JP2018206812A - 電磁波遮蔽体、電磁波遮蔽体の製造方法及び用途 - Google Patents

電磁波遮蔽体、電磁波遮蔽体の製造方法及び用途 Download PDF

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一明 菊地
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健晴 伊崎
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Abstract

【課題】特定の周波数領域を含む広い周波数領域で良好な電磁波遮蔽効果を有しながら、軽量、高強度であり、卓越した構造設計および/または機能特性をも兼ね備えた生産性に優れる電磁波遮蔽体を提供する。
【解決手段】少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)を含む電磁波遮蔽体であり、第1層及び第3層は炭素繊維強化樹脂組成物を含み、第2層は熱可塑性樹脂を含み、前記第1層、第3層の何れかの厚さが0.05〜0.4mmである電磁波遮蔽体。
【選択図】図3

Description

本発明は、上下に配置された少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)から形成された電磁波遮蔽体であり、第1層及び第3層は炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を含む電磁波遮蔽体に関する。さらに、本発明は、上下に配置された少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)から形成された電磁波遮蔽体であり、第1層及び第3層は炭素繊維が一方向に配向した繊維強化熱可塑性樹脂補強材から成る電磁波遮蔽体の製造方法に関する。また、本発明は、このような電磁波遮蔽体の用途に関する。
特許文献1は、少なくとも3つの層で構成された、50Hz乃至200kHzの周波数範囲内の電磁場用の磁場遮蔽体であって、当該磁場遮蔽体は、プラスチックおよび/またはエラストマーから成る少なくとも1つの層が、電磁鋼板または電磁鋼帯から成る少なくとも1つの層と鋼板から成る少なくとも1つの層とを互いに一体に結合することを開示している。しかしながら、特許文献1の電場遮蔽体は、少なくとも1つの層に鋼板を用いるため、質量が重くなる傾向がある。また、鋼板をプラスチックと積層するときに接着の工程が必要なため、製作にかかる時間が長くなる傾向がある。
また、特許文献2では、炭素繊維、金属繊維及び熱可塑性樹脂からなる導電性組成物層の両側に熱可塑性樹脂層を設けた電磁波遮蔽体が記載されている。
特表2015−512137号公報 特開平6−21683号公報
本発明者らの検討によれば、炭素繊維強化樹脂組成物層単層では特定の周波数領域(具体的には10〜100MHz付近)での電磁波遮蔽効果が十分とは言えない結果を得た。これを改善することは、電磁波遮蔽体としての望ましい性能向上に該当する。
本発明の目的は、電磁波遮蔽体であって、特定の周波数領域を含む広い周波数領域で良好な電磁波遮蔽効果を有しながら、軽量、高強度であり、卓越した構造設計および/または機能特性をも兼ね備えた、生産性に優れる電磁波遮蔽体を提供することである。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、上下に配置された少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)から形成された1MHz乃至1GHzの周波数範囲内の電磁場用の電磁場遮蔽体であって、第1層、第3層が炭素繊維強化樹脂組成物を含む層であり、第2層は熱可塑性樹脂を含む層である積層構造を特徴とする。好ましくは前記の炭素繊維は配向し(例えばMD方向に配向し)、また、第1層、第3層を射出成形金型内に配置し、第2層を射出成形により金型内で一体化させることで高い電磁波遮蔽性を持つ3次元形状を有した電磁波遮蔽体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は以下の事項により特定される。
[1]少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)を含む電磁波遮蔽体であり、第1層及び第3層は炭素繊維強化樹脂組成物を含み、第2層は熱可塑性樹脂を含み、前記第1層、第3層の何れかの厚さが0.05〜0.4mmである電磁波遮蔽体。
[2]炭素繊維強化樹脂組成物の炭素繊維が、一方向に配向していることを特徴とする[1]に記載の電磁波遮蔽体。
[3]磁波遮蔽体の第2層を形成する熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の電磁波遮蔽体。
[4]炭素繊維強化樹脂組成物がマトリックス樹脂を含むことを特徴とする[1]乃至[3]の何れかに記載の電磁波遮蔽体。
[5]電磁波遮蔽体が、三次元構造に賦形されていることを特徴とする[1]乃至[4]の何れかに記載の電磁波遮蔽体。
[6][1]乃至[5]の何れかに記載の電磁波遮蔽体を用いた車両の車体部分もしくはシャーシ部分、充電式電池を備えた電動自動車のフロアパネル、充電式電池を収容するための筐体の壁および/または床。
[7]少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)を含む電磁波遮蔽体であり、第1層及び第3層は炭素繊維強化樹脂組成物を含み、第2層は熱可塑性樹脂を含み、前記第1層、第3層の何れかの厚みが0.05〜0.4mmである電磁波遮蔽体の製造方法において、第1層及び第3層を射出成形の金型内に配置した後、第2層を構成する熱可塑性樹脂を第1層及び第3層の間に射出して一体化する電磁波遮蔽体の製造方法。
[8]炭素繊維強化樹脂組成物を予備成形によって三次元構造に賦形したものを第1層及び第3層とすることを特徴とする[7]に記載の電磁波遮蔽体の製造方法。
本発明の電磁波遮蔽体は繊維強化熱可塑性樹脂補強材からなるので、軽量でありながら高強度で、熱可塑性樹脂の射出成形により容易に一体化することが出来る。また、繊維強化熱可塑性樹脂補強材を予備成形により射出成形金型形状に近い形状を賦形されたものを用いて金型内一体化すれば三次元構造を有する電磁波遮蔽体が得られる。この電磁波遮蔽体は、賦形性に優れるので、さまざまな形状の用途に用いることができる。
実施例で用いた金型を示す模式的平面図である。 実施例で得た射出成形体の試験片の切り出し部分を示す模式的平面図である。 実施例及び比較例の電磁波遮蔽体に対する電磁波遮蔽性評価の結果を示すグラフである。
本発明に用いる炭素繊維強化樹脂組成物は、公知の組成物を用いることが出来る。例えば、炭素繊維束及びマトリックス樹脂を含む構成であることが好ましい。さらには、前記炭素繊維束は、後述するプロピレン系樹脂(A)及び後述するプロピレン系樹脂(B)を含むことが好ましい。また、当該炭素繊維束は炭素繊維が一方向に配向した態様であることが好ましい。
<炭素繊維>
本発明の上記の炭素繊維は、例えば、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、成形品の軽量化効果の観点から好ましく、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。
さらに炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05〜0.5であるものが好ましく、より好ましくは0.08〜0.4であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂とより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスから一般的に0.5以下とすることが好ましい例である。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法をとることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
