び/又はガラス転移温度が50〜300℃のカルボン酸基を有する重合体(I)を例えばマトリックス樹脂(M)の一部又は全部として含むことも好ましい。この繊維強化樹脂組成物は、変性樹脂としての重合体(I)を比較的多く含むので、レーザー融着法を用いても強化繊維と樹脂との間の構造が変化し難い傾向がある。これは、強化繊維近傍の変性樹脂(プロピレン系樹脂(B)など)が破壊されたとしても、重合体(I)がこれを保持する為ではないかと推測される。その結果、レーザーによる発熱や樹脂の劣化が抑制され、テープワインディング成形体の剥離強度や表面性状(表面荒れ)も改善されることが期待される。
テープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物中の強化繊維(C)の量は、通常20〜80質量部、好ましくは30〜75質量部、より好ましくは35〜70質量部、特に好ましくは40〜65質量部、最も好ましくは40〜60質量部である。重合体(I)の量は、通常20〜80質量部、好ましくは25〜70質量部、より好ましくは30〜65質量部、特に好ましくは35〜60質量部、最も好ましくは40〜60質量部である。但し、これらは強化繊維(C)と重合体(I)の合計を100質量部とした場合の量である。強化繊維(C)の量がこれら範囲の上限値以下であれば、後述するテープワインディング成形体にテープ剥離が起こりにくい傾向にある。また、強化繊維(C)の量がこれら範囲の下限値以上であれば、テープワインディング成形体の強度が向上する傾向にある。
カルボン酸基を有する重合体(I)がマトリックス樹脂(M)の一部としての変性プロピレン系樹脂である場合、マトリックス樹脂(M)中の未変性プロピレン系樹脂と変性プロピレン系樹脂の質量比は、未変性体/変性体比で、好ましくは80/21〜93/7、より好ましくは82/18〜92/8、特に好ましくは83/17〜92/8、最も好ましくは83/17〜91/9である。このプロピレン系樹脂の組成としては、プロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)の説明で記載した単量体(オレフィンやカルボン酸エステル化合物など)由来の構造単位を含む一般的なプロピレン樹脂が好ましい態様である。例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、変性ポリプロピレンと言われるプロピレン重合体である。また、この場合の繊維強化樹脂組成物中の強化繊維束の量は、好ましくは25〜75質量部、より好ましくは30〜68質量部、特に好ましくは35〜65質量部である。一方、プロピレン系樹脂の量は、好ましくは25〜75質量部、より好ましくは32〜70質量部、特に好ましくは35〜65質量部である。但し、これらは強化繊維束とプロピレン系樹脂の合計を100質量部とした場合の量である。
重合体(I)の融点及び/又はガラス転移温度は50〜300℃である。下限値については、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。一方、上限値については、好ましくは280℃以下、より好ましくは270℃以下、特に好ましくは260℃以下である。また、融点がこれら温度範囲内であることが好ましく、融点は250℃以下であることがより好ましく、240℃以下であることが特に好ましい。
重合体(I)には、カルボン酸基が含まれている。強化繊維(C)と重合体(I)の合計を100質量%として、樹脂中のカルボン酸基を含む構造単位の含有率は、通常は0.025〜0.10質量%である。下限値については、好ましくは0.027質量%以上、より好ましくは0.030質量%以上である。一方、上限値については、好ましくは0.09質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下、特に好ましくは0.07質量%以下である。カルボン酸基を含む構造単位の含有率がこれら範囲の下限値以上であると、テープワインディング成形体にテープ剥離(特に強化繊維(C)と樹脂との間の剥離)が起こりにくい傾向があり、強化繊維束自身の破壊が起こらないとテープ剥離が起こらない傾向がある。カルボン酸基を含む構造単位としては、例えば、マトリックス樹脂(M)、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、プロピレン系樹脂(D)に含まれるカルボン酸基由来の構造単位やカルボン酸塩由来の構造単位が挙げられる。
テープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物中の樹脂のカルボン酸基は、その含有率を酸価で把握することも可能である。好ましい酸価は、0.34〜1.15mg−KOH/g、より好ましくは0.35〜1.05mg−KOH/g、特に好ましくは0.36〜0.08mg−KOH/gである。
テープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物中の樹脂のカルボン酸基の含有率は、例えば、マトリックス樹脂(M)、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、プロピレン系樹脂(D)に含まれるカルボン酸基由来の構造単位やカルボン酸塩由来の構造単位の含有率を調整することで制御することが出来る。
