<炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)>
本発明において炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)を構成する炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と炭素繊維を含む組成物である。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物としては、特に、
(I)融点および/またはガラス転移温度が50~300℃の重合体20~80質量%、および
(C)炭素繊維20~80質量%
[但し、(I)成分と(C)成分の合計を100質量%とする]
を含むことが好ましい。
重合体(I)は融点および/またはガラス転移温度が50~300℃の熱可塑性樹脂であれば良く、その種類は限定されないが、炭素数2~20のオレフィン単位を含むポリオレフィンが好ましい。
特に炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、プロピレンから導かれる構成単位が好ましくは50モル%以上であるプロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)とを含むことが好ましい。
プロピレン系樹脂(A)は重量平均分子量Mwが5万を超える成分(A-1)が60質量%を超え、100質量%以下と重量平均分子量Mwが10万以下の(A-2)成分が、0~40質量%とを含み(但し、(A-1)成分と(A-2)成分の合計が100質量%であり、その分子量は(A-1)>(A-2)である。)、プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量はプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量よりも大きいことが好ましい。プロピレン系樹脂(A-1)の好ましい含有率は70質量%を超え、100質量%以下である。プロピレン系樹脂(A)の融点もしくはガラス転移温度は、通常0~165℃である。融点を示さない樹脂を用いる場合もある。
また、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対してプロピレン系樹脂(B)は3~50質量部、より好ましくは5~45質量部、更に好ましくは10~40質量部であり、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は炭素繊維束全体の中で好ましくは60~5質量%、より好ましくは55~3質量%であり、さらに好ましくは50~3質量%である。
炭素繊維束(C)を構成する炭素繊維としては、具体的には、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上の観点から好ましく、強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。
炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05~0.5であるものが好ましく、より好ましくは0.08~0.4であり、特に好ましくは0.1~0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂とより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスから一般的に0.5以下とすることが好ましい例である。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×108Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191~1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947~959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES-200を用い、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05~0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法をとることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
炭素繊維(C)の平均繊維径は特に限定されないが、力学特性と表面外観の観点から1~20μmの範囲内であることが好ましく、3~15μmの範囲内であることがより好ましい。炭素繊維束の単糸数には特に制限はなく、通常は100~350,000本の範囲内のものを使用することができる。好ましくは1,000~250,000本、より好ましくは5,000~220,000本の範囲内で使用することが好ましい。プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)を用いる場合、繊維数40,000以上の繊維束(ラージトウ)にも優れた効果を示すことが期待される。
次に、プロピレン系樹脂(A)のうち、重量平均分子量が5万を超える成分(A-1)の好ましい重量平均分子量は7万以上、より好ましくは10万以上である。一方、重量平均分子量の上限値については特に規定されないが、成形時の溶融流動性や後述する組成物成形体の外観の観点からは、好ましくは70万以下、より好ましくは50万以下、特に好ましくは45万以下、最も好ましくは40万以下である。プロピレン系樹脂成分(A-1)とポリプロピレン系樹脂成分(A-2)との合計を100質量%として、プロピレン系樹脂成分(A-1)は60質量%を超え、100質量%以下の割合で含まれることが好ましく、より好ましくは70~100質量%、特に好ましくは73~100質量%である。
ポリプロピレン系樹脂(A)には、必要に応じて重量平均分子量が10万以下の成分(A-2)が含まれる。好ましい重量平均分子量の範囲は、5万以下、より好ましくは4万以下である。一方、重量平均分子量の下限については、後述する炭素繊維束の強度や取扱い性(ベタ付きなど)を考慮すると、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上、最も好ましくは25,000以上である。またポリプロピレン系樹脂成分(A-2)は、0~40質量%の割合で含まれることが好ましく(但し、前記の成分(A-1)と成分(A-2)との合計が100質量%とする。)。より好ましくは0~30質量%、特に好ましくは0~27質量%である。
プロピレン系樹脂(A-1)の重量平均分子量と、プロピレン系樹脂(A-2)との重量平均分子量との差は、好ましくは20,000~300,000であることが好ましい。より好ましくは30,000~200,000、特に好ましくは35,000~200,000である。
重量平均分子量が高い成分が比較的多く含まれるとポリプロピレン樹脂が特定の量含まれる炭素繊維束は、前記のプロピレン系樹脂が比較的少ない量で用いられる場合でも、毛羽立ち形状や、例えばその衝撃等の環境要因による崩壊、剥がれ、折れ等の形状変化、また、それらに起因する微粉などの形状変化を起し難い傾向がある。
プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン由来の構造単位を有する樹脂であり、通常はプロピレンの重合体である。好ましくはα-オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどから選ばれる少なくとも一種のオレフィンやポリエン由来の構造単位が含まれる所謂共重合体が好ましい例である。
α-オレフィンとして具体的には、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4ジメチル-1-ヘキセン、1-ノネン、1-オクテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等のプロピレンを除く炭素数2~20のα-オレフィンを挙げることが出来る。これらの中でも1-ブテン、エチレン、4-メチル―1-ペンテン、1-ヘキセンを好ましい例として挙げることが出来、特に好ましくは、1-ブテン、4-メチル―1-ペンテンである。
共役ジエン、非共役ジエンとしては、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエン等が挙げられ、これらの成分は、1種類または2種類以上を選択することができる。
プロピレン系樹脂(A)は、プロピレンと前記のオレフィンやポリエン化合物とのランダムあるいはブロック共重合体であることが好ましい。本願の目的を損なわない範囲内であれば他の熱可塑性重合体を用いることも出来る。例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。
後述するプロピレン系樹脂(D)(一般的に、マトリックス樹脂と言われる)との親和性を高めることと、後述するプロピレン系樹脂(B)との親和性を高める両方の観点から、プロピレン系樹脂(A)はプロピレンから導かれる構成単位を好ましくは50モル%以上、100モル%以下、より好ましくは、50~99モル%、さらに好ましくは55~98モル%、特に好ましくは60~97モル%含んでいる。
プロピレン系樹脂における前記単量体繰り返し単位の同定には、主として、13C NMR法により決定される。質量分析および元素分析が用いられることもある。また、前記NMR法で組成を決定した組成の異なる複数種の共重合体のIR分析を行い、特定波数の吸収や検体の厚さ等の情報から検量線を作成して組成を決定する方法も採用出来る。このIR法は、工程分析などに好ましく用いられる。
また、プロピレン系樹脂(A)のショアA硬度が60~90であるか、またはショアD硬度が45~65であることが好ましい。ショアA硬度のより好ましい範囲は、65~88であり、さらに好ましくは70~85である。ショアD硬度のより好ましい範囲は48~63であり。更に好ましくは50~60である。
プロピレン系樹脂(A)が、このような硬度の範囲であると、炭素繊維への追従性が良いので、部分的な割れなどが発生し難く、安定した形状の炭素繊維束を形成し易い利点がある。また後述するプロピレン系樹脂(D)と組み合わせた組成物とした場合、その強度を高める上で有利な傾向がある。これはプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(D)とが、良好な分子鎖の絡み合い構造を取るためではないかと推測される。
プロピレン系樹脂(A)はカルボン酸基やカルボン酸エステル基等を含む化合物で変性されていても良いし、未変性体であっても良い。プロピレン系樹脂(A)が変性体である場合、その変性量は-C(=O)-O-で表される基換算で2.0ミリモル当量未満であることが好ましい。より好ましくは1.0ミリモル当量以下、さらに好ましくは0.5ミリモル以下である。また、プロピレン系樹脂(A)が変性体である場合、主として前記(A-2)成分が変性体である態様が好ましい。
一方、用いる用途によってはプロピレン系樹脂(A)は、実質的に未変性体であることが好ましい場合もある。ここで、実質的に未変性とは、望ましくは全く変性されていないことであるが、変性されたとしても前記目的を損なわない範囲である、変性量が-C(=O)-O-で表される基換算で0.05ミリモル当量未満であることが好ましい。より好ましくは0.01ミリモル当量以下、さらに好ましくは0.001ミリモル以下、特に好ましくは0.0001ミリモル当量以下である。
プロピレン系樹脂(B)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を少なくとも含むプロピレン系樹脂である。これは、炭素繊維との相互作用を高めるうえでカルボン酸塩を含むことが効果的であるためである。
プロピレン系樹脂(B)の原料としては、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体で代表される、プロピレンとα-オレフィンの単独または2種類以上との共重合体がまず挙げられる。次いで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、および/またはケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステルを有する単量体を挙げることが出来る。このような重合体は、プロピレン系の重合体とカルボン酸構造とを有する単量体とをラジカルグラフト重合するのが、プロピレン系樹脂(B)を製造する代表的な方法である。上記プロピレン系の重合体に用いられるオレフィンは、プロピレン系樹脂(A)と同様の考えで選定することができる。
特殊な触媒を用いれば、プロピレンと前記のカルボン酸エステルを有する単量体とを直接重合することや、エチレンが多く含まれる重合体であれば(エチレンとプロピレンなどの)オレフィンとカルボン酸構造とを有する単量体とを主として高圧ラジカル重合して、プロピレン系樹脂(B)を得ることが出来る可能性もある。
ここで、中和されているか、中和されていないカルボン酸基を有する単量体、およびケン化されているか、ケン化されていないカルボン酸エステル基を有する単量体としては、たとえば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物が挙げられ、またこれらのエステル、さらにはオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物なども挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示され、その無水物としては、ナジック酸 TM(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2-メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いることもできるし、また2種類以上のものを用いることもできる。また、これらの中でも、酸無水物類が好ましく、さらには無水マレイン酸が好ましい。