炭素繊維の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
炭素繊維は、単糸が多数束状になった構造をとることが好ましい。単糸数には、特に制限はなく、通常は100〜350,000本の範囲内のものを使用することができる。好ましくは1,000〜250,000本、より好ましくは5,000〜220,000本の範囲内で使用することが好ましい。本発明では、後述するプロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)を用いるので、単糸数40,000以上の繊維束(ラージトウ)にも優れた効果を示すことが期待される。
<プロピレン系樹脂(A)>
本発明に用いるプロピレン系樹脂(A)は炭素数2〜20のオレフィン単位を含み、プロピレンから導かれる構成単位が50モル%以上であることが好ましく、重量平均分子量Mwが5万を超えるプロピレン系樹脂(A−1)を含むことが好ましい。
プロピレン系樹脂(A−1)の好ましい重量平均分子量範囲は7万以上、より好ましくは10万以上である。一方で、重量平均分子量の上限値は特に規定されないが、成形時の溶融流動性や後述する組成物成形体の外観の観点からは、好ましくは70万、より好ましくは50万、更に好ましくは45万、特に好ましくは40万である。プロピレン系樹脂(A−1)の後述するポリプロピレン系樹脂(A−2)との合計を100質量%として、プロピレン系樹脂(A−1)は60質量%を超え、100質量%以下の割合で含まれる。好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは73〜100質量%である。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、必要に応じて重量平均分子量Mwが10万以下のプロピレン系樹脂(A−2)が含まれることを特徴とする。好ましい重量平均分子量の範囲は、5万以下、より好ましくは4万以下である。一方、重量平均分子量の下限は、後述する強化繊維束の強度や取扱い性(ベタ付きなど)を考慮すると、好ましくは10,000、より好ましくは15,000、更に好ましくは20,000、特に好ましくは25,000である。またポリプロピレン系樹脂(A−2)は、0〜40質量%の割合で含まれる(但し、前記のプロピレン系樹脂(A−1)とプロピレン系樹脂(A−2)との合計が100質量%とする。)。好ましくは0〜30質量%、更に好ましくは0〜27質量%である。
プロピレン系樹脂(A−1)の重量平均分子量Mwは、プロピレン系樹脂(A−2)の重量平均分子量Mwよりも大きく、その差は、好ましくは20,000〜300,000、より好ましくは30,000〜200,000、更に好ましくは35,000〜200,000である。
また、プロピレン系樹脂(A)の融点もしくはガラス転移温度は0〜165℃である。融点を示さない樹脂を用いる場合もある。
重量平均分子量が高い成分が比較的多く含まれるとプロピレン系樹脂が特定の量含まれる炭素繊維束は、前記のプロピレン系樹脂が比較的少ない量で用いられる場合でも、毛羽立ち形状や、例えばその衝撃等の環境要因による崩壊、剥がれ、折れ等の形状変化、また、それらに起因する微粉などの形状変化を起し難い傾向がある。
前記のプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン由来の構造単位を有する樹脂であり、通常はプロピレンの重合体である。好ましくはα−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどから選ばれる少なくとも一種のオレフィンやポリエン由来の構造単位が含まれる所謂共重合体が好ましい例である。
前記のα−オレフィンとして具体的には、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等のプロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンを挙げることが出来る。これらの中でも1−ブテン、エチレン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンを好ましい例として挙げることが出来、特に好ましくは、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンである。
共役ジエン、非共役ジエンとしては、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられ、これらの成分は、1種類または2種類以上を選択することができる。
前記プロピレン系樹脂(A)は、プロピレンと前記のオレフィンやポリエン化合物とのランダムあるいはブロック共重合体であることが好ましい。本願の目的を損なわない範囲内であれば他の熱可塑性重合体を用いることも出来る。例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。
本発明において、後述するプロピレン系樹脂(D)(一般的に、マトリックス樹脂と言われる)との親和性を高めることと、後述するプロピレン系樹脂(B)との親和性を高める両方の観点から、プロピレン系樹脂(A)はプロピレンから導かれる構成単位を好ましくは50モル%以上、100モル%以下、より好ましくは、50〜99モル%、さらに好ましくは55〜98モル%、特に好ましくは60〜97モル%含んでいる。
プロピレン系樹脂における前記単量体繰り返し単位の同定には、主として、13C NMR法により決定される。質量分析および元素分析が用いられることもある。また、前記NMR法で組成を決定した組成の異なる複数種の共重合体のIR分析を行い、特定波数の吸収や検体の厚さ等の情報から検量線を作成して組成を決定する方法も採用出来る。このIR法は、工程分析などに好ましく用いられる。
また、本発明において、プロピレン系樹脂(A)のショアA硬度が60〜90であるか、またはショアD硬度が45〜65であることが好ましい。ショアA硬度のより好ましい範囲は、65〜88であり、さらに好ましくは70〜85である。ショアD硬度のより好ましい範囲は48〜63であり。更に好ましくは50〜60である。
プロピレン系樹脂(A)が、このような硬度の範囲であると、強化繊維への追従性が良いので、部分的な割れなどが発生し難く、安定した形状の強化繊維束を形成し易い利点がある。また後述するプロピレン系樹脂(D)と組み合わせた組成物とした場合、その強度を高める上で有利な傾向がある。これはプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(D)とが、良好な分子鎖の絡み合い構造を取るためではないかと推測される。
プロピレン系樹脂(A)はカルボン酸基やカルボン酸エステル基等を含む化合物で変性されていても良いし、未変性体であっても良い。プロピレン系樹脂(A)が変性体である場合、その変性量は−C(=O)−O−で表される基換算で2.0ミリモル当量未満であることが好ましい。より好ましくは1.0ミリモル当量以下、さらに好ましくは0.5ミリモル当量以下である。また、プロピレン系樹脂(A)が変性体である場合、主として前記(A―2)成分が変性体である態様が好ましい。
一方、用いる用途によってはプロピレン系樹脂(A)は、実質的に未変性体であることが好ましい場合もある。ここで、実質的に未変性とは、望ましくは全く変性されていないことであるが、変性されたとしても前記目的を損なわない範囲である、変性量が−C(=O)−O−で表される基換算で0.05ミリモル当量未満であることが好ましい。より好ましくは0.01ミリモル当量以下、さらに好ましくは0.001ミリモル当量以下、特に好ましくは0.0001ミリモル当量以下である。
