JP6403602B2 - セメント分散剤組成物およびセメント組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、セメント分散剤組成物およびセメント組成物に関する。
セメントモルタルやコンクリート等には、それらの施工時の取り扱い性等を向上させるために、減水性能の改善が求められる。セメントモルタルやコンクリート等の減水性能を改善させる手段として、セメント分散剤を添加することが知られている。
ポリカルボン酸系共重合体は、従来用いられているセメント分散剤であるナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物に比べて、優れた減水性能を有していることから、水/セメント比の低い高強度配合向けのセメント分散剤として近年良く用いられている。
しかし、ポリカルボン酸系共重合体は高い減水性能を有するために、配合の際におけるわずかな水量の振れや該ポリカルボン酸系共重合体自体の添加量の振れに対して非常に敏感である。このため、セメント分散剤としてポリカルボン酸系共重合体を用いるにあたっては、水量や該ポリカルボン酸系共重合体自体の添加量の適正範囲を外れてしまうと、コンクリート流動性やコテ仕上げ性が大きく変動してしまい、適正な施工性を確保することが難しいという問題がある。
上記のような問題を解消するために、高い減水性能を有するポリカルボン酸系共重合体に、該ポリカルボン酸系共重合体よりも減水性能が少し劣るナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を併用することによって、適正な施工性を確保する方法が提案されている(特許文献1、2)。
しかしながら、ポリカルボン酸系共重合体にナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を併用すると、ポリカルボン酸系共重合体が本来有している優れた初期流動性の付与という効果が低下してしまうという新たな問題が生じる。ポリカルボン酸系共重合体にナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を併用して、且つ、優れた初期流動性を付与しようとすると、ポリカルボン酸系共重合体とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の使用量を増やす必要があり、コストアップという問題が生じてしまう。
本発明の課題は、適正な施工性を確保でき、優れた初期流動性を発現できる、セメント分散剤組成物を提供することにある。また、そのようなセメント分散剤組成物を含むセメント組成物を提供することにある。
本発明のセメント分散剤組成物は、
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体(A)100質量部と、酸基と芳香環構造を有する化合物(B)(ただし、芳香環構造を構成する炭素原子の一部が窒素原子および/または硫黄原子で置換されていても良い。)10質量部〜300質量部を含み、
該化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上である。
(一般式(1)中、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R3は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1〜500の整数であり、xは0〜2の整数であり、yは0または1である。)
(一般式(2)中、R4〜R6は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH2)zCOOM基を表し、−(CH2)zCOOM基は−COOX基または他の−(CH2)zCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体(A)100質量部と、酸基と芳香環構造を有する化合物(B)(ただし、芳香環構造を構成する炭素原子の一部が窒素原子および/または硫黄原子で置換されていても良い。)10質量部〜300質量部を含み、
該化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上である。
好ましい実施形態においては、上記化合物(B)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上である化合物(B1)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%未満である化合物(B2)とからなる。
好ましい実施形態においては、上記化合物(B1)と上記化合物(B2)の質量比率(B1)/(B2)が、60〜95/5〜40である。
好ましい実施形態においては、上記化合物(B)が有する酸基が、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基から選ばれる少なくとも1種である。
好ましい実施形態においては、上記化合物(B)が有する芳香環構造が、ベンゼン環構造、ピリジン環構造、トリアジン環構造、ナフタレン環構造から選ばれる少なくとも1種である。
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント分散剤組成物を含む。
本発明によれば、適正な施工性を確保でき、優れた初期流動性を発現できる、セメント分散剤組成物を提供することができる。また、そのようなセメント分散剤組成物を含むセメント組成物を提供することができる。特に、本発明によれば、ポリカルボン酸系共重合体と併用する酸基と芳香環構造を有する化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が特定の範囲のピーク面積の割合を特定の範囲に制御することによって、流動性の低下を抑制できるという予想外の効果が得られる。
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。
≪セメント分散剤組成物≫
本発明のセメント分散剤組成物は、特定のポリカルボン酸系共重合体(A)と、酸基と芳香環構造を有する特定の化合物(B)を含む。本発明のセメント分散剤組成物は、特定のポリカルボン酸系共重合体(A)と、酸基と芳香環構造を有する特定の化合物(B)を含むことにより、適正な施工性を確保でき、優れた初期流動性を発現できる。
本発明のセメント分散剤組成物は、特定のポリカルボン酸系共重合体(A)と、酸基と芳香環構造を有する特定の化合物(B)を含む。本発明のセメント分散剤組成物は、特定のポリカルボン酸系共重合体(A)と、酸基と芳香環構造を有する特定の化合物(B)を含むことにより、適正な施工性を確保でき、優れた初期流動性を発現できる。
本発明のセメント分散剤組成物中、ポリカルボン酸系共重合体(A)と酸基と芳香環構造を有する化合物(B)との質量比は、ポリカルボン酸系共重合体(A)100質量部に対して、酸基と芳香環構造を有する化合物(B)が10質量部〜300質量部であり、好ましくは15質量部〜250質量部であり、より好ましくは20質量部〜200質量部であり、特に好ましくは25質量部〜150質量部であり、最も好ましくは30質量部〜100質量部である。ポリカルボン酸系共重合体(A)と酸基と芳香環構造を有する化合物(B)との質量比が上記範囲内に収まることにより、本発明のセメント分散剤組成物は、より適正な施工性を確保でき、より優れた初期流動性を発現できる。
<ポリカルボン酸系共重合体(A)>
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含む。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含む。
一般式(1)および構造単位(I)中、R1およびR2は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)および構造単位(I)中、R3は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、R3は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である。