プロピレン系樹脂(B)は、上記のような種々の方法で得ることができるが、より具体的には、有機溶剤中でプロピレン系樹脂と不飽和ビニル基を有するエチレン系不飽和カルボン酸やオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体とを重合開始剤の存在下で反応させた後に脱溶剤する方法や、プロピレン系樹脂を加熱溶融し得られた溶融物に不飽和ビニル基を有するカルボン酸および重合開始剤を攪拌下で反応させる方法や、プロピレン系樹脂と不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤とを混合したものを押出機に供給して加熱混練しながら反応させた後、中和、けん化などの方法でカルボン酸塩とする方法を挙げることができる。
重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等の各種パーオキサイド化合物を挙げることが出来る。また、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用いても良い。これらは、単独あるいは2種以上を併用することができる。
有機溶剤としては、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソオクタン、イソデカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、n-酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等の有機溶剤を用いることができ、またこれらの2種以上からなる混合物であっても構わない。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素が好ましく、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素がより好適に用いられる。
上記の様にして得られたプロピレン系樹脂(B)のカルボン酸基の含有率は、後述するNMRやIR測定で決定することが出来るのは公知である。また、例えば別の方法として、酸価で評価することも出来る。本発明のプロピレン系樹脂(B)の酸価の好ましい範囲は10mg-KOH/g~100mg-KOH/gであり、より好ましくは20mg-KOH/g~80mg-KOH/gであり、更に好ましくは25mg-KOH/g~70mg-KOH/gであり、特に好ましくは25mg-KOH/g~65mg-KOH/gである。
上記のように得られたプロピレン系樹脂(B)は、中和またはケン化工程を経て得る方法は、上記プロピレン系樹脂(B)の原料を水分散体にして処理することが容易となるので、実用的に好ましい方法である。
プロピレン系樹脂(B)の原料の水分散体の中和またはケン化に用いる塩基性物質としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/またはその他金属類、ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウム等の無機アミン、アンモニア、(トリ)メチルアミン、(トリ)エタノールアミン、(トリ)エチルアミン、ジメチルエタノールアミン、モルフォリン等の有機アミン、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物および/またはその他金属類、水酸化物、水素化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/またはその他金属類の弱酸塩を挙げることができる。塩基物質により中和またはケン化されたカルボン酸塩の基あるいはカルボン酸エステル基としては、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩またはカルボン酸アンモニウムが好適である。
また、中和度またはけん化度、すなわち、プロピレン系樹脂(B)の原料が有するカルボン酸基の上記金属塩やアンモニウム塩等への転化率は、水分散体の安定性と、繊維との接着性の観点より、通常50~100%、好ましくは70~100%、さらに好ましくは85~100%である。したがって、上記プロピレン系樹脂(B)におけるカルボン酸基は、上記塩基物質によりすべて中和またはケン化されていることが望ましいが、中和またはケン化されずに一部カルボン酸基が残存していてもよい。上記のような酸基の塩成分を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を行う方法や、IR、NMR、質量分析および元素分析等を用いて酸基の塩の構造を同定する方法が挙げられる。
ここでカルボン酸基の中和塩への転化率は、加熱トルエン中にプロピレン系樹脂を溶解し、0.1規定の水酸化カリウム-エタノール標準液で滴定し、プロピレン系樹脂の酸価を下式より求め、元のカルボン酸基の総モル数と比較して算出する方法などが挙げられる。
酸価=(5.611×A×F)/B (mgKOH/g)
A:0.1規定水酸化カリウム-エタノール標準液使用量(ml)
F:0.1規定水酸化カリウム-エタノール標準液のファクター
B:試料採取量(g)。
上記で算出した酸価を下式を用いて中和されていないカルボン酸基のモル数に換算する。
中和されていないカルボン酸基のモル数=酸価×1000/56(モル/g)。
カルボン酸基の中和塩への転化率は、別途IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボン酸基のカルボニル炭素の定量をおこなって算出したカルボン酸基の総モル数(モル/g)を用いて下式にて算出する。
転化率%=(1-r)×100(%)
r:中和されていないカルボン酸基のモル数/カルボン酸基の総モル数。
また、炭素繊維(C)との相互作用を高める観点から、プロピレン系樹脂(B)の重合体鎖に結合したカルボン酸塩の含有量は、プロピレン系樹脂(B)1g当たり、-C(=O)-O-で表される基換算で総量0.05~5ミリモル当量であることが好ましい。より好ましくは0.1~4ミリモル当量、さらに好ましくは0.3~3ミリモル当量である。上記のようなカルボン酸塩の含有量を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を定量的に行う方法や、IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボン酸塩のカルボニル炭素の定量をおこなう方法が挙げられる。カルボン酸骨格の含有率のより具体的な測定方法は以下の方法を例示できる。試料を100MHz以上の条件で120℃以上の高温溶液条件で、13C NMR法によりカルボン酸骨格の含有率を常法により特定することが出来る。また、カルボニル骨格の含有率の異なる複数の試料を前記13CNMRで測定してカルボン酸骨格の含有率を特定した後、同じ試料のIR測定を行い、カルボニルなどの特徴的な吸収と試料厚みや他の代表的な吸収との比とカルボン酸骨格の含有率との検量線を作成することで、IR測定により、カルボン酸骨格の導入率を特定する方法も知られている。