<プロピレン系樹脂(B)>
前記のプロピレン系樹脂(B)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂である。これは、強化繊維との相互作用を高めるうえでカルボン酸塩を含むことが効果的であるためである。
上記プロピレン系樹脂(B)の原料としては、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体で代表される、プロピレンとα−オレフィンの単独または2種類以上との共重合体がまず挙げられる。次いで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および/またはケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体を挙げることが出来る。このような重合体は、プロピレン系の重合体とカルボン酸構造を有する単量体とをラジカルグラフト重合するのが、プロピレン系樹脂(B)を製造する代表的な方法である。上記プロピレン系の重合体に用いられるオレフィンは、プロピレン系樹脂(A)と同様の考えで選定することができる。
特殊な触媒を用いれば、プロピレンと前記のカルボン酸エステルを有する単量体とを直接重合することや、エチレンが多く含まれる重合体であれば(エチレンとプロピレンなどの)オレフィンとカルボン酸構造を有する単量体とを主として高圧ラジカル重合して、プロピレン系樹脂(B)を得ることが出来る可能性もある。
ここで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および、ケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、たとえば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物が挙げられ、またこれらのエステル、さらにはオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物なども挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示され、その無水物としては、ナジック酸 TM(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いることもできるし、また2種類以上のものを用いることもできる。また、これらの中でも、酸無水物類が好ましく、さらには無水マレイン酸が好ましい。
上記プロピレン系樹脂(B)は、上記のような種々の方法で得ることができるが、より具体的には、有機溶剤中でプロピレン系樹脂と不飽和ビニル基を有するエチレン系不飽和カルボン酸やオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体とを重合開始剤の存在下で反応させた後に脱溶剤する方法や、プロピレン系樹脂を加熱溶融し得られた溶融物に不飽和ビニル基を有するカルボン酸および重合開始剤を攪拌下で反応させる方法や、プロピレン系樹脂と不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤とを混合したものを押出機に供給して加熱混練しながら反応させた後、中和、けん化などの方法でカルボン酸塩とする方法を挙げることができる。
ここで重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等の各種パーオキサイド化合物を挙げることが出来る。また、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用いても良い。これらは、単独あるいは2種以上を併用することができる。
また有機溶剤としては、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソオクタン、イソデカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等の有機溶剤を用いることができ、またこれらの2種以上からなる混合物であっても構わない。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素が好ましく、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素がより好適に用いられる。
上記の様にして得られたプロピレン系樹脂(B)のカルボン酸基の含有率は、後述するNMRやIR測定で決定することが出来るのは公知である。また、例えば別の方法として、酸価で評価することも出来る。前記のプロピレン系樹脂(B)の酸価の好ましい範囲は10mg−KOH/g〜100mg−KOH/gであり、より好ましくは20mg−KOH/g〜80mg−KOH/gであり、更に好ましくは25mg−KOH/g〜70mg−KOH/gであり、特に好ましくは25mg−KOH/g〜65mg−KOH/gである。
上記のように得られたプロピレン系樹脂(B)は、中和またはケン化工程を経て得る方法は、上記プロピレン系樹脂(B)の原料を水分散体にして処理することが容易となるので、実用的に好ましい方法である。
上記プロピレン系樹脂(B)の原料の水分散体の中和またはケン化に用いる塩基性物質としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/またはその他金属類、ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウム等の無機アミン、アンモニア、(トリ)メチルアミン、(トリ)エタノールアミン、(トリ)エチルアミン、ジメチルエタノールアミン、モルフォリン等の有機アミン、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物および/またはその他金属類、水酸化物、水素化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/またはその他金属類の弱酸塩を挙げることができる。塩基物質により中和またはケン化されたカルボン酸塩の基あるいはカルボン酸エステル基としては、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩またはカルボン酸アンモニウムが好適である。
また、中和度またはけん化度、すなわち、プロピレン系樹脂(B)の原料が有するカルボン酸基の上記金属塩やアンモニウム塩等への転化率は、水分散体の安定性と、繊維との接着性の観点より、通常50〜100%、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは85〜100%である。したがって、上記プロピレン系樹脂(B)におけるカルボン酸基は、上記塩基物質によりすべて中和またはケン化されていることが望ましいが、中和またはケン化されずに一部カルボン酸基が残存していてもよい。上記のような酸基の塩成分を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を行う方法や、IR、NMR、質量分析および元素分析等を用いて酸基の塩の構造を同定する方法が挙げられる。
ここでカルボン酸基の中和塩への転化率は、加熱トルエン中にプロピレン系樹脂を溶解し、0.1規定の水酸化カリウム−エタノール標準液で滴定し、プロピレン系樹脂の酸価を下式より求め、元のカルボン酸基の総モル数と比較して算出する方法などが挙げられる。
酸価=(5.611×A×F)/B(mgKOH/g)
A:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)
F:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター
B:試料採取量(g)。
上記で算出した酸価を下式を用いて中和されていないカルボン酸基のモル数に換算する。
中和されていないカルボン酸基のモル数=酸価×1000/56(モル/g)。
カルボン酸基の中和塩への転化率は、別途IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボン酸基のカルボニル炭素の定量をおこなって算出したカルボン酸基の総モル数(モル/g)を用いて下式にて算出する。
転化率%=(1−r)×100(%)
r:中和されていないカルボン酸基のモル数/カルボン酸基の総モル数。
また、炭素繊維との相互作用を高める観点から、前記プロピレン系樹脂(B)の重合体鎖に結合したカルボン酸塩の含有量は、プロピレン系樹脂(B)1g当たり、−C(=O)−O−で表される基換算で総量0.05〜5ミリモル当量であることが好ましい。より好ましくは0.1〜4ミリモル当量、さらに好ましくは0.3〜3ミリモル当量である。
上記のようなカルボン酸塩の含有量を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を定量的に行う方法や、IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボン酸塩のカルボニル炭素の定量をおこなう方法が挙げられる。カルボン酸骨格の含有率のより具体的な測定方法は以下の方法を例示できる。試料を100MHz以上の条件で120℃以上の高温溶液条件で、13CNMR法によりカルボン酸骨格の含有率を常法により特定することが出来る。また、カルボニル骨格の含有率の異なる複数の試料を前記13CNMRで測定してカルボン酸骨格の含有率を特定した後、同じ試料のIR測定を行い、カルボニルなどの特徴的な吸収と試料厚みや他の代表的な吸収との比とカルボン酸骨格の含有率との検量線を作成することで、IR測定により、カルボン酸骨格の導入率を特定する方法も知られている。
<プロピレン系樹脂(A)(B)>
前記のプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)との重量平均分子量Mwの関係は、プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量Mwの方が大きいことが好ましい。この場合、本発明においてプロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量と、プロピレン系樹脂(B)との重量平均分子量との差は、好ましくは10,000〜380,000である。より好ましくは120,000〜380,000更に好ましくは130,000〜380,000である。
プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mwをプロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量Mwよりも小さくすることで、成形時にプロピレン系樹脂(B)が移動し易く、強化繊維とプロピレン系樹脂(B)との相互作用が強くなることが期待される。
プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mwは、上記相互作用の観点および、プロピレン系樹脂(A)、好ましくはプロピレン系樹脂(A−2)との相溶性などを考慮すると、1,000〜100,000であることが好ましい。より好ましくは2,000〜80,000、さらに好ましくは5,000〜50,000、特に好ましくは5,000〜30,000である。
なお本発明における重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(ASTM1238規格、230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは3〜500g/10分である。好ましい下限値は5g/10分、更に好ましくは7g/10分であり、好ましい上限値は400g/10分、更に好ましくは350g/10分である。
また好ましいメルトフローレート範囲としては、ASTM1238規格、190℃、2.16kg荷重での測定値が上記と同様の数値範囲である場合もある。
前記のプロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)は、様々な形態で用いることが出来る。例えば、プロピレン系樹脂をそのままもしくは耐熱安定剤を併用して溶融させ、炭素繊維と接触させる方法や、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とをエマルションやサスペンション状態で炭素繊維と接触させる方法が挙げられる。前記の接触工程の後に、熱処理などを行っても良い。
本発明において、炭素繊維と効率的に接触させる観点からは、プロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)は、エマルション状態で用いることが好ましい。
また、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対してプロピレン系樹脂(B)は好ましくは3〜50質量部、より好ましくは5〜45質量部、更に好ましくは10〜40質量部であり、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は強化繊維束全体の中で好ましくは60〜5質量%、より好ましくは55〜3質量%であり、さらに好ましくは50〜3質量%であることを特徴とする。
前記の通り、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)との割合は、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して、プロピレン系樹脂(B)が好ましくは3〜50質量部である。この範囲内であれば、主としてプロピレン系樹脂(A)に由来する強度や形状などに関係する特性と、炭素繊維との親和性とを高いレベルで両立させることが可能となる。好ましくは、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対してプロピレン系樹脂(B)が5〜45質量部、より好ましくはプロピレン系樹脂(A)100質量部に対してプロピレン系樹脂(B)が5〜40質量部、さらに好ましくはプロピレン系樹脂(A)100質量部に対してプロピレン系樹脂(B)が7〜40質量部である。プロピレン系樹脂(B)が3質量部より少なくなると、炭素繊維との親和性が低下し、接着特性に劣る可能性がある。またプロピレン系樹脂(B)が50質量部よりも多くなると、混合物自体の強度が低下したり、毛羽が増大する場合があり、強固な接着特性を維持出来ない可能性がある。
前記の炭素繊維束に用いられる各種プロピレン系樹脂の分子量や含有率を前記範囲とすることで、プロピレン系樹脂(A)および(B)が効果的に炭素繊維束およびマトリックス樹脂と相互作用を持ったり、プロピレン系樹脂(A)および(B)との相溶性が比較的高く、接着性を向上させることが期待される。
前記の炭素繊維束には、前記プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を併用しても構わない。例えば、プロピレン系樹脂をエマルジョン形態として炭素繊維に付与する場合は、エマルジョンを安定化させる界面活性剤などを別途用いていても構わない。このような他の成分は、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)の合計に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
