JP5536389B2 - 水硬性組成物用減水剤 - Google Patents

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Description

本発明は、水硬性組成物用減水剤に関する。
水硬性組成物用の減水剤は、セメント粒子を分散させることにより、所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させ、水硬性組成物の作業性等を向上させるために用いる化学混和剤である。減水剤には、従来、ナフタレン系(ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物)やメラミン系(メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物)の高性能減水剤が知られている。
ナフタレン系減水剤を使用する系、あるいは使用し得る系での、セメントや石膏を水硬性物質としたペースト、スラリー、モルタル、コンクリート等の流動性保持技術としては、いくつか提案されている(特許文献1〜4)。例えば、特許文献1〜3には、ナフタレン又はその誘導体とホルムアルデヒド共縮合可能な物質とその誘導体による共縮合物が記載されている。なかでも、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩によるセメント配合物について、特に有効な流動性保持技術としては、低級オレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物(無水マレイン酸等)との共重合物の粉粒体と減水剤とをセメント配合物に添加して、徐放作用によりセメント粒子の凝集を防止する方法がある(特許文献4)。
特開平6−340459号公報 特開平7−109158号公報 特開平7−247147号公報 特公昭63−5346号公報
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、通常、重量平均分子量が8,000〜18,000のものが減水剤として多用されているが、それらは、水硬性組成物のスランプロスといった流動保持性面で課題がある。流動保持性を向上させる方法としては、糖類、グルコン酸ソーダといった、遅延剤等の添加が一般的であるが、硬化体の初期強度を著しく低下させる事から使用量も制限され充分な流動保持性を維持できない。又、上記の通り、特許文献4は、スランプロス防止効果に有効であるとされているが、強度(特に初期強度)については更なる向上が望まれる。また、特許文献4の混和剤は、工業的には粉粒体を含む懸濁液として用いることが有利であるが、粉粒体を沈降させない均一な状態で使用しないと設計通りのスロンプロス防止効果が発揮されないため、例えば、長期間均一な状態を保つための制御手段や使用前に粉粒体を均一化できるような手段が必要となる。
本発明の課題は、セメントや石膏を水硬性物質としたペースト、スラリー、モルタル、コンクリート等の水硬性組成物に対して、優れた流動保持効果と強度発現効果を付与できるナフタレン系減水剤を提供することである。
本発明は、下記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が1,900〜24,000であり、且つGPC測定で得られる分子量が4,000以下のピーク面積が全ピーク面積の17〜38%であるナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を含有する水硬性組成物用減水剤に関する。
Figure 0005536389
〔式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、nは縮合度であり1以上の数、Mは対イオンを示す。尚、一般式(I)の両末端は水素原子である。〕
また、本発明は、ナフタレンスルホン酸又は炭素数1〜4のアルキル基を有するナフタレンスルホン酸1モルに対してホルムアルデヒド0.6〜0.97を85〜95℃で4〜5時間で滴下し、100〜110℃で4〜30時間反応させる工程の後、中和する工程を有する、上記水硬性組成物用減水剤の製造方法に関する。
また、本発明は、前記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が8,700〜29,300の高縮合度ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、前記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が1,900〜4,000の低縮合度ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とを混合する工程を有する、上記水硬性組成物用減水剤の製造方法に関する。