また、本発明のプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)との重量平均分子量Mwの関係は、プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量Mwの方が大きいことが好ましい。この場合、本発明においてプロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量と、プロピレン系樹脂(B)との重量平均分子量との差は、好ましくは10,000~380,000である。より好ましくは120,000~380,000更に好ましくは130,000~380,000である。
プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mwをプロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量Mwよりも小さくすることで、成形時にプロピレン系樹脂(B)が移動し易く、炭素繊維とプロピレン系樹脂(B)との相互作用が強くなることが期待される。
プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mwは、上記相互作用の観点および、プロピレン系樹脂(A)、好ましくはプロピレン系樹脂(A-2)との相溶性などを考慮すると、1,000~100,000であることが好ましい。より好ましくは2,000~80,000、さらに好ましくは5,000~50,000、特に好ましくは5,000~30,000である。
なお本発明における重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(ASTM1238規格、230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは3~500g/10分である。好ましい下限値は5g/10分、更に好ましくは7g/10分であり、好ましい上限値は400g/10分、更に好ましくは350g/10分である。
また好ましいメルトフローレート範囲としては、ASTM1238規格、190℃、2.16kg荷重での測定値が上記と同様の数値範囲である場合もある。
本発明のプロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)は、様々な形態で用いることが出来る。例えば、プロピレン系樹脂をそのままもしくは耐熱安定剤を併用して溶融させ、炭素繊維(C)と接触させる方法や、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とをエマルションやサスペンション状態で炭素繊維(C)と接触させる方法が挙げられる。前記の接触工程の後に、熱処理などを行っても良い。
本発明において、炭素繊維(C)と効率的に接触させる観点からは、プロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)は、エマルション状態で用いることが好ましい。
前記の通り、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)との割合は、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して、プロピレン系樹脂(B)が3~50質量部である。この範囲内であれば、主としてプロピレン系樹脂(A)に由来する強度や形状などに関係する特性と、炭素繊維との親和性とを高いレベルで両立させることが可能となる。好ましくは、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対してプロピレン系樹脂(B)が5~45質量部、より好ましくはプロピレン系樹脂(A)100質量部に対してプロピレン系樹脂(B)が5~45質量部、さらに好ましくはプロピレン系樹脂(A)100質量部に対してプロピレン系樹脂(B)が7~40質量部である。プロピレン系樹脂(B)が3質量部より少なくなると、炭素繊維との親和性が低下し、接着特性に劣る可能性がある。またプロピレン系樹脂(B)が50質量部よりも多くなると、混合物自体の強度が低下したり、毛羽が増大する場合があり、強固な接着特性を維持出来ない可能性がある。
炭素繊維束に用いられる各種プロピレン系樹脂の分子量や含有率を前記範囲とすることで、プロピレン系樹脂(A)および(B)が効果的に炭素繊維およびマトリックス樹脂(XA)と相互作用を持ったり、プロピレン系樹脂(A)および(B)との相溶性が比較的高く、接着性を向上させることが期待される。
炭素繊維束には、前記プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を併用しても構わない。例えば、プロピレン系樹脂をエマルジョン形態として炭素繊維束に付与する場合は、エマルジョンを安定化させる界面活性剤などを別途加えていても構わない。このような他の成分は、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)の合計に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とは、炭素繊維束全体の0.3~5質量%という比較的少ない量で含まれる。含まれるプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とが0.3質量%未満の場合は、炭素繊維がむき出しの部分が多数存在することがある。このような場合、得られる製品の強度が低下したり、炭素繊維束の取り扱い性が不十分となる場合がある。ここでいう取り扱い性とは例えば、繊維束をボビンに巻き取る際の繊維束の硬さやさばけ易さを挙げることが出来る。また、繊維束をカットしてチョップド繊維束として使用する場合には、チョップド繊維束の集束性のことをいう。一方、前記含有率が5質量%よりも多くなると、力学特性が極端に低下したりする場合や、繊維束が極端に硬くなり、ボビンに巻けなくなるなどの不具合を生じる場合がある。炭素繊維束全体の前記プロピレン系樹脂(A)と前記プロピレン系樹脂(B)の合計の含有率は、接着性と炭素繊維束の取り扱い性とのバランスから、その好ましい下限値は、0.4質量%である。一方、好ましい上限値は4質量%でありさらに好ましくは3質量%である。
プロピレン系樹脂の混合物を炭素繊維束に付着させる方法については、特に制限はないが、均一に単繊維間に付着させやすいという観点から、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)との混合物のエマルジョンを炭素繊維束に付与したのちに乾燥させる方法が好ましい。炭素繊維束にエマルジョンを付与する方法としては、ローラー浸漬法、ローラー転写法、スプレー法などの既存の手法により付与する方法を用いることができる。