上記したプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とは、炭素繊維束全体の0.3〜5質量%という比較的少ない量で含まれる。含まれるプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とが0.3質量%未満の場合は、炭素繊維がむき出しの部分が多数存在することがある。このような場合、得られる製品の強度が低下したり、炭素繊維束の取り扱い性が不十分となる場合がある。ここでいう取り扱い性とは例えば、炭素繊維束をボビンに巻き取る際の繊維束の硬さやさばけ易さを挙げることが出来る。一方、前記含有率が5質量%よりも多くなると、成形品の力学特性が極端に低下したりする場合や、炭素繊維束が極端に硬くなり、ボビンに巻けなくなるなどの不具合を生じる場合がある。炭素繊維束全体の前記プロピレン系樹脂(A)と前記プロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は、接着性と炭素繊維束の取り扱い性とのバランスから、その好ましい下限値は、0.4質量%である。一方、好ましい上限値は4質量%でありさらに好ましくは3質量%である。
前記プロピレン系樹脂の混合物を炭素繊維に付着させる方法については、特に制限はないが、均一に単繊維間に付着させやすいという観点から、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)との混合物のエマルジョンを炭素繊維に付与したのちに乾燥させる方法が好ましい。炭素繊維にエマルジョンを付与する方法としては、ローラー浸漬法、ローラー転写法、スプレー法などの既存の手法により付与する方法を用いることができる。
<マトリックス樹脂>
マトリックス樹脂については、熱可塑性樹脂であれば、公知の物を制限なく適用することが出来る。例えば、重合体(I)として以下のようなポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリーレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、さらにはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を用いても良く、これらの1種または2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に極性の低いポリオレフィン系の樹脂が好ましく、今後の環境問題を考慮しても、オレフィン系重合体が好ましい。中でもコスト、成形品の軽量性の観点からはエチレン系の重合体やプロピレン系の重合体が好ましく、後述するプロピレン系樹脂(D)がより好ましい。即ち、炭素繊維束含有プロピレン系樹脂組成物が成形材料や成形品に好ましく用いられる。
マトリックス樹脂のプロピレン系樹脂(D)は、未変性のプロピレン系樹脂であっても良いし、変性などの方法でカルボン酸構造やカルボン酸塩構造を含むプロピレン系樹脂を含んでいても良い。好ましくは後者の変性プロピレン系樹脂を含む態様である。その好ましい質量比は、未変性体/変性体比で、80/20〜99/1であり、好ましくは89/11〜99/1であり、より好ましくは89/11〜93/7であり、更に好ましくは、90/10〜95/5である。前記のプロピレン系樹脂の組成としては、プロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)の説明で記載した単量体(オレフィンやカルボン酸エステル化合物など)由来の構造単位を含む一般的なプロピレン樹脂が好ましい態様である。例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、変性ポリプロピレンと言われるプロピレン重合体である。
前記のプロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量は、前記プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)と下記のような関係にあることが好ましい。
プロピレン系樹脂(A)>プロピレン系樹脂(D)>プロピレン系樹脂(B)
プロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量としては、具体的には5万〜35万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10万〜33万であり、更に好ましくは15万〜32万である。またプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(D)との分子量の差は、好ましくは1万〜40万であり、より好ましくは2万〜20万であり、さらに好ましくは2万〜10万である。
本発明に用いられる炭素繊維強化樹脂組成物は、前記炭素繊維束25〜75質量部であり、好ましくは30〜68質量部であり、より好ましくは35〜65質量部を含んでいる。一方、マトリックス樹脂として用いられるプロピレン系樹脂(D)は、75〜25質量部、好ましくは70〜32質量部、より好ましくは65〜35質量部を含まれる。但し、上記の割合は、前記炭素繊維束とプロピレン系樹脂(D)の合計を100質量部とした時の値である。
プロピレン系樹脂(D)は、主として炭素繊維、プロピレン系樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)を含む炭素繊維束の周りに接着するような態様になっていることが好ましい。
プロピレン系樹脂(D)は、未変性プロピレン系樹脂と酸変性プロピレン系樹脂を含むことが好ましい。特に、比較的多くの変性プロピレン系樹脂を含む場合、レーザー融着法を用いても炭素繊維とプロピレン系樹脂との間の構造が変化し難い傾向がある。これは、炭素繊維近傍で、前記の変性プロピレン系樹脂(A−2)がレーザーにより破壊されたとしても、変性したプロピレン系樹脂(D)が補完する為ではないかと推測される。
本発明に用いられる前記プロピレン系樹脂類は、公知の方法で製造することが出来、その樹脂(重合体)の立体規則性はイソタクチックであってもシンジオタクチックであってもアタクチックであっても良い。立体規則性は、イソタクチックもしくはシンジオタクチックであることが好ましい。
上記のような樹脂(特に未変性の樹脂)の具体的な製造方法は、例えば、国際公開2004/087775号パンフレット、国際公開2006/057361号パンフレット、国際公開2006/123759号パンフレット、特開2007−308667号公報、国際公開2005/103141号パンフレット、特許4675629号公報、国際公開2014/050817号パンフレット、特開2013−237861号公報等を挙げることが出来る。
炭素繊維強化樹脂組成物に用いられる炭素繊維束とマトリックス樹脂の例である重合体(I)との質量比率は、80/20〜20/80であることが好ましい。より好ましくは、75/25〜30/70、さらに好ましくは70/30〜35/65、特に好ましくは65/35〜40/60、殊に好ましくは60/40〜40〜60である。炭素繊維束の含有率が多すぎると射出成形による一体化でテープ剥離が起こり易くなることがある。一方で、樹脂の含有率が多すぎると成形体の強度が低下することがある。
前記の樹脂の融点もしくはガラス転移温度は、好ましくは50〜300℃である。好ましい下限値は70℃、より好ましくは80℃である。一方で、好ましい上限値は280℃、より好ましくは270℃、更に好ましくは260℃である。また、前記の規定は融点であることが好ましく、さらには好ましい融点の上限値は250℃、更に好ましくは240℃である。