一般式(1)および構造単位(I)中、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であっても良い。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。
一般式(1)および構造単位(I)中、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500であり、好ましくは2〜500であり、より好ましくは5〜500であり、さらに好ましくは10〜500であり、特に好ましくは15〜500であり、最も好ましくは20〜300である。
一般式(1)および構造単位(I)中、xは0〜2の整数である。
一般式(1)および構造単位(I)中、yは0または1である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、例えば、炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;などが挙げられる。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステル;ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オールのいずれかにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物;であり、より好ましくは、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
一般式(2)および構造単位(II)中、R4〜R6は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH2)zCOOM基を表す。−(CH2)zCOOM基は−COOX基または他の−(CH2)zCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0〜2の整数である。
Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
Xは、水素原子、メチル基、エチル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは80質量%〜100質量%であり、特に好ましくは90質量%〜100質量%であり、最も好ましくは95質量%〜100質量%である。本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)中の構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合が上記範囲内に収まれば、本発明のセメント分散剤組成物は、より適正な施工性を確保でき、より優れた初期流動性を発現できる。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合は、例えば、該ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合としても良い。すなわち、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)を製造する際に用いる全単量体成分中の、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)との合計の質量の含有割合を、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)中の、構造単位(I)と構造単位(II)との合計の含有割合として扱って良い。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)中には、構造単位(I)と構造単位(II)以外に、他の単量体(c)由来の構造単位(III)を含んでいても良い。
単量体(c)としては、単量体(a)、単量体(b)と共重合可能な単量体である。単量体(c)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
単量体(c)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等の(メタ)アリルエーテル類;などが挙げられる。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれ得るポリカルボン酸系共重合体(A)中の構造単位(III)の含有割合は、例えば、該ポリカルボン酸系共重合体(A)の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント分散剤組成物に含まれ得るポリカルボン酸系共重合体(A)を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、本発明のセメント分散剤組成物に含まれ得るポリカルボン酸系共重合体(A)中の構造単位(III)の含有割合としても良い。すなわち、本発明のセメント分散剤組成物に含まれ得るポリカルボン酸系共重合体(A)を製造する際に用いる全単量体成分中の他の単量体(c)の質量の含有割合を、本発明のセメント分散剤組成物に含まれ得るポリカルボン酸系共重合体(A)中の構造単位(III)の含有割合として扱って良い。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)中の、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の含有比率は、質量比(質量%)で、好ましくは、(I)/(II)/(III)=1〜99/1〜99/0〜70であり、より好ましくは、(I)/(II)/(III)=50〜99/1〜50/0〜49であり、さらに好ましくは、(I)/(II)/(III)=55〜98/2〜45/0〜40であり、特に好ましくは、(I)/(II)/(III)=60〜97/3〜40/0〜30である。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算による質量平均分子量(Mw)として、好ましくは1000〜500000であり、より好ましくは5000〜300000であり、さらに好ましくは10000〜150000である。本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)が上記範囲内に収まることより、本発明のセメント分散剤組成物は、より適正な施工性を確保でき、より優れた初期流動性を発現できる。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)は、任意の適切な方法によって製造し得る。本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)は、好ましくは、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)とを含む単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)の製造に用い得る不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)、不飽和カルボン酸系単量体(b)、および、必要に応じて、他の単量体(c)の使用量は、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合が前述したものとなるように、適宜調整すればよい。好ましくは、重合反応が定量的に進行するとして、前述した本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合と同じ割合で、各単量体を用いれば良い。