マトリックス樹脂(XA)については、後述するプロピレン系重合(D)であることが好ましい。その他、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリーレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、さらにはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体を用いても良く、これらの1種または2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に極性の低いポリオレフィン系の樹脂が好ましく、中でもコスト、軽量性の観点からはエチレン系の重合体やプロピレン系の重合体が好ましく、後述するプロピレン系樹脂(D)がより好ましい。即ち、炭素繊維束含有プロピレン系樹脂組成物が好ましく用いられる。
プロピレン系樹脂(D)は、未変性のプロピレン系樹脂であっても良いし、変性などの方法でカルボン酸構造やカルボン酸塩構造を含むプロピレン系樹脂とを含んでいても良い。好ましくは後者の変性プロピレン系樹脂を含む態様である。その好ましい重量比は、未変性体/変性体比で、80/21~99/1であり、好ましくは89/11~99/1であり、より好ましくは89/11~93/7であり、更に好ましくは、90/10~95/5である。前記のプロピレン系樹脂の組成としては、プロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)の説明で記載した単量体(オレフィンやカルボン酸エステル化合物など)由来の構造単位を含む一般的なプロピレン樹脂が好ましい態様である。例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、変性ポリプロピレンと言われるプロピレン重合体である。
本発明のプロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量は、前記プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)と下記のような関係にあることが好ましい。
プロピレン系樹脂(A) > プロピレン系樹脂(D) > プロピレン系樹脂(B)
プロピレン系樹脂(D)の重量平均分子量としては、具体的には5万~35万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10万~33万であり、更に好ましくは15万~32万である。またプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(D)との分子量の差は、好ましくは1万~40万であり、より好ましくは2万~20万であり、さらに好ましくは2万~10万である。
炭素繊維束含有プロピレン系樹脂組成物は、炭素繊維束25~75質量部であり、好ましくは30~68質量部であり、より好ましくは35~65質量部を含んでいる。一方、プロピレン系樹脂(D)は、75~25質量部、好ましくは70~32質量部、より好ましくは65~35質量部を含まれる。但し、上記の割合は、前記炭素繊維束とプロピレン系樹脂(D)の合計を100質量部とした時の値である。
プロピレン系樹脂(D)は、主として炭素繊維、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)を含む炭素繊維束の周りに接着するような態様になっていることが好ましい。
プロピレン系樹脂(D)は、未変性プロピレン系樹脂と酸変性プロピレン系樹脂を含むことが好ましい。特に、比較的多くの変性プロピレン系樹脂を含むので、たとえばレーザー融着法を用いても炭素繊維と樹脂との間の構造が変化し難い傾向がある。これは、炭素繊維近傍での変性オレフィン重合体(A-2)が破壊されたとしても、プロピレン系樹脂(D)の変性樹脂が保管する為ではないかと推測される。
前記プロピレン系樹脂は、公知の方法で製造することが出来、その樹脂(重合体)の立体規則性はイソタクチックであってもシンジオタクチックであってもアタクチックであっても良い。立体規則性は、イソタクチックもしくはシンジオタクチックであることが好ましい。
上記のような樹脂(特に未変性の樹脂)の具体的な製造方法は、例えば、国際公開2004/087775号パンフレット、国際公開2006/057361号パンフレット、国際公開2006/123759号パンフレット、特開2007-308667号公報、国際公開2005/103141号パンフレット、特許4675629号公報、国際公開2014/050817号パンフレット、特開2013-237861号公報等を挙げることが出来る。
本発明に用いられる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)の炭素繊維(C)と重合体(I)との重量比率は、80/20~20/80である。好ましくは、75/25~30/70、より好ましくは70/30~35/65、更に好ましくは65/35~40/60、特に好ましくは60/40~40~60である。
前記の樹脂の融点もしくはガラス転移温度は50~300℃である。好ましい下限値は70℃、より好ましくは80℃である。一方で、好ましい上限値は280℃、より好ましくは270℃、更に好ましくは260℃である。また、前記の規定は融点であることが好ましく、さらには好ましい融点の上限値は250℃、更に好ましくは240℃である。
前記の樹脂には、カルボン酸基が含まれていることが好ましい。前記炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の炭素繊維(C)と重合体(I)の合計を100質量%として、前記カルボン酸基を含む構造単位の含有率は0.010~0.045質量%である。好ましくは0.012~0.040質量%、更に好ましくは0.015~0.035質量%である。尚、前記カルボン酸基を含む構造単位としては、例えば前記のプロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、プロピレン系樹脂(D)に含まれるカルボン酸基由来の構造単位やカルボン酸塩由来の構造単位を挙げることが出来る。
前記の樹脂にカルボン酸基が含まれている場合、その含有率を酸価で把握することも可能である。好ましい酸価は、0.1~0.55mg-KOH/g、より好ましくは0.12~0.45mg-KOH/g、さらに好ましくは0.13~0.40mg-KOH/gである。
熱可塑性樹脂組成物に用いられる樹脂の好ましいメルトフローレート(ASTM1238規格、230℃、2.16kg荷重)は、1~500g/10分、より好ましくは、3~300g/10分、さらに好ましくは5~100g/10分である。前記樹脂の重量平均分子量としては、具体的には5万~40万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10万~37万であり、更に好ましくは15万~35万である。
また、エマルションの製造方法も公知の方法を使用することが出来、例えば、国際公開2007/125924号パンフレット、国際公開2008/096682号パンフレット、特開2008-144146号公報等を例示することが出来る。
本発明の炭素繊維束を形成する単繊維は、より強い接着性を発揮するために、単繊維表面の60%以上がプロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とを含む混合物で被覆されていることが好ましい。被覆されていない部分は接着性を発揮することができず、剥離の起点となり結果として全体の接着性を下げてしまうことがある。より好ましくは70%以上を被覆した状態であり、さらに好ましくは80%以上を被覆した状態である。被覆状態は走査型電子顕微鏡(SEM)または繊維表面の元素分析でカルボン酸塩の金属元素をトレースする手法などを用いることができる。