また、本発明は、上記本発明の水硬性組成物用減水剤、水硬性物質及び水を、下記(1)〜(3)の少なくとも何れかの方法で混合する工程を有する、水硬性組成物の製造方法に関する。
方法(1):水硬性物質への注水開始と同時に該減水剤を添加する
方法(2):水硬性物質への注水中に該減水剤を添加する
方法(3):水硬性物質への注水完了後、混練終了までの間に該減水剤を添加する
また、本発明は、上記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が1,900〜24,000であり、且つGPC測定で得られる分子量が4,000以下のピーク面積が全ピーク面積の17〜38%であるナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の水硬性組成物用減水剤用途である。
本発明によれば、セメントや石膏を水硬性物質としたペースト、スラリー、モルタル、コンクリート等の流動保持性と硬化体強度発現に優れた、水硬性組成物用減水剤が提供される。
本発明の好ましい態様は、前記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が8,700〜29,300の高縮合度ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下、高縮合度NSFという)と、前記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が1,900〜4,000の低縮合度ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下、低縮合度NSFという)とを配合してなる、上記水硬性組成物用減水剤である。
上記態様において、低縮合度NSFと、高縮合度NSF縮合物の固形分比(低縮合度NSF/高縮合NSF)が、80/20〜20/80であることがより好ましい。
また、上記態様において、高縮合度NSFは、GPC測定で得られる分子量4,000以下のピーク面積が全ピーク面積の12〜17%であり、低縮合度NSFは、GPC測定で得られる分子量4,000以下のピーク面積が全ピーク面積の33〜38%であることがさらにより好ましい。
本発明に係るナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下、NSFと表記する)は、重量平均分子量1,900〜24,000、好ましくは1,900〜9,700、より好ましくは1,900〜6,000、更に好ましくは1,900〜4,000である。また、GPC測定で得られる分子量が4,000以下のピーク面積(以下、ピーク面積%ということもある)が全体の17〜38%、流動保持効果の観点から、好ましくは27〜38%、より好ましくは33〜38%である。流動保持効果と初期強度発現効果の観点から、好ましくは20〜38%、より好ましくは24〜33%、さらに好ましくは27〜33%である。このピーク面積%は、本発明では流動保持性能と強度発現性能の指標となり、この比率が上記所定範囲にあることは、低縮合度の反応物を所定量含有することを意味する。なお、NSFという場合、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の一部又は全部が塩であるものを含む。
ここで、NSFの重量平均分子量及びピーク面積%は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものである。なお、本発明におけるNSFの重量平均分子量及びピーク面積%は、該縮合体のピークに基づいて算出されたものとする。すなわち、NSFに由来する全ピーク面積の合計に対する標準物質分子量4,000の保持時間より後に検出される重量平均分子量4,000以下のNSFのピーク物質に由来する合計面積により求める。具体的にはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の3核体、2核体、ナフタレンジスルホン酸及びナフタレンモノスルホン酸に由来する4つを含むピーク面積を合計する。
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量 :0.7ml/min
検出 :UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)社製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(重量平均分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV-8020
ピークの境界:分子量4000以下のピーク物質に由来するピークと分子量4000超のピーク物質に由来するピークの境界は、両ピークの極小値(谷)とした。
