JP5536570B2 - 鉄道車両の荷物棚構造 - Google Patents

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本発明は、鉄道車両の荷物棚構造に関する。
鉄道車両において、アーム状の、複数の荷棚受と、それによって支持される棚板から構成される荷物棚の棚板について、荷物等の忘れ物防止や、防犯や採光のため、下から見透せる構造が求められることがある。
しかし、金網やパイプで棚板を形成する場合、棚板上に載せる物品が小さいと、金網の網の目やパイプの隙間を通じて落下する可能性がある。
そこで、棚板として、ガラス板、透明な樹脂板などを用いることがある。その場合には、ガラス板などの棚板を枠部材にて支持する構造として荷物棚が構成されるが、荷物を安定して支持できるように棚板の上面と枠部材の上面との段差は極力小さいことが望まれる。
そこで、アルミ合金の押し出し形材の素材に対して不要部分を切削加工により除去して開口部を有する荷物棚本体を形成し、この開口部の周囲の段付部の上にガラスまたはプラスチック製の荷物棚を載せて、接着により固定するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−256520号公報(段落0012)
特許文献1に記載の構造のように、アルミ合金の押し出し形材の素材に対して不要部分を切削加工により除去して開口部を有する荷物棚本体を形成するようにすると、軽量化は図れるが、切削加工により切削屑が生成されるという無駄が発生している。また、材料コストに加えて、加工コストが必要となり、コストアップの原因となる。
本発明は、切削加工のような機械加工をなくすことで省資源化を図り、コストダウンを図れると共に組立も容易である鉄道車両の荷物棚構造を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、車両長手方向に延びる荷棚板部材と、全長に亘って一様な断面を有し、前記荷棚板部材の車幅方向内方側の縁部が嵌合される前側枠部材と、全長に亘って一様な断面を有し、前記荷棚板部材の車幅方向外方側の縁部が嵌合される後側枠部材と、側面視略L字状であって、前記前側枠部材及び前記後側枠部材を下方から支持する荷棚受とを備え、前記荷棚板部材が嵌合された前記前側枠部材及び前記後側枠部材は,前記荷棚受に固定される、ことを特徴とする。
このようにすれば、棚板部材を前側及び後側枠部材で挟んで、両枠部材を荷棚受に固定するようにしているので、開口部を形成するための機械加工を行う必要がなくなる。よって切削屑は生成されず、省資源化が図れ、製造コストが低減される。また、棚板部材は前側及び後側枠部材によって挟まれるだけであるので、組立を容易に行うことができる。さらに、ねじ止めのためのねじ穴を設ける等の加工が困難な強化ガラス板を棚板部材として採用することもできる。
また、棚板部材を押さえる部品をなくすことができ、構造が簡単になるのに加えて、部品点数を低減することができ、コストダウンを図る上で有利となる。また、荷棚受の上側に荷棚板の前側及び後側枠部材が固定されているので、荷棚板がそれの長手方向に移動することがなく、荷棚板端部を隠蔽するだけでよいので、この点においても部品点数を低減する上で有利となる。
請求項に記載のように、前記荷棚受は、少なくとも、前記荷棚板部材の長手方向における中間部に対応する位置に配置される第1の荷棚受と、両端部に対応する位置に配置される第2の荷棚受とを有し、前記第1及び第2の荷棚受は、車幅方向に略水平に延びる棚受本体部と、前記棚受本体部から略上方に延びる取付部とを含み、さらに第2の荷棚受は、前記棚受本体部と一体に形成され前記荷棚板部材の長手方向端部を隠蔽する縦壁部を含む、構成とすることができる。
このようにすれば、荷棚板端部を隠蔽するための部品を荷棚受(縦壁部)が兼ね備えているので、部品点数を低減する上で有利となる。