不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、任意の適切な方法によって合成し得る。例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加することによって合成し得る。
単量体成分の重合は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。
単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤;等を使用し得る。これらの重合開始剤は、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。これらの併用形態の中でも、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物、またはケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、または、塊状重合を行う場合には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。このような重合開始剤を用いる場合、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤または重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
単量体成分の重合の際の反応温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められる。このような反応温度としては、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
単量体成分の反応容器への投入方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。
単量体成分の重合の際には、好ましくは、連鎖移動剤を用い得る。連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。連鎖移動剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。
<酸基と芳香環構造を有する化合物(B)>
本発明のセメント分散剤組成物に含まれる化合物(B)は、酸基と芳香環構造を有する。化合物(B)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
本発明のセメント分散剤組成物に含まれる化合物(B)は、酸基と芳香環構造を有する。化合物(B)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
化合物(B)が有する酸基は、好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基から選ばれる少なくとも1種である。化合物(B)が有する酸基は、1個のみであっても良いし、2個以上であっても良い。化合物(B)が有する酸基は、塩基(例えば、NaOHなど)によって中和された形態になっていても良い。また、化合物(B)は、ホルムアルデヒド縮合物であっても良い。このような縮合物とする場合の縮合反応は、例えば、特公昭63−37058号公報や特開平6−340459号公報などに記載の方法が挙げられる。
化合物(B)が有する芳香環構造は、該芳香環構造を構成する炭素原子の一部が窒素原子および/または硫黄原子で置換されていても良い。化合物(B)が有する芳香環構造は、1個のみであっても良いし、2個以上であっても良い。
化合物(B)が有する芳香環構造は、例えば、ベンゼン環構造、ピリジン環構造、ピラジン環構造、ピリミジン環構造、ピリダジン環構造、トリアジン環構造、テトラジン環構造、ベンゾフラン環構造、インドール環構造、ベンゾチオフェノン環構造、ベンゾイミダゾール環構造、ベンゾオキサゾール環構造、ベンゾチアゾール環構造、ナフタレン環構造、キノリン環構造、アントラセン環構造などが挙げられる。このような芳香環構造の中でも、化合物(B)が有する芳香環構造として、好ましくは、ベンゼン環構造、ピリジン環構造、トリアジン環構造、ナフタレン環構造から選ばれる少なくとも1種である。
化合物(B)としては、好ましくは、カルボン酸基および/またはスルホン酸基とベンゼン環構造を有する化合物、カルボン酸基および/またはスルホン酸基とトリアジン環構造を有する化合物、カルボン酸基および/またはスルホン酸基とナフタレン環構造を有する化合物である。
化合物(B)としては、より具体的には、例えば、パラトルエンスルホン酸(またはその水和物)、2−ナフタレンスルホン酸(またはその水和物)、2,6−ナフタレンジカルボン酸、メラミンスルホン酸、それらの化合物がホルマリンにより縮合された重合物、酸基を有するポリスチレン、などが挙げられる。縮合反応の方法は特に限定されるものではなく、例えば、特公昭63−37058号公報や特開平6−340459号公報に記載の方法などが挙げられる。
酸基を有するポリスチレンは、任意の適切な方法によって製造し得る。このような方法としては、例えば、酸基を有するスチレンをラジカル重合やイオン重合する方法、ポリスチレンをスルホン化剤を用いてスルホン化する方法(例えば、特開昭64−79051号公報)などが挙げられる。
化合物(B)としては、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、ナフタレンスルホン酸系化合物である。
ナフタレンスルホン酸系化合物としては、例えば、ナフタレンスルホン酸系低分子化合物、ナフタレンスルホン酸系縮合物が挙げられる。
ナフタレンスルホン酸系低分子化合物としては、例えば、ナフタレンまたは炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されたナフタレンを特開平6−340459号公報や特開平7−247147号公報に記載の方法等でスルホン化したものが挙げられる。このようなナフタレンスルホン酸系低分子化合物は、例えば、ナフタレン1モルに対して、濃硫酸1.10〜1.50モルを120℃で加え、150℃で4時間反応させることによって得ることができる。また、ナフタレンスルホン酸系低分子化合物は、市販品をそのまま用いることもできる。
一般式(3)中、R7は、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Yは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
ナフタレンスルホン酸系縮合物としては、例えば、ナフタレンスルホン酸系低分子化合物を特開平6−340459号公報や特開平7−247147号公報に記載の方法等でホルムアルデヒド縮合したものが挙げられる。このようなナフタレンスルホン酸系縮合物は、例えば、ナフタレンスルホン酸系低分子化合物1モルに対して、0.4〜1.0モルのホルマリンを80℃〜100℃で加えた後、80℃〜110℃で3時間〜50時間反応させることによって得ることができる。また、ナフタレンスルホン酸系縮合物は、市販品をそのまま用いることもできる。
一般式(4)中、R7は、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Yは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、mは縮合度であって1以上の数である。
化合物(B)は、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上である。
化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。このピーク面積の割合の上限は、好ましくは100%未満であり、より好ましくは99%以下であり、さらに好ましくは98%以下であり、特に好ましくは97%以下である。