データ処理:東ソー株式会社 GPC-8020 マルチステーション8020
GPCデータ収集アプリケーション Version 2.01
Copyright(C)東ソー(株)1997-1999
上記重量平均分子量及びピーク面積%を満たすNSFは、低分子量領域(低縮合度領域)では、通常のナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合反応により、上記ピーク面積%を満たすものを比較的容易に得ることができる。一方、高分子量領域(高縮合度領域)では、通常のナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合反応では、上記ピーク面積%を満たすものが得られにくい傾向にある。そのため、本発明に係るNSFは、分子量及び分子量分布が既知のNSFを混合して得ることが、作業性の点では好ましい。例えば、GPC測定で得られる重量平均分子量が好ましくは13,000〜18,000程度の高縮合度NSF(市販品では、例えば、花王(株)製マイテイ150)と、重量平均分子量が好ましく2,000〜3,500程度の低縮合度NSF(市販品では、例えば、花王(株)製デモールNL、デモールN、デモールRN−L、デモールRN)とを混合することで、本発明に係るNSFを得ることができる。また、これら高縮合度NSFと低縮合度NSFとを、それぞれ合成して混合する方法も好ましい。
従って、本発明により、GPC測定で得られる重量平均分子量が8,700〜29,300の高縮合度NSFと、GPC測定で得られる重量平均分子量が1,900〜4,000の低縮合度NSFとを混合して、GPC測定で得られる重量平均分子量が1,900〜24,000であり、好ましくは3,600〜24,000、より好ましくは3,600〜10,000であり、且つGPC測定で得られる分子量が4,000以下のピーク面積が全体の17〜33%であるNSFを含有する水硬性組成物用減水剤を製造する、水硬性組成物用減水剤の製造方法が提供される。この場合、高縮合度NSFは、GPC測定で得られる分子量が4,000以下のピーク面積が全体の12〜17%のもの、さらに13〜16%のものを、また、低縮合度NSFは、GPC測定で得られる分子量が4,000以下のピーク面積が全体の33〜38%のもの、さらに34〜38%のものを用いることが好ましい。流動保持性と強度を向上させる観点から、低縮合度NSFと高縮合度NSFとを固形分比、すなわち重量比で低縮合度NSF/高縮合度NSF=80/20〜20/80、より80/20〜40/60、更に80/20〜60/40で混合することが好ましい。低縮合度NSFの比率を大きくすると流動保持性が向上する傾向がある。高縮合度NSFの比率を大きくすると同じ流動性を得るために必要な減水剤の量を少なくできる傾向がある。また、低縮合度NSFは重量平均分子量が、流動保持性と強度を向上させる観点から2,500〜3,500が好ましく2,800〜3,200がさらに好ましい。また、高縮合度NSFは重量平均分子量が、流動保持性と強度を向上させる観点から12,000〜22,000が好ましい。
また、通常、NSFは、ナフタレンスルホン酸1モルに対して、0.60〜0.97モルのホルムアルデヒドを縮合反応させることにより得られるので、この反応を利用して本発明に係るNSFを含有する水硬性組成物用減水剤を得ることもできる。この反応には、35〜37重量%濃度のホルマリンが用いられる。その際の縮合時間(反応時間)やホルムアルデヒドのモル比を調整することで、重量平均分子量やピーク面積%の異なるNSFを得ることができる。例えば、反応時間を長くすると重量平均分子量が大きくなる傾向があり、反応時間を短くすると重量平均分子量が小さくなる傾向がある。また、ホルムアルデヒドのモル比を大きくすると重量平均分子量が大きくなる傾向があり、ホルムアルデヒドのモル比を小さくすると重量平均分子量が小さくなる傾向がある。
例えば、ナフタレンスルホン酸又は炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換ナフタレンスルホン酸1モルに対してホルムアルデヒド0.6〜0.97モルを85〜95℃で4〜5時間で滴下し、100〜110℃で4〜30時間反応させる工程の後、中和する工程を有する製造方法により、本発明の水硬性組成物用減水剤を得ることができる。すなわち、ナフタレンスルホン酸又は炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換ナフタレンスルホン酸を含む反応系(水を含んでいてもよい)に、前記比率でホルムアルデヒドを85〜95℃で4〜5時間で、滴下等により導入し、100〜110℃で4〜30時間反応させ、得られた反応生成物を中和する。