前記の樹脂には、カルボン酸基が含まれていることが好ましい。炭素繊維束と重合体(I)の合計を100質量%として、前記カルボン酸基を含む構造単位の好ましい含有率は0.010〜0.045質量%である。好ましくは0.012〜0.040質量%、更に好ましくは0.015〜0.035質量%である。前記カルボン酸基を含む構造単位の含有率が低過ぎると、テープワインディング成形体にテープ剥離が起こり易くなることがある。尚、前記カルボン酸基を含む構造単位としては、例えば前記のプロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、プロピレン系樹脂(D)に含まれるカルボン酸基由来の構造単位やカルボン酸塩由来の構造単位を挙げることが出来る。
前記の樹脂にカルボン酸基が含まれている場合、その含有率を酸価で把握することも可能である。好ましい酸価は、0.1〜0.55mg−KOH/g、より好ましくは0.12〜0.45mg−KOH/g、さらに好ましくは0.13〜0.40mg−KOH/gである。
また、前記の炭素繊維強化樹脂組成物にプロピレン系樹脂(D)が用いられる場合、その好ましいメルトフローレイト(ASTM1238規格、230℃、2.16kg荷重)は、1〜500g/10分、より好ましくは、3〜300g/10分、さらに好ましくは5〜100g/10分である。
前記樹脂の重量平均分子量としては、具体的には5万〜40万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10万〜37万であり、更に好ましくは15万〜35万である。
また、エマルションの製造方法も公知の方法を使用することが出来、例えば、国際公開2007/125924号パンフレット、国際公開2008/096682号パンフレット、特開2008−144146号公報等を例示することが出来る。
尚、前述の毛羽立ちなどの原因と考えられる繊維束の解れ易さを特定する方法として、特許5584977号公報に記載の方法や特開2015−165055号公報に記載の集束性の評価方法が知られている。本願の実施例では前者で評価する。後者については、具体的には、下記のような方法である。
炭素繊維束をステンレス製のハサミを用いて5mm程度の短繊維に裁断する。得られた短繊維を以下の目視判定で評価する。
○:短繊維が裁断前とほぼ同じ状態を保っている。
×:短繊維が大きくばらけたり、割れが生じている 。
前記の炭素繊維束を形成する単繊維は、より強い接着性を発揮するために、単繊維表面の60%以上がプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とを含む混合物で被覆されていることが好ましい。被覆されていない部分は接着性を発揮することができず、剥離の起点となり結果として全体の接着性を下げてしまうことがある。より好ましくは70%以上を被覆した状態であり、さらに好ましくは80%以上を被覆した状態である。被覆状態は走査型電子顕微鏡(SEM)または繊維表面の元素分析でカルボン酸塩の金属元素をトレースする手法などを用いることができる。
本発明に用いられる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは波長が300〜3000μmの光を吸収する色素(II)が含まれていても良い。このような色素としては、公知の物を制限なく用いることが出来る。好ましい例としてはカーボン系の色素を挙げることが出来る。より好ましくは、カーボンブラックである。
このような色素(II)は、前記の炭素繊維強化樹脂組成物全体の0.01〜5質量%である。好ましい下限値は0.1質量%、より好ましくは0.2質量%である。一方好ましい上限値は3質量%、より好ましくは2質量%である。
炭素繊維束を用いた成形方法は特に限定されないが、例えば、開繊された繊維束を引き揃えた後、溶融したマトリックス樹脂と接触させることにより、炭素繊維が一方向に配向した繊維強化熱可塑性樹脂補強材(一方向性材)を得る方法を好ましい態様として挙げることが出来る。炭素繊維が一方向(好ましくはMD方向)に配向していれば、電磁波遮蔽現象で生じる電荷が前記炭素繊維上を流れやすく、比較的少ない炭素繊維量で高い電磁波遮蔽効果を実現できる可能性がある。
炭素繊維強化樹脂組成物は、その形状は特に制限されないが、好ましい態様としては、炭素繊維が一方向に配向したものであり、通常はシート状またはフィルム状であり、その厚さは好ましくは0.05〜0.4mm、より好ましくは0.1〜0.25mmである。
<第2層>
第2層を構成する樹脂の種類は特に限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。その樹脂の具体例としては、先に説明した炭素繊維強化樹脂組成物のマトリックス樹脂の重合体(I)の具体例と同じである。中でもポリプロピレン系樹脂が好ましい。特に、射出成形体を構成する樹脂は炭素繊維強化樹脂組成物のマトリックス樹脂と同じであることが好ましい。射出成形体を構成する樹脂は、補強繊維を含有していても良い。強化繊維としては無機物の繊維が挙げられ、より具体的には金属酸化物繊維、炭素繊維、ガラス繊維、モスハイジ、炭酸カルシウムウィスカーなどを挙げることが出来る。これらの中では無機酸化物繊維が好ましい、より好ましくは価格の安価なガラス繊維を挙げることが出来る。射出成形体中に含まれる補強繊維の含有量は、好ましくは10〜50質量%である。
<電磁波遮蔽体>
本発明の電磁波遮蔽体は、少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)からなり、第1層及び第3層は炭素繊維強化樹脂組成物を含み、第2層は上記の熱可塑性樹脂を含み、前記第1層、第3層の何れかの厚さが0.05〜0.4mmであることを特徴とする。この構成の電磁波遮蔽体であれば、電磁波遮蔽性に優れ、軽量で、高剛性で、生産性に優れる。
本発明の電磁波遮蔽体は、電磁波遮蔽性に優れ、周波数1GHz以下、さらには特に100MHz以下である電磁波に対する遮蔽性に優れる。特に、10〜100MHzの周波数の電磁波を遮蔽する効果が高い傾向がある。具体的には40dB以上、好ましくは45dB以上の遮蔽効果を持つ。
電磁波遮蔽効果として具体的には、アドバンテスト法による電磁波遮蔽性は、1MHz乃至100MHzの周波数範囲において、40dB以上、好ましくは45dB以上であることが好ましい。10〜100MHzの領域においては、なお、電磁波遮蔽性は、遮蔽材が無い空間の電界強度をE0(V/m)として、遮蔽材を配置した電界強度をE1(V/m)とすると、電磁波遮蔽率SE(dB)は以下の式1から求める。電磁波遮蔽率SEの値が大きいほど、電磁波遮蔽性が高いことを示す。
SE=20log(E0/E1) 式1
本発明の電磁波遮蔽体は前記の通り、特に10MHz〜100MHzの周波数の電磁波遮蔽効果が高い。この理由は不明であるが、本発明の構成の特徴である積層構造により生じる電磁波の界面反射が起こることが、電磁波遮蔽効果の高さの要因かもしれないと考えている。
本発明の電磁波遮蔽体は、上記のような構成、特には炭素繊維強化熱可塑性樹脂補強体を含み、かつ、好ましくは炭素繊維が一方向に配向しているため、剛性が優れており、例えば曲げ弾性率(ASTM D790に準じる方法)及び曲げ強度(ASTM D790に準じる方法)が優れる。具体的には、曲げ弾性率は10,000MPa以上、好ましくは12,000MPa以上、さらに好ましくは13,000MPa以上である。好ましい上限としては、100,000MPaである。一方、好ましい曲げ強度は100MPa以上、好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは130MPa以上である。好ましい上限は、10,000MPaである。
本発明の電磁波遮蔽体は、炭素繊維強化樹脂組成物を構成する炭素繊維が一方向に配向しているのが好ましい態様である。当該配向の方向を、本発明の電磁波遮蔽体の第1層及び第3層で同じ方向にしても異なる方向にしてもよい。また、必要に応じて本発明の電磁波遮蔽体を2層重ねたり、他の素材の層と積層しても良い。
<電磁波遮蔽体の製造方法>