化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合を上記範囲内に調整することにより、本発明のセメント分散剤組成物は、適正な施工性を確保でき、優れた初期流動性を発現できる。
本発明においては、この化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合は、適正な施工性と優れた初期流動性の指標となる。
化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積とは、後に詳述するように、所定のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、所定の標準物質を用いて作成される検量線に基づいて質量平均分子量が2500となる保持時間を決定し、この保持時間以降のピーク面積部分を意味する。
すなわち、本発明においては、図1に示す一例のように、後述のGPC条件1に示した条件でサンプルのGPC測定を行い、横軸に溶出時間、縦軸にUV強度を取ったグラフを作成し、ピークが検出され始めた時間(L1)と最終のピーク検出が終了した時間(L2)を手動で選択し、この2点を直線で結んでベースラインとし、後述のGPC条件1に示した標準物質を用いて作成した検量線をもとにMpが2500を示す溶出時間(T1)でピークを垂直分割し、後述のGPC条件1に示した解析ソフトにて、溶出時間L1とL2の間の全ピーク面積(P0)と、T1とL2の間の分子量2500以下の部分のピーク面積(Q0、図1の斜線部分)を機械的に計算させ、得られた値を用いて、(Q0/P0)×100を計算し、これを全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合とした。
本発明においては、図1に示す一例のような、化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が、適正な施工性と優れた初期流動性の指標となるのであり、該ピーク面積の割合を上記範囲内に調整することにより、本発明のセメント分散剤組成物は、適正な施工性を確保でき、優れた初期流動性を発現できる。
化合物(B)は、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上であれば、単一の化合物であっても良いし、質量平均分子量の異なる複数の化合物からなるものであっても良い。
化合物(B)は、好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上である化合物(B1)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%未満である化合物(B2)とからなる。
化合物(B1)は、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上である。
化合物(B1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。このピーク面積の割合の上限は、好ましくは100%以下である。
化合物(B1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積とは、後に詳述するように、所定のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、所定の標準物質を用いて作成される検量線に基づいて質量平均分子量が2500となる保持時間を決定し、この保持時間以降のピーク面積部分を意味する。
化合物(B2)は、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%未満である。
化合物(B2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合は、好ましくは74%以下であり、より好ましくは73%以下である。このピーク面積の割合の下限は、好ましくは0%以上であり、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、特に好ましくは30%以上であり、最も好ましくは40%以上である。
化合物(B2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積とは、後に詳述するように、所定のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、所定の標準物質を用いて作成される検量線に基づいて質量平均分子量が2500となる保持時間を決定し、この保持時間以降のピーク面積部分を意味する。
化合物(B1)と化合物(B2)の質量比率(B1)/(B2)は、好ましくは60〜95/5〜40であり、より好ましくは70〜95/5〜30であり、さらに好ましくは80〜95/5〜20であり、特に好ましくは90〜95/5〜10である。
化合物(B1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合、化合物(B2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合、化合物(B1)と化合物(B2)の質量比率(B1)/(B2)を、それぞれ上記範囲内に調整することにより、本発明のセメント分散剤組成物は、より適正な施工性を確保でき、より優れた初期流動性を発現できる。
<他の成分>
本発明のセメント分散剤組成物は、ポリカルボン酸系共重合体(A)および酸基と芳香環構造を有する化合物(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいても良い。このような他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
本発明のセメント分散剤組成物は、ポリカルボン酸系共重合体(A)および酸基と芳香環構造を有する化合物(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいても良い。このような他の成分は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
このような他の成分としては、例えば、特許第3683176号公報の段落0049から0050に記載の成分が挙げられる。本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体(A)とこのような他の成分との配合比は、目的に応じて、任意の適切な配合比を採用し得る。
≪セメント組成物≫
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント分散剤組成物を含む。本発明のセメント組成物は、本発明のセメント分散剤組成物とセメントと水を含む。
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント分散剤組成物を含む。本発明のセメント組成物は、本発明のセメント分散剤組成物とセメントと水を含む。
本発明のセメント組成物に含まれるセメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、本発明のセメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
本発明のセメント組成物には、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材が含まれていても良い。
このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
本発明のセメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m3〜185kg/m3であり、使用セメント量が250kg/m3〜800kg/m3であり、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m3〜175kg/m3であり、使用セメント量が270kg/m3〜800kg/m3であり、水/セメント比(質量比)=0.12〜0.65である。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