具体的には、ナフタレンスルホン酸1モルに対して、0.60〜0.97モル、好ましくは0.60〜0.80モル、より好ましくは0.60〜0.70モルのホルムアルデヒドを85℃から95℃で4〜5時間かけて滴下し、100〜105℃で4〜30時間、好ましくは4〜12時間、より好ましくは4〜7時間縮合反応させることにより、縮合反応化物を得る。得られた縮合反応化物に対して水又は温水8〜10モルを加え、温度50℃から95℃、好ましくは65〜85℃で1時間から2時間かけて縮合反応化物を溶解させる。溶解した縮合反応化物中の全余剰硫酸に対して1.00〜1.20モルの中和剤1(水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウム)を加え、石膏として分別後、更に中和剤2(水酸化ナトリムまたは炭酸ナトリウム)を加え(中和剤1で炭酸カルシウムを使用した場合、炭酸カルシウム副生炭酸カルシウムを分別する)、温度20℃から80℃、好ましくは20℃から60℃で、pH値2.0〜12.5、好ましくは7.0から11.0に調整し、NSFのナトリウム塩を含有する水溶液の形態の水硬性組成物用減水剤が得られる。得られる水溶液状水硬性組成物用減水剤の固形分濃度は、30重量%〜43重量%、好ましくは40重量%から43重量%である。また、水分を除いて粉末品として得ることもできる。
なお、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属塩の中ではナトリウム塩が好ましい。中和度は0.95〜1.02が好ましい。
本発明では、スランプロス防止効果に有効な遅延剤や徐放性分散剤である低級オレフィンと無水マレイン酸共重合物の粉粒体を添加する事なく、特定の分子量と分子量分布を有するNSFを含有する減水剤を提供するものである。本発明の水硬性組成物用減水剤を用いることで、水硬性組成物の用途、性質に応じたスランプロスの制御が容易となる。例えば、水硬性組成物の調製後30分程度の流動保持性が望まれる用途(二次製品用途)と、水硬性組成物の調製後60分程度の流動保持性が望まれる用途(生コン用途)といった具合に、用途別の要求性能に応じて適切なスランプロスを付与することができる。本発明で規定する範囲の重量平均分子量及びピーク面積%を満たす場合、NSFにおける分子量4,000以下の化合物が多くなると流動保持性は高くなり、分子量4,000以下の化合物が少なくなると流動保持性は低くなる傾向を示す。これを考慮して、用途に応じた流動保持性(スランプロス)を付与することができる。なお、重量平均分子量の小さいNSF、例えば重量平均分子量が1,900未満のNSFは分子量4,000以下の化合物を多く含むが、流動保持性は悪い。従って、従来当業界で使用されている重量平均分子量8,000〜18,000程度のNSFに、単にこうした低分子量のNSFを併用した場合には、流動保持性の向上は期待できないことが予想される。ところが、本発明では、所定範囲の重量平均分子量のNSFにおいて分子量4,000以下のピーク面積を特定比率にすることで流動保持性が向上し、更に強度も向上する効果が得られる。これは、従来の知見からは予測できない格別の効果を奏するものであるといえる。即ち、本発明の水硬性組成物用減水剤において、GPC測定で得られる分子量が4000以下のピーク面積が全ピーク面積の17〜38%であると、流動保持性と強度向上の観点から好ましいが、高縮合度NSFを混合しない場合には33〜38%がより好ましく、34〜36%が更に好ましく、高縮合度NSFを混合する場合には、24〜33%好ましく、27〜33%がより好ましい。
本発明の水硬性組成物用減水剤は、水溶液の場合、本発明に係るNSFを30〜42重量%、更に35〜42重量%、より更に39〜42重量%含有することが好ましい。また、本発明の減水剤は、粉体の場合、本発明に係るNSFからなるものであってもよい。
本発明の水硬性組成物用減水剤は、他の公知のセメント添加材(剤)、例えば高性能AE減水剤、流動化剤、AE(空気連行)剤、AE減水剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、消泡剤、保水剤、増粘剤、防水剤、ひび割れ低減剤、高分子エマルジョン、水溶性高分子、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、膨張剤、徐放性分散剤、徐放性起泡剤等の併用が可能である。なお、減水剤を併用する場合は、リグニン系(リグニンスルホン酸塩)及びメラミン系(メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩)から選ばれる減水剤が好ましい。
本発明の水硬性組成物用減水剤は、水硬性物質100重量部に対して、本発明に係るNSFが0.3〜3.0重量部、より0.5〜3.0重量部、更に1.0〜3.0重量部となるように用いられることが好ましい。