重合体(I)のメルトフローレート(ASTM1238、230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは1〜500g/10分、より好ましくは、3〜300g/10分、特に好ましくは5〜100g/10分である。
重合体(I)の重量平均分子量は、好ましくは5万〜40万、より好ましくは10万〜37万、特に好ましくは15万〜35万である。
カルボン酸基を含む構造単位を有する樹脂を用いた繊維強化樹脂組成物は、レーザーによるテープワインディング成形を行っても、外観が良好で、剥離し難い成形体を形成できるので好ましい。
テープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物中の強化繊維束の好ましい形状は、連続繊維を一方向に引き揃えた形状であり、これを熱可塑性樹脂と複合化した一方向性炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体が好ましい。
本発明のテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物は、たとえ波長が300〜3000μmの光を吸収する色素(P)を含まなくても、毛羽立ちが起こりにくいという効果を奏する。ただし、本発明の効果を損なわない範囲で、この色素(P)を含んでいても良い。この色素(P)を含むと、より高レベルで外観不良を抑制することが可能となる場合がある。色素(P)としては公知の物を制限なく用いることが出来るが、カーボン系の色素が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
色素(P)の量の上限値については、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である(但し、成分(I)及び成分(C)の合計は100質量部である。)。一方、下限値については、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上である(但し、成分(I)及び成分(C)の合計は100質量部である。)。この色素(P)が含まれることにより、レーザーによる局部発熱を抑制し、樹脂組成物全体をより均一に加熱でき易いことが期待される。これにより、マトリックス樹脂の劣化や変形、より具体的には繊維の表面飛び出しや表面の平滑性、外観の低下を抑制することが出来る。
本発明の強化繊維束とマトリックス樹脂(M)を含む成形材料(繊維強化樹脂組成物)は、特に積層化した際の層間強度に優れているので、積層体を構成する為の材料としても有用である。積層体が本発明の成形材料(繊維強化樹脂組成物)を含む層を有していると、優れた界面強度と優れた機械物性を示す。したがって、このような積層体は、本発明の成形材料を含む層が補強材として機能する各種部材として用いることが出来る。この積層体は、例えば、自動車などのモビリティー分野の構成材料やアンダーシート、アンダーカバーなどの態様で使用することが出来る。
積層体における成形材料(繊維強化樹脂組成物)を含む層の具体的な態様は、その成形材料を公知の方法で成形したシートやテープが挙げられる。このようなシートやテープの厚さは、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5〜400μm、特に好ましくは10〜300μm、最も好ましくは10〜250μmである。例えば、このようなシートやテープを公知のプレス成形法やスタンプ成形法、前述のテープワインディング成形法などの方法で積層させることにより、積層体を得ることが出来る。これらの中でも、テープワインディング法、特にレーザー光線を用いたテープワインディング法が好ましい成形方法である。
テープワインディング成形体は、前記の繊維強化樹脂組成物を公知の方法でテープ形状に加工し、これを公知のレーザー融着方法を併用したテープワインディング法でテープ表面を溶融させながらマンドレルに接触させつつ、融着して得られる。テープワインディング成形方法の例としては、例えば、光硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする方法が、特開2005-206847号公報(例えば図8)等に開示されている。本発明で用いられるテープワインディング成形の場合、例えば、AFPT社(ドイツ)のホームページ(http://www.afpt.de/welcome/)に開示されているような、ロボットアームに光源としてレーザー照射部が取り付けられている装置において、熱可塑性樹脂を用い成形する方法を用いることが出来る。その他には、17th-Europian conference on Composite Materials, 1~8(2016)で発表された”Development of a hybrid tail rotor drive shaft by the use of thermoplastic Automated fiber placement” や、”Selective reinforcement of steel with CF/PA6 composites in a laser tape placement process : effect of surface preparation and laser angle on interfacial bond strength” に開示された装置や方法を用いることが出来る。
但し、レーザーによる融着を行う場合、光源やマンドレルを適宜移動させて効率よく溶融、融着させることが好ましい。このような方法を用いる場合、その移動速度は、繊維強化熱可塑性樹脂組成物テープの走査速度として、10〜100m/分、好ましくは30〜90m/分であることが好ましい。