本発明の電磁波遮蔽体の製造方法は、種々公知の製造方法をとることができる。生産性及び3層の接着性の点を考慮すると、射出成形方法を用いることが好ましい。すなわち、上記の炭素繊維強化樹脂組成物の2層の間に、第2層となる上記の熱可塑性樹脂を挿入して一体化する射出成形方法等の、公知の方法を用いることができる。具体的には、金型のキャビティの一部又は全面に炭素繊維強化樹脂組成物をインサートして配置した後、第2層を構成する熱可塑性樹脂を射出すれば良い。好ましくは、第1層及び第3層を射出成形の金型内に配置した後、第2層を構成する熱可塑性樹脂を第1層及び第3層の間に射出して一体化するのが良い。さらには、当該炭素繊維強化組成物を予備成形によって三次元構造に賦形したものを第1層及び第3層として射出成形の金型内に配置した後、第2層を構成する熱可塑性樹脂を第1層及び第3層の間に射出して一体化するのが良い。射出成形温度は、射出する樹脂の種類や炭素繊維強化樹脂組成物の樹脂の種類に応じて適宜設定すれば良いが、ポリオレフィンを用いる場合、通常180〜240℃である。また、炭素繊維強化樹脂組成物を金型にインサートする際に、炭素繊維強化樹脂組成物を構成する炭素繊維は好ましくは一方向に配向しており、当該配向の方向を、本発明の電磁波遮蔽体の第1層及び第3層で同じ方向にしても異なる方向にしてもよい。
本発明の電磁波遮蔽体は、好ましくは射出成形方法を用いるので、溶融した材料を金型に注入して冷却・固化することで、電磁波遮蔽体を構成する3層を容易に一体化でき、さらには当該電磁波遮蔽体を所望の三次元構造に賦形することが容易である。また、金型にあわせて複雑な形状や精密な形状にも容易に賦形できる。本発明の電磁波遮蔽体は、第1層及び第3層が炭素繊維強化熱可塑性樹脂補強体、第2層が熱可塑性樹脂からなるため、容易に溶融可能であるため射出成形に適している。本発明の電磁波遮蔽体であれば、成形が容易であるので生産性に優れる。
<用途>
本発明の電磁波遮蔽体は、電磁波を遮蔽する必要がある用途に使用することができ、さらには、強度にも優れるので、強度が必要な大きな形状の用途にも使用することができる。例えば、車両の車体部分もしくはシャーシ部分、充電式電池を備えた電気自動車のフロアパネル、充電式電池を収容するための筐体の壁および/または床等に用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
(1)プロピレン系樹脂の強化繊維束への付着量測定
プロピレン系樹脂の付着した強化繊維束を約5g取り、120℃で3時間乾燥し、その質量W(g)を測定した。次いで強化繊維束を窒素雰囲気中で、450℃で15分間加熱後、室温まで冷却しその質量W(g)を測定した。W(g)およびW(g)を用いて付着量は次式にて算出した。
付着量=[(W−W)/W]×100(質量%)。
(2)プロピレン系樹脂の重量平均分子量測定
分子量は、以下の条件でのGPC法で求めた。
液体クロマトグラフ:Polymer Laboratories社製 PL−GPC220型高温ゲル浸透クロマトグラフ(示差屈折率計装置内蔵)
カラム:東ソー株式会社製 TSKgel GMHHR−H(S)−HT×2本および同GMHHR−H(S)×1本を直列接続した。
移動相媒体:1,2,4−トリクロロベンゼン(安定剤0.025%含有)
流速:1.0ml/分
測定温度:150℃
検量線の作成方法:標準ポリスチレンサンプルを使用した。
サンプル濃度:0.15%(w/v)
サンプル溶液量:500μl
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製単分散ポリスチレン
分子量較正方法:標準較正法(ポリスチレン換算)
(3)プロピレン系樹脂の構造解析
プロピレン系樹脂について、有機化合物元素分析、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析、IR(赤外吸収)スペクトル分析、H−NMR測定および13C−NMR測定を実施し、プロピレン系樹脂の含有元素量、官能基構造の同定、各帰属プロトン、カーボンのピーク強度より単量体構造の含有割合について評価を実施した。
有機化合物元素分析は、有機元素分析装置2400II(PerkinElmer社製)を用いて実施した。ICP発光分析はICPS−7510(島津製作所社製)を用いて実施した。IRスペクトル分析はIR−Prestige−21(島津製作所製)を用いて実施した。H−NMR測定および13C−NMR測定はJEOL JNM−GX400スペクトロメーター(日本電子製)を用いて実施した。
(4)プロピレン系樹脂のカルボン酸塩含有量の測定
各プロピレン系樹脂に対して、以下の操作をおこなうことでカルボン酸塩含有量および中和されていないカルボン酸含有量を測定した。
プロピレン系樹脂0.5gをトルエン200ml中で加熱還流し、溶解させた。この溶液を0.1規定の水酸化カリウム−エタノール標準溶液で滴定し、下式より酸価を算出した。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。
酸価=(5.611×A×F)/B (mgKOH/g)
A:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)
F:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター(1.02)
B:試料採取量(0.50g)。
上記で算出した酸価を下式を用いて中和されていないカルボン酸基のモル数に換算した。
中和されていないカルボン酸基のモル数=酸価×1000/56(モル/g)
カルボン酸基の中和塩への転化率を、別途IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボン酸基のカルボニル炭素の定量をおこなって算出したカルボン酸基の総モル数(モル/g)を用いて下式にて算出した。
転化率%=(1−r)×100(%)
r:中和されていないカルボン酸基のモル数/カルボン酸基の総モル数。
(5)擦過毛羽数測定
特許第5584977号の実施例に記載の方法と同様にして決定した。
擦過毛羽数が0〜5個/mを合格とし、それを超えると不合格とした。
(6)融点の測定方法
本発明における重合体の融点(Tm)は、セイコーインスツルメンツ社製DSC220C装置で示差走査熱量計(DSC)により測定した。試料7〜12mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱した。その試料を、全ての結晶を完全融解させるために200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で−50℃まで冷却した。−50℃で5分間置いた後,その試料を10℃/分で200℃まで2度目に加熱した。この2度目の加熱試験で、ピーク温度を融点(Tm−II)として採用した。
<炭素繊維>
炭素繊維(三菱レイヨン社製、製品名:パイロフィル(登録商標)TR50S12L、フィラメント数12000本、ストランド強度5000MPa、ストランド弾性率242GPa)をアセトン中に浸漬し、10分間超音波を作用させた後、炭素繊維を引き上げさらに3回アセトンで洗浄し、室温で8時間乾燥することにより付着しているサイジング剤を除去して炭素繊維を得た。
(製造例1−エマルションの製造方法)
プロピレン系樹脂(A)として、GPCで測定した重量平均分子量が12万及び融点を持たないプロピレン・ブテン・エチレン共重合体を100質量部、プロピレン系樹脂(B)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体(重量平均分子量Mw=27,000、酸価:45mg−KOH/g、無水マレイン酸含有率:4質量%、融点:140℃)10質量部、界面活性剤(C)として、オレイン酸カリウム3質量部を用意して、これらを混合した。この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30,L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出した樹脂混合物を、同押出機の出口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入してエマルジョンを得た。得られたエマルジョンは固形分濃度:45%であった。