請求項に記載のように、前記荷棚板部材と平行に延びる前棒部材をさらに備え、前記第1の荷棚受の前記棚受本体部は、その前端部に前記前棒部材が挿通される貫通孔をさらに有し、前記第2の荷棚受の前記棚受本体部は、その前端部に前記前棒部材の長手方向端部が篏合される篏合穴をさらに有し、各前記第1及び第2の荷棚受と前記前棒部材とは、ねじ止め固定される、ことが望ましい。
このようにすれば、簡単な構造で前棒部材によって荷棚受同士を結合しているので、剛性を高めることができる。
請求項に記載のように、前記後側枠部材は、前記荷棚受の前記取付部に沿って上方に延びる塞ぎ板部をさらに有する、ことが望ましい。
このようにすれば、塞ぎ板部が後側枠部材の一部として一体に形成されているので、窓部を通じて荷棚板上の荷物が外部に吸い出されるのを防止する塞ぎ板を別部品として設ける必要がなく、部品点数を低減する上で有利となる。さらに、組立の手間も省ける。
請求項に記載のように、前記前側枠部材及び前記後側枠部材と前記荷棚板部材の各前記縁部との間には、緩衝材をさらに備える、ようにすることも可能である。
このようにすれば、棚板部材と枠部材(前側及び後側枠部材)の間に緩衝材を加えることで棚板部材の生産時の製作誤差を吸収することができる。
本発明は、荷棚板部材が嵌合された前側枠部材及び後側枠部材を、下方から支持する荷棚受に固定するようにしているので、開口部を形成するための機械加工を行わないので、切削屑が生成されるという無駄を省け、省資源化を図ることができる。したがって、製造コストが大幅に低減される。また、荷棚板部材の縁部が前側及び後側枠部材に嵌合されるだけであるので、組立を容易に行うことができるのに加えて、ねじ止めのためのねじ穴を設ける等の加工が困難な強化ガラス板を棚板部材として採用することもできる。
本発明に係る鉄道車両の荷物棚構造の一実施の形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 図1(a)のA−A線における断面図である。 図1(a)のC−C方向の矢視図である。 図1(a)のD−D線における断面図である。 (a)は図2のE部詳細図、(b)は同斜視図である。 (a)は図4のF部詳細図、(b)は縦壁部を別体とした場合の図6(a)と同様の図である。 (a)は図1(a)のB−B線における断面図、(b)は図7(a)のG方向矢視図である。 荷物棚の配置の一例を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。図8に示すように、鉄道車両101の左右両側において、車両長手方向に、所定長さの荷物棚1が所定の間隔でもって配置される。そのうちの1つの荷物棚構造について説明する。
図1は本発明に係る鉄道車両の荷物棚構造の一実施の形態を示すもので、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図である。図2は図1(a)のA−A線における断面図、図3は図1(a)のC−C方向の矢視図、図4は図1(a)のD−D線における断面図、図5は図2のE部詳細図である。
図1〜図5に示すように、鉄道車両において、荷物棚1は、複数の荷棚受2A,2B(この実施の形態では、中間に配置される3つの第1の荷棚受2Aと、両端に配置される第2の荷棚受2B)と、それらにより下側から支持される荷棚板3とから構成される。
第1の荷棚受2Aは、荷棚板3の車両長手方向の中間位置に配置され荷棚板3の中間部分を下側から支持するもので、第2の荷棚受2Bは、荷棚板3の車両長手方向の両端位置に配置され荷棚板3の端部を支持するものである。第1および第2の荷棚受2A,2Bは、いずれも、L字形状で、略水平方向に延び荷棚板3を下側から支持する断面矩形状の棚受本体部2Aa,2Baと、棚受本体部2Aa,2Baの後端より上方に延びる取付部2Ab,2Bbとを有し、取付部2Ab,2Bbの上端部付近が、荷棚取付地12A,12B,12Cを介してビス21にて側構体11に固定されている。その固定位置は、側構体11に形成される窓部11aよりも上方位置である。なお、「略水平方向に延び」には、荷物が前側から落下しないように、棚受本体部2Aa,2Baが5°〜10°程度前上がりに傾斜して延びている場合も含まれる。