本発明のセメント組成物中の、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント100質量部に対する、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体の含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.02質量部〜5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部〜3質量部である。このような含有割合とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明のセメント組成物中の本発明のセメント分散剤組成物の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、セメント100質量部に対する本発明のセメント分散剤組成物の含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.05質量部〜8質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部である。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明のセメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
本発明のセメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
<化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合>
化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合は、下記GPC条件1に記載の標準物質を用いて作成される検量線をもとに分子量2500となる保持時間を決定し、この保持時間以降のピーク面積部分を全ピーク面積に対する比率として表した。より詳細には、以下の手順に基づいて算出した。
(1)後述のGPC条件1に示した条件でサンプルのGPC測定を行い、横軸に溶出時間、縦軸にUV強度を取ったグラフを作成する(一例として図1)。
(2)ピークが検出され始めた時間(L1)と最終のピーク検出が終了した時間(L2)を手動で選択し、この2点を直線で結んでベースラインとする。
(3)後述の標準物質を用いて作成した検量線をもとにMpが2500を示す溶出時間(T1)でピークを垂直分割する。
(4)後述の解析ソフトにて、溶出時間L1とL2の間の全ピーク面積(P0)と、T1とL2の間の分子量2500以下の部分のピーク面積(Q0、図1の斜線部分)を機械的に計算させる。
(5)得られた値を用いて、(Q0/P0)×100を計算し、これを全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合とした。
[GPC条件1]
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:TSKgel ガードカラムSWXL+G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー株式会社製)
検出器:多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7mL/分
カラム・検出器温度:40℃
測定時間:45分
検出:UV280nm
試料液注入量:100μl(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
標準物質:創和科学株式会社製ポリスチレンスルホン酸(Mp=976000、356000、77900、15650、4600、1800)
検量線:上記ポリスチレンスルホン酸のMp値を用いて3次式で作成。
化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合は、下記GPC条件1に記載の標準物質を用いて作成される検量線をもとに分子量2500となる保持時間を決定し、この保持時間以降のピーク面積部分を全ピーク面積に対する比率として表した。より詳細には、以下の手順に基づいて算出した。
(1)後述のGPC条件1に示した条件でサンプルのGPC測定を行い、横軸に溶出時間、縦軸にUV強度を取ったグラフを作成する(一例として図1)。
(2)ピークが検出され始めた時間(L1)と最終のピーク検出が終了した時間(L2)を手動で選択し、この2点を直線で結んでベースラインとする。
(3)後述の標準物質を用いて作成した検量線をもとにMpが2500を示す溶出時間(T1)でピークを垂直分割する。
(4)後述の解析ソフトにて、溶出時間L1とL2の間の全ピーク面積(P0)と、T1とL2の間の分子量2500以下の部分のピーク面積(Q0、図1の斜線部分)を機械的に計算させる。
(5)得られた値を用いて、(Q0/P0)×100を計算し、これを全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合とした。
[GPC条件1]
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:TSKgel ガードカラムSWXL+G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー株式会社製)
検出器:多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7mL/分
カラム・検出器温度:40℃
測定時間:45分
検出:UV280nm
試料液注入量:100μl(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
標準物質:創和科学株式会社製ポリスチレンスルホン酸(Mp=976000、356000、77900、15650、4600、1800)
検量線:上記ポリスチレンスルホン酸のMp値を用いて3次式で作成。
<質量平均分子量>
[GPC条件2]
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:TSKgel ガードカラムSWXL(内径6.0×40mm)+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL(各内径7.8×300mm)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)
溶離液:イオン交換水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
流量:1.0mL/分
カラム・検出器温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μl(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル:東ソー(株)製ポリエチレングリコール Mp=300000、200000、107000、44900、30000、20000、11840、6450、4020、1470
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成。
[GPC条件2]
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:TSKgel ガードカラムSWXL(内径6.0×40mm)+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL(各内径7.8×300mm)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)