レーザーの波長は好ましくは300〜3000μmである。この波長は、強化繊維(C)や色素(P)の吸収波長領域を含むことが好ましい。レーザーの出力は好ましくは50W〜5kWである。
本発明の強化繊維束は、種々の用途に展開できる。特にインストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール等の自動車部品、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、プラズマディスプレーなどの電気・電子部品、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品に好適である。また、テープ形状にした繊維強化熱可塑性樹脂組成物テープを用いたテープワインディング成形体は、例えば、パイプや圧力容器などの各種容器の外部補強部にも好適に用いることができる。即ち、各種積層構造を有する容器に好適に用いることが出来る。
本発明の強化繊維束を含む成形材料は、それ単独でも、また他の材料との複合や積層の態様であっても好ましく用いられる。中でも前述した通り、他の構造材料の補強材料として有利な材料である。
本発明の成形材料を用いる用途としては、具体的には、主翼、垂直、水平尾翼などの一次構造材や補助翼、方向舵、昇降舵などの二次構造材、座席、テーブルなどの内装材、動力装置、油圧シリンダー、コンポジットブレーキなどの航空機・ヘリコプターなどの一般的な飛行体の部品部材、ノズルコーン、モーターケースなどのロケット部品部材、アンテナ、構造体、太陽電池パネル、バッテリーケース、望遠鏡などの人工衛星部品部材、フレーム、シャフト、ローラー、板バネ、工作機械ヘッド、ロボットアーム、搬送ハンド、合成繊維ポットなどの機械部品部材、遠心分離機ローター、ウラン濃縮筒などの高速回転体部品部材、パラボラアンテナ、電池部材、レーダー、音響スピーカーコーン、コンピューター部品、プリンター部品、パソコン筐体、タブレット筐体などの電子電機部品部材、骨格部品、準構造部品、外板部品、内外装部品、動力装置、他機器−油圧シリンダー、ブレーキ、バッテリーケース、ドライブシャフト、エンジンパーツ、スポイラー、レーシングカーボディー、クラッシュコーン、イス、タブレット、電話カバー、アンダーカバー、サイドカバー、トランスミッションカバー、バッテリートレイ、リアステップ、スペアタイア容器、バス車体壁、トラック車体壁などの自動車・バイク部品部材、内装材、床板パネル、天井パネル、リニアモーターカー車体、新幹線・鉄道車体、窓拭きワイパー、台車、座席などの車両部品部材、ヨット、クルーザー、ボートなどの船舶船体、マスト、ラダー、プロペラ、硬帆、スクリュー、軍用艦胴体、潜水艦胴体、深海探査船など船舶部品部材・機体、アクチュエーター、シリンダー、ボンベ、水素タンク、CNGタンク、酸素タンクなどの圧力容器部品部材、攪拌翼、パイプ、タンク、ピットフロアー、プラント配管などの科学装置部品・部材、ブレード、スキン、骨格構造、除氷システムなどの風力発電部品部材、X線診断装置部品、車椅子、人工骨、義足・義手、松葉杖、介護補助器具・ロボット(パワーアシストスーツ)、歩行機、介護用ベッドなどの医療・介護機器部品部材・用品、CFコンポジットケーブル、コンクリート補強部材、ガードレール、橋梁、トンネル壁、フード、ケーブル、テンションロッド、ストランドロッド、フレキシブルパイプなどの土木建築・インフラ部品部材、マリンライザー、フレキシブルジャンパー、フレキシブルライザー、ドリリングライザーなどの海底油田採掘用部品部材、釣竿、リール、ゴルフクラブ、テニスラケット、バドミントンラケット、スキー板、ストック、スノーボード、アイスホッケースティック、スノーモービル、弓具、剣道竹刀、野球バット、水泳飛び込み台、障害者用スポーツ用品、スポーツヘルメットなどスポーツ・レジャー用品フレーム、ディスクホイール、リム、ハンドル、サドルなどの自転車部品、メガネ、鞄、洋傘、ボールペンなど生活用品、プラスチックパレット、コンテナ、物流資材、樹脂型、家具、ヘルメット、パイプ、足場板、安全靴、プロテクター、燃料電池カバー、ドローンブレード、ジグ、ジグフレームなどその他産業用途の部品部材・用品に好適である。
本発明の強化繊維束は、上記の用途において樹脂や金属などと積層させる層に含まれる成分として使用できる。また、上記の用途において、他の原料と混合させる成分とするなどの態様でも使用できる。好ましくは、種々の成形品の部分的な補強材として使用することができる。より好ましい態様として、前記成形体と補強材の積層体構造の一成分として利用することが出来る。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(1)プロピレン系樹脂の強化繊維束への付着量の測定
プロピレン系樹脂の付着した強化繊維束を約5g取り、120℃で3時間乾燥し、その重量W(g)を測定した。次いで強化繊維束を窒素雰囲気中で、450℃で15分間加熱し、その後室温まで冷却し、その重量W(g)を測定した。W(g)及びW(g)を用いて次式にて付着量を算出した。
付着量=[(W−W)/W]×100(質量%)。
(2)プロピレン系樹脂の重量平均分子量の測定
プロピレン系樹脂の重量平均分子量は、以下の条件でのGPC法で求めた。
液体クロマトグラフ:PolymerLaboratories社製、PL−GPC220型高温ゲル浸透クロマトグラフ(示差屈折率計装置内蔵)