荷棚板3は、荷物棚1の長手方向全長にわたって一様な断面を有する、長尺かつ中空の前側及び後側枠部材4,5と、それらの間に緩衝材6A,6Bを介して挟まれて支持される透明な棚板部材7(例えば、ガラス板)とを備える。前側及び後側枠部材4,5は、それぞれ、荷物棚1の長手方向(車両長手方向に対応)に延び、棚板部材7の前後縁部が嵌合する嵌合溝4a,5aを有する。
棚板部材7の前後縁部が嵌合溝4a,5aに嵌合して荷棚板3とされ、荷棚板3の枠部材4,5が荷棚受2A,2Bの棚受本体部2Aa,2Baの上側にビス8A,8B(ねじ)にて固定されるので、棚板部材7が枠部材4,5から外れないように押さえる部品を用いる必要がなくなる。前側及び後側枠部材4,5は、第1および第2の荷棚受2A,2Bに載せているだけであるので、両荷棚受2A,2Bに長手方向の切り欠きを設ける必要がなく、組み立て時のすり合わせが不要のため、精度・品質の向上を図る上で有利となる。
また、後側枠部材5は、棚板部材7を支持する棚受本体部5Aの後縁から、取付部2Ab,2Bbに沿って上方に延びる塞ぎ板部5Bが一体的に形成されている。そして、この塞ぎ板部5Bは、窓部11aの上縁部より上方まで延び、荷棚板3上の軽量荷物(例えば新聞、雑誌等)が、窓部11aの開放時に、窓部11aを通じて、外部に吸い出されるのを防止するようになっている。この塞ぎ板部5Bは、第1および第2の荷棚受2A,2Bの取付部2Ab,2Bb(ねじ)に対しビス8Cにて固定されている。このように塞ぎ板部5Bを、後側枠部材5の一部として形成することで、塞ぎ板を別部品として設ける必要がなくなる。
第1および第2の荷棚受2A,2Bのうち両端に位置する第2の荷棚受2Bは、図6(a)に示すように、断面矩形状の棚受本体部2Baの外側部において上方に延びる縦壁部2Baaが一体的に成形されている。また、図3に示すように、この縦壁部2Baaの上側前縁は前下がりに傾斜し、後縁は取付部2Bbの下部に接続されている。そして、この縦壁部2Baaによって、荷棚板3の端部が隠蔽され、外方から荷棚板3の端部を視認できないようになっている。このように、第2の荷棚受2Bの縦壁部2Baaにて荷棚板3の端部を隠蔽することができるので、荷棚板3の端部を隠蔽するための部品を別途設ける必要がなくなる。
また、両枠部材4,5が荷棚受2A,2Bの棚受本体部2Aa,2Baの上側にビス8A,8Bにてねじ止めされ、荷棚板3がそれの長手方向に移動するおそれがないので、第2の荷棚受2Bの縦壁部2Baaにて荷棚板3の端部を隠蔽するだけでよい。なお、荷棚板3の棚板部材7の端部と縦壁部2Baaの内面との間には、すり合わせが不要であり、それらの間の隙間にパッキン13などを必要に応じて設けることで(図6(a)参照)、その隙間を簡単に埋めることができる。
このように、棚板部材7の支持部が前側及び後側枠部材4,5のみで、棚板部材7の他の部材(例えば金属製)との接触部を減らして、必要とする緩衝材の点数を低減することができる。この点からも省資源化が図れ、製造コストが低減される。
第1および第2の荷棚受2A,2Bの棚受本体部2Aa,2Baは、先端部に取付穴2a,2bが形成され、この取付穴2a,2bを利用して前棒部材14が荷棚受2A,2Bに対して取り付けられている。そして、各荷棚受2A,2Bと前棒部材14とはビス15にてねじ止めされている。これにより前棒部材14を介して第1および第2の荷棚受2A,2B同士が相互に結合され、剛性アップが図られている。なお、第1の荷棚受2Aの取付穴2aは、前棒部材14が挿通される貫通穴であるが、第2の荷棚受2Bの取付穴2bは、貫通穴ではなく、前棒部材14の各端部が嵌合される嵌合穴である。
また、両端に位置する2つの第2の荷棚受2Bは、それらの間に位置する3つの第1の荷棚受2Aよりも、棚受本体部2Baの長さが長く、取り付けられた状態で第2の荷棚受2Bの先端部の車室内への突出量が第1の荷棚受2Aよりも大きくなっている。