本発明の減水剤の対象となる水硬性組成物に使用される水硬性物質とは、水と反応して硬化する性質をもつ物質、及び単一物質では硬化性を有しないが、2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する物質のことであり、粉体状のものが好ましく、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。本発明の減水剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
本発明の対象となる水硬性組成物は、水/水硬性物質比〔スラリー中の水と水硬性物質の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、水硬性物質がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が、25〜55重量%、更に35〜55重量%、更に40〜55重量%、更に40〜50重量%であることができる。
本発明の水硬性組成物用減水剤は、従来のNSFを含有する減水剤と同様、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性組成物の減水剤として用いられる。減水剤の水硬性組成物に対する添加時期は、通常、水硬性物質への注水開始と同時から注水直後、或は混練終了までの間であり、限定されるものではない。具体的には、本発明の水硬性組成物用減水剤、水硬性物質及び水を、下記(1)〜(3)の少なくとも何れかの方法で混合する工程を有する、水硬性組成物の製造方法が挙げられる。なかでも方法(3)は、該減水剤添加量低減効果の観点から好ましい。また、方法(1)〜(3)は複数を組み合わせて行ってもよい。
方法(1):水硬性物質への注水開始と同時に該減水剤を添加する
方法(2):水硬性物質への注水中に該減水剤を添加する
方法(3):水硬性物質への注水完了後、混練終了までの間に該減水剤を添加する
また、本発明の水硬性組成物用減水剤に係る高縮合度NSFと低縮合度NSFとを、水硬性物質に別々に添加してもよい。別々に添加することで、目的とする水硬性組成物の流動性と流動保持性の調整をし易くなる。この添加の際には、別々に添加したNSFを混合した際に、GPC測定で得られる重量平均分子量及び分子量4000以下のピーク面積が、本発明の範囲を満たす関係であればよい。さらに、本発明の水硬性組成物用減水剤は、予め水と混合して水硬性物質に添加してもよい。
<1>配合成分
〔1−1〕ナフタレンスルホン酸(NSF原料)の製造
攪拌機付き反応容器中にナフタレン1モルを仕込み、120℃に昇温し、攪拌しながら98%硫酸1.28モルを滴下ロートに計り込み1時間かけて滴下する。次に、160℃に昇温し、3時間攪拌して目的のナフタレンスルホン酸を得る。酸価は、340±10mgKOH/gであった。
〔1−2〕NSFの製造
(1−2−1)合成例1(低縮合度NSFの合成)
上記で製造したナフタレンスルホン酸1モルと水2.2モルを攪拌付き反応容器に入れ90℃に昇温し、37%ホルマリン(ホルムアルデヒドとして0.70モル)を4時間かけて滴下する。次いで、105℃に昇温して、4時間から12時間反応して水又は温水8〜10モルを加え、ゲル状縮合化物を溶解し縮合反応を停止させることで重量平均分子量やピーク面積%の異なる低縮合度NSF(I−0〜I−3)を得る。縮合物の中和方法は、ライミングソーデーション法(炭酸カルシウムでカルシウム塩として全余剰硫酸を石膏として分別した後、炭酸ナトリウムでナトリウム塩とし、副生炭酸カルシウムを分別する方法)で行い、固形分濃度が40重量%になるように調整して、種々の低縮合度NSFを得た。
(1−2−2)合成例2(高縮合度NSFの合成)
ナフタレンスルホン酸1モルと水2.2モルを攪拌付き反応容器に入れ90℃に昇温し、37%ホルマリン(ホルムアルデヒドとして0.97モル)を4時間かけて滴下する。次いで、105℃に昇温して、10時間から30時間反応して水又は温水8〜10モルを加え、ゲル状縮合化物を溶解し縮合反応を停止させることで重量平均分子量やピーク面積%の異なる高縮合度NSF(II−1〜II−3)を得る。縮合物を合成例1と同様に中和し、固形分濃度が40重量%になるように調整して、種々の高縮合度NSFを得た。
合成例1、2で得たNSFの重量平均分子量、及びGPC測定で得られる分子量が4,000以下のピーク面積の全ピーク面積に対する割合を表1に示す。
Figure 0005536389
〔1−3〕その他の減水剤成分
・III−1:花王(株)製デモールRN−L(重量平均分子量2,890、ピーク面積35.1%)
・III−2:花王(株)製マイテイ150(Na塩)(重量平均分子量14,500、ピーク面積14.7%)
・III−3:花王(株)製マイテイ2000WH〔花王(株)製マイテイ150のNa塩をCa塩としたNSFと、徐放性分散剤である低級オレフィンと無水マレイン酸共重合物の粉粒体とを、NSF/粉粒体=91/9の重量比で含む減水剤。〕(NSFの重量平均分子量14,500、ピーク面積14.7%)