溶離液:イオン交換水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
流量:1.0mL/分
カラム・検出器温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μl(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル:東ソー(株)製ポリエチレングリコール Mp=300000、200000、107000、44900、30000、20000、11840、6450、4020、1470
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成。
<モルタルフロー試験>
20℃雰囲気にて、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製)500g、ISO標準砂1350g、所定量のポリカルボン酸系共重合体(A)および酸基と芳香環構造を有する化合物(B)を溶解させた水225g、消泡剤としてのアデカノールLG−299(アデカ製)をポリカルボン酸系共重合体(A)と酸基と芳香環構造を有する化合物(B)の合計量に対し2質量%をモルタルミキサーに投入し、JIS R 5201に準拠してモルタルを作成した。
得られたモルタルをJIS R 5201に準拠して、フローテーブルにより15回落下運動を与えた後のモルタルの広がり径をモルタルフロー値とした。
20℃雰囲気にて、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製)500g、ISO標準砂1350g、所定量のポリカルボン酸系共重合体(A)および酸基と芳香環構造を有する化合物(B)を溶解させた水225g、消泡剤としてのアデカノールLG−299(アデカ製)をポリカルボン酸系共重合体(A)と酸基と芳香環構造を有する化合物(B)の合計量に対し2質量%をモルタルミキサーに投入し、JIS R 5201に準拠してモルタルを作成した。
得られたモルタルをJIS R 5201に準拠して、フローテーブルにより15回落下運動を与えた後のモルタルの広がり径をモルタルフロー値とした。
〔製造例1〕:ポリカルボン酸系共重合体(1)
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水231.5g、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド50モル付加体532.3g、アクリル酸7.8gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水44.6gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸69.9gを水17.5gに溶解させた水溶液を3時間かけて滴下した。アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸1.2g、2−メルカプトプロピオン酸2.0gを水93.3gに溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。冷却後、30%NaOH水溶液でpHを6まで中和した。
得られたポリカルボン酸系共重合体(1)をGPC条件2にてGPC測定を行ったところ、質量平均分子量は37000であった。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水231.5g、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド50モル付加体532.3g、アクリル酸7.8gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水44.6gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸69.9gを水17.5gに溶解させた水溶液を3時間かけて滴下した。アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸1.2g、2−メルカプトプロピオン酸2.0gを水93.3gに溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。冷却後、30%NaOH水溶液でpHを6まで中和した。
得られたポリカルボン酸系共重合体(1)をGPC条件2にてGPC測定を行ったところ、質量平均分子量は37000であった。
〔製造例2〕:ポリカルボン酸系共重合体(2)
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水300gを仕込み、撹拌下において反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(NKエステルM−450G、新中村化学工業社製)295g、メタクリル酸26g、3−メルカプトプロピオン酸0.66gを水75gに溶解させたモノマー水溶液を4時間かけて滴下した。モノマー水溶液を滴下し始めると同時に、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩1.2gを水98.8gに溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃を維持し、重合反応を完結させた。冷却後、30%NaOH水溶液でpHが6になるまで中和した。
得られたポリカルボン酸系共重合体(2)をGPC条件2にてGPC測定を行ったところ、質量平均分子量は42000であった。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水300gを仕込み、撹拌下において反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(NKエステルM−450G、新中村化学工業社製)295g、メタクリル酸26g、3−メルカプトプロピオン酸0.66gを水75gに溶解させたモノマー水溶液を4時間かけて滴下した。モノマー水溶液を滴下し始めると同時に、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩1.2gを水98.8gに溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて80℃を維持し、重合反応を完結させた。冷却後、30%NaOH水溶液でpHが6になるまで中和した。
得られたポリカルボン酸系共重合体(2)をGPC条件2にてGPC測定を行ったところ、質量平均分子量は42000であった。
〔製造例3〕:2−ナフタレンスルホン酸縮合物
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水28.0g、2−ナフタレンスルホン酸46.3g、硫酸6.0gを仕込み、90℃に昇温した後、37%ホルマリン11.4gを15分ごとに2時間かけて分割投入した。その後、90℃で12時間反応させた後、水171.0g、30%NaOH水溶液8.0gを加えて、反応を停止させた。
得られた2−ナフタレンスルホン酸縮合物をGPC条件1にてGPC測定を行ったところ、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が90.2%であった。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、水28.0g、2−ナフタレンスルホン酸46.3g、硫酸6.0gを仕込み、90℃に昇温した後、37%ホルマリン11.4gを15分ごとに2時間かけて分割投入した。その後、90℃で12時間反応させた後、水171.0g、30%NaOH水溶液8.0gを加えて、反応を停止させた。
得られた2−ナフタレンスルホン酸縮合物をGPC条件1にてGPC測定を行ったところ、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が90.2%であった。