炭素繊維束の好ましい形状は、連続繊維を一方向に引きそろえ熱可塑性樹脂と複合化した一方向性炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体である。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、波長が300~3000μmの光を吸収する色素(II)を含んでいても良い。このような色素としては、公知の物を制限なく用いることが出来る。好ましい例としてはカーボン系の色素を挙げることが出来る。より好ましくは、カーボンブラックである。
このような色素(II)は、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂全体の0.01~5質量%である。好ましい下限値は0.1質量%、より好ましくは0.2質量%である。一方好ましい上限値は3質量%、より好ましくは2質量%である。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物に、前記の色素(II)が含まれると、たとえばレーザー融着する場合にレーザーによる局部発熱を抑制し、樹脂組成物全体をより均一に加熱させ易いことが期待される。これにより、マトリックス樹脂(XA)の劣化や変形、より具体的には繊維の表面飛び出しや表面の平滑性、外観の低下を抑制することが出来る。
成形方法としては、例えば、開繊された繊維束を引き揃えた後、溶融したマトリックス樹脂(XA)と接触させることにより、一方向性炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形体(一方向性シート)を得る方法を挙げることが出来る。この一方向性シートはそのまま使用することもできるし、複数積層して一体化することにより積層体を作成してそれを使用することもできる。
<発泡体層(Y)>
本発明において発泡体層(Y)を構成する発泡体樹脂(YA)は特に限定されず、公知の各種樹脂を使用でき、架橋体でも良いし、無架橋体でも良い。発泡体樹脂(YA)の具体例としては、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体を外層に有するポリスチレン発泡体等の熱可塑性樹脂発泡体が挙げられる。特に発泡体樹脂(YA)は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)に含まれるマトリックス樹脂(XA)と同じ種類の熱可塑性樹脂で構成されることが好ましく、どちらもプロピレン系重合体であることが好ましい。
発泡体層(Y)の密度は0.2~0.6g/ccの範囲にあり、好ましくは0.25~0.4g/ccの範囲にある。発泡体樹脂(YA)中の気泡は、独立気泡でも良いし、連通気泡でも良い。一般に、独立気泡の発泡体樹脂は強度が高い傾向にある。
発泡体層(Y)は、リブ構造を含んでいても良く、より具体的には、発泡体層(Y)の一部に非発泡リブ構造を含んでいても良い。リブ構造は、例えば、発泡体の収縮や変形を抑制する作用を奏する。リブ構造の形態は特に制限されず、例えば格子状、ストライプ状、円柱状、リング状等の形態をとることができる。これらの形状は相互に重なった形態をとっても良い。リブ構造は、発泡体層(Y)の表面および裏面の全面に格子状等の形状の断面方向のリブを形成した態様であっても良いし、表面または裏面のどちらか一方の全面または一部の面に格子状等の形状の断面方向のリブを形成した態様であっても良い。また、表面の構造と裏面の構造がつながっていてもかまわない。特に、表面または裏面のどちらか一方の少なくとも一部の面にリブを形成した態様が好ましい場合が多い。発泡体層(Y)の一部に非発泡リブ構造を形成する方法としては、例えば、発泡体層(Y)の一部に熱したナイフを接触させて、所望の位置を熱溶融させる方法がある。また、熱した棒状の金属を発泡体層(Y)に押し当てて、円柱状の形状を形成する方法や、熱したパイプ状の金属を発泡体層(Y)に押し当てて、リング状の形状を形成する方法を挙げることが出来る。
<積層型外装材>
本発明の積層型外装材は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)と熱可塑性樹脂の発泡体層(Y)とを、層(X)/層(Y)/層(X)の順の層構成で有する、いわゆるサンドウィッチ積層型外装材である。また、層(Y)の厚さ(y)と層(X)の厚さ(x)との比(y/x)は3~40の範囲にあり、好ましくは5~35の範囲にある。
層(X)と層(Y)とは、直接接していても良いし、他の層(中間層など)を介して積層されていても良い。好ましい態様は、層(X)と層(Y)とが接する箇所を有する積層構造である。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)の厚さ(x)は、好ましくは0.1~3mm、より好ましくは0.2~3mmである。炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)は、先に述べた一方向性シート1枚からなる層であっても良いし、複数の一方向性シートを積層して一体化してなる層であっても良い。複数の一方向性シートを積層して一体化してなる場合の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)の形態は特に限定されない。例えば、クロスプライ積層体であっても良いし、アングルプライ積層体であっても良い。クロスプライ積層体は一方向性シートを直交するように積層した積層体を意味し、アングルプライ積層体は一方向性シートを任意の角度で積層した積層体を意味する。また、複数の一方向性シートを用いる場合の個々の一方向性シートの厚さは、好ましくは50~500μm、より好ましくは100~300μmである。
発泡体層(Y)の厚さ(y)は、好ましくは1~11.7mm、より好ましくは2~10mmである。なお、発泡体層が(Y)がリブ構造を含む場合、発泡体層(Y)の厚さ(y)は、リブ構造以外の部分(主要部)の厚さを意味する。また、リブ構造以外でも厚さが部分的に変化した部分(例えば部分的な凸部)を含む場合も同様に、発泡体層(Y)の厚さ(y)は、その部分以外の部分(主要部)の厚さを意味する。
本発明の積層型外装材の厚さ(全体厚さ)は、好ましくは2~12mm、より好ましくは2.5~11mmである。
図1は、本発明の積層型外装材の実施形態の層構成を説明する為の模式的斜視図であり、図2はその実施形態の模式的断面図である。なお、図1および図2の実施形態は後述する実施例1および2の外装材に相当する。この実施形態では、発泡体層(Y)の上面および下面の各々に1枚の一方向性シートを用いて炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)を形成している。片面(上面)の層(X)の繊維方向は0°であり、他の片面(下面)の層(X)の繊維方向も0°である。