尚、前記無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂は、プロピレン・ブテン共重合体96質量部、無水マレイン酸 4質量部、および重合開始剤としてパーヘキシ(登録商標)25B(日本油脂(株)製)0.4質量部を混合し、加熱温度160℃、2時間で変性を行って得られた。
(炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造)
製造例1で製造したエマルションを、ローラー含浸法を用いて、前記炭素繊維に付着させた。次いで、オンラインで130℃、2分乾燥して低沸点成分を除去し、炭素繊維束を得た。エマルションの付着量は0.87%であった。炭素強化繊維束の毛羽立ち性は合格であった。
次いで、この炭素繊維束57部と、マトリックス樹脂として、市販の未変性プロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロ(登録商標)J106MG、融点が160℃)及び無水マレイン酸を0.5質量%グラフトした変性ポリプロピレン樹脂(ASTM D1238に準じて190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが9.1g/10分、融点が155℃)43部とを含む樹脂組成物を調製し、常法により炭素繊維が一方向に配向した厚みが130μm〜170μmのシートを作成した。具体的には、特開2013−227695号公報に記載の装置に樹脂を溶融させる押出機を組み合わせた装置により、炭素繊維が一方向に配向したシートを作製した。より具体的には、特開2013−227695号公報に記載の開繊装置により強化繊維束を開繊し、加熱した強化繊維束と押出機により溶融させたマトリックス樹脂をTダイにより膜状とし、離型紙に挟み、加圧ローラーにて加熱、加圧することでマトリックス樹脂を強化繊維束に含浸させ、その後冷却、固化して一方向に配向したシート状の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を得た。押出機及びTダイの温度は250℃、加圧ロールの温度は275℃とした。得られた一方向性材のシートの一例は、厚さは130μm、繊維体積分率Vfは0.4であった。尚、前記J106MGと変性ポリプロピレンとの質量比は90/10(重量平均分子量は30万に相当)であった。(樹脂の融点は160℃)。
<実施例1>
図1に示すサイズの1つのゲート2を有する金型1を用意した。先に作製した炭素繊維強化熱可塑性樹脂補強材を金型の上型および下型の全面にインサートした。このインサート後、以下の射出材料を金型の真ん中に射出して、3層を一体化することにより板状の射出成形体3を得た。このような板は、前記のような車体のシャーシ材やパネル材、電子機器の筐体や、床材などに用いることが出来る。射出成形の条件は以下のとおりである。
射出成形機:住友重機械工業株式会社製 SE280HD C1600
金型:315×210mm 枠付き平板、肉厚2mm、1点ゲート(金型の中央)
成形温度:230℃
金型温度:30℃
射出材料:ガラス繊維30質量%を含有する強化ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名モストロン(登録商標)L−3040P)
図2に示すように、得られた射出成形体3を150mm×150mmのサイズに切り出して試験片4を得た。
<比較例1>
繊維強化熱可塑性樹脂補強材を金型にインサートせず、前記射出材料を射出成形したこと以外は、実施例1と同様にして射出成形を行ない、板状の射出成形体を得て、試験片を切り出した。
<比較例2>
繊維強化熱可塑性樹脂補強材単体のみの試験片を切り出した。
以上の各成形体に対して以下の評価を行った。各結果を表1に示し、さらに電磁波遮蔽性の結果はグラフにして図3にも示す。
[電磁波遮蔽性]
試験片の電磁波遮蔽性は、周波数が1GHz以下である電磁波に対するアドバンテスト法により測定した。本明細書において、アドバンテスト法による電磁波遮蔽性は、電磁波遮蔽効果測定装置U3741 SPECTRUM ANALYZER(アドバンテスト社製、石川工業試験場が所有)を用いて、試験片の繊維方向が90°となるように装着し測定したときの電磁波遮蔽性を示すものとする。
電磁波遮蔽性は、遮蔽材が無い空間の電界強度をE0(V/m)として、遮蔽材を配置した電界強度をE1(V/m)とすると、電磁波遮蔽率SE(dB)は以下の式から求める。電磁波遮蔽率SEの値が大きいほど、電磁波遮蔽性が高いことを示す。
SE=20log(E0/E1) 式1
[曲げ弾性率]
ASTM D790に準じて、試験片厚みに応じて、試験速度1.2〜1.3mm/分、スパン間距離44〜46mmの条件で測定した。
[曲げ強度]
曲げ強度(MPa)は、ASTM D790に準じて、試験片厚みに応じて、試験速度1.2〜1.3mm/分、スパン間距離44〜46mmの条件で測定した。
Figure 2018206812
得られた電磁波遮蔽体は、電磁波遮蔽性に優れ、さらには曲げ弾性率及び曲げ強度に優れていた。また、各層が強固に接着していた。
本発明の電磁波遮蔽体は、電磁波遮蔽性は元より、軽量、高剛性、及び生産性に優れているので、パネル、平板をはじめ種々の用途に展開できる。特に自動車部品、自転車部品、電気・電子部品、家庭・事務電気製品部品に好適である。
1 金型
2 ゲート
3 射出成形体
4 試験片

Claims (8)

  1. 少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)を含む電磁波遮蔽体であり、第1層及び第3層は炭素繊維強化樹脂組成物を含み、第2層は熱可塑性樹脂を含み、前記第1層、第3層の何れかの厚さが0.05〜0.4mmである電磁波遮蔽体。
  2. 炭素繊維強化樹脂組成物の炭素繊維が、一方向に配向していることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽体。
  3. 電磁波遮蔽体の第2層を形成する熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波遮蔽体。
  4. 炭素繊維強化樹脂組成物がマトリックス樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁波遮蔽体。
  5. 電磁波遮蔽体が、三次元構造に賦形されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電磁波遮蔽体。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載の電磁波遮蔽体を用いた車両の車体部分もしくはシャーシ部分、充電式電池を備えた電動自動車のフロアパネル、充電式電池を収容するための筐体の壁および/または床。
  7. 少なくとも3つの層(上から第1層、第2層及び第3層)を含む電磁波遮蔽体であり、第1層及び第3層は炭素繊維強化樹脂組成物を含み、第2層は熱可塑性樹脂を含み、前記第1層、第3層の何れかの厚みが0.05〜0.4mmである電磁波遮蔽体の製造方法において、第1層及び第3層を射出成形の金型内に配置した後、第2層を構成する熱可塑性樹脂を第1層及び第3層の間に射出して一体化する電磁波遮蔽体の製造方法。
  8. 炭素繊維強化樹脂組成物を予備成形によって三次元構造に賦形したものを第1層及び第3層とすることを特徴とする請求項7に記載の電磁波遮蔽体の製造方法。
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