そして、第2の荷棚受2Bの、前棒部材14が取り付けられる位置よりも先端側の部分に、上下方向に延びる握り棒23の上端部が連結されている。つまり、第2の荷棚受2Bの間においては、図7(a)(b)に示すように、前棒部材14に対しジョイント部材24が2つのビス25にて固定され、上下方向に延びる握り棒23の上端部がジョイント部材24の筒状部24aに嵌合され、ビス26にて固定されている。
上記のように構成すれば、荷棚板3は、荷物棚全長に渡り一様な断面を有する長尺の前側及び後側枠部材4,5と、それらの間に緩衝材6A,6Bを介して挟まれて支持される棚板部材7とを備え、第1および第2の荷棚受2A,2Bの上側に両枠部材4,5がビス8A,8Bにて固定されているので、棚板部材7を取り付けるために従来構造のように機械加工をする必要がなくなる。したがって、切削屑の生成などの無駄を省け、省資源化を図ることができ、製造コストが大幅に低減される。また、棚板部材7は、それの前後縁部が前側及び後側枠部材4,5の嵌合溝4a,5aに嵌合され、両枠部材4,5にて挟まれて取り付けられるので、組立を容易に行うことができる。
本発明は、前述した実施の形態のほか、次のように変更して実施することもできる。
(i)図6(a)に示すように、縦壁部2Baaにて棚板部材7の端部を隠蔽するだけでなく、縦壁部に荷棚板3の端部が嵌り込む嵌合凹部を形成することも可能である。
(ii)前側枠部材の幅を広くすることで、必要な剛性を確保し、前棒部材を省略することも可能である。
(iii)棚受本体部2Baと縦壁部2Babとを別体とすることができるのはいうまでもない。例えば図6(b)に示すように、棚受本体部2Baの外側に縦壁部材2Babをビス27にて固定すればよい。
1 荷物棚
2A 第1の荷棚受
2B 第2の荷棚受
2Aa,2Ba 棚受本体部
2Ab,2Bb 取付部
2a,2b 取付穴
2Baa 縦壁部
3 荷棚板
4 前側枠部材
4a 嵌合溝
5 後側枠部材
5a 嵌合溝
5A 水平部分
5B 塞ぎ板部
6A,6B 緩衝材
7 棚板部材
8A,8B,8C ビス(ねじ)
14 前棒部材
15 ビス

Claims (5)

  1. 車両長手方向に延びる荷棚板部材と、
    全長に亘って一様な断面を有し、前記荷棚板部材の車幅方向内方側の縁部が嵌合される前側枠部材と、
    全長に亘って一様な断面を有し、前記荷棚板部材の車幅方向外方側の縁部が嵌合される後側枠部材と、
    側面視略L字状であって、前記前側枠部材及び前記後側枠部材を下方から支持する荷棚受とを備え、
    前記荷棚板部材が嵌合された前記前側枠部材及び前記後側枠部材は、前記荷棚受に固定される、鉄道車両の荷物棚構造。
  2. 前記荷棚受は、少なくとも、前記荷棚板部材の長手方向における中間部に対応する位置に配置される第1の荷棚受と、両端部に対応する位置に配置される第2の荷棚受とを有し、
    前記第1及び第2の荷棚受は、車幅方向に略水平に延びる棚受本体部と、前記棚受本体部から略上方に延びる取付部とを含み、

    さらに第2の荷棚受は、前記棚受本体部と一体に形成され前記荷棚板部材の長手方向端部を隠蔽する縦壁部を含む、請求項記載の鉄道車両の荷物棚構造。
  3. 前記荷棚板部材と平行に延びる前棒部材をさらに備え、
    前記第1の荷棚受の前記棚受本体部は、その前端部に前記前棒部材が挿通される貫通孔をさらに有し、
    前記第2の荷棚受の前記棚受本体部は、その前端部に前記前棒部材の長手方向端部が篏合される篏合穴をさらに有し、
    各前記第1及び第2の荷棚受と前記前棒部材とは、ねじ止め固定される、請求項に記載の鉄道車両の荷物棚構造。
  4. 前記後側枠部材は、前記荷棚受の前記取付部に沿って上方に延びる塞ぎ板部をさらに有する、請求項1〜のいずれか1つに記載の鉄道車両の荷物棚構造。
  5. 前記前側枠部材及び前記後側枠部材と前記荷棚板部材の各前記縁部との間には、緩衝材をさらに備える、請求項1〜のいずれか1つに記載の鉄道車両の荷物棚構造。
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