ただし、本発明は図1および図2の実施形態に限定されるものではない。例えば、図1および図2では、上面の層(X)の繊維方向と下面の層(X)の繊維方向が同じであるが、両者の繊維方向を異なるようにしても良い。また図1および図2では、1枚の一方向性シートを用いて層(X)を形成しているが、複数の一方向性シートを用いて層(X)を形成しても良い。
図3は、本発明の積層型外装材の実施形態の層構成を説明する為の模式的斜視図である。なお、この実施形態は後述する実施例3の外装材に相当する。図3に示す実施形態では、発泡体層(Y)が格子状のリブ構造を有している。このリブ構造においては、谷形状や溝形状を形成する面が非発泡の形状を有している場合が多い。発泡体層(Y)の上面および下面の各々には炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)が形成されており、その各層(X)は各々、2枚の一方向性シート(X1)および(X2)を用いて形成されている。一方向性シート(X1)の繊維方向は0°であり、一方向性シート(X2)の繊維方向は90°である。したがって、各層(X)はどちらもクロスプライ積層体である。そして、各層(X)の表面側の繊維方向は0°であり、内側の繊維方向は90°になっている。なお、積層型外装材の上面および下面には離型フィルム(Z)も設けられているが、これは積層型外装材の製造後、使用時に剥離すれば良い。
本発明の積層型外装材の製造方法は特に限定されない。例えば、各層を順番に積層し、加圧および加熱することによって、各層の界面を融着して一体化することにより積層型外装材が得られる。
本発明の積層型外装材は、以上説明した構成を有することにより、特定の用途(具体的には輸送機器用途、家電装置用途、建築用途)に適した特有の耐衝撃性を有することになる。また、外装材が衝撃力により破壊する場合は、脆性破壊ではなく塑性破壊なので安全性が高い。しかも軽量である。
後述する実施例および比較例の結果からも明らかなように、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)だけを試験した場合、あるいは、発泡体層(Y)だけを試験した場合の耐衝撃性(エネルギー吸収量)の測定値は各々低いものであるが、本発明の積層型外装材を試験すると、驚くべきことに、層(X)の耐衝撃性の測定値と層(Y)の耐衝撃性の測定値を合算した数値をも大きく上回る測定値が発現した。すなわち、本発明の積層型外装材においては、実施例で測定したような特定の耐衝撃性に関して著しい向上が認められたのである。また、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物層(X)だけを試験した場合は、その破壊様式は脆性破壊であるが、本発明の積層型外装材は塑性破壊なので安全性が高い。
また、本発明の積層型外装材は、耐衝撃強度の厚み依存性が低く、比較的薄い層構成にした場合であっても十分な耐衝撃強度が発現する。
外装材の耐衝撃性のレベルは特に限定されず、具体的には各用途に最も適したレベルに調整すれば良い。ただし、通常は、ASTM規格に準拠したハイレートインパクト試験において、パンクチャー点のエネルギーが13J以上であることが好ましく、13.5J以上であることがより好ましい。一方、パンクチャー点でのエネルギーが高い方が好ましいことは自明であるが、例えば自動車外装材などの場合は、衝撃強度が余りに高すぎると、事故時に乗員へのダメージが発生する場合がある。この点などを鑑みると、好ましい上限値は100J、より好ましくは70Jである。
本発明の積層型外装材は、輸送機器用途、家電装置用途及び建築用途から選ばれる用途に用いられるものである。本発明において「外装材」とは、内部と外部の間を隔てるように配置して内部を守るまたは外部を守る為の部材を意味し、装飾目的の有無は問わない。本発明における外装材は、例えば、外部から高速の衝撃や高エネルギー物体による衝撃が加わる可能性がある個所に配置されるものである。高速の衝撃とは、自動車走行中の飛び石や他の車両による衝撃を挙げることが出来る。高エネルギー物体とは、輸送車両などのエンジンやモーター、高性能電池のことや、家電製品や通信機器のモーターやコンプレッサー、高性能電池のことを挙げることが出来る。また工事用車両などの大型車両などは、それ自身が高エネルギー物体と考えられる場合もある。
輸送機器用途に用いられる外装材の具体例としては、車両の床材、ルーフ、トランク、ボンネット、ドア、フェンダー等が挙げられる。家電装置用途に用いられる外装材の具体例としては、パーソナルコンピュータ、タブレットの筐体、洗濯機、冷蔵庫、テレビ等が挙げられる。建築用途に用いられる外装材の具体例としては、壁材、パーティション、床材、天井材、ドア等が挙げられる。中でも、飛翔した小石やその他の異物が当たる面に位置する外装材(車両の床材、アンダーガード、マットガード等)や、防音壁、工事現場の養生などとして用いることが非常に有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例に使用した材料は以下のとおりである。
<炭素繊維>
炭素繊維束(三菱レイヨン社製、製品名:パイロフィルTR50S12L、フィラメント数12000本、ストランド強度5000MPa、ストランド弾性率242GPa)をアセトン中に浸漬し、10分間超音波を作用させた後、炭素繊維束を引き上げさらに3回アセトンで洗浄し、室温で8時間乾燥することにより付着しているサイジング剤を除去して用いた。
<製造例1-エマルションの製造>
プロピレン系樹脂(A)として、ショアD硬度が52、GPCで測定した重量平均分子量が35万、融点が80℃のプロピレン・ブテン共重合体を100質量部、プロピレン系樹脂(B)の原料として、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体(重量平均分子量Mw=20,000、酸価:45mg-KOH/g、無水マレイン酸含有率:4質量%、融点:140℃)10質量部、界面活性剤として、オレイン酸カリウム3質量部を混合した。この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM-30、L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、20%の水酸化カリウム水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出した樹脂混合物を、同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入してエマルジョンを得た。得られたエマルジョンは固形分濃度は45%であった。
なお、前記無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂は、プロピレン・ブテン共重合体96質量部、無水マレイン酸4質量部、および重合開始剤としてパーヘキシ25B(日本油脂(株)製)0.4質量部を混合し、加熱温度160℃、2時間で変性を行って得られたものである。
<製造例2-一方向性シートの製造>