〔実施例1〕
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)、2−ナフタレンスルホン酸水和物(東京化成製、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が100%)、およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量2500以下のピーク面積の割合が40.2%)を表1に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(1)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)、2−ナフタレンスルホン酸水和物(東京化成製、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が100%)、およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量2500以下のピーク面積の割合が40.2%)を表1に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(1)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例2〕
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い、セメント分散剤組成物(2)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い、セメント分散剤組成物(2)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例3〕
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が40.2%)をナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:デモールN、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が72.8%)に変更し、配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い、セメント分散剤組成物(3)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が40.2%)をナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:デモールN、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が72.8%)に変更し、配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い、セメント分散剤組成物(3)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例4〕
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(4)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(4)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例5〕
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(5)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(5)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例6〕
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(6)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(6)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例7〕
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(7)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(7)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例8〕
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(8)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(8)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例9〕
2−ナフタレンスルホン酸水和物(東京化成製、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が100%)を製造例3で得られた2−ナフタレンスルホン酸縮合物(GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が90.2%)に変更し、配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(9)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
2−ナフタレンスルホン酸水和物(東京化成製、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が100%)を製造例3で得られた2−ナフタレンスルホン酸縮合物(GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が90.2%)に変更し、配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例3と同様に行い、セメント分散剤組成物(9)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例10〕
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例9と同様に行い、セメント分散剤組成物(10)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
配合比率を表1に示すように変更した以外は実施例9と同様に行い、セメント分散剤組成物(10)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔比較例1〕
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)をセメント分散剤組成物(C1)とし、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)をセメント分散剤組成物(C1)とし、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔比較例2〕
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量2500以下のピーク面積の割合が40.2%)を表1に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(C2)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量2500以下のピーク面積の割合が40.2%)を表1に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(C2)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔比較例3〕