カラム:東ソー株式会社製、TSKgelGMHHR−H(S)−HT×2本及び同GMHHR−H(S)×1本を直列接続した。
移動相媒体:1,2,4−トリクロロベンゼン(安定剤0.025%含有)
流速:1.0ml/分
測定温度:150℃
検量線の作成方法:標準ポリスチレンサンプルを使用した。
サンプル濃度:0.15%(w/v)
サンプル溶液量:500μl
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製単分散ポリスチレン
分子量較正方法:標準較正法(ポリスチレン換算)
(3)プロピレン系樹脂の構造解析
各プロピレン系樹脂について、有機化合物元素分析、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析、IR(赤外吸収)スペクトル分析、1H−NMR測定及び13C−NMR測定を実施し、プロピレン系樹脂の含有元素量、官能基構造の同定、各帰属プロトン、カーボンのピーク強度より単量体構造の含有割合について評価を実施した。有機化合物元素分析は、有機元素分析装置2400II(PerkinElmer社製)を用いて実施した。ICP発光分析はICPS−7510(株式会社島津製作所製)を用いて実施した。IRスペクトル分析はIR−Prestige−21(株式会社島津製作所製)を用いて実施した。1H−NMR測定及び13C−NMR測定はJEOLJNM−GX400スペクトロメーター(日本電子株式会社製)を用いて実施した。
(4)プロピレン系樹脂のカルボン酸塩含有量の測定
各プロピレン系樹脂に対して、以下の操作をおこなうことでカルボン酸塩含有量及び中和されていないカルボン酸含有量を測定した。プロピレン系樹脂0.5gをトルエン200ml中で加熱還流し、溶解させた。この溶液を0.1規定の水酸化カリウム−エタノール標準溶液で滴定し、下式により酸価を算出した。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。
酸価=(5.611×A×F)/B(mg-KOH/g)
A:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)
F:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター(1.02)
B:試料採取量(0.50g)。
次に、以上の方法で算出した酸価を下式により中和されていないカルボン酸基のモル数に換算した。
中和されていないカルボン酸基のモル数=酸価×1000/56(モル/g)
そして、別途IR、NMR、元素分析等の方法によりカルボン酸基のカルボニル炭素の定量を行って算出したカルボン酸基の総モル数(モル/g)を用いて、下式よりカルボン酸基の中和塩への転化率を算出した。
転化率%=(1−r)×100(%)
r:中和されていないカルボン酸基のモル数/カルボン酸基の総モル数
(5)プロピレン系樹脂の融点の測定
融点(Tm)は、セイコーインスツルメンツ社製DSC220C装置で示差走査熱量計(DSC)により測定した。具体的には、試料7〜12mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱した。その試料を、全ての結晶を完全融解させるために200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で−50℃まで冷却した。−50℃で5分間置いた後、その試料を10℃/分で200℃まで2度目に加熱した。この2度目の加熱試験で、ピーク温度を融点(Tm)として採用した。
(6)界面せん断強度(IFSS)の評価試験
マトリックス樹脂(M)からなる100μm厚の樹脂フィルム(20cm×20cm角)を2枚作製した。そして一方の樹脂フィルム上に、強化繊維束から取り出した20cm長の単繊維1本を直線状に配置し、他方の樹脂フィルムを単繊維を挟むように重ねて配置した。これを200℃で3分間、4MPaの圧力で加圧プレスし、単繊維が樹脂に埋め込まれたサンプルを作製した。このサンプルをさらに切出して、単繊維が中央に埋没した厚さ0.2mm、幅5mm、長さ30mmの試験片を得た。さらに同じ方法で合計5個の試験片を作製した。
これら5個の試験片に対して、通常の引張試験治具を用いて試験長14mm、歪速度0.3mm/minの条件で引張試験を行い、繊維の破断が起こらなくなった時の平均破断繊維長(l)を透過型光学顕微鏡を用いて測定した。フラグメンテーション法による界面せん断強度(τ)(MPa)は下式より求めた。
τ=(σf・d)/2Lc、 Lc=(4/3)・L
ここで、Lcは臨界繊維長、Lは最終的な繊維の破断長さ(μm)の平均値、σfは繊維の引張り強さ(MPa)、dは繊維の直径(μm)である。(参考文献:大沢ら、繊維学会誌Vol.33,No.1(1977))
σfは繊維の引張強度分布がワイブル分布に従うとして次の方法で求めた。即ち、単繊維を用い、試料長が5mm、25mm、50mmで得られた平均引張強度から最小2乗法により、試料長と平均引張強度との関係式を求め、試料長Lcの時の平均引張強度を算出した。
以上の試験方法に従って界面せん断強度(IFSS)を測定し、以下の基準で評価した。
「○」:IFSSが17MPa以上であった。
「×」:IFSSが17MPa未満であった。
(7)毛羽の評価試験