製造例1で得たエマルションを、ローラー含浸法を用いて、サイジング剤を除去した前記炭素繊維に付着させた。次いで、オンラインで130℃、2分乾燥して低沸点成分を除去し、炭素繊維束を得た。エマルションの付着量は0.87質量%であった。
次いで、この炭素繊維束57質量部と、マトリックス樹脂(XA)として、市販の未変性プロピレン樹脂(プライムポリマー社製、商品名プライムポリプロJ106MG、融点が160℃)及び無水マレイン酸を0.5質量%グラフトした変性ポリプロピレン(ASTM D1238に準じて190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが9.1g/10分、融点が155℃)43質量部を含む樹脂組成物を調製し、常法により平均厚み150μmのシートを作製した。なお、前記未変性プロピレン樹脂と変性ポリプロピレンとの重量比が90/10(重量平均分子量は33万に相当)となるように調整した。(樹脂の融点は160℃、樹脂組成物全体に対する無水マレイン酸含有率:0.023質量%)(繊維体積分率Vf=0.4)。
以下、実施例及び比較例の積層体の評価方法を示す。
<曲げ試験>
JIS K7171に準拠して曲げ弾性率及び曲げ強度を測定した。
<ハイレートインパクト試験>
試験片(100×100mm)を、中央部分に撃芯が激突する様にASTM規格の高速面衝撃試験装置に固定し、以下の条件で最大衝撃力、最大荷重点の変位及びエネルギー、パンクチャー点の変位及びエネルギーを測定した。また同時に破壊様式も確認した。
撃芯径:1/2インチ
受け側リング径:1インチ
測定温度:室温
撃芯速度:3.57m/s
<実施例1>
離型フィルム(ポリイミドフィルム)の上に製造例2で得た150μm厚の一方向性シート(200×200mm)を1枚乗せ、その上に同じサイズの3mm厚のポリプロピレン発泡シート(三井化学東セロ社製、商品名パロニア、密度0.3g/cc)を乗せた。さらにその上に同じ一方向性シートを、1枚目の一方向性シートと繊維方向が同じとなるように乗せ、その上に離型フィルムを乗せた。これを、180℃に設定したプレス装置(東洋精機製、商品名ミニテストプレス)の上に乗せ、1MPaの圧力を印加しながら3分間保持し、圧力を開放した。その後すぐに30℃の冷却水を通した冷却用プレス装置に移動させ、0.5MPaの圧力を印加しながら3分間保持し、圧力を開放した。そして装置から取り出し、離型フィルムを除去することにより、一方向性シートと発泡シートとの界面が融着して一体化された、0°方向の一方向性シート/3mm厚発泡シート/0°方向の一方向性シートからなる構成のサンドウィッチ板(積層型外装材)を得た。この実施例1のサンドウィッチ板は、図1および図2に示した実施形態に相当する。
このサンドウィッチ板の曲げ弾性率は3.2GPa、曲げ強度は27.4MPaであった。またハイレートインパクト試験において、最大衝撃力は2.23kN、破壊様式は塑性破壊(延性破壊)で、最大荷重点の変位は12.9mm、エネルギーは13.7J、パンクチャー点の変位は14.8mm、エネルギーは17.2Jであった。
<実施例2>
ポリプロピレン発泡シートの厚さを5mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、0°方向の一方向性シート/5mm厚発泡シート/0°方向の一方向性シートからなる3層構成のサンドウィッチ板を得た。この実施例2のサンドウィッチ板は、図1および図2に示した実施形態に相当する。
このサンドウィッチ板の曲げ弾性率は4.3GPa、曲げ強度は21.0MPaであった。またハイレートインパクト試験において、最大衝撃力は2.11kN、破壊様式は塑性破壊(延性破壊)で、最大荷重点の変位は11.1mm、エネルギーは13.5J、パンクチャー点の変位は16.1mm、エネルギーは21.5Jであった。
<比較例1>
製造例2で得た一方向性シート2枚を繊維方向が同じとなるように重ねて、ハイレートインパクト試験を行った。その最大衝撃力は0.11kN、破壊様式は脆性破壊で、最大荷重点の変位は1.4mm、エネルギーは1.2Jであった。
<比較例2>
実施例1で使用した3mm厚のポリプロピレン発泡シートの単体に対して、曲げ試験およびハイレートインパクト試験を行った。その曲げ弾性率は0.29GPa、曲げ強度は7.8MPaであった。また最大衝撃力は0.59kN、破壊様式は塑性破壊(延性破壊)で、最大荷重点の変位は8.1mm、エネルギーは2.4J、パンクチャー点の変位は12.5mm、エネルギーは4.8Jであった。
<比較例3>
実施例2で使用した5mm厚のポリプロピレン発泡シートの単体に対して、曲げ試験およびハイレートインパクト試験を行った。その曲げ弾性率は0.23GPa、曲げ強度は6.3MPaであった。また最大衝撃力は0.91kN、破壊様式は塑性破壊(延性破壊)で、最大荷重点の変位は10.2mm、エネルギーは5.1J、パンクチャー点の変位は13.8mm、エネルギーは7.7Jであった。
<比較例4>
8mm厚のポリプロピレン発泡シート(三井化学東セロ製、商品名パロニア)単体の単体に対して、曲げ試験およびハイレートインパクト試験を行った。その曲げ弾性率は0.34GPa、曲げ強度は7.3MPaであった。また最大衝撃力は1.59kN、破壊様式は塑性破壊(延性破壊)で、最大荷重点の変位は10.2mm、エネルギーは9.1J、パンクチャー点の変位は12.8mm、エネルギーは12.6Jであった。
<実施例3>
3mm厚のポリプロピレンの発泡シート(三井化学東セロ製、商品名パロニア、密度0.3g/cc)を200×200mmのサイズに切り出し、ホットスライドカッター(大洋電機産業社製、商品名HE-110)を通電加熱し、発泡シートに押し当て直線状に移動させたところ、樹脂が溶融し、非発泡状態の溝が形成された。溝の幅は3mm、深さは2.5mmであった。この方法を繰り返すことによって、50mm間隔の格子状の溝を形成し、格子状の非発泡リブ構造を有する発泡シートを得た。
離型フィルム(ポリイミドフィルム)の上に、製造例2で得た一方向性シート(200×200mm)を2枚、繊維方向が0°/90°のクロスプライ積層となるように乗せた。この際、表面側(下側)の一方向性シートの繊維方向を0°とした。その上に、上記の格子状の非発泡リブ構造を有する発泡シートを乗せた。さらにその上に同じ一方向性シートを2枚、繊維方向が90°/0°のクロスプライ積層となるように乗せた。この際、表面側(上側)の一方向性シートの繊維方向を0°とした。これを、実施例1と同じ方法で融着、一体化させ、0°方向の一方向性シート/90°方向の一方向性シート/3mm厚発泡シート/90°方向の一方向性シート/0°方向の一方向性シートからなる構成のサンドウィッチ板(積層型外装材)を得た。この実施例3のサンドウィッチ板は、図3に示した実施形態に相当する。
<実施例4>
実施例3で使用した一方向性シートを8枚用いたこと以外は、実施例3と同様の方法により、0°方向の一方向性シート/90°方向の一方向性シート/90°方向の一方向性シート/0°方向の一方向性シート/3mm厚発泡シート/0°方向の一方向性シート/90°方向の一方向性シート/90°方向の一方向性シート/0°方向の一方向性シートからなる構成のサンドウィッチ板(積層型外装材)を得た。