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)、2−ナフタレンスルホン酸水和物(東京化成製、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が100%)、およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量2500以下のピーク面積の割合が40.2%)を表1に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(C3)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)、2−ナフタレンスルホン酸水和物(東京化成製、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が100%)、およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量2500以下のピーク面積の割合が40.2%)を表1に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(C3)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔比較例4〕
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:デモールN、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が72.8%)を表1に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(C4)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)とナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:デモールN、GPC測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が72.8%)を表1に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(C4)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表1に示した。
〔実施例11〕
実施例1において、製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)に変更し、表2に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(11)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表2に示した。
実施例1において、製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)に変更し、表2に示した配合比率で配合してセメント分散剤組成物(11)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表2に示した。
〔実施例12〕
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)を製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)に変更し、表2に示した配合比率で配合した以外は実施例1と同様に行い、セメント分散剤組成物(12)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表2に示した。
製造例1で得られたポリカルボン酸系共重合体(1)を製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)に変更し、表2に示した配合比率で配合した以外は実施例1と同様に行い、セメント分散剤組成物(12)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表2に示した。
〔比較例5〕
製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)をセメント分散剤組成物(C5)とし、モルタルフロー試験を行った。
結果を表2に示した。
製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)をセメント分散剤組成物(C5)とし、モルタルフロー試験を行った。
結果を表2に示した。
〔比較例6〕
製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)、2−ナフタレンスルホン酸水和物(東京化成製)、およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150)を表1に示した配合比率で配合し、セメント分散剤組成物(C6)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表2に示した。
製造例2で得られたポリカルボン酸系共重合体(2)、2−ナフタレンスルホン酸水和物(東京化成製)、およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製、商品名:マイティ150)を表1に示した配合比率で配合し、セメント分散剤組成物(C6)を製造し、モルタルフロー試験を行った。
結果を表2に示した。
なお、表1、表2中の略号の意味は下記の通りである。
NS:2−ナフタレンスルホン酸水和物
NSF:2−ナフタレンスルホン酸縮合物
NS:2−ナフタレンスルホン酸水和物
NSF:2−ナフタレンスルホン酸縮合物
本発明のセメント分散剤組成物は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に好適に用いられる。
Claims (6)
- 一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体(A)100質量部と、酸基と芳香環構造を有する化合物(B)(ただし、芳香環構造を構成する炭素原子の一部が窒素原子および/または硫黄原子で置換されていても良い。)10質量部〜300質量部を含み、
該化合物(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上である、
セメント分散剤組成物。
- 前記化合物(B)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%以上である化合物(B1)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られる全ピーク面積中の質量平均分子量が2500以下の部分のピーク面積の割合が75%未満である化合物(B2)とからなる、請求項1に記載のセメント分散剤組成物。
- 前記化合物(B1)と前記化合物(B2)の質量比率(B1)/(B2)が、60〜95/5〜40である、請求項2に記載のセメント分散剤組成物。
- 前記化合物(B)が有する酸基が、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3までのいずれかに記載のセメント分散剤組成物。
- 前記化合物(B)が有する芳香環構造が、ベンゼン環構造、ピリジン環構造、トリアジン環構造、ナフタレン環構造から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から4までのいずれかに記載のセメント分散剤組成物。
- 請求項1から5までのいずれかに記載のセメント分散剤組成物を含む、セメント組成物。
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