強化繊維束に、刃物を用いて繊維方向に沿って10mmの切り込みを入れた。強化繊維束を繊維方向に沿って手で引き裂いた。そして、引き裂く際の切り込みの先端部からその先15cmの箇所までの目視で確認できる毛羽の数を数えた。この操作を3回繰り返し、その数の平均値を羽毛発生数とした。そして比較例1の羽毛発生数を基準とし、以下の基準で各実施例の羽毛発生数を評価した。
「◎」:比較例1の羽毛発生数に対して1/5未満であった。
「○」:比較例1の羽毛発生数に対して1/5以上1/2未満であった。
「×」:比較例1の羽毛発生数に対して1/2以上であった。
「−」:基準となる比較例1
<強化繊維(C)>
後述する実施例で使用した強化繊維(C)について説明する。炭素繊維束(三菱レイヨン株式会社製、商品名パイロフィルTR50S12L、フィラメント数24000本、ストランド強度5000MPa、ストランド弾性率242GPa)をアセトン中に浸漬し、10分間超音波を作用させ、その後炭素繊維束を引き上げさらに3回アセトンで洗浄し、室温で8時間乾燥することにより付着しているサイジング剤を除去し、これを後述する実施例で使用した。
<実施例1>
(エマルションの製造)
プロピレン系樹脂(A)として、ショアD硬度が52であり、GPCで測定した重量平均分子量が35万であるプロピレン・ブテン共重合体を100質量部、プロピレン系樹脂(B)として、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体(重量平均分子量20,000、酸価45mg−KOH/g、無水マレイン酸含有率4質量%、融点140℃)10質量部、脂肪族カルボン酸塩(F)としてオレイン酸カリウム3質量部を混合した。この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30、L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、押出機のベント部に設けた供給口より20%の水酸化カリウム水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出した樹脂混合物を、押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入して混合液を得た。次いで、化合物(G)としてアニオン性界面活性剤(G−1)(花王株式会社製、ペレックス(登録商標)OT−P、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム)を5.5質量部添加して混合し、エマルションを得た。
なお、前記の無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂は、プロピレン・ブテン共重合体96質量部、無水マレイン酸4質量部、及び重合開始剤(日本油脂株式会社製、商品名パーヘキサ25B)0.4質量部を混合し、加熱温度160℃、2時間で変性を行って得られた変性樹脂である。
(強化繊維束の製造)
以上のようにして得たエマルションを、ローラー含浸法を用いて強化繊維(C)[前記の三菱レイヨン株式会社製強化繊維]に付着させた。次いで、オンラインで130℃、2分乾燥して低沸点成分を除去し、本発明の強化繊維束を得た。プロピレン系樹脂の強化繊維束への付着量は0.87質量%であった。
(成形材料(繊維強化樹脂組成物)の製造)
次いで、この強化繊維束57質量部と、マトリックス樹脂(M)として市販の未変性プロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロJ106MG)及び無水マレイン酸を0.5質量%グラフトした変性ポリプロピレン(ASTM D1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが9.1g/10分)の混合物(質量比95/5、Mw30万)43質量部を用いて、本発明の成形材料(繊維強化樹脂組成物)を調製した(繊維体積分率Vf0.4)。
この実施例1について、先に説明した界面せん断強度(IFSS)の評価試験及び毛羽の評価試験を実施した。なお、界面せん断強度(IFSS)の評価試験においては、マトリックス樹脂(M)として、上記と同じ未変性プロピレン樹脂(商品名プライムポリプロJ106MG)及び変性ポリプロピレン(質量比95/5)を用いた。評価結果を表1に示す。
<実施例2>
エマルションの製造において、アニオン性界面活性剤(G−1)の添加量を11.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例3>
エマルションの製造において、アニオン性界面活性剤(G−1)に代えて、アニオン性界面活性剤(G−2)(花王社製、エマール(登録商標)20T、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン)5.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例4>
エマルションの製造において、アニオン性界面活性剤(G−1)に代えて、アニオン性界面活性剤(G−3)(花王社製、デモール(登録商標)NL、β-ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)5.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例5>