・III−4:花王(株)製マイテイ2000WHを、一ヶ月静置した後の上澄み液。〔マイテイ2000WH中の低級オレフィンと無水マレイン酸共重合物の粉粒体が沈降し、NSFの割合が増加した減水剤。〕(NSFの重量平均分子量14,500、ピーク面積14.7%)
<2>コンクリート試験
上記の配合成分を用いて、表2、3に示す水硬性組成物用減水剤を調製し、コンクリートに対する流動保持性能(スランプ値の経時変化)と硬化体材齢圧縮強度を評価した。結果を表2、3に示す。性能評価は、以下のコンクリート配合によるコンクリート流動の保持性並びに気中養生後の圧縮強度で行った。
*コンクリートの製造方法
60L練り二軸ミキサーに所定量のコンクリート成分(セメント16.0kgに相当)に所定量の水を投入混練し、混練20秒後に所定量の表2、3に示す調製された減水剤を投入して70秒間混練りした。
*コンクリート配合条件
セメント:普通ポルトランドセメント〔太平洋セメント(株)製/住友大阪セメント(株)製=1/1(重量比)〕(密度=3.16g/cm3) 400kg
水:水道水 170kg
砂:城陽産 山砂(密度=2.55g/cm3) 941kg
砂利:鳥形山産 砕石(密度=2.72g/cm3) 815kg
減水剤:表2の減水剤、コンクリート混練後初期スランプ値が20.0±0.5cmとなる様に減水剤添加量で調整した。コンクリート空気量は消泡剤(フォームレックス797、日華化学株式会社製)を添加にて1.5±0.3%になる様に調整した。コンクリート温度は20±1℃であった。
*コンクリートの流動性
JIS A 1101法に準拠して、スランプ値(cm)を経時的に測定した。すなわち、混練終了直後と静置30分後、60分後、90分後のコンクリートについて、スランプを経時的に測定した。
*圧縮強度
JIS A 1108に準拠して圧縮強度(N/mm2)を経時的に測定した。
Figure 0005536389
Figure 0005536389

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が1,900〜24,000であり、且つGPC測定で得られる分子量が4,000以下のピーク面積が全ピーク面積の17〜38%であるナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を含有する水硬性組成物用減水剤であって、
    下記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が8,700〜29,300の高縮合度ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下、高縮合度NSFという)と、下記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が1,900〜4,000の低縮合度ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(以下、低縮合度NSFという)とを配合してなる、
    水硬性組成物用減水剤。
    Figure 0005536389

    〔式中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、nは縮合度であり1以上の数、Mは対イオンを示す。尚、一般式(I)の両末端は水素原子である。〕
  2. 低縮合度NSFと、高縮合度NSF縮合物の固形分比(低縮合NSF/高縮合NSF)が、80/20〜20/80である請求項記載の水硬性組成物用減水剤。
  3. 高縮合度NSFは、GPC測定で得られる分子量4,000以下のピーク面積が全ピーク面積の12〜17%であり、低縮合度NSFは、GPC測定で得られる分子量4,000以下のピーク面積が全ピーク面積の33〜38%である、請求項又は記載の水硬性組成物用減水剤。
  4. 前記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が8,700〜29,300の高縮合度ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と、前記一般式(I)の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる重量平均分子量が1,900〜4,000の低縮合度ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物とを混合する工程を有する、請求項1〜の何れか1項記載の水硬性組成物用減水剤の製造方法。
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