エマルションの製造において、アニオン性界面活性剤(G−1)に代えて、アニオン性界面活性剤(G−4)(花王社製、ラテムル(登録商標)PD−104、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム)、5.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例6>
エマルションの製造において、アニオン性界面活性剤(G−1)に代えて、ノニオン性界面活性剤(G−5)(花王社製、エマルゲン(登録商標)A−60、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル)5.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例7>
エマルションの製造において、アニオン性界面活性剤(G−1)に代えて、Si含有化合物(G−6)(東レダウコーニング社製、商品名SM7001EX、アルキル・アラルキル変性シリコーンエマルション)5.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例8>
エマルションの製造において、アニオン性界面活性剤(G−1)に代えて、高級脂肪酸(G−7)(ラウリン酸)5.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
<実施例9>
エマルションの製造において、アニオン性界面活性剤(G−1)に代えて、鉱物油(G−8)(パラフィン)5.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
<比較例1>
(エマルションの製造)
攪拌機、温度計、還流冷却装置及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ジグライム60.0g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学株式会社製、商品名エポミックR302)100gを加え、70℃まで昇温しながら攪拌し、エポキシ樹脂が完全に溶解したことを確認した。ここに、モノエタノールアミン7.0g(活性水素モル数(B)=0.23モル)(エポキシ基のモル数(A)と多官能アミン中の活性水素のモル数(B)との比(A)/(B)=0.70)を加え、100℃で6時間反応した。続いて、70℃まで冷却し、ここに、無水コハク酸19.7gを添加し、再び95℃まで昇温し1時間反応し、多官能アミン変性エポキシ樹脂の側鎖にカルボキシル基を有するエポキシ樹脂のジグライム溶液を得た。この樹脂液を60℃まで冷却し、29%アンモニア水11.5gを添加し、60℃に保ちながら30分混合攪拌した。ここにイオン交換水175.6gを30分かけて滴下した。次いで、化合物(G)としてアニオン性界面活性剤(G−1)(花王株式会社製、ペレックス(登録商標)OT−P、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム)を6.3質量部添加して混合し、エマルションを得た。
(強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)の製造)
以上のようにして得たエマルションを用いたこと以外は、実施例1と同様にして強化繊維束及び成形材料(繊維強化樹脂組成物)を得た。評価結果を表1に示す。
Figure 2020158921
表1中、実施例1〜実施例9における成分(G)の含有量(質量部)は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対する含有量である。また、比較例1における成分(G)の含有量(質量部)は、エポキシ系樹脂100質量部に対する含有量(質量部)である。
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜9における界面せん断強度(IFSS)の評価は「○」、すなわち界面せん断強度は17MPa以上であった。このような優れた界面せん断強度を有する成形材料(繊維強化樹脂組成物)は、通常、積層化した際の層間強度が優れている。
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜3及び6〜7における毛羽の評価は「◎」、すなわちその毛羽の発生数は、比較例1の羽毛発生数に対して1/5未満と非常に少ない数であった。また、実施例4〜5及び8〜9における毛羽の評価は「○」、すなわちその毛羽の発生数は、比較例1の羽毛発生数に対して1/5以上1/2未満と少ない数であった。このような引き裂による毛羽の発生が少ない強化繊維を用いれば、同様に毛羽の発生が少ない成形材料(繊維強化樹脂組成物)及び成形体が得られる。
本発明の強化繊維束を用いた成形材料(繊維強化樹脂組成物)は、積層化した際の層間強度及び毛羽立ちの抑制の点で優れているので、種々の用途に利用可能であり、特に自動車部品、電気・電子部品、家庭・事務電気製品部品の用途に好適である。

Claims (19)

  1. プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、強化繊維(C)と、脂肪族カルボン酸塩(F)と、脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤、高級脂肪酸、天然油脂、鉱物油及びSi含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(G)とを含み、
    プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量がプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量よりも高い強化繊維束。
  2. 脂肪族カルボン酸塩(F)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜60質量部である請求項1に記載の強化繊維束。
  3. 化合物(G)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部である請求項1又は2に記載の強化繊維束。
  4. 化合物(G)がスルホコハク酸塩を含む請求項1〜3の何れかに記載の強化繊維束。
  5. 化合物(G)がSi含有化合物を含む請求項1〜3の何れかに記載の強化繊維束。
  6. プロピレン系樹脂(A)は、重量平均分子量が15万以上の成分(A−1)70質量%を超え100質量%以下と、重量平均分子量が15万未満の成分(A−2)30質量%未満と(但し、成分(A−1)及び(A−2)の合計は100質量%である。)を含み、
    プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して、プロピレン系樹脂(B)の量は3〜50質量部であり、
    プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は強化繊維束全体の0.3〜5質量%である請求項1〜5の何れかに記載の強化繊維束。
  7. 成分(A−1)が、周期律表の15〜17族元素を0.0003〜5質量%含む請求項6に記載の強化繊維束。
  8. 成分(A−1)が無水マレイン酸構造を含む請求項6又は7に記載の強化繊維束。
  9. プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は強化繊維束全体の0.3〜3質量%である請求項1〜8の何れかに記載の強化繊維束。
  10. プロピレン系樹脂(A)のショアA硬度が60〜90であるか、又は、ショアD硬度が45〜65である請求項1〜9の何れかに記載の強化繊維束。
  11. 請求項1〜10の何れかに記載の強化繊維束1〜80質量部と、
    熱可塑性であるマトリックス樹脂(M)20〜99質量部と
    (但し、前記強化繊維束及びマトリックス樹脂(M)の合計は100質量部である。)
    を含む成形材料。
  12. 請求項1〜10の何れかに記載の強化繊維束10〜70質量部と、
    プロピレン系樹脂(D)30〜90質量部と
    (但し、前記強化繊維束及びプロピレン系樹脂(D)の合計は100質量部である。)
    を含み、
    プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)、プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mw(B)及びプロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量Mw(D)が、以下の関係を満たす成形材料。
    Mw(A)>Mw(D)>Mw(B)
  13. 波長が300〜3000μmの光を吸収する色素(P)5質量部以下(但し、成分(I)及び成分(C)の合計は100質量部である。)をさらに含む請求項11又は12に記載の成形材料。
  14. 請求項1〜10の何れかに記載の強化繊維束を含み、且つ、
    炭素原子数2〜20のオレフィン由来単位を含み、融点及び/又はガラス転移温度が50〜300℃のカルボン酸基を有する重合体(I)20〜80質量部、及び
    強化繊維(C)20〜80質量部
    (但し、前記重合体(I)及び強化繊維(C)の合計は100質量部である。)
    を含むテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物。
  15. 波長が300〜3000μmの光を吸収する色素(P)5質量部以下(但し、成分(I)及び成分(C)の合計は100質量部である。)をさらに含む請求項14に記載のテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物。
  16. 請求項11〜13の何れかに記載の成形材料、若しくは、請求項14又は15に記載のテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物を含む層を有する積層体。
  17. 請求項16に記載の積層体を含むテープワインディング成形体。
  18. 請求項11〜13の何れかに記載の成形材料、若しくは、請求項14又は15に記載のテープワインディング成形用繊維強化樹脂組成物を含むテープを用いたテープワインディング成形法。
  19. プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、脂肪族カルボン酸塩(F)とを混合して混合液(1)を得る工程、
    前記混合液(1)に、脂肪族カルボン酸塩以外の界面活性剤、高級脂肪酸、天然油脂、鉱物油及びSi含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(G)を混合して混合液(2)を得る工程、及び、
    強化繊維(C)に前記混合液(2)を付着させる工程
    を有する強化繊維束の製造方法。
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